2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0551-1994
超純水中の有機体炭素 (TOC) 試験方法
Testing methods for total organic carbon in
highly purified water
1. 適用範囲 この規格は,超純水中の有機体炭素 (TOC) (以下,TOCという。)の試験方法について規
定する。
備考 この規格の引用規格を,付表1に示す。
2. 共通事項 共通事項は,次のとおりとする。
(1) 通則 化学分析に共通する一般事項は,JIS K 0050による。
(2) 赤外線ガス分析計 赤外線ガス分析計に共通する一般事項は,JIS K 0151による。
(3) TOC自動計測器 TOC自動計測器に共通する一般事項は,JIS K 0805による。
(4) 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0101,JIS K 0102,JIS K 0211又はJIS K 0215
による。
(5) 繰返し分析精度 繰返し分析精度は,それぞれの試験方法の定量範囲内において繰返し試験で求めた
変動係数 (%) で示す(1)。
注(1) 変動係数 (%) =xσ×100
ここに,
σ: 標準偏差
x: 平均値
(6) 水 試験項目に応じてJIS K 0557に規定するA1〜A4の水を用いる。
(7) 試薬 試薬についての共通事項は,次のとおりとする。
(a) 試薬は,該当する日本工業規格がある場合には,その種類の最上級又は適切な用途のものを用い,
該当する日本工業規格がない場合には,試験に支障のないものを用いる。
(b) 試薬類の溶液の濃度は,一般にg/l(化合物の場合は,無水物としての質量を用いる。)で示す。た
だし,標準液の濃度は,mg/ml又はμg/mlで表す。
(c) 試薬類の溶液の名称の後に括弧で示されている濃度は,標準液以外は概略の濃度であることを意味
する。例えば,水酸化ナトリウム溶液 (200g/l) は約200g/lの水酸化ナトリウム溶液であることを示
す。
(d) 液体試薬の濃度は,水との混合比[試薬 (a+b)]で表す。この表し方は,試薬a mlと水b mlとを
混合したことを示し,JIS K 0050に従い,塩酸,硫酸,りん酸などに用いる。ただし,これらの試
薬を薄めないで用いる場合は,その試薬名だけで示す。
(e) 試薬類及び廃液などの取扱いについては,関係法令規則などに従い十分に注意すること。
(8) ガラス器具類 ガラス器具類は,原則としてJIS R 3503及びJIS R 3505に規定するものを用いる。た
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だし,特殊な器具を必要とする場合には,それぞれの項目に,その一例を図示又は説明する。
また,加熱操作を伴う場合には,JIS R 3503の硬質1級を用いる。デシケーターに用いる乾
燥剤は,原則としてシリカゲル(2)とする。
(9) 注,備考及び図 注,備考及び図は,各項目ごとに一連番号を付ける。
注(2) JIS Z 0701に規定する包装用シリカゲル乾燥剤A形1種を用いる。
備考 試料の採取及び試験のいずれの操作でも試料が汚染されないように最大限の注意を払うことが
重要である。そのためには,使用する器具の材質や形状,寸法,洗浄方法に留意することはも
ちろんのこと,各操作でも大気との接触をできるだけ少なくする必要がある。
3. 試料採取 試料採取方法は,次による。
3.1
TOC自動計測器を用いる試験での試料採取方法 水精製装置の出口水を直接TOC自動計測器に導
入して試験する場合に適用する。
(1) 試料採取 水精製装置の出口配管に試料採取弁を取り付け,その先端にあらかじめA1の水で十分に
洗浄した試料導管(軟質の合成樹脂製のもの。)を取り付ける(1)。試料導管の容量の約5倍量の水を流
出させた後,TOC自動計測器の試料導入部に接続する。
注(1) 環境及び皮膚からの汚染がないように特に注意する。手術用の手袋などを用いるとよい。
3.2
TOC分析装置を用いる試験での試料採取方法 水精製装置の出口水を試料容器に採取して試験する
場合に適用する(2)。試験は,試料採取後直ちに行う(2)。
