2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0305-1997
排ガス中のトリクロロエチレン及び
テトラクロロエチレン分析方法
Methods for determination of trichloroethylene
and tetrachloroethylene in flue gas
1. 適用範囲 この規格は,ダクトなどに排出される排ガス中のトリクロロエチレン及びテトラクロロエ
チレン分析方法について規定する。
備考1. この規格において排ガスとは,工場及び事業所において,トリクロロエチレン及びテトラク
ロロエチレンを取り扱う各種の製造工程などから排出されるガスをいう。ただし,燃焼排ガ
スは含まない。
2. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0095 排ガス試料採取方法
JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析通則
JIS K 0125 用水・排水中の揮発性有機化合物試験方法
JIS K 8666 トリクロロエチレン(試薬)
JIS K 8848 ヘキサン(試薬)
JIS Z 8401 数値の丸め方
3. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考値として併記したものである。
2. 共通事項 共通事項は,JIS K 0050, JIS K 0095及びJIS K 0114による。
3. 分析方法の種類及び概要 分析方法は,水素炎イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法及び電
子捕獲検出器を用いるガスクロマトグラフ法の2種類とし,分析方法の種類及び概要は表1のとおりとす
る。
2
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表1 分析方法の種類及び概要
分析方法の種類
分析方法の概要
要旨
定量範囲(1)
volppm
(mg/m3N)(2)
水素炎イオン化検
出器を用いるガス
クロマトグラフ法
排ガスを直接捕集瓶に採取するか又
は常温吸着法によって濃縮管に捕集
した後,水素炎イオン化検出器を備
えたガスクロマトグラフで定量す
る。
捕集瓶による場合
トリクロロエチレン
1以上
(6以上)
テトラクロロエチレン
1以上
(7以上)
濃縮管による場合
トリクロロエチレン
0.01以上
(0.06以上)
テトラクロロエチレン
0.01以上
(0.07以上)
電子捕獲検出器を
用いるガスクロマ
トグラフ法
排ガスを直接捕集瓶に採取し,電子
捕獲検出器を備えたガスクロマトグ
ラフで定量する。
トリクロロエチレン
0.005〜1
(0.03〜6)
テトラクロロエチレン
0.001〜1
(0.007〜7)
備考1. 水素炎イオン化検出器を用いる場合の定量上限値は検量線の直線範囲までとする。
2. 電子捕獲検出器の定量上限値を超えた場合は,水素炎イオン化検出器で定量する。
注(1) 定量下限値は,試料ガス導入量2ml(捕集瓶による場合),200ml(濃縮管による場合)の値である。
(2) 単位の “N” はNormalの頭文字であり,標準状態(0℃,1気圧)を示している。
4. 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。
4.1
検量線用ガス瓶(3)(4) 図1に示す内容量既知のガラス製の瓶 (1 000ml)。
4.2
試料ガス採取器具
(1) 捕集瓶(3)(4) 図1に示す内容量1 000mlのガラス製の瓶。
注(3) 電子捕獲検出器を用いる場合は,あらかじめ検量線用ガス瓶及び捕集瓶の内部に窒素を充てん
し,この窒素中に分析上の妨害となるものが含まれていないことを確認する。
(4) 4.1の検量線用ガス瓶と4.2(1)の捕集瓶は同じものでよい。
なお,検量線用ガス瓶として使用する場合は,あらかじめ内容量を検量線用ガス瓶に水を満
たしたときの質量からJIS K 0050の9.3.2(全量フラスコ)に準じて測定しておく。
また,捕集瓶として使用する場合は,絶対圧力1kPa {7.5mmHg} 以下を1時間以上保持でき
るものであること。
図1 検量線用ガス瓶・捕集瓶(一例)
3
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(2) 濃縮管 図2に示すガラス製のもので、内部をアセトンなどで洗浄乾燥後,捕集剤(5)を充てんし,両
