K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
JIS K 0410-3-7には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考) ボイラ施設におけるサンプリング地点
附属書B(参考) 冷却器
附属書C(参考) 報告書−ボイラ施設における水及び蒸気のサンプリング
JIS K 0410シリーズは,次に示す各部からなる。
JIS K 0410-3-1 水質−サンプリング−第1部:サンプリング計画策定の指針
JIS K 0410-3-2 水質−サンプリング−第2部:サンプリング技術の指針
JIS K 0410-3-3 水質−サンプリング−第3部:試料の保存及び取扱いの指針
JIS K 0410-3-4 水質−サンプリング−第4部:天然及び人造湖からのサンプリングの指針
JIS K 0410-3-6 水質−サンプリング−第6部:河川水のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-7 水質−サンプリング−第7部:ボイラ施設の水及び蒸気のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-8 水質−サンプリング−第8部:湿性沈着のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-9 水質−サンプリング−第9部:海水のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-10 水質−サンプリング−第10部:廃水のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-11 水質−サンプリング−第11部:地下水のサンプリングの指針
JIS K 0410-3-12 水質−サンプリング−第12部:底質のサンプリングの指針
原国際規格のISO 5667シリーズには,第1部〜第12部連続で各部が規定されているが,この中のISO
5667-5 : 1991は,飲料水及び食品,清涼飲料水加工処理用水のサンプリングの指針となっており,日本工
業規格の制定は行っていない。
K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 2
4. サンプリング−一般的な状況 ····························································································· 2
4.1 序文 ···························································································································· 2
4.2 サンプリングシステム−一般的な情報 ················································································ 3
4.3 サンプリング地点−一般的指針 ························································································· 3
5. サンプリング装置 ············································································································ 4
5.1 材料 ···························································································································· 4
5.2 水のサンプリングプローブ······························································································· 4
5.3 蒸気のサンプリングプローブ ···························································································· 6
5.4 サンプリングライン ······································································································· 8
5.5 バルブ類 ······················································································································ 8
5.6 試料冷却 ······················································································································ 8
