2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0552-1994
超純水の電気伝導率試験方法
Testing methods for electric conductivity in highly purified water
1. 適用範囲 この規格は,超純水の電気伝導率の試験方法について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,付表1に示す。
2. 従来,水の試験では,電気伝導度及び電気伝導率の単位としてそれぞれμS及びμS/cm,また,
セル定数の単位としてcm-1が用いられていた。
電気伝導率としては,μS/mの単位で表した数値を0.01倍するとμS/cmの単位で表した数
値となる。
また,セル定数としては,m-1の単位で表した数値を0.01倍するとcm-1の単位で表した数
値となる。
3. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるもので,参考と
して併記したものである。
2. 共通事項 共通事項は,JIS K 0050及びJIS K 0101による。
なお,注,備考及び表は各項目ごとに一連番号を付ける。
備考 超純水の電気伝導率の測定では,試料の採取及び試験の操作の過程で,試料の電気伝導率を変
化させないように注意をすることが重要である。そのためには,試料採取に使用する導管や配
管の材質,試料容器及び電気伝導率計の検出器などの材質,形状,洗浄方法にも留意して,試
料への不純物の溶出をできるだけ少なくすること及び試料と大気の接触を避けることが必要で
ある。
3. 試料採取 試料採取方法は,次による。
(1) 試料を装置や配管から直接採取して測定する場合は,十分に試料を流して試料導管及び配管内をよく
洗浄し,流量と温度を調節して直接流液形検出器に導入する。
(2) 配管挿入形検出器を使用する場合は,配管に取付け口を設け,直接配管内の試料中に検出器を挿入す
る。
(3) 試料を容器(1)から採取する場合は,窒素(2)を用いて空気を遮断し,十分に洗浄された試料流路を用い,
流量と温度を調節して流液形検出器に導入する。
注(1) 試料容器は,硬質ガラス,ポリエチレンなどの不純物の溶出や吸着の少ない材質のもので,上
部に窒素導入管(活栓付き)をもち,下部に試料採取管(活栓付き)をもつものを用いるとよ
い。試料容器の洗浄方法及び容器への試料採取は,それぞれJIS K 0557に規定する5.1.2(2)(試
料容器の洗浄方法)及び(3)(試料採取)による。
(2) 窒素は,JIS K 1107に規定する高純度窒素2級又は同等以上の品質をもつものとする。
2
K 0552-1994
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4. 試験方法 試験方法は,次による。
4.1
連続測定法 この方法は試料を流液形検出器に連続的に導入するか,又は試料が流れる配管中に配
管挿入形検出器を直接取り付けて連続測定する場合に適用できる。
測定範囲:5〜1 000μS/m {0.05〜10μS/cm} (25℃)
(1) 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。
(a) 電気伝導率計(1) 電気伝導率5〜1 000μS/m {0.05〜10μS/cm} (25℃) を測定できるものであって,温
度変化に対する電解質の電気伝導率の変化及び水の解離の変化による電気伝導率の変化を同時に補
償(以下,この補償を二重温度補償という。)する機能をもち,セル定数が0.8〜12m-1 {0.008〜
0.12cm-1} の範囲にある流液形検出器又は配管挿入形検出器を使用できるもの。
(b) 温度計 JIS C 1604のB級又はJIS C 1611の1.0級に相当する温度検出素子を用いたもので,試料
の温度を25±1℃で測定できるもの。
(c) 熱交換器又は恒温槽 試料を,25±3℃に調節できるもの。
(d) 試料導管又は配管 ステンレス鋼管,硬質ガラス管又はポリエチレン管などの不純物の溶出や吸着
の少ない材質のもので,あらかじめ試料又は試料より電気伝導率の低い水で十分に洗っておく。
注(1) 電気伝導度計を用いるときは,セル定数補正の目盛合わせを除いた4.1の(2.1)(a)〜(d)又は(2.2)(a)
〜(c)の操作を行い,次の式によって電気伝導率を算出する。
L=J×Lx
ここに,
L: 試料の電気伝導率 (μS/m) (25℃)
J: セル定数 (m-1)
Lx: 測定した電気伝導度 (μS) (25℃)
(2) 操作 操作は,次のとおり行う。
(2.1) 流液形検出器を用いる場合
(a) 流液形検出器に,試料を導入する試料導管又は配管を取り付ける。試料温度を25±3℃に保持でき
るように,熱交換器又は恒温槽を設け,流液形検出器内又はその近傍の試料中に温度計の温度検出
素子を取り付ける。
(b) 電気伝導率計に流液形検出器を接続し,電気伝導率計のセル定数目盛を使用する流液形検出器のセ
ル定数に合わせる。
(c) 試料又は試料より電気伝導率の低い水を流し,熱交換器又は恒温槽から温度計の温度検出器を経て
流液形検出器までの試料流路を洗浄する。
(d) 25±3℃(2)(3)(4)に調節した試料を,流液形検出器に連続的に導入して(5),指示値が安定した後,指示
値を読み取る。
注(2) 一般に電解質による電気伝導率は液温1℃の上昇に対し約2%増加する。
試料の電気伝導率が100μS/m {1μS/cm} (25℃) 以下になると,水の解離による影響が大きく,
