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K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 記号及び略語 ··················································································································· 2 

5 一般的情報 ······················································································································ 2 

6 測定条件························································································································· 3 

6.1 一般 ···························································································································· 3 

6.2 励起源 ························································································································· 4 

6.3 エネルギー分解能 ·········································································································· 4 

6.4 エネルギーステップ及び掃引速度······················································································ 4 

6.5 信号強度 ······················································································································ 4 

6.6 増幅率及び時定数(アナログ検出システムをもつAES分光器のための) ································· 4 

6.7 微分スペクトルを取得するための変調················································································ 4 

7 データ解析手順 ················································································································ 4 

8 強度−エネルギー応答関数 ································································································· 5 

9 相対感度係数を用いた化学組成の決定 ·················································································· 5 

9.1 化学組成の計算 ············································································································· 5 

9.2 算出した組成の不確かさ ································································································· 6 

附属書A(規定)相対感度係数算出のための数式 ······································································· 7 

附属書B(参考)分析結果の不確かさに関する情報 ···································································· 16 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標

準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業

大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格 

JIS 

K 0167:2011 

(ISO 18118:2004) 

表面化学分析−オージェ電子分光法及び 

X線光電子分光法−均質物質定量分析のための 

実験的に求められた相対感度係数の使用指針 

Surface chemical analysis- 

Auger electron spectroscopy and X-ray photoelectron spectroscopy- 

Guide to the use of experimentally determined relative sensitivity factors  

for the quantitative analysis of homogeneous materials 

序文 

この規格は,2004年に第1版として発行されたISO 18118を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にない事項である。 

オージェ電子分光法(以下,AESという。)及びX線光電子分光法(以下,XPSという。)は,材料の表

面,典型的には深さ数nmの領域の組成に敏感な表面分析手法である。いずれの手法も,主に表面の信号

を分析領域の平均値として与える。ほとんどの試料は,面内方向及び深さ方向に組成的なばらつきをもっ

ている。組成的な変化の程度,またそれが分布している距離の程度を決めることが困難なため,定量分析

は,しばしば近似的な手法で行われている。最も単純な分析対象試料は,均質な材料である。対象試料が

均質であることは一般的ではないが,分析の単純化のために多くの場合で仮定される条件である。 

この規格は,AES及びXPSを用いた均質材料の定量分析を行うために用いる相対感度係数を実験的に決

定する測定手法及び使用方法についての指針を与える。 

適用範囲 

この規格は,AES及びXPSを用いた均質物質の定量分析を行うために用いる相対感度係数を実験的に決

定する測定手法及び使用方法についての指針を示す。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 18118:2004,Surface chemical analysis−Auger electron spectroscopy and X-ray photoelectron 

spectroscopy−Guide to the use of experimentally determined relative sensitivity factors for the 

quantitative analysis of homogeneous materials(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

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引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0147 表面化学分析−用語 

注記 対応国際規格:ISO 18115:2001,Surface chemical analysis−Vocabulary(IDT) 

ISO 21270,Surface chemical analysis−X-ray photoelectron and Auger electron spectrometers−Linearity of 

intensity scale 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0147によるほか,次による。 

3.1 

元素絶対感度係数(absolute elemental sensitivity factor) 

試料中に存在する元素の原子濃度又は原子分率を求めるときに使われる,ある元素について測定した強

度を除するのに用いる元素固有の係数。 

3.2 

元素相対感度係数(relative elemental sensitivity factor) 

元素絶対感度係数に比例する係数。基準となる元素の遷移の値が1になるような比例定数が選ばれる。 

3.3 

平均マトリックス相対感度係数(average matrix relative sensitivity factor) 

ある元素について,実測の強度から試料中に存在する元素の原子濃度又は原子分率を求める計算をする

ためのもので,平均マトリックス中の純元素の強度を計算したものに比例した係数。 

3.4 

純元素相対感度係数(pure-element relative sensitivity factor) 

ある元素について,実測の強度から試料中に存在する元素の原子濃度又は原子分率を求める計算をする

ためのもので,純元素試料で測定した強度に比例した係数。 

記号及び略語 

この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。 

AES:オージェ電子分光法 

AMRSF:平均マトリックス相対感度係数 

ARSF:原子相対感度係数 

ERSF:元素相対感度係数 

IERF:強度−エネルギー応答関数 

At

iS:元素iについての原子相対感度係数 

Av

iS:元素iについての平均マトリックス相対感度係数 

E

iS:元素iについての元素相対感度係数 

RSF:相対感度係数 

XPS:X線光電子分光法 

一般的情報 

AES及びXPSによる定量分析において,相対感度係数(RSF)を利用すると便利である。3種類のRSF

がこの目的で使われてきた。すなわち,元素相対感度係数(ERSF),原子相対感度係数(ARSF)及び平均

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マトリックス相対感度係数(AMRSF)である。これら三つの感度係数を定義する式はA.3に,その式の基

