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K 0604 : 2000

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人  バイオイ

ンダストリー協会 (JBA) /財団法人  日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改

正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日本工業規格であ

る。これによって,JIS K 0604 : 1992 は改正され,この規格に置き換えられる。


日本工業規格

JIS

 K

0604

 : 2000

モノクローナル IgG の定量方法

Proteins

−Monoclonal IgG−Methods for quantitative analysis

1.

適用範囲  この規格は,化学製品又は試薬としてのモノクローナル免疫グロブリン(モノクローナル

IgG

)の品質を決定するための定量方法について規定する。

2.

引用規格  付表 に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構

成する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

3.

定義  この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0211 及び JIS K 3600 による。

4.

共通事項  化学分析について共通する一般事項は,JIS K 0050 による。ただし,水は,JIS K 0557 

4.

(種別及び質)の A4 に規定する蒸留水とする。

5.

定量方法の種類  モノクローナル IgG の定量方法の種類は,電気泳動−染色デンシトメトリー法及び

高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法とする。

a)

電気泳動−染色デンシトメトリー法  たん白質を電気泳動によって分画して染色し,その光学濃度に

よって定量する。

1)

酢酸セルロース膜電気泳動  この方法は,10∼100mg/のモノクローナル IgG を不純物から分離定

量することができる。

備考  試料液中にエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム 50mmol/以上,メルプトエタノール

0.5mol/l

以上,又はドデシル硫酸ナトリウム 4mmol/以上をそれぞれ含むものは定量できない。

2)

SDS

−ポリアクリルアミドゲル電気泳動  この方法は,10∼100mg/のモノクローナル IgG を不純物

から分離定量することができる。

b)

高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法  たん白質を高速液体クロマトグラフ法によって分画し,

220nm

付近の波長を用いて定量する。この方法は,含有成分を分子サイズによって分別し,10∼100mg/l

のモノクローナル IgG を定量することができる。

備考  試料液中にエチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム 0.2mol/以上,メルカプトエタノール

50mmol/l

以上,又はドデシル硫酸ナトリウム 3mmol/以上をそれぞれ含むものは定量できない。

6.

モノクローナル IgG 溶液  モノクローナル IgG 溶液は,次による。ただし,SDS−ポリアクリルアミ

ドゲル電気泳動用のものは JIS K 3838 の 5.5.3 (2)(泳動用試料溶液及び泳動用標準たん白質溶液の調製)

によって調製する。


2

K 0604 : 2000

6.1

分析用試料溶液  それぞれの定量方法の定量範囲内に入るよう試料モノクローナル IgG の濃度を水

で調整する。

6.2

検量線用原液  精製モノクローナル IgG(

1

)

を水に溶かして濃度 100mg/の溶液を調製する。使用時に

調製する。

(

1

)

モノクローナル IgG 溶液から,山河らの分画法によって得られた画分を更にクロマトグラフな

どによって精製処理をしたもの。

7.

電気泳動−染色デンシトメトリー法

7.1

酢酸セルロース膜電気泳動

7.1.1

試薬  試薬は,次による。

a)

ベロナール緩衝液  5, 5−ジエチルバルビツール酸(

2

)2.2g

,5, 5−ジエチルバルビツール酸ナトリウム

(

3

)12.4g

に水約 800ml を加え,80∼90℃の水溶中で溶かし,放冷後,JIS K 8180 に規定する塩酸

(0.1mol/l)

で pH8.6 に調整し,水を加えて 1 000ml としたもの(

4

)

(

2

)  5

,5−ジエチル−2,4,6 (1H, 3H, 5H)  −ピリミジントリオン

(

3

)  5

,5−ジエチル-−2,4,6 (1H, 3H, 5H)  −ピリミジントリオンナトリウム

(

4

)

ベロナール緩衝液は市販品を用いてもよい。

b)

トリクロロ酢酸溶液  JIS K 8667 に規定するトリクロロ酢酸 7g を水に溶かして 100ml としたもの。

c)

エタノール  JIS K 8101 に規定するもの。

d)

ジエチルエーテル  JIS K 8103 に規定するもの。

e)

エタノール・ジエチルエーテル混合液  c)のエタノール 1 容と d)のジエチルエーテル 1 容とを混合し

たもの。

f)

金コロイド染色液  金コロイド染色液の金コロイドの平均粒径は 10∼30nm とする。

g)

透明化液  デカヒドロナフタレン(デカリン)を用いる。

h)

モノクローナル IgG 溶液  6.による。

i)