液温1℃の上昇に対する試料の電気伝導率は,電解質の減少に伴って約2%から約5%へ連続的
に増加する。
(3) 温度補償機構を備えた電気伝導率計でも,電解質溶液の電気伝導率の温度による変化に対して
だけ補償する形式のものでは,水の解離による影響を補償できないから,試料温度を25±0.5℃
に保持する必要がある。
(4) 電解質溶液の電気伝導率の温度による変化に対してだけ補償する形式の電気伝導率計を用いる
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K 0552-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
場合には,温度計はJIS C 1604に規定する測温抵抗体のA級又はJIS C 1611に規定するサーミ
スタ測温体の0.3級に相当する温度検出素子を用いたもので試料温度を25±0.3℃で測定できる
もの,熱交換器又は恒温槽は試料温度を25±0.5℃に調節できるものを使用する。
(5) 流液形検出器又は配管挿入形検出器の内部で気泡が発生すると測定に誤差を与える。これを防
ぐために,流液形検出器又は配管挿入形検出器の下流の流路に弁を設け,これを調節して流液
形検出器又は配管挿入形検出器の内部を加圧状態に保つとよい。
(2.2) 配管挿入形検出器を使用する場合
(a) 試料が常に配管挿入形検出器内を流れるように,配管挿入形検出器を試料の流れている配管に取り
付ける。
(b) 電気伝導率計に配管挿入形検出器を接続し,電気伝導率計のセル定数目盛を使用する配管挿入形検
出器のセル定数に合わせる。
(c) 試料の温度を25±3℃(2)(3)(4)に調節し指示値が安定した後,指示値を読み取る。
備考 セル定数の確認方法 セル定数の確認は,流液形検出器又は配管挿入形検出器を洗浄した後,
セル定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器と比較して行う。
(1) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) セル定数を確認したい流液形検出器又は配管挿入形検出器及びそれと同一形式のセル定数
既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器を用意する。
(b) 電気伝導率計のセル定数調節器をセル定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器のセ
ル定数に合わせる。
(c) 一定温度に調節した電気伝導率が1 000μS/m {10μS/cm} (25℃) 以下の溶液について,セル
定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器を用いて測定し,次に,セル定数を確認し
たい流液形検出器又は配管挿入形検出器につなぎかえて,指示値を測定する。
(d) (c)の操作を繰り返して3回測定し,それぞれの平均値を求める。
(e) 次の式から,セル定数を確認したい流液形検出器又は配管挿入形検出器のセル定数を算出
する。
c
s
s
L
L
J
J
×
=
ここに,
J: セル定数を確認したい流液形検出器又は配管挿入形検出器のセ
ル定数 (m-1)
Js: セル定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器のセル定数
(m-1)
Lc: セル定数を確認したい流液形検出器又は配管挿入形検出器によ
る指示値の平均値 (μS/m)
Ls: セル定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器による指示
値の平均値 (μS/m)
参考 セル定数既知の流液形検出器又は配管挿入形検出器がない場合のセル定数の確認方法 セル定
数の確認は,流液形検出器又は配管挿入形検出器を洗浄した後,塩化カリウム標準液 (E) を用
いてその数値を確かめる。セル定数の確認は次による。
(1) 試薬 試薬は,次のものを用いる。
(a) 塩化カリウム標準液 (C) JIS K 0101の12.(電気伝導率)(2)備考2.(1)(d)による。
(b) 塩化カリウム標準液 (E) 塩化カリウム標準液 (C) 10mlを全量フラスコ1 000mlにとり,
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20℃に調節したJIS K 0557に規定するA2又はA3の水(*)を標線まで加える。これらの塩
化カリウム標準液は,ポリエチレン瓶又は硬質ガラス瓶に密栓をして保存する。
塩化カリウム標準液 (E) の電気伝導率を参考表1に示す。
参考表1 塩化カリウム標準液 (E) の電気伝導率
塩化カリウム標準液
℃
μS/m
{μS/cm}
E
25
1490
14.9
注(*) 調製に用いる水は,あらかじめ部屋の空気を吹き込み,又はかき混ぜ,電気伝導率を
安定させるとよい。ただし,電気伝導率が200μS/m {2μS/cm} 以下のもの。
(2) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) セル定数を確認しようとする場合には,セルを水で2,3回洗い,次に,塩化カリウム標準
液 (E) で2,3回洗った後,その液を満たす。このセルを25±0.5℃に保ち,電気伝導度を
測定する。塩化カリウム標準液 (E) を数回入れ替えて測定を行い,測定値が±3%で一致
するまで繰り返す。
(b) 測定された値から次の式によってセル定数を算出する。