5.7 毛管サンプラ ················································································································ 9
5.8 試料容器 ······················································································································ 9
6. サンプリング場所 ············································································································ 9
6.1 序文 ···························································································································· 9
6.2 補給水 ························································································································ 10
6.3 給水 ··························································································································· 10
6.4 ボイラ水 ····················································································································· 10
6.5 蒸気 ··························································································································· 10
6.6 復水 ··························································································································· 10
6.7 冷却水 ························································································································ 10
7. 水試料の採取 ················································································································· 11
8. 蒸気試料の採取 ·············································································································· 11
9. 試料の保存 ···················································································································· 11
10. 試料の確認及び記録 ······································································································ 12
附属書A(参考) ボイラ施設におけるサンプリング地点 ···························································· 13
附属書B(参考) 冷却器····································································································· 15
附属書C(参考) 報告書−ボイラ施設における水及び蒸気のサンプリング········································· 17
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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日本工業規格 JIS
K 0410-3-7 : 2000
(ISO 5667-7 : 1993)
水質−サンプリング−
第7部:ボイラ施設の水及び蒸気の
サンプリングの指針
Water quality−Sampling−
Part 7 : Guidance on sampling of water and steam in boiler plants
序文 この規格は,1993年に第1版として発行されたISO 5667-7,Water quality−Sampling−Part 7 : Guidance
on sampling of water and steam in boiler plants を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作
成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲
− この規格は,それが採取された水,蒸気全体を代表する試料を物理的,化学的試験に供するために,
サンプリング装置の実例を含めてボイラ施設の水,蒸気のサンプリングの手順,設備を示す。
− 水のサンプリングの手順は,次の試料に適用する。
− 原水
− 補給水
− ボイラ給水
− 復水
− ボイラ水
− 冷却水
− 蒸気のサンプリングの手順には,飽和蒸気,過熱蒸気の両者を含める。
− この規格は,原子力発電所の水及び蒸気のサンプリングには適用しない。
− 図2〜6は,サンプリング装置の例として示したものである。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 5667-7 : 1993 Water quality−Sampling−Part 7 : Guidance on sampling of water and steam in
boiler plants
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構
成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その
最新版(追補を含む。)を適用する。
2
K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
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JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 0410-3-1 水質−サンプリング−第1部:サンプリング計画策定の指針
備考 ISO 56671: 1980 Water quality−Sampling−Part 1 : Guidance on the design of sampling
programmesが,この規格と一致している。
JIS K 0410-3-2 水質−サンプリング−第2部:サンプリング技術の指針
備考 ISO 5667-2: 1991 Water quality−Sampling−Part 2 : Guidance on sampling techniques が,この
規格と一致している。
ISO 5667-3 : 1985 Water quality−Sampling−Part 3 : Guidance on the preservation and handling of samples
参考 現在はISO 5667-3 : 1994が発行されている。
JIS K 0410-3-3 水質−サンプリング−第3部:試料の保存及び取扱いの指針が,ISO 5667-3 :
1994, Water quality−Sampling−Part 3 : Guidance on the preservation and handling of
samplesの規格と一致している。
ISO 6107-1 : 1986 Water quality−Vocabulary−Part 1
ISO 6107-2 : 1989 Water quality−Vocabulary−Part 2
ISO 8199 : 1988 Water quality−General guide to the enumeration of micro-organisms by culture
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
3.1
等速サンプリング (isokinetic sampling) 水,蒸気流からの試料を,プローブのすぐそばの流れと
等しい流速でサンプリングプローブのオリフィスに流入させる手法 (ISO 6107-2)。
3.2
サンプラー (sampler) 水,蒸気試料を,多様な試験目的に応じて個別に又は連続的に採取する器
具 (ISO 6107-2)。
3.3
サンプリング地点 (sampling point) 試料を採取する系内の正確な位置 (ISO 6107-2)。
3.4
サンプリングプローブ (sampling probe) 蒸気及び水の主要部に挿入され,試料が最初に通過する
試料採取装置の一部 (ISO 6107-2)。
3.5
サンプリングライン (sampling line) プローブから試料供給点又は分析装置まで試料を導く導管
(ISO 6107-2)。
3.6
試料供給点 (sample delivery point) サンプリングラインの終点。サンプリングプローブから遠く
なることがしばしばある。試験のため個別に,又は連続的に試料が取り出される。
3.7