注(2) 容器に入れられた状態のものは,(3)の試料採取操作を行わずに適量を小形の三角フラスコに採
取して試験する。
(1) 試料容器 試料容器は,硬質ガラス製,四ふっ化エチレン樹脂製などの気密容器を用いる。
(2) 試料容器の洗浄方法 試料容器の洗浄は,次のとおり行う。
(a) 硝酸 (1+65) [JIS K 8541に規定する硝酸(又は,JIS K 9901に規定する高純度試薬−硝酸を用い
てもよい。)とA1の水を用いて調製する。]で洗う。
(b) 試料容器に容量の約41量のA1の水を入れ,栓をして約30秒間激しく振り混ぜて洗浄する。この操
作を5回繰り返す。
(c) A3又はA4の水(又は試験しようとする水と同等の水)を満杯にし,密栓して16時間以上放置し
た後,水を捨てる。
(d) (c)と同じ水を満杯にし,密栓して試料採取時まで放置する。
(3) 試料採取 試料採取は,次のとおり行う。
(a) 水精製装置の出口配管に試料採取弁を取り付け,あらかじめA1の水で十分に洗浄した試料導管(軟
質の合成樹脂製のもの。)の先端を取り付ける。
(b) 試料容器の水を捨て,試験しようとする水で(2)(b)の操作を行う(1)。
(c) 試料容器の底部に試料導管の先端が接するようにし,試料を試料容器の約5倍量を流出させた後,
試料導管を取り出し栓をよく洗浄して密栓する(1)。
4. 試験方法 試験方法は,燃焼酸化−赤外線式TOC自動計測法,燃焼酸化−赤外線式TOC分析法,湿
式酸化−赤外線式TOC自動計測法及び湿式酸化−赤外線式TOC分析法の4種類に区分する。
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備考1. 湿式酸化の方法には,ペルオキソ二硫酸塩の存在下で,紫外線を照射し酸化分解する方式と
高温高圧下で酸化分解する方式とがある。
4.1
燃焼酸化−赤外線式TOC自動計測法 計測器に連続的に供給した試料に酸を加えてpHを2以下に
し,通気して無機体炭素(炭酸塩類)を除去した後,その一定量(又は一定流量)をキャリヤーガスとと
もに高温の全炭素測定管に送り込み,有機物中の炭素を二酸化炭素とした後,その濃度を非分散形赤外線
ガス分析計で測定してTOCの濃度を求める。
定量範囲:10〜1 000μgC/l(装置,測定条件によって異なる。)
繰返し分析精度:変動係数で3〜10%
備考2. この方法は,TOCの濃度に比べて無機体炭素が多い場合は,誤差が少ない。ただし,揮発性
の有機物を含む場合には,誤差が大きい。
(1) 試薬 試薬は,次のものを用いる。
(a) 水 JIS K 0557に規定するA3又はA4の水,若しくはこれらと同等の品質に精製した水(1)(2)(3)で,
炭酸を含まない水(4)を用いる。試薬の調製及び操作には,この水を用いる。4.2(5)によって空試験を
行い,使用の適否を確認しておく。
(b) 酸溶液 JIS K 9005に規定するりん酸,JIS K 8180に規定する塩酸又はJIS K 8951に規定する硫酸
で有機物のできるだけ低いものを用い,所定の濃度に調節する。
(c) キャリヤーガス 二酸化炭素と有機物を除去した空気,又はJIS K 1101に規定する酸素で二酸化炭
素及び有機物のできるだけ少ないもの。若しくはJIS K 1107に規定する高純度窒素2級で二酸化炭
素及び有機物の少ないもの。
(d) TOC標準液 (0.1mgC/ml) JIS K 8005に規定する容量分析用標準物質のフタル酸水素カリウムを
120℃で約1時間加熱し,デシケーター中で放冷する。その0.213gをとり,少量の水に溶かして全
量フラスコ1 000mlに移し入れ,水を標線まで加える。
(e) 無機体炭素標準液 (0.1mgC/ml) JIS K 8622に規定する炭酸水素ナトリウムをデシケーター中で
約18時間放置し,その0.350gをとる。別に,JIS K 8005に規定する容量分析用標準物質の炭酸ナ
トリウムを600℃で約1時間加熱し,デシケーター中で放冷し,その0.441gをとる。両者を少量の
水に溶かし,全量フラスコ1 000mlに移し入れ,水を標線まで加える。
(f) ゼロ校正液 (a)の水を用いる。
(g) スパン校正液 TOC標準液 (0.1mgC/ml) の適量を適当な容量の全量フラスコにとり,水を標線まで
加える。この溶液を同様な操作で薄め,計測器の測定上限の約80%に相当するTOCの濃度になる
