K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
0 適用範囲························································································································· 1
1 略語······························································································································· 1
2 形式······························································································································· 3
2.1 定義の中で太字で示している用語 ····················································································· 3
2.2 推奨用語 ······················································································································ 3
2.3 対象分野 ······················································································································ 3
3 表面化学分析の分析方法に関する用語 ·················································································· 4
4 表面分析法に関する一般用語 ······························································································ 8
5 多変量解析に関する用語 ··································································································· 71
6 表面分析法のための補助用語 ····························································································· 79
7 表面分析に関する補助用語 ································································································ 83
8 多変量解析に関する補助用語 ····························································································· 89
附属書A(参考)IEC 60050-111,国際電気技術用語集−第111部:物理及び化学からの抽出語 ·········· 90
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,表面化学分析技術国際標準化委員会(JSCA)
及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
これによって,JIS K 0147:2004は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS K 0147の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS K 0147-1 第1部:一般用語及び分光法に関する用語
JIS K 0147-2 第2部:走査型プローブ顕微鏡に関する用語
日本工業規格 JIS
K 0147-1:2017
(ISO 18115-1:2013)
表面化学分析−用語−
第1部:一般用語及び分光法に関する用語
Surface chemical analysis-Vocabulary-
Part 1: General terms and terms used in spectroscopy
序文
この規格は,2013年に第2版として発行されたISO 18115-1を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
0
適用範囲
この規格は,表面化学分析に用いる一般用語及び分光法に関する主な用語について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 18115-1:2013,Surface chemical analysis−Vocabulary−Part 1: General terms and terms used in
spectroscopy(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
1
略語
この規格で用いる主な略語は,次による。
AES:オージェ電子分光法(Auger electron spectroscopy)
AMRSF:平均マトリックス相対感度係数(average matrix relative sensitivity factor)
ANN:人工ニューラルネットワーク(artificial neural network)
APECS:オージェ電子−光電子コインシデンス分光法(Auger photoelectron coincidence spectroscopy)
ARAES:角度分解オージェ電子分光法(angle-resolved Auger electron spectroscopy)
AREPES:角度分解弾性散乱電子分光法(angle-resolved elastic peak electron spectroscopy)
ARXPS:角度分解X線光電子分光法(angle-resolved X-ray photoelectron spectroscopy)
CDP:深さ方向組成分布(compositional depth profile)
CRM:認証標準物質(certified reference material)
DA/DFA:判別分析又は判別関数分析(discriminant analysis/discriminant function analysis)
DAPCI:大気圧化学イオン化脱離(desorption atmospheric pressure chemical ionization)
DAPPI:大気圧光イオン化脱離(desorption atmospheric pressure photoionization)
DART:リアルタイム直接分析(direct analysis in real time)
dc:直流又は直流電流(direct current)
2
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
DESI:脱離エレクトロスプレーイオン化(desorption electrospray ionization)
DRS:直接リコイル分光法(direct recoil spectrosocopy)
eV:電子ボルト(electron volt)
EELS:電子エネルギー損失分光法(electron energy loss spectroscopy)
EESI:抽出エレクトロスプレーイオン化(extractive electrospray ionization)
EIA:エネルギーイオン分析(energetic-ion analysis)
ELDI:エレクトロスプレーレーザー脱離イオン化質量分析法(electrospray laser desorption ionization mass
spectrometry)
EPES:弾性散乱電子分光法(elastic peak electron spectroscopy)
EPMA:電子線マイクロアナリシス(electron probe microanalysis)
ERD:弾性リコイル検出(elastic recoil detection)
ERDA:弾性リコイル検出解析(elastic recoil detection analysis)
ESCA:化学分析のための電子分光法(X線光電子分光法ともいう。)(electron spectroscopy for chemical
analysis)
FABMS:高速原子衝撃質量分析法(fast atom bombardment mass spectrometry)
EXAFS:拡張X線吸収微細構造分光法(extended X-ray absorption fine structure spectroscopy)
FIB:集束イオンビームシステム(focused ion beam system)
FWHM:半値全幅(full width at half maximum)
GDMS:グロー放電質量分析法(glow discharge mass spectrometry)
GDOES:グロー放電発光分光分析法(glow discharge optical emission spectrometry)
GDS:グロー放電分光分析法,グロー放電スペクトル法(glow discharge spectrometry)
GISAXS:斜入射小角X線散乱法(grazing-incidence small-angle X-ray scattering)
IBA:イオンビーム分析(ion beam analysis)
ISS:イオン散乱分光分析法(ion-scattering spectrometry)
LAESI:レーザーアブレーションエレクトロスプレーイオン化(laser ablation electrospray ionization)
LB:ラングミュア・ブロジェット(Langmuir-Blodgett)(“LB膜”として用いられることが多い。)
LEIS(S):低速イオン散乱分光分析法(low-energy ion scattering spectrometry)
LMIG:液体金属イオン銃(liquid-metal ion gun)
LMIS:液体金属イオン源(liquid-metal ion source)
MAF analysis:最大自己相関因子分析(maximum autocorrelation factor analysis)
MALDI:マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(matrix-assisted laser desorption/ionization
mass spectrometry)
MALDESI:マトリックス支援レーザー脱離エレクトロスプレーイオン化(matrix-assisted laser desorption
electrospray ionization)
MCR:多変量スペクトル分解(multivariate curve resolution)
MEIS(S):中速イオン散乱分光分析法(medium-energy ion-scattering spectrometry)
MVA:多変量解析(multivariate analysis)
NEXAFS:吸収端近傍拡張X線吸収微細構造分光法(near-edge extended X-ray absorption fine structure
spectroscopy)
PADI:プラズマ支援脱離イオン化(plasma-assisted desorption ionization)
3
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
PCA:主成分分析(principal-component analysis)
PERSF:純元素相対感度係数(pure-element relative sensitivity factor)
PIXE:粒子励起X線放射(particle-induced X-ray emission)
PLS:部分最小二乗法(partial least squares, partial least squares regression)
RBS:ラザフォード後方散乱分光分析法(イオン後方散乱分光分析法ともいう。)(Rutherford backscattering
spectrometry)
REELS:反射電子エネルギー損失分光法(reflection electron energy loss spectroscopy)
RISR:相対装置スペクトル応答関数(relative instrument spectral response function)
rf:高周波(radio-frequency)
RM:標準物質(reference material)
RSF:相対感度係数(relative sensitivity factor)
SALDI:表面支援レーザー脱離イオン化(surface-assisted laser desorption/ionization)
SAM:自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer)
SAXS:小角X線散乱(small-angle X-ray scattering)
SDP:スパッタ深さ方向分布(sputter depth profile)
SEM:走査電子顕微鏡(scanning electron microscope)
SEP:表面励起パラメータ(surface excitation parameter)
SEXAFS:表面拡張X線吸収微細構造分光法(surface extended X-ray absorption fine structure spectroscopy)
SIMS:二次イオン質量分析法(secondary-ion mass spectrometry)
SNMS:スパッタ中性粒子質量分析法(sputtered neutral mass spectrometry)
TOF又はToF:飛行時間(time of flight)
TXRF:全反射蛍光X線分析法(total-reflection X-ray fluorescence spectroscopy)
UPS:真空紫外光電子分光法(ultra-violet photoelectron spectroscopy)
XAFS:X線吸収微細構造分光法(X-ray absorption fine structure spectroscopy)
XANES:X線吸収端近傍分光法(X-ray absorption near-edge spectroscopy)
XPS:X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy)
XRR:X線反射率測定(X-ray reflectometry)
XSW:X線定在波(X-ray standing waves)
2
形式
2.1
定義の中で太字で示している用語
定義及び注記の中で太字で示している用語は,この規格の中で定義している用語であることを示し,そ
の用語の番号を付した。
2.2
推奨用語
細字で示している用語は,望ましくない(非推奨),又はあまり意味のない用語である。望ましい用語は,
太字で示す。
2.3
対象分野
一つの用語が幾つかの概念を表す場合,それぞれの概念で使用する対象分野を示すことが重要である。
このため,定義に先立って,同じ行の〈 〉括弧内に対象分野を細字で示す。
4
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
3
表面化学分析の分析方法に関する用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
3.1
オージェ電子分
光法,
AES
電子分光器(4.190)を使用して表面(4.458)から放出されるオージェ
電子(4.37)のエネルギー分布を測定する方法。
注記 オージェ電子の励起には,通常2 keV〜30 keVのエネルギー範囲
の電子ビームが使用される。オージェ電子は,X線,イオン,そ
の他の励起源によっても励起されるが,特に付記されていない場
合,オージェ電子分光法という用語は,電子ビームを励起源とす
る手法に限って用いる。X線励起の場合,オージェ電子のエネル
ギーは,フェルミ準位(4.211)に対して定義するが,電子ビーム
励起の場合は,フェルミ準位,真空準位(4.483)のいずれかに対
しても定義する。スペクトルは,便宜的に直接スペクトル(4.173),
微分スペクトル(4.171)のいずれかで表される。
Auger electron
spectroscopy
3.2
脱離エレクトロ
スプレーイオ
ン化,
DESI
圧縮空気を使用したエレクトロスプレーイオン化によって生成したイ
オン化溶媒小滴を空気中の試料に衝突させ,その結果として試料から放
出されたイオン化生成物の質量電荷比又は存在量を質量分析器で測定
する方法。
注記1 小滴を生成するための溶媒として,水又はメタノールが使用さ
れる。溶液のpHを制御するために酸又はアルカリを加える。
注記2 DESIは,物質を真空にさらさなくても分析できるように設計
された数少ない表面分析法の一つである。この方法は複雑な分
子,有機分子及び生体分子の測定に使用される。生体内分析も
可能であるといわれている。
desorption
electrospray
ionization
3.3
ダイナミック
SIMS
元の表面(4.458)が分析中に損傷を受けていないとはみなせないほど,
物質の表面が十分に速い速度でスパッタリングされるときのSIMS
(3.17)。
注記1 ダイナミックSIMSを,単にSIMSと呼ぶ場合が多い。
注記2 測定中の面ドーズ量(4.175)は,通常1016 ions/m2より大きい。
dynamic SIMS
3.4
弾性散乱電子分
光法,
EPES
固体又は液体の表面(4.458)からの擬似弾性散乱電子のエネルギー,
強度又はエネルギー分布の広がりを電子分光器(4.190)を使用して測
定する方法。
注記1 リコイル効果(4.366)及び反射電子エネルギー損失分光法
(REELS)(3.16)参照。
注記2 この分光法では100 eV〜3 keVのエネルギー範囲の電子線が使
用される。
注記3 適切な情報を得るためには,一般的にエネルギー幅1 eV以下
をもつ電子源が求められる。
注記4 EPESはAES(3.1)又はREELS(3.16)の補助的手法として使
用され,表層の組成に関する情報が得られる。EPESは電子の
非弾性平均自由行程(4.243),電子の微分弾性散乱断面積
(4.127)及び表面励起パラメータ(4.461)を実験的に決定す
る場合に適している。
elastic peak
electron
spectroscopy
3.5
化学分析のため
の電子分光法,
ESCA
AES(3.1)及びXPS(3.23)の総称。
注記 ESCAという用語は使われなくなってきている。実際には,X線
光電子分光法(XPS)という用語でより明瞭に定義されるが,こ
の分光法の使用目的を説明するために使われてきた。1980年以
降,むしろ後者のXPSが望ましいとされている。
electron
spectroscopy for
chemical analysis
(deprecated)
5
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
3.6
高速原子衝撃質
量分析法,
FABMS,
FAB
高速の中性原子の衝撃によって放出される二次イオン(4.406)の質量
対電荷比及び存在量を質量分析計で測定する方法。
fast atom
bombardment
mass
spectrometry,
FABMA,
FAB (deprecated)
3.7
G-SIMS
スタティックSIMS(3.20)において,異なる一次イオンビームエネル
ギー(4.75)又は異なる一次イオン種による同位置で得た二つのスペク
トル上の各質量ピークの強度の違いをそれぞれの比とし,その結果を使
って一方のスペクトルから新しいスペクトルを作成する方法。
注記1 スタティックSIMSでは,測定中のそのイオンの面ドーズ量
(4.175)は,分析する試料物質及び分子フラグメント(4.302)
の大きさに応じて,1016 ions/m2以下に収まるようにする。
注記2 スタティックSIMSスペクトルよりもG-SIMSスペクトルでは,
表面(4.458)における分子全体の質量が決定しやすい。
注記3 G-SIMSの“G”は,元々は過程の穏やかさを表す。
G-SIMS
3.8
グロー放電質量
分析法,
GDMS
グロー放電(4.228)によって,試料の表面(4.458)で生成するイオン
の質量対電荷比及び存在度を質量分析計で測定する方法。
glow discharge
mass
spectrometry
3.9
グロー放電発光
分光分析法,
GDOES
グロー放電(4.228)によって,表面(4.458)で励起される光の波長及
び強度を分光器で測定する方法。
glow discharge
optical emission
spectrometry
3.10
グロー放電分光
分析法,
グロー放電スペ
クトル法,
GDS
表面(4.458)とグロー放電(4.228)との相互作用によって発生する光
又はイオン強度を分光器で測定する方法。
注記 GDOES(3.9)及びGDMS(3.8)を包含する一般的な用語である。
glow discharge
spectrometry
3.11
イオンビーム分
析,
IBA
固体の表面近傍にある原子層の組成及び構造を調べる方法であり,一般
には単一エネルギーの一価に帯電したプローブイオン(4.349)が表面
(4.458)から散乱されたものを,そのエネルギー,散乱角(4.18)又は
両者の関数として記録する方法。
注記 LEIS(S)(3.12),MEIS(S)(3.13)及びRBS(3.15)は,全てIBA
に属し,通常はプローブイオンのエネルギーが,それぞれ0.1 keV
〜10 keV,100 keV〜200 keV及び1 MeV〜2 MeVの範囲のものを
いう。この分類は,基本的に異なった物理現象が起こる三つの範
囲に対応する。
ion beam analysis
3.12
低速イオン散乱
分光分析法,
LEIS(S)
固体最表面にある原子層の組成及び構造を調べる方法であって,一般に
は単一エネルギーの一価に帯電したプローブイオン(4.349)が表面
(4.458)から散乱されたものを,そのエネルギー,散乱角(4.18)又は
両者の関数として記録する方法。
注記1 LEIS(S)は,IBA(3.11)の一つで,He,Neなどのプローブイ
オンのエネルギーが,0.1 keV〜10 keVの範囲のものをいう。
注記2 略語は,通常LEISと示す。
low-energy ion
scattering
spectrometry
6
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
3.13
中速イオン散乱
分光分析法,
MEIS(S)
固体最表面にある原子層の組成及び構造を調べる方法であって,一般に
は単一エネルギーの一価に帯電したプローブイオン(4.349)が表面
(4.458)から散乱されたものを,そのエネルギー,散乱角(4.18)又は
両方の関数として記録する方法。
注記1 MEIS(S)はIBA(3.11)の中の一つであり,プローブイオン(一
般にはプロトン)のエネルギーが,100 keV〜200 keVの範囲の
ものをいう。
注記2 入射イオンビームを結晶軸に沿って照射し,チャネリング
(4.94)を利用することによって,基板からの散乱を抑制する
ことができ,非晶質被覆層に対する信号品質及び視認性を高め
ることができる。さらに,二つ目の結晶軸に検出器を整列させ
る(ダブル調整モードを使用する。)ことによって,基板から
の散乱を更に抑制することができ,非晶質被覆層に対して,高
い準位で信号品質及び視認性が改善される。
注記3 幾つかのケースでは,角度敏感検出器が使われ,広範な構造及
び深さ方向分布(4.350)情報を得ることができる。
注記4 略語は,通常,MEISと示す。
medium-energy ion
scattering
spectrometry
3.14
マトリックス支
援レーザー脱
離イオン化質
量分析法,
MALDI
飛行時間(4.473)形質量分析計を使用して短パルスのレーザー照射の
結果として,イオン支援マトリックスを含む分析試料から放出されるイ
オンの質量電荷比(4.296)及びその存在量を求める方法。
注記1 イオン放出を支援するマトリックスは,その波長のレーザーを
強く吸収し,昇華するほどの十分に低い質量をもつものである
必要がある。波長337 nmのレーザー用のマトリックスとして,
2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB),3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキ
シケイ皮酸(シナピン酸),α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸
(CHCA)などがある。
注記2 MALDIは,極性をもつ不揮発性の生体分子,及び分子量3 000
kDaを超える有機巨大分子及び高分子の分析に使われる。
matrix-assisted
laser desorption/
ionization mass
spectrometry
3.15
ラザフォード後
方散乱分光分
析法,
RBS
固体の表面(4.458)にある原子層の組成及び構造を調べる方法であっ
て,一般的には単一エネルギーの一価に帯電したプローブイオン
(4.349)がラザフォード断面積(4.133)に従って表面から散乱された
ものを,そのエネルギー,散乱角(4.18),又は両方の関数として記録
する方法。
注記1 RBSはIBA(3.11)の一つで,プローブイオン(ヘリウム又は
水素)のエネルギーが,1 MeV〜2 MeVの範囲のものをいう。
検出器は,伝統的に半導体エネルギー分散検出器が使われてい
る。高分解能RBSでは,エネルギーを300 keVに下げて,イオ
ン光学的に高分解能な分光器が使用されている。
注記2 入射イオンビームを結晶軸に沿って照射し,チャネリング
(4.94)を使用することによって,基板からの散乱を抑制する
ことができ,非晶質被覆層に対する信号品質及び視認性を高め
ることができる。
Rutherford back
scattering
spectrometry
3.16
反射電子エネル
ギー損失分光
法,
REELS
表層の原子によって擬似弾性散乱された電子のエネルギー分布及びそ
れに伴う電子エネルギー損失スペクトル(4.197)を,電子分光器(4.190)
を使用して測定する方法。
注記 弾性散乱電子分光法(3.4)参照。
reflection electron
energy loss
spectroscopy
7
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
3.17
二次イオン質量
分析法,
SIMS
エネルギーをもったイオンの衝撃によって放出される二次イオン
(4.406)を質量対電荷比及び存在度を質量分析計で測定する方法。
注記1 ダイナミックSIMS(3.3),スタティックSIMS(3.20)及び
G-SIMS(3.7)参照。
注記2 SIMSは,通常,慣用的に,測定中に物質表面が連続的に削ら
れるダイナミック形と,表面(4.458)が本質的に損傷を受けな
いように測定中の面ドーズ量(4.175)を1016 ions/m2未満とす
るスタティック形とに分類する。
secondary-ion
mass
spectrometry
3.18
小角X線散乱,
SAXS
小角領域で偏向した弾性散乱(4.80)X線の強度を測定する方法。
注記1 小角散乱は,通常,0.1°〜10°の範囲で測定される。この測定
によって高分子の構造情報及び規則系又は部分規則系におけ
る5 nm以上で200 nm以下の周期長に関する情報が得られる。
注記2 広角X線散乱(WAXS)はSAXSに類似した方法であり,X線
結晶構造解析と似ている。より小さい周期性に敏感な,より広
角の散乱を測定する。
注記3 X線源として放射光を使用する場合,シンクロトロン放射
(4.465)光小角X線散乱(SRXAS)という用語が用いられる。
small-angle X-ray
scattering
3.19
スパッタ中性粒
子質量分析法,
SNMS
粒子の衝撃によって放出される中性粒子を二次的にイオン化して,質量
対電荷比及び存在量を質量分析計で測定する方法。
注記 中性粒子は,プラズマ(4.337)若しくは電子又は光子を使用した
イオン化法によって検出できる。
sputtered neutral
mass
spectrometry
3.20
スタティック
SIMS
物質の表面(4.458)が十分に遅い速度でスパッタされ,元の表面が分
析中にほとんど損傷を受けない場合のSIMS(3.17)。
注記1 ダイナミックSIMS(3.3)参照。
注記2 測定中の面ドーズ量(4.175)は1016 ions/m2未満で,その上限
は試料の材質及び分析する分子フラグメント(4.302)サイズの
両方に依存する。
static SIMS
3.21
全反射蛍光X線
分光法,
TXRF
全反射(4.475)条件下で一次X線を照射した表面(4.458)から放出さ
れる蛍光(4.219)X線のエネルギー分布をX線分光器で測定する方法。
total reflection
X-ray
fluorescence
spectroscopy
3.22
真空紫外光電子
分光法,
UPS
紫外線が照射された試料の表面(4.458)から放出される光電子のエネ
ルギー分布を電子分光器(4.190)によって測定する方法。
注記 紫外光源としては,様々な放電現象から生じる種々の気体の共鳴
線が通常使用される(例えば,21.2 eVのヘリウムI線又は40.8 eV
のヘリウムII線など)。エネルギー可変光源としては,シンクロ
トロン放射(4.465)光が使用される。
ultra-violet
photoelectron
spectroscopy
3.23
X線光電子分光
法,
XPS
X線が照射された表面(4.458)から放出される光電子及びオージェ電
子(4.37)のエネルギー分布を電子分光器(4.190)によって測定する方
法。
注記 X線源としては,通常,単色化されていないAl Kα線(1 486.6 eV)
又はMg Kα線(1 253.6 eV)が使用される。最近の装置では,単
色化されたAl Kα線も使用される。装置によっては,その他のア
ノード(4.27)による種々のX線源又はシンクロトロン放射
(4.465)光を使用している。
X-ray
photoelectron
spectroscopy
8
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
4
表面分析法に関する一般用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.1
線吸収係数,
線減衰係数
減衰係数(4.33)と同義。
注記 対応国際規格では空欄であるが,定義は減衰係数と同一であるの
で,その用語を示した。
linear,
absorption
coefficient,
linear attenuation
coefficient
4.2
質量吸収係数,
質量減衰係数
〈TXRF,XPS〉特定の粒子又は光の平行ビームが,物質の質量厚さΔ(ρx)
の薄層を通過するときに減衰する量(μ/ρ)Δ(ρx)において,Δ(ρx)を無限に
ゼロに近付けたときの値μ/ρ。ここで,Δ(ρx)はビームの進行方向に測定
した量。
注記1 減衰長さ(4.34)参照。
注記2 ρは物質の密度,xはビームの進行方向の距離。
注記3 ビーム強度又はビーム中の粒子数は距離xを進んだとき,
exp(-μx)のように指数関数的に減少する。
注記4 質量吸収係数は,線吸収係数(4.1)を密度で除した値に等しい。
mass absorption
coefficient,
a mass attenuation
coefficient
4.3
アバンダンス感
度
〈GDMS〉質量(m)の質量スペクトルのピークの裾が隣接する質量(m
±1)の位置で重なる割合を,ピークの最大イオン電流値との比で表し
た値(参考文献[3]参照)。
abundance
sensitivity
4.4
自然付着炭素エ
ネルギー基準
〈XPS〉実験的に求めた試料上の吸着炭化水素に由来するC 1sの束縛
エネルギー(4.82)を,標準束縛エネルギーと比較することによって試
料の帯電電位(4.103)を決定すること。
注記1 フェルミ準位基準(4.212)及び内部炭素エネルギー基準(4.257)
参照。
注記2 吸着炭化水素のC 1sのピーク値として285.0 eVがよく用いら
れる。分析者によっては,基板の性質によって284.6 eVから
285.2 eVの範囲から値を選ぶこともある。吸着炭化水素の真の
束縛エネルギーは知られていないため,この方法は,真の帯電
電位の決定方法ではない。
注記3 試料の異なる表面(4.458)領域又は深さにおいて,異なった試
料帯電(4.392)が発生する可能性がある。これは試料の不均一
性及び入射線フラックス(4.221)の不均一な強度によって発生
する。
adventitious
carbon
referencing
4.5
アフターグロー
〈GDS〉放電を持続させる電力を完全に停止した後,グロー放電(4.228)
装置中のプラズマ(4.337)で,脱励起過程が経過している間に継続し
て観察される発光。
afterglow
4.6
変質層
〈粒子衝撃〉粒子が衝突したとき,衝撃によって化学状態又は物理的な
構造が変化した表面領域。
注記1 垂直入射に近い角度で4 keVのO2+によって衝撃を与えられた
シリコンの場合,十分長い時間のスパッタリング(4.441)によ
って定常状態となったとき,表面(4.458)から15 nm付近まで
は化学量論的なSiO2となり,それより深い領域では酸素濃度が
低くなる。この厚さは2 keVでは7 nmに減少する。これらの
厚さは投影飛程(4.352)の約2倍である。
注記2 SIMS(3.17)における深さ分解能(4.164)は,分析対象及び
衝撃イオン種に依存して,変質層の厚さより大きい場合又は小
さい場合がある。
altered layer
9
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.7
分析器ブランキ
ング
〈SIMS〉二次イオン(4.406)が質量分析計を通過し,検出器まで届く
のを防ぐための動作。
注記 この動作は,通常,選択した強度の高いピークが存在する質量範
囲のイオンを偏向させるために,飛行時間(4.473)形質量分析計
の関連電極の一つにパルス状の電位を印可することによってな
される。したがって,これらの質量の二次イオンは検出されず,
不必要な検出器の飽和を引き起こすことはない。
analyzer blanking
4.8
分析領域
〈試料〉分析に使用される信号の全て又は特定の割合が検出される試料
表面(4.458)の二次元領域。
analysis area
4.9
分析領域
〈分光器〉分光器の中心軸に対して正しい角度に設定された試料から,
全て又は特定割合の信号が分析される試料表面(4.458)の二次元領域。
analysis area
4.10
分析体積
〈試料〉全て又は特定割合の信号が計測される試料の三次元領域。
analysis volume
4.11
分析体積
〈分光器〉全て又は特定割合の信号が計測される可能性のある分光器か
らみた三次元領域。
analysis volume
4.12
臨界角
〈TXRF〉試料マトリックスからの蛍光(4.219)X線を視射角(4.13)
に対してプロットしたときの最初の変曲点に相当する視射角。
critical angle
4.13
視射角
〈TXRF〉入射ビームと平均表面とのなす角。
注記 入射角(4.17)と視射角とは余角関係にある。
glancing angle
4.14
斜め研磨
元の表面(4.458)に対して,ある角度で機械的に研磨する試料調製法。
注記1 ボールクレータ法(4.64)及び径方向切り出し法(4.358)参照。
注記2 角度としては1°以下がよく使われ,このようにすると,元の
表面からの深さ方向の情報が横方向に変換される。
angle lapping
4.15
マジックアング
ル
〈XPS〉試料の表面(4.458)において,分光器の検出軸と入射X線と
がなす角が54.7°のときの角度。
注記 非偏光のX線に照射された原子から放出される光電子の角度分
布に対して,単純な双極子理論を応用した場合,マジックアング
ルでは単位立体角に取り込まれる光電子強度が,散乱が等方的に
