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K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 像倍率···························································································································· 3 

4.1 スケールマーカ ············································································································· 3 

4.2 倍率値の表示 ················································································································ 4 

5 認証標準物質及び標準物質 ································································································· 4 

5.1 一般 ···························································································································· 4 

5.2 CRMの要件 ················································································································· 4 

5.3 CRMのピッチパターン··································································································· 4 

5.4 保管及び取扱い ············································································································· 5 

6 像倍率校正の手順 ············································································································· 5 

6.1 一般 ···························································································································· 5 

6.2 CRMの装着 ················································································································· 5 

6.3 SEM操作条件の設定 ······································································································ 5 

6.4 像の記録 ······················································································································ 6 

6.5 像の測定 ······················································································································ 6 

6.6 像倍率及びスケールマーカの校正······················································································ 7 

7 像倍率及びスケールマーカの精度 ························································································ 8 

8 像倍率校正報告書 ············································································································· 8 

8.1 一般 ···························································································································· 8 

8.2 像倍率校正報告書の内容 ································································································· 9 

附属書A(参考)像倍率校正用の認証標準物質及び標準物質························································ 10 

附属書B(参考)SEMの像倍率校正に影響する諸因子 ······························································· 12 

附属書C(参考)像倍率測定の不確かさ ·················································································· 13 

附属書D(参考)像倍率校正報告書の例 ·················································································· 14 

参考文献 ···························································································································· 16 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人

表面化学分析技術国際標準化委員会(JSCA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案

を添えて日本産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が

改正した日本産業規格である。これによって,JIS K 0149-1:2008は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

日本産業規格          JIS 

K 0149-1:2019 

(ISO 16700:2016) 

マイクロビーム分析−走査電子顕微法− 

第1部:像倍率校正方法 

Microbeam analysis-Scanning electron microscopy- 

Guidelines for calibrating image magnification 

序文 

この規格は,2016年に第2版として発行されたISO 16700を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本産業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

適用範囲 

この規格は,適切な標準物質を用いて走査電子顕微鏡(以下,SEMという。)の像倍率を校正する方法

について規定する。校正用標準物質の適用可能な範囲によって,この方法による倍率範囲は制約される。

ただし,この規格は測長SEMには適用しない。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 16700:2016,Microbeam analysis−Scanning electron microscopy−Guidelines for calibrating 

image magnification(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Q 0030 標準物質−選択された用語及び定義 

注記 対応国際規格:ISO Guide 30,Reference materials−Selected terms and definitions 

JIS Q 0035 標準物質−認証のための一般的及び統計的な原則 

注記 対応国際規格:ISO Guide 35,Reference materials−Guidance for characterization and assessment 

of homogeneity and stability 

JIS Q 17025 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項 

注記 対応国際規格:ISO/IEC 17025,General requirements for the competence of testing and calibration 

laboratories 

JIS Q 17034 標準物質生産者の能力に関する一般要求事項 

注記 対応国際規格:ISO 17034,General requirements for the competence of reference material producers 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

  

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

走査電子顕微鏡,SEM(scanning electron microscope) 

電子線で試料表面を走査することによって試料表面の拡大像を得る装置。 

3.2 

像(image) 

SEM(3.1)で形成される試料表面の二次元像。 

注記 SEMを用いて撮影した試料の写真は,像のよい例である。 

3.3 

像倍率(image magnification) 

試料表面を走査する電子線の走査幅と表示される像の幅との比。 

3.4 

スケールマーカ(scale marker) 

試料上の寸法を表す像(3.2)上の線分,又はそれに準ずるもの。 

3.5 

標準物質,RM(reference material) 

一つ以上の規定特性について,十分均質かつ安定であり,測定プロセスでの使用目的に適するよう作製

された物質。 

3.6 

認証標準物質,CRM(certified reference material) 

一つ以上の規定特性について,計量学的に妥当な手順によって値付けされ,規定特性の値及びその不確

かさ,並びに計量計測トレーサビリティを記載した認証書が付いている標準物質(3.5)。 

注記 像倍率校正用CRM又はRMは,像倍率(3.3)の校正に用いる目的に合ったピッチの特性をも

つことが必要である。 

3.7 

校正(calibration) 