礎となる原理についてはA.2に記載している。 

ERSFは,最も単純で適用も最も容易であるが,マトリックス効果の補正については,A.3では全く考慮

していないため,最も不正確である。AESの場合,マトリックス効果の補正係数は0.1〜8 [1] という範囲

にある。これに対して,XPSの場合には0.3〜3 [2] という範囲にある。ARSFはERSFよりも,補正量が一

般的に最も大きい因子である原子密度を考慮している分だけ,正確である。AMRSFは,マトリックス効

果をほぼ完全に補正してあり最も信頼性の高いRSFである。ERSFは,半定量的な用途,例えば組成の粗

い推定にだけ用いることが望ましい。また,ARSF,更にAMRSFを定量分析に使用することが望ましい。

ARSFは,AMRSFを使用することができない場合にだけ用いる。例えば,非弾性平均自由行程の信頼でき

る値が求められていないエネルギーをもつオージェ電子又は光電子を測定した場合に用いる。 

AES及びXPSを用いて定量分析する場合,RSFを求めるために使った手順と同じ手順でオージェ電子強

度及び光電子強度を測定することが重要である。AESを用いる幾つかの分析用途,例えば,スパッタ深さ

方向分析においては,オージェ電子強度として微分モードでのピークツーピーク(peak-to-peak)高さを用

いるのが便利である。他の用途,例えば,走査形オージェ顕微法では,オージェ電子強度としてダイレク

トスペクトルのピークの最大値と近傍でのバックグラウンド強度との差を用いてもよい。最後に,XPSの

多くの場合及びAESの幾つかの場合では,ダイレクトスペクトルの面積が光電子又はオージェ電子の強度

として使われる。 

RSFの値は,次のパラメータに依存する。すなわち,励起源(AESの入射電子エネルギー,XPSにおけ

るX線のエネルギーなど),オージェ電子分光器及びX線電子分光器(以下,分光器という。)における配

置構成(AESの電子線入射角,XPSのX線と分光器の軸とがなす角,分光器から見た試料上の面積,分光

器の取り込み立体角など),試料のこれらの分光器要素への方向である[3]。分光器から見た試料上の面積及

び分光器の取り込み立体角は,分光器の設定(アパーチャの選択,分光器エネルギー一定モード及び減速

率一定モードのどちらで動作しているか,それに対応して分光器のパスエネルギー又は電子の減速率をど

のようにするか。)の影響を受ける。最終的に,測定されるオージェ電子又は光電子の信号強度は,箇条6

に示すパラメータの影響を受ける。したがって,オージェ電子又は光電子の強度は,ERSFを測定した場

合,同じ分光器設定条件と試料位置とを用いて測定することが重要である。同様に,データの解析手順(箇

条7参照)についても,ERSFの測定に用いた方法と未知試料の信号強度測定に用いる方法とが,同じで

あることが重要である。 

一般的に,市販のAES及びXPSの分光器は,幾つかの操作条件で測定したERSFのセットが附属して

いる。これらのERSFは,通常同じ形式の分光器,場合によっては,似た形式の分光器で決められている。

分析者は,分光器に付随して提供されたERSFが正しいかどうかを確かめるために,供給されたERSFを,

分析の対象になると予想される元素に関して確認することが望ましい。さらに,箇条8で規定するように,

IERFは時間とともに変化することがあるかもしれない。そうした変化は,検出することが可能であり,英

国の国立物理学研究所(National Physical Laboratory)から提供されている校正ソフトウェア[4] を用いて修

正することができる。分析者は,選択したERSFを箇条8で規定する方法に従って測定することによって,

時間に伴って起こり得るIERFの変化を検査することができる。 

測定条件 

6.1 

一般 

未知試料を測定する場合は,ERSFを測定するときに使用した条件(分光器における配置構成,試料の

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方向,分光器のセッティングなど)と同様の条件を使用する。 

特に,次のパラメータに注意する。 

6.2 

励起源 

AESにおける入射電子のエネルギー及びXPSにおけるX線源は,ERSFの測定で用いたものと同じもの

を未知試料の測定において用いる。 

6.3 

エネルギー分解能 

ピーク面積を信号強度の測定に用いない場合,アパーチャの大きさ,パスエネルギー又は減速率で決ま

る電子エネルギー分析器のエネルギー分解能は,ERSF [5] を取得するために用いた場合及び未知試料の測

定の場合と同じにする。 

6.4 

エネルギーステップ及び掃引速度 

スペクトルデータを取得するために用いたエネルギーステップの大きさ(1チャンネル当たりのエネル

ギー)及びスペクトル掃引速度は,選択したエネルギー分解能で得られたデータにおいてスペクトルのゆ

がみが無視できるように選ぶ。 

6.5 

信号強度 

ISO 21270で規定するように,測定した信号強度が誤差1 %以内で入射電流又はX線強度と比例するよ

うに,AESにおける入射電流又はXPSにおけるX線強度を,検出器に印加した電圧とともに調整する。

又は,ISO 21270で規定するように,数え落としを補正して測定した信号強度は誤差1 %以内で入射電流

又はX線強度と比例する必要がある。 

6.6 

増幅率及び時定数(アナログ検出システムをもつAES分光器のための) 

ERSFを取得するために用いた測定と同様に,未知試料測定においても同じ検出系システムを設定する。

測定における時定数[6] は,スペクトル特有の形状がデータ取得中に著しくゆが(歪)められないように十

分に短くする。検出系の増幅率は,検出系の直線的応答範囲内であるように測定されるピーク強度を調整

する。 

注記 パルスカウントシステムにおける検出系の応答の直線性を調べる手順は,ISO 21270で規定し

ている。分光器の調整が十分である場合は,ISO 21270の第1の方法がアナログAESシステム

の調整に適用できる。 

6.7 

微分スペクトルを取得するための変調 

AESにおいて微分スペクトルを利用することは,多くの場合有用である。微分スペクトルは,分光器に

変調エネルギーを重畳させる[7], [8] 又は測定されたダイレクトスペクトル[9], [10] の数値処理によって得る

ことができる。この目的で,ピークツーピーク(peak-to-peak)で2 eV〜10 eVの間での変調又は数値微分

が広く使用されている。未知試料の測定においても,ERSFを取得するために用いたのと同じ変調電圧を

用いる。 

注記 数値微分におけるピークの減衰及びAESにおけるサビツキー・ゴーレイ微分法の詳細は,参考

文献[9]及び[10]から得ることができる。 

データ解析手順 

未知試料を測定するときのスペクトル解析と,ERSFを測定するときのスペクトル解析とで,同じ手順

を用いる。 

測定したダイレクトスペクトルからピーク面積又はピーク高さを得るためには,測定したスペクトルに

対し,適切なバックグラウンドを選択し(ASTM E 995 [11] を参照),バックグラウンド除去を行わなけれ

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ばならない。この目的のため[12],一般的に用いられるバックグラウンド除去手順には,直線バックグラウ

