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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 0229-1992 

化学物質などによるミジンコ類の 

遊泳阻害試験方法 

Testing methods for determination of the 

inhibition of the mobility of Daphnia by chemicals 

1. 適用範囲 この規格は,甲殻類,枝角目のオオミジンコ (Daphnia magna) 又はミジンコ (Daphnia pulex) 

(以下“ミジンコ類”という。)に対する化学物質,工場排水,表面水,地下水などによる遊泳阻害を試験

する方法について規定する。 

備考1. 物質の毒性に関する生物の感受性は種によってかなり異なるため,この規格で求めたミジン

コ類に対する化学物質など水溶液中の物質の影響を他の種へ適用してはならない。 

2. ISO 6341に規定された方法を,附属書に示す。 

3. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 7411 ガラス製棒状温度計(全浸没) 

JIS K 0094 工業用水・工場排水の試料採取方法 

JIS Z 8802 pH測定方法 

4. この規格の対応国際規格を,次に示す。 

ISO 6341-1989 Water quality−Determination of the inhibition of the mobility of Daphnia magna 

Straus (Cladocera, Crustacea)  

2. 用語の定義 この規格で用いる用語の定義は,次による。 

(1) 試験原液 希釈して試験溶液を調製するために用いる化学物質,工場排水などの原液。 

(2) 希釈水 所定の試験溶液を調製するために,試験原液を希釈するための水。 

(3) 試験溶液 試験原液と希釈水を用いて調製した各試験区の供試水。 

(4) 初期設定濃度 試験開始時設定した化学物質などの濃度,又は工場排水であれば希釈倍率。このとき,

24時間後における50%遊泳阻害される初期濃度を24h-EC(I)50とし,48時間後における50%遊泳阻

害の初期濃度を求めることもでき,このときは48h-EC(I)50と表す。 

また,ミジンコ類の遊泳阻害率が100%である最低濃度と,0%である最高濃度を示すことが望まし

い。 

(5) 遊泳阻害 化学物質などのミジンコ類への急性毒性を判定するために用いるもので,試験溶液を穏や

かにかき混ぜた後の15秒間に,触角が動いても遊泳できない状態。 

3. 共通事項 試料水の採取については,JIS K 0094による。 

K 0229-1992  

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4. 測定方法の概要 実験室でミジンコ類を順化飼育しておき,化学物質などを加えて24時間後において

ミジンコ類の50%が遊泳阻害される初期設定濃度を求める。 

5. 供試生物 試験に使用する生物は,ミジンコ類とする。 

ミジンコ類は,試験に用いる希釈水とできるだけ同一の組成の水の中で,水温20±2℃,休眠卵が生じ

ない良好な条件下で飼育する。ミジンコ類の餌料は,培養した緑藻類などとする。 

試験するときは,累代飼育した生後2週間以上のミジンコ雌成体を試験前日に新しく用意した容器に移

し,翌朝までに産出した幼体(生後24時間未満)を選別しておき供試生物とする。ピペット又はふるいな

どを用い成体と幼体を選別する。 

供試生物として用いるミジンコ類の飼育法などは,次のとおりとする。 

5.1 

供試生物の入手 供試生物はミジンコ類とし,種が明確で経歴の明らかなミジンコを入手する。 

5.2 

飼育設備及び器具 

(1) 温度 温度調節可能な恒温槽を利用するか,室温調節可能な場所を選ぶ。 

(2) 照明 蛍光灯を用い照度1 000〜2 000lxが保てるようにし,タイマーで明暗周期を調節する。 

(3) 飼育容器 表面積の大きい容器。 

(4) 選別器具 成体と幼体を選別するには,ミジンコのサイズに合ったステンレス鋼製ふるいなどを用い

る。 

また,ミジンコの移し替えにはスポイトなどを用いる。 

(5) 餌料としての藻類などを培養するための器具 容器は三角フラスコなどの透明容器が好ましく,エア

コンプレッサーなどを用いて常時通気できるもの。照明は連続的に照射し,種に適切な照度を保つこ

とができる蛍光灯。 

5.3 

飼育法 

(1) 環境条件 

(a) 水温 20±2℃ 

(b) 飼育水 脱塩素した水道水(1),井戸水,又は合成水(2)。 

(c) pH pHは6.7〜8.5とする。 

(d) 溶存酸素濃度 飽和値の60%以上。 

(e) 光 1 000〜2 000lxの照度で,照明時間は16時間/8時間の明暗周期。 

(f) 餌料 緑藻(Selenastrum capricornutum,Scenedesmus quadricauda,Chiorella vulgarisなど),原生動