SEM(3.1)の表示倍率とRM(3.5)又はCRM(3.6)を用いて得た倍率との関係を得るための一連の操

作。 

3.8 

試料傾斜角(tilt angle) 

試料表面の法線と試料照射電子線とのなす角(図1参照)。 

background image

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図1−試料傾斜角 

3.9 

ディスプレイ(display) 

像(3.2)を表示するアナログ又はデジタルの機器。 

3.10 

ワーキングディスタンス(working distance) 

SEM(3.1)の対物レンズ下面と試料表面との距離。 

3.11 

ピッチ(pitch) 

試料表面で繰り返される1周期又は1周期の長さ。 

3.12 

精確さ(accuracy) 

個々の測定結果と採択された参照値との一致の程度。 

注記1 個々の測定結果とは,この規格で規定する方法で得られるCRM(3.6)のピッチ(3.11)の観

測値である。 

注記2 採択された参照値とは,CRMのピッチである。 

なお,ピッチには不確かさの数値も付加されている。 

注記3 精確さ(accuracy)と精度(precision)とは異なる。精度は,定められた条件下での独立した

複数測定結果のデータ間の一致の程度である(JIS Z 8402-1参照)。 

像倍率 

4.1 

スケールマーカ 

像倍率を表示する方法として,スケールマーカ及びその長さに対応した値(国際単位系)を像に重ね合

わせて表示する。この表示は,試料の実寸法を表している。その例を,図2に示す。 

電子線

試料

試料傾斜角

傾斜した試料 

background image

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注記 矢印で示された長さは,校正後,500 nmに対応する。 

図2−スケールマーカ及びその値の表示 

4.2 

倍率値の表示 

像の倍率値の表示は,数値の前又は後に記号×を付け,像に重ね合わせて表示する。その例を次に示す。 

100×,10 000×,10 k×,又は×100,×10 000,×10 k 

注記1 表示された像上の倍率値は,SEMの供給元が指定する縦・横寸法で像が出力される場合にだ

け正しい表示となる。 

注記2 像倍率は,使用する出力機器(ディスプレイ,プリンタ,写真など)の画像寸法に依存する。 

注記3 像上のスケールマーカは,像と一体で拡大・縮小されるため,使用する出力機器の画像寸法

には依存しない。 

注記4 スケールマーカが像上に表示されている場合には,倍率値の表示は必ずしも必要としない。 

認証標準物質及び標準物質 

5.1 

一般 

用語は,JIS Q 0030による。 

像倍率の校正には,できる限りJIS Q 0035及びJIS Q 17034に従って作製されたCRMを用いる。校正

する倍率に適したCRMが入手できない場合には,JIS Q 17034に従って作製されたRMを用いてもよい(附

属書A参照)。 

5.2 

CRMの要件 

次の要件を確認する。 

− 真空中での使用及び電子線照射で繰り返し使用したとき,物理的・化学的に安定である。 

− よいコントラストのSEM像が得られる。 

− 導電性がある。 

− 通常の使用又は保管で生じるごみなどを,損傷を与えることなく取り去ることができる。 

− 認証書をもつ。 

5.3 

CRMのピッチパターン 

CRMのもつピッチの配列パターンは,次のうちの一つ以上とする。 

− 直交した格子配列 

− 直線の配列 

− 点の直線的配列 

− 点の直交した配列 

CRMのパターンが少なくとも一方向(X方向又はY方向)の倍率校正に使用でき,しかもパターンの

不確かさの数値が,必要とする倍率の精確さを満たすことを確認する。 

注記1 一方向にパターンを合わせれば,試料の機械的回転によるCRMの再設定を行わずにX・Y

500 nm 

500 nm 

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二方向の倍率校正ができるようにCRMがX・Y二方向の直交パターンをもつ場合がある。 