起こると仮定した場合の強度と等しくなる。
magic angle
4.16
放出角
粒子又は光子が表面(4.458)を離れるときにその軌跡及び局所表面又
は平均表面の法線のなす角。
注記 対象としている表面法線は,定義されている必要がある。
angle of emission,
emission angle
4.17
入射角
入射ビームと局所表面又は平均表面の法線とのなす角。
注記 粗い表面(4.458)の基本的な一部分に対する表面法線,又は平均
表面の法線などの特定の表面法線が定義されている必要がある。
angle of incidence,
incidence angle
4.18
散乱角
入射粒子又は光子の入射方向と散乱後の粒子又は光子の軌跡方向との
なす角。
angle of scattering,
scattering angle
4.19
角度分解オージ
ェ電子分光法,
ARAES,
角度依存オージ
ェ電子分光法
オージェ電子(4.37)強度を放出角(4.16)の関数として測定する方法。 angle-resolved AES,
ARAES,
angle-dependent
AES
4.20
角度分解弾性散
乱分光法,
AREPES
〈EPES〉散乱角(4.18)の関数としてEPES(3.4)測定を行う方法。
angle-resolved
EPES,
AREPES
4.21
角度分解X線光
電子分光法,
ARXPS,
角度依存X線光
電子分光法
X線光電子強度を放出角(4.16)の関数として測定する方法。
注記 この手法は,表面(4.458)から約5 nm程度の深さまでの層中の,
異なる元素又は化合物の深さ方向分布についての情報を得るた
めに使用される。
angle-resolved XPS,
ARXPS,
angle-dependent
XPS
10
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.22
分光器立体角
粒子又は光子が,試料上の測定点から検出器に到達できる分光器の取込
み立体角。
注記 分光器の透過関数(4.434)参照。
solid angle of
analyser
4.23
検出器立体角
〈EIA,RBS〉ビームスポットの中心点から検出器によって見込まれる
立体角。
solid angle of
detector
4.24
脱出角
粒子が表面(4.458)から脱出するときの軌跡が局所又は平均表面とな
す角度。
注記1 特定される表面は,局所表面か又は平均表面かについて明確に
示す必要がある。
注記2 脱出角は,放出角(4.16)と補角をなす。
注記3 これまで,脱出角は時々,誤って放出角を意味する用語として
使われた。
take-off angle
4.25
アニオン
負電荷をもつイオン。
注記 カチオン(4.92)参照。
anion
4.26
アノード
〈GDS,直流操作〉グロー放電(4.228)装置で,より正側に帯電した
電極。
注記 カソード(4.88)〈GDS,直流操作〉参照。
anode
4.27
アノード
〈GDS,高周波操作〉高周波グロー放電(4.228)装置で高周波の周期
波形の多くの部分で,より正側に帯電した電極。
注記1 カソード(4.89)〈GDS,高周波操作〉参照。
注記2 表面化学分析のために通常使用されるグロー放電装置に供給
される高周波電力は,正負対称形をした正弦波であり,この場
合の高周波電圧の変化は,時間平均を取ると接地電圧に対して
ゼロとなる。それにもかかわらず,高周波電圧波形の時間範囲
においてアノードが必ずしも正側に帯電しない理由は,直流バ
イアス(4.145)が負直流電圧として誘起され,その値が高周波
電圧のピーク値の半分よりやや低い値を取るためである。
注記3 高周波波形の振幅変化において,アノードが正側に帯電する精
確な時間比率は,放電管の幾何学的構造又はその他の放電パラ
メータに依存して決まる。
anode
4.28
アノードグロー
〈GDS〉グロー放電(4.228)でアノード(4.27)近傍に接して現れる薄
い発光領域。
注記1 カソード層(4.91),負グロー(4.314)及び陽光柱(4.342)参
照。
注記2 アノードグローは,表面化学分析のために使用されるグロー放
電では顕著に観察されない場合がある。
anode glow
4.29
コントラスト絞
り
イオン又は電子の光学系において,望ましくないバックグラウンド信号
(4.56)を減らすために設計された絞り。
注記 この絞りは,光学系の空間分解能及びその他の特性にも影響す
る。
contrast aperture
4.30
非対称性パラメ
ータ,
β
〈XPS〉非偏光のX線によって励起された孤立原子から放出される光電
子の,次の式で与えられる入射X線からγ方向への強度分布L(γ)を特徴
付ける因子(5.5)。
L(γ)=1+1/2β[(3/2)(sin2γ)−1]
注記 この式は,気体に適用される。したがって,固体に適用する際は,
弾性散乱(4.80)の効果の補正が必要である。マジックアングル
(4.15)では,L(γ)=1となる。
asymmetry
parameter
4.31
原子質量単位
統一原子質量単位(4.480)の注記3参照。
注記 統一原子質量単位(4.480)参照。
atomic mass unit
(deprecated)
11
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.32
アトミックミキ
シング
表面領域において,入射粒子からのエネルギー移送によって生じる試料
原子の移動。
注記 カスケードミキシング(4.87),衝突カスケード(4.114),イオン
ビーム誘起物質輸送(4.260),ノックオン(4.279)及びリコイル
注入(4.279)参照。
atomic mixing
4.33
減衰係数
想定している粒子又はふく射の平行線束(平行ビーム)の減衰量をμΔx
で表す場合のμの値で,物質中の厚さΔxの薄層を通過する間に失われ
るビーム減衰量のΔxが0に近付く極限値。ここで,Δxはビームと同じ
方向にとる。
注記1 減衰長さ(4.34)及び質量吸収係数(4.2)参照。
注記2 距離xに対しexp(−μx)に従って減少するビームにおける粒子
の数又は信号強度(4.252)。
注記3 減衰係数は,多くの場合に線吸収係数(4.1)の代わりに用いら
れる。AES(3.1)又はXPS(3.23)で用いられる減衰長さ(4.34)
の逆数である。
attenuation
coefficient
4.34
減衰長さ
想定している粒子又は放射線の平行ビームが,ある物質の厚さΔxの薄
層を通過するときの減衰量をΔx/lで表す場合,Δxがゼロに近付くとき
のlの値。ここで,Δxはビームと同じ方向にとる。
注記1 減衰係数(4.33),ディケイ長さ(4.150),有効減衰長さ(4.35),
電子の非弾性平均自由行程(4.243),線吸収係数(4.1)及び質
量吸収係数(4.2)参照。
注記2 線束の強度又は粒子数は,距離xの場合,exp(−x/l)で減衰する。
注記3 固体中の電子では,弾性散乱(4.80)効果によって,その振る
舞いは単に指数関数的な減衰で近似されるにすぎない。それに
もかかわらず,AES(3.1)及びXPS(3.23)においては,ある
測定条件下では,信号強度(4.252)は経路長に対しておおよそ
指数関数で表されるが,その指数関数の定数部(パラメータl)
は,対応する非弾性散乱自由行程とは,一般には異なる。この
近似が成り立つ場合は,有効減衰長さの用語を使用する。
attenuation length
4.35
有効減衰長さ
〈AES,XPS〉弾性散乱(4.80)が極小さいと仮定した場合の定量的な
応用に対し,AES(3.1)及びXPS(3.23)に対して導かれる表式におい
て,電子の非弾性平均自由行程(4.243)の代わりに使用することによ
って,弾性散乱効果を補正するパラメータ。
注記1 減衰長さ(4.34)参照。
注記2 AES及びXPSにおける定量的応用に際して,有効減衰長さは
場合ごとに異なる値となる。しかし,有効減衰長さの最も一般
的な利用は,オージェ電子(4.37)若しくは光電子の,上層及
び基板からの信号強度(4.252)測定,又は放出角(4.16)に対
する上層若しくは基板からの信号強度の変化率測定から,上層
の膜厚を決定することにある。およそ60°(表面法線から)ま
での放出角に対しては,多くの場合,単一のパラメータ値を使
用しても十分である。これより大きな放出角に対しては,有効
減衰長さはこの角に依存して変化する。
注記3 この用語には異なる使い方があるので,使用に際しては,ユー
ザが特定条件での使用及び使用の際のパラメータの定義を明
確にすることが望ましい(例えば,式を与えること,特定の出
典を示すことなど)。
effective
attenuation
length
12
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.36
オージェ脱励起
〈表面〉オージェ過程(4.44)によって余剰のエネルギーが,励起を受
けた原子又はイオンに与えられる過程。
注記1 オージェ中和(4.40)参照。
注記2 オージェ過程では隣接する原子のエネルギー準位から電子を
真空に放出することもある。この電子のエネルギーは通常,表
面原子の特性で,準安定原子プローブ(例えば,He)が近接接
近時にみられる。
Auger
de-excitation
4.37
オージェ電子
原子からオージェ過程(4.44)によって放出される電子。
注記1 オージェ遷移(4.46)参照。
注記2 オージェ電子は,物質内を通過する間に非弾性散乱(4.244)に
よってエネルギーを失うことがある。したがって,測定される
オージェ電子スペクトル(4.38)は,散乱を受けていないオー
ジェ電子のピークが,オージェ電子が非弾性散乱する間にエネ
ルギーを失って低エネルギー側に現れるバックグラウンド及
びその他の過程で生み出されるバックグラウンドの上に重ね
合わされたものである。
注記3 オージェ電子は,物質内を通過するときに弾性散乱(4.80)に
よって伝ぱ(播)の方向を変えることがある。
Auger electron
4.38
オージェ電子ス
ペクトル
オージェ電子(4.37)強度を運動エネルギー(4.278)の関数としてプロ
ットしたものをいい,通常は,検出電子のエネルギー分布の一部である。
注記1 電子の入射によって励起を行っているときには,検出電子のエ
ネルギー範囲として0 eV〜2 400 eVがよく使われ,この領域に
はオージェ電子,後方散乱(一次)電子(4.58)及び二次電子
が含まれている。この分布の全体をオージェ電子スペクトルと
いうこともある。
注記2 オージェ電子スペクトルは,直接スペクトル(4.173)又は微分
スペクトル(4.171)のいずれの形式で記載してもよい。
Auger electron
spectrum
4.39
オージェ電子収
率
ある原子の内殻励起によって発生した空孔が,オージェ過程(4.44)に
よって緩和する確率(参考文献[1]参照)。
Auger electron
yield
4.40
オージェ中和
表面に接近したイオンに,固体の伝導帯からトンネル効果によって電子
を与えて中和し,このとき表面原子から電子が放出される過程。
注記 放出された電子は,真空中に放射されることもある。
Auger
neutralization
4.41
オージェパラメ
ータ
〈XPS〉同一元素からのある幅の狭いオージェ電子(4.37)ピークの運
動エネルギー(4.278)と,強度の最も強い光電子ピークの運動エネル
ギーとのエネルギー差。
注記1 始状態オージェパラメータ(4.42)及び修正オージェパラメー
タ(4.43)参照。
注記2 オージェパラメータの値は励起X線のエネルギーによって異
なるので,励起X線の種類は明記しなければならない。
注記3 オージェパラメータは,終状態(4.215)オージェパラメータと
もいう。
注記4 オージェパラメータは試料の帯電が束縛エネルギー(4.82)値
に曖昧さを生じる場合又は束縛エネルギーのシフトが化学状
態を同定するのに適切でない場合に,化学状態を分離する上で
有効である。
注記5 類似の化学シフト(4.105)を示す内殻準位間のオージェ遷移
(4.46)に関して,内殻正孔(4.237)の生成によって生じる,
イオン化された構成元素の緩和エネルギー(4.380)を評価する
のにオージェパラメータは有用である。
Auger parameter
13
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.42
始状態オージェ
パラメータ
〈XPS〉β=3EB+EKで表されるβ。ここで,EBは光電子ピークの束縛エ
ネルギー(4.82),EKはフェルミ準位(4.211)基準のオージェ電子(4.37)
ピークの運動エネルギー(4.278)。EB及びEKは,同じ元素の同じ始状
態内殻準位から得られたものである。
注記1 オージェパラメータ(4.41)及び修正オージェパラメータ(4.43)
参照。
注記2 オージェ遷移(4.46)が類似の束縛エネルギーシフトを示す内
殻準位間のものとすると,始状態オージェパラメータは二つの
環境間の束縛エネルギー変化に寄与する原子の内殻ポテンシ
ャルの変化を評価するのに有用である。
注記3 このパラメータβは,非対称性パラメータ(4.30)と同じ記号
だが関係はない。
initial state Auger
parameter
4.43
修正オージェパ
ラメータ
〈XPS〉スペクトル上で鋭い形状を示すオージェ電子(4.37)ピークの
フェルミ準位(4.211)基準の運動エネルギー(4.278)値と,同じ元素
から発生する最も強い光電子ピークの束縛エネルギー(4.82)値との和。
注記1 オージェパラメータ(4.41),及び始状態オージェパラメータ
(4.42)参照。
注記2 修正オージェパラメータは,オージェパラメータと励起に用い
たX線のエネルギー値の和である。オージェパラメータと異な
り,この値はX線のエネルギー値に依存しない。
modified Auger
parameter
4.44
オージェ過程
内殻に空孔がある原子の電子放出を伴う緩和(4.378)(参考文献[1]参
照)。
注記1 オージェ脱励起(4.36),オージェ電子(4.37)及びオージェ遷
移(4.46)参照。
注記2 放出電子は,オージェ遷移によって決まった値のエネルギーを
もつ。
Auger process
4.45
原子間オージェ
過程
〈AES〉少なくとも一つの最終空孔が,最初に発生した空孔が始空孔の
ない原子に近接して局在するとき,この原子の価電子帯又は分子軌道の
間に形成されるオージェ遷移(4.46)。
interatomic Auger
process
4.46
オージェ遷移
過程に関与した殻又は副殻を含めて記載したオージェ過程(4.44)。
注記1 オージェ過程に含まれる三つの殻は,次のとおり三つの文字で
表す。
a) 頭一文字は最初に空孔が発生した殻を表し,後の二文字は
オージェ過程によって空孔が現れる殻を表す(例 KLL,
LMM)。
b) 価電子帯の電子が関与している場合には,それを文字Vで
表す(例 LMV,KVV)。
c) 殻についての特定の副殻が分かっている場合には,それも
記載してよい(例 KL1L2)。
d) 結合項が自明の場合は,結合項も書き加えて原子の終状態
を示してもよい(例 L3M4,5M4,5;1D)。
注記2 さらに,複雑なオージェ過程の場合(初期イオン化が多重に起
こる,又は他の電子励起が付随するような場合)には,始状態
と終状態(4.215)とをダッシュ記号で分けて記載してもよい(例
LL-VV,K-VVV)。
注記3 最初に電子空孔が発生した同じ殻にある電子を含んでいるオ
ージェ過程(例 L1L2M)は,コスター・クローニッヒ遷移
(4.119)という。全ての電子が最初に空孔が発生した殻に属し
ているならば(例 M1M2M3),超コスター・クローニッヒ遷移
(4.457)という。
Auger transition
14
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.47
オージェ遷移率
単位時間にオージェ過程(4.44)が起こる確率。
Auger transition rate
4.48
オージェ空孔サ
テライト
オージェ遷移(4.46)に関与する始状態(4.248及び4.249)又は終状態
(4.215)に,これらとは別のスペクテイター正孔(4.429)が関与する
遷移。
Auger vacancy
satellite
4.49
バックグラウン
ド等価濃度
〈GDS〉バックグラウンドの非存在下において,試料測定で生成したバ
ックグラウンド強度に相当する信号強度(4.252)を,試料中の元素濃
度に等価換算した値。
注記 GDS(3.10)では分析結果は質量分率で表記することが多いので,
バックグラウンド等価濃度も同様に質量分率で記載する。
background
equivalent
concentration
4.50
非弾性散乱バッ
クグラウンド
元々単一のエネルギーをもつ粒子が一回以上の非弾性散乱(4.244)過
程を経ることによって,低エネルギー側に現れるスペクトル成分。
注記1 電子の非弾性散乱バックグラウンド除去(4.242),シャーリー
バックグラウンド(4.54),シッカフスバックグラウンド(4.55)
及びツガードバックグラウンド(4.57)参照。
注記2 AES(3.1)及びXPS(3.23)では,考慮しているオージェ電子
(4.37)又は光電子のピークに付随しているバックグラウンド
として,ピークに近いエネルギーをもつ電子を入射させて電子
エネルギー損失スペクトル(4.197)を測定し,これを近似的に
使用してきた。ツガードバックグラウンドも同様に使用されて
きた。正確さには欠けるが,より単純な非弾性散乱バックグラ
ウンド関数としてシャーリーバックグラウンドがある。単純な
直線バックグラウンドもよく利用されるが,絶縁物をXPSで解
析する場合以外では,不正確である。
inelastic
background
4.51
装置起源バック
グラウンド
装置の1か所又はそれ以上の箇所から発生する装置の非理想的な振る
舞いに由来する一般的には好ましくない信号。
instrumental
background
4.52
準安定イオン起
源バックグラ
ウンド
〈SIMS〉放出から検出までの間に自発的に断片化した準安定イオンに
よる質量スペクトル(4.295)の信号。
注記 リフレクトロン飛行時間形質量分析計において,準安定イオン
(4.300)の崩壊は,ドリフトエネルギー及びリフレクタ電位
(4.373)に依存するブロードな質量ピークの原因となる。適正な
デザインによって,これらのバックグラウンド信号(4.56)は最
小化が可能である。
metastable
background
4.53
バックグラウン
ドの相対標準
偏差
バックグラウンド信号(4.56)の中のノイズ(4.315)を特徴付ける標準
偏差を,バックグラウンド信号の強度で除した値。
relative standard
deviation of the
background
4.54
シャーリーバッ
クグラウンド
〈AES,XPS〉ある運動エネルギー(4.278)におけるバックグラウンド
の強度は,そのエネルギーよりも高いエネルギー領域のピーク面積
(4.326)に一定の割合で比例するものとして,実測スペクトルにおい
てピークよりも高い運動エネルギー側と低いエネルギー側との2点で
適合させて算出するバックグラウンド。
注記1 ツガードバックグラウンド(4.57)参照。
注記2 バックグラウンドへのフィッティングは,検出器エネルギーチ
ャンネルの一定数の平均の値に対して行ってもよい。
Shirley
background
15
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.55
シッカフスバッ
クグラウンド
〈AES,XPS〉連鎖的に二次電子(4.401)として放出される電子が形成
するバックグラウンドを,運動エネルギー(4.278)の単項べき乗関数
を使用して表す方法。
注記1 シッカフスバックグラウンドを正しく適用するためには,測定
した連鎖的二次電子は測定装置の分光器の応答関数(4.433)で
補正していなければならない。
注記2 シッカフスバックグラウンドBS(E)の形状は,次の関数形で表
される。
BS(E)∝E−m
ここに,Eは放出される電子の運動エネルギーであり,数値
mの範囲は1と2との間にある。
Sickafus
background
4.56
バックグラウン
ド信号
本来注目している過程又は信号源以外の原因によって,特定の位置,エ
ネルギー,質量,波長などに表れる信号。
注記 シャーリーバックグラウンド(4.54),シッカフスバックグラウ
ンド(4.55)及びツガードバックグラウンド(4.57)参照。
background signal
4.57
ツガードバック
グラウンド
〈AES,XPS〉エネルギー損失(4.196)に関する微分非弾性散乱断面積
(4.129)及び表面領域における電子を放出する原子の三次元的分布を
考慮したモデルから得られる強度分布。
注記1 シャーリーバックグラウンド(4.54)参照。
注記2 幾つかの種類の原子分布,及びそれに対応する微分非弾性散乱
断面積を使用することができる。使用された原子分布及び非弾
性散乱断面積を明記しておく必要がある。
注記3 ツガードバックグラウンドは,注目しているピークの領域と,
そのピークよりも約50 eV低い運動エネルギー(4.278)の領域
とを除外した,広いエネルギー領域にわたって測定したスペク
トルに合致するように計算する。測定したスペクトルは,測定
に使用した装置の分光器の応答関数(4.433)の補正を行ってか
らツガードバックグラウンドの計算に使用しなければならな
い。
Tougaard
background
4.58
後方散乱電子
〈AES,EELS,EPMA〉入射電子が試料と相互作用した後に試料の表面
から放出される電子。背面散乱電子ともいう。
注記1 慣例的に,50 eV以上のエネルギーをもった電子は,後方散乱
電子とみなされている。
注記2 慣例的に,入射電子線を一次ビーム(4.77)といい,後方散乱
電子もまた後方散乱一次電子(4.346)という。
backscattered
electron
4.59
後方散乱係数,
後方散乱収率
〈EIA,RBS〉ある後方散乱エネルギー(4.60)幅において検出される
粒子数を,そのエネルギー領域の幅及び入射イオン数で除した値。背面
散乱係数又は背面散乱収率ともいう。
backscattering
coefficient,
backscattering
yield
4.60
後方散乱エネル
ギー
後方散乱衝突を行い,試料から脱出した一次ビーム(4.77)粒子のエネ
ルギー。
backscattering
energy
4.61
後方散乱因子
〈AES〉後方散乱補正因子(7.2)又は後方散乱率(7.3)。
注記 この用語は普通に使われるが,曖昧で分かりにくい。そこで,後
方散乱補正因子又は後方散乱率に置き換えられる。これら置き換
える用語は関連するが,異なった意味をもつのでこの用語は使わ
ないほうがよい。
backscattering
factor
(deprecated)
4.62
後方散乱スペク
トル
〈EIA,RBS〉後方散乱エネルギー(4.60)に対して後方散乱収率(4.59)
をプロットしたもの(参考文献[1]参照)。
backscattering
spectrum
16
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.63
後方散乱収率,
後方散乱係数,
η
〈AES,EPMA〉50 eV以上のエネルギーをもって試料から放出された
電子の数の,あるエネルギー及び入射角(4.17)で試料に入射した電子
の総数に対する比。背面散乱収率又は背面散乱係数ともいう。
注記 二次電子収率(4.403),全二次電子収率(4.405)及び後方散乱因
子(4.61)参照。
backscattering
yield,
backscattering
coefficient
4.64
ボールクレータ
法
クレータ内の横方向での位置を深さに対応させるため,球体を使用して
試料表面(4.458)下層の組成変化を露出させる研削操作。
注記 斜め研磨(4.14)及び径方向切り出し法(4.358)参照。
ball cratering
4.65
ビームブランキ
ング
ビーム粒子(4.76)が試料に衝突することを防ぐために,設定された静
電界又は電磁界的な工程。
注記1 ビームバンチング(4.66)及びビームチョッパー(4.109)参照。
注記2 パルス化されたイオンビーム(4.259)は,通常はビームコレク
ターに向けて偏向されている。粒子は試料に到達できず,スパ
ッタリング(4.441)は,イオン光学系の部品周辺で僅かに生じ
ている。一般に,飛行時間形スタティックSIMS(3.20)装置
で,0.2 pA〜2 pAのビームは,1秒間当たり10 000回の繰返し
では0.6 ns〜30 nsの間でオン,100 μs程度でオフしている。
beam blanking
4.66
ビームバンチン
グ
〈SIMS〉イオンパルスの立ち上がりのイオンの減速又はイオンパルス
の立ち下がりのイオンを加速させることによって,イオンパルスの到達
時間の広がりを縮小すること。
注記1 ビームブランキング(4.65)及びビームチョッパー(4.109)参
照。
注記2 この処置は,イオンに異なる電界がかかるので,最適化したイ
オンビーム(4.259)の焦点調整を低下させる可能性がある。
beam bunching
4.67
ビーム収束角
焦点面前方若しくは焦点面の空間におけるビームの全部又は特定の箇
所を含む角度。
注記1 ビーム発散角(4.74)参照。
注記2 ビームが対称である場合には,全角又は半角を使用する。どの
角度を測定しているかについて,明記する必要がある。
beam covergence
angle
4.68
ビーム電流,
I
dQをdtで除した値をいい,次の式によって求められる。
I=dQ/dt
ここに,dQは,時間dt間に通過したビームに含まれる特定の極性にお
ける電荷量。
注記1 パルスビーム電流(4.72)及び平均ビーム電流(4.69)参照。
注記2 電流が時間とともに変化するビームにおいては,ビーム電流の
瞬間値と時間平均値とは一般には異なる。パルスビームの場
合,ビームオン時の電流はdc電流に等しいこともあればそう
でないこともあるが,パルス化されていない場合は,ビーム電
流に等しい。
beam current
4.69
平均ビーム電流 Qをtで除した値。ここで,Qは,時間tの間に通過したビームに含ま
れる特定の極性における電荷量。
注記 電流の瞬間値が時間とともに周期的に変化するビームでは,時間
経過tは,周期の整数倍となる。
average beam
current
17
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.70
ビーム電流密
度,
J
〈荷電粒子が平行ビームの場合〉ビームに垂直な面積dAに入射するビ
ーム電流(4.68)dIをdAで除した値をいい,次の式によって求められ
る。
J=dI/dA
注記1 フルエンス(4.217),フラックス(4.221)及びドーズ量(4.174)
参照。
注記2 収束ビーム又は発散ビームにおいては,面積dAは断面積dAの
小球で置き換えられる。
beam current
density
4.71
累積ビーム電流
特定の時間内にビームとして輸送された全電荷量。
integrated beam
current
4.72
パルスビーム電
流
Qをtpで除した量。ここで,Qは,パルスがオンになっている時間tp
の間に通過したビームに含まれる特定の極性における電荷量。
pulse beam current
4.73
ビーム径
〈断面が円形の粒子ビームに対して〉ビームの方向と垂直な面で測定し
たビーム強度が最大値の半分となるビーム幅(参考文献[1]参照)。
注記 一般にはビーム径は,試料の位置など空間における一定の場所に
おいて特定される。
beam diameter
4.74
ビーム発散角
焦点面の後ろの空間においてビームの全部又は特定の部分が含まれる
角度。
注記1 ビーム収束角(4.67)参照。
注記2 ビームが対称な場合,全角又は半角を使用する。どの角度を測
定しているかについて明記する必要がある。
beam divergence
angle
4.75
ビームエネルギ
ー
ビーム粒子(4.76)の運動エネルギー(4.278)。
注記1 衝撃エネルギー(4.195)及び入射粒子エネルギー(4.241)参
照。
注記2 エネルギーは,通常,電子ボルトの単位を用いる。
注記3 ビームエネルギーは,試料の表面(4.458)に衝撃を与える粒子
のエネルギーと理解される。しかし,試料が接地電位でない場
合には,粒子の衝撃エネルギーは電子銃及びイオン銃によって
試料周りに供給されるビームエネルギーとは異なる。このよう
な場合は,衝撃エネルギーという用語を使用すれば曖昧さを避
けることができる。
beam energy
4.76
ビーム粒子
入射ビームを構成する,電子,陽電子,イオン,原子,分子又はクラス
ター。
beam particle
4.77
一次ビーム
試料に入射する粒子又は光子の直行するフラックス(4.221)。
primary beam
4.78
ビームプロファ
イル
ビームの軸に垂直な面内でのビームフラックス(4.221)の空間分布。
beam profile
4.79
ビーム源エネル
ギー
ビームエネルギー(4.75)と同義。
beam source energy
(deprecated)
4.80
二体弾性散乱,
弾性散乱
全ての運動エネルギー(4.278)及び全ての運動量が保存される粒子と
別の粒子との衝突。
注記1 非弾性散乱(4.244)参照。
注記2 弾性散乱において,運動している粒子は180°の角度まで偏向
され得る。
binary elastic
scattering
4.81
二体弾性散乱ピ
ーク
〈ISS〉入射イオンが特定の質量の表面原子によって二体弾性散乱
(4.80)を受けることによって,分光器の検出系の応答がバックグラウ
ンド以上に増加すること(参考文献[1]参照)。
binary elastic
scattering peak
4.82
束縛エネルギー
ある電子準位の電子を,固体の場合はフェルミ準位(4.211)まで,自
由原子及び分子の場合は真空準位(4.483)まで励起するのに必要なエ
ネルギー。
binding energy
18
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.83
ブロッキング配
置
〈EIA,RBS〉単結晶試料ターゲット(4.466)の原子軸又は原子面が,
試料から検出器へのベクトル(方向)に平行に整列する実験配置(参考
文献[1]参照)。
blocking geometry
4.84
結合開裂,
結合切断
分子結合の切断。
注記1 この切断によって,荷電若しくは非荷電の二つのフラグメント
又は一つの再構成物が生成する。
注記2 α-及びβ-開裂については,参考文献[2]又は[3]参照。
bond cleavage,
bond scission
4.85
ブラッグ則
W. H. ブラッグ及びR. クレーマンによって公式化された経験則。化合
物試料の阻止断面積(4.134)が各構成元素の阻止断面積と原子数比と
の積の和に等しい,という関係。すなわち,
SAB(ε)=xSA(ε)+ySB(ε)
ここに,SAB(ε),SA(ε),SB(ε)は,それぞれ化合物AxBy,元素A,Bの阻
止断面積を表すものとする(参考文献[1]参照)。
Bragg's rule
4.86
制動放射
〈EPMA,XPS〉物質中で入射電子が減速することによって,その物質
から光子が放出される現象。
注記1 制動放射は,入射電子のエネルギーを上限とする連続スペクト
ルをなす。
注記2 XPS(3.23)においては,簡易型のAl又はMgアノード(4.27)
を使用したX線源からの制動放射が連続的な光電子バックグ
ラウンドをもたらす。この放射はまた,Al又はMgのK殻特
性X線ではエネルギー的に励起不可能な内殻の光イオン化を
もたらす。その結果,負の束縛エネルギー(4.82)の領域にオ
ージェ電子(4.37)が発生し,さらに,他のオージェ電子の強
度も特性X線(4.96)だけによって内殻励起が生じた場合より
も大きくなる。制動放射によって励起されたオージェ電子は,
化学状態を同定するのに必要な種々のオージェパラメータ
(4.41)を決定するのに役立つ。
bremsstrahlung
19
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.87
カスケードミキ
シング
試料表面付近において,減速している入射粒子から与えられたエネルギ
ーによって,物質中の原子がランダムな方向に移動する,拡散に類似し
た現象。
注記1 アトミックミキシング(4.32),衝突カスケード(4.114),ノッ
クオン(4.279)及びリコイル注入(4.279)参照。
注記2 アトミックミキシング及びノックオン効果が大きくない場合,
測定されたデルタ層(4.158)のスパッタ深さ方向分布(4.440)
は,カスケードミキシングによって非対称となる。これは,試
料がスパッタされるときに表面(4.458)位置が内部へ移動する
ためである。しかし,デルタ層の物質のかなりの部分が表面か
ら失われるまでは,スパッタ初期における試料内部の組成分布
は,正規分布となる。
注記3 カスケードミキシングだけがミキシング過程のほとんどを占
める場合,測定された分布の中心が真のデルタ層の位置になる
(スパッタが平衡に達する前に生じる深さのシフトを補正す
ることが前提となる。)。
注記4 希釈限界(4.172)以下で,測定されたデルタ層の深さ方向分布
(4.350)は,指数関数的な裾を引く。試料内部のいかなる原子
も浅い方向と深い方向に移動する確率は等しい。しかし,浅い
方向に移動した原子はスパッタされるので,表面付近の濃度は
無限に減衰していくために裾を引く。この裾の存在は方向性の
あるノックオン効果が働いている証拠であると信じられてい
る。真のノックオン効果は観察されることはまれであり,スパ
ッタを使用して得た深さ方向分布をゆがませる主要な原因と
はならないであろう。
cascade mixing
4.88
カソード
〈GDS,直流操作〉グロー放電(4.228)装置において,より負側に帯
電した電極。
注記 アノード(4.26)〈GDS,直流操作〉参照。
cathode
4.89
カソード
〈GDS,高周波操作〉高周波グロー放電(4.228)装置で高周波の周期
波形の多くの部分で,より負側に帯電した電極。
注記1 アノード(4.27)〈GDS,高周波操作〉参照。
注記2 表面化学分析のために通常使用されるグロー放電装置に供給
される高周波電力は,正負対称形をした正弦波であり,この場
合の高周波電圧の変化は時間平均を取ると接地電圧に対して
ゼロとなる。高周波電圧波形の時間範囲においてカソードが大
きく負側に帯電しない理由は,直流バイアス(4.145)の値が高
周波電圧のピーク値の半分よりやや低い値を取るためである。
注記3 高周波波形の振幅変化において,カソードが負方向に帯電する
精確な時間比率は,放電管の幾何学的構造又はその他の放電パ
ラメータに依存して決まる。
cathode
4.90
カソード降下電
位,
電位低下
〈GDS〉カソード(4.88)表面と負グロー(4.314)との間の電位差。
注記 表面化学分析のために使用される直流グロー放電(4.228)分析装
置において,カソード電位降下はカソード表面において負電圧で
あり,その値は通常200 V〜2 000 Vの範囲である。高周波グロー
放電においてカソード電位降下は,通常ピーク値で500 V〜2 000
Vの範囲であり時間変動がある。
cathode fall,
fall potential,
cathode drop
(deprecated)
20
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.91
カソード層
〈GDS〉グロー放電(4.228)においてアストン暗部(4.141)とカソー
ド暗部(4.142)との間に現れる薄い発光領域。
注記1 負グロー(4.314),陽光柱(4.342)及びアノードグロー(4.28)
参照。
注記2 カソード層は,表面化学分析のために使用されるグロー放電で
は顕著に現れないこともある。
cathode layer
4.92
カチオン
正電荷をもつイオン。
注記 アニオン(4.25)及びカチオン化イオン(4.93)参照。
cation
4.93
カチオン化イオ
ン
中性分子が,カチオン(4.92)(通常,金属イオン)と結合することに
よって生じる正電荷を帯びたイオン。
注記1 例えば,銀によるカチオン化は,ある種の正フラグメントイオ
ン(4.222)又は正分子イオン(4.304)の高効率化をもたらす。
各イオンは親分子又はフラグメントの質量と付加された金属
原子の質量との合計の質量をもつ。銀は分子を堆積,又は表面
(4.458)に形成した分子のサブモノレイヤー(サブ一分子層)
をスパッタするための基板としても使用される。