物(Chlamydomonas reinhardtiiなど),酵母などを与えると良好な繁殖性を示す。 

(g) 餌料の培養法 緑藻類や原生動物の培養には適切な培地を調製し,連続培養を行う。餌料として使

用する場合は対数増殖期のものを遠心分離し希釈水に懸濁して与える。 

(2) 単一株からの分離法 単為生殖によって繁殖しているミジンコの雌1個体を50〜100mlの容器に移し,

これから産出される幼体を累代飼育用とする。 

(3) 累代飼育法 単一株からの分離法に従って得られたミジンコを容器に入れ,定期的に給餌しながら2

〜4週間飼育し,この間に産出した幼体(3回以降のものが望ましい。)を累代飼育用として残してい

く。この場合,生物密度が高くなると餌料不足や水質の劣化が生じ,繁殖率が低下するため定期的に

飼育水を交換する必要がある。 

急激な温度変化を与えると繁殖率に影響が現れるので注意する。 

注(1) ミジンコ類に対して有毒であることが知られている遊離塩素,重金属,アンモニア,農薬など

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を含んではならない。 

(2) 調製法の一例を附属書の5.2に示す。 

5.4 

雌雄の判別法 第一触角の形態によって,判別する。雄では非常に発達したかぎ(鉤)状の触角で

あるのに対して,雌では極めて小さいのが特徴である。 

6. 希釈水 特に異常な成分を含まない良質な井戸水若しくは脱塩素した水道水,又は的確な方法によっ

て一定量の試薬を蒸留水若しくは脱塩素した水道水に溶かして調製した合成水に溶存酸素が飽和するまで

通気したもの(3)。 

注(3) 希釈水は,ミジンコ類を少なくとも48時間正常に遊泳させることができなければならない。 

7. 器具及び装置 器具及び装置は,次のとおりとする。 

(1) 恒温設備 恒温室又は恒温水槽で順化水槽,試験容器の水温を20±2℃に保つことができるもの。 

(2) 順化水槽 表面積の大きい浅形の容器。容器はよく洗浄してから使用する。 

(3) 試験容器 ガラス製の試験管又はビーカーで容量10〜100mlのもの。よく洗浄してから使用する。 

(4) 溶存酸素計 温度補償回路を組み入れたもの。 

(5) ガラス電柱pH計 JIS Z 8802に規定するII形以上のもの。 

(6) 温度計 JIS B 7411に規定する50度のもの。 

(7) 全硬度測定器具 

8. 試験条件 試験条件は,次のとおりとする。 

(1) 試験室の環境 試験はミジンコ類が正常に飼育できることが確認された環境で実施する。 

(2) 水温 試験期間中,水温を20±2℃に調節する。 

(3) 溶存酸素濃度 試験期間中,溶存酸素は飽和濃度の60%以上に保つ(4)。 

(4) 供試生物の個体数と密度 一つの試験濃度区には最小20個体のミジンコ類を四つの試験容器に等分

して用いる。このとき密度が5個体/10mlを超えないようにする。 

注(4) 生分解性の高い排水など特殊な試料で60%以上の飽和濃度の維持が困難な場合でも,2.0mg/l以

上の溶存酸素濃度が保たれねばならない。この場合には,並行して通気試験を行い,溶存酸素

濃度低下による影響を把握しておくことが望ましい。 

9. 操作 

9.1 

試験原液と試験溶液の調製 排水などの採取方法及び試料の保存方法は,JIS K 0094による。 

(a) 試料瓶には空間のないように採取した水を満たす。試験は採取後できるだけ速やかに行う。採取後

6時間以内に行うことができないときは採取場所で試料を冷却 (0〜10℃) 保存する。このとき保存

剤を用いてはならない。試験には試料瓶から取り出した試料に希釈水を加えて所定の濃度とした試

験溶液を調製して用いる。 

(b) 化学物質などの場合には,ガラス容器内で希釈水,蒸留水又はイオン交換水の一定量に溶かして試

験原液を調製する。化学物質などの水中安定性が不明の場合には試験原液は使用時に調製する。水

に難溶な物質の試験原液を調製する場合は,適切な手段を用いることができる。例えば,ミジンコ

類に対する毒性の低い溶媒などに溶かす。 

(c) 試験では,希釈水に試験原液を加えて数種の段階濃度の試験溶液を調製し,試験区とする。試験溶

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液の上限濃度は,易水溶性のもので,1 000mg/lまでとする。試験原液が蒸留水又はイオン交換水に