端をシリカウールでふさぎ,これを窒素気流中で加熱し,分析上の妨害となるものを除去したもの(6)(7)。
注(5) 捕集剤には,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを吸着し,かつ,200℃前後で速や
かにトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを放出する性能をもつものを用いる。
また,捕集剤の捕集能力は,捕集時の温度,捕集物質の種類と濃度,捕集ガスの吸引流量な
どによって異なるため,あらかじめ濃縮捕集効率を確認しておく。
捕集剤には,多孔性高分子形(ポーラスポリマー)及び吸着形(活性炭,合成ゼオライト)
充てん剤などがある。
(6) 例えば,ポーラスポリマービーズ0.6gを充てん,窒素気流中,230℃で約2時間加熱処理する
とよい。
(7) 密封時に必ずふっ素樹脂栓を用いる。
また,注射針を装着する場合には,装着後内部の気密を保つため,ふっ素樹脂系のテープを
巻く。
図2 濃縮管(一例)
備考 捕集瓶の代わりにトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの吸着及び透過並びに変質が生じない
材質の捕集バッグを用いてもよい。
4.3
試料ガス採取装置 濃縮管を用いる場合の試料ガス採取装置を,図3に示す。
図3 試料ガス採取装置(一例)
4.4
ガスクロマトグラフ ガスクロマトグラフは,表2のとおりとする。
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表2 ガスクロマトグラフ(一例)
検出器
水素炎イオン化検出器
電子捕獲検出器
キャリヤーガス
窒素又はヘリウム(99.9vol%以上)
窒素(99.999vol%以上)
燃料ガス
水素
−
助燃ガス
空気又は酸素
−
カラム用管
内径2〜4mm,長さ2〜5mのガラス管,ステンレス鋼管又はふっ素樹脂管。
カラム充てん剤
酸洗浄した白色けい藻土担体(粒径180〜250μm)に適当な固定相液体を
含浸させたもの。
備考 ガスクロマトグラフの分離カラムとしてキャピラリーカラムを用いることができる。た
だし,管の材質は,溶融シリカ又はほうけい酸ガラスで内径0.2〜1.5mm,長さ10〜100m,
液層の膜厚0.2μm以上のもの。
参考1. 白色けい藻土担体は,クロモソルブWなどの名称で市販されている。
2. 例えば,カラム充てん剤はフェニルシリコーン油(シリコーンDC−550)をけい藻土
担体に10〜20%含浸させたもの,ポリエチレングリコール (PEG20M, PEG600) をけ
い藻土担体に10〜20%含浸させたもの,又はスクワランを10〜25%含浸させたもの
を用いるとよい。
4.5
気化導入装置 濃縮管に捕集した試料ガスをガスクロマトグラフへ導入するために用いるもので,
図4に示す温度調節器付き加熱器,三方コックなどからなる。
図4 気化導入装置(一例)
5. 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(1) トリクロロエチレン JIS K 8666に規定する純度99.5%以上のもの。
(2) テトラクロロエチレン 純度99.0%以上のもの。
(3) ヘキサン JIS K 8848に規定するもので,7.においてトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン
の保持時間に相当する位置にピークのないもの。
(4) トリクロロエチレン溶液 (10vol%) (1)のトリクロロエチレン10mlを全量ピペットで全量フラスコ
100mlにとり,ヘキサンを標線まで加え,よく振り混ぜたもの。
(5) テトラクロロエチレン溶液 (10vol%) (2)のテトラクロロエチレン10mlを全量ピペットで全量フラ
スコ100mlにとり,ヘキサンを標線まで加え,よく振り混ぜたもの。
(6) 検量線用ガス
(a) 水素炎イオン化検出器を用いる場合の検量線用ガス 4.1の検量線用ガス瓶(8)に,トリクロロエチレ
ン2〜6μl又はトリクロロエチレン溶液 (10vol%) 2〜6μlを段階的にマイクロシリンジで正確に注入
し揮発させたもの。
また,テトラクロロエチレンについてもトリクロロエチレンと同様な手順で2〜6μlを段階的にマ
イクロシリンジで正確に注入し揮発させたもの。
5