注記2 アンモニウムイオン(NH4+)は金属と同様に分子をカチオン
化できる。
cationized ion
4.94
チャネリング
結晶中の特定の軸又は面方向に沿ってエネルギーをもった粒子が選択
的に移動すること。
注記 IBA(3.11)において,一列に並んだ最初の原子に衝突するビー
ムの一部が散乱され,表面ピークを与える。しかし,ビームの残
りは直接散乱せず,結晶の空隙を通り抜けることができる。高速
の粒子がチャネル壁で起こす小角衝突は,ほとんどチャネルにビ
ームを集中する。そのため,チャネリング率は,未調整の場合に
は全体の1 %程度と低いことがある。チャネリングは,結晶格子
から外れたサイト連続場にある原子に敏感である。また,アモル
ファス被膜の場合と同様,ひずみの評価及び点欠陥(直接散乱中
心)の深さ方向の分布に使われる。これらの原子又は欠陥の数は
チャネリングイールドに相当する。線欠陥にも敏感である。大き
な直接散乱効果はもたないが,結晶の中の奥深くでデチャネリン
グを引き起こす。これらの場合,点欠陥濃度は約1 at%,転位密
度は約1011/cm2より大きくなる。
channeling
4.95
特性電子エネル
ギー損失
物質の特性によって決まるピークを伴った電子エネルギー損失スペク
トル(4.197)を生み出す固体中での電子の非弾性散乱(4.244)。
注記1 プラズモン(4.339)及び表面プラズモン(4.462)参照。
注記2 最も起こり得る特性損失は,価電子の励起によって生じる。幾
つかの固体(例えば,非遷移金属)においては,非弾性散乱は
プラズモン励起が支配的である。その他の固体における非弾性
散乱では,プラズモン励起及び単一価電子励起が支配的であ
り,これらの励起を区別できない場合がある。非弾性散乱は,
エネルギー的に可能な場合には内殻電子の励起によっても起
きる。
注記3 特性エネルギー損失は,0 eV〜100 eVの損失エネルギーの領域
で最も顕著である。
注記4 特性電子エネルギー損失ピークは,スペクトル中の他のピーク
に付随して観測される[例えば,オージェ電子(4.37)ピーク,
光電子ピーク,一次電子(4.346)の弾性散乱(4.80)ピークな
ど]。
characteristic
electron energy
losses
21
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.96
特性X線
イオン化された原子から,原子番号及び原子の化学状態(4.107)に特
有なエネルギー分布及び強度特性をもって放出される光子(参考文献
[1]参照)。
注記1 XPS(3.23)では,この用語は,試料中の光電子を励起するた
めに使用されるX線源について適用される。
注記2 EPMAでは,試料から放出された特性X線が検出され,その分
析によって試料の組成に関する情報が得られる。
characteristic
X-rays
4.97
帯電操作
試料の表面(4.458)における帯電の量又は分布を変えること。
charge modification
4.98
帯電中和,
帯電補償,
帯電安定化
一次粒子又は光子の照射によって,絶縁性又は電気伝導性の低い試料の
表面(4.458)の電位をある値,通常は,ほぼ中性に維持すること。
注記 帯電中和は,主に電子を表面に照射することによって達成される
が,まれに,イオン又は光子の照射によっても達成される。
charge
neutralization,
chargecompensation
(deprecated),
chargestabilization
(deprecated)
4.99
帯電補正
〈AES,XPS〉計測したエネルギーを補正して,表面帯電のない試料の
エネルギーと同じになるように,試料の帯電電位(4.103)を決定する
手法。
注記1 帯電補正は,自然付着炭素エネルギー基準(4.4),内部炭素エ
ネルギー基準(4.257)又は金装飾法(4.234)を使用して行わ
れる。
注記2 試料の異なる表面領域又は深さにおいて,異なった帯電電位が
発生する可能性がある。これは,試料の不均一性又は入射線フ
ラックス(4.221)の不均一な強度によって発生する。
charge referencing
4.100 電荷移動,
電荷交換
〈GDS〉原子,分子又はイオンから別の原子,分子又はイオンへの電荷
移動。
charge transfer,
charge exchange
4.101 非対称電荷移動,
非対称電荷交換
〈GDS〉原子,分子又はイオンとそれらとは異なる化学種(4.106)の
原子,分子又はイオンとの間での電荷移動(4.100)。
注記1 例えば,Ar++M → Ar+M+*。ここで,Mは多くの場合,GDS
(3.10)で測定対象となる遷移金属であり,M+*は励起電子配
置にあるその1価イオンである。
注記2 一般に,非対称電荷移動となる衝突は,反応断面積(4.123)が
励起エネルギーの合致及び衝突時の量子力学的効果に依存し
て大きく変わるため,対称電荷移動(4.102)と比較して効率が
悪い。
asymmetric charge
transfer,
asymmetric charge
exchange
4.102 対称電荷移動,
対称電荷交換
〈GDS〉同一の化学種(4.106)間で原子,分子又はイオンと別の原子,
分子又はイオンとの間での電荷移動(4.100)。
注記 例えば,Ar++Ar → Ar+Ar+。この反応は,分光分析に使用され
ているグロー放電(4.228)において,カソード暗部(4.142)で
活発に起こっていると考えられている。その結果として,試料の
表面(4.458)に向かって加速されるAr原子イオンの数密度を高
められることになる。これらの高速のAr原子イオンは試料のス
パッタリング(4.441)に大きく寄与することができる。
symmetric charge
transfer,
symmetric charge
exchange
4.103 帯電電位
絶縁体試料の表面部分において,照射によって変化した電位。
注記1 試料の異なる表面領域又は深さにおいて,異なった帯電電位が
発生する可能性がある。これは,試料の不均一性又は入射線フ
ラックス(4.221)の不均一な強度によって発生する。
注記2 表面とバルクのポテンシャルとは異なる場合がある。これを引
き起こす例として,バンドベンディング,界面(4.253)双極子,
荷電中心などがある。
charging potential
22
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.104 化学効果
〈AES,EELS,EPMA,XPS〉計測した元素のスペクトル形状又はピー
クエネルギーが化学結合状態の違いによって生じる変化。
chemical effects
4.105 化学シフト
〈AES,EELS,EPMA,XPS〉原子の置かれる化学的環境の変化に起因
するピークエネルギー(4.327)の変化。
chemical shift
4.106 化学種
原子,分子,イオン又は官能基。
chemical species
4.107 原子の化学状態
〈AES,EELS,UPS,XPS〉分子,化合物,固体,液体又は気体中の原
子が,周囲の原子との化学的相互作用によって電子分光で観測可能な特
徴的なエネルギー又は構造変化を起こす状態。
注記1 観測される構造の例は,サテライトピーク,ピークエネルギー
位置のシフト,ライン形状(4.284)の変化,光電子ピーク,オ
ージェ電子(4.37)ピークの位置より低い運動エネルギー
(4.278)側に現れる特性電子エネルギー損失(4.95)スペクト
ルの変化などである。
注記2 元素の化学状態を完全に記載するには,信号を発生させる原子
の価電子状態,内殻の電子配置及びこの原子に関する局所的な
電子・物理状態(電荷分布,電子状態密度,価電子配置など)
の情報が必要である。
注記3 注目する原子の化学状態は,その周囲の原子,中でも最近接の
原子集団との相互作用(例えば,化学結合のイオン性又は共有
結合性)で決まる。相互作用を決めるのは化合物中の原子の酸
化数,化学的配位(主に立体構造及び配位数),最近接,第2
近接に存在する元素の種類の差異などである。これら全てが注
目している原子の有効電荷及びスピン状態に影響を及ぼす。
注記4 ある化学種(4.106)について,化学的性質が異なる,又は区別
できる,すなわち異なる化学状態にあるという場合,その化学
種の局所的な電荷分布又は電子配置を含む価電子帯の構造が
異なっている。XPS(3.23)では,化学状態という用語は,専
ら測定された束縛エネルギー(4.82),オージェ電子の運動エネ
ルギー及び異なる化合物中のある元素の酸化状態のオージェ
パラメータ(4.41)を特徴付けるために使われる。異なる化合
物中の酸化状態とは,例えば,Cr2O3,Cr(OH)3中のCr III価で
ある。AES(3.1)では,この用語は異なる化学的環境にある元
素のオージェ電子スペクトル(4.38)の形状を特徴付けるため
に使われることが多い。形状の違いの例は,グラファイトと
様々な炭化物中の炭素のオージェスペクトルとである。様々な
化学的環境に置かれたある化学種の化学的性質の差異は,光電
子,オージェ電子スペクトルの,ピークのエネルギー,サテラ
イトの構造,ピーク形状又はエネルギー損失(4.196)構造の違
いとなって現れる。
注記5 分子中の原子の量子論によれば,原子は開かれた量子系の実空
間としての結晶又は分子の中に限定された領域として定義さ
れる。系全体の波動関数は定義できるが,この一つの原子の波
動関数は定義できない。物理学が与えることができるのは,空
間のある領域を占める原子に関する全ての観測可能な期待値
である。ただし,それが実際に測定可能かどうかは問わない。
この意味で,原子の状態は,系全体の中での,正味の電荷,原
子のもつエネルギー,並びに電荷及びエネルギーの変化が反映
された観測したスペクトル(例えば,オージェ電子,光電子)
で定義される。
chemical state of
an atom
23
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.108 化学状態プロッ
ト,
ワグナープロッ
ト
〈XPS〉同じ元素の鋭いオージェ電子(4.37)ピークの運動エネルギー
(4.278)と光電子ピークの束縛エネルギー(4.82)とをプロットしたも
の。
注記1 プロットは,通常,異なる化学状態を取り得る一つの元素につ
いて行う。このようなプロットは,束縛エネルギーの測定だけ
では不十分な未知試料の状態を決めるために有用である。
注記2 通常,束縛エネルギーを横軸に,右に向かって値が減少するよ
うにプロットする。
chemical-state plot,
Wagner plot
4.109 ビームチョッパ
ー
〈SIMS〉連続イオンビーム(4.259)からイオンパルスを生成させるた
めの,静電的又は電磁気的装置。
注記1 ビームブランキング(4.65)及びビームバンチング(4.66)参
照。
注記2 ビームチョッパーは,パルス幅及びそれに基づく飛行時間
(4.473)形質量分析計の質量分解能を決めるために使うことが
できる。また,1種類以上の成分を含むビームから特定のイオ
ンを選択するためにも使うことができる。
chopper, beam
4.110 色収差
異なるエネルギーをもつ電子又はイオンに対する,電子又はイオン光学
系における非理想的な焦点。
chromatic
aberration
4.111 クラスターイオ
ン
多くの原子又は化学種(4.106)からなるイオン。
注記1 クラスターは,正又は負の電荷をもつ。
注記2 クラスターイオンは,単原子イオンよりも優れた特性をもつ一
次イオン源として使用される。そのようなイオン源の例として
は,Au3+,Au5+,Bi3+,Bi5+,C60+,H3O(H2O)n+,[Os3(CO)12] +
及びSF5+のようなものがある。
cluster ion
4.112 クラスター
SIMS
〈SIMS〉クラスターイオン(4.111)を一次ビーム(4.77)として利用
するSIMS(3.17)。
注記 クラスターイオンは,スタティックSIMS(3.20)における分子
信号の増大又はダイナミックSIMS(3.3)における深さ分解能
(4.164)向上のために使用される。
cluster SIMS
4.113 集団運動
〈SIMS,スパッタリング〉多数の原子又は分子が,同じ時に同じ場所
で起こす運動。
collective motion
4.114 衝突カスケード
エネルギーをもった粒子の衝撃によって生じる,固体中の原子間の逐次
的なエネルギー移譲(参考文献[1]参照)。
注記 アトミックミキシング(4.32),カスケードミキシング(4.87),
ノックオン(4.279)及びリコイル注入(4.279)参照。
collision cascade
4.115 深さ方向組成分
布,
CDP
表面(4.458)から垂直方向の距離の関数として測定された化学組成又
は元素組成。
compositional
depth profile,
CDP
4.116 ΔE一定モード,
分光器エネルギ
ー一定モード,
CAEモード,
分光器トランス
ミッション固
定モード,
FATモード
電子減速法(4.189)によって,分析器のエネルギー分散部におけるパ
スエネルギー(4.325)を一定にする電子エネルギー分析器(4.187)の
動作モード。
注記 このモードは,XPS(3.23)で使用され,スペクトルの全領域で
一定の高いエネルギー分解能(4.384)を達成するために使用され
る。この場合,分析器の透過率は,通常,電子の運動エネルギー
(4.278)の増加とともに減少する。
constant ΔE mode,
constant analyser
energy mode,
CAE mode,
fixed analyser
transmission
mode,
FAT mode
24
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.117 ΔE/E一定モー
ド,
減速率一定モー
ド,
CRRモード,
減速率固定モー
ド,
FRRモード
電子の減速電位を変化させて,分析器のエネルギー分散部におけるパス
エネルギー(4.325)が,真空準位(4.483)基準の運動エネルギー(4.278)
に対して一定の比率となるようにする電子エネルギー分析器(4.187)
の動作モード。
注記 このモードはAES(3.1)でよく使用され,高エネルギーで放出
された電子に対してスペクトルの分解能を犠牲にして,信号対ノ
イズ比(4.427)を改善するために使用される。この場合,エネル
ギー幅が広がることを許容することで,分析器の透過率は,通常,
分析される電子の運動エネルギーの増加とともに増加する。
constant ΔE/E
mode,
constant retardation
ratio mode,
CRR mode,
fixed retardation
ratio mode,
FRR mode
4.118 協調的アップリ
フティング
表面(4.458)の原子又は分子の下で生じる原子又は分子の集団運動
(4.113)。その表面原子又は分子の脱離の原因となる。
cooperative
uplifting
4.119 コスター・クロ
ーニッヒ遷移
最初の空孔と同じ殻から発生した電子を含むオージェ過程(4.44)。
注記 オージェ遷移(4.46)及び超コスター・クローニッヒ遷移(4.457)
参照。
例 L1L2M5:M1M2N5
Coster-Kronig
transition
4.120 カウント
ある決められた時間内に検出システムによって記録されたパルスの総数。
注記1 カウント(計数値)は,[不感時間(4.146)によるロスがない
場合]検出される粒子1個に対応している。この場合,[他の
ノイズ(4.315)源がなければ]カウント(計数値)はポアソン
統計に従うか,単純に検出される粒子の数に比例する。計測の
タイプを明確に記載する必要がある。
注記2 多重検出器においてスペクトルに関連するチャンネルへのカ
ウント(計数値)の配分は,隣接するチャンネルのカウント(計
数値)が部分的に相関しているので,個々のチャンネルにおい
て予想されるポアソン統計から変化する可能性がある。
counts
4.121 クレータ深さ
測定信号が得られたクレータ領域の平均深さ。
注記1 一般にクレータは,スパッタ深さ方向分布(4.440)分析におい
てイオン衝撃によって形成されるが,変質層(4.6)の膨張のた
めに,スパッタリング(4.441)によって除去された試料の厚さ
とクレータ深さとが異なる場合がある。
注記2 大気又はその他の雰囲気にばく(曝)露されると,反応層(例
えば,酸化層)の形成のためにクレータ深さが変化する可能性
がある。
crater depth
4.122 クレータエッジ
効果
深さ方向分布測定(4.163)において形成されるクレータのエッジ領域
から信号が発生する現象。一般に,クレータの中央部よりも浅い深さか
ら発生する。
crater edge effect
4.123 断面積
〈ある特定の種類及びエネルギーをもつ荷電粒子又は中性粒子が,ある
特定の標的物に入射するときに引き起こされるある特定の反応又はプ
ロセスに対して〉標的物に発生する衝突プロセス又は反応の確率を入射
粒子のフルエンス(4.218)で除した値(参考文献[4]参照)。
注記1 断面積は,対応するプロセスに対する標的物(原子,分子など)
1個当たりの面積で表される。
注記2 ある状態の粒子ビームにおいて,取り除かれる粒子に対する1
原子当たりの断面積σは,その粒子数Nが距離dxの間に減少
する量dNとの間には次の関係がある。
dN=Nσndx
ここに,n:ビームが通過する場所の原子密度
積分形は,次の式で表される。
N=N0exp(−nσx)
ここに,N0:xの原点におけるNの値。
cross section
25
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.124 損傷断面積
あるイオン,電子又は光子の照射によって引き起こされる損傷の結果と
考えられる,特定の標的物の数の変化を表す断面積(4.123)。
注記1 消失断面積(4.125)参照。
注記2 特定の標的物とは,例えば,表面(4.458)に存在する特定の分
子,観測された特定のフラグメントイオン(4.222),ある化学
状態の原子又はスペクトルデータから推測される架橋高分子
である。
注記3 一般的に標的物の数が大きいと損傷断面積は大きくなる。
注記4 大きい標的物が分解する場合は,観測される標的物の強度は増
加又は減少することがある。
注記5 断面積は,そのプロセスに対する標的物(原子,分子)1個当
たりの面積で表される。
注記6 損傷の結果又は電子若しくはイオンのスパッタリング(4.441)
によって,損傷した物質は試料から取り除かれる。そのため,
バルク試料では,観測される対象物質の信号変化が抑制される
場合がある。単層(4.307)の試料の場合には,このようなスパ
ッタリングによって観測される対象物質の信号変化が増強さ
れることがある。選択スパッタリング(4.443)もまた観測され
る対象物質の信号を変化させることがある。
注記7 表面に存在するある状態にある標的物が取り除かれる現象の1
原子当たりの断面積σを使用すると,ある状態にあるN個の標
的物が時間dtの間にdN個減少することを次の式によって表す
ことができる。
dN=NJσdt
ここに,J:一次イオン又は電子のドーズ量(4.174)率密度
この式を積分することによって次の式が得られる。
N=N0exp(−Jσt)
ここに,N0:Nの初期値
注記8 特定の標的物の観測量は,注記3で記載したように標的物を構
成する物質にも依存する。
damage cross
section
4.125 消失断面積
〈SIMS〉一次イオン(4.348)で衝撃された結果として検出されるイオ
ン強度の損失の断面積(4.123)。
注記1 損傷断面積(4.124)参照。
注記2 使われるイオン信号は,通常は大きいフラグメントか又は特徴
的なフラグメントである。例えば,表面(4.458)上においてカ
チオン化イオン(4.93),プロトン付加イオン(4.353)又は分
子から脱プロトン化イオン(4.160)したものである。
注記3 一般に,分子が大きければ大きいほど,消失断面積は大きい。
注記4 対象とする材料は単層(4.307)であると仮定されることが多い。
しかしながらこれは実験的なパラメータであって対象として
いる物質の正確なものではない。損失断面積は実用上の重要さ
ではあるが,これが当たっていることもあるが単純に損傷断面
積(4.124)と関連付けてはいけない。
disappearance
cross section
4.126 弾性散乱断面積
二体弾性散乱(4.80)に対する断面積(4.123)。
elastic scattering
cross-section
26
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.127 微分弾性散乱断
面積
ターゲット(4.466)から十分遠く離れた特定の無限小の立体角中へ散
乱されるときの弾性散乱断面積(4.126)を,無限小の立体角で除した
値。
注記 微分弾性散乱断面積は,弾性散乱断面積σeと次の関係がある。
∫
=
π
4
e
e
d
d
)
(
d
Ω
Ω
Ω
σ
σ
ここに,dσe(Ω)/dΩ:立体角Ωへ散乱されるときの微分弾性散乱
断面積
differential elastic
scattering cross
section
4.128 増強弾性散乱断
面積
〈EIA,RBS〉弾性散乱(4.80)に対する原子の断面積(4.123)で,一
次粒子によって試料中の原子核が部分的に侵入することによって,ラザ
フォード断面積(4.133)で与えられるよりも大きい値をもつ断面積。
enhanced elastic
cross section
4.129 非弾性散乱断面
積
〈AES,EELS,EPMA,XPS〉物質中を通過する電子の非弾性散乱(4.244)
に対する断面積(4.123)。
inelastic scattering
cross section
4.130 イオン化断面積
原子において,それまで占有されていた殻に空孔が生成される過程に対
する断面積(4.123)。
注記1 全イオン化断面積は,ある原子の任意の殻又は副殻から一つの
電子を取り除く場合に適用される。
注記2 部分イオン化断面積又は副殻イオン化断面積は,ある原子の特
定の殻又は副殻から電子が取り除かれる場合に適用される。
注記3 部分イオン化断面積は,ある殻若しくは副殻の電子1個当たり
で表されるか,又はある原子の殻若しくは副殻にある全電子数
に対して表されることがある。
注記4 一つの原子は,最初のイオン化に引き続く過程,オージェ過程
(4.44)又はコスター・クローニッヒ遷移(4.119)過程の結果
として,複数の空孔をもつことがある。
ionization cross
section
4.131 核反応断面積
〈EIA〉ある核反応において特定のビームエネルギー(4.75)をもつ生
成物が特定の放出方向で検出される場合の一原子当たりの断面積
(4.123)。
注記 この断面積は通常は,バーンを単位とする一原子当たりの面積(1
barn=10−28 m2)として表される。
nuclear reaction
cross section
4.132 光イオン化断面
積
あるエネルギーをもつ入射光子が物質と相互作用することで,エネルギ
ー的に許容される全副殻から一つ以上の光電子が生成されるときの全
イオン化断面積(4.130)。
注記 イオン化断面積及び副殻光イオン化断面積(4.135)参照。
photoionization
cross section
4.133 ラザフォード断
面積
〈RBS〉古典力学でクーロンポテンシャルを使用して計算された弾性散
乱断面積(4.126)。
注記1 弾性散乱断面積(4.126)及び増強弾性散乱断面積(4.128)参
照。
注記2 得られた断面積(4.123)の公式は,ラザフォードによって最初
に導かれた。
Rutherford cross
section
27
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.134 阻止断面積
〈EIA,RBS〉試料内での粒子の軌道に沿った走行距離で決まるエネル
ギー損失(4.196)の割合を,無限に薄い厚さをもつ試料に対する原子
密度で除した値。
注記1 阻止能(4.455)参照。
注記2 阻止断面積は,通常,eV·m2/atomの単位記号で表され,断面積
(4.123)でよく使用される一原子当たりの断面積ではない。
注記3 原子密度は,通常,数密度Nを使用するが,質量密度ρが使用
される場合もあるため,阻止断面積の単位はeV·m2/atom又は
eV·m2/kgとなる。阻止断面積S(E)は,次のいずれかの式で与え
られる。
S(E)≡(1/N)(dE/dx)
S(E)≡(1/ρ)(dE/dx)
ここに,dE/dx:粒子の軌道にそった走行距離xに対するエネ
ルギー損失の割合。dE/dxは力の単位をもたないが,阻止能と
呼ばれる。
注記4 幾つかの教科書では,阻止断面積及び阻止能が,S(E)≡(dE/dx)
と互換的に使用されている。阻止能という用語に関するこの矛
盾は混乱につながるので注意が必要である。
注記5 古い教科書では,keV·cm2/gm(単位g当たり)の他の多くの形
式で表された阻止断面積を載せていることもある。
stopping cross
section
4.135 副殻光イオン化
断面積
入射光子が物質と相互作用し,特定の副殻から一つ以上の光電子が生成
されるときの断面積(4.123)。
注記1 光イオン化断面積(4.132)参照。
注記2 一つの副殻からの光イオン化によって,他の殻の電子のシェイ
クアップ(4.423)又はシェイクオフ(4.422)を起こすことが
ある。
sub-shell
photoionization
cross section
4.136 輸送断面積,
σtr
無限に薄い試料において,入射粒子が弾性散乱(4.80)によって失う部
分的な運動量を,試料構成原子の面密度で除した値。
注記1 この断面積(4.123)は1原子当たりの面積として表される。
注記2 あらゆる運動量の損失は,損失量がいかに小さい場合でも,弾
性散乱断面積(4.126)によって記載される。それに対して輸送
断面積は,初期運動量を大きく損失する確率の指標であり,多
くのエネルギーを損失する確率の指標である阻止断面積
(4.134)と類似している。
注記3 輸送断面積は微分弾性散乱断面積(4.127)dσe(Ω)/dΩと次の式
で表される関係がある。
∫
−
=
π
0
e
tr
d
sin
)
cos
1(
d
)
(
d
π
2
θ
θ
θ
Ω
Ω
σ
σ
ここに,θ:散乱角(4.18)
transport
crosssection
4.137 断面切り出し
測定する界面(4.253)に垂直な面をへき開,切断又は研磨を行う試料
作製法。組成の違い又は濃度の勾配がその断面で測定される。
cross-sectioning
4.138 損傷限界
それ以上になると損傷過程に起因するスペクトル又は特定のピークで
の顕著な変化が観測されるような粒子のフルエンス(4.218)。
注記 スタティック限界(4.448)参照。
damage limit
4.139 暗部
〈GDS〉周りの領域に比べて発光がほとんど観測されないので,人間の
目には暗く見えるグロー放電(4.228)の領域。
dark space
4.140 アノード暗部
〈GDS〉グロー放電(4.228)において,陽光柱(4.342)とアノードグ
ロー(4.28)との間の暗部(4.139)。
注記 アストン暗部(4.141),カソード暗部(4.142)及びファラデー暗
部(4.143)参照。
anode dark space
28
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.141 アストン暗部
〈GDS〉グロー放電(4.228)において,カソード(4.88)表面近傍に接
する非常に薄い暗部(4.139)。
注記1 カソード暗部(4.142),ファラデー暗部(4.143)及びアノード
暗部(4.140)参照。
注記2 表面化学分析のために使用されるグロー放電分光分析法(3.10)
において,アストン暗部は顕著ではない。
Aston dark space
4.142 カソード暗部,
クルックス暗部,
ヒットルフ暗部
〈GDS〉グロー放電(4.228)において,カソード層(4.91)と負グロー
(4.314)との間の暗部(4.139)。
注記1 アストン暗部(4.141),ファラデー暗部(4.143)及びアノード
暗部(4.140)参照。
注記2 表面化学分析のために使用されるグロー放電分光分析法(3.10)
において,カソード暗部はカソード(4.88,4.89)表面と負グ
ローとの間の全ての空間を占めるように見える。
注記3 直流グロー放電分析において,カソード暗部の特徴は大きな正
側の空間電荷及び強い電場をもつことである。この状態は高周
波グロー放電においても,高周波の周期波形の大部分の範囲で
起きている。結果として,カソード暗部において効率的な荷電
粒子の加速が起こる。
cathode dark space,
Crookesʼ dark space
(deprecated),
Hittorf dark space
(deprecated)
4.143 ファラデー暗部
グロー放電(4.228)において,負グロー(4.314)と陽光柱(4.342)と
の間の暗部(4.139)。
注記 アストン暗部(4.141),カソード暗部(4.142)及びアノード暗部
(4.140)参照。
Faraday dark space
4.144 ドーターイオン
親イオン(4.322)又は一般的により大きなサイズの中性粒子から生成
する電荷をもった生成物。
注記 生成物の形成は,必ずしもフラグメンテーション(4.223)を含む
必要はない。例えば,もっている電荷の数の変化も含む。このよ
うに,全てのフラグメントイオン(4.222)はドーターイオンであ
るが,全てのドーターイオンがフラグメントイオンである必要は
ない。
daughter ion
4.145 直流バイアス,
直流オフセット
自己バイアス
〈GDS,高周波操作〉高周波電力が印加される電極表面(4.458)に現
れる,接地電位に対する時間平均の電位。
注記1 直流バイアスは,プラズマ(4.337)中に存在する電子と正に帯
電したイオンとの移動度が,非常に異なるために生じる。
注記2 直流バイアスは,スパッタリング(4.441)を試料表面だけに限
定的に引き起こすことに作用し,プラズマと接する他の部位が
スパッタリングされることを妨げる。
注記3 表面化学分析用に,適切に設計された高周波グロー放電(4.228)
装置においては,直流バイアスは,印加された高周波波形のせ
ん(尖)頭電圧値の幅の半分より僅かに小さい。
dc bias,
dc offset,
self bias
4.146 不感時間
パルス計測システムで,ある時間間隔以内で,次に到達するパルスの計
測ができない時間。
dead time
4.147 拡張不感時間
直前のパルスに伴う不感時間(4.146)内に次のパルスが入ることによ
って,不感時間が延長されるシステムの不感時間。
extended dead time
4.148 多重検出器不感
時間
全検出器を単一検出器として扱ったときの,システム全体の実効的な不
感時間(4.146)。
multidetector dead
time
4.149 非拡張不感時間
直前のパルスに伴う不感時間(4.146)に次のパルスが入ることがあっ
ても受感時間の延長が起こらないシステムの不感時間。
non-extended dead
time
4.150 ディケイ長さ
距離xのときに強度がe±x/lとなる場合の長さlの値。
注記 減衰長さ(4.34)参照。
decay length
29
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.151 平均放出関数デ
ィケイ長さ
特定の深さ範囲における放出深さ方向分布関数(4.161)に対して,指
数近似を行ったときに得られるところの対数表示された負となる傾き
の逆数。線形表示された深さに対して,対数表示された放出深さ方向分
布関数における直線フィッティングによって決定される(参考文献[1]
参照)。
average emission
function decay
length
4.152 深い放出関数デ
ィケイ長さ
表面(4.458)から深い方向に向かうときの放出関数ディケイ長さ(4.153)
の漸近値。
deep emission
function decay
length
4.153 放出関数ディケ
イ長さ
特定の深さにおける対数表示された放出深さ方向分布関数(4.161)の
負となる傾きの逆数(参考文献[1]参照)。
emission function
decay length
4.154 上昇端ディケイ
長さ
極大値を通過する前の,深さとともに増大する信号強度(4.252)のデ
ィケイ長さ(4.150)の値。
注記 この用語は,主にデルタ層(4.158)のSIMS(3.17)の深さ方向
分布測定(4.163)に使用される。AES(3.1)及びXPS(3.23)
のスパッタ深さ方向分布にも使用される。
decay length,
leading edge
4.155 下降端ディケイ
長さ
極大値を通過した後の,深さとともに減少する信号強度(4.252)のデ
ィケイ長さ(4.150)の値。
注記 この用語は,主にデルタ層(4.158)のSIMS(3.17)の深さ方向
分布測定(4.163)に使用される。AES(3.1)及びXPS(3.23)
のスパッタ深さ方向分布にも使用される。
trailing edge decay
length
4.156 イオン化率,
イオン化係数
〈SIMS,FABMS〉放出されたある化学種(4.106)のイオン数を,その
化学種の全スパッタ粒子数で除した値。
degree of
ionization,
ionization,
coefficient
(deprecated)
4.157 ディレイド・オ
ンセット
X線吸収スペクトルにおいて,明らかな吸収の増大があるが,対応した
内殻準位の束縛エネルギー(4.82)よりも高エネルギー側で吸収の増加
が生じていることに対応した,吸収の立ち上がりのX線エネルギー。
注記 多くの元素においては,入射X線のエネルギーがある副殻上の電
子の束縛エネルギーに等しいときに,明瞭な吸収の増加がある。
“ディレイド・オンセット”は,それとは別に,幾つかの元素に
おいて,その副殻の束縛エネルギーよりも高いエネルギーにおい
て,対応する吸収の増大を起こす。
delayed onset
4.158 デルタ層
基板上に成膜中に形成される異なった組成をもつ一原子厚さの層。
注記 単結晶基板上へのエピタクシャル成長によって形成されること
が多い。
delta layer
4.159 デンドリマー
細かく枝分かれした単量体(モノマー)が,各機能サイトに規則正しく
結合して樹状のくさびを形成した,多機能コア分子からなる分子。単分
散,樹形又は系譜図構造をとる。
注記 デンドリマーの合成は高分子化学であり,一分子層又はその世代
のデンドリマーの構築での段階反応が関わる。コア分子は“第0
世代”である。続いている各繰返し単位は全ての枝分かれに沿っ
て,次の世代“第一世代”,更にその次の世代“第二世代”と,
最終世代まで形成していく。
dendrimer
4.160 脱プロトン化イ
オン
親分子又はフラグメントから陽子が脱離して形成される負イオン。
deprotonated ion
4.161 放出深さ方向分
布関数
〈表面から放出される粒子又はふく射の測定信号に関して〉粒子又はふ
く射が,表面(4.458)から物質内部側に垂直に測ったある特定の深さ
から発生し,特定の状態である方向に表面から放出される確率。
emission depth
distribution
function
30
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.162 励起深さ方向分
布関数
表面(4.458)から物質内部側に垂直に測った特定の深さにおいて,あ
る方向から表面に入射する特定の粒子束又は放射束によって,特定の励
起が発生する確率(参考文献[1]参照)。
excitation depth
distribution
function
4.163 深さ方向分布測
定
表面(4.458)に垂直な距離に関連する変数の関数として信号強度(4.252)
を計測すること。
注記1 深さ方向組成分布(4.115)参照。
注記2 信号強度は通常,スパッタリング(4.441)時間の関数として測
定する。
depth profiling
4.164 深さ分解能
二種の物質媒体間の理想的に急しゅんな界面(4.253)又はある一つの
物質媒体中のデルタ層(4.158)に対する深さ方向分布を測定したとき
に,特定の量だけ信号が変化する距離。
注記 精確な値は,深さに対する信号の関数に依存する。しかし,日常
的な分析において,AES(3.1)及びXPS(3.23)では上層又は基
板からの信号が,両者のプラトー領域値の間の全変化量の16 %