よって調製されている場合には,試験溶液中での試験原液の割合が1%を超えないことが望ましい。 

また,試験原液の調製に溶媒などを用いた場合には,試験溶液中での溶媒濃度は100mg/lを超え

てはならない。 

(d) 試験区の他に,希釈水だけで調製した対照区を設ける。試験原液の調製に溶媒を用いた場合には,

試験溶液中での溶媒濃度が最高となる試験区と同じ溶媒濃度の対照区(溶媒対照区)も同時に設け

る。 

9.2 

予備試験 本試験で実施する試験濃度範囲を予備試験で定める。このために,試験溶液の濃度範囲

を広くとり,例えば,100%,10%,1%,0.1%又は100%,32%,10%,3.2%のように(対数値が等間隔

となる数列とする。)試料を希釈した試験区を設定して予備試験を行う。 

予備試験によって24h-EC (I) 50[又は48h-EC (I) 50]の概略値を得る。 

また,遊泳阻害率の0%と100%を示す濃度範囲と,ミジンコ類の異常な挙動を記録しておく。予備試験

の例を附属書の参考2に示す。 

9.3 

本試験 本試験では,試料濃度を対数値が等間隔となるように設定された連続3個以上の試験濃度

区が10%から90%の間の遊泳阻害率を与えるように,濃度範囲を選択することが望ましい。しかし,試料

濃度を対数値が等間隔となるように設定したときの対数値の間隔を0.3以下(濃度公比2以下)に設定し

ていれば,隣接2濃度区の遊泳阻害率が0%と100%であっても許容できる。対照区には,試験区と同じ数

と密度のミジンコ類を用いる。 

本試験の例を附属書の参考2に示す。 

試験開始時及び終了時に水温,pH,溶存酸素濃度などを測定する。測定はできるだけ速やかに,多くの

濃度区について行うことが望ましい。 

9.4 

判定 

(1) 遊泳阻害の判定 容器内を穏やかにかき混ぜた後,たとえ,15秒間の観察期間中に触角を動かすこと

ができても,遊泳しないものを遊泳阻害とみなす。 

(2) 対照試験の遊泳阻害率 対照試験におけるミジンコ類の遊泳阻害率が10%を超えないこと。 

10. 計算 次の手順によって24h-EC(I)50を求める。 

本試験終了後,用いたミジンコ類の全数との関係で,各濃度に対する遊泳阻害率を計算する。適切な統

計的手法(Probit法など)や対数正規確率方眼紙からの読み取りによって,24h-EC(I)50を決定する。 

化学物質に用いた場合は,試験開始時から試験期間中にこの物質の分析を各濃度区別に実施されている

ならば,少なくとも開始時と終了時の2回,各濃度区別の実測値の平均値によって遊泳阻害濃度を算出し,

24h-EC50として併記する。 

備考 分析回数が多い場合には,平均値のほかに,その標準偏差を求めることによって,実測値の信

頼性が増す。 

この方法で48h-EC(I)50(又は48h-EC50)を算出することができ,また,100%遊泳阻害させ

る最低濃度と0%遊泳阻害させる最高濃度を決定することができる。 

11. 試験報告 

(1) 供試生物 和名と学名,生後24時間以内の幼体を使用したことを記録する。 

(2) 希釈水 自然水,合成水の区分とpH,溶存酸素濃度,全硬度などの分析値。合成水を使用した場合は,

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その組成と調製方法。 

(3) 試料の調製法 

(a) 試料名(化学物質の場合は化学名。排水などの場合は採水場所,時刻など。) 

(b) 化学物質,排水などの試験原液,試験溶液の調製法。 

(c) 排水では,試料の前処理方法,保存方法,保存期間など。 

(4) 試験方法 飼育方法も含む。 

(5) 試験結果 

(a) 24h-EC(I)50[必要に応じて48h-EC(I)50又は24h-EC50,48h-EC50]可能ならばその95%信頼限界,

有効数字は2けたとする。 

(b) 24時間(必要に応じて48時間)の濃度に対する遊泳阻害率(可能ならば100%遊泳阻害させる最低

濃度と0%遊泳阻害させる最高濃度) 

