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K 0607 : 2000

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人バイオイ

ンダストリー協会 (JBA) /財団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改

正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格であ

る。これによって JIS K 0607 : 1993 は改正され,この規格に置き換えられる。


日本工業規格

JIS

 K

0607

 : 2000

グルコースオキシダーゼの定量方法

Proteins

−Glucoseoxydase−Methods for quantitative analysis

1.

適用範囲  この規格は,化学製品又は試薬としてのグルコースオキシダーゼの品質を決定するための

定量方法について規定する。

参考  国際生化学連合 (International Union of Biochemistry) 勧告のグルコースオキシダーゼの酵素番

号は,EC1.1.3.4 である。

2.

引用規格  付表 に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構

成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0211 及び JIS K 3600 による。

4.

共通事項  化学分析について共通する一般事項は,JIS K 0050 による。ただし,水は,JIS K 0557 

4.

(種別及び質)の A4 に規定する蒸留水とする。

5.

定量方法の種類  グルコースオキシダーゼの定量方法の種類は,一括定量法の吸光光度法(ローリー

法)

,分別定量法の高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法及び酵素活性法とする。

a)

吸光光度法(ローリー法)  たん白質と銅イオンの反応で生じたたん白質銅錯体,たん白質によって

還元されて生じたりんモリブデン青及びりんタングステン青の吸光度によって定量する。この方法は,

100

∼1 000mg/のたん白質を一括定量することができる。

備考  試料溶液中にエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム 2.5mmol/以上,メルカプトエタノ

ール 15mmol/以上,又はドデシル硫酸ナトリウム 0.5mol/以上をそれぞれ含むものは,定量で

きない。

b)

高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法  たん白質を高速液体クロマトグラフィーによって分画し,

220nm

付近の波長を用いて定量する。この方法は,含有成分を分子サイズによって分別し,10∼400mg/l

のグルコースオキシダーゼを定量することができる。

備考  試料溶液中にエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム 0.2mol/以上,メルカプトエタノー

ル 50mmol/以上,又はドデシル硫酸ナトリウム 3mmol/以上をそれぞれ含むものは,定量でき

ない。

c)

酵素活性法  定められた温度及び pH 条件の下で,グルコースオキシダーゼを基質に作用させ,反応

生成物質の吸光度を測定することによってグルコースオキシダーゼを定量する。この方法は,4∼

40mg/l

のグルコースオキシダーゼを定量することができる。

備考  酵素活性に影響を与える物質を含む場合は,定量できない。


2

K 0607 : 2000

6.

グルコースオキシダーゼ溶液  グルコースオキシダーゼ溶液は,次による。

6.1

分析用試料溶液  それぞれ定量方法の通用範囲内に入るよう試料グルコースオキシダーゼの濃度を

水で調整する。

6.2

検量線用原液  精製グルコースオキシダーゼを水に溶かして,濃度 1.0g/の溶液を調製する。使用

時に調製する。

7.

吸光光度法

7.1

試薬  試薬は,次による。

a)

アルカリ性硫酸銅酒石酸溶液  次に規定する A 液 50 容と B 液 1 容を混合したもの。使用時に調製す

る。

A

液  JIS K 8576 に規定する水酸化ナトリウム 0.43g,JIS K 8625 に規定する炭酸ナトリウム 2.0g を水

に溶かして,100ml としたもの。

B

液  JIS K 8983 に規定する硫酸銅 (II) 五水和物 0.5g を酒石酸カリウム溶液 (10g/l(

1

)

に溶かし,JIS K 

8574

に規定する水酸化カリウム溶液 (0.5mol/l)  で pH6.3 に調整して 100ml としたもの。

(

1

)  JIS K 8535

に規定する  (+)  −酒石酸カリウム−水 (2/1) 1g を水に溶かして100ml としたもの。

JIS K 8540

に規定する  (+)  −酒石酸ナトリウム二水和物1g を水に溶かして調製したものでも

よい。

b)

フェノール試薬  JIS K 8612 に規定するタングステン (VI) 酸ナトリウム二水和物 100g,JIS K 8906

に規定するモリブデン (VI) 酸ナトリウム 25g を共通すり合わせ丸底フラスコにとり,JIS K 9005 

規定するりん酸 50ml(約 0.7mol)

JIS K 8180 に規定する塩酸 100ml(約 1.2mol)及び水 700ml を加

えて,還流冷却下で 10 時間加熱する。これに,JIS K 8994 に規定する硫酸リチウム一水和物 150g,

水 50ml 及び JIS K 8529 に規定する臭素数滴を加え,15 分間煮沸して過剰の臭素を除き,水を加えて

1 000ml

としたもの。褐色瓶に保存する。フェノールフタレインを指示薬とし,0.1mol/水酸化ナトリ

ウム溶液で滴定を行い,酸濃度が 1mol/になるように水で調整する(

2

)