ンド,シャーリーバックグラウンド[13] 又はツガードバックグラウンド[14] がある。 

AESでは,微分スペクトルを用いると,ピークツーピーク(peak-to-peak)の高さの測定又はピークツー

バックグラウンド(peak-to-background)の高さの測定ができるので便利なことが多い。そのため,アナロ

グ検出装置で微分スペクトルを測定するか又は測定したダイレクトスペクトルを数値微分する。未知試料

で得られたスペクトルを微分するときの数値計算と,ERSFを決定する参照試料のスペクトルを微分する

ときの数値計算とは,同じ手順でなければならない(6.7参照)。 

注記1 バックグラウンドを除去する手順の詳細は,ASTM E 995 [11] 及びISO/TR 18392 [57] に記載さ

れている。 

注記2 AESにおける,数値微分によるピークの減衰と,サビツキー・ゴーレイ微分法の詳細は,参

考文献[9]及び[10]に記載されている。 

注記3 ある元素の異なる化学状態の測定に対して微分法を使う場合,整合性のある結果を得るため

の手順に関する情報は,参考文献[16]から得られる。この文献は,ピーク面積を決定するた

めの同様な方法も示している。 

強度−エネルギー応答関数 

IERFは,電子エネルギーの関数として,電子が透過する電子エネルギー分析器の効率と電子を検出する

検出系システムの効率の尺度である[1], [17], [18]。分光器のパスエネルギー,減速率又は絞りの径が変わると,

一般にIERFは変化する。さらに,エネルギーに対する検出器の効率は,分光器の耐用年数期間内でもし

ばしば変化する。同じ分光器製造業者の同形モデルでも分光器が異なると,同じ分光器の設定でもIERF

が異なる場合がある。そのため,英国の国立物理学研究所から入手可能な校正ソフトウェア[4] を用いて一

定の間隔(例えば,6か月ごと)で強度軸を校正するか,使うエネルギー軸の範囲にオージェ電子又は光

電子のピークがあるような元素のERSFを測定することが望ましい。検出効率に影響する可能性のある環

境に,検出器表面がさら(曝)された場合,非電気伝導性試料をスパッタリングしたときなどで絶縁性の

皮膜が分析器表面に堆積した場合は,このような検査を行うのがよい。それぞれの機関で行った選択した

元素のERSFの測定値は,分光器の日誌に記録し,その値の変化が容易に検出できるように,時間の関数

としてプロットする。 

相対感度係数を用いた化学組成の決定 

9.1 

化学組成の計算 

9.1.1 

一般 

未知試料の化学組成は,附属書Aの式(A.5)及び式(A.6)又は他の計算式のうちの一つを用いて定義しても

よい。式(A.6)は一般的に使われているが,マトリックス効果を無視している。幾つかのタイプの相対感度

係数においては,これらのマトリックス効果補正は事実上1に等しく,無視しても差し支えないが,他の

タイプの相対感度係数が用いられた場合,マトリックス効果の補正因子はAESの場合では最大8 [1] に,

XPSの場合は最大3 [2] になる可能性がある。したがって,化学組成計算値の精確さは,使用した感度係数

のタイプに大きく依存する。これは附属書Aに記載している。 

注記1 AES及びXPSでは,水素及びヘリウムを直接検出することができない。これらの元素を含む

と思われる未知試料(例えば,有機化合物)の定量分析は,この制限を克服する何らかの手

段を講じない限りは系統的な誤差を含むことになる。 

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注記2 幾つかのアプリケーションにおいては,測定対象である未知試料とよく似た組成の参照試料

が利用できれば,未知試料の組成を十分に満足できる精確さで決められる可能性がある。こ

の場合,未知試料及び参照試料からの信号電子強度を測定し,附属書Aの式(A.4)を用いて組

成を計算する。もし二つの物質の組成が近い場合,マトリックス補正因子を無視することが

可能であり,式(A.4)が有効である。分析者は,既知の組成をもつ参照試料の準備が困難であ

ることを認識しておいたほうがよい。例えば,イオンスパッタリングによって清浄化された

化合物は,選択スパッタリング効果によって,一般的に,バルク組成とは異なる表面組成を

もつ。これは,測定試料が同じようにスパッタされている場合には参考になる。しかしなが

ら,スパッタリングによる影響については,この規格の範囲を超えている。参照試料の引っ

か(掻)き,破断又はへき(劈)開が可能な場合,これらを未知試料との比較にふさわしい

表面を作り出すことに適した手段として利用してもよい。 

9.1.2 

元素相対感度係数から決定された組成 

未知試料の組成は,分光器製造業者から供給されたERSF−SiE又は分析者が測定したERSFを利用し,

附属書Aの式(A.6)から得ることができる。 

9.1.3 

原子相対感度係数又は平均マトリックス相対感度係数から決定された組成 

未知試料の組成は,ARSF−SiAt又はAMRSF−SiAvを利用し,式(A.6)から得ることができる。 

注記1 ARSFは分光器製造業者から入手するか,又は分析者が式(A.9)を用いて計算することもでき

る。 

注記2 AMRSFは,式(A.10)と式(A.11)〜式(A.34)とを同時に用いることによって,算出することがで

きる。 

9.2 

算出した組成の不確かさ 

RSFを用いて決定した化学組成の不確かさには,多くの因子が寄与する[19]。このような測定に伴う不確

かさに関する情報は,附属書Bに記載している。 

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附属書A 

(規定) 

相対感度係数算出のための数式 

A.1 記号及び略語 

この附属書で用いる主な記号及び略語は,次による。 

AES:オージェ電子分光法 

AMRSF:平均マトリックス相対感度係数 

ARSF:原子相対感度係数 

ERSF:元素相対感度係数 

Ai:元素iの質量 

Ci:化合物の1分子式中に含まれる元素iの原子数 

Eb, i:元素iの内殻準位の束縛エネルギー 

Eg:バンドギャップエネルギー 

Ei:元素iにおけるオージェ電子又は光電子の運動エネルギー 

Ep:自由電子プラズモンエネルギー 

Epr:入射電子エネルギー 

Fi:元素iのマトリックス補正因子 

Fj:元素jのマトリックス補正因子 

H(cos α, ωi):cos αとωiをパラメータとするチャンドラセカール関数 

unk

iI

:未知試料における元素iの測定強度 

unk

jI

:未知試料における元素jの測定強度 

ref

iI:参照試料における元素iの測定強度 

ref

jI:参照試料における元素jの測定強度 

Ikey:基準物質の測定強度 

Mi:元素iを含む原子量又は分子量 

NA:アボガドロ定数 

Nav:平均マトリックス試料の原子密度 

Ni:元素iの原子密度 

Nv:1原子又は1分子当たりの価電子数 

Nkey:基準元素の原子密度 

Nref:参照試料の原子密度 

Nunk:未知試料の原子密度 

N:未知試料において同定された元素数 

PERSF:純元素相対感度係数 

Qav:平均マトリックス試料の弾性散乱補正因子 

Qi:元素iの弾性散乱補正係数 

Qi(0):表面法線からの放出角α=0における元素iの弾性散乱補正因子 

ref

i

Q:参照試料における元素iの弾性散乱補正因子 

background image

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unk

i

Q

:未知試料における元素iの弾性散乱補正因子 

ref

ir:参照試料における元素iの後方散乱因子 

unk

ir

:未知試料における元素iの後方散乱因子 

rav:平均マトリックス試料の後方散乱因子 

ri:元素iの後方散乱因子 

RSF:相対感度係数 

E

iS:元素iの元素相対感度係数 

At

iS:元素iの原子相対感度係数 

Av

iS:元素iの平均マトリックス相対感度係数 

RSF

iS

:元素iの相対感度係数 

RSF
j

S

:元素jの相対感度係数 

Ep

iS:元素iの純元素相対感度係数 

Ec

iS:特定の化合物における元素iの元素相対感度係数 

U0:過電圧比。特定の殻又は副殻中に存在する電子の束縛エネルギーに対する入射エネルギーの比で与

えられる。 

unk

i

X

:未知試料における元素iの原子分率 

ref

i

X

:参照試料中の元素iの原子分率 

XPS:X線光電子分光法 

Z:原子番号 

Zav:平均マトリックス試料の原子番号 

α:表面法線からの放出角度 

ζi:元素iにおける電子の輸送平均自由行程の非弾性平均自由行程に対する比 

ρ:試料の密度(kg/m3) 