ような溶液を調製する。使用時に調製する。
注(1) TOCの濃度をできるだけ低くした水を用いる。精製した水は,容器に入れ保存すると徐々に汚
染されることがあるので、精製後できるだけ早く使用することが望ましい。
(2) TOCの濃度をできるだけ低くするには,イオン交換水又は蒸留水を蒸留フラスコにとり,過マ
ンガン酸カリウム溶液 (3g/l) を着色するまで滴加し,水1l当たり硫酸 (1+1) 2〜3mlを加えて
蒸留する(蒸留が終わるまで過マンガン酸カリウムによる着色が残るようにする。)。初留分(蒸
留フラスコ中の水量の約51に相当する。)を捨て,その後の約53に相当する留分を採取する。
(3) イオン交換法,蒸留法,逆浸透法,紫外線照射法,活性炭吸着ろ過法,精密ろ過法,限外ろ過
法などを適宜組み合わせて精製した水も使用できる。
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(4) 炭酸を含まない水の調製方法及び保存方法 水をフラスコに入れ,約5分間沸騰させて溶存気
体及び炭酸を除去した後,図4.1のようにガス洗浄瓶に水酸化カリウム (250g/l) を入れ,空気
中の二酸化炭素を遮断して放冷する。
図4.1 炭酸を含まない水の冷却,保存の一例
(2) 装置 装置は,次のとおりとする。
(a) TOC自動計測器 JIS K 0805に規定する超純水用(測定範囲が1 000μgC/l以下)の燃焼酸化−赤外
線式TOC自動計測器。
(3) 準備操作 準備操作は,次のとおり行う。
(a) 酸溶液及びキャリヤーガス(5)をTOC自動計測器に供給する。
(b) TOC自動計測器の暖機運転を行い,各部の機能及び指示記録部を安定させる(5)(7)。
(c) ゼロ校正液及びスパン校正液を用いて計測器を校正する。
注(5) キャリヤーガスに窒素を用いる場合には,試料導入部と酸化反応器(全炭素測定管)との中間
に酸素注入機構を設ける。
(6) 無機体炭素の除去には,酸溶液の量,通気するガス流量,通気時間,処理する試料の量,処理
容器の構造などが影響するから,無機体炭素標準液 (0.1mgC/ml) を薄めて調製した無機体炭素
の標準液を用いて除去が十分に行われていることを確認する。
無機体炭素の標準液の調製方法 無機体炭素標準液 (0.1mgC/ml) の適量を適当な容量の全
量フラスコにとり,水を標線まで加える。この溶液を同様な操作で薄め,計測器の測定上限の
約80%に相当する無機体炭素の濃度になるような溶液を調製する。使用時に調製する。
(7) 試料に揮発性の有機物が含まれる場合には,通気することによって試料から失われることがあ
るため,通気量は必要以上に大きくしない。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料をTOC自動計測器に供給して指示値が安定したことを確認する。
(b) 指示値から試料中のTOCの濃度 (μgC/l) を求める。
備考3. この方式のほか,4.2 燃焼酸化−赤外線式TOC分析法の原理を自動化した自動計測方式の
ものがある。
4.2
燃焼酸化−赤外線式TOC分析法 一定量の試料をキャリヤーガスとともにTOC分析装置の高温の
全炭素測定管に送り込み,有機物中の炭素及び無機体炭素を二酸化炭素とした後,その濃度を非分散形赤
外線ガス分析計で測定して全炭素の濃度を求める。別に,一定量の試料をキャリヤーガスとともに無機体
炭素だけを二酸化炭素とする温度に保った無機体炭素測定管に送り込み,生成した二酸化炭素の濃度を非
分散形赤外線ガス分析計で測定して無機体炭素の濃度を求める。全炭素の濃度から無機体炭素の濃度を差
し引いてTOCの濃度を算出する。
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定量範囲:20〜1 000μgC/l(装置,測定条件によって異なる。)
繰返し分析精度:変動係数で3〜10%
備考4. この方法は,有機物の揮発による誤差のおそれはない。ただし,TOCの濃度に比べ無機体炭
素が多い試料の場合には,誤差が大きい。
(1) 試薬 試薬は,次のものを用いる。
(a) 水 4.1(1)(a)による。
(b) キャリヤーガス(5) 4.1(1)(c)による。
(c) TOC標準液 (0.1mgC/ml) 4.1(1)(d)による。