(c) 試験条件下でのミジンコ類の異常な挙動(中毒症状など) 

(d) 試験開始時及び終了時に行った溶存酸素濃度,pH,水温などの測定値 

(6) 結果に影響を及ぼしたと考えられる事象 

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附属書 水質−オオミジンコ(Daphnia magna Straus, 

枝角目,甲殻類)の遊泳阻害濃度の測定 

日本工業規格としてのまえがき 

この附属書は,ISO 6341 [Water quality−Determination of the inhibition of the mobility of Daphnia magna Straus 

(Cladocera, Crustacea)] を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成したものである。 

序文 代謝や生活様式が生物によって異なっているため,物質の毒性に関する生物の感受性は種によって

かなり異なるであろう。そのため,提唱する方法は供試生物であるオオミジンコに対する排水や水溶液中

の物質の影響を調べることができるが,その結果を他の種へ外挿してはならない。 

このような事情のもと,ある物質や排水の環境に対する毒性を正確に予測するためには,この試験だけで

は十分ではなく,異なった分類学上の生物や異なった環境条件に生息する生物を用いた一種の試験が必要

である。 

環境を完全に模倣した条件を作ることは無理であるので,人為的に定められた実験室条件で毒性試験は行

われる。毒性試験は,ある物質や排水の毒性影響を研究所間で比較することができるが,実際の環境条件

では有機物,無機物の存在,硬度,pH,緩衝能などの多くの要因が作用しており,物質や排水の影響を評

価するには限界がある。 

そのため,特定の環境条件での正確な予測のためには,標準法を厳密に適用して得られた結果は,環境の

種々な面をよりよく模倣した条件で得られたデータや野外条件で得られたデータによって補完されるべき

である。 

1. 適用範囲 この附属書は,オオミジンコ(Daphnia magna Straus,枝角目,甲殻類)に対する急性毒性

を測定する方法を記しており,次に試験対象を掲げる。 

(a) 試験条件下で,水に溶解している化学物質。 

(b) 処理した又は無処理の工場排水,必要に応じその上澄み液やろ過水。 

(c) 処理した又は無処理の下水排水,必要に応じその上澄み液やろ過水。 

(d) 地表水や地下水。 

2. 引用規格 次の規格は,この主文での引用規格を通して,この附属書の規定を制定したものを含んで

いる。公表時には,この版は有効であった。すべての規格は改定される必要があり,この附属書に合意し

た関係者は,次に示された規格の最新版に適用することを進んで調査する。IEC(国際電気標準会議)と

ISO(国際標準化機構)のメンバーは最新の有効な国際規格の登録を維持する。 

ISO 5667-2 : 1982 (Water quality−Sampling−Part 2 : Guidance on sampling techniques) 水質−サンプリ

ング−第2部:サンプリング手法のガイドライン 

3. 原理 この附属書で定められている条件下,24時間でオオミジンコが50%遊泳阻害される初期濃度

(すなわち,試験開始時に存在した濃度)を決定する。 

この初期の遊泳阻害濃度を24h-EC(I)50と定義する。 

備考 可能又は必要な場合は,48時間暴露されたオオミジンコが50%遊泳阻害される初期濃度も決定

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できる。この濃度を48h-EC(I)50と定義する。 

24h-EC(I)50[及び必要に応じて48h-EC(I)50]が決定できない場合,すべてのオオミジンコを

遊泳阻害する最低濃度といずれのオオミジンコも遊泳阻害させない最高濃度の提示は望ましく,

有用な情報を与える。 

試験は一段階又は二段階で行われる。 

予備試験から,24h-EC(I)50[及び必要に応じて48h-EC(I)50]の概略値が得られ,本試験で実

施する濃度範囲を定める。 

必要な場合(予備試験で得られた概略値が十分でない場合),本試験が実施され,この試験結

果だけが用いられる[24h-EC(I)50,48h-EC(I)50又は0%と100%の遊泳阻害濃度] 