原水 (raw water) 処理することなく受け入れたすべての水。又は更に処理するために施設に入る
水 (ISO 6107-1)。
3.8
補給水 (make-up water) 不足を補うために系に加える水。
3.9
復水 (condensate) 発電所又は工程の蒸気が凝縮したもの。他の水と混合していない。
3.10 ボイラ水 (boiler water) 稼働しているボイラ中に存在する水。
3.11 給水 (feed water) 復水 (3.9) と補給水 (3.8) から成る。給水ポンプ又はインジェクターを通る。
3.12 飽和蒸気 (saturated steam) その圧力の飽和温度と等しい温度の蒸気。
3.13 過熱蒸気 (superheated steam) その圧力の飽和温度より高い温度の蒸気。
4. サンプリング−一般的な状況
4.1
序文 サンプリングシステム系にあらかじめ必要なことは,後の分析のためにシステムのある箇所
における流体の代表試料を取り出すことである。2相以上の場合は問題を生じやすい。
3
K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
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4.2
サンプリングシステム−一般的な情報
− 水と蒸気の試料を採取するためのサンプリングシステムは,次の部品から成っている(図1参照)。
− サンプリングプローブ
− バルブ及び附属品を含めたサンプリングライン
− 冷却器(試料の温度が常に50℃未満であれば省略できる。)
− 試料供給点
− サンプリングシステムの設計と材料の選択は,次の影響を受ける。
− 実施される分析及び必要な正確さ
− 調べようとする水,蒸気の化学組成
− サンプリング地点の温度及び圧力
− 冷却水の化学組成
− 多くの場合,サンプリング装置の試料と接触するすべての部品はステンレス鋼 (18Cr8Ni) で製作する
ことが望ましい。ある場合は,他の材料,例えば,低圧ボイラからのサンプリングには銅を用いても
よい。求められる使用目的に適したものであり,かつ,試料成分と反応しないことが重要である。サ
ンプリングシステムのいろいろな部品については,5.で詳細に述べる。
図1 水のサンプリングシステム
4.3
サンプリング地点−一般的指針
− サンプリング地点は,回路内で水,蒸気の組成又は組成変化をはかる必要がある場所に定めるとよい。
− 図A.1(附属書A)は,蒸気/水回路の代表的なサンプリング場所を示すものである。
− 丸ボイラのサンプリング地点は,ボイラの定常運転の水位から少なくとも150mm下の点とする。試
料はボイラの定常運転時に採取することを勧める。ただし,ボイラの点火時には採取しない。
4
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− 試料は,なるべく流動系から採取することが望ましい。特に要求されない限り,滞留域は避ける(例
えば,満水保持のボイラ)。
− 起源及び組成の異なる水を混ぜ合わせたり,化学薬品を添加したとき,サンプリング地点は,それら
が完全混合した地点であることが望ましい。多くの場合,バルブ,ポンプ又は曲管のような乱流発生
部の下流側でサンプリングするとよい。
− 配管内を流れている水の粒子状物質の代表試料を得るのに必要なことは,次のとおりである。
a) 粒子状物質が配管内で均一に分布している場所で採取する
b) 多量の流体から代表試料を採取する
c) 粒子状物質の濃度,性質をなるべく変化させずに,サンプリングライン内を試料供給点まで試料を
輸送する
− 乱流を伴う系に対してこのような基準を満たすためには,サンプリング地点を垂直配管内に設け,等
速サンプリングを行うとよい。もし,これができないときは,サンプリング地点は水平配管で,バル
ブ,曲管のような乱流部から少なくとも配管の内径の10倍下流側に,又は5倍上流側に設置するとよ
い。サンプリング地点選択の指針を6.に示す。
5. サンプリング装置
5.1 材料 附属品を含めてサンプリングプローブ用の材料及びプローブの取付けに使用する溶接材料は,
配管材料及び採取する流体と反応しないものが望ましい。溶接したジョイント及び溶接の設計,検査の手
順は適切,かつ,信頼できるジョイントを保証するすべての適用コードに対応したものであることが望ま
しい。また,サンプリングプローブの材料は,試料を汚染しないものを選ぶ。例えば,黄銅の部品を含む
システムは全銅の定量には好ましくない。
5.2
水のサンプリングプローブ
− 均質な水の採取には,図2に示すように流通 (off-take) 接続のものがよい。
− 粒子状物質を含む水の採取には,等速サンプリングを用いるのが理想である。
− 粒子状物質の代表試料の採取は重要である。例えば,系の腐食生成物の推定の場合である。
− 経験によれば,幾つかの事例では直管プローブ(off-take接続)で十分であった。ある場合は,指向性
プローブが必要である。直管か指向性かの選択は,両方について実験で確かめるのが最善である。サ
ンプリングプローブは,流れの方向に向き合わなければならない。指向性のサンプリングプローブは,
広範囲の粒子径の粒子状物質を含む試料を採取する場合に使用する。直管のサンプリングプローブは,
