2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0950-1988
プラスチック製滅菌シャーレ
Sterilized Plastic Petri Dishes
1. 適用範囲 この規格は,バイオテクノロジー関連分野において,組織培養,細胞培養,微生物培養に
用いるプラスチック製滅菌シャーレのうち使い捨てのものについて規定する。
備考 この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,参
考として併記したものである。
引用規格:
JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析のための通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0512 水素
JIS K 1107 高純度窒素
JIS K 8101 エタノール (99.5)[エチルアルコール (99.5)](試薬)
JIS Z 9031 ランダム抜取方法
2. 用語の意味 この規格に用いる用語の意味は,JIS K 0114(ガスクロマトグラフ分析のための通則)
及びJIS K 0211[分析化学用語(基礎部門)]によるほか,次による。
(1) 滅菌 対象物中のすべての微生物を殺滅又は除去すること。
(2) 無菌 増殖能力のある微生物,特に細菌,真菌類が存在しない状態。
(3) 無菌生産 無菌状態方式で生産すること。
(4) ガンマ線滅菌法 放射性同位元素を含む線源からのガンマ線照射によって行う滅菌。
(5) エチレンオキシド滅菌法 エチレンオキシドを含むガスによって行う滅菌。
3. 種類
(1) 滅菌製品
(a) ガンマ線滅菌法によるもの。
(b) エチレンオキシド滅菌法によるもの。
(2) 無菌生産製品
4. 品質
(1) 材質 プラスチック
(2) 外観 透明性で,肉周りが均一で,傷,ひびなどがなく,かつ,滑らかなこと。
(3) 耐熱性 6.1耐熱性試験方法で変化が認められないこと。
(4) 無菌性 6.2無菌性試験方法で試験したとき無菌であること。
2
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(5) 残留エチレンオキシド 細胞の性質を変化させないこと(1)。
注(1) 使用目的により残留エチレンオキシドの許容値が変わるので,その値は受渡当事者間の協定に
よるものとし,試験方法は6.3に従って行う。
5. 形状及び寸法
5.1
形状 丸形でふたをもつ図1のもの。
図1 形 状
5.2
寸法 表による。
表寸法 (2)
単位mm
記号
ふたの最大外形 (A)
全体の高さ (B)
40
40±4
10
0
4
+
60
60±4
15±2
90A
90±4
15±2
90B
90±4
20
2
3
−
+
100
100±5
20±3
注(2) 当分の間,受渡当事者間の協定によってよい。
6. 試験方法 試料の採取は,JIS Z 9031(ランダム抜取方法)によって行う。
6.1
耐熱性試験方法 70℃の熱水に10分間浸せきした後取り出し,目視により未試験の試料と比較観察
を行い,変化の有無をみる。
6.2
無菌性試験方法 日本薬局方の無菌試験法に準じる(参考参照)。
6.2.1
培地及びその調製法
(1) 培地の組成(3) 日本薬局方に規定するもの。
注(3) 調製後の培地は必ず密閉状態に保ち,調製後3週間以上経過したものは用いない。
なお,無菌試験用チオグリコール酸培地I,ぶどう糖・ペプトン培地には,市販品がある。た
だしこれを用いるときは毎回性能試験を行わなければならない。
(2) 調製法
(a) 細菌試験用 日本薬局方の規定による。
(b) 真菌試験用 日本薬局方の規定による。
6.2.2
操作 試験用シャーレに6.2.1で調製した無菌試験用培地を全体の高さの21程度になるように加え,
シャーレにふたをした後,細菌の場合には30〜32℃で少なくとも7日間,真菌の場合には20〜25℃で少な
くとも10日間ふ卵器中で培養する。
6.2.3
判定 日本薬局方の規定による。
6.3
残留エチレンオキシド試験方法(ガスクロマトグラフィー)
3
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.3.1
概要 試料を細切りし抽出容器に入れ,プロピレンオキシドエタノールを加え振り混ぜ,残留エチ
レンオキシドを抽出,抽出液についてガスクロマトグラフによって定量を行う。
6.3.2
測定装置・器具及び試薬
(1) 測定装置及び器具
(a) ガスクロマトグラフ ガスクロマトグラフ[水素炎イオン化検出器 (FID) 付き]
(b) 抽出容器 気密性ガラス容器 容量100ml(4)
注(4) 例えば図2に示すようなヘッドスペースボトルが用いられる。
図2 ヘッドスペースボトル
(2) 試薬
(a) エタノール JIS K 8101〔エタノール (99.5) [エチルアルコール (99.5)](試薬)〕に規定のもの。