なお,CRMが像ひずみ試験及び/又は像分解能試験のための特性(構造)をもつ場合もあ

る。 

注記2 広い倍率範囲の倍率校正ができるようにCRMが数種類のパターンをもつ場合がある。倍率

範囲をカバーできない場合,異なるピッチをもつ数種類のCRMが必要になる。 

5.4 

保管及び取扱い 

CRMは,デシケータ,真空容器などに保管する。 

CRMの取扱いは,指サック,クリーンルーム用手袋,ピンセットなどを用いて行う。 

校正を行う前にCRMにごみ及び損傷がないことを目視で確認する。 

CRM表面にごみなどがある場合には,清浄乾燥窒素ガス,清浄乾燥空気などを用い,CRMに損傷を与

えないように注意深くごみなどを取り去る。 

CRMに損傷などが認められる場合には,これを使用してはならない。 

ときどき他のCRMを用いて校正を行い,比較をすることによってCRMの校正が正しいことを確認し,

その結果を記録する。その実施頻度は,CRMの特性及び使用頻度(使用状況)に依存する。 

倍率校正用のCRMは,倍率校正の目的に限定して使用する。 

像倍率校正の手順 

6.1 

一般 

SEMの像倍率に影響を及ぼす因子は,像倍率の校正値に系統的誤差をもたらすことがある。この因子を

附属書Bに示す。 

SEMの安定性は,校正の間隔を決める上で主要な要素である。最初は,SEMが安定であることを確証

するために短い期間で校正を行う必要がある。 

得られた複数の校正結果の統計値は,その分析機関の不確かさを示す。これらは,装置の倍率表示及び

データの不確かさとして現れる。 

CRMは,使用する像倍率と要求される校正の精確さとによって選択する。この規格では,精確さが10 %

よりもよい校正とする。 

6.2 

CRMの装着 

CRMを装着するときは,5.4に従って取り扱う。 

CRMの装着は,SEM及びCRMの製造業者の取扱説明書に従って行う。 

装着したCRMとSEMの試料ホルダとの間の電気的導通がよいことを確かめる。 

CRMが試料ホルダにしっかりと装着され,その装着位置から動かないことを確かめる。これによって振

動による像質の低下を最小限に抑える。 

6.3 

SEM操作条件の設定 

試料室は,SEM製造業者の取扱説明書に従って真空排気する。 

電子銃の動作条件は,SEM製造業者の取扱説明書に従って調整する。 

試料傾斜角が0°となるように,試料ステージの傾斜角をSEM製造業者の取扱説明書に従って調整する。 

試料傾斜角は,次の手順によって確かめる。 

a) 傾斜角補正,スキャンローテーション,及び倍率のズーム制御をオフにする。 

注記1 制御精度,機能の向上などで,これらのオン・オフ機能がない装置もある。 

b) 像観察モード(二次電子及び/又は反射電子)を選択する。 

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c) 非点収差の補正及び焦点合せを行う。 

d) 測定に必要な視野と倍率とを選択する。 

e) 試料ステージの傾斜角は,CRMピッチの測定値が最大となる角度に決める。この場合,試料傾斜角は

0°とみなせる。その後の像記録は,この傾斜角で実施する。 

注記2 視野全体にわたって焦点合せができない場合には,CRMの再装着が必要である。 

f) 

像倍率校正を実施するために,加速電圧とワーキングディスタンスとを選択する。そしてCRMを,

試料ステージを用いて観察する位置に合わせる。 

g) SEM製造業者の取扱説明書が指示する所望の動作条件に,装置が十分に安定するまで待つ。 

h) CRM像の非点収差補正及び焦点合せを行う。 

i) 

CRMパターンがディスプレイのX方向及び/又はY方向と平行になるように,必要に応じて試料ス

テージの回転機構によってCRMを回転する。 

j) 