(d) TOC標準液 (1μgC/ml) TOC標準液 (0.1mgC/ml) 5mlを全量フラスコ500mlにとり,水を標線ま
で加える。使用時に調製する。
(e) 無機体炭素標準液 (0.1mgC/ml) 4.1(1)(e)による。
(f) 無機体炭素標準液 (1μgC/ml) 無機体炭素標準液 (0.1mgC/ml) 5mlを全量フラスコ500mlにとり,
水を標線まで加える。使用時に調製する。
(2) 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。
(a) マイクロシリンジ 20〜500μlのマイクロシリンジ又は自動注入器
(b) TOC分析装置 最大目盛値が1 000μgC/l以下の燃焼酸化−赤外線式TOC分析装置
(3) 準備操作 準備操作は,次のとおり行う。
(a) TOC分析装置を作動できる状態にする。
(b) TOC標準液 (1μgC/ml) の一定量(8)(例えば,400μl)をマイクロシリンジでTOC分析装置の全炭素
測定管に注入し,指示値(9)を読み取る。この操作を数回繰り返して指示値(9)が一定であることを確
かめる。
(c) マイクロシリンジで試料の適量[(b)と同量]を全炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取り,(b)
の指示値(9)と比較して試料の概略の全炭素の濃度 (μgC/l) を求める。
(d) 無機体炭素標準液 (1μgC/ml) の一定量(8)(例えば,400μl)をマイクロシリンジでTOC分析装置の
無機体炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取る。この操作を繰り返して指示値(9)が一定であるこ
とを確かめる。
(e) マイクロシリンジで試料の適量[(d)と同量]を無機体炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取り,
(f)の指示値(9)と比較して試料の概略の無機体炭素の濃度 (μgC/l) を求める。
注(8) 試料の全炭素の濃度又は無機体炭素の濃度の予想値によって,適当な指示値が得られる注入量
を選択する。
(9) ピーク高さ又はピーク面積
(4) 検量線の作成 検量線の作成は,次のとおり行う。
(a) (3)(d)で求めた試料の概略の全炭素の濃度がほぼ中央になるようにTOC標準液 (1μgC/ml) を全量フ
ラスコ100mlに段階的にとり,水を標線まで加える。
(b) (a)で調製したTOC標準液の最高濃度のものの一定量[例えば,(3)(b)と同量]をマイクロシリンジ
で全炭素測定管に注入し,指示値(9)が最大目盛値の約80%になるようにTOC分析装置の感度及び
標準液の注入量を調節する。
(c) 順次,(a)で調製した各濃度のTOC標準液の一定量[(b)と同量]をマイクロシリンジで全炭素測定
管に注入し,指示値(9)を読み取る。
(d) 空試験として,(c)と同量の水をマイクロシリンジで全炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取り,
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(c)で得た結果を補正し,TOCの濃度 (μgC/l) と指示値との関係線を作成し,これを全炭素の検量線
とする。
(e) 無機体炭素標準液 (1μgC/ml) を用いて,(a)で段階的に調製したTOC標準液と炭素が同量となるよ
うに無機体炭素標準液を段階的に調製する。
(f) (e)で調製した各濃度の無機体炭素標準液を(b)と同様に順次マイクロシリンジで無機体炭素測定管
に注入し,指示値(9)を読み取る。
(g) 空試験として,(f)と同量の水をマイクロシリンジで無機体炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取
り,(f)の結果を補正し,無機体炭素の濃度 (μgC/l) と指示値(9)との関係線を作成し,これを無機体
炭素の検量線とする。
(5) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料の一定量[(4)(b)と同量]をマイクロシリンジで全炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取る。