(

2

)

約1.9∼2倍の希釈になる。フェノール試薬は,市販品を用いてもよい。

c)

グルコースオキシダーゼ溶液  6.による。

7.2

装置及び器具  装置及び器具は,次による。

a)

分光光度計

b)

マイクロピペット  JIS K 0970 に規定するもの,又はそれと同等以上の性能のもの。

7.3

操作  操作は,次による。

a)

分析用試料溶液 0.2ml を試験管にとり,アルカリ性硫酸銅酒石酸溶液 4.0ml を加えて,10 分間放置す

る。

b)

フェノール試薬 0.4ml を加え,よく振り混ぜて,30 分間放置する。

c)

試料を 10mm 吸収セルに移し,液長 750nm でその吸光度を測定する。

d)  a)

で分析用試料溶液の代わりに水を用い,a)及び b)の操作を行ったものを対照液とする。

e)

f)

によって作成した検量線からグルコースオキシダーゼの量を求める。

f)

検量線の作成  検量線用原液を用い 0∼1 000mg/の範囲で段階的濃度(

3

)

の検量線用溶液を調製して,

これから 0.1ml をとり,a)及び b)と同様に操作し,グルコースオキシダーゼ量と吸光度との関係線を

作成する。

(

3

)  5

段階程度が一般的に用いられる。


3

K 0607 : 2000

備考  操作は,室温で行う。

7.4

計算  試料中のグルコースオキシダーゼの純度は,次の式によって算出する。

100

10

3

×

×

×

=

m

D

m

A

i

ここに,

A

:  試料中のグルコースオキシダーゼの純度 (%)

m

:  試料の質量 (g)

D

:  試料の希釈倍率

m

i

:  検量線から読み取った質量 (mg)

8.

高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法

8.1

試薬  試薬は,次による。

a)

溶離液  紫外線吸収,溶離方式などを考慮し,カラムを腐食しないような緩衝液を使用する。

b)

グルコースオキシダーゼ溶液  6.による。

8.2

装置及び器具  装置及び器具は,次による。

a)

高速液体クロマトグラフ

1)

検出器  紫外分光光度計

2)

カラム用管  ステンレス鋼製,ガラス製など

3)

カラム充てん剤  サイズ排除クロマトグラフィー用多孔性親水性ゲル

b)

マイクロシリンジ  容量 25∼100

µl

8.3

操作  操作は,次による。

a)

分析条件の設定  装置について最適条件を設定する。

次に,その一例を示す。

1)

カラム充てん剤  排除限界が分子量 5×10

5

程度の多孔性親水性シリカゲル

2)

カラム用管  内径 7.8mm,長さ 30cm,ステンレス鋼製

3)

カラム槽温度  室温

4)

溶離液  JIS K 8986 に規定する硫酸ナトリウム十水和物 48.3g,JIS K 9009 に規定するりん酸二水素

ナトリウム二水和物 7.8g を水約 800ml に溶かし,水酸化ナトリウム溶液 (0.1mol/l)  で pH7.0 に調整

し,水を加えて 1 000ml とする。

5)

流量  1.0ml/min

6)

試料液量  10

µl

7)

検出波長  220nm

b)

一定量の分析用試料溶液をマイクロシリンジを用いて注入し,クロマトグラムを得る。a)に示した分

析条件例によるクロマトグラムの一例を

図 に示す。


4

K 0607 : 2000

図 1  クロマトグラムの一例

c)

クロマトグラムからピーク面積に相当する値を求める。ピーク面積の測定は,JIS K 0124 の 9.3(ピー

ク面積)による。

d)

  f)

で作成した検量線からグルコースオキシダーゼの量を求める。

e)

JIS K 0124

の 9.4(絶対検量線法)によって定量する。

f)

検量線の作成  検量線用原液を用い,0∼400mg/の範囲で段階的濃度の検量線用溶液を調製して,b)

及び c)の操作に従い,グルコースオキシダーゼ量とピーク面積との関係線を作成する。

8.4

計算  試料中のグルコースオキシダーゼの純度は,次の式によって算出する。

100

10

3

×

×

×

=

m

D

m

A

i

ここに,

A

:  試料中のグルコースオキシダーゼの純度 (%)

m

:  試料の質量 (g)

D

:  試料の希釈倍率

m

i

:  検量線から読み取った質量 (mg)

9.

