K 0350-40-10 : 2002
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本工業用水協会 (JIWA) /財団
法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工
業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
JIS K 0350には,次に示す部編成がある。
JIS K 0350-10-10 用水・排水中の一般細菌試験方法
JIS K 0350-20-10 用水・排水中の大腸菌群試験方法
JIS K 0350-30-10 用水・排水中の従属栄養細菌試験方法
JIS K 0350-40-10 用水・排水中の全細菌試験方法
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0350-40-10 : 2002
用水・排水中の全細菌試験方法
Testing method for enumeration of total bacteria
in industrial water and wastewater
1. 適用範囲 この規格は,工業用水及び工場排水中の全細菌数の試験方法について規定する。
2. 引用規格 付表1に示す規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成
する。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
3. 定義 この規格で用いられる主な用語の定義は,JIS K 0101, JIS K 0102, JIS K 0550及びJIS K 0211
によるほか,次による。
3.1
全細菌 試料中に含まれるすべての細菌をいう。
4. 共通事項 共通事項は,次による。
4.1
通則 化学分析に共通する一般事項は,JIS K 0050による。
4.2
水 この規格で用いる水は,JIS K 0557に規定するA2又はA3(1)の水。使用前に4.4d)のろ過除菌を
行う。
注(1) 金属製の蒸留装置は用いない。
4.3
試薬
a) 試薬は,品目指定されている場合には,JISに規定されているものの最上級の品質のものを用い,JIS
に規定されているものがない場合には,試験に支障のないものを用いる。
b) 試薬類の溶液の濃度は,一般に,質量濃度はg/L又はmg/Lで示す。
c) 試薬類の調製に用いる水は,4.2の水による。
d) 試薬類の名称は,国際純正及び応用化学連合 (IUPAC) の無機化学命名法及び有機化学命名法を基に
して,社団法人日本化学会が定めた化合物命名法及びJIS試薬の名称とできるだけ整合を図った。
e) 試薬類及び廃液などの取扱いについては,関係法令などに従い十分に注意する。
4.4
器具などの滅菌及び除菌操作 器具などの滅菌及び除菌操作は,次による。
a) 乾熱滅菌 ガラス製及び金属製器具類の滅菌に用いる。約170℃で約1時間滅菌する。
b) 高圧蒸気滅菌 培地,希釈水,試料容器,使用済み培地などの滅菌に用いる。121℃で15〜20分間滅
菌する。
c) 火炎滅菌 試験管及びフラスコの口部などの滅菌に用いる。試験管及びフラスコは,培養操作の前後
に斜めに持って回しながら口部を火炎の中にしばらく入れて滅菌する。
d) ろ過除菌 水又は溶液の除菌に用いる。6.2d)のろ過器(図2参照。)に示すろ過装置で,ろ過材に孔
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径0.2μm,直径約50mmのメンブレンフィルター(2)を用い,ろ過して除菌する。
注(2) 使用するメンブレンフィルターは,あらかじめ,アルミニウムはく(又は硫酸紙など)に包み,
ガラス製ペトリ皿に入れてb)の高圧蒸気滅菌を行う。又は滅菌済みの市販品を用いてもよい。
メンブレンフィルターの取扱いには,6.2b)のピンセットを用いる。
4.5
消毒操作 消毒操作は,次による。
a) 試験操作の前後には,手指及び実験台を消毒する。手指の消毒にはクレゾール石けん液 (10g/L),陽
性石けん液 (1〜10g/L),消毒用エタノール(日本薬局方に規定するもの)又はエタノール (80vol%)
[JIS K 8102に規定するエタノール (95) を用いて調製する。]を用いる。
実験台は,陽性石けん液 (10g/L),消毒用エタノール又はエタノール (80vol%) などを噴霧するか,
これらを含ませた布でぬぐって消毒する。
b) 使用済みのピペット,試料容器,採水器などの器具は,クレゾール石けん液 (30〜50g/L) などの消毒
液中に1日間浸した後(又は高圧蒸気滅菌した後),消毒液が完全に除去されるまで,水でよくすすぐ。
4.6
ガラス器具類 ガラス器具類は,一般にJIS R 3503及びJIS R 3505に規定するものを使用する。た
だし,特殊な器具を必要とする場合には,それぞれの項目に,その一例を図示又は説明する。また,加熱
操作を伴う場合には,JIS R 3503に規定するほうけい酸ガラス−1を用いる。
5. 試料
5.1
試料の採取 試料は,採水器又は試料容器を用いて採取する。
5.1.1
試薬 試薬は,次による。
a) グルタルアルデヒド溶液 1,5−ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)溶液の電子顕微鏡用。