(b) エチレンオキシドエタノール溶液 (100μg/ml) 低温室で液状エチレンオキシド(5)約1gを1mgのけ
たまではかりとり,全量フラスコ100mlに入れ,エタノールを加えて100mlにする。この溶液10ml
を全量フラスコ1 000mlにとり,エタノールで1 000mlにする。
(c) プロピレンオキシドエタノール溶液 (200μg/ml) 低温室でプロピレンオキシド(6)約2gを1mgのけ
たまではかりとり,全量フラスコ100mlに入れ,エタノールを加えて100mlにする。この溶液10ml
を全量フラスコ1 000mlにとり,エタノールで1 000mlにする。
注(5) エチレンオキシドは沸点10.7℃の低沸点化合物であるから,エチレンオキシドの揮散を防ぐた
め雰囲気温度を5℃以下に保ち操作を行う。
なお,爆発限界が広く,また毒性も強いので,取扱いには十分注意する。エチレンオキシド
エタノール溶液は,市販品のものを用いることもできる。
(6) プロピレンオキシドの沸点は35℃であるから,低温室で操作することが望ましい。
なお,爆発限界が広く,また毒性も強いので,取扱いには十分注意する。プロピレンオキシ
ドエタノール溶液は市販品を用いてもよい。
6.3.3
分析方法
(1) 試料の調製方法 シャーレを包装から取り出し5mm角くらいの大きさに切り,その約5gを1mgのけ
たまではかりとり,内標準物質として,(3)(b)で作成した検量線の範囲に入るような濃度のプロピレン
オキシドエタノール溶液 (200μg/ml) (7)50mlを加えた抽出容器に入れ,70℃で少なくとも6時間恒温
振とう機で振とう後(8),冷蔵庫内(9)に放置する。
4
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注(7) プロピレンオキシドエタノール溶液 (200μg/ml) をエタノールで適宜希釈して用いる。
(8) 材質,厚さ,残存量によって抽出時間は異なるので,予備実験で抽出が行われているかを確認
する。
(9) 検量線の作成の場合と同一温度を保つ。
(2) 分析条件 分析条件は機器によって異なるので,最適となる分析条件を選び定量を行う。
一例を次に示す。
分析条件の一例
カラム用管 内径3〜4mm,長さ3mのガラス又はステンレス鋼管
カラム充てん剤 酸洗浄した白色けい藻土担体(10)(粒径177〜250μm)にポリエチレングリコール20M
を約20%被覆したもの。
カラム槽温度 40℃
試料注入口温度 120℃
検出器 水素炎イオン化検出器
キャリヤーガス JIS K 1107(高純度窒素)に規定する特級の窒素で流量40ml/min
燃料ガス JIS K 0512(水素)に規定する1級の水素で58.8kPa {0.6kgf/cm2}
助燃ガス 空気で98.1kPa {1.0kgf/cm2}
注(10) クロモソルブWなどの名で市販されている。
(3) 操作
(a) 定量 (1)で調製した抽出容器中の気相部分のガス1〜0.5mlを(2)で最適の条件に設定したガスクロ
マトグラフに導入し,得られたクロマトグラムからエチレンオキシドのピーク面積とプロピレンオ
キシドのピーク面積との比を求め,検量線からエチレンオキシド濃度 (μg/g) を求める。
(b) 検量線の作成 抽出容器に6.3.2(2)(b)のエチレンオキシドエタノール溶液5mlをとり,プロピレン
オキシドエタノール溶液を,混合液中のエチレンオキシド (EO) とプロピレンオキシド (PO) の濃
度比 (EO/PO) が1.0,0.8,0.5,0.2,0.1になるように加えた後,全量が50mlになるようにエタノ
ールを加える。この抽出容器を70℃,6時間加温し冷蔵庫に放置した後,抽出容器の気相部分のガ
ス1mlを(2)で最適条件に設定したガスクロマトグラフに導入し,得られたクロマトグラムから横軸
にエチレンオキシド濃度とプロピレンオキシド濃度比 (EO/PO) とを,縦軸にエチレンオキシドの
ピーク面積とプロピレンオキシドのピーク面積の比をとって検量線を作成する。
7. 包装 最小包装単位の包装材料には,取扱い中又は輸送中に破れない材質のものを用いる。
8. 表示 容器の外箱に次の事項を表示しなければならない。
(1) 名称及び記号
(2) 材質
(3) 種類及び滅菌法
(4) 製造業者名
(5) ロット番号
(6) 滅菌年月日
(7) その他
5
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9. 取扱い上の注意
(1) エチレンオキシド滅菌をしたシャーレを使用する場合は,エチレンオキシドの残存量を減少させるた
め包装したまま箱から出して2週間ほどそのまま放置して使用することが望ましい。
(2) 培養に使用した容器及び内容物の廃棄は,環境汚染のないよう注意して処理する。
6
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考
6.2
無菌性試験方法[日本薬局方(第十一改正)37無菌試験法]
6.2.1
培地及びその調製法
(1) 培地の組成
(a) 細菌試験用培地(チオグリコール酸培地I)