極めて微細な粒子状物質を含む水の試料を採取するときに考慮する。水を等速サンプリングするため
のサンプリングプローブの配置を図3に示す。
− 図4に示すのは,溶存物質と粒子状物質両方のサンプリングプローブをもつ実際のサンプリングシス
テムである。
備考1. 時には入口に穴のある指向性プローブを流れに背けて使用すると溶存種のサンプリングに適
することがある。この場合は,粒子の侵入が最少になり,サンプリングライン内の沈積,閉
そくの危険は減少する。これは特に,オンライン装置に試料輸送のための長いサンプリング
ラインを用いる場合に適用できる。
5
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図2 溶存種採取用の直管サンプリングプローブの例
図3 粒子状物質採取用の指向性サンプリングプローブの例
図4 溶存及び粒子状物質用サンプリングプローブの例
6
K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
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5.3
蒸気のサンプリングプローブ
− 蒸気の性質の多相性によって飽和蒸気,過熱蒸気の二つとも指向性サンプリングプローブを用いて,
等速サンプリング(8.参照)することが望ましい。蒸気のサンプリングには,単口又は多口プローブ
のいずれも利用できる。
− ボイラドラム又はヘッダ付近の流通接続の配管からの蒸気の採取には,単口ノズルを勧める(図5に
例を示す。)。プローブの先端は流れの方向に向ける。
− 飽和蒸気及び過熱蒸気の両方を大きな管路で採取するには,多口プローブを勧める(図6参照)。条件
に適合するように特別に設計されたこのプローブは,配管の壁から挿入し,配管の中心を通って伸ば
す。
− 蒸気口は,配管の流れの上流側に向け,穴は配管断面の等しい面積からそれぞれが試料を採取できる
ような間隔にする(図7参照)。
− 過熱蒸気のサンプリングには,小口径の管から,又は蒸気の均一混合が想定される大口径の管からの
場合は,多口サンプラよりも図5に示すような単口サンプラが好ましい。一つのプローブから採取し
た試料が不足な場合は幾つかのプローブを併用し,それらを集めて一つの試料としてもよい。
図5 飽和蒸気サンプリング用サンプリングプローブの例
図6 蒸気サンプリングプローブ(多口形)の例
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 多孔サンプリングプローブの各孔は,それが配置された配管内の面積に対応する主蒸気を取り
出さなければならない。等しい大きさの穴に要求されるのは,管の断面の等しい面積から等し
い試料を取り出すように穴を配置することである。穴の配置は図6から求めることができる。
理想的には各サンプリング孔について等しい圧力低下が生じるようにする。この条件を助長
するには,全孔の面積をプローブの内部断面積の2/3より小さくするとよい。プローブの孔の
直径は,蒸気中の水分の補そくを確実にするために十分に大きくすることが望ましい。
全体の穴の面積の割合は,蒸気流量に対する試料流量の比に等しくなるようにする。この条
件では,プローブに入る蒸気の速度は配管を流れる蒸気の速度になり,等速流量を示すことに
なる(表1参照)。
図7 円形の管を等しい環状面積に分割するための円の半径
8
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表1 各種の蒸気圧についてサンプリングプローブを通過する推奨最小質量流量
蒸気圧 kPa
質量流量 kg/s・m2
500
13
1 000
20
2 000
26
3 000
31
4 000
35
5 000
38
6 000
40
7 500
43
10 000
46
12 500
48
15 000
49
17 500
49
20 000
49
5.4
サンプリングライン
− サンプリングラインは,試料の遅れ時間及び代表試料に求められる粒子状物質の沈積を最少にするた
めにできるだけ短くすることが望ましい。
− さらに,粒子状物質の沈積を最少にするには次が必要である。
a) 長い水平配管を避ける。
b) レイノルズ数>4 000の乱流条件で試料が移送されるのを確実にするために,十分に小口径の配管を
用いる。
c) バルブ自体に粒子状物質の沈積を最少にするように設計された試料調節弁,試料分岐弁を選ぶ。滞
留域,複雑流を生じる部品は避ける。
5.5
バルブ類
− バルブ類は試料の分離,試料の減圧及び流量調節のために,サンプリングラインに取り付ける。
− 試料の分離には,直列に2個のバルブが必要である。バルブは,サンプリングプローブのできるだけ
近くに設置する。バルブの構成と等級は系の圧力に適し,その国の安全基準に適合しなければならな
い。調節弁,例えば,サンプリングラインの出口にあるニードル弁は流量調節に用いる。高圧の場合
は,試料分岐弁と流量調節弁の間に減圧弁を設置することになる。冷却器が必要な場合は(5.6参照),
減圧弁は冷却器の下流側に設置するとよい。試料を採取する場合は,試料分岐弁は全開にしておく。
流量はニードル弁で調節する。したがって,冷却器を含めた全サンプリングラインは,採取系の全圧
に耐える十分な強度のものでなければならない。代表的なサンプリング配置を図1に示す。