〜84 %に対応する界面での距離を慣習的に使用する。
depth resolution
4.165 装置起源深さ分
解能
〈AES,SIMS,XPS〉装置のパラメータに由来する試料中の深さ分解能
(4.164)。
注記 スパッタ深さ方向分布(4.440)測定では,これらのパラメータに
系のアラインメント調整が含まれる。また,イオン種(4.268),
エネルギー,入射角(4.17)及びスパッタリング(4.441)中の試
料回転を含めてもよい。
depth resolution,
instrumental
4.166 装置起源深さ分
解能
〈MEIS,RBS〉分光器のエネルギー分解能(4.384)に由来する試料中
の深さ分解能(4.164)。
depth resolution,
instrumental
4.167 深さ分解能パラ
メータ
測定した深さ方向組成分布(4.115)を解析的にフィッティングすると
きの係数又はその分布を記載する定性的方法として使用してもよいパ
ラメータ。
例 (ガウス形応答関数における)標準偏差,(任意の鐘形曲線分布に
おける)半値全幅及び(応答関数の指数的な増加又は減少領域にお
ける)ディケイ長さ(4.150)。
注記1 深さ分解能(4.164)参照。
注記2 鐘形曲線分布では,標準偏差を使用することができる。階段状
の組成変化に対してパラメータを測定したときには,測定深さ
領域を十分大きくし,ステップのいずれの側でも信号が深さに
対して十分に一定になることを確認するように注意しなけれ
ばならない。
注記3 一貫したパラメータを定義しなければならない。
注記4 深さ分解能パラメータは,装置の評価及び分布デコンボリュー
ションに使用する。
depth resolution
parameter
4.168 検出限界
特定の分析条件下において測定可能な元素又は化合物の最少量。
注記1 慣例によって,検出限界は,物質の全信号からバックグラウン
ド信号(4.56)を減じた値が,バックグラウンド信号の3倍に
なる量に対応するとみなすことが多い。この慣例は全ての測定
には適用できないため,検出限界の詳細は,参考文献[5]参照。
注記2 検出限界は,目的に応じて多くの方法で表記することができ
る。表記の例としては,質量分率若しくは重量分率,原子分率,
濃度,原子数並びに質量又は重量がある。
注記3 物質が異なれば,一般に検出限界も異なる。
detection limit
4.169 検出器効率
検出器に入射する粒子又は光子のうち,検出される信号となる割合。
detector efficiency
31
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.170 微分弾性反射係
数
〈EPES〉固体表面(4.458)から,ある与えられた散乱角(4.18)で検
出された擬似弾性反射電子の入射電子の総数に対する立体角当たりの
数の比。
注記 電子に対する微分弾性反射係数は,固体表面層の元素組成,元素
に対する電子の微分弾性散乱断面積(4.127),対応する電子の非
弾性平均自由行程(4.243),入射電子のエネルギー及び散乱の幾
何学的配置に依存する。
differential
electron elastic
reflection
coefficient
4.171 微分スペクトル
〈AES(まれにXPS)〉アナログ電圧変調(4.301)法又はスペクトルの
数値微分によって,エネルギーEに関して直接スペクトル(4.173)を
微分したスペクトル。
注記 変調振幅をeV単位,又は微分に使用した関数の形式及びそのデ
ータ点数で示さなければならない。
differential
spectrum
4.172 希釈限界
〈SIMS〉それ以下では,SIMS(3.17)による信号が確実に組成に比例
するとみなせる,均質マトリックス中の不純物種の原子分率又は原子濃
度。
dilute limit
4.173 直接スペクトル
〈AES,XPS〉エネルギーEの関数として,分散形エネルギー分析器を
使用した分光器を透過させて検出された電子の強度。
注記1 分散素子をもたない減速形エネルギー分析器では,直接スペク
トルは検出した電流の減速エネルギーに対する一次微分から
得られる。
注記2 慣習的に,XPS(3.23)における直接スペクトルは,ΔE一定モ
ード(4.116)で表示することが多く,この場合のスペクトルは
真のスペクトルに近似できる。一方,AES(3.1)では,ΔE/E
一定モード(4.117)で表示されることが多く,そのスペクトル
は真のスペクトルにEを乗じたものになる。
direct spectrum
4.174 ドーズ量
面ドーズ量(4.175)と同義。
dose
4.175 面ドーズ量,
ドーズ密度,
D
dNをdAで除した値。
D=dN/dA
ここに,dNは,表面積dAを通って固体内に侵入した特定の種類のエネ
ルギーをもった粒子数。
注記1 エネルギーをもった粒子は,電荷を帯びているか又は中性の原
子又はクラスターであり,表面積dAは幾何学的な表面積であ
る。
注記2 定常的な平行ビームの場合,面ドーズ量はフルエンス(4.218)
とcosθとの積に等しい。ここで,θは,法線方向に対するビー
ムの入射角(4.17)である。
注記3 ドーズ密度という用語が使われることもあるが,ドーズ量
(4.174)の方が一般的である。ドーズという用語は放射線科学,
医学では異なった意味で定義されている。ドーズ量という用語
を表面(4.458)に照射した粒子の全量という意味で使う場合と,
粒子の量を表面積で除した値という意味で使う場合とがある。
ここでいうドーズ量は後者の意味である。ドーズ密度及びドー
ズ量という用語が出てきた場合,面ドーズ量を意味する。
注記4 イオン注入標準物質(4.370)と関連する面ドーズ量の説明は,
参考文献[6]参照。
areic dose
32
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.176 注入面ドーズ量,
Dimp
dNimpをdAで除した値をいい,次の式によって求められる。ここに,dNimp
は,表面積dAで固体内に入り,固体内にとどまる特定の種類の加速粒
子数。
Dimp=dNimp/dA
注記 固体内にとどまらない粒子は,後方散乱する又は透過する粒子の
いずれかである。
implanted areic
dose
4.177 名目の面ドーズ
量,
Dnom
近似的手続きによって測定する面ドーズ量(4.175)。
注記 一般に,荷電粒子ビームに対するDnomは,電流の積分に相当す
る粒子数を,ビームが面内を均一に走査された領域の表面積と時
間とで除した値として求められる。したがって,一般的にはDnom
はDの近似的な平均値となる。
nominal areic dose
4.178 非注入面ドーズ
量
受面ドーズ量(4.180)のうち,試料内にとどまらなかった粒子の面ド
ーズ量(4.175)。
注記 注入面ドーズ量(4.176)と非注入面ドーズ量との合計は,受面ド
ーズ量に等しい。
non-implanted
areic dose
4.179 面ドーズ量率,
G
dDをdtで除した値をいい,次の式によって求められる。ここに,dD
は,時間dt間に固体内に導入された粒子の面ドーズ量(4.175)。
G=dD/dt
注記 安定した平行ビームの場合,面ドーズ量率はフラックス(4.221)
とcosθとの積に等しい。ここで,θは試料法線方向に対するビー
ムの入射角(4.17)である。
areic dose rate
4.180 受面ドーズ量,
Drec
dNrecをdAで除した値をいい,次の式によって求められる。ここに,dNrec
は,表面積dAで固体内部に侵入するエネルギーをもった特定の種類の
粒子の数である。
Drec=dNrec/dA
received areic dose
4.181 残留面ドーズ量,
Dret
dNretをdAで除した値をいい,次の式によって求められる。ここに,dNret
は,表面積dAで固体内部に侵入し,固体内でとどまり,そこに残留す
るエネルギーをもった特定な種類の粒子の数。
Dret=dNret/dA
注記1 固体内でとどまったがそこに残留しない粒子は,熱的に蒸発又
は固体がスパッタ浸食されることによって再放出される粒子
と考えられる。
注記2 残留面ドーズ量は,注入面ドーズ量(4.176)の一部である。
retained areic dose
4.182 スパッタ面ドー
ズ量
注入面ドーズ量(4.176)のうち,スパッタリング(4.441)によって試
料から失われる面ドーズ量(4.175)。
注記 スパッタ面ドーズ量は,注入面ドーズ量の一部である。
sputtered areic
dose
4.183 デュアルビーム
深さ方向測定
〈SIMS〉二つのイオン銃を使用したスパッタ深さ方向分布(4.440)測
定。
注記1 表面粗さの増大を低減するために,二つの同種のイオン銃は,
試料の正反対の方向で使うことができる。
注記2 飛行時間(4.473)形質量分析計では,一つ目のビームはSIMS
(3.17)分析で使われ,もう一方のビームは,一つ目がオフ時
の間に使われる。質量分析は,サイクルごとに完了している。
2本目の銃は,深さ方向分布(4.350)を得るために,試料をス
パッタ除去するイオンとして使われる。この組合せによって,
実用的なスパッタリング率(4.444)が得られて,SIMS分析条
件の最適化と切り離して,深さ方向測定条件を最適化すること
ができる。
dual-beam profiling
33
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.184 ダイナミックエ
ミッタンスマ
ッチング法
試料表面(4.458)上のラスター(4.364)走査の全てのポイントにおい
て,一次ビーム(4.77)の衝突領域を分光器の軸とそろえるための電子
又はイオン光学的方法。
dynamic emittance
matching
4.185 効率
〈SIMS〉一次イオン(4.348)当たりのイオン種(4.268)の測定収量と
消失断面積(4.125)との商。
注記 イオン化効率(4.273)参照。
efficiency
4.186 弾性ピーク,
擬似弾性ピーク
電子分光器(4.190)によって検出された擬似弾性散乱電子に起因する
電子エネルギースペクトル中のピーク。
注記1 弾性散乱電子分光法(3.4),EPES,非弾性散乱(4.244),リコ
イル効果(4.366)及び反射電子エネルギー損失分光法(REELS)
(3.16)参照。
注記2 原子によって散乱される全ての電子は,対象物の重心系におい
て弾性散乱(4.80)することができるが,一般には1 eV以下の
エネルギー損失(4.196)が実験室系において観察される。これ
らの損失は,一般に一次電子ビーム中の電子のエネルギーの測
定される広がり幅よりもかなり小さい。歴史的には,そしてよ
り一般的には,この散乱が“弾性”と呼ばれている。しかし,
散乱で発生するエネルギーの小さな変化が重要である場合に
は擬似弾性という用語が現在ではよく使用されている。
注記3 擬似弾性ピークのエネルギー及びその広がりは,散乱原子のリ
コイル,一次(入射)電子のエネルギーの広がり,検出器の配
置,及び電子分光器の応答関数の影響を受けている。弾性ピー
クの強度は,入射電子のビームエネルギー(4.75)と検出器の
特定の配置(これら二つの要因で表面励起確率が変化する。)
とにおける微分弾性散乱断面積(4.127)及び全断面積(4.123)
に依存する。
quasi-elastic peak
elastic peak
4.187 電子エネルギー
分析器
電子数又はその数に比例した信号強度(4.252)を,電子の運動エネル
ギー(4.278)の関数として測定する装置。
注記 電子分光器(4.190)参照。
electron energy
analyser
4.188 電子フラッド法
帯電電位(4.103)を変化させたり,安定化させたりするために行う,
試料への低エネルギー電子の照射。
electron flooding
4.189 電子減速法
〈AES,XPS〉電子エネルギー分析器(4.187)の前段又は内部で,放出
電子のエネルギーを減速することによって運動エネルギー(4.278)分
布を測定する方法(参考文献[1]参照)。
electron
retardation
4.190 電子分光器
電子エネルギー分析器(4.187)を,基本主要部分とする装置。
注記 電子分光器という用語は,電子エネルギー分析器の同義語とし
て,又は電子エネルギー分析器及び附属する電子光学要素からな
るより複雑な装置を記載するのに使用する。この用語は,エネル
ギー分析器,電子光学要素,電子検出器,励起源,真空ポンプ,
電気制御機器及びデータ処理システムから構成される完全動作
する装置全体を記載するのに使用される場合もある。通常,どの
意味で使用されているかは,前後の文脈から明らかとなる。
electron
spectrometer
4.191 発光収率
〈GDOES〉ある特定波長における発光信号に関して,あらかじめバッ
クグラウンドを減じた信号強度(4.252)から時間積分して得られる積
分強度を,その時間内にスパッタされた試料原子の総質量で除した値。
emission yield
4.192 エネルギーアク
セプタンスウ
インドウ
検出信号として取り出される分光器によって受容されたエネルギーの
範囲。
energy acceptance
window
4.193 エネルギー端
〈EIA,RBS〉元素又は同位体元素が,試料の表面(4.458)に存在する
としたときの後方散乱エネルギー(4.60)値。
energy edge
34
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.194 エネルギー固有
値
原子の基底状態の電子配置において,ディラック−フォック法を使用し
た一電子系シュレディンガー方程式又はディラック方程式を解くこと
によって得られる原子,分子,イオン又は固体中の束縛電子のエネルギ
ー準位の値。
注記1 固有値は,原子,分子,イオン又は固体中の電子に対するシュ
レディンガー方程式の特殊な場合の積分方程式の解である。
注記2 凍結軌道近似(4.224)では,正孔状態(4.238)の束縛エネル
ギー(4.82)は,対応する基底状態の一電子近似のエネルギー
固有値の符号を変えた値で与えられる。
energy eigenvalue
4.195 衝撃エネルギー
試料の表面(4.458)で衝突する瞬間の粒子の運動エネルギー(4.278)。
注記1 ビームエネルギー(4.75)及び入射粒子エネルギー(4.241)参
照。
注記2 SIMS(3.17)の一次イオンビームに対する衝撃エネルギーは,
イオン源と試料表面の電位差とにイオンの電荷数を乗じるこ
とによって与えられる。SIMS装置によっては,ビームエネル
ギーが,接地電位に対するイオン源の電位で与えられている
が,試料電位は接地電位である必要はない。衝撃エネルギーは,
試料電位を考慮しなければならない。
注記3 衝撃という修飾語の使用は,表面に衝突する粒子のエネルギー
であることを示している。
energy, impact
4.196 エネルギー損失
試料との相互作用によって散逸された粒子のエネルギー。
注記 特性電子エネルギー損失(4.95)及びプラズモン(4.339)参照。
energy loss
4.197 電子エネルギー
損失スペクト
ル
見かけ上,単色の電子源から得られる一次電子が試料との非弾性相互作
用を受けた後に試料から放出されたときの電子のエネルギースペクト
ル。特定の非弾性損失過程によって生じるピークを伴う。
注記1 特性電子エネルギー損失(4.95)及びプラズモン(4.339)参照。
注記2 AES(3.1)又はXPS(3.23)ピークとほぼ同じエネルギーの入
射電子線を使用して得られたスペクトルから,そのピークに対
応するエネルギー損失スペクトルを近似できる。
注記3 入射電子線によって測定された電子エネルギー損失スペクト
ルは,ビームエネルギー(4.75),電子線の入射角(4.17),放
出角(4.16)及び試料の電子的諸特性に依存する。
energy loss
spectrum,
electron
4.198 入射ビームエネ
ルギー
衝撃エネルギー(4.195)と同義。
energy of incident
beam
(deprecated)
4.199 チャンネル当た
りのエネルギ
ー
スペクトルの隣接チャンネル間のエネルギー差。
energy per channel
4.200 表面近似エネル
ギー
〈EIA,RBS〉固体中を移動するイオンのエネルギーに関する計算を単
純化するため,適正に平均化したエネルギーの代わりに使う表面
(4.458)におけるイオンのエネルギー(参考文献[1]参照)。
注記 この近似は,散乱断面積又は阻止断面積(4.134)を計算するとき
のエネルギーを決定するために使用される。
energy, surface
approximation
35
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.201 増感因子,
Kn,1
〈SIMS,スパッタリング〉n個の類似した原子による一次イオン(4.348)
クラスターを使用したときのイオン又は中性粒子のスパッタリング収
率(4.445)と,一次イオンクラスター中の一原子を一次イオン源に使
用したときのイオン又は中性粒子のスパッタリング収率をn倍した値
の比。どちらの場合も,原子当たりの一次イオンエネルギーは等しい。
注記 SIMS(3.17)では,増感因子が1よりも大きいことは,一般的に
はクラスター源による収率が線形衝突カスケード(4.283)から予
測される収率よりも大きいことを示す。
enhancement
factor
4.202 浸食率
〈表面〉粒子又は光子の照射によって生じる表面(4.458)位置の変化
量を,照射時間で除した値。
注記1 スパッタリング率(4.444)参照。
注記2 浸食率は,分析後のクレータを表面形状測定することで推定さ
れる。この場合,変質層(4.6)又は分析後の酸化の影響を考慮
する必要がある。
注記3 スパッタリング(4.441)によって浸食が生じる場合は,スパッ
タリング粒子が保持されるために,初期には浸食率がスパッタ
リング率より小さい場合がある。
注記4 浸食率は,浸食速度として測定しても差し支えない。
erosion rate
4.203 平均脱出深さ
特定の粒子又はふく射線が表面(4.458)から脱出するときに,次の式
で定義された表面から垂直方向に測った平均の深さ。
∫
∫
∞
∞
0
0
)
,
(
)
,
(
dz
θ
z
dz
θ
z
z
ϕ
ϕ
ここに,ϕ(z,θ)は放出深さ方向分布関数(4.161)であり,表面からの
深さzと表面垂直方向から測った放出角(4.16)θの関数(参考文献[1]
参照)。
mean escape depth
4.204 電子衝突励起
〈GDS〉電子との衝突によって生じる原子,分子又はイオンの電子励起。
注記1 例えば,M+e− → M*+e−の反応式で,M*は励起状態(4.205)
電子配置にある遷移金属を表す。
注記2 表面化学分析のために使用されるグロー放電(4.228)では,電
子衝突が電子軌道遷移を引き起こす励起の主要機構であると
考えられている。それゆえ,グロー放電発光分光分析法(3.9)
で最も重要な物理的メカニズムである。
electron impact
excitation
4.205 励起状態
基底状態よりもエネルギーが高い系の状態。
注記 この用語は一般に,分子の電子励起状態の一つを表すために使用
されるが,電子基底状態における振動及び回転の励起状態を表す
場合にも使用される。
excited state
4.206 引出しバイアス
〈SIMS〉パルス引き出しモードにおいてイオンパルス間に起きる引出
し電場(4.207)を決めるための電極間の電圧。
注記1 この用語は,飛行時間形SIMS(3.17)装置で使用される。
注記2 引出しバイアスはゼロに設定することはできるが,ある特定の
値を設定することで帯電中和(4.98)のための低エネルギー電
子をそらす,又は深さ方向分布測定(4.163)用のデュアルビー
ムシステムにおいてスパッタイオン銃によって生成する二次
イオン(4.406)をそらすことで,それらが質量分析計の中に入
ってバックグラウンドのカウント(4.120)が生じることを防ぐ
ことができる。
extraction bias
4.207 引出し電場
〈SIMS〉試料からのイオン生成中に制御する試料上の電場。
注記 引出し電場はパルスでも連続でもよく,装置のタイプに依存す
る。
extraction field
36
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.208 引出し電圧
〈SIMS〉試料の上の電場を決定し,生成イオンの質量分析計への導入
を促進するために使われる試料に対する電極の電圧。
注記1 パルス引出しモードでは,引出し電圧は,少なくとも最も重い
イオンが引き出し電極を通過するのに必要な時間は一次イオ
ンによって試料から発生したイオンを引き出すのに不可欠な
高い値でパルス化されており,そのあと次のパルスまでは引出
しバイアス(4.206)の値に落とされる。
注記2 この電圧は,試料と引出し電極との距離とともに,引出し電場
(4.207)を決定する。
extractor voltage
4.209 高速原子衝撃−
二次イオン質
量分析
〈SIMS〉SIMS(3.17)で一次イオンビームを,高速原子ビームに置き
換えたもの。
FAB-SIMS
4.210 ファラデーカッ
プ
検出器からの荷電粒子の放出が最小となるように設計したカップ形の
形状をもつ電極で構成された,入射する荷電粒子ビームの電流を測定す
るための検出器。
注記 ファラデーカップ外部からの荷電粒子の入射だけ可能であって,
内部から外部へのいかなる荷電粒子の放出も起きない場合,ファ
ラデーカップはブラックホールと同様の性質をもつ。このブラッ
クホールとしての機能並びに電子及び二次イオン(4.406)に対す
るフィルター機能を組み合わせることで,ファラデーカップはイ
オンビームに対する検出器として理想的となる(すなわち,ファ
ラデーカップのビーム入射口が入射ビームだけを通し,ファラデ
ーカップ内外で発生する全ての電子及び二次イオンを通さない
場合)。
Faraday cup
4.211 フェルミエネル
ギー,
フェルミ準位
〈伝導体〉絶対零度における価電子帯電子の最大エネルギー値。
注記1 真空準位(4.483)参照。
注記2 絶縁体及び半導体においては,フェルミエネルギーは通常,価
電子帯と伝導帯との間にある。
Fermi energy,
Fermi level
4.212 フェルミ準位基
準
〈XPS,UPS〉XPS(3.23)又はUPS(3.22)のスペクトルの解析によ
って,フェルミ準位(4.211)に対応した運動エネルギー(4.278)を束
縛エネルギー(4.82)のゼロ点として,特定の試料に対する束縛エネル
ギー軸を決めること(参考文献[1]参照)。
注記 真空準位基準(4.484)参照。
Fermi level
referencing
4.213 集束イオンビー
ムシステム,
FIB
サブミクロンの精度で,微小領域を加工するために使用されるイオンビ
ーム(4.259)の照射システム。
注記1 一般的に,FIBはLMISを利用して,直径7 nm〜300 nmにまで
細く集束したイオンビームを形成することができ,それは短時
間でAES(3.1),SIMS(3.17)又はTEMにおける研究のため
の微細試料を加工することができるほど十分なフラックス
(4.221)4 pA〜20 nAの電流をもっている。それらは,SPMの
探針又は最小半径2 nmとなるAFMの探針を作製する場合にも
使用される。
注記2 FIB加工された表面(4.458)は,除去する必要がある程イオン
によるダメージを受けている場合がある。
focused ion beam
system,
FIB
4.214 電界誘起移動
絶縁物中で,イオン又は電子の衝撃によって生じる内部電界によって,
試料を構成する原子が移動する現象。
field-induced
migration
4.215 終状態
〈AES,EPMA,XPS〉オージェ,X線又は光電子の放出過程後に結果
として生じる原子の状態。
final state
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.216 浮動電位
〈GDS〉プラズマ(4.337)中に挿入された絶縁基板に発生する電位。
注記 絶縁基板は,装置内の他の部分に電荷を運ぶことはできない。こ
のため,試料の表面(4.458)に送り込まれる電子と正イオンとの
フラックス(4.221)は等しくなければならない。電子は,正イオ
ンよりもはるかに移動しやすいため,通常は浮動電位がプラズマ
電位(4.338)よりも数ボルト負側に偏った場合に,電子と正イオ
ンとの流量が均衡する状態となる。
floating potential
4.217 フルエンス,
F
〈平行な粒子ビームに対して〉dNをdAで除した値をいい,次の式によ
って求められる。ここに,dNは,ビームの方向に垂直な面積dAにおけ
る特定な種類の入射粒子の数。流束量ともいう。
F=dN/dA
注記1 走査される平行ビームに対しては,フルエンスは実験室座標系
又は走査ビームの移動座標系で規定することができる。後者で
は一般的に高い値になる。このような状況でフルエンスを活用
するには,使用される座標系の明確な説明が必要となる。
注記2 フルエンスという用語は,面ドーズ量(4.175)という意味で使
用されている場合がある。これは正しい解釈ではなく,混乱を
招いている。面ドーズ量の定義の注記2参照。
注記3 平行ビームに関しては,フルエンス率とフラックス(4.221)密
度とは等価な量である。
fluence
4.218 フルエンス,
F
〈あらゆる方向に動いている粒子に対して〉dNをdAで除した値。ここ
で,dNは,断面積dAの球に入射する特定な種類の粒子の数。
fluence
4.219 蛍光
〈AES,TXRF,XPS〉入射線によって形成された内殻の空孔より高い
束縛エネルギー(4.82)状態にある充満した殻の電子が遷移するときに
発生するX線。
fluorescence
4.220 蛍光収率
〈AES,TXRF,XPS〉特定の内殻に空孔をもつ原子が蛍光(4.219)X
線放射によって緩和する確率。
fluorescence yield
4.221 フラックス,
Φ
〈粒子ビームに対して〉dNをdtで除した値をいい,次の式によって求
められる。ここに,dNは,時間dtの間に通過する特定な種類の粒子の
数。
Φ=dN/dt
注記1 平行ビームに関しては,フルエンス(4.217)率とフラックス密
度とは等価な量である。
注記2 フラックスは,流束ともいう。
flux
4.222 フラグメントイ
オン
イオン化によるフラグメンテーション(4.223)で生じる電荷をもった
解離生成物(参考文献[3]参照)。
注記1 ドーターイオン(4.144)及び準安定イオン(4.300)参照。
注記2 フラグメントイオンが解離して,より低質量の電荷を帯びた分
子又は原子からなる部分を更に形成することもある。
fragment ion
4.223 フラグメンテー
ション
総電荷は保存したまま,より低質量の一つ以上のイオン又は中性種の形
成をもたらす分子又はイオンの破砕。断片化ともいう。
fragmentation
4.224 凍結軌道近似
イオン化しても残った原子又は分子における一電子波動関数が変化し
ないという仮定に基づく近似。
注記 凍結軌道近似においては,電子の束縛エネルギー(4.82)はその
エネルギー固有値(4.194)の負の値として与えられる。
frozen-orbital
approximation
4.225 デジタルゲート
測定領域内の任意の部分の累積データを抽出,合算して深さ方向分布測
定(4.163)のデータとするために,画像内の任意の画素からデータを
取り出すことが可能なシステム。
digital gate
38
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.226 電気的ゲート
ビーム走査電源からの走査信号と同期して作動又は作動停止するカウ
ンタ又は検出器をもつシステム。したがって,測定領域内の選択した部
分に一次ビーム(4.77)が入射するときだけカウント(4.120)が積算さ
れる。
electronic gate
4.227 ゲート領域
信号が得られるより大きな領域内において,信号を得るために指定され
た領域。
注記 通常,指定領域はクレータの中心部に,光学絞り(4.319),電気
的ゲート(4.226)又はデジタルゲート(4.225)によって設定さ
れる。
gated area
4.228 グロー放電
発光を伴い,低電流密度(約0.01 A/m2〜1 000 A/m2)及び放電電圧が気
体のイオン化電位以上,スパーク電位以下であることを特徴とする気体
中に電流が流れる結果として生じる現象。
注記1 グロー放電を利用する表面分析装置では,正イオン又は運動エ
ネルギーをもつ中性の化学種(4.106)の表面(4.458)衝撃に
よって,試料物質が気体放電の中に入る。その後,導入された
試料原子は放電の中の衝突によって,励起又は電離を受ける。
注記2 分析用のグロー放電装置では通常アルゴンガスを使用して,10
Pa〜2 000 Paの圧力範囲で動作させる。
glow discharge
4.229 異常グロー放電
〈GDS〉放電電圧の増加に伴って放電電流が増加する電流及び電圧領域
で動作するグロー放電(4.228)。
注記1 正常グロー放電(4.231)参照。
注記2 通常,表面化学分析に使用するグロー放電装置は,正常グロー
放電よりも異常グロー放電で動作させている。これは,異常グ
ロー放電ではプラズマ(4.337)にさらされた試料表面(4.458)
の全面がスパッタリング(4.441)され,それに伴い信号強度
(4.252)が高くなるためである。
abnormal glow
discharge
4.230 増感形グロー放
電
〈GDS〉発光強度を増強し,分析感度を高めることを目的として,通常
の励起手段に加えて付加的に電気エネルギーをプラズマ(4.337)に印
加するグロー放電(4.228)。
注記 グロー放電を増強する方法としては,フィラメント若しくは他の
電子源を使用した新たな電子流のプラズマへの導入,又はマイク
ロ波若しくは高周波による電場(磁場)を印加する方法が含まれ
る(高周波電力だけで試料原子の励起を行う,通常の高周波グロ
ー放電と混同してはならない。)。
boosted glow
discharge
4.231 正常グロー放電
放電電圧の増加が非常に小さい又は放電電圧が検出されない程度の僅
かな変化量で,放電電流の増大が起こるような,電流及び電圧領域にお
いて動作するグロー放電(4.228)。
注記1 異常グロー放電(4.229)参照。
注記2 表面化学分析に使用するグロー放電装置は,通常,正常グロー
放電の領域では測定に使用しない。これは,プラズマ(4.337)
にさらされた試料表面(4.458)の一部がスパッタされず,信号
強度(4.252)が許容できないほど弱くなる可能性があるためで
ある。このグロー放電装置は,通常,異常グロー放電の領域で
使用される。
normal glow
discharge
39
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.232 パルスグロー放
電
〈GDS〉分析性能を向上させるため,一つ以上の放電動作パラメータを,
周期的に変動させるグロー放電(4.228)。
注記1 最も一般的なパルスグロー放電には,く(矩)形波又はこれに
類似した関数波形を使用して,プラズマ(4.337)を維持する電
力変調(4.301)が用いられる。しかし,他の波形のパルスグロ
ー放電も可能である。
注記2 パルス直流又は高周波パルスグロー放電の両方が考案されて
いる。
pulsed glow
discharge
4.233 ジェット支援グ
ロー放電源,
ジェット増強グ
ロー放電源
〈GDS〉分析信号を増加させるため,試料の表面(4.458)に高速ジェ
ット流状のプラズマ支援ガスを導入する手段を組み込んだグロー放電
(4.228)装置。
注記1 グロー放電装置のこの形式は,グロー放電原子吸光光度法のた
めに主に使用されてきた。ジェット流は,試料の表面からスパ
ッタされた物質を,光吸収が測定される負グロー(4.314)の領
域へ搬送する効率を高めることによって,原子吸収測定の感度
を増大させる。
注記2 試料の表面に形成されるクレータの形状が通常平たんになら
ないため,ジェット増強形のグロー放電装置は,深さ方向分布
測定(4.163)にはほとんど使用されない。
jet-assisted glow
discharge
source,
jet-enhanced glow
discharge source
4.234 金装飾法
〈XPS〉絶縁体の上に不連続な島状に蒸着した極少量の金によって帯電
補正(4.99)を行う方法。
注記1 自然付着炭素エネルギー基準(4.4)及び内部炭素エネルギー基
準(4.257)参照。
注記2 金は蒸着するか,又は溶液中に浸せきしてコロイド状の金沈殿
物を形成することによって堆積する。
注記3 Au 4f7/2の束縛エネルギー(4.82)は,通常84.0 eVに指定され
る。しかし,金の束縛エネルギーの測定値は,導電性の基板に
蒸着した場合であっても,金の島の直径の平均値によって変化
する。
gold decoration
4.235 斜出射
粒子の散乱(又は放射)角が,試料表面(4.458)の法線から90°に近
い幾何学的配置。
注記 この配置は一般的に表面感度を増強し,深さ分解能(4.164)を向
上させる効果がある。
grazing exit,
glancing exit
4.236 斜入射
試料表面(4.458)の法線に対してほぼ90°の角度で粒子が入射する幾
何学的配置。
注記 この配置によって,表面感度が向上する[例 TXRF(3.21)]。
grazing incidence,
glancing incidence
4.237 正孔
原子,分子又は固体における電子空孔。
hole
4.238 正孔状態
正孔(4.237)が存在している状態にある原子,分子又は固体の電子配
置。
hole state
4.239 イメージ深さ方
向分布
深さの関数又はスパッタリング(4.441)によって削られる物質の量の
関数として表示される特定の元素又は分子種[放出された二次イオン
(4.406)又は二次電子によって示される。]の三次元空間表示(参考文
献[1]参照)。
image depth
profile
4.240 イオン1個当た
りの衝撃エネ
ルギー
衝撃時のビーム粒子(4.76)の運動エネルギー(4.278)。
注記 衝撃エネルギー(4.195)参照。
impact energy per
ion
40
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.241 入射粒子エネル
ギー
試料の表面(4.458)に入射する粒子の運動エネルギー(4.278)。
注記1 ビームエネルギー(4.75)及び衝撃エネルギー(4.195)参照。
注記2 入射エネルギーは,入射する原子クラスターの1原子ごとのエ
ネルギーとして示すこともできる。しかし,混乱を避けるため
に,その場合には“1原子当たり”という表現を付けることが
望ましい。
incident-particle
energy
4.242 電子の非弾性散
乱バックグラ
ウンド除去
〈AES,XPS〉測定されたスペクトルから非弾性散乱(4.244)バックグ
ラウンドを除去する処理。
注記1 非弾性散乱バックグラウンド(4.50),シャーリーバックグラウ
ンド(4.54)及びツガードバックグラウンド(4.57)参照。
注記2 AES(3.1)とXPS(3.23)とでは,考慮しているオージェ電子
(4.37)又は光電子のピークに付随しているバックグラウンド
として,ピークに近いエネルギーをもつ一次電子を使用して測
定した電子エネルギー損失スペクトル(4.197)を近似として使
用してきた。ツガードバックグラウンドも使用されている。正
確さは高くないが,より単純な非弾性バックグラウンド関数と
してシャーリーバックグラウンドがある。単純なバックグラウ
ンドとして直線のバックグラウンドも利用されるが,絶縁物の
XPS解析を除いて更に正確さが劣る。
inelastic electron
scattering
background
subtraction
4.243 電子の非弾性平
均自由行程
あるエネルギーをもった電子が二つの非弾性衝突間に移動する平均距
離。
注記 減衰長さ(4.34)参照。
electron inelastic
mean free path
4.244 非弾性散乱
運動している粒子と2次粒子又は粒子団との相互作用で,全体の運動エ
ネルギー(4.278)が保存されないもの。
注記1 運動エネルギーは,様々なメカニズム,例えば,内殻イオン化,
プラズモン(4.339)励起,フォノン励起,制動放射(4.86)な
どで固体に吸収される。通常,このような励起は,運動してい
る粒子の方向に僅かな変化を生じさせる。