この附属書に記された方法を化学物質に用いた場合,試験期間中に化学物質の分析を実施し

てもよい。試験期間中,各試験濃度を測定し,その標準偏差が不均一に変動し,平均値の20%

を上回らなかった場合,初期濃度によるよりも測定値の平均値で遊泳阻害濃度を算出してもよ

い。実測値による遊泳阻害濃度は,24h-EC50(及び必要に応じて48h-EC50)と定義される。 

4. 試験条件 試験溶液の調製や保存及びこの附属書に記された手順のすべての段階において,水温は20

±2℃とし,オオミジンコに有害な蒸気やほこりのない環境で実施されなければならない。 

5. 試薬及び材料 

5.1 

供試生物 オオミジンコ(Daphnia magna Straus,枝角目,甲殻類),特定の飼育条件(本体参照)で

むりんね(無輪廻)の単為生殖から得られた少なくとも第3世代のもの。 

試験に供試する生物は,特定の孔径のふるいを通過して集められた生後24時間未満のものとする。 

オオミジンコの毒物に対する感受性は令に依存するため,用いたオオミジンコの令は報告書に記載する。 

5.2 

希釈水 一定量の特級試薬を,電気導伝率10mS/m以下の蒸留水,イオン交換水又は高純度の地下

水に溶かす。このようにして調製された希釈水は,pH7.8±0.2,硬度250±25mg/l(炭酸カルシウム換算),

4 : 1に近いCa/Mg比,飽和濃度の80%以上の溶存酸素濃度になる。 

これらの要求に合致する水の調製の例を次に示す。 

(a) 溶液の調製 

① 塩化カルシウム溶液 塩化カルシウム二水和物 (CaCl2・2H2O) 11.76gを蒸留水又はイオン交換水に

溶かし,1lとする。 

② 硫酸マグネシウム溶液 硫酸マグネシウム七水和物 (MgSO4・7H2O) 4.93gを蒸留水又はイオン交換

水に溶かし,1lとする。 

③ 炭酸水素ナトリウム溶液 炭酸水素ナトリウム (NaHCO3) 2.59gを蒸留水又はイオン交換水に溶か

し,1lとする。 

④ 塩化カリウム溶液 塩化カリウム (KCl) 0.23gを蒸留水又はイオン交換水に溶かし,1lとする。 

(b) (a)の①〜④の4溶液からそれぞれ25mlをとり,混合して蒸留水又はイオン交換水で1lとする。 

溶存酸素濃度が飽和となり,pHが安定するまで希釈水に通気する。必要ならば,水酸化ナトリウム

溶液又は塩酸を添加することによって,pHを7.8±0.2に調整する。このようにして調製された希釈水

は使用前に通気する必要はない。 

備考 上記したと異なる水質をもつ希釈水を用いて試験を行う必要がある場合,報告書に用いた希釈

水の主な特性を記すべきである。 

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希釈水はオオミジンコを少なくとも48時間生存させることができなければならない。 

オオミジンコに対して有毒であることが知られているいずれの物質,例えば,塩素,重金属,

アンモニア,ポリ塩素化ビフェニル,農薬を含んでいないことをときどき調べなければならな

い。 

5.3 

二クロム酸カリウム 二クロム酸カリウム (K2Cr2O7)  