(b) 試料の一定量[(4)(f)と同量]をマイクロシリンジで無機体炭素測定管に注入し,指示値(9)を読み取
る。
(c) あらかじめ作成した全炭素の検量線及び無機体炭素の検量線から,試料の全炭素の濃度 (μgC/l) 及
び無機体炭素の濃度 (μgC/l) を求める。
(d) 次の式によって試料中のTOCの濃度 (μgC/l) を算出する。
TOC=TC−IC
ここに, TOC: TOCの濃度 (μgC/l)
TC: 全炭素の濃度 (μgC/l)
IC: 無機体炭素の濃度 (μgC/l)
備考5. この方式のほか,4.1 燃焼酸化−赤外線式TOC自動計測法の原理で自動でなく測定する方
式のものがある。
4.3
湿式酸化−赤外線式TOC自動計測法 計測器に連続的に供給した試料に酸を加えてpHを2以下に
し,通気して無機体炭素を除去した後,その一定量(又は一定流量)をペルオキソ二硫酸塩及びキャリヤ
ーガスとともに湿式酸化反応器に送り込み,有機物中の炭素を二酸化炭素とした後,その濃度を非分散形
赤外線ガス分析計で測定してTOCの濃度を求める。
定量範囲:10〜1 000μgC/l(装置,測定条件によって異なる。)
繰返し分析精度:変動係数で3〜10%
備考6. 備考2.による。
(1) 試薬 試薬は,次のものを用いる。
(a) 水 4.1(1)(a)による。
(b) 酸溶液 JIS K 8951に規定する硫酸又はJIS K 9005に規定するりん酸で有機物のできるだけ低いも
のを用い,所定の濃度に調製する。
(c) ペルオキソ二硫酸塩溶液 JIS K 8253に規定するペルオキソ二硫酸カリウム又はペルオキソ二硫酸
ナトリウムで有機物のできるだけ低いものを用い,所定の濃度に調製する。
(d) キャリヤーガス 4.1(1)(c)による。
(e) TOC標準液 (0.1mgC/ml) 4.1(1)(d)による。
(f) ゼロ校正液 (a)の水を用いる。
(g) スパン校正液 4.1(1)(g)による。
(2) 装置 装置は,次のとおりとする。
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(a) TOC自動計測器 JIS K 0805に規定する超純水用(最大目盛値が1 000μgC/l以下)の湿式酸化−赤
外線式TOC自動計測器(10)(11)。
注(10) 湿式酸化のための反応器には,紫外線を照射する方式と高温高圧で加熱(例えば,200℃,2MPa,
装置によって異なる。)する方式とがある。
(11) 紫外線を照射する方式で用いる水銀灯は,紫外線の放射強度が徐々に低下するので,適当な時
期に交換する。
(3) 準備操作 準備操作は,次のとおり行う。
(a) 酸溶液,ペルオキソ二硫酸塩溶液及びキャリヤーガスを,計測器に供給する。
(b) 計測器の暖機運転を行い,各部の機能及び指示記録部を安定させる(6)(7)。
(c) ゼロ校正液及びスパン校正液を用いて計測器を校正する。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料を計測器に供給して指示値が安定したことを確認する。
(b) 指示値から試料中のTOCの濃度 (μgC/l) を求める。
備考7. 試料に酸溶液を加え,通気して無機体炭素を除去する代わりに,4.2 燃焼酸化−赤外線式
TOC分析法の方式の原理(ただし,燃焼酸化に代え湿式酸化方式を用いる。)を自動化した
自動計測方式のものがある。
4.4
湿式酸化−赤外線式TOC分析法 あらかじめ試料に酸を加えてpHを2以下にし,通気して無機体
炭素を除去する。無機体炭素を除去した試料の一定量をペルオキソ二硫酸塩及びキャリヤーガスとともに,
湿式酸化反応器に送り込み,有機物中の炭素を二酸化炭素とした後,その濃度を非分散形赤外線ガス分析
計で測定してTOCの濃度を求める。
定量範囲:20〜1 000μgC/l(装置,測定条件によって異なる。)
繰返し分析精度:変動係数で3〜10%
備考8. 備考2.による。
(1) 試薬 試薬は,次のものを用いる。
(a) 水 4.1(1)(a)による。
(b) 酸溶液 4.3(1)(b)による。
(c) ペルオキソ二硫酸塩溶液 4.3(1)(c)による。