XO
O
H
L
L
490
1
J
2
+
=
ここに,
J: セル定数 (m-1)
LH2o: 塩化カリウム標準液 (E) の調製に用いた水(*)の電気伝導率
(μS/m) (25℃)
Lx0: 測定した電気伝導度 (μS)
4.2
間欠測定法 この方法は,連続測定法が適用できない試料容器などに採取された試料を試験する場
合に適用できる。
測定範囲:5〜1 000μS/m {0.05〜10μS/cm} (25℃)
(1) 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。
(a) 電気伝導率計(1) 電気伝導率5〜1 000μS/m {0.05〜10μS/cm} (25℃) を測定できるものであって二
重温度補償をする機能をもち,セル定数0.8〜12m-1 {0.008〜0.12cm-1} の範囲にある流液形検出器を
使用できるもの。
(b) 温度計 4.1(1)(b)による。
(c) 熱交換器又は恒温槽 4.1(1)(c)による。
(d) 導管又は配管 4.1(1)(d)による。
(2) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 4.1(2.1)の(a)及び(b)の操作を行う。
(b) 4.1(2.1)の(c)の操作を行う。
(c) 試料の温度を25±3℃に調節し(2)(3)(4),流液形検出器に試料を導入する(6)。次に,試料の導入を止
め指示値を読み取る。
(d) 指示値が変化するときは(b)及び(c)の操作を繰り返し,指示値が安定した後に指示値を読み取る。
(e) 再び,(c)及び(d)の操作を行い,測定値が±3%で一致するまで測定し,試料の電気伝導率を求める。
注(6) 流液形検出器の内部での気泡の発生を防ぐために,流液形検出器の下流の流路に弁を設け,こ
れを閉じて流液形検出器の内部を加圧状態にして試料の導入を停止するとよい。
5. 結果の表示 次の項目を表示することとする。
5
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(1) 試験値
(2) 試験方法の種類
(3) 試験日時
付表1 引用規格
JIS C 1604 測温抵抗体
JIS C 1611 サーミスタ測温体
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0101 工業用水試験方法
JIS K 0557 化学分析用の水
JIS K 1107 高純度窒素
JIS K 0094(工業用水・工場排水試料採取方法)及びJIS K 0550(超純水中の細菌数試験方法)ほか2件
の改正原案作成調査委員会 構成表
小委員会
氏名
所属
A B C
委員長 ◎
並 木 博
横浜国立大学教育学部
○ ○ ○ 倉 剛 進*
工業技術院標準部繊維化学規格課
加 藤 裕 之
通商産業省立地公害局産業施設課
○
鈴 木 繁
環境庁水質保全局水質規制課
○
田 中 宏 明
建設省土木研究所水道部
○
伊 藤 裕 康
国立環境研究所化学環境部
○
渡 部 欣 愛
国立環境研究所環境研修センター
◎ 番 匠 賢 治
工業技術院資源環境技術総合研究所
○ 田 村 誠 也
工業技術院計量研究所
○
石 関 忠 一
横浜国立大学工学部
○
小 倉 光 夫
神奈川県環境科学センター
○ 米 倉 茂 男
東京都鍍金工業組合
○ ◎ ○ 坂 本 勉
財団法人日本規格協会
加 山 英 男**
財団法人日本規格協会
○
浅 田 正 三
財団法人機械電子検査検定協会
○
○ 梅 崎 芳 美
社団法人産業公害防止協会
○ 森 田 羊 造
日本分析機器工業会[株式会社島津製作所工業計測事業部]
○ 池 田 久 幸
日本分析機器工業会(横河アナリテカルシステム株式会社技術
生産本部)
○ 田 口 富 男
日本分析機器工業会(東亜電波工業株式会社科学計測技術部)
○
相 澤 睦 夫
日本分析機器工業会(東亜電波工業株式会社計装技術部)
○ 狩 野 久 直
日本錬水株式会社研究所
○
松 崎 晴 美
株式会社日立製作所日立研究所
○
中 村 忠
オルガノ株式会社研究開発本部
○ 三 輪 良 平
栗田工業株式会社研究開発本部
岩 崎 岩 次
社団法人日本工業用水協会
関係者
山 岸 幸 子
オルガノ株式会社研究開発本部
本 多 理江子
オルガノ株式会社研究開発本部
芳 賀 良 一
株式会社日立製作所日立研究所
参考人
岩 田 照 史
トキコ株式会社研究所
讃 井 洋 一
トキコ株式会社マーケティング
Jack Y. Yamamori
Anatel Corporation President and CED
Paul Melanson
Anatel Corporation Director of Research and Development
三 浦 正 美
伯東株式会社半導体装置事業部
6
K 0552-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
事務局
佐 宗 正 雄
社団法人日本工業用水協会
飛 渡 祥 弘
社団法人日本工業用水協会
本 郷 秀 昭
社団法人日本工業用水協会
注
◎:各小委員会委員長, ○:小委員会委員
A:JIS K 0094(工業用水・工場排水の試料採取方法)小委員会
B:JIS K 0550(超純水中の細菌数試験方法)小委員会
C:JIS K 0551[超純水中の有機体炭素 (TOC) 試験方法]及びJIS K 0552(超純水の電気伝導率
試験方法)小委員会
*:発足当初は地崎 修(現在は倉 剛進)
**:発足当初は黒木 勝也(現在は加山 英男)
文責:田村 誠也