6. 装置 通常の実験室装置及び次の装置 

6.1 

溶存酸素計 

6.2 

試験容器 化学的に不活性な材料で,十分な容量のもの(例えば,試験管,ビーカー)。使用前に試

験容器を十分に洗浄し,最初は水で,次に希釈水(5.2)ですすぐ。試験終了時に,容器を空にし水ですすぎ,

試験溶液のこん跡をなくした後,乾燥する。 

7. 試料の処理と調製 

7.1 

水や排水の試料の採取と運搬のための特別な注意 水や排水の採取のためには,ISO 5667-2に記さ

れた一般的操作を参照する。 

瓶は完全に採取した水で満たし,空気を排出する。 

毒性試験はできるだけ迅速に,採取後6時間以内に行う。 

この6時間以内に行えない場合には,採取場所で試料を冷却 (+4℃) 又は凍結 (−20℃) してもよい。

試料が凍結される場合は,凍結による破損防止のために,瓶を水で完全に満たしてはならない。報告書に

は,試料の凍結条件や予備的なろ過,デカンテーションの方法を記す。保存剤を用いてはならない。 

7.2 

供試物質の溶液調製 

7.2.1 

貯蔵溶液の調製 供試物質の貯蔵溶液は,一定量の供試物質をガラス容器内で,希釈水又は蒸留水

の一定量に溶かして調製する。 

供試物質の水中安定性が明らかでない場合は,貯蔵溶液は使用時に調製する。供試物質の水中安定性が

明らかなときは,2日間の試験に十分な量を調製することもできる。 

水に難溶な物質の貯蔵溶液を調製する場合,物質は適切な手段,例えば,超音波処理やオオミジンコに

対して毒性の低い溶媒を用いて,溶解又は分散させてもよい。溶媒を用いる場合,最終試験溶液中での溶

媒の濃度は100mg/lを超えてはならない。 

また,対照として2区を用い,1区は溶媒を入れない区,もう1区は試験に用いた溶媒の最高濃度を含

む区を設け,試験と並行して実施する。 

備考 この試験方法は水系環境に対する方法と関連しているため,より高濃度の溶媒の使用は,この

附属書条件内では容認されない。 

供試物質の分解や減少の結果から派生する問題があり,水に難溶な物質の貯蔵溶液の調製の

ための唯一の方法を示すことはできない。 

7.2.2 

試験溶液の調製 試験溶液は,貯蔵溶液(7.2.1)を希釈水(5.2)に一定量を添加して調製する。 

貯蔵溶液がイオン交換水や蒸留水で調製されている場合,10ml以上の貯蔵溶液を希釈水1lに加えては

ならない。 

8. 手順 

K 0229-1992  

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8.1 

概要 試験に対し必要な濃度となるように,一連の容器に試験溶液(7.2.2)又は排水(7.1)を等比数列の

濃度比率で添加し,希釈水を加える。 

オオミジンコを試験容器に入れ,その全数が容器当たり20頭を超えないようにし,その容器当たりの密

度が5頭/10mlを超えないようにする。 

各試験に対し,希釈水(5.2)の対照区を設け,その容量とオオミジンコの頭数は試験溶液と同じにする。

物質を溶解又は分散させるために溶媒を用いた場合,試験に用いた最高濃度の溶媒を希釈水(5.2)に加えた

第二番目の溶媒対照区を設ける。 

試験期間中,容器を20±2℃に保管する。 

24時間後(必要に応じて48時間後)の試験終了時,各容器中の遊泳しているオオミジンコの数を測定

する。容器を穏やかにかき混ぜた後,たとえ,触角を動かすことができても,15秒間に遊泳できないもの

を遊泳阻害とみなす。 

遊泳阻害率の0%と100%を示す濃度範囲を決定し,オオミジンコの異常な挙動を記録する。 

8.2 

予備試験 本試験で実施する濃度範囲を予備試験で定める。このために,貯蔵溶液や排水の一系列

の濃度比率(一般的に等比数列の濃度比率を用いる)を用いる。 

一例を参考1に示す。 

8.3 

本試験 本試験では,異なった濃度段階でのオオミジンコの遊泳阻害率を測定し,24h-EC(I)50[必

要に応じて48h-EC(I)50]を決定する。 

3又は4濃度が10%から90%の間の遊泳阻害率を与えるように,濃度範囲を選択する。濃度範囲の選択

の一例を参考1に示す。 

各濃度区と対照区に最小20頭のオオミジンコを用いる。 

オオミジンコの遊泳阻害数を測定した後,直ちに,すべてのオオミジンコが遊泳阻害された最低濃度の

溶液を用いて,溶存酸素濃度を測定する(必要なら,溶存酸素濃度を変えないように適切な注意を払いな

がら,この濃度の容器内の溶液を一つの容器に移し換える。)。 

8.4 

オオミジンコの感受性と手順の合致性の確認 オオミジンコの感受性を確認するために,定期的に

二クロム酸カリウムの24h-EC(I)50を測定する。報告書に24h-EC(I)50を記録する(その数値は,この化合

物の毒性だけを示すものであり他の化合物のオオミジンコに対する感受性を示すものではないことを考慮

しておく。)。 

8.3に記したようにして二クロム酸カリウムの毒性を確認する。もし,二クロム酸カリウムの24h-EC(I)50