注記2 粒子の衝突では,粒子全体の運動エネルギーが保存されるとい
う意味で弾性的であっても入射してきた粒子のエネルギーは
失われていることがあり得る。原子による電子の散乱では,失
われるエネルギーは非常に小さく,通常は無視される。これを
無視しない取扱いでは,この散乱は擬似(準)弾性という[弾
性ピーク(4.186)参照]。
inelastic scattering
4.245 情報領域
表面(4.458)上のある一定の領域で有用な情報がそこから得られる部
分。
注記1 情報領域は,検出された信号のある割合(例えば,95 %又は
99 %)が発生する最小の表面の領域として同定できる。
注記2 情報領域は,実測,計算又は推測によって求めた試料表面上の
位置の関数としての信号強度(4.252)から決定できる。
information area
4.246 情報深さ
有効な情報が得られる表面(4.458)から垂直方向に測った最大深さ。
注記1 情報深さは,表面分析法によって大きく異なる。それぞれの手
法における情報深さは,分析する材料,測定に使用する信号及
び測定装置の幾何学的配置に依存する。
注記2 情報深さは,検出された信号のうち,特定の割合(例えば95 %
又は99 %)の信号が発生した試料の厚さとして求めることがで
きる。
注記3 情報深さは,測定,計算,又は推定される放出深さ方向分布関
数(4.161)から決定できる。
information depth
41
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.247 情報半径
有効な情報が得られる表面(4.458)内の円形領域の最大半径。
注記1 この定義は,均質試料の表面分析で,一次ビーム(4.77)が試
料表面に垂直入射する場合,又は信号の放出角(4.16)が試料
表面の垂直方向のときにだけ意味がある。この場合,試料表面
上での位置の関数として与えられる信号強度(4.252)は,対称
な軸からの半径にだけ依存する。これらの条件が満たされない
場合は,情報半径ではなく情報領域(4.245)を使用する方がよ
り適切である。
注記2 情報半径は検出される信号のうち,特定の割合(例えば,95 %
又は99 %)の信号が発生した半径として求めることができる。
注記3 情報半径は,測定,計算,又は半径の関数で与えられる信号強
度の推定値から決定できる。
information radius
4.248 始状態
〈AES,EPMA〉オージェ遷移(4.46)又はX線放出が生じる前の原子
の内殻空孔の励起状態(4.205)。
initial state
4.249 始状態
〈XPS〉光電子放出が生じる前の原子の基底状態。
initial state
4.250 装置検出効率
測定可能量に対する測定される量の割合。
instrumental
detection
efficiency
4.251 ピーク強度
構成成分のスペクトルピークに対する信号強度(4.252)の大きさ。
注記1 強度は,通常,定量的な目的のために測定されるが,電子の直
接スペクトル(4.173)又は質量スペクトルに対して,ある定義
されたバックグラウンドを超えるピーク高さ又はピーク面積
(4.326)とすることができる。単位としては,カウント(4.120),
カウント・eV,カウント/秒,カウント・eV/秒,カウント/amu,
カウント/秒/amuなどがある。微分スペクトル(4.171)の場合,
強度はピークからピークまでの高さ又はピークからバックグ
ラウンドまでの高さとすることができる。各々の場合,強度の
大きさを定義し,その単位を表記しなければならない。
注記2 ピーク強度が,バックグラウンドを除去する前又は後で,測定
されるピークの文字どおりの強度値の意味となることは非常
にまれである。
peak intensity
4.252 信号強度
分光検出器で測定された信号の強さ又はある定義された信号処理の後
の強度。
注記1 信号強度は,信号の発生点と信号の検出点との間,更には検出
点と測定装置の表示部との間では大きく変化する。
注記2 信号強度は,カウント(4.120)毎チャンネル,カウント毎秒(毎
チャンネル),カウント・eV毎秒又はその他の単位で表記する
ことができる。AES(3.1)では,信号強度の微分を分光器の電
極のアナログ変調(4.301)又はスペクトルの数値微分を使用し
て取得してもよい。このため,信号の種類を定義する必要があ
る。
注記3 電子スペクトル又は質量スペクトル(4.295)において,エネル
ギー及び立体角,又は質量及び立体角について積分した測定ス
ペクトルは電流に等しい。分光器が校正済みであれば,強度の
単位は電流・eV−1・sr−1又は電流・amu−1・sr−1となる。スペクト
ルが一次ビーム(4.77)電流で規格化されている場合,
eV−1・sr−1又はamu−1・sr−1が適当な単位となる。さらにスペク
トルが放射立体角についても積分されている場合は,eV−1又は
amu−1が適当な単位となる。
signal intensity
4.253 界面
化学的,元素的又は物理的に異なる特性をもつ二相の境界。
interface
42
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.254 観測された界面
幅
〈AES,XPS,SIMS〉二つの異なるマトリックスの接合部(マトリック
スの厚さは,観測された界面幅の6倍より大きくなければならない)に
おいて,16 %〜84 %又は84 %〜16 %の信号強度(4.252)の変化が測定
される距離。
注記 観察された界面幅は,信号強度の変化量と併せて記載する。
observed interface
width
4.255 界面領域
二相間に存在し,いずれの相とも化学的,元素的又は物理的に異なる特
性をもつ領域。
interfacial region
4.256 妨害信号
〈質量分析法,光学的スペクトル法,TXRF〉対象外の化学種(4.106)
が原因で,注目している質量,エネルギー又は波長で測定される信号。
注記 一般的に実験室準位では,“妨害”という用語は,電気ノイズ,
ラインのピックアップノイズ,その他検出したい信号に対して好
ましくない効果を及ぼすものなど,より広義に使用される場合が
ある。
interference signal
4.257 内部炭素エネル
ギー基準
〈XPS〉実験的に決定した,試料に含まれる特定の炭素化合物のC 1s
束縛エネルギー(4.82)値とその炭素化合物の標準的な束縛エネルギー
値とを比較することによって,試料の帯電電位(4.103)を決定する方
法。
注記1 自然付着炭素エネルギー基準(4.4)及びフェルミ準位基準
(4.212)参照。
注記2 試料内の炭化水素基がこの目的に使用される。
internal carbon
referencing
4.258 内部散乱
ある粒子が分光器の内側の表面(4.458)に衝突することで,散乱粒子
又は二次粒子がスペクトル中に望ましくない信号として検出されるよ
うな過程。
internal scattering
4.259 イオンビーム
電荷をもった原子又は分子の指向性のあるフラックス(4.221)(参考文
献[1]参照)。
ion beam
4.260 イオンビーム誘
起物質輸送
イオン衝撃で生じる試料中の原子の移動。
ion beam induced
mass transport
4.261 イオン強度比
〈GDMS〉同位体存在比の補正を行ったマトリックスイオン強度で除し
た分析種イオンの強度。
ion beam ratio
4.262 イオン像
〈SIMS〉試料のある決まった領域から放出された特定の二次イオン
(4.406)の量を空間分布として二次元に表現したもの。
注記 マップ(4.289)及び元素マップ(4.291)参照。
ion image
4.263 イオン注入
試料中にイオンを注入すること(参考文献[1]参照)。
ion implantation
4.264 イオン寿命
原子の特定の殻に空孔をもつようなある特定の電子配置において,イオ
ンが存在し得る平均時間。
ion lifetime
4.265 イオン中和
〈ISS,SIMS〉物質の表面(4.458)又は気相の原子又は分子と相互作用
することで,イオンがその電荷を失う電荷交換(4.100)過程。
ion neutralization
4.266 イオン散乱分光
器
〈ISS〉主として単一エネルギーの一価で低エネルギーである一次イオ
ン(4.348)ビームを発生し,固体表面(4.458)から特定の角度に散乱
された一次イオン(4.348)のエネルギー分布を調べることができる装
置(参考文献[1]参照)。
注記 表面化学分析への応用では,入射イオンには,通常,0.1 keV〜10
keVの範囲のエネルギーをもつ希ガス原子が使用される。
ion-scattering
spectrometer
4.267 イオン散乱スペ
クトル
〈ISS〉試料から散乱されたイオンの強度を,入射イオンエネルギーに
対する散乱イオンエネルギー(4.394)の比の関数としてプロットした
スペクトル。
ion-scattering
spectrum
4.268 イオン種
イオンの種類及び電荷。
例 Ar+,O−,H2+
注記 同位体を使用する場合は,それを明示しなければならない。
ion species
43
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.269 フラクショナ
ル・イオン収
率
特定の粒子種について,試料からスパッタされた全粒子数に対するイオ
ン数の比。
注記 フラクショナル・スパッタリング収率(4.446)及びパーシャル・
スパッタリング収率(4.447)参照。
fractional ion yield
4.270 負イオン収率
入射一次粒子の総数に対する試料からスパッタされた負の二次イオン
(4.406)総数の比。
注記 フラクショナル・イオン収率(4.269),パーシャル・イオン収率
(4.491)及び全イオン収率(4.492)参照。
negative ion yield
4.271 正イオン収率
入射一次粒子の総数に対する試料からスパッタされた正の二次イオン
(4.406)総数の比。
注記 フラクショナル・イオン収率(4.269)及び全イオン収率(4.492)
参照。
positive ion yield
4.272 実効イオン収率
〈SIMS〉試料からスパッタされた特定の元素の総原子数に対する,検
出されたその元素のある同位体のイオン数の比。
useful ion yield
4.273 イオン化効率
イオン化過程で使われた電子,イオン又はフォトンの数に対する生成イ
オンの数の比(参考文献[3]参照)。
ionization
efficiency
4.274 電子衝撃イオン
化
〈GDS〉原子,分子又はイオンが電子と衝突して起こる電離(イオン化)。
注記1 例として,M+e− → M++2e−。ここで,M+は遷移金属の一価
イオンである。
注記2 電子衝突による電離は,衝突する粒子のもつ運動エネルギー
(4.278)が,電離する粒子のイオン化電位とその粒子が衝突前
にもっている内部エネルギーとの差より大きい場合にだけ可
能となる。
注記3 表面化学分析に使用されるグロー放電(4.228)源では,通常の
場合,電子衝突による電離がプラズマ(4.337)中で起こるイオ
ン化現象のかなりの部分に関与している。このため,グロー放
電質量分析法(3.8)においては非常に重視されるべき物理素過
程である。
electron impact
ionization
4.275 ペニング電離
〈GDS〉電子的に励起状態(4.205)にある原子との衝突によって生じ
るイオン化。
注記1 例えば,Arms+M → Ar+M+の反応である。ここでArmsは準安
定状態のアルゴン原子,Mは遷移金属の原子である。
注記2 ペニング電離は,励起状態にある原子の励起エネルギーと衝突
する粒子がもつ運動エネルギー(4.278)の総和が,電離する粒
子のイオン化電位とその粒子が衝突前にもっている内部エネ
ルギーとの差より大きい場合にだけ可能となる。
注記3 ペニング電離が起こる確率は,励起状態にあり,内部エネルギ
ーを供与する粒子の寿命に直接に関係する。そのため,ペニン
グ電離は,通常,準安定状態にある化学種(4.106)との衝突に
よって起こる。
注記4 表面化学分析に使用されるグロー放電(4.228)源では,ペニン
グ電離は,通常,重要なイオン化の素過程となる。これは放電
ガスとして最もよく使用されるアルゴン原子の準安定状態の
準位が,ほとんどの分析対象元素のイオン化電位よりも大きな
内部エネルギーをもつことによる。
Penning ionization
4.276 ジャンプ比
〈EPMA,TXRF〉吸収端前後における低エネルギー側に対する高エネ
ルギー側のX線吸収係数の比。
注記 X線吸収スペクトルは,光イオン化のしきい(閾)値近傍におい
ては複雑な形状をもつため,必ずしも明確な吸収端が観察される
わけではない。
jump ratio
44
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.277 動力学的因子
〈EIA,RBS,ISS〉実験室系での,照射粒子の衝突前のエネルギーに対
する弾性衝突後のエネルギー比。
注記 動力学的因子には高い頻度で記号Kが使われ,ISS及びRBS
(3.15)の測定では,KSi又はK28のようにターゲット原子を示す
添え字が付けられる。同位体を正しく識別できるので,添え字は
原子質量の方が望ましい。
kinematic factor
4.278 運動エネルギー
移動のエネルギー。
注記 運動による荷電粒子のエネルギーは,必ずしも一定ではなく,局
所電場によって変化する。全ての局所電極が接地電位であるなら
ば,粒子の運動エネルギーは,その局所における真空準位(4.483)
で変動する。この真空準位は,AES(3.1)とXPS(3.23)装置と
の異なった位置で1 eV以上変化し得る。したがって,測定され
た電子のエネルギーも同様に変化する。この変動は,運動エネル
ギーをフェルミ準位(4.211)を基準にした場合は取り除かれる。
XPSにおいては,習慣として,フェルミ準位を基準にするが,
AESにおいては,真空準位基準(4.484)及びフェルミ準位基準
(4.212)の両方が使われる。AESとXPSとが両方とも使える装
置では,フェルミ準位を基準にしている。AESでのエネルギーの
正確な測定のためには,フェルミ準位基準を用いるのが望まし
い。電子分光器(4.190)においては,フェルミ準位基準で校正さ
れたエネルギー値は,真空準位基準の値よりも一般には4.5 eV大
きい。AESにおいては,フェルミ準位基準のオージェ電子(4.37)
ピークエネルギーを真空準位基準エネルギー又はその逆に矛盾
なく変換できるように,標準真空準位(4.485)をフェルミ準位の
4.5 eV上方に仮定するのが便利である。
kinetic energy
4.279 ノックイン,
ノックオン,
リコイル注入
一次粒子との衝突の結果として生じる試料構成原子の試料のより内部
への移動。
注記1 アトミックミキシング(4.32),カスケードミキシング(4.87)
及び衝突カスケード(4.114)参照。
注記2 ノックイン過程は,構成原子の前方への移動(一次衝撃の方向)
だけに適用される。一方,カスケードミキシングは,前方に加
えて後方への原子の移動も含む。
knock-in,
knock-on,
recoil implantation
4.280 クープマンズエ
ネルギー
電子を無限遠まで離したとき,電子的緩和(4.379)を伴わないとした
仮定の下で計算された軌道電子のエネルギー(参考文献[1]参照)。
Koopmans energy
4.281 ラングミュア−
ブロジェット
膜,
LB膜
有機分子の一層以上の単層(4.307)からなる膜。
注記 この薄膜は,液体槽の表面(4.458)から固体基板上に転写され,
繰返し浸せきすることによって多くの層を堆積することができ
る。この過程で液体の表面張力を制御することによって,単層の
分子密度を制御することができる。
Langmuir-Blodgett
film,
LB film
4.282 ラインスキャン
分光器からの出力信号強度(4.252)若しくは他の検出器からの信号強
度又は利用可能なソフトウエアによって処理された強度情報の試料表
面(4.458)上のある線に沿ったプロット。
注記 ラインスキャンの方向は,通常,長方形のラスター(4.364)にお
けるx-線走査又はy-線走査が使用されるが,より高度なシステム
では,任意の方向の線走査を行ってもよい。
line scan
45
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.283 線形カスケード,
線形衝突カスケ
ード
エネルギーをもった一次粒子によって引き起こされる多数の原子の運
動がその物質の中に蓄積されたリコイルエネルギーの大きさに比例す
る希薄な衝突カスケード(4.114)。
注記1 スパイク(4.437)及び熱スパイク(4.469)参照。
注記2 表面分析によく使用されるようなエネルギーが20 keV以下の
単原子一次イオン(4.348)による固体のスパッタリング(4.441)
は,線形衝突カスケードで記載できると通常は仮定される。
linear cascade,
linear collision
cascade
4.284 ライン形状
固有の特徴をもつスペクトルの測定された形状。
lineshape
4.285 真性ライン形状,
自然ライン形状
〈AES,UPS,XPS〉装置上の影響を全て取り除いた後のスペクトルの
ライン形状(4.284)。
注記1 状況に応じて,目的のライン形状からバックグラウンドを取り
除くことができる場合がある。真性ライン形状を決定する操作
は複雑な場合があり,したがって,明確に記載されなければな
らない。
注記2 AES(3.1)では,非弾性散乱(4.244),二次電子(4.402)又は
後方散乱電子(4.58)によるバックグラウンドを除去できる場
合がある。非弾性散乱バックグラウンド(4.50)及びシッカフ
スバックグラウンド(4.55)参照。
注記3 XPS(3.23)では,試料中の他の光電子放出(4.335)過程及び
非弾性散乱過程によるバックグラウンドを除去できる場合が
ある。非弾性散乱バックグラウンド参照。
intrinsic lineshape,
natural lineshape
4.286 真性ライン幅,
自然ライン幅
〈AES,UPS,XPS〉バックグラウンド及び励起源による影響など,全
ての装置依存項を取り除いた後の特定の遷移に対するスペクトルの半
値全幅。
注記 測定ライン幅は,測定ライン形状(4.284)から求められるが,そ
の測定ライン形状は,真性ライン形状(4.285)に試料及び装置[例
えば,XPS(3.23)におけるX線源のライン幅,AES(3.1),XPS
両方における分光器のエネルギー分解能]からくる広がりの影響
を重ね合わせたものである。
intrinsic linewidth,
natural linewidth
4.287 真性ライン幅
〈装置〉分光器の分解能(4.386)参照。
intrinsic linewidth
4.288 液体金属イオン
銃,
LMIG
一次イオン(4.348)源として液体金属テイラーコーンを利用するイオ
ン銃。
注記 テイラーコーンは,非常に高い輝度のイオン源を形成する。これ
によって,5 keV〜30 keVのイオンビームエネルギー(4.75)の
範囲で,50 nm〜1 μmの範囲のビーム径(4.73)が得られる。最
小ビーム系は,一般に高いエネルギーのときに得られる。
liquid-metalion
gun
4.289 マップ,
画像
輝度,色又は第三次元の長さとして与えられた描画上の各点における情
報が,検出器からの出力信号又は利用可能なソフトウエアによって処理
された強度情報の試料の表面(4.458)における二次元又は三次元表示。
注記1 慣例的には,画像という用語は,主に光学的な情報の場合に通
常使用される。
注記2 マップは,通常,一次ビーム(4.77)のく(矩)形ラスター(4.364)
を使用するか,イメージング検出システムを使用することによ
って形成される。
注記3 マップの強度は,最大及び最小の信号強度(4.252)を,例えば,
それぞれ全白及び全黒又はカラースケールになるよう規格化
された方法で表示される。したがって,コントラストのスケー
ルを定義しなければならない。
map,
image (deprecated)
4.290 化学状態マップ
試料中の特定な化学状態にある元素の量に比例する信号を用いたマッ
プ(4.289)。
chemical map
46
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.291 元素マップ
試料に存在する元素の量に比例する信号を用いたマップ(4.289)。
elemental map
4.292 質量精度
測定された質量のその参照値からの系統的な偏差。
注記 実用上は,この質量精度は相対誤差(すなわち,誤差と真の質量
との比)又は絶対誤差(すなわち,特定の質量における誤差)で
表される。通常は相対誤差が用いられ,百万分率で表される。こ
の相対誤差は相対質量精度(4.293)である。
mass accuracy
4.293 相対質量精度
質量精度(4.292)を対応する精度の質量で除した値。
注記 実用上は,この相対質量精度は質量精度と同様に(4.292の注記
参照),百万分率で表される相対誤差又は絶対誤差(質量の正確
さ又は特定の質量における誤差)で表される。通常は,相対質量
精度が用いられる。
relative mass
accuracy
4.294 質量分析器
質量電荷比(4.296)の関数として粒子を分光して検出する装置。
mass analyser
4.295 質量スペクトル
測定された粒子信号の質量電荷比(4.296)の関数としてのプロット。
mass spectrum
4.296 質量電荷比
統一原子質量単位(4.480)(u)で表した粒子の質量と粒子の電荷数と
の比率の絶対値。
mass-to-charge
ratio
4.297 マトリックス効
果
化学的又は物理的環境の変化から生じた試料における分析対象となる
原子ごとの強度又はスペクトル情報の変化。
注記 環境変化の例:異なる試料形態[例えば,薄膜(4.471),クラス
ター,繊維組織,ナノ構造],非晶質又は結晶,マトリックスの
種類の変化,他の物理相又は化学種(4.106)に近接した状態。
matrix effects
4.298 マトリックス因
子
表面分析によって組成を決定するための定量式において,適切な感度係
数と測定強度との商に乗じる,マトリックスの組成に依存する因子
(5.5)。
注記1 平均マトリックス相対感度係数(4.416)及び純元素相対感度係
数(4.417)参照。
注記2 AES(3.1)のような手法においては,マトリックス因子は,表
面近傍の物質の組成又は試料中の分析体積(4.10)の組成から
決められる。
matrix factor
4.299 輸送平均自由行
程,
λtr
エネルギーをもつ粒子について,初期の運動方向の運動量が,弾性散乱
(4.80)だけによって初期値の1/eに減少するまでに移動する平均の距
離。
注記1 電子の非弾性平均自由行程(4.243)参照。
注記2 均質で等方的な固体において二体弾性散乱(4.80)だけが起こ
る場合,輸送平均自由行程は輸送断面積(4.136)σtrと次の式の
関係がある。
tr
tr
1
Nσ
λ=
ここに,N:単位体積当たりの散乱体の個数
transport mean free
path
4.300 準安定イオン
放出されてから検出される間に逐次フラグメント化するイオン。
注記1 準安定イオン起源バックグラウンド(4.52)参照。
注記2 一般に,準安定イオンは,1 μsec以下の寿命をもつ。
注記3 静電反射形飛行時間質量分析計内において,準安定イオンの崩
壊はドリフトエネルギー及びリフレクタ電圧(4.373)に依存し
て,一定質量においてピーク広がりの原因となる。適正なデザ
インによって,これらのバックグラウンド信号(4.56)は最小
化可能である。
metastable ion
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.301 変調
〈AES,微分スペクトル〉微分スペクトル(4.171)を発生させる目的
で分光器のパスエネルギー(4.325)又は試料に印加される周期的波形。
注記 変調の振幅は,ピーク対ピークの電圧よりもむしろ,分光器の適
切な幾何学的因子(5.5)を考慮したピーク対ピークをeV表示で
与えるべきである。振動数及び波形も与えるべきである。
modulation
4.302 分子フラグメン
ト
大きな分子構造の一部であり,構造情報をもつイオン又は中性粒子。
molecular fragment
4.303 分子イメージ
特定の分子の特徴を示すイオンからなる表面(4.458)のイメージ。
注記 スタティック限界(4.448)参照。
molecular image
4.304 分子イオン
分子構造のフラグメンテーション(4.223)を伴うことなく,1個又はそ
れ以上の電子が分子から除去される(正イオン)又は分子に付加される
(負イオン)ことによって形成されるイオン(参考文献[3]参照)。
注記1 脱プロトン化分子イオン(4.305)及びプロトン化分子イオン
(4.306)参照。
注記2 プロトン化及び脱プロトン分子イオンは,場合によって分子イ
オンよりも大きな強度をもつ。
molecular ion
4.305 脱プロトン化分
子イオン
プロトンを失うことで負イオンを形成している分子イオン(4.304)。
molecular ion,
deprotonated
4.306 プロトン化分子
イオン
プロトンを得ることで正イオンを形成している分子イオン(4.304)。
molecular ion,
protonated
4.307 単層
〈化学吸着,物理吸着,偏析〉一つの化学種(4.106)からなる1原子
層又は1分子層による基板の完全被覆。
注記 単層という用語は一般に,吸着又は偏析している全ての原子又は
分子の基本単位が表面(4.458)に接触していることを示している
点で,多層(4.310)という用語と異なる。
monolayer
4.308 単層容量
〈化学吸着〉吸着剤の構造及び吸着物質の化学的性質によって決定され
る,全ての吸着サイトを占めるのに必要な吸着物質の量(参考文献[7]
参照)。
monolayer capacity
4.309 単層容量
〈物理吸着〉最密充塡配列に原子又は分子が,完全な単層(4.307)で
表面(4.458)を覆うのに必要な吸着質の量(参考文献[7]参照)。
注記 最密充塡の型を記載する。
monolayer capacity
4.310 多層
化学的に区別される二つ以上の層で構成される構造。
注記1 デルタ層(4.158)参照。
注記2 この用語は,各層の厚さが極めて均一で,1 nm〜100 nmの範囲
にある固体試料に適用される。
multilayer
4.311 多層
〈化学吸着,物理吸着〉吸着又は偏析種からなる複数の原子層又は分子
層が,基板表面を覆ったもの。
注記 単層(4.307)参照。
multilayer
4.312 多重項分裂
〈AES〉オージェ過程(4.44)によって生成される原子空孔の相互作用
によって起こる二つ又はそれ以上の成分へのオージェ電子(4.37)ピー
クの分裂。
multiplet splitting
4.313 多重項分裂,
交換分裂
〈XPS〉光電子放出(4.335)によって生成された不対電子と原子中の他
の不対電子との相互作用によって起こる光電子ピークの分裂(参考文献
[1]参照)。
multiplet splitting,
exchange splitting
4.314 負グロー,
グロー領域
〈GDS〉グロー放電(4.228)の部位の中で,強い発光が放出され,表
面化学分析において試料原子からの発光信号の検出に使用される領域。
注記 カソード層(4.91),陽光柱(4.342)及びアノードグロー(4.28)
を参照。
negative glow,
glow region
(deprecated)
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.315 ノイズ
信号強度(4.252)の不確かさにつながる変動をもち,解析信号に重畳
された,時間に応じて変化するじょう乱。
注記1 正確なノイズ量は,変動の標準偏差によって求めることができ
る。半定量的なノイズ量としては,スペクトル中のピーク対ピ
ークノイズのような,視覚指標が有用な場合がある。
注記2 測定強度における変動は,統計的ノイズ(4.316),電気的干渉
など多くの原因によって発生し得る。
noise
4.316 統計的ノイズ
無作為に検出された一事象の統計だけに基づくスペクトル中のノイズ
(4.315)。
注記1 ポアソン統計を示す一粒子計数系の場合,各同一時間間隔内で
安定した大きな測定量の計数率Nの標準偏差は,Nの平方根に
等しい。
注記2 多チャンネル検出系では,出力スペクトルを生成するために必
要なデータ処理は,隣接するチャンネル間に統計的相関を生じ
させ,また各チャンネルには見かけ上ポアソン統計よりも小さ
なノイズを誘起することがある。
statistical noise
4.317 みかけの質量
最も近い整数にまるめた粒子の統一原子質量単位(4.480)で表した質
量。
nominal mass
4.318 オリゴマー分子
本質的にその構造は,実際的にも概念的にもより低い相対分子量の分子
に由来する数個の部分からなる中程度の相対分子量(中分子量)の分子
(参考文献[3]参照)。
注記1 一つか幾つかの部分が解離することによって顕著に性質が変
化する場合に中程度の相対分子量をもつ分子とみなす。
注記2 分子全体又はその一部が中程度の相対分子量をもち,実際的に
も概念的にも,本質的により低い相対分子量の分子に由来する
数個の部分からなる場合は,オリゴメトリック又はオリゴマー
を形容詞的に表現する用語を使用して表現できる。
oligomer molecule
4.319 光学絞り,
光学ゲート
信号検出視野を制限するための光学又は粒子分光器の中で使用される
光子又は粒子レンズと絞りの組合せからなるシステム。
optical aperture,
optical gate
(deprecated)
4.320 軌道エネルギー
〈XPS〉原子内緩和(4.378)を補正したクープマンズエネルギー(4.280)。 orbital energy
4.321 オーバーポテン
シャル,
U
〈AES〉原子の特定の内殻又は副殻の束縛エネルギー(4.82)に対する
1次電子のビームエネルギー(4.75)の比。
注記 オーバーポテンシャルの値は,一般的には2〜200の範囲である。
overpotential
4.322 親イオン
結果として,より小さなイオン又は中性粒子に分裂するイオン。
parent ion
4.323 部分強度
〈AES,EPES,REELS,XPS〉オージェ遷移(4.46)若しくは光電子遷
移又は表面(4.458)から後方散乱される一次電子(4.346)によって構
成される電子スペクトルに含まれる全ての電子のうち,ある種類の非弾
性相互作用をある回数生じた後に検出器に到達した電子の数。
注記1 ゼロ次の部分強度は,固体又は真空中で非弾性相互作用するこ
となく検出器に到達した電子由来のスペクトル中の目的ピー
クを構成する電子数である。この強度は,目的の光電子又はオ
ージェ電子(4.37)によるピーク又は弾性後方散乱電子(4.58)
ピークの面積に相当する。
注記2 固体中で電子は,バルク又は表面励起効果に起因する異なる型
の非弾性散乱(4.244)を受ける。部分強度の計算では,特定の
型の非弾性散乱を含めたか,又は除外したかについて注釈する
のがよい。
注記3 部分的強度は,無次元数である。
partial intensity
49
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.324 換算部分強度
〈AES,EPES,REELS,XPS〉ゼロ次の部分強度に対する部分強度(4.323)
の比。
注記 換算部分強度は,無次元数である。
partial intensity,
reduced
4.325 パスエネルギー
〈AES,ISS,XPS〉エネルギー分析器のエネルギー分散部分を通過す
る検出粒子の平均運動エネルギー(4.278)。
pass energy
4.326 ピーク面積
バックグラウンドを取り除いた後のスペクトルのピーク下の面積。
注記1 電子の非弾性散乱バックグラウンド除去(4.242)及び信号強度
(4.252)参照。
注記2 ピーク面積は,カウント(4.120),カウント/秒,カウント・eV,
カウント・eV/秒,カウント/amuなどで表記することができる。
peak area
4.327 ピークエネルギ
ー
〈AES,EELS,ISS,UPS,XPS〉直接スペクトル(4.173)の最大強度
又は微分スペクトル(4.171)の最小強度(すなわち,下方への最大の
振れ)に対応するエネルギー値。
注記1 エネルギー値は,一連の重なったピークを包括したピーク又は
ピーク合成(4.329)によって得られる成分ピークの位置として
与えられる場合がある。
注記2 AES(3.1)における微分スペクトルに関しては,変調(4.301)
又は微分振幅を与えなければならない。
注記3 AESにおける微分スペクトルのピークエネルギーは,直接スペ
クトルよりも運動エネルギー(4.278)が高い。
peak energy
4.328 ピークフィッテ
ィング
ピーク合成(4.329)によって生成されるスペクトルを測定スペクトル
に合わせる操作。
注記1 この目的のためのコンピュータプログラムにおいては,一般に
最小二乗法による最適化が用いられる。
注記2 適用したピーク形状及びバックグラウンド形状を明示しなけ
ればならない。計算に使用した制約条件についても全て明示し
なければならない。
peak fitting
4.329 ピーク合成,
曲線分解
モデル又は実験に基づくピーク形状のいずれかを使用して,ピークの
数,ピーク形状,ピーク幅(4.331),ピーク位置,ピーク強度及びバッ
クグラウンド形状並びに強度を,ピークフィッティング(4.328)で調
節し,合成スペクトルを作成する操作。
注記1 ピークフィッティング参照。
注記2 選択したピーク形状及びバックグラウンド形状を,明示しなけ
ればならない。
peak synthesis,
curve resolving
(deprecated)
4.330 ピーク対バック
グラウンド比,
信号対バックグ
ラウンド比
バックグラウンドより上にあるピークの最大高さとバックグラウンド
強度との比。
注記1 信号対バックグラウンド比は,より一般的にはGDS(3.10)に
使用される用語で,略語はSBRと表す。ピーク対バックグラ
ウンド比は,AES(3.1),XPS(3.23)などの電子分光法におい
て,より一般的に使用される用語である。
注記2 バックグラウンド強度の見積り方法を提示する必要がある。
AESの場合,バックグラウンド強度は,注目するピークのすぐ
上の運動エネルギー(4.278)の位置で決定される。
peak-to-background
ratio,
signal-to-
background
ratio
4.331 ピーク幅,
線幅
ピーク高さのある決められた割合におけるピークの幅。
注記1 真性ライン幅(4.287)参照。
注記2 使用されたバックグラウンドの除去方法は特定しなければな
らない。
注記3 ピーク幅の最も一般的な指標は,半値全幅(FWHM)である。
注記4 非対称のピークに対して,ピーク幅の便利な指標としてピーク
の片側ごとの半値半幅で表示する方法がある。
peak width,
line width
(deprecated)
50
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.332 光電効果
原子,分子及び固体中の束縛電子と光子との相互作用で,結果として1
個又は複数個の光電子を生成する現象。
photoelectric effect
4.333 サテライトX線
励起光電子ピ
ーク
アノード(4.27)物質のX線スペクトルに由来する非主要特性X線に
よって励起された光電子放出(4.335)によってスペクトル中に現れる
光電子ピーク(参考文献[1]参照)。
例 非主要なものとしてKα',Kα3,4,Kα5,6及びKβがある。
photoelectron
X-ray satellite
peaks
4.334 サテライトX線
励起光電子の
除去
スペクトルからサテライトX線励起光電子ピーク(4.333)を取り除く
こと(参考文献[1]参照)。
注記 単色化していないAl及びMgのX線では,通常取り除かれるサ
テライトはKα3,4及びKα5,6である。さらに,高度な除去法ではKα2,
Kα'及びKβサテライトも除去される。
photoelectron
X-ray satellite
subtraction
4.335 光電子放出
光電効果(4.332)によって起こる原子又は分子からの電子の放出(参
考文献[1]参照)。