5.6
試料冷却
− 一般に50℃を超える温度で運転している系から試料を採取する場合は冷却を行う。冷却温度は引き続
く分析によって異なる。冷却器の寸法,冷却水の温度及び速度は使用目的に応じて選択する。最終の
試料温度は25〜30℃が一般的である。
− 冷却器は,ステンレス鋼又は適切な材料で製作する。冷却器を納めた外筒 (shell) には安全弁を取り
付ける(図1参照)。
− 冷却器の冷却管(コイル)は,試料を採取する装置及び配管のすべての稼働状態の温度,圧力に耐え
得るように設計,製作する。
− 冷却水は,冷却器内で沈積又は腐食が生じないような水質で,構造材に左右されないものであること
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が望ましい(附属書B参照)。
− 試料供給点から直接装置に供給される場合は,冷却器と装置の間に自動試料遮断弁の設置を考慮する
とよい。このバルブは冷却水量が減少したため,試料温度が設定値まで上昇したとき作動する。
− 低温の冷却水の十分な供給がないときは,冷却システムを考慮するとよい。
− 代表的な冷却器の詳細を附属書Bに示す。
5.7
毛管サンプラ
− 図1に述べたサンプリングシステムの代わりに,毛管装置を溶存物質と粒子状物質の両方のサンプリ
ングに使用することができる。これは1本のステンレス鋼の毛管で,その内面の摩擦力を利用して,
バルブを用いることなく流量を調節し,試料の圧力を減少させる。これは粒子状物質の沈着,混入が
最少になるので,粒子状物質の代表試料のサンプリングには通常のものより優れている。
− この場合,内径0.5〜1.5mmを用いるのが理想的である。減圧のほか冷却が必要なときは,毛管の部
分を適切な冷却器に納めることができる。毛管サンプラの一例を図8に示す。
図8 代表的な毛管サンプラの配置
5.8
試料容器 試料容器の選択及び清浄手順の詳細な指針は,JIS K 0410-3-2 (ISO 5667-2) 及びISO
5667-3を参照。
5.8.1
特に規定しない限り,試料は清浄な,密栓できる容器又は瓶にとり,大気,取扱い,容器からの溶
出などによる汚染を最少にする。
5.8.2
容器及び栓は,使用前に温塩酸[c (HCl) =1mol/L(JIS K 8180に規定する塩酸を用いて調製する。)]
で処理し,引き続きイオン交換水で十分にすすいで清浄にする。試料採取前に,容器と栓は試験しようと
する水ですすぐ。また,使用前に“空”試験を行ってその清浄さを確かめるとよい。
備考2. こん跡量の塩化物を測定するときは塩酸の代わりに硝酸を用いる。
5.8.3
ポリエチレン又は類似のプラスチック容器は,イオン種の定量に用いるとよい。ほうけい酸ガラス
容器は溶存酸素及び有機成分定量用試料のサンプリング,貯蔵に使用することを勧める。細菌試験用には
滅菌した瓶を使用する。また,ISO 8199も参照。
6. サンプリング場所
6.1
序文
10
K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 蒸気/水回路の設計によって,4.に概説した一般指針がいかによく適用できるかが決まる。ある場合
にはサンプラの位置及び設計について適切な専門家と相談する必要があろう。作業員がサンプリング
器具及び分岐弁に安全に近付けるようにサンプリング装置の位置には配慮が必要である。配管には,
作業員の火傷を防ぐために,できれば,断熱処理を施しておくとよい。
− 蒸気/水回路の主要サンプリング地点を図A.1(附属書A)に示し,また,6.2〜6.7に述べる。
6.2
補給水
− イオン交換処理を行った後,補給水の電気伝導率及び溶存シリカ含有量の両方を測定する必要がある。
− これには,図2に示す形のプローブを勧める。
6.3
給水
− 試料は,復水及び給水系の各所から採取する必要がある。
− これには,抽出ポンプ出口,脱気器入口,脱気器出口及びボイラ入口が含まれる。
− 溶存物質,できれば粒子状物質のサンプリングも要求される。図2に示すプローブは,溶存物質のサ
ンプリングによい。図2又は図3に示すプローブは,粒子状物質のサンプリングに勧められる(5.2
参照)。
6.4
ボイラ水
− ボイラ水の組成は,ボイラ内の場所でかなり異なる。したがって,サンプリング地点の場所は極めて
重要であり,試料が流入する給水又は未分離の蒸気などに影響されないことが必要である。
− 自然循環形のボイラでは,代表試料は降水管からとる。強制循環形ボイラでは,試料は運転中の循環
ポンプの出口側からとるとよい。又はボイラドラム若しくは連続ブロー配管 (blowdown lines) に適切
に配置したプローブから試料を採取してもよい。
− しかし,ボイラドラムからの試料が代表的であることを保証するのは困難であるから,この場所は,
ほかによりよい場所が得られないときにだけ用いる。
− 溶存物質のサンプリングだけが主題のときは,図2の形のプローブがよい。図2又は図3のプローブ
は粒子状物質のサンプリングに勧める(5.2参照)。
− 貫流 (once-through) ボイラからのサンプリングは不可能である。
6.5
蒸気
− 水/蒸気の不完全分離によるボイラ水のキャリオーバは,飽和蒸気のサンプリング及び分析によって
評価する。加えて,過熱蒸気のサンプリング及び分析は,過熱器中での沈着及びタービンへのキャリ