CRMピッチパターンの測定範囲が,ディスプレイ画面の縦方向と横方向のいずれも約80 %の範囲に

入るように,試料ステージでCRMを移動する。 

k) このとき,再度,試料ステージの回転機構を用い,CRM測定パターンがディスプレイのX方向及び

/又はY方向と平行になるように,必要に応じてCRMを回転する。また,CRMのピッチパターンの

像がよりシャープになるように,焦点を合わせる。 

注記3 観察画面上でCRMの測定するピッチパターン数は,約10個が実用的である。例えば,観

察領域が100 mmのディスプレイの場合,種々の倍率における代表的なピッチ幅は次によ

る。 

×50 000 

0.2 μm 

×10 000 

1 μm 

×1 000 

10 μm 

6.4 

像の記録 

CRMのピッチパターンがSEMの観察画面のX方向及び/又はY方向と合っていることを確かめる。像

の記録を行う電子線走査速度を設定する。 

一度,目的の像が得られたら,SEMのいかなる観察条件も変えてはならない。CRMの観察像をスケー

ルマーカ付きで写真若しくは写真フィルム又はデジタルで記録する。 

写真記録媒体の場合,測定する前に,安定させるため十分な時間をとる。これは,媒体の寸法変化の影

響を最小にする。 

注記 デジタル記録の場合には,測定は記録画像を紙に再表示して行うこともある。このとき,像の

寸法又はアスペクト比が,最初に記録された像と異なる場合がある。このような場合には,オ

リジナル像の寸法又はアスペクト比も記録しておくと有益である。 

6.5 

像の測定 

像倍率の測定は,全て経時変化の少ない用紙に再現した像上で実施する。 

記録像の測定は,精度が既知の標準校正されたスケール(1 mm未満の測定が可能)を用いる。 

記録像周辺部の像ひずみの影響を最小限にするため,測定は,像表示領域の中心部約80 %以内で行う。 

記録像のX方向及び/又はY方向のピッチを測定する。すなわち,記録像の領域内で幾つかの整数個の

ピッチに相当する2点間距離を測定する。 

測定する距離は,ピッチの約10個分とする。 

測定は,記録像上3 mm以上離れた位置で,3か所以上行う。 

background image

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注記 ピッチ測定は,CRM周期構造の中心から中心,又はエッジからエッジにおいて行ってもよい。 

6.6 

像倍率及びスケールマーカの校正 

6.6.1 

一般 

通常使用する倍率で校正を行う。 

6.6.2 

倍率 

倍率(M)は,式(1)によって求める。 

d

D

M=

 ··················································································· (1) 

ここに, 

D: 記録像上で測定されたピッチの平均値(距離)(図3参

照) 

d: Dに相当するCRMのピッチ(距離)(図4参照) 

X方向及びY方向の平均距離をそれぞれ求め,それぞれの方向に対して像倍率を算出する。ただし,X

方向とY方向との間の像倍率差が,使用者にとっての許容範囲を超える場合には,CRMの装着及び/又

はSEMの電子光学系の調整状態を確認し,再校正を行う。 

6.6.3 

スケールマーカ 

スケールマーカの校正を行う。 

スケールマーカが示す長さ( find)に対応する記録像上の長さ(L)は,式(2)を用いて求める。 

d

D

f

M

f

L

×

=

×

=

ind

ind

 ································································· (2) 

ここに, 

L: 記録像上のスケールマーカの校正された長さ 

find: 記録像上のスケールマーカの表示値(図3参照) 

注記 校正された倍率に合わせてスケールマーカの長さが調整されるなら,不整合は最小になる。 

図3−記録された像 

ind

ind

M

ind

D

10

background image

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

  

図4−CRM 

像倍率及びスケールマーカの精度 

像倍率の精度Am(%)は,像倍率誤差(ΔM)及び像倍率値(M)から,式(3)及び式(4)によって求める。 

d

D

M

M

M

M

=

=

ind

ind

Δ

 ··························································· (3) 

100

Δ

m

×

=MM

A

 ·········································································· (4) 

ここに, 

Mind: 表示されている像倍率値(図3参照) 

スケールマーカの精度As(%)は,スケールマーカの誤差(ΔL)及びスケールマーカ値(L)から,式

(5)及び式(6)によって求める。 

d

D

f

L

L

L

L

ind

ind

ind

Δ

=

=

 ··························································· (5) 

100

Δ

s

×

=LL

A

 ············································································ (6) 

ここに, 

Lind: 記録像上のスケールマーカの長さ(mm) 

find: 記録像上のスケールマーカの表示値(図3参照) 