電気泳動用酢酸セルロース膜  長さ 5∼6cm,幅 22∼36cm のもの。

7.1.2

装置及び器具  装置及び器具は,次による。

a)

電気泳動装置  電気泳動装置の構成は,次による。

1)

定電流装置  30mA,200V 程度の出力をもつもの。

2)

泳動槽  空間 1 000cm

3

につき緩衝液面の総面積が膜面積も含めて 200cm

2

以上で,ふた付のもの。

b)

検出予備操作部(

5

)

1)

染色槽  ふた付のもの。

2)

洗浄槽  ふた付のもの 5 個。

3)

透明化液槽  ふた付のもの。

(

5

)

電気泳動装置に附属するものもある。

c)

デンシトメータ(

5

)

  波長 535nm 付近で測定でき,定量範囲内で光学的直線性のあるもの。

d)

針付マイクロピペット又はマイクロシリンジ  JIS K 0970 に定めるものなど。

e)

ろ紙  JIS P 3801 の 2 種,角形ろ紙(大判)のもの。

f)

スライドグラス

g)

ピンセット

7.1.3

操作  操作は,次による。


3

K 0604 : 2000

a)

電気泳動用酢酸セルロース膜(以下,膜という。

)をベロナール緩衝液に浮かせ,膜の片面から液を均

一に浸み込ませるようにして膜を液中に沈める。膜の取扱いにはピンセットを使用する。次の操作も

同様とする。

約 30 秒間放置後,

膜を引き上げ,

ろ紙の間に膜を挟んで軽く押さえ余分な緩衝液を除き,

泳動槽の支持板の上に気泡が入らないように固定する(

6

)

(

6

)

試料を泳動させる膜の上下に1cm ほどの補助膜を置くと泳動像がひずむのを防ぐことができる。

b)

検量線原液を用い 0∼100mg/の範囲で段階的濃度(

7

)

の検量線溶液を調製し,マイクロピペット又はマ

イクロシリンジを用い,膜の所定の塗布位置(

8

)

にそれぞれ 1

µl を塗る。同様に分析用試料溶液 1µl を

とり同様に塗る。

(

7

)  5

段階程度が一般的に用いられる。

(

8

)

塗布位置及び泳動条件は,使用器材などの状況によって異なるので,膜の製造業者の指定によ

る。

c)

泳動槽のふたをして,膜幅 1cm 当たり約 1mA の定電流で約 45 分間 20℃付近で電気泳動を行う(

8

)

d)

膜をトリクロロ酢酸溶液に 3 分間浸した後,エタノール,エタノール・ジエチルエーテル混合液,ジ

エチルエーテルの順に 30 秒ずつ洗浄し,ろ紙に挟んで乾燥する。

e)

膜を金コロイド染色液に浸し,25℃で 4 時間染色する。

f)

染色した膜を水中で軽く振とうして洗浄する。

g)

洗浄した膜をろ紙に挟んで乾かした後(

9

)

透明化液に浸して透明化し,スライドグラスに挟んで波長

535nm

でデンシトメータによって測定する。

(

9

)

温風乾燥機(約50℃)で約30分間乾燥する。室温で乾燥してもよい。

h)  a)

g)の操作を行って得られた検量線用溶液の個々のスポット測定値とモノクローナル IgG 濃度との

関係線を作成し検量線とする。

7.1.4

計算  試料中のモノクローナル IgG の純度は,次の式によって算出する。

100

10

3

×

×

×

=

m

D

m

A

i

ここに,

A

試料中のモノクローナルの純度

 (%)

m

試料の質量

 (g)

D

試料の希釈倍率

m

i

検量線から読み取った質量

 (mg)

7.2

SDS

−ポリアクリルアミドゲル電気泳動

7.2.1

試薬  JIS K 3838 の 5.3(試薬)及び 5.4(試薬溶液の調製)による。

7.2.2

装置及び器具  JIS K 3838 の 4.(電気泳動装置)による。

7.2.3

操作  JIS K 3838 の 5.5(操作方法)及び 7.(定量分析)による。

8.