ωi:元素iの単一散乱アルベド 

θ:電子線の入射角度 

Γi, 0:元素iのζi決定に用いる係数 

Γi, 1:元素iのζi決定に用いる係数 

Γi, 2:元素iのζi決定に用いる係数 

Γi, 3:元素iのζi決定に用いる係数 

λav:平均マトリックス試料における電子の非弾性平均自由行程 

λi:元素iにおける電子の非弾性平均自由行程 

ef

r

iλ:参照試料における元素iの電子の非弾性平均自由行程 

unk

iλ:未知試料における元素iの電子の非弾性平均自由行程 

A.2 原理 

均質試料の定量分析は,分光器の影響を除去する又はマトリックス効果の影響を除去するために,表面

組成を決定したい未知試料の元素iに対するオージェ電子又は光電子のピーク強度

unk

iI

と既知の表面組成

をもつ参照試料(純物質又は適切な化合物のどちらでもよい。)の元素iの測定強度

ref

iIとを比較すること

によって行う。この比較は,両者の分析条件が完全に同一であるときだけ可能である。最も簡単な場合,

すなわち試料表面が単一相で,かつ,原子レベルで平たんな場合は,測定される強度比は式(A.1)で表され

background image

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

る[1], [20]〜[24]。 

(

)

(

)λλ

ref

ref

ref

ref

ref

unk

unk

unk

unk

unk

ref

unk

1

1

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

r

Q

N

X

r

Q

N

X

I

I

+

+

=

 ················································· (A.1) 

ここで,

unk

ir

ref

irはXPSでは0になる。式(A.1)の弾性散乱補正因子と非弾性平均自由行程は,今決め

ようとする特定のオージェ電子又は光電子ピークの運動エネルギーにおける値である。後方散乱補正因子

は,測定する元素iのオージェピークの元となる初期イオン化に対応した束縛エネルギーEb, iと入射電子の

運動エネルギーEiに対応した値である。 

式(A.1)によって,

unk

i

X

は式(A.2)で得られる。 

(

)

(

)

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

i

F

I

I

X

r

Q

N

X

r

Q

N

X

I

I

X

=

+

+

=

ref

unk

ref

unk

unk

unk

unk

unk

ref

ref

ref

ref

ref

ref

unk

unk

1

1

λ

λ

 ····················· (A.2) 

AESの場合,参照試料が純物質のとき,すなわち

1

ref=

i

X

のときには,Fiの値は0.1〜8の範囲となる[1]。

また,それらのうちの1/3は0.5以下又は1.5以上である。XPSの場合Fiは1に近く,その値は0.3〜3の

範囲となる[2]。 

したがって,n元素からなる未知試料における元素iの原子分率は,式(A.3)で得られる[1], [24]。 

=

=

n

j

j

j

j

i

i

i

i

F

I

I

F

I

I

X

1

ref

unk

ref

unk

unk

 ································································· (A.3) 

マトリックス補正因子は組成に依存するので,この式は繰返し計算によって解くことができる。もちろ

ん,式(A.3)が解かれるまでは,組成は不明である。単純化のために,原子密度,後方散乱因子及び非弾性

平均自由行程が式(A.2)の二つの試料で同一であると仮定すると,Fi=1,

1

ref=

i

X

となる。これらの仮定を

基に,未知試料がn元素で構成する場合,これら元素の原子分率Xiは式(A.4)で得られる[24]。 

=

=

n

j

j

j

i

i

i

I

I

I

I

X

1

ref

unk

ref

unk

unk

 ···································································· (A.4) 

式(A.4)は簡潔であるため,AES及びXPSの定量分析ではよく使われるが,この式が未知試料のマトリ

ックス補正因子Fiを全て1とするという,単純化された仮定に基づくことを強調する。 

式(A.3)又は(A.4)を用いて,未知試料の

unk

iI

から原子分率

unk

i

X

を計算するには

ref

iIが必要である。十分に

純度の高い(一般に99 %以上)固体が容易に得られ,かつ,AES又はXPS分光器内で表面が清浄に保た

れる一連の試料については,これを測定することによって

ref

iIが得られる。この条件に該当しないもの(例

えば,アルカリ金属,酸素,窒素,ハロゲンなどの常温で気体の元素)は,これらの元素を含む化合物に

おける同様の測定によって得られる。マトリックス効果[式(A.3)のマトリックス補正因子Fi及び,B.2の

議論で追加されるマトリックス効果を含む。]の補正が行われない限り,異なる化合物における同じ元素i

に対する値

ref

iIは異なる[26], [27]。 

一般的には,実用上の観点から,選んだ基準となる元素の特定のピーク強度が1となるように標準化さ

れた

ref

iIを使用するのが便利である[1], [7], [28]〜[33]。XPSでは,ふっ化リチウムのふっ素1sピークが,AESで

は銀のM4, 5VVオージェピークが一般的にこの目的に使われる。 

background image

10 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.3 相対感度係数 

A.3.1 はじめに 

ここでは,3種類の異なった相対感度係数(RSF)について式を定義する。RSFは参照試料における元

素iのピーク強度の測定値

ref

iIから求めることができる。n種類の元素で構成される未知物質に含まれる元

素iに対する相対感度係数

RSF

iS

は,元素iの原子分率

unk

i

X

を式(A.5)から求めるときに使われる。 

=

=

n

j

j

j

j

i

i

i

i

S

F

I

S

F

I

X

1

RSF

unk

RSF

unk

unk

 ································································· (A.5) 

式(A.5)は,RSF

iS

を基準物質の元素ピーク強度Ikeyで規格化した

ref

iIと置く(

key

ref

RSF

I

I

S

i

i

=

)ことで式(A.3)

から求めることができる。ここで単純化のためにマトリックス補正因子Fiを無視すると,式(A.5)は式(A.6)

のように変換できる。 

=

=

n

j

j

j

i

i

i

S

I

S

I

X

1

RSF

unk

RSF

unk

unk

 ··································································· (A.6) 

次に定義する3種類のRSFは,ERSF,ARSF,AMRSFの順に,より正しい分析結果を与える。これら

のRSFを,式(A.6)における

RSF

iS

に代入して定量計算が行われる。 

ここで,全てのRSFの値は,RSFを求めるときのピーク強度の決定方法に依存し,また,励起源,分光

器,試料の角度などの実験条件にも依存することを強調しておく。そのため,ある一組のRSFを用いた表

面分析では,純物質などを用いた感度係数の測定から未知物質に対する測定までの全てのAES又はXPS

測定を同じ実験条件で行い,かつ,同一の方法でピーク強度を求めなければならない。また,一連の分析

では,同じ種類のRSFの組合せを用いなければならない。 

A.3.2 元素相対感度係数(マトリックス効果に対する補正なし。) 