photoemission
4.336 パイルアップ
〈EIA,RBS〉後方散乱スペクトル(4.62)において,信号が検出シス
テムによって分解できず,カウント(4.120)が誤ったチャンネルに記
録されるほど近接して起こる二つ以上の個別の事象から生じる計数。
注記 不感時間(4.146)参照。
pileup
4.337 プラズマ
〈GDS〉イオン,電子及び中性粒子からなる気体。
注記 気体は,グロー放電(4.228)においては一部分が電離している。
plasma
4.338 プラズマ電位,
空間電位
〈GDS〉接地電位のような適当な基準に対するプラズマ(4.337)の電
位。
注記 直流グロー放電(4.228)のプラズマ電位は,プラズマの部位で変
化する。高周波グロー放電のプラズマ電位は,プラズマの部位に
よって変わり,高周波波形の位相に従って時間変化もある。
plasma potential,
space potential
(deprecated)
4.339 プラズモン,
バルクプラズモ
ン,
体積プラズモン
固体中における価電子帯電子の集団振動励起。
注記1 特性電子エネルギー損失(4.95)参照。
注記2 プラズモン励起は,弾性散乱一次電子(4.346),光電子,オー
ジェ電子(4.37)及びイオン化エッジのようなスペクトル中の
他のピークに付随した特性エネルギー損失(4.196)ピークとし
てよく観測される。
注記3 プラズモンはある特定の材料では突出しているが,他ではそう
ではない。
注記4 2種類のプラズモンが通常観察され,表面(4.458)から遠く離
れた物質内部に由来するバルクプラズモンと物質表面に由来
する表面プラズモン(4.462)とがある。プラズモンという語が
限定詞なしに用いられた場合は,バルクプラズモンを意味す
る。時折,界面(4.253)に由来する界面プラズモンが観測され
ることがある。バルクプラズモンのエネルギーは材料の電子構
造に依存し,大まかには価電子密度の平方根に比例する。表面
プラズモンのエネルギーは,一般的にバルクプラズモンのエネ
ルギーの50 %〜90 %になる。
Plasmon,
bulk plasmon,
volume plasmon
4.340 多原子フラグメ
ント
三つ以上の原子からなるイオン又は中性粒子。
polyatomic
fragment
4.341 多原子イオン
電荷を帯びた多原子種。
注記 二量体及び三量体は,それぞれ二つ及び三つの原子からなる多原
子イオンである。
polyatomic ion
51
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.342 陽光柱
〈GDS〉グロー放電(4.228)においてファラデー暗部(4.143)とアノ
ード暗部(4.140)との間に存在する境界が不明瞭な発光領域。
注記1 カソード層(4.91),負グロー(4.314)及びアノードグロー(4.28)
参照。
注記2 表面化学分析のために使用されるグロー放電装置では,ガス圧
力と電極間距離とが小さいので,通常,陽光柱は見られない。
positive column
4.343 後段加速検出器
電圧,
ポストアクセラ
レーション検
出器電圧,
後段加速電圧,
ポストアクセラ
レーション電
圧
検出器に入射する電子又はイオンの衝撃エネルギー(4.195)を増加す
るために,検出器の前に印加する電圧。
注記 電圧は,装置のエレクトロニクス上の参照点が基準となるが,こ
こでは,例えば,5 kVの後段加速検出器電圧が5 keVの衝撃エネ
ルギーのようになる。一般的には,5 kV〜20 kVの後段加速検出
器電圧が使われる。
post-acceleration
detector voltage,
post-acceleration
voltage
4.344 予備放電時間
〈GDSバルク分析〉予備放電(4.345)を行うための時間。
注記1 予備放電は,グロー放電(4.228)を安定させるために行う。予
備放電を行う時間は,GDOES(3.9)では通常30秒間〜60秒
間であるが,GDMS(3.8)ではもっと長い。
注記2 予備放電の条件は,測定を行う条件と同じとするのが通常であ
るが,異なった条件で行うこともある。
preburn
presputtering
period
4.345 予備放電
〈GDSバルク分析〉スパッタリング(4.441)を安定状態にし,分析信
号を安定化させるために,測定を行う前に定常状態スパッタリング
(4.449)を可能にするために行う予備的に放電を行うプロセス。
注記 予備放電は,グロー放電(4.228)を安定させるために行う。
preburning
presputtering
4.346 一次電子
電子源から引き出されて,試料に向かう電子。
注記 二次電子(4.401)参照。
primary electron
4.347 一次電子
〈GDS〉カソード暗部(4.142)に局在する高い負電場によって加速さ
れているため,存在する電子群の中で最も大きな運動エネルギー
(4.278)分布をもつところの負グロー(4.314)へ突入する電子群。
注記1 二次電子(4.402)〈GDS〉参照。
注記2 この用語はAES(3.1),EPMA及びSEMで使用されているも
のと異なって定義されている。
primary electron
4.348 一次イオン
イオン源から引き出され,試料に向かうイオン。
注記 プローブイオン(4.349)及び二次イオン(4.406)参照。
primary ion
4.349 プローブイオン
イオン源で意図的に生成され,既知の入射角(4.17)及び既知のエネル
ギーで試料の表面(4.458)に向かうイオン種。
probe ion
4.350 深さ方向分布,
垂直方向分布
表面(4.458)から垂直方向に測定された化学組成,元素組成,信号強
度(4.252)又はソフトウエアを利用して加工された強度情報。
注記 深さ方向組成分布(4.115)参照。
depth profile,
vertical profile
4.351 横方向プロファ
イル
表面(4.458)内の特定方向に測定された化学組成,元素組成,信号強
度(4.252)又はソフトウエアを利用して加工された強度情報。
注記 ラインスキャン(4.282)参照。
lateral profile
4.352 投影飛程
〈EIA,RBS,SIMS〉エネルギーをもったイオン又は原子が,試料中で
静止する表面(4.458)からの距離を入射軸方向に投影した距離。
注記1 飛程ストラグリング(4.363)参照。
注記2 計算では,通常は同一種及び同一エネルギーの多数のイオン又
は原子に対する平均的な投影飛程を扱う。
projected range
4.353 プロトン付加イ
オン
正イオンを形成するためにプロトンが付加された親分子。
protonated ion
52
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.354 パルス率
〈SIMS〉1秒間当たりのイオンパルス周波数。
注記 繰返し周波数(4.383)参照。
pulse rate
4.355 パルス幅
〈SIMS〉ビームチョッパー(4.109)及び随意のビームバンチング(4.66)
によって生成されたイオンパルスの時間分布の半値全幅。
注記 パルス幅は,通常,H+イオンを使用して測定される。引出し電
場(4.207)が同じ場合,H+イオンの速度は他のイオンよりも大
きい。このため,H+パルスの時間幅は,引き出されたパルスの
幅に関する,より信頼性の高い値になる。
pulsewidth
4.356 遅延引き出し電
場
〈SIMS〉飛行時間(4.473)形質量分析計の作動に必要な時間はイオン
の引き出しに有効なパルス電位を,それ以外の時間は低い電位を与える
試料周囲の引出し電場(4.207)。
注記 飛行時間形SIMS(3.17)システムでは,引出し電場がオフの間
に電荷の帯電中和(4.98)をする絶縁体の測定若しくは引き出し
電場がオフの間に別のイオンビーム(4.259)を使用する深さ方向
分布測定(4.163)を行うのが通常である。
pulsed extraction
field
4.357 定量分析
検出された分析種の試料中における量を決めること。
注記1 分析種は,本質的に元素又は化合物である。
注記2 その量は,例えば,アトミック又は質量分率,原子又は質量の
比率,単位体積当たりのモル又は質量,などで適宜表記するこ
とができる。
注記3 不均質な試料材料では,解釈上ある特別なモデル構造を仮定す
る必要がある。モデルの詳細は明確に記載する必要がある。
quantitative
analysis
4.358 径方向切り出し
法
試料の表面(4.458)に存在する層の深さを,円筒によって作られる試
料の表面の位置に関連させることによって,元の試料の表面の下層に見
られる組成変化を露出するため,試料を円筒によって研磨する試料調製
法。
注記 斜め研磨(4.14)及びボールクレータ法(4.64)参照。
radial sectioning
4.359 照射促進拡散,
照射誘起拡散
粒子ビームによる損傷又は照射誘起欠陥によって,入射粒子の侵入深さ
をはるかに越えて固体中で起こる原子の移動(参考文献[1]参照)。
radiation-enhanced
diffusion,
radiation-induced
diffusion
4.360 ラジカル,
フリーラジカル
不対電子をもつ分子のような存在(不対電子をもつ分子化合物)。
注記1 •CH3,•SnH3又はCl•のようなものは,可能な場合は,スピン密
度の高い原子を示唆するようにドットで表される不対電子が
付加された化学式で表される。常磁性体金属イオンは,通常は
ラジカルとはみなされない。
注記2 ラジカルは,不対電子をもつコア原子の種類によって,炭素,
酸素,窒素,又は金属中心ラジカルと表現される。不対電子が
s軌道の特徴をもつ軌道か,ほぼ純粋にp軌道である軌道を占
める場合は,それぞれのラジカルは,σ-ラジカル,π-ラジカル
という。
注記3 “フリー”という形容詞は,近年では使われない。将来的には
フリーラジカルという用語は,ラジカル対の部分を形成しない
ラジカルに対して使われる可能性がある。
radical,
free radical
(deprecated)
53
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.361 ラジカルイオン
電荷をもつラジカル(4.360)。
注記 正に帯電するラジカルは,“ラジカルカチオン”(例えば,ベンゼ
ンラジカルカチオンC6H6•+)という。負に帯電するラジカルは
“ラジカルアニオン”(例えば,ベンゼンラジカルアニオンC6H6
又はベンゾフェノンアニオンPh2C-O•−)という。一般には,常
にではないが,奇数の電子と電荷とは同じ原子に付随する。不対
スピンと電荷の位置とが特定の原子と結び付かない限り,上付ド
ット及び電荷の名称は,“ラジカルイオン”(例えば,C3H6•+)
という名称に示唆されるように•+又は•−の順に記載される。
radical ion
4.362 ランダムラスタ
ー
連続的にパルス照射されるイオンをフレーム内全域に照射するために
設定された走査座標が,ランダムに変化するように数値制御されたラス
ター(4.364)の配列。
注記1 同一の“ランダム”シーケンスの中で,走査座標を各フレーム
ごとに変えて設定してもよい。
注記2 従来法又はのこぎり(鋸)歯状のラスター方法に対して,ラン
ダムラスターは絶縁物試料を分析する際に局所領域に瞬間的
に蓄積される帯電量を小さくするために使用することができ
る。
random raster
4.363 飛程ストラグリ
ング
〈EIA,RBS,SIMS〉与えられたエネルギーをもったイオン又は原子の
投影飛程(4.352)の標準偏差。
注記 垂直ストラグリング(4.478)参照。
range straggling
4.364 ラスター
一次ビーム(4.77)の偏向によって生成する二次元パターン。
注記 通常は,正方形又は長方形のラスターが使用される。
raster
4.365 生データファイ
ル
装置から得られた情報だけを含み,事後のデータ処理を一切行っていな
いデータファイル。
注記 飛行時間形SIMSでは,このファイルは通常,イオンビームラス
ターアドレスのx,y座標,飛行時間及び信号強度(4.252)を含み,
二次イオンマップ,及びマップの一部若しくは全体からのスペク
トル,又はこれら両方を全体若しくは特定の時間領域のデータか
ら生成することに使われる。
raw-data file
4.366 リコイル効果
〈EPES〉電子の擬似弾性散乱による散乱原子の移動に起因する効果。
注記 原子のリコイルによる散乱電子ビームに対する擬似弾性ピーク
(4.186)のエネルギーシフト及びエネルギーの広がりは散乱原子
の質量,一次電子(4.346)のエネルギー及び散乱角(4.18)に依
存する。加えて,原子によるエネルギーの広がりは,試料温度に
依存する。多成分材料のEPES(3.4)における擬似弾性ピークは,
各成分からの寄与を含んでいる。リコイル効果は,低原子番号の
散乱原子を使用する高エネルギー分解能(4.384)で取られた電子
スペクトルに最も容易に見られる。水素は,リコイルシフトによ
って直接,検出することができる。
recoil effect
4.367 再結合,
イオン−電子再
結合
〈GDS〉正の価数をもつイオンに電子が付加し,その結果としてそのイ
オンの価数が1単位電荷分だけ負側へ移行すること。
注記 一つのイオンと一つの電子との衝突だけで完了し,第三の粒子の
放出がない,イオン−電子再結合プロセスでは,エネルギーと運
動量とは同時に保存することはできない。この理由で,他の電子
又は表面(4.458)のような第三の衝突の相手が関与するか,又は
光子の放出を伴う場合にだけ再結合は進行する。
recombination,
ion-electron
recombination
4.368 ラジエイティブ
再結合
〈GDS〉光子の放出を伴うイオン−電子再結合(4.367)。
radiative
recombination
4.369 再付着
スパッタされた試料原子が試料の表面(4.458)に戻り,付着すること。 redeposition
54
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.370 標準物質,
RM
測定装置の校正,測定方法の評価又は材料に値を付与するために使用さ
れる一つ以上の特性値が十分に均一で,適切に確定されている物質(参
考文献[8]参照)。
注記 表面特性に関する標準物質は,ウエハ又ははく(箔)の形となる
ことがある。これらの場合,材料の特性が表面(4.458)に垂直な
方向又は内部方向全体ではなく面内方向で均質なことが多い。そ
の例としては,a)ドーパントの水準を校正するためのシリコンウ
エハ,b)深さ方向分布測定(4.163)装置で深さ,厚さを校正する
ための基板上の薄い酸化物層などがある。
reference material
4.371 認証標準物質,
CRM
一つ以上の特性値が,度量衡学的に正確な操作で計測され,その値がト
レーサビリティが確立された手順によって保証され,各認証値にある表
記された信頼水準での不確かさが付いている認証書の付いた標準物質
(4.370)(参考文献[8]参照)。
注記1 認証標準物質は,通常バッチで作製される。その特性値は,そ
のバッチ全体を代表するサンプルについての測定によって,記
載された不確かさの限界内で決定される。
注記2 全ての認証標準物質は,ISO/IEC Guide 99 [9]に示される計測の
国際計量計測用語集に記載の“測定標準”の定義の枠内に入る。
注記3 幾つかの標準物質及び認証標準物質は,それらが確立された化
学構造に関連付けることができないため,又は他の理由のため
に,正確に定められた物理的化学的測定方法によって決定する
ことができない特性をもっている。そのような物質には,世界
保健機構(World Health Organization:WHO)によって国際単位
が付与されているワクチンのような,ある種の生物学的な物質
がある。
certified reference
material
4.372 参照方法
十分詳細に検討されており,一つ以上の特性値の測定に必要な条件及び
手順が明確に記載してある方法で,その意図された用途にふさわしい真
度及び精度をもつことが示されており,したがって,同じ目的の他の測
定方法の真度及び精度の評価に,特に,標準物質(4.370)のキャラク
タリゼーションに使用できる方法(参考文献[8]参照)。
reference method
4.373 リフレクタ電位
〈SIMS〉試料から放出されたリフレクタ電位相当のエネルギーのイオ
ンが,反射電極による反射又は透過の中間点に到達するように,ゼロボ
ルトを基準として静電反射(4.374)形質量分析計の静電反射器の電極
に印加された電圧。
reflector voltage
4.374 リフレクトロン
(静電反射)
〈SIMS〉特定のエネルギーのイオンに対して,エネルギー広がりに依
存した飛行時間(4.473)の広がりを縮小するために180°に近い角度で
イオンを反射させる飛行時間形質量分析計。
reflectron
4.375 相対装置スペク
トル応答関数,
RISR
〈AES,SIMS,XPS〉エネルギーの関数[AES(3.1),XPS(3.23)]若
しくは質量の関数[SIMS(3.17)]で表されるところの,基準となる装
置の応答関数に対する分光器の応答関数(4.433)の比又は幾つかの同
様の装置で得られた応答関数の平均に対する分光器応答関数の比。
注記 RISRは,ある装置で測定したスペクトルを,それに類似した励
起源及び機器配置をもつ別の装置で測定したスペクトルと関連
付ける場合に使用することができる。
relative instrument
spectral response
function,
RISR
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.376 分光器の相対分
解能
〈エネルギー,質量又は光〉ある与えられたエネルギー,質量又は波長
における分光器の分解能(4.386)の,そのエネルギー,質量又は波長
に対する比。
注記1 分光器の分解能力(4.388)参照。
注記2 分光器の相対分解能は,分光器の分解能力の逆数である。
注記3 電子分光器(4.190)の相対エネルギー分解能(4.384),質量分
析器の相対質量分解能,又は光学分光器の相対波長分解能を規
定すると便利である。
注記4 実際には,できるだけ狭い既知のライン幅の輝線をもつ光源を
使用して,分光器の相対分解能を導出することができる。
注記5 分光器の設計では,一般に,全スペクトルを通して一定の分解
能にするか,又は走査されるエネルギー,質量又は波長に比例
する分解能にするかの考えがとられている。前者の場合,分解
能という用語は実用的であるが,後者の場合には,相対分解能
又は分解能力という用語の方がより実用的である。
注記6 相対分解能は,百分率で表される。
relative resolution
of a spectrometer
4.377 相対スパッタリ
ング率
同一条件でスパッタされた試料のスパッタリング率(4.444)と参照試
料のスパッタリング率との比。
relative sputtering
rate
4.378 緩和
原子,分子又はイオンを高いポテンシャルエネルギーの状態から低いポ
テンシャルエネルギーの状態に移行する過程。
注記 電子的緩和(4.379)参照。
relaxation
4.379 電子的緩和
エネルギーの放出を伴う電子のエネルギー準位間の遷移によって生じ
る緩和(4.378)。
注記 エネルギーの放出は,光子又は他の粒子の放出を引き起こすこと
がある。
electronic
relaxation
4.380 緩和エネルギー
〈XPS〉系の終状態(4.215)のエネルギーを最小にするような,原子に
束縛された電子の移動に伴う原子内又は原子間での電子状態の再構成
に関連するエネルギー(参考文献[1]参照)。
relaxation energy
4.381 原子外緩和エネ
ルギー,
遮蔽エネルギー
近接した周囲の原子の電子間に働くクーロン引力によって固体中のイ
オン化した原子が被るエネルギー減少。
relaxation energy,
extra-atomic
screening energy
4.382 高分子繰返し単
位
多く繰り返される高分子の分子構造を示す最小構造。
polymer repeat unit
4.383 繰返し周波数
〈SIMS〉飛行時間(4.473)形質量分析器で質量スペクトル(4.295)を
蓄積するときに,一次イオンパルス,イオンの引き出し,質量分析及び
低速イオン除去の一連のサイクルを繰り返す速さ。
repetition rate
4.384 エネルギー分解
能
単一エネルギー粒子に対して測定されたエネルギー分布強度の半値全
幅(FWHM)。
energy resolution
56
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.385 横方向分解能
試料表面(4.458)上の面内又は結像光学系の軸に垂直な面内において,
組成の変化が明確に計測される距離。
注記1 平面の選択について明確にしなければならない。
注記2 実際には,横方向の分解能は,次のいずれかとして表現できる。
a) 試料上の非常に小さな放射点からの強度分布のFWHM
b) 区別しようとする特性と関係した信号とが十分にステッ
プ関数と規定できる分布をもつ表面を横切ってラインス
キャン(4.282)をする場合では,強度が12 %〜88 %の位
置間の距離。
これら二種類の値は,強度分布がガウス分布の場合に等
価となる。他の分布に関しては,他のパラメータを選択す
る方が適切である。ステップ関数については,ラインスキ
ャンにおいて強度が20 %〜80 %の位置間の距離,又は強度
が16 %〜84 %の位置間の距離が使用される。後者は,ガウ
ス分解能関数の2σを与える。
lateral resolution
4.386 分光器の分解能
〈エネルギー,質量又は光〉バックグラウンドを除去したスペクトルピ
ーク強度の半値全幅(FWHM)へ与える分光器の寄与。
注記1 分光器の相対分解能(4.376)及び分光器の分解能力(4.388)
参照。
注記2 電子分光器(4.190)のエネルギー分解能(4.384),質量分析器
の質量分解能又は光学分光器の波長分解能を規定すると便利
である。
注記3 実際には,できるだけ狭い既知のライン幅の輝線をもつ光源を
使用して,分光器分解能を導出することができる。
注記4 分光器の設計では,一般に,全スペクトルを通して一定の分解
能にするか,又は走査されるエネルギー,質量若しくは波長に
比例する分解能にするかの考えがとられている。前者の場合,
分解能という用語は実用的であるが,後者の場合には,相対分
解能又は分解能力という用語の方がより実用的である。
resolution of a
spectrometer,
spectromer
resolution
4.387 システム分解能
〈EIA,RBS〉単一エネルギーをもつ入射イオンビームに対する後方散
乱スペクトル(4.62)において測定されたエネルギー分解能(4.384)又
は深さ分解能(4.164)。
system resolution
4.388 分光器の分解能
力
〈エネルギー,質量又は光〉エネルギー,質量又は波長の,そのエネル
ギー,質量又は波長における分光器の分解能(4.386)に対する比。
注記1 分光器の相対分解能(4.376)参照。
注記2 分光器の分解能力は,分光器の分解能と逆数の関係にある。
注記3 電子分光器(4.190)のエネルギー分解能力,質量分析器の質量
分解能力又は光学分光器の波長分解能力を規定すると便利で
ある。
注記4 実際には,できるだけ狭い既知のライン幅の輝線をもつ光源を
使用して,分光器分解能力を導出することができる。
注記5 分光器の設計では,一般に,全スペクトルを通して一定の分解
能にするか,又は走査されるエネルギー,質量若しくは波長に
比例する分解能にするかの考えがとられている。前者の場合,
分解能という用語は実用的であるが,後者の場合には,相対分
解能又は分解能力という用語の方がより実用的である。
resolving power of
a spectrometer
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.389 共鳴反応
〈EIA〉エネルギー依存性のある核反応断面積(4.131)において狭いピ
ークをもつ核反応であり,その核反応断面積が前後に近接したエネルギ
ーにおける核反応断面積より圧倒的に大きいため,反応によって検出さ
れた全ての粒子が根本的にそのピークに起因する核反応(参考文献[1]
参照)。
resonance reaction
4.390 分析器から見え
る試料領域
分析器が,試料から分析に使用する信号又はその信号の特定の割合を収
集できる試料の表面(4.458)の二次元領域。
sample area viewed
by the analyser
4.391 試料バイアス
試料ホルダーの電位を基準とした試料全体又は一部に印加された電位。
注記 試料電圧(4.393)参照。
sample bias
4.392 試料帯電
粒子又は光子の照射によって,試料中又は試料の表面(4.458)の電位
が変化すること。
sample charging
4.393 試料電圧
接地電位に対する試料の電圧。
注記1 試料バイアス(4.391)参照。
注記2 試料電圧は,装置の機種によって,パルス電圧又は定電圧にす
ることができる。
注記3 絶縁物に対して効果的な帯電中和(4.98)機構では,試料電圧
は試料ホルダーと同電圧とみなせる。
sample voltage
4.394 散乱イオンエネ
ルギー
〈ISS〉衝突後の一次イオン(4.348)の運動エネルギー(4.278)。
注記 二体弾性散乱(4.80)後の一次イオン又はプローブイオン(4.349)
の運動エネルギーESは,次の式で与えられる。
ES=E0[M0/(M0+M1)]2{cosθ+[(M1M0)2−sin2θ]1/2}2
ここに, ES: 散乱されたプローブイオンの運動エネルギー
E0: 散乱前の入射プローブイオンの運動エネルギー
M0: プローブイオンの質量
M1: ターゲット原子の質量
θ: プローブイオンの始め及び終わりの速度ベクト
ルのなす角を実験室座標系の共通原点からの角
度として決めたものであり,0°と180°との間
の値で表される。
scattered-ion
energy
4.395 散乱イオンエネ
ルギー比
〈ISS〉衝突前の入射プローブイオン(4.349)のエネルギーに対する散
乱イオンエネルギー(4.394)の比。
scattered-ion
energy ratio
4.396 実験的散乱イオ
ン強度
〈ISS〉試料をイオンビーム(4.259)で照射した結果としてエネルギー
分析及び検出システムによって測定される応答であり,通常,イオン散
乱スペクトル(4.267)の縦軸として使用される。
experimental
scattered-ion
intensity
58
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.397 理論的散乱イオ
ン強度
〈ISS〉与えられた方向の決められた立体角の中に散乱されたプローブ
イオン(4.349)強度の計算値。
注記 二体弾性散乱(4.80)に対する散乱イオン強度は,次の式で表さ
れる。
Ii (θ)=I0 Ni Pi αi (dσi/dΩ)θΔΩT
ここに, Ii(θ): 散乱角(4.18)θの方向に原子種iによって散乱
されたイオン強度(ions・s−1)
I0: 入射プローブイオン強度(ions・s−1),
Ni: 入射ビームが到達できる単位表面(4.458)当た
りの原子種iの散乱体の数(atoms・m−2)
Pi: 原子種iと相互作用した後にプローブイオンが
イオンのまま残る確率
αi: 与えられた環境及び配置における原子種iの幾
何学的因子(5.5)又はシャドウイング因子
(dσi/dΩ)θ: 散乱が測定された角度における原子種iの微分
弾性散乱断面積(4.127)。すなわち,原子種i
の1原子当たり,入射イオンの単位フラックス
(4.221)当たりの散乱イオン強度の角度分布
(m2・atom−1・sr−1)
ΔΩ: 分析及び検出系の入り口によって決まる見込
み立体角(sr)
T: 分析及び検出系の透過率
theoretical
scattered-ion
intensity
4.398 遮蔽
原子内電子によって原子核のクーロンポテンシャルが減少する現象。
注記 IBA(3.11)において,入射イオンが標的原子核から遠く離れて
いる場合,この原子核をもつ原子は遮蔽効果によって,入射イオ
ンから中性粒子のように見える。散乱断面積(4.123)は,遮蔽効
果によってラザフォード断面積(4.133)で与えられる値よりも僅
かに小さくなる(2 MeV Heに対して原子番号が50増加すると約
1 %)。この効果は,イオンエネルギーが低いほど顕著になるとと
もに不確実になり,LEIS(3.12)では断面積はもはやよく分かっ
ていない。
screening
4.399 遮蔽関数
〈IBA〉与えられた測定条件において遮蔽(4.398)効果によってラザフ
ォード断面積(4.133)が小さくなる程度を表す因子(5.5)。
screening function
4.400 二次カソード
〈GDS〉直流グロー放電(4.228)装置で表面(4.458)電気伝導性のな
い試料に対して,スパッタリング(4.441)による試料導入を行うため
に使用するところの電気伝導性のある物質で作製された開口部のある
マスク。
注記1 二次カソードは,絶縁性の試料表面に電気的に接触させて設置
し,試料表面及び二次カソードはその開口部を通してグロー放
電プラズマと接する。二次カソードは,カソード(4.88,4.89)
電位に保持されるため,その表面にもスパッタリングが起こ
る。この場合,二次カソードからスパッタされた物質の一部が,
開口部に接する絶縁性試料の表面に付着し,これが試料の表面
に電気伝導性を付与する。その結果として,絶縁性試料はスパ
ッタリングを受け,試料原子のプラズマへの導入が行われる。
注記2 電気伝導性のない試料を分析しなければならない場合には,二
次カソードを使用する方法が,高周波グロー放電の代替法とし
て有用である。
secondary cathode
59
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.401 二次電子
入射した電子,光子,イオン又は中性粒子によって引き起こされた励起
の結果,表面(4.458)から放出される,一般には,低エネルギーの電
子。
注記 慣習的には,特に断らない限り,50 eV以下のエネルギーをもっ
た電子が二次電子と考えられている。表面から放出される電子の
エネルギー分布に関する計算から,ほとんどの電子を含む有用な
カットオフエネルギーは50 eVであると示されている。このカッ
トオフは人為的なものであり,通常50 eV以上の二次電子も存在
する。この定義はGDS(3.10)に対しては,通常,適用されない。
secondary electron
4.402 二次電子
〈GDS〉一次電子(4.346)とそれによりイオン化又は熱励起により生
成した熱電子(4.470)との中間的な運動エネルギー(4.278)をもつ電
子。
注記 この用語は4.401で規定する一般的な用例とは異なって定義され
る。両者はGDS(3.10)において使用される。
secondary electron
4.403 二次電子収率,
二次電子放出効
率,
δ
〈AES,EPMA〉与えられたエネルギー及び入射角(4.17)で入射した
電子の総数に対する,試料から放出された50 eV以下のエネルギーの電
子の総数の割合。
secondary-electron
yield,
secondary-electron
emission
coefficient
4.404 二次電子収率,
二次電子放出効
率
〈GDS,SIMS〉試料の表面(4.458)に入射した粒子の総数に対する試
料から放出された電子の総数の割合。
注記 二次電子収率は,エネルギーをもった特定のタイプの入射粒子
(例えば,Ar+)に対して与えられる場合がある。
secondary-electron
yield,
secondary-electron
emission
coefficient
4.405 全二次電子収率,
σ
〈AES,EPMA〉与えられたエネルギー及び入射角(4.17)で入射した
電子の総数に対する試料から放出された電子の総数の割合をいい,次の
式によって求められる。
σ=δ+η
ここに,δ:二次電子収率(4.403)
η:後方散乱係数(4.63)
注記1 後方散乱収率(4.63)及び二次電子収率参照。
注記2 全二次電子収率は,しばしば単に二次電子収率と呼ばれる。こ
れは,50 eV以下のエネルギーに制限される二次電子(4.401)
に関連した用語と混乱を生じさせる。
total secondary-
electron yield
4.406 二次イオン
一次イオン(4.348)からのエネルギー及び運動量の移送の結果,試料
の表面(4.458)から放出されたイオン。
secondary ion
4.407 二次イオン角度
分布
放出角(4.16)の関数とした二次イオン(4.406)の個数。
secondary-ion
angular
distribution
4.408 二次イオンエネ
ルギー分布
特定の収集角における,運動エネルギー(4.278)の関数としての二次
イオン(4.406)の個数。
secondary-ion
energy
distribution
4.409 二次イオン収率
ある質量,エネルギー,電荷及び入射角(4.17)で入射した一次イオン
の総数に対する,試料からスパッタされた全イオン数の比。
secondary-ion
yield
4.410 偏析
速度論的又は熱力学的効果によって起こる,ある領域から別の領域への
化学種(4.106)の分配。
注記 偏析は,表面(4.458)及び界面(4.253)で観察される。
segregation
4.411 制限視野絞り
〈XPS,SIMS〉検出する信号を,試料の表面(4.458)の微小領域に制
限する電子光学系又はイオン光学系の絞り。
注記 光学絞り(4.319)参照。
selected area
aperture
60
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.412 自己吸収
〈GDOES〉発光する化学種(4.106)と検出器との間に滞留する,光源
と同一の化学種によって発光が吸収される現象。
注記 自己吸収は,直線相関とならない検量線の原因となる。さらに,
光子吸収は発光線のピーク位置の近傍でその確率が最大となる
ところから,結果としてスペクトル線幅を広げる効果がある。
self-absorption
4.413 自己組織化単分
子膜
単分子層の厚さをもち,表面(4.458)に共有結合で集積する膜。
self-assembled
monolayer,
SAM
4.414 自己反転
〈GDOES〉非常に大きな自己吸収(4.412)のため,発光スペクトルの
ピーク位置近傍に局所的に強度極小点が現れる現象。
self-reversal
4.415 元素絶対感度係
数
試料中に存在する元素の原子濃度又は原子分率を求めるときに,対象と
なる元素について測定した強度を除すために使用する元素に固有な係
数。
注記1 元素相対感度係数(4.419)参照。
注記2 原子濃度又は原子分率のどちらを使用したかを明確にしなけ
ればならない。
注記3 使用する感度係数の種類は,定量化過程で使用する数式,及び
均一試料又は偏析層などの分析する試料の種類に適合してい
なければならない。
注記4 適切なマトリックス因子(4.298)又はその他のパラメータが使
用されていることを明確にするために,感度係数の出典を示さ
なければならない。
注記5 感度係数は,励起源,分光器,試料と他の装置部品との角度の
パラメータに依存する。感度係数は,分析するマトリックスに
も依存し,SIMS(3.17)ではこの影響が支配的である。
absolute elemental
sensitivity
4.416 平均マトリック
ス相対感度係
数,
AMRSF
〈AES,XPS〉ある元素について実測の強度から,試料中に存在する元
素の原子濃度又は原子分率を求める計算をするためのもので,平均マト
リックスにおける対応した元素の計算した強度比例係数。
注記1 元素相対感度係数(4.419)及び純元素相対感度係数(4.417)
参照。
注記2 原子濃度又は原子分率のいずれかを使用したかを明確にしな
ければならない。
注記3 使用する感度係数の種類は,定量化過程で使用する数式及び均
一試料又は偏析層など分析する試料の種類に適合していなけ
ればならない。
注記4 感度係数の出典を明示する必要がある。平均マトリックス相対
感度係数では,マトリックス因子(4.298)は1となる。
注記5 感度係数は励起源,分光器,試料と他の装置部品との角度など
のパラメータに依存する。感度係数の数値は,ピーク強度を測
定するときに使用した手法にも依存する。