高速液体クロマトグラフ−紫外吸光検出法

8.1

試薬  試薬は,次による。

a)

溶離液  紫外線吸収,溶離方式などを考慮し,カラムを腐食しないような緩衝液を使用する。

b)

モノクローナル IgG 溶液  6.による。

8.2

装置及び器具  装置及び器具は,次による。

a)

高速液体クロマトグラフ

1)

検出器  紫外分光光度計


4

K 0604 : 2000

2)

カラム用管  ステンレス鋼製,ガラス製など

3)

カラム充てん剤  ゲルろ過クロマトグラフ用多孔性親水性ゲル

b)

マイクロシリンジ  容量

25

µl

又は

50

µl

8.3

操作  操作は,次による。

a)

装置について最適条件を設定する。

次に,その一例を示す。

1)

カラム充てん剤  排除限界が分子量

5

×

10

5

程度の多孔性親水性シリカゲル

2)

カラム用管  内径

7.8mm

,長さ

30cm

,ステンレス鋼製

3)

カラム槽温度  室温

4)

溶離液  JIS K 8986 に規定する硫酸ナトリウム

48.3g

JIS K 9009 に規定するりん酸二水素ナトリウ

ム二水和物

7.8g

を約

800ml

に溶かし,水酸化ナトリウム溶液

 (0.1mol/l)

pH7.0

に調整し,水を加

えて

1l

とする。

5)

流量

1.0ml/min

6)

試料液量

10

µl

7)

検出波長

220nm

b)

一定量の分析用試料溶液をマイクロシリンジで注入し,クロマトグラムを得る。

a)

に示した分析条件例によるクロマトグラムを

図 に示す。

図 1  クロマトグラムの一例

c)

クロマトグラムからピーク面積に相当する値を求める。ピーク面積の測定は,JIS K 0124 の 9.3(ピー

ク面積)による。

d)

f)

で作成した検量線からモノクローナル

IgG

の量を求める。


5

K 0604 : 2000

e)

JIS K 0124

の 9.4(絶対検量線法)によって定量する。

f)

検量線原液を用い,

10

100mg/l

の範囲で段階的濃度(

6

)

の検量線溶液を調製して,b)及び c)の操作に従

いモノクローナル

IgG

量とピーク面積との関係線を作成する。

8.4

計算  試料中のモノクローナル

IgG

の純度は,次の式によって算出する。

100

10

3

×

×

×

=

m

D

m

A

i

ここに,

A

試料中のモノクローナル

IgG

の純度

 (%)

m

試料の質量

 (g)

D

試料の希釈倍率

m

i

検量線から読み取った質量

 (mg)

9.

定量結果の表示

9.1

表示項目  表示項目は,次による。

a)

試料名及び試料起源

b)

使用した検量線用原液

c)

定量方法の種類

d)

定量値

 (%)

9.2

定量値の取扱い  同一試料溶液について

2

回行い,その測定値の平均値を求める。

付表 1  引用規格

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0124

  高速液体クロマトグラフ分析通則

JIS K 0211

  分析化学用語(基礎部門)

JIS K 0557

  用水・排水の試験に用いる水

JIS K 0970

  プッシュボタン式液体用微量体積計

JIS K 3600

  バイオテクノロジー用語

JIS K 3838

SDS

−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析通則

JIS K 8101

  エタノール

 (99.5)

(試薬)

JIS K 8103

  ジエチルエーテル(試薬)

JIS K 8180

  塩酸(試薬)

JIS K 8667

  トリクロロ酢酸(試薬)

JIS K 8986

  硫酸ナトリウム+水和物(試薬)

JIS K 9009

  りん酸二水素ナトリウム二水和物(試薬)

JIS P 3801

  ろ紙(化学分析用)

関連規格

JIS K 3837

  酢酸セルロース膜自動電気泳動装置


6

K 0604 : 2000

JIS K 0604

(モノクローナル

IgG

の定量方法)改正原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

奥  山  典  生

東京都立大学(名誉教授)

(委員)

石  関  忠  一

横浜国立大学(客員教授)

池  本  卯  典

日本獣医畜産大学学長

室  塚  剛  志

日本赤十字社血漿分画センター

鈴  木  正  信

和光純薬工業株式会社品質・環境管理部

田  中  重  則

生化学工業株式会社機能化学品事業部

吉  田  基  子

プロテインテクノスインステイチュート技術部

橋  本      進

財団法人日本規格協会技術部

松  本  保  輔

財団法人化学物質評価研究機構化学標準部

大  歳      明

三光純薬株式会社営業企画二部

立  花  浩  司

シグマアルドリッチジャパン株式会社試薬事業部

田  中  公  和

ナカライテスク株式会社京都工場第二製造部

松  本  一  彦

日本たばこ産業株式会社安全性研究所

(関係者)

川  端  尚  志

通商産業省生物化学産業課

(事務局)

奥  泉  仁  一

財団法人バイオインダストリー協会

青  木  由  佳

財団法人バイオインダストリー協会

大  内  史  子

財団法人バイオインダストリー協会

(文責  田中  公和)