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(b) 電子捕獲検出器を用いる場合の検量線用ガス 4.1の検量線用ガス瓶(8)に,トリクロロエチレン溶液
(10vol%) 4μlをマイクロシリンジで正確に注入し揮発させ,気体用シリンジを用いてこれを1〜10ml,
段階的に検量線用ガス瓶(8)に注入したもの。
また,検量線用ガス瓶(8)に,テトラクロロエチレン溶液 (10vol%) 2μlをマイクロシリンジで正確
に注入し揮発させ,気体用シリンジを用いてこれを0.5〜5ml,段階的に検量線用ガス瓶(8)に注入し
たもの。
注(8) あらかじめ内部を窒素(99.999vol%以上)で置換しておく。
6. 試料ガスの採取 試料ガスの採取方法は,次に規定するほか,JIS K 0095による。
(1) 捕集瓶による場合 試料ガスの採取に先立ち,除湿管を通して(9)4.2(1)の捕集瓶をあらかじめ1kPa
{7.5mmHg} 以下の真空に脱気しておき,内径約2mmのふっ素樹脂製又はガラス製の導管(10)を用いて
試料ガスを採取する(11)。
注(9) 除湿を必要とする場合に用いる。
(11) 管径の大きい導管では,管内に試料ガスを満たした状態で採取する。
(12) 気温,排ガス温度及び圧力を測定しておき,補正が必要なときに用いる。排ガス温度が著しく
高い場合のほかは,そのときの気温をもって採取時の試料ガス温度とする。
(2) 濃縮管による場合 濃縮管を直接ダクト内に入れ濃縮管に接続した注射筒で試料ガスを吸引する
(11)(12)。濃縮管を外し,ふっ素樹脂栓で密栓してシリカゲルデシケータの中に保存する。
注(12) 例えば図2の濃縮管を用いる場合,試料ガスの吸引流量は約200ml/minとし,試料ガス中のトリ
クロロエチレン又はテトラクロロエチレンの濃度に応じて吸引量を調節する。
7. 操作 操作は,次の手順で行う。
7.1
水素炎イオン化検出器を用いる場合
(1) 分析条件の設定 ガスクロマトグラフの分析条件は,次に示す(a)〜(f)について設定する。
(a) カラム槽温度 60〜100℃
(b) 試料気化室温度 150〜250℃
(c) 検出器槽温度 150〜250℃
(d) キャリヤーガス流量 20〜80ml/min
(e) 燃料ガス流量 20〜50ml/min
(f) 助燃ガス流量 0.5〜1.2l/min
(2) 定量 定量は,次によって行う。
(a) 捕集瓶による場合 6.(1)によって捕集瓶に採取した試料ガスの一定量を,捕集瓶のシリコーンゴム
栓を通して気体用シリンジで正確にとり,ガスクロマトグラフに導入してクロマトグラムを記録す
る。試料導入量は0.5〜5mlとし,あらかじめ作成した検量線の範囲内に入るように試料量を調節す
る(13)。
クロマトグラムからトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンのピーク面積(又はピーク高
さ)を測定し,あらかじめ作成した検量線から試料ガス中のトリクロロエチレン又はテトラクロロ
エチレン量を求める。
注(13) 検量線の範囲を超える場合には,試料ガスを窒素(99.999vol%以上)を用いて希釈してから行
う。
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(b) 濃縮管による場合 試料採取に用いた濃縮管にシリコーンゴム栓と注射針を取り付け,これを図4
のように気化導入装置に接続する。次に三方コックの流路を切り換えて,濃縮管にキャリヤーガス
を流す。記録計の指示が安定した後,濃縮管を室温から200℃まで約1分間で加熱昇温させ,試料
をガスクロマトグラフに導入してクロマトグラムを記録する。
クロマトグラムからトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンのピーク面積(又はピーク高
さ)を測定し,あらかじめ作成した検量線から試料ガス中のトリクロロエチレン又はテトラクロロ
エチレン量を求める。
備考 捕集した試料の定量操作における繰返し精度は,変動係数で10%以内である。
7.2
電子捕獲検出器を用いる場合
(1) 分析条件の設定 ガスクロマトグラフの分析条件は,次に示す(a)〜(d)について設定する。
(a) カラム槽温度 60〜100℃
(b) 試料気化室温度 150〜250℃
(c) 検出器槽温度 150〜250℃
(d) キャリヤーガス流量 20〜80ml/min
(2) 定量 定量は,次によって行う。