(d) キャリヤーガス 4.1(1)(h)による。
(e) TOC標準液 (0.1mgC/ml) 4.1(1)(d)による。
(f) TOC標準液 (1μgC/ml) 4.2(1)(d)による。
(2) 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。
(a) シリンジ 0.2〜20mlのもの又は自動注入器
(b) TOC分析装置 最大目盛値が1 000μgC/l以下の湿式酸化−赤外線式TOC分析装置(10)(11)
(3) 準備操作 準備操作は,次のとおり行う。
(a) TOC分析装置を作動できる状態にする。
(b) TOC標準液 (1μgC/ml) の一定量(8)(例えば,20ml)をシリンジでTOC分析装置に注入し,指示値
(9)を読み取る。この操作を繰り返して指示値(9)が一定になることを確かめる。
(c) 試料の適量を適当な容量の細口共栓瓶(例えば,容量500ml)に入れ(上部に空間を残す。),酸溶
液を添加してpHを2以下にした後,キャリヤーガスを通気して無機体炭素を除去する(6)(7)(12)。
(d) 無機体炭素を除去した試料の一定量[例えば,(b)と同量]をシリンジで注入し,指示値(9)を読み取
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り,(b)の指示値(9)と比較して概略のTOCの濃度 (μgC/l) を求める。
注(12) 無機体炭素を除去する際に,使用する容器及びその材料などによって試料が汚染される割合を
できるだけ少なくするためには,できるだけ多量の試料について無機体炭素の除去操作を行い,
そのうちの一部の試料を用いて測定するとよい。
(4) 検量線の作成 検量線の作成は,次のとおり行う。
(a) (3)(d)で求めた試料の概略のTOCの濃度 (μgC/l) がほぼ中央になるようにTOC標準液 (1μgC/ml)
を全量フラスコ100mlに段階的にとり,水を標線まで加える。
(b) (a)で調製したTOC標準液の最高濃度のものの一定量[例えば,(3)(b)と同量]をシリンジでTOC
分析装置に注入し,指示値(9)が最大目盛値の約80%になるようにTOC分析装置の感度及び標準液
の注入量を調節する。
(c) 順次,(a)で調製した各濃度のTOC標準液の一定量[(b)で定めた量]をシリンジでTOC分析装置に
注入し,指示値(9)を読み取る。
(d) 空試験として(b)と同量の水をシリンジでTOC分析装置に注入し,指示値(9)を読み取る。(c)で得た
結果を補正し,TOCの濃度 (μgC/l) と指示値(9)との関係線を作成し,これをTOCの検量線とする。
(5) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) (3)(c)で無機体炭素を除去した試料の一定量[(4)(b)と同量]をシリンジでTOC分析装置に注入し,
指示値(9)を読み取る。
(b) あらかじめ作成したTOCの検量線から試料中のTOCの濃度 (μgC/l) を求める。
備考9. この方式のほか,備考7.の原理で自動ではなく測定する方式のものがある。
10. 湿式酸化−赤外線式TOC分析法には,アンプルを用いる方法もある。この方法は,試料3〜
10mlをガラス製アンプルにとり,JIS K 8253に規定するペルオキソ二硫酸カリウム(又は二
クロム酸カリウム)とJIS K 9005に規定するりん酸を加えて酸性とした後,キャリヤーガス
を十分に通気して二酸化炭素を除去する。アンプルを密封した後,高圧蒸気滅菌器中で一定
時間加熱して有機物を酸化する。アンプルを装置内で破壊し,生じた二酸化炭素をJIS K 1107
に規定する高純度窒素2級で非分散形赤外線ガス分析計に導入し,その濃度を測定して試料
中のTOCの濃度 (μgC/l) を求める。
5. 結果の表示 次の項目を表示することとする。
(1) 測定値
(2) 試験方法の種類
(3) 試験日時
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付表1 引用規格
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0101 工業用水試験方法
JIS K 0102 工場排水試験方法