A.3.2.1 一般 

A.2のとおり,ERSFは純元素物質,又は測定対象である元素を含む化合物に対して測定を行うことで求

めることができる。それぞれの求め方についてはA.3.2.2及びA.3.2.3による。 

A.3.2.2 純元素相対感度係数 

純元素相対感度係数(PERSF)

Ep

iSは,対象となる元素iの純元素物質におけるピーク強度

ref

iIと基準物

質におけるピーク強度Ikeyの測定から得られる。 

key

ref

Ep

I

I

S

i

i=

 ············································································· (A.7) 

PERSFを用いて式(A.5)によって表面原子分率を求める場合は,式(A.2)で定義したFiが純元素物質(す

なわち

1

ref=

i

X

)に対して与えられていなければならない。PERSFを用いて式(A.6)によって求めた原子分

率は,本来の値に対してAESの場合は0.1倍〜8倍[1],XPSでは0.3倍〜3倍[2] に及ぶことが報告されてい

る。 

注記 対応国際規格は,ピーク強度

ref

iSとなっているが,間違いであるため

ref

iIに修正した。 

A.3.2.3 化合物を用いた測定で求められる元素相対感度係数 

ある化合物における元素iの元素相対感度係数

Ec

iSは,その化合物におけるピーク強度の測定値

ref

iIとあ

る基準物質のピーク強度の測定値Ikeyから求めることができる。 

background image

11 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

key

ref

ref

Ec

I

X

I

S

i

i

i=

 ········································································ (A.8) 

A.2で規定したとおり,未補正のマトリックス因子及び/又は測定における制限(清浄化されていない

試料の表面汚染に起因する異なるエネルギーのピークに対する強度減衰の程度の差,又はイオン照射によ

って清浄化した場合は選択スパッタリングなど)のために,異なる化合物における同一元素iの元素相対

感度係数

Ec

iSの値が異なる可能性がある。初めの頃は多数の化合物に対して測定を行うことで表面汚染の

影響を平均化することも期待された。例えば,2種類の元素に対する相対感度係数RSFの比は,これらの

元素を含む様々な化合物に対する測定によって,その標準偏差の典型的な値が14 %となることが報告され

ている[34]。加えて,異なるデータセットからRSFを求めると,理論的に予想される結果と相関がほとんど

ないことも報告された[26], [35]。 

化合物から求めた相対感度係数を用いて,式(A.5)から原子分率を求めるためには,式(A.2)で定義した

Fiが

ref

i

X

の異なる各化合物について与えられていなければならない。これら化合物に対するマトリックス

補正因子は,純物質に対するものと異なる可能性がある。化合物から求めた相対感度係数を用いて(A.6)式

から原子分率を求めた場合の誤差は,上記で述べたPERSFの場合よりも僅かに小さくなる傾向がある。 

A.3.2.4 元素相対感度係数の組合せ 

特定の分光器で,かつ,特定の測定条件で求めた

Ep

iSと

Ec

iSは,しばしば一組の

E

iSとして与えられる。 

A.3.3 原子相対感度係数(マトリックス効果の部分的補正を含む。) 

式(A.2)中のFiには,一般に原子密度の比が最も大きく寄与する。ARSFは,原子密度の比を取り入れる

ことでマトリックス効果の部分的補正を行った相対感度係数として定義される。

At

iSは,純元素物質及び

/又は化合物から得られる

E

iSから式(A.9)を用いて求めることができる。 

E

key

At

i

i

i

S

N

N

S =

 ······································································ (A.9) 

原子相対感度係数は,式(A.6)を用いて原子分率を求める。このときの誤差は,純元素相対感度係数を用

いる場合に比べて著しく小さくなる。 

A.3.4 平均マトリックス相対感度係数(マトリックス効果をほぼ完全に補正) 

マトリックス効果の更なる補正は,式(A.1)のパラメータの全てを考慮することで可能である。AMRSF 

Av

iSは,式(A.10)を用いてERSF 

E

iSから求められる[1], [2], [36]。 

E

av

av

av

av

Av

)

1(

)

1(

i

i

i

i

i

i

S

r

Q

N

r

Q

N

S

+

+

=

λ

λ

······················································(A.10) 

ここで,Nav,Qav,rav,及びλavはそれぞれ仮想平均マトリックス試料におけるパラメータである。式(A.10)

の分母にあるこれらに対応する各項は,純元素の固体か組成既知の化合物における元素iに関するもので

ある。これは式(A.5)におけるマトリックス効果の大半を取り除くので,式(A.6)だけを考えればよい。式(A.6)

を使用するとき,式(A.10)をAESに適用すると,その残存マトリックス効果に対する標準不確かさは,175 

eV以上の電子エネルギーで3 %以下,500 eV以上の電子エネルギーでは1.2 %以下であることが報告され

ている[1], [36]。これらの標準不確かさは,式(A.10)の分母のパラメータの標準不確かさ以下である。したが

って,PERSF及び完全なマトリックス補正因子を式(A.5)に使用した場合の正確さと同じであるとして,

AMRSFを式(A.6)に使うことができる。AMRSFを使う一層の利点は,反復計算の必要がないことである。 

エネルギーEiのオージェ電子又は光電子に対する式(A.10)の分母のパラメータの値は,次のように求め

られる[1], [2], [36]。 

純元素物質の原子密度Niは,式(A.11)から計算できる。 

12 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

Ni=1 000ρNA/Ai ····································································· (A.11) 

ここに, 

Ai: 元素iの質量 

NA: アボガドロ定数(6.022×1023/mol) 

ρ: 試料の密度(kg/m3) 

化合物では,Niは式(A.12)から計算できる。 

Ni=1 000ρCiNA/Mi ··································································(A.12) 

ここに, 

Mi: 元素iを含む原子量又は分子量 

Ci: 化合物の1分子式中に含まれる元素iの原子数 

ρ: 試料の密度(kg/m3) 

原子量とρ(kg/m3)は,ハンドブック[37], [38] 1)から得られる。 

注1) 参考文献[37]及び[38]が手元にない場合は,理科年表(自然科学研究機構 国立天文台),化学便

覧(日本化学会 第5版),分析化学便覧(日本分析化学会)などのハンドブックに示されてい

る値を使うとよい。 

パラメータQiは,原子番号と表面法線に対する電子放出角度の関数である。このパラメータ値は既報[25],

又は,より簡単にはデータベース[39] から得られる。必要に応じて,Qiは式(A.13)〜(A.16) [25] からも計算で

きる。 

)