注記1 D及びLindは,例えば,ノギスを使用しても,目視の限界から±0.2 mmの許容差がある。 

注記2 デジタル像の場合,精度はD及びLindが±1画素の精度で測定してもよい。 

D及びLindは,Am及びAsを計算するために画素の長さ(mm)で表す。 

注記3 測定の不確かさは,SEMの観察条件,その他の要因に依存し,統計的な誤差はCRMのピッ

チの不均一性に依存する。これらが倍率校正の結果に含まれていることを認識しておくこと

が大切である(附属書C参照)。 

像倍率校正報告書 

8.1 

一般 

像倍率校正報告書は,この規格で規定する像倍率校正方法に従い,正確かつ明確に記載する。像倍率校

正報告書には,測定結果及び像倍率校正結果を判定するために必要な全ての情報及びJIS Q 17025の7.8(結

果の報告)で要求する情報を記載する。さらに,顧客から要求された情報を加えることができる。 

顧客が文書で同意している場合には,像倍率校正結果を簡便な方法で報告してもよい。JIS Q 17025の

d

10

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

7.8に規定する情報については,校正を実施した機関で容易に検索できるようにする。 

8.2 

像倍率校正報告書の内容 

像倍率校正報告書には,次の内容を含む。校正の結果に影響する他の情報があれば,これも含む。附属

書Dに,その例を示す。 

a) 像倍率校正報告書名 

b) 機関名及び住所 

c) 像倍率校正報告書番号 

d) 顧客名及び住所 

e) 用いた規格の規格番号(JIS K 0149-1) 

f) 

使用装置の製造業者名,形式名及びシリアル番号 

g) RM名及び識別記号 

h) 加速電圧(kV),ワーキングディスタンス(mm),像モード,走査速度及び設定倍率 

i) 

測定回数n及び像倍率校正結果:スケールマーカの長さ及び/又は倍率。X方向及び/又はY方向の

精確さ(%表示) 

j) 

校正者名 

k) 校正日時 

l) 

承認者:役職,氏名及び署名 

m) 校正結果に影響する情報があれば,その記載 

注記 必要があれば,機関の同意なく校正報告書を複製してはならないことを明記する。 

10 

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附属書A 

(参考) 

像倍率校正用の認証標準物質及び標準物質 

A.1 概要 

この附属書に,SEMの像倍率校正用のCRM及びRMの実例を示す。最新の情報を入手するため,幾つ

かのウェブサイトリンクを参考文献に示す。 

注記 下記以外のCRM及びRMがあれば使用してもよい。 

A.2 認証標準物質(CRM)のための試験所及び校正機関 

A.2.1 National Institute of Standards and Technology (NIST),USA [3] 

A.2.2 Physikalisch−Technische Bundesanstalt (PTB, The National Metrology Institute),Germany [4] 

− 校正項目:1次元又は2次元の回折格子標準試料のピッチ,校正方法:計量用の広範囲走査プローブ

顕微鏡(SPM),ピッチ範囲:50 nm〜50 μm,包含係数k=2の拡張不確かさ:数十pm,測定した周

期数と回折格子の品質に依存,認証:国際度量衡委員会 相互認証協定(CIPM−MRA) 

− 校正項目:平均のピッチ,校正方法:回折法,ピッチ範囲:50 nm〜4 μm,認証:CIPM−MRA 

A.2.3 National Physical Laboratory (NPL),UK [5] 

− 校正項目:スケールの平均ピッチ,校正方法:回折角測定法,ピッチ範囲,Rp:350 nm〜50 μm,拡

張不確かさU,包含係数k=2:U=±1 nm(Rp=350 nm〜400 nm),U=±10 nm(Rp=400 nm〜10 μm),

U=±100 nm(Rp=10 μm〜50 μm);イギリス国立物理学研究所(NPL)の長さ国家標準に遡及可能。 

− 校正項目:選択した構造物,校正方法:長さの国家標準にトレーサビリティのある光学干渉計を装備

した計量用AFM;構造物の大きさ,約100 nm〜300 nm;拡張不確かさU,包含係数k=2:U=±Q[2 

nm,2.03×10−4 L nm],ここでQ[A,B]は2乗和の平方根 (A2+B2)1/2を表し,L nmは測定した全

周期の長さ。NPLの長さ国家標準に遡及可能。 

A.2.4 一般財団法人日本品質保証機構(JQA),日本 [6] 

− 校正項目:スケールの平均ピッチ,校正方法:回折角測定法,ピッチ範囲:97 nm〜1 000 nm,拡張不

確かさU,包含係数k=2:0.04 nm,認証:国際試験所認定協力機構 相互認証(ILAC MRA) 