オーバの評価にも必要である。
− 過熱蒸気,飽和蒸気ともに粒子状物質の存在を考慮し,指向性プローブを用いて等速サンプリングす
ることが望ましい(5.2及び8.参照)。
6.6
復水
− サンプリング地点は,主復水の戻り管及び各系列からの戻り管にするとよい。復水が他の場所からく
るときは,それに応じてサンプリング地点を設ける。
− 図2に示す形のプローブをこの場合には勧める。
6.7
冷却水
− 冷却水系はその設計(冷却塔又は表面冷却器をもつ解放/閉鎖系)及び水源[開水 (open water) ,井
水又は復水]に広い変化が見られる。
− 特別な勧告はできないが,最低の要求事項として,サンプリング地点はJIS K 0410-3-1 (ISO 5667-1) の
内容を参考にして決めるとよい。
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7. 水試料の採取
7.1
− サンプリング頻度及び計画には,次のような幾つかの要因がある。
− 運転条件の変更
− 薬品の添加
− 必要な薬品調節の程度
− サンプリング計画策定の一般指針をJIS K 0410-3-1 (ISO 5667-1) に示す。できるだけ,これに従うと
よい。
7.2
試料容器は完全に満たしておく。これは溶存酸素,ヒドラジン,亜硫酸塩,二酸化炭素,遊離塩素,
鉄 (II) ,アンモニウム,また,電気伝導率,pH及びアルカリ度(酸消費量)の測定において特に重要で
ある。この場合,不活性材料の管又はホースをサンプリングラインにつなぎ,容器の底に挿入する。サン
プリング前に,サンプリング管又はホースの外面の清浄を確認することが重要である。
7.3
試料は必要なすべての分析を行うのに足りる体積でなければならない。通常0.5〜1Lで十分である。
7.4
粒子状物質用試料を採取するときは,等速流量で連続的に流れているサンプリング地点を選ぶとよ
い。これが操作上不便であれば,バルブを開いて最大流量とし沈積物を除去し,約10分間後,等速流量に
調節する。試料は,外観上の変化がなくなり,等速条件に調節してから最低30分間後に採取する。このサ
ンプリング操作の時期は,特定のサンプリング地点では,粒子状物質濃度が定常値に達する時間をはかる
だけの簡単な操作だけで最適化できる。
試料の流量は,次の式から求める。
A
F
a
f
×
=
ここに,
f: 試料の流量,kg/s
F: プラントの水の流量,kg/s
a: サンプリング口の面積,m2
A: 水管の面積,m2
8. 蒸気試料の採取
8.1
飽和蒸気又は過熱蒸気の代表試料を採取するには,正確な等速サンプリングが先行条件である。
試料の流量は,次の式から求める。
A
F
a
f
×
=
ここに,
f: 試料の流量,kg/s
F: 蒸気の流量,kg/s
a: サンプリング口の全面積,m2
A: 蒸気管の面積,m2
備考 入口から先は,蒸気に運ばれる固体又は液体の不純物の損失を最少にするために試料の流速は
高く保つことが望ましい。プローブ中の流れが垂直上昇の場合,これは特に重要である。いろ
いろな蒸気圧に対するプローブを通る最低質量流量を附属書A表1に示す。
9. 試料の保存 試験室の分析のための試料の保存及び現場における前処理については,ISO 5667-3を参
照。
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
10. 試料の確認及び記録
− 試料の確認及び分析結果の解釈には,水の種別,サンプリング地点,日時,温度,圧力,及び採取者
の名前など詳細なデータを現場でサンプリング用紙に記入することが望ましい。
− 試料の保存についても記入する。例えば,保存に酸を用いたときは(ISO 5667-3参照),種類,量及
び濃度を記録する。できれば,試料回路に水処理剤が存在するときは報告することを勧める。
− さらに,必要があれば,試料にはラベルを付け,運搬のために包装する。
− ボイラ施設の水及び蒸気のサンプリングについて報告様式の推奨例は附属書Cを参照。
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A(参考)
ボイラ施設におけるサンプリング地点
序文 この附属書は,ボイラ施設における代表的なサンプリング場所及び試料条件の一例を参考として示
したもので,規定の一部ではない。
A.1 蒸気/水回路における代表的なサンプリング場所を附属書A図1に示す。また,それらの場所にお
ける代表的な試料条件を附属書A表1に示す。
附属書A図1 主要サンプリング地点の場所
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A表1 蒸気/水回路の各種サンプリング地点における代表的な試料条件
サンプリング地点の場所
温度℃
圧力 MPa
補給水製造装置
< 30
0.1
抽出ポンプ排気
25〜 45
0.4
復水脱塩装置
35〜 50
1〜3
脱気器入口
90〜 120
1
脱気器出口
140〜 180
1
節炭器入口
180〜 260
17〜20
ボイラ水
345〜 365
16〜19
飽和蒸気
345〜 355
16〜19
過熱蒸気
550〜 570
16〜19
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考) 冷却器
