K 1201-5 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
これによって,JIS K 1201 : 1950は廃止され,JIS K 1201-1〜JIS K 1201-6に置き換えられる。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
JIS K 1201は,一般名称を“工業用炭酸ナトリウム”として,次の各部によって構成する。
第1部 :かさ密度の求め方
第2部 :250℃における加熱減量及び不揮発物の求め方
第3部 :全可溶性アルカリ含有量の求め方−第1節:中和滴定法
第3部 :全可溶性アルカリ含有量の求め方−第2節:電位差滴定方法
第4部 :塩化ナトリウム含有量の求め方−ホルハルト改良法,電位差滴定方法
第5部 :鉄含有量の求め方−1, 10−フェナントロリン吸光光度分析方法,原子吸光分析方法,高周波
誘導結合プラズマ発光分光分析方法
第6部 :50℃における水不溶物の求め方
日本産業規格 JIS
K 1201-5 : 2000
工業用炭酸ナトリウム−
第5部:鉄含有量の求め方−
1, 10−フェナントロリン吸光光度分析方法,
原子吸光分析方法,高周波誘導結合
プラズマ発光分光分析方法
Sodium carbonate for industrial use−
Part 5 : Determination of iron content−
1, 10-Phenanthroline molecular absorption spectrometry,
Atomic absorption spectrometry, and inductively
coupled plasma atomic emission spectrometry
1. 適用範囲 この規格は,工業用炭酸ナトリウムの鉄含有量を測定する,1, 10−フェナントロリン吸光
光度分析方法,原子吸光分析方法及び高周波誘導結合プラズマ発光分光分析方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む)を適用する。
JIS K 0016 鉄標準液
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8359 酢酸アンモニウム(試薬)
3. 定量方法の種類
a) 1, 10−フェナントロリン吸光光度分析方法
b) 原子吸光分析方法
c) 高周波誘導結合プラズマ発光分光分析方法
2
K 1201-5 : 2000
4.
1, 10−フェナントロリン吸光光度分析方法
4.1
要旨 試料を中和し,微酸性溶液中で塩化ヒドロキシルアンモニウムで鉄(II)に還元した後,1, 10−
フェナントロリンを加え,pH値を3〜5に調整し,生成するだいだい赤の鉄(II)錯体の吸光度を測定して鉄
を定量する。
4.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+1) JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製したもの。
b) フェノールフタレイン溶液 (10g/l) JIS K 8001の4.4(指示薬)に規定するもの。
c) 塩化ヒドロキシルアンモニウム溶液 (100g/l) JIS K 8001の4.2(試薬溶液)に規定するもの。
d) 1, 10−フェナントロリン溶液 (2g/l) JIS K 8001の4.2(試薬溶液)に規定するもの。
e) 酢酸アンモニウム溶液 (100g/l) JIS K 8359に規定する酢酸アンモニウムを用いて調製したもの。
f)
鉄標準液 (0.01mg/ml) JIS K 8001の4.3(2)(標準液)に規定するもの,又はJIS K 0016に規定するも
の。
4.3
装置 分光光度計又は光電光度計 JIS K 0115に規定するもの。
4.4
操作 操作は,次のとおり行う。
4.4.1
試料の採取と保存は,次による。
a) 試料採取
器具は,次による。
1) スコップ 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
2) さし 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
b) 試料採取の操作
1) 小形容器の場合
紙袋の場合は,口部又は胴部からスコップ若しくはさしを用いて採取する。
フレキシブルコンテナの場合は,充てん口からスコップを用いて採取する。
2) 大形容器の場合
ベルトコンベヤなどの搬送機の落ち口でスコップを用いて採取する。
c) 試料の保存方法
1) 密閉可能な容器(例えば,広口瓶)に500gを入れて密栓する。
2) 容器に次の項目を表示する。
・ 試料の由来
・ 認知事項
・ 試料を採取した日
3
K 1201-5 : 2000
図1 採取器具の例
4.4.2
試験操作は,次による。
a) 試料約5gをビーカー300mlに,0.1gまで量り取る。
b) 水約50mlを加えて溶解し,指示薬としてフェノールフタレイン溶液 (10g/l) 数滴を加え,液の紅色が
消えるまで塩酸 (1+1) を加えて中和し,さらに,塩酸 (1+1) 4mlを過剰に加える。
c) 塩化ヒドロキシルアンモニウム溶液 (100g/l) 1mlを加え,数分間静かに煮沸する。室温に冷却後,全
量フラスコ100mlに移し入れ,水を加えて約80mlの液量にする。
d) 1, 10−フェナントロリン溶液 (2g/l) 3mlを加えて振り混ぜ,続いてpH値が3〜5になるように酢酸ア
ンモニウム溶液 (100g/l) 15mlを加えて振り混ぜ,水を標線まで加えて振り混ぜる。