酵素活性法

9.1

試薬  試薬は,次による。

a)

メトキシフェノール含有りん酸緩衝液 (0.1mol/l, pH7.0)   JIS K 9020 に規定するりん酸水素二ナト

リウム 14.20g を水に溶かして 1 000ml としたものと,JIS K 9007 に規定するりん酸二水素カリウム

13.07g

を水に溶かして 1 000ml としたものとを混合し,pH7.0 に調整する。これに o−メトキシフェノ

ールを 43mg/含むように溶かして,5 分間のエアレーションによって空気を飽和させたもの。

b)

基質溶液  D (+)  −グルコース  (純度 99.5%以上) 18.0g を水に溶かして 100ml としたもの。


5

K 0607 : 2000

c)

ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 溶 液   ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ  (100U≒ 1.7

µkat) 10.0mg を硫酸アンモニウム溶液

(2.4mol/l)

に溶かして 10ml としたもの。使用時調製する。

備考  国際生化学連合勧告のペルオキシダーゼの酵素番号は,EC1.11.1.7 である。

9.2

装置及び器具  装置及び器具は,次による。

a)

分光光度計

b)

恒温槽  25±0.5℃に保持できるもの。

9.3

操作  操作は,次による。

a)

基質溶液 0.5ml と o−メトキシフェノール含有りん酸緩衝液 2.5ml をとり,25±0.5℃に保った恒温槽

に 5 分間放置する。

b)

分析用試料溶液(グルコースオキシダーゼ 4∼40mg/を含む。

)20

µl,ペルオキシダーゼ溶液 10µl を

加え 5 分間放置する。

c)

吸収セル 10mm に移し,グルコースオキシダーゼを加えないで同一の操作を行った試料液を対照とし

て,波長 436nm でその吸光度を測定する。

d)

  e)

によって作成した検量線からグルコースオキシダーゼの量を求める。

e)

検量線の作成  検量線用原液を用い,0∼40mg/の範囲で段階的濃度の検量線用溶液を調製し,これ

から 20

µl をとり,a)b)c)と同様に操作し,グルコースオキシダーゼ量と吸光度との関係線を作成

する。

9.4

計算  試料中のグルコースオキシダーゼの純度は,次の式によって算出する。

100

10

3

×

×

×

=

m

D

m

A

i

ここに,

A

:  試料中のグルコースオキシダーゼの純度 (%)

m

:  試料の質量 (g)

D

:  試料の希釈倍率

m

i

:  検量線から読み取った質量 (mg)

10.

定量結果の表示

10.1

表示項目  表示項目は,次による。

a)

試料名及び試料起源

b)

定量方法の種類

c)

定量値 (%)

10.2

定量値の取扱い  同一試料溶液について 2 回行い,その測定値の平均値を求める。


6

K 0607 : 2000

付表 1  引用規格

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0557

  用水・排水の試験に用いる水

JIS K 0124

  高速液体クロマトグラフ分析通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0970

  プッシュボタン式液体用微量体積計

JIS K 3600

  バイオテクノロジー用語

JIS K 8180

  塩酸(試薬)

JIS K 8529

  臭素(試薬)

JIS K 8535

  (+)  −酒石酸カリウム−水 (2/1) (試薬)

JIS K 8540

  (+)  −酒石酸ナトリウム二水和物(試薬)

JIS K 8574

  水酸化カリウム(試薬)

JIS K 8576

  水酸化ナトリウム(試薬)

JIS K 8612

  タングステン (VI) 酸ナトリウム二水和物(試薬)

JIS K 8625

  炭酸ナトリウム(試薬)

JIS K 8906

  モリブデン (VI) 酸二ナトリウム二水和物(試薬)

JIS K 8983

  硫酸銅 (II) 五水和物(試薬)

JIS K 8986

  硫酸ナトリウム十水和物(試薬)

JIS K 8994

  硫酸リチウム一水和物(試薬)

JIS K 9005

  りん酸(試薬)

JIS K 9007

  りん酸二水素カリウム(試薬)

JIS K 9009

  りん酸二水素ナトリウム二水和物(試薬)

JIS K 9020

  りん酸水素二ナトリウム(試薬)

JIS K 0607

(グルコースオキシダーゼの定量方法)改正原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

奥  山  典  生

東京都立大学(名誉教授)

(委員)

石  関  忠  一

横浜国立大学(客員教授)

池  本  卯  典

日本獣医畜産大学学長

室  塚  剛  志

日本赤十字社血漿分画センター

鈴  木  正  信

和光純薬工業株式会社品質・環境管理部

田  中  重  則

生化学工業株式会社機能化学品事業部

吉  田  基  子

プロテインテクノスインステイチュート技術部

橋  本      進

財団法人日本規格協会技術部

松  本  保  輔

財団法人化学物質評価研究機構化学標準部

大  歳      明

三光純薬株式会社営業企画二部

立  花  浩  司

シグマアルドリッチジャパン株式会社試薬事業部

田  中  公  和

ナカライテスク株式会社京都工場第二製造部

松  本  一  彦

日本たばこ産業株式会社安全性研究所

(関係者)

川  端  尚  志

通商産業省生物化学産業課

(事務局)

奥  泉  仁  一

財団法人バイオインダストリー協会

青  木  由  佳

財団法人バイオインダストリー協会

大  内  史  子

財団法人バイオインダストリー協会

(文責  大歳  明)