L−シスチン
0.5g
カゼイン製ペプトン
15.0 g
カンテン
0.8g
チオグリコール酸ナトリウム
0.5 g
塩化ナトリウム
2.5g
レザズリン溶液 (1→1 000)
1.0 ml
ぶどう糖
5.0g
水
1 000 ml
酵母エキス
5.0g
滅菌後のpHを7.0〜7.2に調整する。
(b) 真菌試験用培地(ぶどう糖・ペプトン培地)
りん酸二水素カリウム
1.0g
硫酸マグネシウム
0.5g
カゼイン製ペプトン
5.0g
酵母エキス
2.0g
ぶどう糖
20.0g
水
1 000ml
滅菌後のpHを5.6〜5.8に調整する。
(2) 調製法
(a) 細菌試験用 水1 000mlにL−シスチン,カンテン,塩化ナトリウム,ぶどう糖,酵母エキス及び
カゼイン製ペプトンを加え,水浴上で加温して溶かし,次にチオグリコール酸ナトリウムを加えて
溶かした後,必要ならば水酸化ナトリウム試液を加え,滅菌後のpHが7.0〜7.2になるように調整
する。必要ならば加温した後,水で潤したろ紙を用いてろ過する。次にレザズリン溶液 (1→1 000) を
加え,よく混和し高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で20分間加熱して滅菌した後,直ちに常温に冷却
し,遮光して常温で保存する。保存中に水分が蒸発して流動性に変化が認められたもの,又は上部31
以上が赤色に変わった培地は使用できない。ただし,このように変色した培地でも,水浴上で加温
して赤色部分が31以下になったときは使用して差し支えないが,その後再び31以上が赤色に変わった
ものは使用してはならない。
(b) 真菌試験用 水1 000mlにりん酸二水素カリウム,硫酸マグネシウム,カゼイン製ペプトン,酵母
エキス,及びぶどう糖を加え,水浴上で加温して溶かす。必要ならば水酸化ナトリウム試液を加え,
滅菌後のpHが5.6〜5.8になるように調整する。必要ならば水で潤したろ紙を用いてろ過し,高圧
蒸気滅菌器を用いて121℃で20分間加熱して滅菌する。
6.2.3 判定 試料溶液を培養したものについて肉眼的に菌の発育を認めたときは,不適であると判定する。
ただし,判定が困難なときは,次の方法によって判定する。
(1) 培養したものの内容の一部をとり,直接又は染色して鏡検する。
(2) 培養したものの内容の一部を新たな同種の培地又は適当な培地に移植し,細菌試験にあっては30〜
32℃で少なくとも3日間,真菌試験にあっては20〜25℃で少なくとも7日間培養する。
7
K 0950-1988
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
原案調査作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
鈴 木 周 一
埼玉工業大学
(副委員長)
中 里 敏
工業技術院化学技術研究所
平 松 博 久
通商産業省基礎産業局
松 井 司
通商産業省基礎産業局
大久保 和 夫
工業技術院標準部
前 田 英 勝
工業技術院微生物工業技術研究所
山 内 愛 造
工業技術院繊維高分子材料研究所
鈴 木 正 信
通商産業省通商産業検査所
野 原 和 夫
財団法人発酵工業協会バイオインダストリー振興事業部
河 野 源
東レ株式会社基礎研究所
阿 部 英 郎
東洋エンジニアリング株式会社経営企画本部
佐 藤 利 男
ラジエ工業株式会社技術部
奈 島 伴 治
製鉄化学工業株式会社ガス事業部
加 藤 武 司
住友ベークライト株式会社医療機器研究所
亀 山 清
和光純薬工業株式会社東京工場
吉 川 弘
岩城硝子株式会社
高 瀬 一 栄
栄研器材株式会社十条工場
栗 原 力
財団法人化学品検査協会
(関係者)
滝 嶋 匡 次
工業技術院標準部繊維化学規格課
飯 嶋 啓 子
工業技術院標準部繊維化学規格課
小 島 益 生
財団法人化学品検査協会
化学分析部会バイオテクノロジー専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
鈴 木 周 一
埼玉工業大学
太 田 隆 久
東京大学
遠 藤 勲
理化学研究所
川 瀬 晃
工業技術院化学技術研究所
山 内 愛 造
工業技術院繊維高分子材料研究所
前 田 英 勝
工業技術院微生物工業技術研究所
岡 林 哲 夫
通商産業省基礎産業局
阿 部 英 郎
東洋エンジニアリング株式会社
冨 田 房 男
協和発酵工業株式会社
三 木 敬三郎
東亜燃料工業株式会社
池 永 裕
キリンビール株式会社
安 田 武 夫
ライフエンジニアリング株式会社
西 野 賢 貴
東レ株式会社
坂 田 衞
株式会社島津製作所
島 田 光太郎
合同酒精株式会社
仲 恭 寛
天野製薬株式会社
古 川 敬一郎
宝酒造株式会社
倉 林 肇
住友ベークライト株式会社
大 熊 道 雄
株式会社日立製作所
吉 崎 健 一
財団法人バイオインダストリー協会
桜 井 俊 彦
工業技術院標準部
(事務局)
和 田 靖 也
工業技術院標準部標準課
浦 野 四 郎
工業技術院標準部繊維化学規格課
飯 嶋 啓 子
工業技術院標準部繊維化学規格課