参考 市販品がある。グルタルアルデヒド溶液は,20%前後のものが扱いやすい。
5.1.2
器具 器具は,次による。
a) 採水器 ハイロート採水器(3)。採水器は,携帯箱に収めて4.4a)の乾熱滅菌を行う。図1に一例を示す。
注(3) ハイロート採水器による採取が困難な深度からの採取には,バンドーン採水器を用いてもよい。
この場合は,b)の試料容器に移しかえる。
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図1 ハイロート採水器の一例
b) 試料容器 共栓ガラス瓶100ml。試料容器(4)は,栓部と首部をアルミニウムはく(又は硫酸紙)など
で覆って4.4a)の乾熱滅菌又は4.4b)の高圧蒸気滅菌を行う。又は滅菌済みの細菌試験用のポリエチレ
ン瓶を用いてもよい。試料採取時まで汚染を受けないように注意する。
注(4) 残留塩素などの酸化性物質を含む試料を採取する場合には,試料容器にJIS K 8637に規定する
チオ硫酸ナトリウム五水和物(粉末にしたもの。)20〜30mgを入れ,4.4b)の高圧蒸気滅菌又は
オキシラン(エチレンオキシド)滅菌をしておく。
市販の滅菌済みの細菌試験用ポリエチレン瓶であらかじめチオ硫酸ナトリウムの入っている
ものを用いてもよい。
5.1.3
操作 試料の採取は,次による。
a) 表層水の採取 湖沼,河川,水路排水口及び貯水槽などの表層水で直接採取できる場合は,試料容器
で試料を採取する。この際,手指に触れた水が採取されないように注意する。直接採取できない場合
は,採水器を用いて採取する(3)。
b) 各深度の水の採取 一定の深さの水は,採水器を用いて採取する(3)。
c) 給水栓からの採取 給水栓の材質が火炎滅菌に耐えるものである場合,あらかじめ,4.4c)の火炎滅菌
に準じて給水栓口を滅菌し,栓を開き,配管中の水を十分に放出した後,試料容器に採取する。
火炎滅菌ができない場合は,あらかじめ,給水栓口の周辺及び内部の汚れを除去し,エタノール
(80vol%) などで消毒しておく。栓を開き,配管中の水を十分に放出した後,試料容器に採取する。
d) 配管,装置からの採取 c)と同様に操作して採取する。
5.2
試料の取扱い 試験は試料採取後,直ちに行う。直ちに試験ができない場合には,グルタルアルデ
ヒド溶液を0.1〜1.0vol%になるように加え,0〜5℃(凍結させない。)の暗所に保存する。
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6. 試験方法 全細菌の試験は,細菌のDNAを3,6−ビス(ジメチルアミノ)アクリジン(アクリジンオ
レンジ)で染色し,励起波長460〜490nmで青白く又はだいだい色の蛍光を発するものを,又は4ʼ, 6−ジ
アミジノ−2−フェニルインドール (DAPI) で染色し,励起波長330〜380nmで青白い色の蛍光を発するも
のを全細菌として計数する方法を適用する。
6.1
試薬 試薬は,次による。
6.1.1
水 4.2による。
6.1.2
染色試薬 染色試薬は,次による。
a) アクリジンオレンジ溶液 (10g/L) アクリジンオレンジ(5)1gを水100mlに溶かした後,4.4d)のろ過
除菌を行う。
b) DAPI溶液 (1g/L) 4ʼ, 6−ジアミジノ−2−フェニルインドール2塩酸塩 (DAPI)(5)0.1gを水100mlに
溶かした後,4.4d)のろ過除菌を行う。この溶液は,滅菌済みの褐色瓶に移し,冷暗所で保存する。
注(5) 発がん性の疑いがあるので,皮膚,衣服などに付着しないように注意する。
6.1.3
無蛍光油浸油 蛍光顕微鏡用無蛍光油
参考 市販品がある。
6.2
器具及び装置 器具及び装置は,次による。
a) メスピペット 1〜10ml。ピペット滅菌箱に先端を先にして入れるか,アルミニウムはく又は硫酸紙
に包んで,4.4a)の乾熱滅菌をしておく。
b) ピンセット 先端が平らで滑らかなもの。使用直前に4.4c)の火炎滅菌を行う。
c) メンブレンフィルター(黒) 孔径0.2μm,直径約25mmの黒に着色されたポリカーボネート製メン
ブレンフィルター。
d) ろ過器(分離形) 図2に一例を示す。ろ過器の各部をアルミニウムはく(又は硫酸紙など)に包ん
で,材質に適した滅菌をしておく。
A:上部ろ過管 B1:メンブレンフィルター B2:メンブレンフィルター(黒)
C:メンブレンフィルター支持台 D:下部ろ過管 E:ゴム栓(シリコーン) F:金属製クランプ
G:吸引瓶
図2 ろ過器(分離形)の一例
e) スライドガラス JIS R 3703に規定する品質2種の標準形 (76.0×26.0mm)
f)
カバーガラス JIS R 3702に規定する品質2種(24×24mm又は32×24mm)
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g) 落射蛍光顕微鏡
h) 接眼用方眼ミクロメーター
i)
対物ミクロメーター
j)
乾熱滅菌器 160〜200℃に調節できるもの。
k) 高圧蒸気滅菌器 JIS T 7322又はJIS T 7324に規定するもので,121℃以上に加熱でき,器内圧力
198kPaで使用できるもの。
6.3
器具などの滅菌操作 器具などの滅菌操作は,4.4による。
6.4