,

(cos

)

1(

5.0

i

i

i

H

Q

ω

α

ω

=

 ························································(A.13) 

i

i

ζ

ω

+

=11

············································································(A.14) 

5.0)

1(

cos

8

907

.1

1

cos

8

907

.1

1

)

,

(cos

i

i

H

ω

α

α

ω

α

+

+

=

········································(A.15) 

]

ln

ln

ln

exp[

0,

1,

2

2,

3

3,

i

i

i

i

i

i

i

i

Γ

E

Γ

E

Γ

E

Γ

+

+

+

=

ζ

 ······························(A.16) 

ここに, 

α: 表面法線からの放出角度 

ζi: 元素iにおける電子の輸送平均自由行程の非弾性平均自由行

程に対する比率 

元素iにおけるΓi, 3,Γi, 2,Γi, 1,及びΓi, 0の値は,表A.1 [25] から得られる。 

Qiの値は,式(A.17)からも簡単に求められる[40]。 

()(

)

α

α

2

cos

171

.0

cos

308

.0

863

.0

0

+

×

=

i

iQ

Q

 ·································(A.17) 

ここに, Qi(0): α=0における元素iの弾性散乱補正因子 

Qi(0)は,式(A.18) [40] から得られる。 

ωi≧0.245のとき 

()

+

+

=

5.0

5.0

)

1(

908

.1

1

908

.2

3

092

.0

091

.0

)

1(

0

i

i

i

Q

ω

ω

·······················(A.18) 

ωi<0.245のとき ()

)

412

.0

1(

)

1(

0

5.0

i

i

i

Q

ω

ω

+

=

 ·····················································(A.19) 

後方散乱因子riは原子番号Z,入射電子エネルギー,及び電子線の入射角θの関数である。riの値は式(A.20)

〜(A.22) [41], [42] 又はデータベース[43] から得られる。 

θ=0°のとき 

98

.2

58

.2

)

10

.2

34

.2(

14

.0

35

.0

0

14

.0

+

=

Z

U

Z

ri

 ··································(A.20) 

θ=30°のとき 

05

.1

15

.1

)

777

.0

462

.0(

20

.0

32

.0

0

20

.0

+

=

Z

U

Z

ri

 ································(A.21) 

13 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

θ=45°のとき 

88

.1

94

.1

)

39

.1

21

.1(

13

.0

33

.0

0

13

.0

+

=

Z

U

Z

ri

 ····································(A.22) 

ここで,U0は入射電子によってイオン化した元素iの内殻準位の束縛エネルギーEb, iの入射電子のエネ

ルギーEprに対する比(=Epr/Eb, i)である。式(A.20)〜式(A.22)は,3 keV〜10 keVの間の入射電子エネルギ

ーに対して使用できる。 

非弾性平均自由行程λi(nm)は,試料物質と電子エネルギーの関数である。このパラメータ値は,既報

の式[44],又はより簡単にデータベース[43], [45] から得られる。必要に応じて,式(A.23)〜(A.29) [44] から計算

できる。 

)]

/

(

)

/

(

)

ln(

[

1.0

2

2

p

i

i

i

i

i

E

D

E

C

E

E

E

+

=

γ

β

λ

···········································(A.23) 

1.0

5.0

2

g

2

p

)

000

1/

(

069

.0

)

(

944

.0

10

.0

ρ

β

+

+

+

=

E

E

 ····························(A.24) 

5.0

)

000

1/

(

191

.0

=

ρ

γ

 ······························································(A.25) 

U

C

91

.0

97

.1

=

 ····································································(A.26) 

U

D

8.

20

4.

53 −

=

····································································(A.27) 

i

M

N

U

000

1/

=

 ··································································(A.28) 

5.0

v

p

)

000

1/

(8.

28

i

M

N

E

ρ

=

 ·······················································(A.29) 

ここに, 

Ei: 電子のエネルギー(eV) 

ρ: 試料の密度(kg/m3) 

Nv: 1原子又は1分子当たりの価電子数 

Eg: バンドギャップエネルギー(eV) 

Mi: 元素iを含む原子量又は分子量 

式(A.10)中の平均マトリックス相対感度係数に必要とされるNav(atoms/m3)及びQavの値は,式(A.30)

〜(A.31) [1], [2], [36] で表される。 

28

av

10

20

.5

×

=

N

 ·····································································(A.30) 

2

av

300

10

310

2

951

.0

=

iE

Q

 ·······················································(A.31) 

仮想的な平均マトリックスの物理定数[1](Z=40.75,Nv=4.684,ρ=6 767kg/m3,Mi=137.51,Eg=0 eV)

を使う場合,式(A.10)のrav及びλavの値は,式(A.32)〜(A.35)から計算される。 

θ=0°のとき 

35

.0

0

av

187

.1

353

.1

=

U

r

 ····························································(A.32) 

θ=30°のとき 

32

.0

0

av

168

.1

362

.1

=

U

r

 ····························································(A.33) 

θ=45°のとき 

33

.0

0

av

039

.1

260

.1

=

U

r

 ····························································(A.34) 

)

ln

61

.2

(

8

051

.0

76

.1

6.

48

523

000

.0

2

3

av

i

i

i

i

E

E

E

E

+

+

=

λ

 ··································(A.35) 

background image

14 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表A.1−ζi [25]を決定するための元素iの係数Γi, 3,Γi, 2,Γi, 1及びΓi, 0 

原子番号 

Γi, 3 

Γi, 2 

Γi, 1 

Γi, 0 





7 a) 
8 a) 
9 a) 

10 a) 

11 

12 
13 
14 
15 
16 
17 a) 
18 a) 
19 
20 
21 
22 
23 
24 
25 
26 
27 
28 
29 
30 
31 
32 
33 
34 
35 a) 
36 a) 
37 
38 
39 
40 

−0.009 449 05 

0.003 600 07 
0.003 843 92 
0.017 955 4 
0.009 621 54 
0.001 287 68 

−0.007 046 18 
−0.015 380 0 
−0.023 713 9 
−0.027 257 2 
−0.029 221 1 
−0.031 546 4 
−0.031 282 0 
−0.031 273 6 
−0.024 321 1 
−0.017 368 5 
−0.010 416 0 
−0.009 861 32 

0.003 532 95 
0.022 482 5 
0.022 312 8 
0.036 387 6 
0.025 767 4 
0.016 165 3 

−0.000 105 87 
−0.001 240 25 
−0.021 855 4 
−0.039 883 8 
−0.048 804 4 
−0.047 081 7 
−0.049 699 6 
−0.040 643 5 
−0.024 121 5 
−0.007 599 47 