average matrix
relative
sensitivity factor
61
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.417 純元素相対感度
係数,
PERSF
〈AES,XPS〉ある元素について実測の強度から,試料中に存在する元
素の原子濃度又は原子分率を求める計算をするためのもので,純元素試
料で測定した強度に比例した係数。
注記1 元素相対感度係数(4.419)及び平均マトリックス相対感度係数
(4.416)参照。
注記2 原子濃度又は原子分率のいずれかを使用したかを明確にしな
ければならない。
注記3 使用する感度係数の種類は,定量化過程で使用する数式,及び
均一試料又は偏析層など分析する試料の種類に適合していな
ければならない。
注記4 適切なマトリックス因子(4.298)又はその他のパラメータが使
用されていることを明確にするために,感度係数の出典を示さ
なければならない。マトリックス因子は重要で,純元素相対感
度係数と一緒に使用するのがよい。
注記5 感度係数は励起源,分光器,試料と他の装置部品との角度など
のパラメータに依存する。感度係数の数値は,ピーク強度を測
定するときに使用する手法にも依存する。
pure-element
relative
sensitivity factor
4.418 相対感度係数,
RSF
〈GDMS〉試料中の質量分率(ただし,マトリックス成分の質量分率で
除した相対値)を求めるために,測定成分の質量ピーク強度(測定され
たマトリックス成分の質量ピーク強度で除した相対値)に掛算する成分
ごとの係数。
注記 既存のGDMS(3.8)装置では,周期表にあるほぼ全元素の相対
感度係数はほぼ1桁内のばらつきに収まる。そのため,標準物質
(4.370)による検量線を作成しなくても,定量を行うことができ
る(半定量ということもある。)。しかし,より精確な定量を行う
には,特定のGDMS装置ごとにマトリックス中の成分の相対感
度係数を求める必要があり,そのために,試料のマトリックスと
類似したマトリックスの標準物質を用いる必要がある。
relative sensitivity
factor
4.419 元素相対感度係
数
〈AES,XPS,TXRF〉注目する元素と遷移に対しての値とが一定とな
るように決定される元素絶対感度係数(4.415)に対する比例係数。
注記1 通常,適用される元素及び遷移は,XPS(3.23)においてはC 1s
又はF 1sであり,AES(3.1)に対してはAg M4,5 VVである。
注記2 用いられる感度係数の種類は分析試料の種類,すなわち,均質
試料か偏析層をもつかに応じて,適したものが用いられる。
注記3 感度係数には,補正マトリックス因子(4.298)又は他のパラメ
ータが考慮される。
注記4 感度係数は,励起源,分光器,試料と他の装置部品との角度な
どのパラメータに依存する。加えて,感度係数は分析されるマ
トリックスに依存し,SIMS(3.17)では支配的な要因となる。
elemental relative
sensitivity factor
4.420 元素相対感度係
数
〈ダイナミックSIMS〉試料中に存在する元素の原子濃度を求めるため
に使われる,元素の質量ピークの測定強度をマトリックスの質量ピーク
の測定強度で除した値に乗じる係数。
注記1 元素相対感度係数は,同位体相対感度係数(4.421)を検出する
同位体イオンの同位体存在比で除すことで得られる。
注記2 マトリックス効果は大きく,母材,照射イオン種,入射イオン
エネルギー及び入射角(4.17)は,分光器の操作条件と同様,
全てが元素相対感度係数に著しく影響する。
elemental relative
sensitivity factor
62
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.421 同位体相対感度
係数
〈ダイナミックSIMS〉試料中に存在する元素の同位体の原子濃度を求
めるときに,元素の同位体の測定強度をマトリックスイオンの測定強度
で除した値に乗じる係数。
注記 マトリックス効果は大きく,母材,照射イオン種,入射イオンエ
ネルギー及び入射角(4.17)は,分光器の操作条件と同様,全て
が元素相対感度係数(4.420)に著しく影響する。
relative isotopic
sensitivity factor
4.422 シェイクオフ
〈AES,XPS〉過剰な運動エネルギー(4.278)を電子に分配して,2個
又はそれ以上の電子が放射される多電子過程。
注記1 シェイクアップ(4.423)参照。
注記2 電子スペクトルにおいて,シェイクアップによって親ピークよ
り低い運動エネルギーにピーク構造が現れる。一方,シェイク
オフにおいては,同様に親ピークより低い運動エネルギーに,
連続的バックグラウンド強度が現れる。
shake off
4.423 シェイクアップ
〈AES,XPS〉光電子放出又はオージェ電子(4.37)放出後に原子が励
起状態(4.205)で残る多電子過程。放出される電子は元の光電子より
僅かに小さい固有の運動エネルギー(4.278)をもつ。
注記1 シェイクオフ(4.422)参照。
注記2 シェイクアップピークは,通常,親ピークの10 eV以内で観測
されるが,バックグラウンドが低い気体では,親ピークから100
eVほど小さい範囲の運動エネルギーまで同定されている。
shake up
4.424 シース,
電極シース
〈GDS〉グロー放電管の放電構造の一つで,プラズマ本体の電位[プラ
ズマ電位(4.338)]から負に帯電する放電電圧と等しい電極表面(4.458)
の電位まで変化する,電極近傍に現れる薄い領域。
注記 これらの用語は,通常高周波グロー放電(4.228)において使用さ
れるが,直流放電の場合にも同一の概念として使用することがで
きる。
sheath,
electrode sheath
4.425 シース電位
〈GDS〉シース(4.424)部位に現れる電位勾配又は電圧降下。
注記 表面化学分析においては,この用語は,直流グロー放電(4.228)
より高周波グロー放電において通常使用される。さらに高周波放
電では,カソード降下電位(4.90)のような同義用語の方がはる
かによく使用されている。しかしながら,シース電位は,直流グ
ロー放電においても共通して用いられる用語である。
sheath potential
4.426 画素当たりのシ
ョット数
〈SIMS〉1回のラスター(4.364)において,イオン像を構成する個々
の画素に入射したイオンパルスの数。
shots per pixel
4.427 信号対ノイズ比
計測時における,信号強度(4.252)の全ノイズ(4.315)の大きさに対
する比。
注記1 統計的ノイズ(4.316)参照。
注記2 AES(3.1)におけるノイズは,ピーク近傍のスペクトルバック
グラウンドの使いやすい領域で測定される。
signal to noise
ratio
4.428 平滑化処理
見掛けのノイズ(4.315)を減らすためのデータの数学的処理。
smoothing
4.429 スペクテイター
正孔
オージェ電子(4.37)又はX線光電子放出過程の間に存在し得る原子の
電子構造における正孔状態(4.238)。その過程において生成したり消失
したりしない。
spectator hole
4.430 分光器の分散,
分析器の分散
〈エネルギー又は質量〉分析器又は分光器の出口で分散している粒子の
位置の変化Δxを,粒子エネルギーの割合変化ΔE/E又は質量の割合変
化Δm/mで除した値。
spectrometer
dispersion,
analyser dispersion
4.431 分光器の分散,
分析器の分散
〈光学〉分光器の出口における放射の位置変化Δxを,波長の変化Δλ
で除した値。
spectrometer
dispersion,
analyser dispersion
63
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.432 分光器エタンデ
ュ
分析領域(4.9)の中心を通る分析器の軸に垂直な平面の面積要素と分
光器の透過率との積を,表面(4.458)全体にわたって積分した値。
注記 エタンデュの単位は,sr・m2・eV,sr・m2・amu又はsr・m3である。
spectrometer
étendue
4.433 分光器の応答関
数
分光器によって検出された粒子の総数を,単位立体角及び測定に用いる
分散パラメータの単位間隔当たりの粒子数で除した値で,分散パラメー
タの関数として表したもの。
注記1 分光器の透過関数(4.434)及び分光器エタンデュ(4.432)参
照。
注記2 一般に,分散パラメータは,エネルギー,質量又は波長である。
注記3 透過関数の単位は,sr・eV,sr・amu又はsr・mである。
注記4 分光器の応答関数は,分光器の透過関数又はエタンデュに類似
しているが,検出器,電気的処理,記録器などの一連の測定系
における全ての構成要素の効率を含む。
注記5 幾つかの定量分析(4.357)法では,相対感度係数(4.418)を
使うために応答関数のエネルギー依存性が必要となる。これら
の場合,絶対応答関数に比例するが,その比例定数は必ずしも
重要ではない。
spectrometer
response
function
4.434 分光器の透過関
数,
分析器の透過関
数
分析器の中を透過した粒子の総数を,単位立体角及び測定に用いる分散
パラメータ(例えば,エネルギー,質量,波長など)の単位間隔当たり
の粒子数で除した値で,分散パラメータの関数として表したもの。
注記1 分光器の応答関数(4.433)参照。
注記2 透過関数の単位は,sr・eV,sr・amu又はsr・mである。
注記3 単に分光器の取り込み立体角(sr又は有効な空間の立体角2π
に対する割合)だけが与えられている場合は,この用語の使い
方としては不十分である。この用法は用いないのがよい[分光
器立体角(4.22)参照]。
注記4 この用語は,検出器及び信号処理系の寄与を含む分光器の応答
関数とよく取り違えて使われる。
spectrometer
transmission
function,
analyser
transmission
function
4.435 アライン入射ス
ペクトル
〈EIA,ISS〉分析用ビームをチャネリング(4.94)が生じる試料の結晶
軸又は結晶面の方向に平行に入射させたときに得られる後方散乱スペ
クトル(4.62)(参考文献[1]参照)。
aligned incidence
spectrum
4.436 ランダム入射ス
ペクトル
〈EIA,ISS〉試料に対して,チャネリング(4.94)が生じないような方
向から分析用ビームを入射したときに得られる後方散乱スペクトル
(4.62)(参考文献[1]参照)。
random incidence
spectrum
4.437 スパイク
〈SIMS,スパッタリング〉イオン照射を受けた物質中の大部分の原子
が高速で運動しているとみなせる特定の空間的又は時間的領域。
注記1 熱スパイク(4.469)参照。
注記2 用語のスパイクは,通常,単一の一次粒子によって生成される
領域に対して適用される。SIMS(3.17)ではこの一次粒子によ
くクラスターイオン(4.111)が用いられる。
spike
4.438 スピンコート
高速で回転させた平たんな基板上に溶液をぬれ広がらせることによっ
て,有機物質の溶液から薄膜を成膜する方法。
注記1 100 nmよりも薄い膜を成膜するためには,通常,毎分約4 000
回転の回転速度が用いられる。
注記2 溶媒を揮発させるための高速回転に先立って,溶液の液滴を中
央に滴下し,基板全体にぬれ広がらせることがある。
spin coating
4.439 スピン軌道分裂
スピン角運動量と軌道角運動量との結合によって生じる原子のp準位,
d準位又はf準位の分裂。
spin orbit splitting
64
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.440 スパッタ深さ方
向分布,
SDP
スパッタリング(4.441)によって物質を除去して表面組成を測定した
場合に得られる深さ方向組成分布(4.115)。
注記 SIMS(3.17)のような幾つかの分析法では,分析に用いられるイ
オンビーム(4.259)によってスパッタリングが行われることもあ
るが,他の分析法ではイオンビームが付加的に必要となる場合が
ある。
sputter depth
profile
4.441 スパッタリング
粒子衝撃の結果として,試料から原子又はイオンが離脱する過程。
sputtering
4.442 平衡表面組成ス
パッタリング
一定条件で均一な試料をスパッタリング(4.441)することで生じる定
常状態にある表面組成。
equilibrium
surface
composition
sputtering
4.443 選択スパッタリ
ング
多元素物質をスパッタリング(4.441)するときに生じる平衡表面組成
の変化。
preferential
sputtering
4.444 スパッタリング
率
粒子衝撃によって試料から除去された物質の量を時間で除した値。
注記1 浸食率(4.202)参照。
注記2 浸食率は,速度,単位面積,単位時間当たりの質量,又は単位
時間当たりの他の測定量とすることができる。
sputtering rate
4.445 スパッタリング
収率
試料からスパッタされる原子及びイオンの数の入射粒子全数に対する
比。
sputtering yield
4.446 フラクショナ
ル・スパッタ
リング収率
試料からスパッタされた特定の原子及びイオンの数の,試料からスパッ
タされた原子及びイオンの総数に対する比。
注記 フラクショナル・イオン収率(4.269),負イオン収率(4.270),
パーシャル・イオン収率(4.491),パーシャル・スパッタリング
収率(4.447),正イオン収率(4.271)及び全イオン収率(4.492)
参照。
fractional
sputtering yield
4.447 パーシャル・ス
パッタリング
収率
試料からスパッタされた特定の原子及びイオンの数の,入射粒子の総数
に対する比。
注記 フラクショナル・イオン収率(4.269),フラクショナル・スパッ
タリング収率(4.446),負イオン収率(4.270),パーシャル・イ
オン収率(4.491),正イオン収率(4.271)及び全イオン収率(4.492)
参照。
partial sputtering
yield
4.448 スタティック限
界
〈SIMS〉ビームによるダメージによってスペクトルに顕著な変化が生
じはじめるイオンのフルエンス(4.217)。
注記1 スタティックSIMS(3.20)では,古典的には1012 ions/cm2又は
1016 ions/m2までが測定の限界とされていた。この限界は,表面
の原子1 000個に入射イオン1個が衝突されると考えたときの
ものである。
注記2 イメージングでは,総分子信号も使える。このときの限界は,
注記1で示した限界よりも高く,100倍になり得る。
注記3 巨大分子の場合は,損傷断面積(4.124)と消失断面積(4.125)
とはどちらも一般的には低分子の場合よりも大きくなり,スタ
ティック限界は1012 ions/cm2よりも低くなる。
static limit
65
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.449 定常状態スパッ
タリング
〈AES,GDS,SIMS〉スパッタリング(4.441)の過程において,十分
に長い時間スケールにわたって操作上及び分析において重要なパラメ
ータが変化しない状態。
注記1 化学量論スパッタリング(4.450)参照。
注記2 一般的には,定常状態スパッタリングと化学量論スパッタリン
グとは等価である。しかし,例えば,半導体中の低濃度デルタ
層のプスプロファイル測定では,スパッタリングそれ自体は定
常状態であるが,デルタ層(4.158)の成分は化学量論比を保っ
てスパッタされてはいない。
steady-state
sputtering
4.450 化学量論スパッ
タリング
〈AES,GDS,SIMS〉スパッタリング(4.441)の過程において,試料
からスパッタされる元素成分の相対量が試料内の化学量論比に等しい
状態。
注記1 定常状態スパッタリング(4.449)参照。
注記2 化学量論スパッタリングは,ほとんどの均一な試料において表
面(4.458)から数ナノメートルのスパッタ除去後に達成される。
stoichiometric
sputtering
4.451 ストップ事象
〈SIMS〉タイムデジタルコンバータ(TDC)による粒子検出の記録動
作。
注記 検出器でパルスを形成する各イオンの到達時間は,TDCで記録さ
れる。これをストップ事象と呼ぶ。TDCは,各一次イオン(4.348)
パルス発生後,一定数,例えば,512及び1 024のストップ事象
の数しか記録できないため,他の事象は“数え落とし”されてし
まう。
stop event
4.452 電子的阻止断面
積
〈EIA,RBS〉試料内の電子にエネルギーを移譲することに起因する阻
止断面積(4.134)。
注記1 全阻止断面積は,電子的阻止断面積と核的阻止断面積(4.454)
との和で与えられる。
注記2 核的阻止断面積の最大値は,核子当たり1 keVオーダーのエネ
ルギーで得られる。一方,電子的阻止断面積の最大値は,核子
当たり100 keV以上で得られる。最大電子的阻止断面積の絶対
値は,核的阻止断面積のそれよりもかなり大きい。
electronic stopping
cross-section
4.453 阻止断面積因子
〈EIA,RBS〉試料内のある深さで散乱された粒子をある角度で検出し
たときの全てのエネルギー損失(4.196)を試料原子の原子数密度と散
乱深さとの積で除した値。
stopping
cross-section
factor
4.454 核的阻止断面積
〈EIA,RBS,sputtering〉試料内の原子核にエネルギーを移譲すること
に起因する阻止断面積(4.134)。
注記1 全阻止断面積は,核的阻止断面積と電子的阻止断面積(4.452)
との和で与えられる。
注記2 核的阻止断面積の最大値は,核子当たり1 keVオーダーのエネ
ルギーで得られる。一方,電子的阻止断面積の最大値は,核子
当たり100 keV以上で得られる。最大電子的阻止断面積の絶対
値は,核的阻止断面積のそれよりもかなり大きい。
nuclear stopping
cross-section
66
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.455 阻止能
〈EIA,RBS,sputtering〉試料内の飛跡に沿った距離に対する,粒子の
エネルギー損失(4.196)の割合。
注記1 阻止断面積(4.134)参照。
注記2 ストッピングパワーとストッピングフォースとは同義語であ
り,通常,x方向に移動するエネルギーEの粒子に対して−dE/dx
によって表される。マイナス記号は阻止能を正の量として扱う
ためのものである。
注記3 阻止能は,国際放射線単位測定委員会(ICRU)の公式な用語
である。しかし,この用語はパワーだけでなく,フォースも定
義していない。だから,ストッピングフォースはより正確な同
義語としてここに含まれていると認識されている。
注記4 古い教科書では,この量もまた,阻止断面積と間違って呼ばれ
ている可能性がある。
stopping power /
stopping force
4.456 総和則
〈誘電関数〉特定した誘電関数の積分の値を与える公式。
注記1 物質に対する複素誘電関数の虚部及び複素誘電関数の逆数の
虚部の積分に対する推定値を与えるとして導出された式であ
る。ある誘電関数と周波数又は周波数の逆数の積とを周波数ゼ
ロから無限大にわたって積分する。それぞれの積分値を積分値
の推定値と比較することで,ある物質に対する誘電関数のデー
タセットの内部整合性を確認することができる。実用的には,
低周波数(赤外又は可視光のエネルギー領域に相当)から,物
質に含まれる原子の最大K殻束縛エネルギー(4.82)に相当す
る周波数よりも十分高い周波数にわたって積分が行われる。
注記2 誘電関数と周波数との積の積分値は,物質中の1原子又は1分
子当たりの全電子数に比例する。この総和則は,f総和則,振
動子強度総和則又はThomas-Reiche-Kuhn総和則という。
sum rule
4.457 超コスター・ク
ローニッヒ遷
移
〈AES,EPMA,XPS〉最初に空孔が生成されたのと同じ主量子数をも
つ準位から電子が放出されるコスター・クローニッヒ遷移(4.119)。
注記 オージェ遷移(4.46)参照。
例 M2M4M5,N5N7N7
super
Coster-Kronig
transition
4.458 表面
凝縮相と,気相,蒸気相又は真空との間の界面(4.253)。
surface
4.459 表面汚染
試料にも,試料を調べるプロセスにも関係しないものであり,また本来
の表面(4.458)及び研究対象プロセスに関連しない特別な雰囲気に試
料をさらすことによって生じる,一般的には好ましくない試料の表面上
の物質。
注記 一般的な表面汚染物質は,炭化水素及び水である。これらと雰囲
気とによる局所的な反応によって,広範囲の酸化及び他の生成物
が生じる。
surface
contamination
4.460 表面被覆率
〈化学吸着,物理吸着〉表面(4.458)の物質の量を表面積で除して求
めた値。
注記 表面被覆率は,atoms・m−2,mol・m−2,kg・m−2又は単層容量(4.308)
に対する量の比で示される。
surface coverage
67
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.461 表面励起パラメ
ータ,
SEP
〈AES,EPES,REELS,XPS〉物質表面(4.458)を1回通過するとき
に表面が存在することに起因した強度減衰を受けたピーク強度と,表面
が存在しないと仮定した場合に物質中を同じ距離だけ通過したときに
予想されるピーク強度との比で与えられる特性パラメータで,指数関数
的な強度の減衰を記載するときに用いられるパラメータ。
注記1 SEPが表面励起によってだけ生じ,かつ,多重表面励起がポア
ソン確率的過程に支配されると仮定すると,n回の表面励起が
起きる確率は(Sn/n!)[exp(−S)]で与えられる。ここで,SがSEP
である。表面励起パラメータは,表面を1回通過する間に起こ
る表面励起の平均回数と解釈でき,表面を1回通過する間に一
度も表面励起が起こらない確率は,exp(−S)で与えられる。
注記2 SEPの値は実験の幾何学条件に依存し,EPES(3.4)又はREELS
(3.16)においては入射電子及び放出電子に対するSEPの寄与
は異なることがある。SEPは,REELS,EPES,AES(3.1),XPS
(3.23)及び同様な分光法において観測される強度の減衰を表
すパラメータである。
注記3 表面励起は,擬似弾性ピーク(4.186)の強度を減少させる。こ
れは,REELS及びEPESにおいて重要である。
surface excitation
parameter
4.462 表面プラズモン
物質表面(4.458)が存在することに起因した固体又は液体中の伝導帯
又は価電子帯の電子が集団振動する励起モード。
注記1 特性電子エネルギー損失(4.95)及びプラズモン(4.339)参照。
注記2 プラズモン励起は,弾性散乱一次電子(4.346)ピーク及び光電
子ピーク,オージェ電子(4.37)ピーク,イオン化端などのピ
ーク又は損失構造に伴う特徴的なエネルギー損失(4.196)ピー
クとしてよく観測される。表面プラズモンは,多くの光学測定
においても重要である。
注記3 プラズモンは,幾つかの物質では支配的な励起モードである。
注記4 通常,2種類のプラズモン,すなわち,表面又は界面(4.253)
から離れたバルク中で励起されるバルクプラズモン(4.339)(単
に,プラズモンともいう。)及び表面又は界面で励起される表
面プラズモンが観測される。バルクプラズモンのエネルギーは
物質の電子構造に依存し,一般に価電子密度の平方根におおよ
そ比例する。物質の平面状表面(すなわち,物質−真空界面)
で励起される表面プラズモンのエネルギーは,バルクプラズモ
ンの約1/√2である。バルクプラズモンと表面プラズモンエネ
ルギーとの実際の比は,物質の電子構造に依存する。2種類の
物質の界面で励起される表面プラズモンのエネルギーは,各物
質の電子特性に依存する。自由電子様金属表面上の酸化薄膜の
場合,酸化膜が存在するために,金属の表面プラズモンエネル
ギーが清浄金属表面での値に比べて小さくなる。
surface plasmon
4.463 表面偏析
運動学的又は熱力学的効果によって,物質を構成する一部の元素がバル
クから表面(4.458)へ分配されること。
surface segregation
4.464 界面活性物質
液体と接している物質の界面エネルギー又は液体の表面エネルギーを
下げる物質。
注記1 実用的には,液体は,通常,水又は水を基本とする媒質である。
乳化剤,洗剤又は分散剤が界面活性物質の例である。
注記2 多くの場合,界面活性分子は一端に親水性又は極性基,他方に
親油性又は親油基をもつ。
surfactant
68
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.465 シンクロトロン
放射
シンクロトロン又はストレージリングにおいて,電子の加速によって引
き起こされる連続的なエネルギースペクトルをもつ電磁波(光子)の放
射。
注記 シンクロトロン放射は,オージェ電子(4.37)分光法及び光電子
分光法における,有用なエネルギー可変の光子源である。光電子
分光法に対しては,放射光は単色化される。10 eV〜30 keVの範
囲で十分な強度の光子が得られる。
synchrotron
radiation
4.466 ターゲット
〈EIA,RBS〉測定対象となっている試料。
target
4.467 厚いターゲット
〈EIA,RBS〉各構成元素から後方散乱された粒子のエネルギーの変化
がシステム分解能(4.387)に対して十分に大きい厚さをもつ試料(参
考文献[1]参照)。
thick target
4.468 薄いターゲット
〈EIA,RBS〉各構成元素から後方散乱された粒子のエネルギーの変化
がシステム分解能(4.387)に対して十分に薄い厚さをもつ試料(参考
文献[1]参照)。
thin target
4.469 熱スパイク
〈SIMS,スパッタリング〉局所加熱によるエネルギー付与が主たる過
程であるスパイク(4.437)。
注記 スパイクを生成する他の過程は,圧力及び衝撃波である。
thermal spike
4.470 熱電子,
アルティメイト
電子,
究極電子
〈GDS〉数次の衝突を繰り返した結果,プラズマ(4.337)温度と同等
なエネルギー分布をもつようになった電子群。
thermalized
electrons,
ultimate electrons
(deprecated)
4.471 薄膜
基板上に堆積又は成長させた層で,一般的には100 nm以下の厚さの材
料層(参考文献[1]参照)。
thin film
4.472 時定数
〈アナログ電子回路〉ステップ関数を入力したときの応答時間で,最終
的な信号の値に対して[1−(1/e)]又は63.2 %に変化する時間。
time constant
4.473 飛行時間,
TOF,
ToF
〈SIMS〉ある質量のイオンが試料から検出器まで移動するのにかかる
総時間。
注記 多くの場合は,時間計測はビームチョッパー(4.109)によってイ
オンパルスが発生したときから開始するので,記録される飛行時
間は一次イオン(4.348)がイオン銃でパルス化されてから試料の
表面(4.458)に到達するまでの時間も含まれることが多い。
time of flight
4.474 表面形状コント
ラスト
試料の表面(4.458)の形状によって生じる観察像又はマップ(4.289)
におけるコントラスト。
注記1 形状効果によって,一次ビーム(4.77)と試料との相互作用が
変化し,電子又はイオン収量のデータ解釈をより複雑にする場
合がある。
注記2 表面形状コントラストは,イオンスパッタリング(4.441)後に
変化する可能性がある。
topographic
contrast
4.475 全反射
〈TXRF〉入射X線の視射角(4.13)が臨界角(4.12)か又はそれ以下
であり,入射X線が反射されるか又は表面(4.458)に非常に近い領域
で吸収される状態。
注記 反射強度は入射強度のほぼ100 %で,透過強度はゼロとなる。
total reflection
4.476 変換確率
〈SIMS〉スパッタリング(4.441)の結果として,表面(4.458)にある
元々の原子的又は分子的配列が破壊され,特定の荷電粒子又は中性粒子
が生成する確率。
transformation
probability
4.477 垂直飛程
〈EIA,RBS,SIMS〉エネルギーをもったイオン又は原子が表面(4.458)
に衝突するとき,試料中で静止したイオン又は原子と入射軸との距離。
注記 投影飛程(4.352)参照。
transverse range
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.478 垂直ストラグリ
ング
〈EIA,RBS,SIMS〉あるエネルギーをもつイオン及び原子の垂直飛程
(4.477)の標準偏差。
注記 飛程ストラグリング(4.363),垂直飛程(4.477)参照。
transverse
straggling
4.479 極浅深さ方向分
布
〈SIMS〉大きな変化が起こる深さが10 nm未満である深さ方向分布
(4.350)。
ultra-shallow depth
profile
4.480 統一原子質量単
位
(CODATA),
u,
ダルトン,
Da
静止かつ基底状態の12C核種の質量の1/12と等しい単位。
注記1 1 u ≈ 1.660 538 86×10−27 kgであり,1標準偏差の不確かさは±
0.000 000 28×10−27 kg [10](この値は継続的に見直されており,
最新の値はhttp://physics.nist.gov/constantsを参照)。これは,SI
単位ではないが,SI単位での値が実験的に求められ,SIとの併
用が認められている。
注記2 生化学分野では統一単位原子量は,ダルトンという記号Daが
用いられる。
注記3 上記の定義は国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)には1960
年に,国際純正・応用化学連合(IUPAC)には1961年に,長
期間存在していた化学と物理分野とでの違いを解決するため
に,認められた。化学目盛及び物理目盛の原子質量単位の両方
の記号として使われていたamuは,統一単位原子量uに置き換
わった。物理目盛のamuは16Oの16分の1で,化学目盛のamu
は酸素の天然存在比に対する平均原子量の16分の1であった。
1998年CODATAでは,1 u=1.000 317 9 amu(物理目盛)=
1.000 043 amu(化学目盛)である。
unified atomic
mass unit
(CODATA),
Dalton,
Da
4.481 一分子解離
一つの分子の二つ以上のフラグメントへの自発的な解離。
注記 この用語は,準安定イオン(4.300)のフラグメンテーション
(4.223)に用いられる。
unimolecular
dissociation
4.482 実効空間分解能
〈SIMS〉実際に得られる画像分解能。
注記 画像分解能は,データの完全性を確保するために設定された制約
を下回る損傷準位に保つため,又は試料が分析中に消費される場
合に十分な信号を記録するために,結果として一次イオンビーム
径(4.73)よりも悪くなる。
useful spatial
resolution
4.483 真空準位
空間のある一点における真空の電位。
注記1 フェルミ準位(4.211)参照。
注記2 電子分光法においては,表面(4.458)の異なる部分の異なる仕
事関数(4.487)によって引き起こされる電場がゼロ又は十分小
さくなるように,空間のある一点は,試料から十分離れた位置
に決められる。
vacuum level
4.484 真空準位基準
〈AES,XPS〉ゼロ点が真空準位(4.483)で静止している電子に相当す
る運動エネルギー(4.278)軸の決定方法。
注記 フェルミ準位基準(4.212)参照。
vacuum level
referencing
70
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.485 標準真空準位
フェルミ準位(4.211)より4.5 eV上の電位。
注記1 真空準位(4.483)参照。
注記2 フェルミ準位は,電子の運動エネルギー(4.278)を正確に規定
できる絶対的な準位である。歴史的にはAES(3.1)では,電
子のエネルギーはフェルミ準位ではなく,代わりに装置の真空
準位を基準としてきた。この基準は装置ごとに異なり,一定し
た基準を与えない。しかし,ほとんどの報告されているオージ
ェ電子(4.37)の運動エネルギーは真空準位基準であり,多く
の分析者はこのエネルギー基準を用いてきたために,装置ごと
にばらつきが生じることには慣れている。取り決めとして,標
準真空準位は上に挙げたように一般的な装置の真空準位の値
に近い一貫した基準として定義する。標準真空準位を基準とし
たエネルギーは一貫していて,個々の装置の真空準位から測っ
た値とはおよそ1 eV以内の変動幅である。
standard vacuum
level
4.486 価電子帯スペク
トル
〈XPS〉試料の価電子帯から励起された光電子のエネルギー分布。
valence band
spectrum
4.487 仕事関数
フェルミ準位(4.211)とある特定の表面(4.458)外側の最大電位との
間の電子の電位差。
注記1 一般に,単結晶の異なった結晶面の仕事関数は互いに異なる。
また,これらの仕事関数は,結晶表面の清浄度によって変化す
る。
注記2 多結晶表面の仕事関数は,露出している単結晶面の種類とその
面積との割合に応じた平均的な値を示す。
work function
4.488 X線ゴースト線
〈XPS〉X線アノード(4.27)に付着又は含まれる不純物,X線窓又は
試料中に存在する元素から発生したX線によって励起された光電子放
出(4.335)スペクトル中の線。
注記 ゴースト線は,MgとAlとをコーティングしたデュアルアノード
X線源に現れる。Mg線源を使用するときは弱いAlのX線によ
って励起される弱いピークが現れ,又はその逆も起こる。その他
のゴースト線としては,コーティング材が酸化したときのOのX
線又はコーティング基板からのCuのX線に起因するものがよく
みられる。
X-ray ghost line
4.489 X線線幅
主要な特性X線(4.96)のエネルギー幅。
注記1 XPS(3.23)では,通常,X線線幅はX線源の線幅に対応する。
注記2 X線線幅は,光電子ピーク幅(4.331)に寄与する。
X-ray line width
4.490 X線モノクロメ
ータ
狭いエネルギー又は波長帯のX線以外のエネルギー成分のX線を除去
する装置。
注記 XPS(3.23)で,AlのX線を用いる場合は,モノクロメータは
Al Kα1に合わせるように設定される。
X-ray
monochromator
4.491 パーシャル・イ
オン収率,
パーシャル・イ
オンスパッタ
リング収率
入射全粒子数に対する試料から放出される特定化学種(4.106)のイオ
ン数との比。
注記 フラクショナル・イオン収率(4.269),フラクショナル・スパッ
タリング収率(4.446),負イオン収率(4.270),パーシャル・ス
パッタリング収率(4.447),正イオン収率(4.271)及び全イオン
収率(4.492)参照。
partial ion yield,
partial ion
sputtering yield
71
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4.492 全イオン収率
入射全粒子数に対する試料からスパッタされた正負両イオンの全数の
比。
注記1 フラクショナル・イオン収率(4.269),フラクショナル・スパ
ッタリング収率(4.446),負イオン収率(4.270),パーシャル・
イオン収率(4.491),パーシャル・スパッタリング収率(4.447)
及び正イオン収率(4.271)参照。
注記2 全イオン収率は,正負両イオンの和よりもむしろ全負イオン収
率又は全正イオン収率を用いたい場合によく使われる。
total ion yield
4.493 体積収率
試料からスパッタされた全体積に対する入射粒子の全数の比。
注記1 フラクショナル・イオン収率(4.269),フラクショナル・スパ
ッタリング収率(4.446),負イオン収率(4.270),パーシャル・
イオン収率(4.491),パーシャル・スパッタリング収率(4.447)
及び正イオン収率(4.271)参照。