序文 この附属書は,高温試料をサンプリングする場合に,また,サンプリング環境の安全のために用い
る冷却器の一例を参考として示したもので,規定の一部ではない。
B.1
− 試料温度50℃を超える場合は,試料成分間の相互反応を最少にし,また,サンプリング環境の安全の
ために試料の冷却が必要である。
− 多くの場合,最終試料温度25±2℃を目標にするとよい。この基準によると,高い割合の試料源がサ
ンプリング及び引き続いての分析の前に冷却を要する。
− 試料を高温から冷却する場合,及び最終試料温度を正確に調節する必要がある場合,例えば,オンラ
インの電気伝導率の監視では,直列の二つの冷却器が必要である。これを,前段,後段冷却器と名付
けると,前段冷却器は試料分岐弁の下流,しかもなるべく近くに設置する。後段冷却器は通常手によ
るサンプリング地点又はオンライン採取装置の近くに設ける。
− 冷却器のコイルはステンレス鋼316,インコネル600又はモネル400で,ステンレス鋼本体に組み込
まれ,冷却水の流れはコイル中の試料の流れと反対になるように設計されている。冷却器及びコイル
の寸法はその予想負荷によって決まる。
− 冷却器にはコイル破損及びこれによる外筒の過剰圧の予防措置として,安全弁を取り付けるとよい。
安全弁の大きさを制限するために,流量調節オリフィスを冷却器の上流のサンプリングラインに置く
ことができる。
− 冷却水には,腐食に対する薬品処理を行った適切なイオン交換水を用いるとよい。都市の水道水は,
使用者と冷却器製造業者との間で事前の合意なしにこの目的に使用してはならない。
− 冷却器の適切な設計を附属書B図1に示す。
− 前段,後段冷却器の負荷に対する代表的な設計諸元を附属書B表1に示す。
− 丸ボイラ及び熱水ボイラ (hot water boilers) 用の冷却器は,一般に構造が簡単で,多量の冷却用脱塩水
を要しない。
附属書B表1 試料冷却器の運転諸元
冷却器
前段
後段
試料入口条件
水
流量 (kg/s)
0.34
0.34
温度 (℃)
355
100
圧力 (MPa)
19
19
蒸気
流量 (kg/s)
0.17
0.17
温度 (℃)
570
100
圧力 (MPa)
19
19
試料出口温度 (℃)
<50
25±2
水入口温度 (℃)
<30
<20
水出口温度 (℃)
<70
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B図1 代表的な試料冷却器の例
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C(参考)
報告書−ボイラ施設における水及び蒸気のサンプリング
序文 この附属書は,ボイラ施設における水及び蒸気のサンプリングの報告書の一例を参考として示した
もので,規定の一部ではない。
報告書−ボイラ施設における水及び蒸気のサンプリング
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K 0410-3-7 : 2000 (ISO 5667-7 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
平成9年度 国際整合化調査研究委員会 構成表(平成10年3月現在)
氏名
所属
(委員長)
○ 並 木 博
横浜国立大学名誉教授
○ 宮 崎 正 浩1) 工業技術院標準部消費生活規格課
谷 重 男2) 通商産業省環境立地局産業施設課
林 明 夫3) 通商産業省環境立地局環境指導課
○ 畑 野 浩
環境庁水質保全局水質規制課
○ 佐 藤 寿 邦
横浜国立大学工学部
中 村 和 憲
工業技術院生命工学工業技術研究所
○ 田 尾 博 明
工業技術院資源環境技術総合研究所水圏環境保全部
福 井 学
工業技術院資源環境技術総合研究所水圏環境保全部
田 中 宏 明
建設省土木研究所下水道部
菅 谷 芳 雄
国立環境研究所地域環境研究グループ
土 屋 悦 輝
東京都立衛生研究所環境保健部
渡 辺 真利代
東京都立衛生研究所環境保健部
竹 内 準 一
東京都下水道局
○ 日 野 隆 信
千葉県衛生研究所
○ 小 倉 光 夫
神奈川県環境科学センター水質環境部
○ 坂 本 勉
財団法人日本規格協会技術部
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会技術部
髙 月 峰 夫
財団法人化学品検査協会安全性評価技術研究所
○ 梅 崎 芳 美
社団法人産業環境管理協会名誉参与
横 倉 清 治
社団法人日本環境測定分析協会(三菱マテリアル株式会社)
竹 島 正4)
社団法人日本下水道協会(東京都下水道局)
狩 野 久 直
日本錬水株式会社研究所
久 島 俊 和
オルガノ株式会社総合研究所
○ 川 瀬 晃
セイコー電子工業株式会社科学機器事業部
米 倉 茂 男
元東京都立工業技術センター(現東京都立産業技術研究所)
岩 﨑 岩 次
社団法人日本工業用水協会
(事務局)
宮 寺 秀 雄
社団法人日本工業用水協会
本 郷 秀 昭
社団法人日本工業用水協会
備考
1):発足当初は,西出徹雄(工業技術院標準部消費生活規格課)
2):発足当初は,乾 敏一(通商産業省環境立地局産業施設課)
3):発足当初は,藤冨正晴(通商産業省環境立地局環境指導課)
4):発足当初は,山田昭捷(東京都下水道局)
○印は,試料採取関係の小委員会委員兼任
(文責 梅崎 芳美)