e) d)で得た溶液の一部を吸収セル10〜50mmに移し取り,JIS K 0115の6.1(複光束方式における測定)
によって,溶液の吸光度を波長510nm付近で測定する。対照液はf)の空試験の溶液を用いる。
f)
空試験の溶液は,b)で用いた塩酸 (1+1) の同量をビーカー300mlに取り,水浴上で蒸発乾固した後,
水を加えて溶解し,次にc)〜e)の操作を行い,溶液の吸光度を補正する。
g) 検量線は,3〜5個のビーカー300mlに鉄標準液を段階的に添加(1)し,水を加えて溶解し,次にc)〜e)
の操作を行い,鉄量と吸光度の関係線を作成する。
注(1) 鉄標準液の添加量は,d)で得た溶液中の鉄の予想含有量及びその前後を含むことが望ましい。
4.5
計算 検量線から鉄の値を求め,試料中の鉄は,次の式によって算出する。
100
)
100
1(
103
×
−
×
×
=
−
B
W
a
E
ここに,
E: 鉄 (Fe) (%)
a: 検量線から求めた鉄の値 (mg)
W: 試料の質量 (g)
B: 試料の加熱減量 (%)
4
K 1201-5 : 2000
5. 原子吸光分析方法
5.1
要旨 試料を塩酸で酸性とし,原子吸光分析装置を用いて鉄を定量する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
a) メチルオレンジ溶液 (1g/l) JIS K 8001の4.4(指示薬)に規定するもの。
b) 塩酸 (1+1) JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製したもの。
c) 鉄標準液 (0.01mg/ml) JIS K 8001の4.3(2)(標準液)に規定するもの,又はJIS K 0016に規定するも
の。
5.3
装置 装置は,次による。
a) 原子吸光分析装置 JIS K 0121に規定するもの。
b) 鉄中空陰極ランプ
5.4
操作 操作は,次のとおり行う。
5.4.1
試料の採取と保存は,次による。
a) 試料採取
器具は,次による。
1) スコップ 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
2) さし 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
b) 試料採取の操作
1) 小形容器の場合
紙袋の場合は,口部又は胴部からスコップ若しくはさしを用いて採取する。
フレキシブルコンテナの場合は,充てん口からスコップを用いて採取する。
2) 大形容器の場合
ベルトコンベヤなどの搬送機の落ち口でスコップを用いて採取する。
c) 試料の保存方法
1) 密閉可能な容器(例えば,広口瓶)に500gを入れて密栓する。
2) 容器に次の項目を表示する。
・ 試料の由来
・ 認知事項
・ 試料を採取した日
5.4.2
試験操作は,次による。
a) 試料約50g/lをビーカー500mlに,0.1gまで量り取る。
b) 水約300mlを加えて溶解し,指示薬としてメチルオレンジ溶液 (1g/l) 数滴を加え液が赤黄から赤にな
るまで塩酸 (1+1) を加えて中和し,更に塩酸 (1+1) 5mlを過剰に加え,5分間煮沸する。室温に冷
却後,全量フラスコ500mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り混ぜる。
c) b)で得た溶液25mlを全量ピペットを用いて全量フラスコ100mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り
混ぜる。
d) 標準添加試料として,b)で得た溶液25mlを全量ピペットを用いて3〜5個の全量フラスコ100mlに移
し取り,鉄標準液を段階的に添加(2)し,水を標線まで加えて振り混ぜる。
注(2) 鉄標準液の添加量は,b)で得た溶液25ml中の鉄の予想含有量及びその前後を含むことが望まし
い。
e) JIS K 0121の6.(操作方法)によってc),d)で得た溶液の吸光度を,原子吸光分析装置を用いて波長
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K 1201-5 : 2000
248.3nmで測定する。
f)
空試験の溶液は,b)で中和に用いた塩酸 (1+1) の同量をビーカー300mlに取り,水浴上で蒸発乾固し
た後,塩酸 (1+1) 5mlを加えて溶解し,全量フラスコ500mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り混
ぜる。この溶液25mlを全量ピペットを用いて全量フラスコ100mlに移し入れ,水を標線まで加えて
振り混ぜる。次にe)の操作で吸光度を補正する。
g) JIS K 0121の7.1(2)(標準添加法)に規定する標準添加法(3)によって,鉄量と吸光度の関係線を作成
する。
注(3) この方法は,標準添加法を採用しているが,共存塩類の影響を考慮した検量線法を用いてもよ
い。
5.5
計算 検量線から鉄の値を求め,試料中の鉄は,次の式によって算出する。
100
)
100
1(
500
25
103
×
−
×
×
×
=
−
B
W
a
E
ここに,
E: 鉄 (Fe) (%)
a: 検量線から求めた鉄の値 (mg)
W: 試料の質量 (g)
B: 試料の加熱減量 (%)
6. 高周波誘導結合プラズマ発光分光分析方法
6.1
要旨 試料を塩酸で酸性とし,高周波誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて鉄を定量する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