消毒操作 消毒操作は,4.5による。
6.5
試料の希釈 試料の希釈は,予想される細菌数によって,ろ過除菌した水で薄め希釈する。目安と
して,ろ過の際,10ml以上のろ過量となり,計数時には一つの方眼に30〜40の細菌が分布していること
が望ましい。
6.6
操作 操作は,次のとおり行う。
a) ろ過器下部のメンブレンフィルター支持台(スクリーン)(6)の上に,ピンセットを用いて,メンブレ
ンフィルター(黒)(7)をおき(6),ろ過器に固定する。
b) 5.によって採取した試料又は6.5で調製した希釈試料をメスピペット10mlを用いて,メンブレンフィ
ルター(黒)全体にいきわたるようにして注いだ後,吸引しろ過する。
c) 染色試薬約2mlをろ過器上部ろ過管の壁に沿って,円を描くように注いだ後,3〜5分間染色する(8)。
d) 染色試薬を吸引ろ過した後,水3〜10mlをc)と同様に注ぎ入れ,吸引ろ過し,メンブレンフィルター
(黒)を水洗いする(9)。
e) 無蛍光油1滴を滴加したスライドガラスのうえに,d)のメンブレンフィルター(黒)のろ過面を上に
して置き,さらに無蛍光油1滴を滴加する。この上に気泡が入らないように注意して,カバーガラス
で覆う。
f)
落射蛍光顕微鏡を用いて,染色試薬にアクリジンオレンジ溶液 (1g/L) を用いた場合は励起波長460
〜490nmで青白く又はだいだい色の蛍光を発しているものを,DAPI溶液 (1g/L) を用いた場合は励起
波長330〜380nmで青白い色の蛍光を発しているものを,1 000〜1 500倍で観察して全細菌として計
数する。
g) 接眼レンズに挿入した方眼ミクロメーターの基盤の面積 (mm2) を対物ミクロメーターであらかじめ
測定しておき,基盤目内の全細菌を計数し,次の式によって全細菌を算出する。計数は,無作為に少
なくとも10個の方眼について行う。
N
A
A
n
T
1
10
1
6
2
×
×
×
=
ここに,
T: 全細菌数(個/ml)
n: 接眼ミクロメーター区画の平均細菌数(個)
A1: 接眼ミクロメーターの全区画の面積 (μm2)
A2: メンブレンフィルター(黒)のろ過面積 (mm2)
N: ろ過した試料量 (ml)
注(6) あらかじめ水2,3滴を滴下しておくと,気泡が入りにくくなる。
(7) メンブレンフィルター(黒)の上に細菌が均一に分布するように,直径が同じパッド又はガラ
ス繊維ろ紙などをメンブレンフィルター(黒)の下に敷くとよい。
(8) あらかじめきれいに洗浄した小試験管 (12×105mm) に試料をとり,これにアクリジンオレン
ジを0.01vol%になるように加え,5〜10分間染色後,d)の操作を行ってもよい。
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(9) これらの操作は,メンブレンフィルター(黒)が乾燥しないうちに手早く行う。
備考 使用済みの染色試薬は,毒性があるので次亜塩素酸ナトリウム溶液などで処理する。
7. 結果の表示 6.6g)で得られた全細菌の個数(個/ml)は,有効数字2けたに数値を丸める。
結果には,試料の採取場所,採取日時,試験日時,試験方法(染色試薬)を付記する。
付表1 引用規格
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0101 工業用水試験方法
JIS K 0102 工場排水試験方法
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0550 超純水中の細菌数試験方法
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 8102 エタノール (95) (試薬)
JIS K 8637 チオ硫酸ナトリウム五水和物(試薬)
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS R 3505 ガラス製体積計
JIS R 3702 顕微鏡用カバーガラス
JIS R 3703 顕微鏡用スライドガラス
JIS T 7322 医療用高圧蒸気滅菌装置
JIS T 7324 医療用小形高圧蒸気滅菌器
日本工業標準調査会標準部会 環境・資源循環専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
二 瓶 好 正
東京理科大学理工学部
(委員)
間 邦 彦
日本製紙連合会
稲 葉 敦
独立行政法人産業技術総合研究所
指 宿 堯 嗣
独立行政法人産業技術総合研究所
今 城 高 之
社団法人日本自動車工業会
大 谷 郁 二
社団法人プラスチック処理促進協会
川 合 正 剛
社団法人日本化学工業協会
久 米 猛
財団法人化学物質評価研究機構
小 林 珠 江
株式会社西友
酒 井 伸 一
独立行政法人国立環境研究所
佐 野 真理子
主婦連合会
竹 居 照 芳
日本経済新聞社
辰 巳 菊 子
社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
永 田 勝 也
早稲田大学理工学部
中 山 哲 男
社団法人産業環境管理協会
服 部 重 彦
社団法人日本分析機器工業会
福 田 輝 夫
社団法人日本電機工業会
松 田 美夜子
生活環境評論家リサイクル研究家(富士常葉大学環境防災学部)
山 岸 千 丈
社団法人日本建材産業協会
山 田 範 保
環境省大臣官房