(a) 捕集瓶による場合 6.(1)によって捕集瓶に採取した試料ガスの一定量を,捕集瓶のシリコーンゴム
栓を通して気体用シリンジで正確にとり,ガスクロマトグラフに導入してクロマトグラムを記録す
る。試料導入量は0.1〜2mlとし,あらかじめ作成した検量線の範囲内に入るように試料量を調節す
る(13)。
クロマトグラムからトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンのピーク面積(又はピーク高
さ)を測定し,あらかじめ作成した検量線から試料ガス中のトリクロロエチレン又はテトラクロロ
エチレン量を求める。
備考 捕集した試料の定量操作における繰返し精度は,変動係数で10%以内である。
8. 検量線の作成(14) 5.(6)で調製した検量線用ガスを用い,それぞれ次によって検量線を作成する。
注(14) 電子捕獲検出器付きガスクロマトグラフの場合は,JIS K 0125の5.5(4)(操作)に規定する作成
方法を準用してもよい。
(1) 捕集瓶による場合 検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて,検量線用ガスを正確にとり,ガス
クロマトグラフに導入してクロマトグラムを記録する。トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレ
ン量とピーク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。
(2) 濃縮管による場合 検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて,検量線用ガスを正確にとり,シリ
コーンゴム栓をした濃縮管に注入する。この濃縮管に注射針を取り付け,図4のように気化導入装置
に接続し,以下7.1(2)(b)に従って,トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレンをガスクロマトグ
ラフに導入してクロマトグラムを記録する。トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン量とピー
ク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。
9. 計算 試料ガス中のトリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン濃度を,次の式によって算出し,
JIS Z 8401によって有効数字2けたに丸める。
3
10
×
Vs
Vc
C=
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.
22
'
M
C
C
×
=
ここに,
C: 試料ガス中のトリクロロエチレン
又はテトラクロロエチレン濃度 (volppm)
C': 試料ガス中のトリクロロエチレン
又はテトラクロロエチレン濃度 (mg/m3N)
VC: 検量線から求めたトリクロロエチレン
又はテトラクロロエチレン(ガス)量 (μ1)
VS: ガスクロマトグラフ分析に用いた試料ガス量 (ml)
M: トリクロロエチレンの分子量 (131.39)
又はテトラクロロエチレンの分子量 (165.83)
8
K 0305-1997
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原案作成委員会 構成表(敬称略)
氏名
所属
(委員長)
橋 本 芳 一
慶應義塾大学
指 宿 尭 嗣
工業技術院公害資源研究所
細 川 幹 夫
工業技術院標準部繊維化学規格課
橋 本 正 義
通商産業省基礎産業局化学品安全課
倉 剛 進
通商産業省立地公害局
坂 本 純
環境庁大気保全局
松 下 秀 鶴
厚生省国立公衆衛生院
川 瀬 晃
工業技術院化学技術研究所
伊 藤 裕 康
環境庁国立環境研究所
今 野 貞 夫
東京都環境保全局
田 子 進 一
通商産業検査所
平 野 耕一郎
横浜市公害研究所
木 村 啓之介
社団法人日本作業環境測定協会
橋 本 俊 夫
クロロカーボン衛生協会
斉 藤 寿
日本分析機器工業会
西 海 里
社団法人日本環境測定分析協会
山 田 和 夫
日本試薬連合会
出 島 茂
全国クリーニング環境衛生同業組合連合会
米 倉 茂 男
東京都鍍金工業組合
黒 木 勝 也
財団法人日本規格協会
辛 島 正 純
財団法人化学品検査協会
(事務局)
大 木 正 己
財団法人化学品検査協会
若 月 生 治
財団法人化学品検査協会