0.008 922 55 
0.034 378 7 
0.072 220 6 
0.087 928 5 

0.187 260 

−0.052 317 7 
−0.064 491 0 
−0.304 704 
−0.143 247 

0.018 210 4 
0.179 668 
0.341 125 
0.502 582 
0.562 785 
0.608 573 
0.659 172 
0.648 236 
0.657 242 
0.540 729 
0.424 216 
0.307 703 
0.296 051 
0.035 553 8 

−0.318 054 
−0.319 174 
−0.594 219 
−0.398 297 
−0.214 086 

0.096 669 0 
0.109 994 
0.507 199 
0.870 509 
1.046 91 
1.030 86 
1.093 52 
0.939 953 
0.650 474 
0.360 996 
0.071 517 4 

−0.409 408 
−1.134 84 
−1.432 74 

−0.307 224 

1.152 71 
1.269 89 
2.532 51 
1.460 61 
0.388 702 

−0.683 202 
−1.755 11 
−2.827 01 
−3.149 76 
−3.504 76 
−3.884 56 
−3.789 85 
−3.933 17 
−3.344 89 
−2.756 61 
−2.168 33 
−2.076 64 
−0.392 266 

1.763 35 
1.798 19 
3.581 14 
2.396 56 
1.214 43 

−0.752 442 
−0.770 173 
−3.306 77 
−5.780 48 
−6.951 92 
−6.977 48 
−7.484 95 
−6.672 34 
−5.060 20 
−3.448 07 
−1.835 93 

1.161 74 
5.763 59 
7.613 60 

0.283 110 

−3.504 85 
−4.491 31 
−6.435 59 
−4.002 01 
−1.568 44 

0.865 138 
3.298 71 
5.732 29 
6.043 67 
6.787 97 
7.626 46 
7.396 24 
8.059 03 
7.267 15 
6.475 28 
5.683 40 
5.260 26 
1.326 55 

−3.243 57 
−3.579 67 
−7.367 29 
−5.049 57 
−2.572 78 

1.495 58 
1.347 56 
6.659 82 

12.353 6 
15.171 1 
15.860 1 
16.961 5 
15.848 7 
13.093 6 
10.338 4 

7.583 29 
1.360 45 

−8.351 11 

−12.345 9 

注a) 補間値 

background image

15 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表A.1−ζi [25]を決定するための元素iの係数Γi, 3,Γi, 2,Γi, 1及びΓi, 0(続き) 

原子番号 

Γi, 3 

Γi, 2 

Γi, 1 

Γi, 0 

41 
42 
43 a) 
44 
45 
46 
47 
48 
49 
50 
51 
52 
53 a) 
54 a) 
55 
56 
57 
58 a) 
59 a) 
60 a) 
61 a) 
62 a) 
63 a) 
64 
65 a) 
66 
67 a) 
68 a) 
69 a) 
70 a) 
71 a) 
72 
73 
74 
75 
76 
77 
78 
79 
80 a) 
81 
82 
83 

0.109 828 
0.121 609 
0.130 667 
0.139 724 
0.138 944 
0.124 196 
0.138 696 
0.110 743 
0.104 637 
0.100 837 
0.092 914 9 
0.089 548 0 
0.084 998 3 
0.080 448 5 
0.075 898 8 
0.086 199 2 
0.102 827 
0.116 179 
0.129 531 
0.142 883 
0.156 236 
0.169 588 
0.182 940 
0.196 292 
0.196 258 
0.196 223 
0.199 287 
0.202 350 
0.205 414 
0.208 477 
0.211 541 
0.214 604 
0.224 201 
0.236 340 
0.241 096 
0.226 617 
0.216 236 
0.206 050 
0.209 509 
0.188 563 
0.167 617 
0.158 079 
0.132 015 

−1.859 20 
−2.094 83 
−2.279 15 
−2.463 47 
−2.467 47 
−2.188 73 
−2.509 84 
−1.964 48 
−1.861 27 
−1.802 77 
−1.656 82 
−1.602 30 
−1.512 27 
−1.422 23 
−1.332 20 
−1.533 03 
−1.851 84 
−2.085 63 
−2.319 41 
−2.553 20 
−2.786 98 
−3.020 77 
−3.254 55 
−3.488 34 
−3.478 91 
−3.469 47 
−3.525 51 
−3.581 56 
−3.637 60 
−3.693 64 
−3.749 69 
−3.805 73 
−4.016 85 
−4.259 54 
−4.383 34 
−4.126 42 
−3.944 91 
−3.778 52 
−3.886 39 
−3.494 45 
−3.102 50 
−2.941 25 
−2.471 95 

10.374 6 
11.922 4 
13.153 2 
14.383 9 
14.539 0 
12.786 0 
15.144 7 
11.584 6 
11.015 3 
10.738 0 

9.839 03 
9.554 24 
8.939 28 
8.324 33 
7.709 37 
9.013 95 

11.044 0 
12.356 5 
13.669 0 
14.981 5 
16.294 0 
17.606 5 
18.919 0 
20.231 5 
20.101 8 
19.972 1 
20.299 5 
20.626 9 
20.954 4 
21.281 8 
21.609 2 
21.936 6 
23.457 1 
25.056 9 
26.071 4 
24.585 1 
23.546 6 
22.687 4 
23.668 5 
21.232 2 
18.795 8 
17.924 8 
15.161 8 

−18.661 2 
−21.843 7 
−24.584 2 
−27.324 7 
−27.871 1 
−24.405 4 
−29.771 9 
−22.150 6 
−20.942 9 
−20.496 2 
−18.655 7 
−18.061 5 
−16.589 8 
−15.118 2 
−13.646 5 
−16.565 7 
−21.063 0 
−23.364 6 
−25.666 2 
−27.967 8 
−30.269 5 
−32.571 1 
−34.872 7 
−37.174 3 
−36.689 0 
−36.203 6 
−36.902 5 
−37.601 4 
−38.300 3 
−38.999 2 
−39.698 1 
−40.397 0 
−43.795 6 
−47.299 7 
−49.840 0 
−47.266 6 
−45.375 2 
−43.906 5 
−46.545 1 
−41.463 5 
−36.381 9 
−34.810 0 
−29.404 9 

注a) 補間値 

16 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書B 

(参考) 