− 校正項目:スケールのピッチ,校正方法:レーザー干渉計光学顕微鏡 測定範囲:1 μm〜10 mm,拡

張不確かさ:20 nm〜40 nm,包含係数k=2 

A.3 RM 

A.3.1 一般 

RMの例を,次に示す。それらの中には,校正機関による認証の後にCRMとして供給されるものがあ

る。 

A.3.2 正方形のグリッド 

− 254 μmピッチ(100メッシュ),25.4 μmピッチ(1 000メッシュ)(金,ニッケル又は銅) 

− 1 μm及び5 μmのX方向及びY方向の線配列を伴う,グリッド10 μm,20 μm及び40 μmピッチ[S5000

−S1000−CRM][7] 

− Siの10 μmピッチ試験試料 [8] 

11 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

− 代表ピッチ1 μm,25 μm,100 μm及び1 000 μmのSi基板上の金属薄膜 [9] 

A.3.3 入れ子状正方形パターン 

− X方向及びY方向の線配列を伴う0.08 μm〜500 μmピッチの入れ子状正方形 [10] 

A.3.4 線配列 

− ラインアンドスペース,代表ピッチ70 nm,100 nm,292 nm及び500 nm [11] 

− 1チップ上のピッチ範囲0.2 μm〜1 500 μmの多数のパターン[RM-8820][12] 

− ピッチ範囲6.9 nm〜587 nmの1次元線配列[BAM-L200][13] 

A.3.5 点配列 

− 代表ピッチ144 nm及び300 nmのSi基板上の隆起物による2次元点配列 [8] 

− 3次元の標準試料として製作した1.16 μm,1.843 μm及び4.8 μmピッチの2次元点配列 [14] 

− Si基板上のタングステンドットアレイ,ドットピッチ120 nm,200 nm,600 nm,認証標準物質[NMIJ 

CRM 5207-a][15] 

12 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

  

附属書B 

(参考) 

SEMの像倍率校正に影響する諸因子 

次に挙げる諸因子は,相互に関係する場合があるが,装置部位に関連付けて示す。 

a) 電子銃高圧の不安定又はドリフトは,電子のエネルギーを変化させるので,像倍率に誤差を生じるこ

とがある。 

b) 集束レンズ励磁の変化(照射電流の変化)は,対物レンズの焦点位置を変化させ,像倍率に誤差を生

じることがある。 

c) 対物レンズの非点収差補正不足は,像倍率に誤差を生じることがある。 

d) 対物レンズの磁気ヒステリシスは,像倍率に誤差を生じることがある。 

e) 低倍率で,焦点深度が極端に深い場合には,不正確な焦点合せを招くことがある。 

f) 

電子線の非直交走査(X軸及びY軸)は,像ひずみを生じることがある。 

g) 走査波形発生回路(スキャンジェネレータ)の出力は,経時変化することがある。 

h) 像倍率のズーム制御(アナログ式)は非線形になることがある。 

i) 

走査像回転機能(スキャンローテーション機能)の非線形性は,回転角の異なった位置で像がひずむ

ことがある。 

j) 

外部からの電磁場に起因するじょう(擾)乱によって,電子線走査にひずみを生じることがある。 

k) 像倍率の誤差は,それぞれの倍率レンジで異なることがある。 

l) 

傾斜した試料は,傾斜方向の像倍率に誤差を生じることがある。 

m) 走査像傾斜補正機能(ティルトコンペンセーション機能)は,像倍率に誤差を生じることがある。 

n) 極端な微分処理などの信号処理は,像倍率に誤差を生じることがある。 

o) ワーキングディスタンス,加速電圧,電子線走査速度の異なった組合せは,像倍率に異なった誤差を

生じることがある。 

p) 上記因子に関連する回路素子の熱的ドリフト・電気的ドリフトは,倍率に誤差を生じることがある。 

q) 記録用の陰極管(CRT)の表面のひずみ又はビーム偏向ひずみは,倍率の不均一性を生むことがある。 

r) 記録用CRT上の像倍率は,観察用CRT上の像倍率と同じではない。 

s) 