値が0.9mg/lから2.0mg/lの範囲から外れた場合,試験操作の厳密な適用やオオミジンコの飼育法を確認し,

必要ならオオミジンコの新たな種を用いる。 

9. 結果の解釈と正当性 

9.1 

EC(I)50の測定 24時間の試験終了後,用いたオオミジンコの全数との関係で,各濃度に対する遊

泳阻害率を計算する。適切な統計的手法(Probit analysis,moving average,binominal methodやプロビット

紙からの読み取り)によって,24h-EC(I)50を決定する。 

この附属書に記された方法を化学物質に用い,この物質の分析が試験開始期と期間中に実施され,試験

濃度に対し実測された濃度の標準偏差が平均値から20%以下であれば,初期濃度に基づく24h-EC(I)50よ

りも,むしろこれらの実測値を用いて24h-EC50を算出することができる。 

24h-EC(I)50(又は24h-EC50)の合理的な計算ができない場合,その原因を明らかにし,再試験する。 

得られたデータでは24h-EC(I)50(又は24h-EC50)を算出するには不十分な場合,100%遊泳阻害させる

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10 

K 0229-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

最低濃度と0%遊泳阻害させる最高濃度を用いてもよい。 

備考 上記と同じ方法で48h-EC(I)50(又は48h-EC50)を算出することができ,100%遊泳阻害させる

最低濃度と0%遊泳阻害させる最高濃度を決定することができる。 

9.2 

結果の正当性 次の条件が満足されている場合,結果は正当であると判断する。 

(a) 試験終了時,溶存酸素濃度(8.3で示された方法での測定)が2mg/l以上である。 

(b) 対照区の遊泳阻害率が10%以下である。 

(c) 二クロム酸カリウムの24h-EC(I)50値が0.9mg/lから2.0mg/lの範囲内である。 

10. 結果の表記 24h-EC(I)50,48h-EC (I) 50(又は24h-EC50,48h-EC50)及び0%,100%遊泳阻害率に対

応する範囲を記す。 

排水の場合,含有率 (%) 又はml/l 

化学物質の場合,mg/l 

11. 精度 欧州共同体委員会の管理の下に,1978年研究所間での試験が実施された。この試験はこの附属

書で記された方法を用いて,特に次の物質に対して行われた。 

二クロム酸カリウム (K2Cr2O7)  

テトラプロピルベンゼンスルホン酸 (T. P. B. S. No.1)  

テトラプロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム (T. P. B. S. No.2)  

2, 4, 5-トリクロロフェノキシ酢酸カリウム(2, 4, 5-Tのカリウム塩) 

最後の物質は,毒性は弱く水に難溶であるが,この附属書に記された方法の適用分野の限界であると考

えられる物質に関連した結果を得るために試験物質として含まれた。 

指針として,この研究所間の結果を附属書表1に要約した(ISO 5725-1986試験方法の精度−研究所間

での試験による標準試験法の再現性の測定−に従って評価された。)。 

附属書表1 測定精度の結果 

項目 

供試物質 

K2Cr2O7 

T. P. B. S. No.1 

T. P. B. S. No.2 

2, 4, 5-T, -K塩 

参加研究所数 

 46 

 36 

31 

 32 

棄却研究所数 

  4 

  4 

 4 

 14 

使用した結果数 

129 

108 

84 

 72 

平均24h-EC(I)50 

    1.47 

   27.45 

  27.02 

  772.25 

標準偏差 

 繰返し性 

  絶対値 

    0.21 

    3.95 

   3.24 

  64.5 

  変動係数 (%) 

14 

 14.4 

12 

   8.3 

 再現性 

  絶対値 

     0.57 

   8.32 

   9.51 

 277.8 

  変動係数 (%) 

 39 

30 

35 

  35.9 

12. 試験報告 試験報告はこの附属書を参照し,特に次の事項を含める。 

(a) 試料や供試物質の同定に必要なすべてのデータ。 

(b) 試料の調製方法。 

① 排水では,試料の保存方法と期間,必要なら試料のデカンテーション,ろ過及び解凍の条件。 

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K 0229-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