分析結果の不確かさに関する情報 

B.1 

記号及び略語 

この附属書で用いる主な記号及び略語は,次による。 

AES:オージェ電子分光法 

Fi:マトリックス補正因子 

RSF:相対感度係数 

XPS:X線光電子分光法 

B.2 

序文 

RSFを用いてAES又はXPSの測定から決定する表面組成の不確かさは,多くの因子が関与する[19]。こ

れらの因子の多くは,一般的には標準不確かさを決定したり見積もったりすることができない。その理由

の一つは,マトリックス効果の幾つかのパラメータ(例えば,電子の非弾性平均自由行程,弾性散乱補正

因子,後方散乱因子)について,不確かさを確証するために十分な実験が依然として行われていないため

である。さらに,実際の試料では,附属書AでRSFに関する式の展開で仮定したほど分析領域は化学的

に均質ではなく,さらにその表面は原子レベルで平たんでもない。したがって,分析の不確かさは,個々

の試料が理想的な構造から外れる度合いに依存する。最終的には,その他の仮定による単純化(例えば,

強度計測の際にスペクトル波形へのマトリックス効果,照射損傷,イオンスパッタリング効果,表面汚染

を無視すること)がそれぞれの試料に依存した大きさの不確かさを招く。この附属書には,不確かさのこ

うした起源に関する情報が簡潔に記載されている。 

B.3 

マトリックス効果 

B.3.1 一般 

マトリックス効果は,AESにおいてもXPSにおいても強度に著しい影響を与える。もし定量分析におい

てマトリックス効果を無視すると,AESの場合で8倍まで[1],XPSの場合で3倍まで[2] 結果が偏る可能性

がある。マトリックス効果の補正の組合せが変われば,その影響の度合いも異なり,定量分析に対する便

利さの度合いも異なる。 

B.3.2 RSFに及ぼすマトリックス効果 

附属書Aの式(A.2)に示されたとおり,マトリックス補正因子Fiは,四つの因子(原子密度,弾性散乱

補正因子,後方散乱因子及び電子の非弾性平均自由行程)の未知試料と選んだ参照試料との比に依存する。

Fiの値は,AESで0.1〜8 [1],XPSで0.3〜3 [2] の範囲にある。ERSF(マトリックス効果を補正していない)

を用いた分析には,Fiと同程度の不確かさがある。 

ARSFは,マトリックス効果の中で最大の影響を与える未知試料と参照試料における原子密度の差に関

する補正を加えているため,ERSFよりも精確さが増すと期待できる。ほぼ完全なマトリックス効果補正

は,AMRSFの利用による。XPSでは,AMRSFを利用したときの標準不確かさは2 %以下である[2]。AES

においても,175 eV以上のエネルギー範囲では,標準不確かさは3 %以下である[1]。 

17 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

B.3.3 強度計測に及ぼすマトリックス効果 

局所的な化学環境の変化は,内殻−価電子帯−価電子帯オージェスペクトルの波形又は平均エネルギー

に劇的な影響を与える。それは内在的励起(例えば,シェイクアップ)を伴ってスペクトル波形を変える

し,外在的励起(例えば,試料内及び試料と真空との界面付近における電子輸送に関わる非弾性散乱プロ

セス)を伴ったときもスペクトル波形を変えることがある。これらの影響の大きさは,ダイレクトスペク

トルよりも微分形スペクトルで強度計測する方が大きくなると予想されるが,この問題に関してこの規格

では十分に規定されていない。この効果は,ダイレクトスペクトルのピーク面積よりも微分スペクトルの

ピーク高さから強度計測する方が大きくなるだろう。したがって,可能であれば(すなわち,他元素のス

ペクトル成分との干渉が無視できるような試料の場合は),ダイレクトスペクトルのピーク面積から信号強

度を決定することが望ましい。 

参考文献[16]には,一つの元素において異なる化学状態の試料を測定するとき,矛盾しない結果を得る

ために微分をどう行うことが望ましいのかが示されている。この文献には,ピーク面積の決定方法につい

ても同様の情報が記述されている。 

B.4 

試料のモルフォロジー 

実際の試料では,試料上の位置によって組成が異なることがある。試料表面上の組成が,測定装置の空

間分解能より大きな範囲で変化している場合には,測定領域を制限する集束形電子線源,X線源又は結像

光学系をもつ測定装置を使用することによって試料表面上の組成変化を決定することが可能である。 

また,試料の深さ方向の組成変化は,二つ以上の取り出し角度で測定したスペクトルの解析[47],オージ

ェ又は光電子ピークに関して非弾性散乱によるピーク近傍の強度変化を解析[48] することによって可能で

ある。 

B.5 

表面形状 

異なる運動エネルギーにおける信号の相対強度は,試料表面の荒れ,又は粒径,AESの場合には電子線

の入射角度によって変化するため[6], [49], [50],参照試料及び未知試料は可能な限り類似の表面形状をもつこ

とが望ましい。 

B.6 

照射損傷 

材料によってはAES及びXPS分析のときに使用する電子線又はX線の照射によって化学組成が変化す

ることがあり,試料測定に際して試料損傷が最小となるように注意を払う必要がある[51], [52], [53]。 

なお,測定の際の全照射ドース量又は照射フラックス量が,照射損傷の重要な指標となる場合がある。 

AESでは電子線誘起損傷及び電子線入射に伴う温度上昇による影響が重要であるが[51], [53],XPSにおい

ては,ポリマー又はある種の無機化合物[51], [52] では,X線照射による損傷又は発生した光電子による損傷

が観測される。このため照射損傷を受けやすい材料は,参照試料として用いないのがよい。 

なお,試料損傷を低減する手段として,AESの場合には照射電子線の電流密度を低くする,XPSの場合

には照射X線のフラックス量を小さくする,同一試料の複数点でスペクトル測定を行う,又はスペクトル

の積算時間を短縮するという各方法がある。 

B.7 

イオンスパッタリングの影響 

多元系試料に対してイオンスパッタリングを用いて,組成に関するデプスプロファイルを測定すると平

18 

K 0167:2011 (ISO 18118:2004) 

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

衡状態における試料の表面組成が変化する場合がある[54] , [55], [56]。この現象は選択スパッタリングと呼ばれ

る[33]。 

大きな選択スパッタリングが起きると,多元系参照試料では,スパッタリングした試料表面から得られ

たRSF値は誤差を含む。したがって,選択スパッタリングは,未知試料の表面組成の決定に影響を及ぼす。

しかしながら,選択スパッタリングの影響が参照試料及び未知試料について同程度であれば,未知試料の

組成測定に与える選択スパッタリングの影響は小さくなる。 

また,イオンによる衝撃は,試料表面の荒れ,アトミックミキシング及び構造変化をもたらす可能性が

ある[56]。イオンスパッタリング時に生成する表面荒れは,試料を面内回転することによって軽減できる。 

B.8 

表面汚染 

試料の表面汚染層はオージェ電子又は光電子の強度を減衰させるので,RSF値を測定する場合又は(可

能であれば)未知試料の測定に際しても,測定前に表面汚染層を除去するのがよい。 

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