記録用カメラのレンズひずみは,倍率誤差を生じることがある。また,記録用のカメラ又はアダプタ

の交換も,倍率誤差を生じることがある。 

t) 

写真材料の膨張及び収縮並びに写真の引伸ばし及び焼付けの調整は,最終的な見掛けの倍率に対し誤

差を生じることがある。 

u) デジタル記録像の場合,倍率誤差はデジタル機器(例 プリンタなど)の不正確さ(アスペクト比)

又はひずみに起因することがある。アスペクト比(X/Y方向の倍率比)は,元の画像のアスペクト比

と異なることがある。 

13 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

附属書C 
(参考) 

像倍率測定の不確かさ 

C.1 合成標準不確かさ 

測定倍率の不確かさとは,指定された信頼度(信頼の水準)で,倍率の測定誤差が含まれるような範囲

(区間)のことである。この不確かさは,標準不確かさの各成分を用いて,合成標準不確かさとして式(C.1)

を用いて求めることができる。 

=

i

i

u

2

σ ··········································································· (C.1) 

ここに, 

u: 合成標準不確かさ 

σi: 成分の標準不確かさ 

C.2 不確かさの具体例 

認証グリッドに関する不確かさの因子及び代表的な値(%表示)を,次に示す。 

 A:校正CRM,±1 % 

 B:繰返し性,±4 % 

注記1 これらの因子による倍率の変化は,正規分布を示す。これらの不確かさが95.4 %の信頼の水

準をもつ区間として定められたものであれば(標準偏差の2倍),式(C.1)を用いて合成する

前に,標準不確かさに換算するため,各不確かさを2で除す必要がある。 

 C:温度,<±0.5 % 

 D:測定する形状,±1 % 

 E:測定器(例えば,ノギス),±1 % 

注記2 これらの因子による倍率の変化は一様分布を示す。そのため,これらを合成する前に,標準

不確かさに換算するため,各不確かさを常に3で除す必要がある。 

上記の考え方を用いて表現する不確かさは,校正が行われるときだけに適用できる。長期間にわたり繰

り返し行われる校正は,観察条件(試料位置,オペレータ,装置など)による不確かさによって異なった

結果になる。実際に使用する装置の構成において,不確かさの更なる因子を考える必要がある。 

 F:ドリフト,±3 % 

表示倍率Mindにおいて何回か繰り返し校正した後,測定した倍率Mが,測定値の標準偏差に対応する値

σと共に定められる。σは,不確かさの成分を合成した結果である。すなわち,σは,上記のAを除いた合

成標準不確かさu' に等しく,u' はuの大きさを見積もるのに役立つ。 

|M−Mind| は,装置上の表示とデータ出力の精確さとを表す尺度になる。表示倍率Mindでの検査に対して,

結果は測定倍率をM±nu' と記載して報告する必要がある。n=2とし,u' を合成標準不確かさとすると,

測定倍率の不確かさが信頼の水準95.4 %をもつ区間であることを,オペレータは知ることができる。同じ

ことがスケールマーカについてもいえる。倍率とスケールマーカの長さとにおける不確かさは,これらの

測定のそれぞれの標準偏差によって表現できる。 

14 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

  

附属書D 
(参考) 

像倍率校正報告書の例 

D.1 像倍率校正報告書 

ある品質管理プログラムの中の一例として,校正した像倍率を記録するための“条件”を含む一覧表の

例を,表D.1に示す。 

この表には,像倍率校正方法の規定に基づいて測定した実際の像倍率を記入する。 

表D.1に示す加速電圧,像倍率及びワーキングディスタンスの値は,単に例である。これらの値は,実

際に用いたものを記入する。 

時系列的な変化を示すために,測定したデータをグラフにすることが望ましい。 

background image

15 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

表D.1−SEM像倍率校正報告書例 

表題(例):SEM装置 像倍率校正 

同意なしにこの報告書を複製してはならない 

機関名 

: 

校正書管理番号 : 

住所 

: 

校正実施日 

: 

校正者名 

: 

装置製造業者名 : 

承認者役職と氏名 : 

形式名 

: 

承認者印 

: 

シリアル番号 

: 

顧客名 

: 

規格番号 

:JIS K 0149-1 

住所 

: 

加速電圧 

標準物質 

倍率 

WD

(mm) 