JIS K 0151 赤外線ガス分析計
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門)
JIS K 0557 化学分析用の水
JIS K 0805 有機体炭素 (TOC) 自動計測器
JIS K 1101 酸素
JIS K 1107 高純度窒素
JIS K 8005 容量分析用標準物質
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8253 ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)(試薬)
JIS K 8541 硝酸(試薬)
JIS K 8622 炭酸水素ナトリウム(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS K 9005 りん酸(試薬)
JIS K 9901 高純度試薬−硝酸
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製化学用体積計
JIS Z 0701 包装用シリカゲル乾燥剤
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K 0551-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 0094(工業用水・工場排水試料採取方法)及びJIS K 0550(超純水中の細菌数試験方法)ほか2件の
改正原案作成調査委員会 構成表
小委員会
氏名
所属
A B C
委員長 ◎
並 木 博
横浜国立大学教育学部
○ ○ ○ 倉 剛 進*
工業技術院標準部繊維化学規格課
加 藤 裕 之
通商産業省立地公害局産業施設課
○
鈴 木 繁
環境庁水質保全局水質規制課
○
田 中 宏 明
建設省土木研究所水道部
○
伊 藤 裕 康
国立環境研究所化学環境部
○
渡 部 欣 愛
国立環境研究所環境研修センター
◎ 番 匠 賢 治
工業技術院資源環境技術総合研究所
○ 田 村 誠 也
工業技術院計量研究所熱物性部
○
石 関 忠 一
横浜国立大学工学部
○
小 倉 光 夫
神奈川県環境科学センター
○ 米 倉 茂 男
東京都鍍金工業組合
○ ◎ ○ 坂 本 勉
財団法人日本規格協会
加 山 英 男**
財団法人日本規格協会
○
浅 田 正 三
財団法人機械電子検査検定協会
○
○ 梅 崎 芳 美
社団法人産業公害防止協会
○ 森 田 洋 造
日本分析機器工業会(株式会社島津製作所工業計測事業部)
○ 池 田 久 幸
日本分析機器工業会(横河アナリテカルシステム株式会社技術生産本部)
○ 田 口 富 男
日本分析機器工業会(東亜電波工業株式会社科学計測技術部)
○
相 澤 睦 夫
日本分析機器工業会(東亜電波工業株式会社計装技術部)
○ 狩 野 久 直
日本錬水株式会社研究所
○
松 崎 晴 美
株式会社日立製作所日立研究所
○
中 村 忠
オルガノ株式会社研究開発本部
○ 三 輪 良 平
栗田工業株式会社研究開発本部
岩 崎 岩 次
社団法人日本工業用水協会
関係者
山 岸 幸 子
オルガノ株式会社研究開発本部
本 多 理江子
オルガノ株式会社研究開発本部
芳 賀 良 一
株式会社日立製作所日立研究所
参考人
岩 田 照 史
トキコ株式会社研究所
讃 井 洋 一
トキコ株式会社マーケティング
Jack Y. Yamamori
Anatel Corporation President and CED
Paul Melanson
Anatel Corporation Director of Research and Development
三 浦 正 美
伯東株式会社半導体装置事業部
事務局
佐 宗 正 雄
社団法人日本工業用水協会
飛 渡 祥 弘
社団法人日本工業用水協会
本 郷 秀 昭
社団法人日本工業用水協会
注 ◎:各小委員会委員長,○:小委員会委員
A:JIS K 0094(工業用水・工場排水の試料採取方法)小委員会
B:JIS K 0550(超純水中の細菌数試験方法)小委員会
C:JIS K 0551[超純水中の有機体炭素 (TOC) 試験方法]及びJIS K 0552(超純水の電気伝導率試験
方法)小委員会
* :発足当初は地崎 修(現在は倉 剛進)
**:発足当初は黒木 勝也(現在は加山 英男)
文責 坂本 勉