a) メチルオレンジ溶液 (1g/l) JIS K 8001の4.4(指示薬)に規定するもの。
b) 塩酸 (1+1) JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製したもの。
c) 鉄標準液 (0.01mg/ml) JIS K 8001の4.3(2)(標準液)に規定するもの,又はJIS K 0016に規定するも
の。
6.3
装置 高周波誘導結合プラズマ発光分析装置,JIS K 0116に規定するもの。
6.4
操作 操作は,次のとおり行う。
6.4.1
試料の採取と保存は,次による。
a) 試料採取
器具は,次による。
1) スコップ 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
2) さし 図1に示すような形状で,ステンレス鋼など適切な材質で作られたものを使用する。
b) 試料採取の操作
1) 小形容器の場合 紙袋の場合は,口部又は胴部からスコップ若しくはさしを用いて採取する。
フレキシブルコンテナの場合は,充てん口からスコップを用いて採取する。
2) 大形容器の場合 ベルトコンベヤなどの搬送機の落ち口でスコップを用いて採取する。
c) 試料の保存方法
1) 密閉可能な容器(例えば,広口瓶)に500gを入れて密栓する。
2) 容器に次の項目を表示する。
・ 試料の由来
・ 認知事項
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K 1201-5 : 2000
・ 試料を採取した日
6.4.2
試験操作は次による。
a) 試料約50gをビーカー500mlに,0.1gまで量り取る。
b) 水300mlを加えて溶解し,指示薬としてメチルオレンジ溶液 (1g/l) 数滴を加え,液が赤黄から赤にな
るまで塩酸 (1+1) を加えて中和し,さらに,塩酸 (1+1) 5mlを過剰に加え,5分間煮沸する。室温
に冷却後,全量フラスコ500mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り混ぜる。
c) b)で得た溶液25mlを全量ピペットを用いて全量フラスコ100mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り
混ぜる。
d) 標準添加試料として,b)で得た溶液25mlを全量ピペットを用いて3〜5個の全量フラスコ100mlに移
し取り,鉄標準液を段階的に添加(4)し,水を標線まで加えて振り混ぜる。
注(4) 鉄標準液の添加量は,b)で得た溶液25ml中の鉄の予想含有量及びその前後を含むことが望まし
い。
e) JIS K 0116によってc),d)で得た溶液の発光強度を,高周波誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて
波長259.8nmで測定(5)する。
注(5) 測定波長は,機器の特性などに応じて他の適正な波長を選んでもよい。
f)
空試験の溶液は,b)で中和に用いた塩酸 (1+1) の同量をビーカー300mlに取り,水浴上で蒸発乾固し
た後,塩酸 (1+1) 5mlを加えて溶解し,全量フラスコ500mlに移し入れ,水を標線まで加えて振り混
ぜる。この溶液25mlを全量ピペットを用いて全量フラスコ100mlに移し入れ,水を標線まで加えて
振り混ぜる。次にe)の操作で発光強度を測定し,溶液の発光強度を補正する。
g) JIS K 0116の5.8.3(2)(標準添加法)に規定する標準添加法(6)によって,鉄量と発光強度の関係線を作
成する。
注(6) この方法は,標準添加法を採用しているが,共存塩類の影響を考慮した検量線法を用いてもよ
い。
6.5
計算 検量線から鉄の値を求め,試料中の鉄は,次の式によって算出する。
100
)
100
1(
500
25
103
×
−
×
×
×
=
−
B
W
a
E
ここに,
E: 鉄 (Fe) (%)
a: 検量線から求めた鉄の値 (mg)
W: 試料の質量 (g)
B: 試料の加熱減量 (%)
7
K 1201-5 : 2000
ソーダ関連製品JIS原案作成委員会及び分科会 構成表
氏名
所属
委員会
分科会
(委員長)
松 野 武 雄
横浜国立大学名誉教授
○
(委員)
西 出 徹 雄
通商産業省基礎産業局化学課
○
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院標準部
○
高 橋 和 夫
通商産業省製品評価技術センター
○
中 村 進
物質工学工業技術研究所
○
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
○
神 代 啓
社団法人日本化学工業協会
○
並 木 昭
財団法人化学品検査協会
○
吉 田 儀 章
化成品工業協会
○
渡 辺 浄 光
日本石鹸洗剤工業会
○
堀 定 男
日本製紙連合会
○
佐 藤 邦 弘
日本化学工業株式会社
○
湯 村 崇 男
日本化学繊維協会
○
一 戸 正 憲
社団法人日本水道協会
○
小 野 宏
旭化成工業株式会社
○
◎
橋 本 俊 夫
旭硝子株式会社
○
○
安 食 亮 伍
旭化成工業株式会社
○
○
大 津 健 治
ダイソー株式会社
○
新 宮 領 宏
鐘淵化学工業株式会社
○
西 尾 圭 司
日本曹達株式会社
○
○
鈴 木 邦 彦
東亞合成株式会社
○
片 岡 基
株式会社トクヤマ
○
○
武 居 弘 記
東ソー株式会社
○
藤 井 昇
鶴見曹達株式会社
○
○
須 永 忠 典
日本ソーダ工業会
○
○
(事務局)
三 須 武
社団法人日本化学工業協会
○
○
内 田 幹 雄
社団法人日本化学工業協会
○
宮 越 正 行
日本ソーダ工業会
○
(◎分科会主査)
(文責 橋本俊夫)