測定 

Dx 

Dy 

Mx 

My 

Lind & find 

Lx 

Ly 

ΔLx 

ΔLy 

Axs 

Ays 

標準物質名と 

識別記号 

(Mind) 
(表示像倍率) 

=d

Dxm  

=d

Dym 

(=find×Mx) 

(=find×My) 

(=Lind−Lx) 

(=Lind−Ly) 

×

=

100

Δ

x

x

L

L

×

=

100

Δ

y

y

L

L

平均値 

Dxm 

Dym 

×100 

10 

平均値 

15 

平均値 

×1 000 

平均値 

10 

平均値 

15 

平均値 

注記: 

L=find×M 

:観察像上のスケールマーカの計算上の長さ 

find 

:観察像上のスケールマーカの表示値 

:校正された倍率 

観察条件 像モード: 

ΔL=Lind−L 

ΔL  :差 

走査速度: 

Lind :観察像上のスケールマーカの表示の長さ 

照射電流: 

100

Δ

s

×

=LL

A

As 

:%表示のスケールマーカの精確さ 

4

K

 0

1

4

9

-1

2

0

1

9

 (I

S

O

 1

6

7

0

0

2

0

1

6

16 

K 0149-1:2019 (ISO 16700:2016) 

  

参考文献 

[1] ISO 5725-1,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and results−Part 1: General 

principles and definitions 

注記 JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部:一般的な原理及び

定義が,この国際規格に対応している。 

[2] ISO/IEC Guide 98-3,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in 

measurement (GUM:1995) 

[3] National Institute of Standards and Technology (NIST). USA, Calibrations, Length Measurements. Available 

(viewed 2019-04-16) at https://shop.nist.gov/ccrz̲̲ProductDetails?viewState=DetailView&cartID=&portal 

User=&store=&cclcl=en̲US&sku=15510S 

[4] Physikalisch-Technische Bundesanstalt (PTB), Germany, Dimensional Nanometrology. Available (viewed 

2015-06-13) at http://www.ptb.de/cms/en/ptb/fachabteilungen/abt5/fb-52.html 

[5] National Physical Laboratory (NPL). Micro & Nanotechnology Measurement Services, Issue 2. Available 

(viewed 2019-04-16) at https://www.npl.co.uk/dimensional/dimensional-nano-and-sub-nanometrology 

[6] 一般財団法人日本品質保証機構(Japan Quality Assurance Organization)(JQA). Calibration of Measuring 

Instruments; Standard micro scales. Available (viewed 2015-06-13) at http://www.jqa.jp and  

http://www.jqa.jp/service̲list/measure/service/length̲angle/micro̲scale.html. 

[7] Chinese Microbeam Analysis. Available (viewed 2016-03-09) at http://www.microbeam.com.cn/. 

[8] agar Scientific, Available (viewed 2015-06-13) at http://www.agarscientific.com/sem/calibration-standards.html 

[9] NTT Advanced Technology Corporation. Advanced Products Business Headquarters, Nano-Technology 

Business Unit. Available (viewed 2015-06-13) at http://www.ntt-at.com/prdsvc/nanotech.html. 

[10] Geller MicroÅnalytical Laboratory, Inc.. Available (viewed 2015-06-13) at  

http://www.gellermicro.com/index.htm 

[11] Plano Gmb H. Available (viewed 2015-06-13) at http://www.plano-em.de/. 

[12] National Institute of Standards and Technology (NIST). Standard Reference materials, Available (viewed 

2015-06-13) at https://www-s.nist.gov/srmors/viewTableV.cfm?tableid=135 

[13] Bundesanstalt für Materialforschung und ‒prüfung (BAM), Germany. Layered and surface reference materials. 

Available (viewed 2015-06-13) at  

http://www.rm-certificates.bam.de/de/rm-certificates̲media/rm̲cert̲layer̲and̲surface/bam̲l200e.pdf 

[14] m2c microscopy measurement & calibration. Available (viewed 2015-06-13) at  

http://www.m2c-calibration.com/ 

[15] 国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST),計量標準総合センター(NMIJ),NMIJ認証標準物

質(NMIJ CRM)2018年6月25日閲覧 https://www.nmij.jp/service/C/