② 化学物質では,貯蔵溶液及び試験溶液の調製方法。 

(c) この附属書に明記されていない,試験に関連する生物学的,科学的及び物理学的な情報,それにはオ

オミジンコの令や飼育条件も含まれる。 

(d) 24h-EC(I)50や必要に応じて48h-EC(I)50(又は24h-EC50,48h-EC50)の形式での試験結果,計算法及

び必要に応じて95%信頼限界,物質の化学分析を行った場合に用いた分析方法。 

(e) 24時間に(必要に応じて48時間に)100%遊泳阻害させる最低濃度及び0%遊泳阻害させる最高濃度。 

(f) 試験条件下でのオオミジンコの異常な挙動。 

(g) この附属書に明記されていない,操作の詳細及び結果に影響を及ぼしたと考えられる事象。 

参考1 オオミジンコの遊泳阻害の測定例 ある物質1 000mg/lの濃度での排水又は貯蔵溶液によるオ

オミジンコへの遊泳阻害の測定例。例は,試験管を用いた操作である。 

1. 予備試験結果(参考1表1参照) 本試験が実施される範囲は0.35%から1%である。 

2. 本試験 

2.1 

結果 (参考1表2参照) 

2.2 

24h-EC50の決定 グラフ(参考1図1参照)に直線を入れることによって,24h-EC50は0.55%で

ある。排水及び化学物質では,次のように表記される。 

排水:24h-EC50=0.55%又は5.5ml/l 

化学物質:24h-EC50=0.55×1 000/100=5.5mg/l 

参考1表1 予備試験結果 

濃度 % 

供試生物数 

遊泳数 

90 

35 

10 

  3.5 

  0.35 

 0.1 

   0.035 

  0.01 

参考1表2 本試験結果 

濃度 

% 

遊泳数各反復 

遊泳数合計 

頭 

遊泳阻害率 

% 

0(対照) 

20 

 0 

0.35 

17 

15 

0.48 

12 

40 

0.62 

 7 

65 

0.80 

 4 

80 

1.0 

 1 

95 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考1図1 対数正規確率方眼紙上での24h-EC(I)50算出の一例 

参考2 

ミジンコ類の遊泳阻害の測定例 ある化学物質の基準物質によるミジンコ類への遊泳阻害の

測定例。排水の場合,濃度を希釈した%として通常用いる。 

例は,難溶物質に対し,溶媒を用いた操作である。 

1. 予備試験結果(参考2表1参照) 本試験が実施される範囲は0.1mg/lから1mg/lである。 

参考2表1 予備試験結果 

濃度 mg/l 

供試生物数 

遊泳数 

遊泳阻害率 % 

対照区 

  0 

溶媒対照区 

  0 

 0.001 

  0 

 0.01 

  0 

 0.10 

  0 

 1.0 

100 

10 

100 

2. 本試験 

2.1 

本試験結果(参考2表2参照) 

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13 

K 0229-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考2表2 本試験結果 

濃度 

mg/l 

供試生物数 

頭×反復 

遊泳数 

遊泳阻害率 

% 

各反復 

計 

対照区 

5×4 

 0 

  0 

溶媒対照区 

5×4 

 0 

  0 

 0.10 

5×4 

 0 

  0 

 0.18 

5×4 

 3 

 15 

 0.32 

5×4 

11 

 55 

 0.56 

5×4 

18 

 90 

 1.0 

5×4 

20 

100 

2.2 

24h-EC(I)50値の決定 プロビット (Probit) 法による統計計算を行うと,24h-EC(I)50とその95%信

頼限界は,次のように表記される。 

24h-EC(I)50=0.30mg/l (0.25〜0.36mg/l)  

JIS K 0229 制定原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

田 端 健 二 

水産庁中央水産研究所環境保全部 

梅 崎 芳 美 

社団法人産業公害防止協会 

角 野 祥 三 

環境庁企画調整局環境研究課 

倉   剛 進 

通商産業省立地公害局公害防止指導室 

橋 本 正 義 

通商産業省基礎産業局化学品安全課 

細 川 幹 夫 

通商産業省工業技術院標準部繊維化学規格課 

畠 山 成 久 

環境庁国立公害研究所生物環境部水性生物生態研究室 

後 藤 幹 保 

学習院大学理学部エコトキシコロジーセンター 

茂 岡 忠 義 

三菱化成株式会社安全研究所横浜研究所 

滝 本 善 之 

住友化学工業株式会社安全研究所環境科学研究室 

田 所   博 

財団法人化学品検査協会久留米研究所 

若 林 明 子 

東京都環境科学研究所保健部 

(関係者) 

田 坂 勝 芳 

工業技術院標準部繊維化学規格課 

山 本 健 一 

工業技術院標準部繊維化学規格課