注記2 体積収率は,分子が容易にフラグメント化する有機膜における
スパッタ量を規定する場合及び分子のスパッタリング収率
(4.445)の値が体積収率よりも試料間で大きく変化する場合に
適用する。
volume yield
4.494 ミキシング領域
一次ビーム(4.77)がアトミックミキシング(4.32)を引き起こす試料
の表面(4.458)の層(参考文献[1]参照)。
注記 衝突カスケード(4.114)参照。
zone of mixing
5
多変量解析に関する用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.1
センタリング,
平均センタリン
グ
〈データ前処理〉データ行列(5.2)中の各変数(5.23)について,全て
の標本(5.17)にわたり,それぞれの平均値を減じて0を中心に分布す
るように調整するデータ前処理(5.3)操作。
注記1 スケーリング(5.18)及び変換(5.22)参照。
注記2 平均センタリングは,標本と原点との差異よりも標本間の差異
を重要視する。
注記3 平均センタリングは,試料全体のピークの相対強度がゼロから
の絶対的なずれよりも重要となるPCA(5.14),PLS(5.12),
SIMS(3.17)及びXPS(3.23)の判別分析(5.4)に対して一般
的に推奨される。また,平均センタリングは,正の量でなけれ
ばならない物理的に意味のある成分スペクトルと寄与量とを
識別するためのMCR(5.10)における非負拘束条件と互換で
はない。
注記4 平均センタリングは,一般的に,データの選択及びスケーリン
グを含むデータ前処理後に適用される。
注記5 全てのデータ前処理法は,暗黙のうちにデータセットの分散の
性質にある種の仮定を置いている。扱っているデータセットに
対してこの仮定を分析者がよく理解し,また仮定が実際に適当
であることが重要である。
centering,
mean centering,
centring
(deprecated),
mean centring
(deprecated)
72
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.2
データ行列
I,Kを整数とするとき,一つ以上の変数(5.23)の値Kに対するI個の
標本(5.17)について得られた実験データからなるI行,K列の数字の
表。
注記1 標本という用語は一つの系で行われる個々の測定を示し,また
変数項は測定が行われるチャンネルを示す。例えば,SIMS
(3.17)においては,変数は二次イオン(4.406)の質量又は飛
行時間(4.473)に対応しており,XPS(3.23)では,変数は検
出された光電子の束縛エネルギー(4.82)に対応している。
注記2 I画素×J画素×K変数の次元から成る多変量画像の場合,IJ×
Kの次元のデータ形成のため,データは多変量解析(5.9)に先
行して展開される。分析の完了時に,結果は元画像の次元に戻
すために畳み込まれる。
data matrix
5.3
データ前処理
特定のデータ解析処理に先立つ生データの操作。
注記1 用語のpreprocessing及びpretreatmentは(日本語では両者とも
“前処理”と訳される)同じ意味で使用されるが,後者は実験
解析に先行する試料調製又は試料処理と混同されるので推奨
されない。
注記2 三種の主要なデータ前処理法[センタリング(5.1),スケーリ
ング(5.18)及び変換(5.22)]とは別に,データ前処理は,大
量の画像平滑化処理及びピーク選択を含む生データに対して
行われた他の処理を指している可能性がある。多変量画像の場
合,目的の領域選択及び画像フィルタリング又は画像平滑化処
理を含む可能性がある。
注記3 全てのデータ前処理法は,暗黙のうちにデータセットの分散の
性質にある種の仮定を置いている。扱っているデータセットに
対してこの仮定を分析者がよく理解し,また仮定が実際に適切
であることが重要である。
注記4 複数のデータ前処理方法が同じデータセットに適用される可
能性がある。データ前処理の順序は重要であり,またデータセ
ットの分散の性質に関する仮定に影響する可能性がある。
data preprocessing,
data pretreatment
(deprecated)
5.4
判別分析,
DA,
判別関数分析,
DFA
判別関数を使用し,あらかじめ定義されたグループに標本(5.17)を分
類するための教師あり多変量技術。
注記1 判別関数は,各グループ内の分散を最小限に抑えながら,異な
るグループ間の分散を最大化する因子(5.5)である。DFA因
子に関する負荷量(5.7)は,グループの性質を予測するために
最良となる変数(5.23)の組合せに関する情報提供に使用され
る可能性がある。
注記2 DFAは,多変量データセットにPCA(5.14)の後で適用される。
これは,多変量データから共直線性を排除し,新しい予測変数,
すなわち,PCAスコア(5.21)が正規分布することを保証する。
この方法は,主成分判別関数分析(PC-DFA)という。
注記3 独立した検証データセットが,予測の正確さと校正データに対
するモデルの過剰な数式近似の防止に使用されるならば,DFA
は校正及び予測に用いることができる。独立した検証セットが
ない場合には,交差検証が有用である。しかし,独立した標本
に対する予測は慎重に扱わなければならない。
discriminant
analysis,
discriminant
function analysis
73
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.5
因子,
成分,
純成分,
主成分
〈因子分析〉因子分析(5.6)モデルのデータ空間における座標軸をい
い,原データセットの要約・説明に寄与する次元を表す。
注記1 PCA(5.14)では,各因子は“主成分”という。PCAの第一の
因子は“PC1”という。MCR(5.10)など他の因子分析手法と
併用され,“PCA因子1”,“MCR因子2”などと呼ぶ方が意味
が明確になるときは,この呼び方は用いないほうがよい。
注記2 多変量波形分離MCRでは,各因子は“純成分”と呼ばれる。
しかしながら,現実の系の化学成分と混同されるおそれがある
ため,用語の“成分”及び“純成分”は,用いないほうがよい。
注記3 各因子には,一連の負荷量(5.7)及びスコア(5.21)が付随す
る。これらは,負荷行列又はスコア行列の中の一つの列を占め
る。
factor,
component factor
(deprecated),
pure component
(deprecated),
principal
component
(deprecated)
5.6
因子分析
因子(5.5)を用いてデータの次元を低減し,データセットの潜在的な
構造を記載することを目的とするデータ行列(5.2)(X)の,スコア(5.21)
行列(T)と負荷量(5.7)行列の転置行列(P')との積及び残差行列(5.16)
(E)との和への分解。
注記1 因子分析では,X=TP'+Eと表す。
注記2 因子分析の範ちゅうには,PCA(5.14),MCR(5.10)及びMAF
分析(5.8)が含まれる。
注記3 因子分析において選択された因子の総数は,データ行列の階数
よりも小さい。
注記4 因子分析は,因子が新たな座標軸となるデータ空間での回転に
等しい。PCAの場合を除いて,この回転が直交性を保存する必
要はない。
注記5 残差行列には,因子分析モデルで記載できないデータが含まれ
る。通常,ここにはノイズ(4.315)が含まれると考える。
factor analysis
5.7
負荷量,
主成分スペクト
ル,
純成分スペクト
ル
〈因子分析〉因子(5.5)の変数(5.23)への射影。
注記1 スコア(5.21)参照。
注記2 英語では単数,複数を次のように区別している。負荷量に対応
する英語のloadings(複数形)は,負荷行列の特定の因子に関
係する列全体を指す。単数形のloadingは元の空間の一つの変
数の,この因子への特定の寄与を表す。
注記3 一つの因子に対する複数の負荷量は,この因子に対応する複数
の変数間の関係を反映している。
注記4 PCA(5.14)では,負荷量は変量と因子との間の方向余弦でも
ある。
注記5 MCR(5.10)では,用語の“純成分スペクトル”は“負荷量”
と互換性があるので用いないほうがよい。分光学的手法におい
ては,この用語は“純物質のスペクトル”と混同されるおそれ
がある。
注記6 SIMS(3.17),XPS(3.23)などの多変量スペクトルデータの解
析においては,負荷量は“疑似スペクトル”と解釈できるので,
化学的・物理的な解釈を進めるために使用可能である。このよ
うな疑似スペクトルの解釈の誤りには常に注意する必要があ
り,いつでも元のデータの解釈に立ち返って確かめることが重
要である。
loadings,
principal-
component
spectrum
(deprecated),
pure-component
spectrum
(deprecated)
74
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.8
最大自己相関因
子分析,
MAF分析
多変量画像の因子分析(5.6)で,隣り合った画素間の変動を最小にし
つつ,画像全体を通して最大の分散となる因子(5.5)を順次取り出し
てゆく手法。
注記1 PCA(5.14)参照。
注記2 MAFは,行列Bの固有ベクトルである。ここでBは,シフト
画像の共分散行列の逆行列をデータ行列(5.2)に乗じた変数
(5.23)の行列の転置とそれ自身との積である。シフト画像は,
データ行列からそれ自身を1画素だけシフトしたものを減じて
得られる。
注記3 MAF分析は,SIMS(3.17)の個々の画像の解析に有用であり,
画像中の化学的に異なる領域の同定及びコントラストの強調
に役立つ。同時に,画像の様々な特徴に関連したスペクトル成
分の同定にも役立つ。
注記4 MAFから得られる負荷量(5.7)は,データスケーリング(5.18)
の方法によらない。
注記5 MAF分析は,SIMSイメージング深さ方向分布(4.350)から得
られる三次元画像の解析にも拡張できる。
maximum
autocorrelation
factor analysis
5.9
多変量解析,
MVA
二つ以上の相関のある変数(5.23)に対して同時に用いる統計手法を含
む分析。
注記1 多変量解析の本質的な解釈は,異なる変数間の依存性であり,
それは共分散と関わることもある。多変量解析は,少数の統計
的変数を使ってデータを要約することによって,相関のある多
くの変数を含む複雑なデータセットの解釈を容易にする。
注記2 多変量解析は,二つに大別できる。教師なし(探索的)手法及
び教師あり手法である。教師なし手法は,標本(5.17)間の主
要な違い及びスペクトルの特徴間の主要な共分散のようなデ
ータセットの傾向を明らかにするのに使われる。これらの教師
なし手法は,因子分析(5.6),PCA(5.14),MAF分析(5.8)
及びMCR(5.10)を含む。教師あり手法は,予測,モデリン
グ,校正及び分類に用いられ,PCR,PLS(5.12)及びDFA(5.4)
を含む。
multivariate
analysis,
MVA
5.10
多変量スペクト
ル分解,
MCR,
自己モデルスペ
クトル分解,
SMCR,
自己モデル混合
解析,
SMMA
成分に関する情報がほとんどない状態で実施される場合における多成
分混合データを,化学成分とその組合せの線形結合とで得られたものと
みなして分解する因子分析(5.6)。
注記1 非負化などの適切な制約を課した交互最小法(ALS)を使い,
残差行列(5.16)を相互最小化にすることによって,MCR因子
(5.5)は負荷量(5.7)及びスコア(5.21)として抽出される。
MCRは,データ行列(5.2)へのデータ前処理(5.3)の有無に
かかわらず適用できる。MCR因子は,直交化を必要としない。
注記2 各データ行列におけるMCR因子は一つには決まらず,分解さ
れ得る成分の数,課される制約及び収束基準などの初期設定に
依存する。
注記3 非負化制約のあるMCRは,物理的に意味のある化学成分のス
ペクトルと濃度(これらは,正の値を取るはずである。)を反
映する負荷量及び得点を得るために,SIMS(3.17)及びXPS
(3.23)に応用される。しかし,線形性の仮定は初歩的な近似
でしかなく,実際の分析では,マトリックス効果(4.297),形
状効果,検出器の飽和などの非線形性を無視した場合の影響が
重大となる場合もある。
multivariate curve
resolution,
MCR,
self-modelling
curve resolution
(SMCR)
(deprecated),
self-modelling
mixture analysis
(SMMA)
(deprecated)
75
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.11
規格化
〈データ前処理〉データ前処理(5.3)法で用いられるスケーリング(5.18)
の方法で,スケーリング行列が各標本(5.17)について一つの定数で構
成されているもの。
注記1 分散スケーリング(5.20),オートスケーリング(5.19)及びポ
アソンスケーリング(5.13)を参照。
注記2 スケーリングに用いる定数としては,ある特定の変数(5.23)
の値,選ばれた幾つかの変量の和又は標本の全ての変数の和が
あり得る。
注記3 規格化は,SIMS(3.17)では装置条件に起因する全イオン収率
(4.492)の違いを相殺するために広く用いられる。これは,
SIMSでは全体強度よりも相対強度の方が再現性がよいためで
ある。
注記4 全てのデータ前処理法は,暗黙のうちにデータセットの分散の
性質に何らかの仮定を置いている。扱っているデータセットに
対して,分析者がこの仮定をよく理解し,また実際に仮定が適
当であることが重要である。
normalization
5.12
部分最小二乗法,
PLS,
部分最小二乗回
帰,
PLSR
同一のものに対して測定された二つ以上の変数(5.23)のセットについ
て,相互関係を評価するための多変数の線形回帰法。
注記1 PLSは,予測変数の最大の分散を説明する観測可能変数に含ま
れる因子(5.5)(潜在変数)を,これら両者を同時に分離する
ことによって見つけ出す手法である。PLSでは回帰を用いて冗
長な情報,すなわち予測値と相関をもたない観測値における大
きな分散を説明する因子を取り除く。
注記2 予測の正確さを評価するため,また校正されたデータにモデル
を過度に合わせ込むことを防ぐために独立した検証用のデー
タが提供されている場合は,PLSを校正及び定量に用いること
ができる。独立した検証用データが存在しないときは,モデル
で用いるべきPLS因子の数を決定するために既存のデータを
用いた交互検証が有用であることがある。しかし,どのような
予測であれ,それが独立した標本(5.17)に対して行われる場
合は,注意深く扱わなければならない。
partial least squares,
partial least squares
regression
(deprecated)
76
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.13
ポアソンスケー
リング,
キーナンスケー
リング,
最適スケーリン
グ
〈データの前処理〉ポアソン統計に基づくデータ前処理(5.3)に用い
られるスケーリング(5.18)法。試料ごとの平均強度の平方根とチャン
ネルごとのスペクトルの平均強度の平方根とを含む二つのベクトルの
外積から構成されるスケーリングマトリックスを用いる。
注記1 規格化(5.11)及び分散スケーリング(5.20)参照。
注記2 ポアソンスケーリングは,検出器の直線性が成立する範囲で得
られたSIMS(3.17)及びXPS(3.23)の生のデータに対してだ
け適用可能であり,他のスケーリング法とともに用いることは
できない。
注記3 ポアソンスケーリングでは,データ行列(5.2)のそれぞれの成
分が同じ実験の不確かさ(誤差)を含むようなデータをスケー
リングすることによって,SIMSデータの解析に用いられる
PCA(5.14)又はMCR(5.10)を含む多変量解析(5.9)で得
られる結果の質が向上することが示されている。SIMSでは,
実験の不確かさは検出器のポアソン統計に支配される場合が
あるため,高強度のピークは低強度のピークより高い絶対測定
不確かさを含む。ポアソン統計は,それぞれのスペクトルのそ
れぞれのピーク[すなわちデータ行列の各成分]にこの不確か
さに基づく重み付けをする。この不確かさは,ポアソン統計に
基づく不確かさが平均カウント強度と一致するという事実に
基づいて,生のデータから見積もることができる。
注記4 ポアソンスケーリングは,特にToF(4.473)-SIMSの画像解析
に有効である。ToF-SIMS画像では,ピクセル当たりのカウン
ト(4.120)が小さくポアソン統計に基づく計数ノイズ(4.315)
に支配されているためである。
注記5 ポアソンスケーリングでは,PCA又はMCRの因子負荷量(5.7)
マトリックス及びスコア(5.21)のような多変量解析で得られ
た結果に対して,元のスケーリングベクトルを用いてポアソン
スケール空間から元の物理空間に戻すことが通常行われる。
Poisson scaling,
Keenan scaling
(deprecated),
optimal scaling
(deprecated)
5.14
主成分分析,
PCA
因子分析(5.6)の一種で,データセットから,最大の分散を与える直
交因子(5.5)を次々に取り出してゆく手法。
注記1 MAF分析(5.8)参照。
注記2 PCAで扱われる因子は,行列Zの固有ベクトルである。ここで
Zは,データ行列(5.2)の行列転置にデータ行列自身を乗じた
ものである。データ行列に含まれるデータは,データ前処理
(5.3)を施していない場合と,何らかの前処理を既に経ている
場合の両方とがあり得る。PCAの因子は,付随する固有値の降
順に並べられる。固有値は,付随する因子で記載される分散の
大きさである。PCA因子は,互いに直交している。
注記3 PCAは,一連のSIMS(3.17)スペクトル間の差異を調べるた
めに広く使われている。有用さの例を挙げると,全体の傾向及
びクラスタリングの同定,よく似た物質同士の区別及びそれら
の間の僅かな変動の探知,特定の官能基に対応するスペクトル
成分の同定,深さ方向分布(4.350)におけるスペクトルの変化
してゆく様子の解析などがある。
注記4 PCA分析は,SIMSの個々の画像の解析に有用であり,画像中
の化学的に異なる領域の同定及びコントラストの強調に役立
つ。同時に,画像の様々な特徴に関連したスペクトル成分の同
定にも役立つ。
principal-
component
analysis,
principal-
components
analysis
77
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.15
再現データ行列
〈因子分析〉特定の因子分析(5.6)モデルにおける,スコア(5.21)行
列と負荷量(5.7)行列の転置との積。
注記1 再現データ行列は特定の因子分析モデルにおいて,データ行列
(5.2)と残差行列(5.16)との差である。
注記2 再現データ行列は,データ行列のノイズフィルタリング近似と
考えられている。これは,残差行列がノイズ(4.315)だけを含
むと想定されるときは正しい。
reproduced data
matrix
5.16
残差行列
〈因子分析〉特定の因子分析(5.6)のモデルにおける,データ行列(5.2)
と再現データ行列(5.15)との差。
注記 残差行列は,因子分析モデルでは説明できないデータを含む。ま
た,この行列は,通常はノイズ(4.315)成分を含んでいるとみな
される。
residual matrix
5.17
標本
〈多変量解析〉一つ以上の実験系でなされた一連の個々の測定。
注記1 変数(5.23)参照。
注記2 各標本からのデータは,データ行列(5.2)の行を占める。
注記3 多変量解析(5.9)の用語における標本は,通常の分析における
その用語の従来の使い方,すなわち,測定下にある物理的な実
体と混同してはならない。多変量解析において,各“標本”は
単に独立した測定を示す。これは,同一試料に対する繰返し測
定,異なる試料に対する測定又は両方の組合せの測定の可能性
がある。
samples
5.18
スケーリング,
重み付け
〈データ前処理〉データ前処理(5.3)手続き。その処理において,デ
ータ行列(5.2)は,スケーリング行列によって要素に分割される。
注記1 センタリング(5.1)及び変換(5.22)参照。
注記2 データスケーリングの一般的な方法は,規格化(5.11),分散ス
ケーリング(5.20)及びオートスケーリング(5.19)であり,
SIMS(3.17)データの場合は,ポアソンスケーリング(5.13)
である。
注記3 データスケーリングは,データの全分散及び各変数に含まれる
相対分散両方に影響する可能性があり,データ分析にバイアス
を導入する可能性がある。
注記4 データスケーリングは一般にデータのセンタリングに先立ち,
適切なデータの選択後に適用される。
注記5 全てのデータ前処理法は,データセットの分散の性質にある仮
定を置いていることを意味する。これらの仮定が理解され,関
係するデータセットに適切であることが重要である。
scaling,
weighting
5.19
オートスケーリ
ング
〈データ前処理〉分散スケーリング(5.20)の適用に続いて平均センタ
リング(5.1)を行うデータ前処理(5.3)法。
注記1 分散スケーリング(5.20),規格化(5.11)及びポアソンスケー
リング(5.13)参照。
注記2 オートスケーリングは,多変量解析(5.9)では各変数の重要度
を均一化し,SIMS(3.17)のピーク選択と連動して一般的に適
用される。
注記3 全てのデータ前処理法は,データセットの分散の性質にある仮
定を置いていることを意味する。これらの仮定が理解され,関
係するデータセットに適切であることが重要である。
auto scaling
78
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.20
分散スケーリン
グ
〈データ前処理〉データ前処理(5.3)に用いられるスケーリング(5.18)
法。スケーリング行列は,標本(5.17)全体の各変数(5.23)の標準偏
差によって構成される。
注記1 オートスケーリング(5.19),規格化(5.11)及びポアソンスケ
ーリング(5.13)参照。
注記2 分散スケーリングは,平均化と組み合わせた場合,オートスケ
ーリングという。
注記3 分散スケーリングは,多変量解析(5.9)では各変数の重要度を
均一化し,SIMS(3.17)のピーク選択と連動して一般的に適用
される。
注記4 全てのデータ前処理法は,データセットの分散の性質にある仮
定を置いていることを意味する。これらの仮定が理解され,関
係するデータセットに適切であることが重要である。
variance scaling
5.21
スコア,
投影,
純粋な成分の濃
度
〈因子分析〉因子(5.5)への標本(5.17)の投影。
注記1 負荷量(5.7)参照。
注記2 PCA(5.14)において,要因は直交しており,スコアが要因へ
の標本の直交投影である。
注記3 MAF分析(5.8)及びMCR(5.10)において一般的には要因は
直交していない。そして要因上のスコアは,その要因へのサン
プルの斜投影となる。投影方向は,他の要因の方向によって定
義される。
注記4 要因上のスコアは,その要因のための標本間の関係を反映す
る。
注記5 スコア(複数形)の項は,特定の要因に関連するスコア行列内
の列全体を示す。スコア(単数形)の項は,要因への特定の標
本の投影である。
注記6 MCRでは純粋な成分濃度の項は,MCRスコアの項と交換可能
でありそれゆえ推奨できない。分光法ではこの項は,純粋な物
質の濃度と混同される可能性がある。
注記7 例えば,SIMS(3.17)又はXPS(3.23)から得られる多変量ス
ペクトルデータを解析するとき,因子のスコアは,その因子に
関連する化学的又は物理的な現象に対する“疑似寄与”として
解釈できる。スコアと濃度のような実際的な物理的及び化学的
性質との間に単純な直線関係は必ずしも存在しない。校正標準
は,定量的にスコアを試用するに不可欠であり,スコアで観察
された任意のパターンは,適切な複製の使用,交差検証そして
他の統計的検定によって統計的な意義が検証されなければな
らない。
scores,
projections
(deprecated),
pure-component
concentration
(deprecated)
5.22
変換
〈データの前処理〉データ行列(5.2)の各要素が定義された関数によ
って変換されるデータ前処理(5.3)手順。
注記1 センタリング(5.1)及びスケーリング(5.18)を参照。
注記2 定義された関数の例は,対数及び平方根である。
注記3 線形関数による変換は,スケーリング及び中心化に同価であ
る。
注記4 全てのデータ前処理方法は,データ組の分散の性質について幾
つかの仮定を暗に示している。これらの前提は取り扱うデータ
に対し理解され,そして適切であることが重要である。
transformation
79
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5.23
変数
〈多変量解析〉標本(5.17)に施される実験的計測に対する一連の経路
又はパラメータ。
注記1 標本参照。
注記2 データ行列(5.2)の列を占有する各変数のデータ。
注記3 SIMS(3.17)における変数は,質量又は二次イオン(4.406)
の飛行時間(4.473)であり,また,XPS(3.23)では検出され
る光電子の束縛エネルギー(4.82)である。
variables
6
表面分析法のための補助用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
6.1
オージェ電子−
光電子コイン
シデンス分光
法,
APECS
光電子放出によって生じた内殻空孔の崩壊に伴い,オージェ電子(4.37)
が放出されるまでの十分短い時間内に,単色X線に照射された固体か
ら放出されるオージェ電子と内殻準位光電子との相関(コインシデン
ス)計測を行う分光法。
Auger
photoelectron
coincidence
spectroscopy,
APECS
6.2
大気圧光イオン
化脱離,
DAPPI
高温溶媒蒸気のジェット照射と紫外光とによるイオン化によって,大気
中に置かれた試料から放出される物質の質量電荷比及び存在量を質量
分析計を用いて測定する手法。
注記1 DESI(3.2),EESI(6.7),ELDI(6.6),LAESI(6.10)及び
MALDESI(6.12)参照。
注記2 脱離機構は,熱的である。
注記3 正負の両イオンが観察される。
desorption
atmospheric
pressure
photoionization,
DAPPI
6.3
リアルタイム直
接分析,
DART
約500 ℃に加熱された準安定状態及び励起状態の原子を含むビームと
の相互作用によって大気中にある試料から放出されたイオン化された
物質の質量電荷比と量とを測定するための質量分析法。
注記1 DAPCI(6.4)及びPADI(6.15)参照。
注記2 DARTは,JEOL社(USA)の登録商標である。
(この情報は,規格利用者の便宜のために提供しており,
ISO/TC 201表面化学分析委員会/SC 1用語分科会によって製品
名を制定することを承認しているわけではない。同じ結果が得
られる場合は,これと同等の他のものを使用してもよい。)
注記3 ビームの元素としては,通常,ヘリウム,窒素及びネオンが用
いられる。
注記4 正イオンは,水分子を含むプロトン付加の機構によって生じ,
負イオンはペニング放電の機構によって生じる。生成機構は異
なるものの,正イオンと負イオンとの両方が観察される。
direct analysis in
real time,
DART
6.4
大気圧化学イオ
ン化脱離,
DAPCI
湿ったキャリアガス内でのコロナ放電近傍で生じる大気中の試料から
放出されるイオン化された試料構成物質の質量電荷比及び存在量を質
量分析計を用いて測定する手法。
注記1 DART(6.3)及びPADI(6.15)参照。
注記2 通常,キャリアガスとして窒素が用いられる。
注記3 水の分子のプロトン化及びペニング過程によるイオン化を含
む機構によって,正及び負の両方のイオンが観察される。
desorption
atmospheric
pressure
chemical
ionization,
DAPCI
80
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
6.5
直接リコイル分
光,
DRS,
弾性リコイル検
出,
ERD,
弾性リコイル検
出解析,
ERDA
一般的に単一エネルギーをもつ中性原子又は一価のプローブイオン
(4.349)を照射して,固体表面から原子又はイオンをスパッタし,ス
パッタ粒子のエネルギーを単一又は複数の散乱角(4.18)で計測する固
体の最表面原子層の組成及び構造を調べるための手法。
注記1 ラザフォード後方散乱分光分析法(3.15)参照。
注記2 この手法では,リコイル原子又はイオンは1回の二体弾性散乱
(4.80)によって生じたと仮定する。
注記3 散乱角を適切に選択することで,散乱された一次イオン(4.348)
がスペクトルに含まれないように調整できる。
注記4 この手法は,ラザフォード後方散乱分析と原理及び装置が共通
化できるため,ラザフォード後方散乱分析装置に搭載されてい
ることが多い。
direct recoil
spectroscopy,
DRS,
elastic recoil
detection,
ERD
elastic recoil
detection
analysis,
ERDA
6.6
エレクトロスプ
レーレーザー
脱離イオン化
質量分析法,
ELDI
試料のイオン化を増強するために脱離したプルームにエレクトロスプ
レーを随時照射しつつ,集束したパルスレーザーによる蒸発によって試
料から大気中に放出されたイオン化物質の質量電荷比及び存在量を質
量分析計を用いて測定する手法。
注記1 DAPPI(6.2),DESI(3.2),EESI(6.7),LAESI(6.10)及び
MALDESI(6.12)参照。
注記2 脱離機構は熱的である。
注記3 正負両イオンが観察される。
注記4 試料上にマトリックスを加えると,MALDESI(matrix-assisted
laser desorption electrospray ionization)という。
注記5 脱離のために赤外レーザーを用いる場合,LAESI(laser ablation
electrospray ionization)という。
electrospray laser
desorption
ionization mass
spectrometry,
ELDI
6.7
抽出エレクトロ
スプレーイオ
ン化,
EESI
空気圧支援エレクトロスプレーイオン化で生成されたイオン化溶媒液
滴によって順にイオン化された分子を捕まえるため,試料上を通過する
希ガスによって試料から大気中に放出されたイオン化物質の質量電荷
比及び存在量を質量分析計を用いて測定する手法。
注記1 DAPPI(6.2),DESI(3.2),ELDI(6.6),LAESI(6.10)及び
MALDESI(6.12)参照。
注記2 正負両イオンが観察される。
extractive
electrospray
ionization,
EESI
6.8
拡張X線吸収微
細構造分光法,
EXAFS
内殻準位の吸収端から数100 eV高いエネルギー範囲に現れるXAFS
(6.20)。
注記 拡張X線吸収微細構造は,周囲に存在する複数の原子によって光
電子が1回散乱されることで主に生じるもので,光子のエネルギ
ーの増大とともに吸収断面積に振動がみられる。この振動を解析
することによって結合距離を求め,光電子を発生した原子近傍の
局所的な化学状態の情報を得ることができる。
extended X-ray
absorption fine
structure
spectroscopy,
EXAFS
6.9
斜入射小角X線
散乱法,
GISAXS
斜入射(4.236)における小角度の散乱をとらえるために,反射面から
の弾性散乱X線強度を測定する手法。
注記 斜入射角度は光子エネルギー及び物質に依存するが一般的に2°
より小さい。GISAXSによって,表面(4.458)又は表面上の粒子
の構造情報が数nmから数百nmの長さスケールで得られる。
grazing-incidence
small-angle
X-ray scattering,
GISAXS
81
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
6.10
レーザーアブレ
ーションエレ
クトロスプレ
ーイオン化,
LAESI
レーザーアブレーション及びエレクトロスプレーイオン化によって,試
料から大気中に放出されたイオン化された物質の質量電荷比及び存在
量を質量分析計を用いて測定する手法。
注記1 DAPPI(6.2),DESI(3.2),EESI(6.7),ELDI(6.6)及びMALDESI
(6.12)参照。
注記2 レーザーの波長は,通常,赤外域である。
注記3 水分子によるプロトン付加及びペニング過程を通したイオン
化を含む機構によって正負両イオンが観察される。
laser ablation
electrospray
ionization,
LAESI
6.11
レーザー脱離イ
オン化,
LDI
レーザーアブレーションの結果として,試料から放出されたイオン化さ
れた物質の質量電荷比及び存在量を質量分析計を用いて測定する手法。
laser desorption
ionization,
LDI
6.12
マトリックス支
援レーザー脱
離エレクトロ
スプレーイオ
ン化,
MALDESI
レーザーアブレーションエレクトロスプレーイオン化(6.10)において,
イオン収率を増強するためのマトリックスと混合された試料から発生
したイオン化された物質の質量電荷比及び存在量を質量分析計を用い
て測定する手法。
注記1 DAPPI(6.2),DESI(3.2),EESI(6.7),ELDI(6.6)及びLAESI
(6.10)参照。
注記2 グリセリンなどのマトリックスは,レーザーのエネルギーの吸
収効果を上げて,放出された帯電液滴内での分析分子の脱離を
促進する。
注記3 正負の両イオンが観察される。
matrix-assisted
laser desorption
electrospray
ionization,
MALDESI
6.13
非鏡面反射
XRR,
拡散XRR
測定される散乱X線強度は鏡面反射条件外となるような,試料の不完
全性から生じる散乱X線強度を測定するXRR(6.22)。
注記1 鏡面反射XRR(6.17)参照。
注記2 拡散XRRを生じさせる不完全性は,表面・界面ラフネス,膜
中欠陥及び不均質性である。モデル化によって定量的な評価が
行える。
off-specular XRR,
diffuse XRR
6.14
粒子線励起X線
放射,
PIXE
原子又はイオンビームの励起作用によって,固体表面から放出されたX
線のエネルギー及び強度を検出する手法。
注記 電子線によって放射が発生する電子線マイクロプローブアナリ
シスとは異なり,PIXEにおいては,X線バックグラウンドは極
めて低く抑えられ,検出限度は大幅に向上する一方,空間分解能
は維持される。
particle-induced
X-ray emission,
PIXE
6.15
プラズマ支援脱
離イオン化,
PADI
集束したプラズマ照射によって大気中の試料から放出されたイオン化
された物質の質量電荷比及び存在量を質量分析計を用いて測定する手
法。
注記1 DART(6.3)及びDAPCI(6.4)を参照。
注記2 プラズマのエネルギーは非常に低い。
注記3 ビームとして用いられる原子は,一般にヘリウム,窒素,大気
又はアルゴンである。
注記4 正イオン放出の機構は水分子を含むプロトン化,負イオンはペ
ニングイオン化と生成機構が異なるが,正負の両イオンを検出
する。
plasma-assisted
desorption
ionization,
PADI
6.16
反応性DESI
分析の分子選択性を向上するために,スプレー液に活性な化学種
(4.106)を混入するDESI(3.2)のモード。
reactive DESI
82
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
6.17
鏡面反射XRR
検出X線ビームと試料の表面(4.458)との間,及び入射X線ビームと
試料の表面との間の角度が等しい条件でのXRR(6.22)。
注記1 非鏡面反射XRR(6.13)参照。
注記2 鏡面反射XRRはXRRの通常の測定法であり,XRRという用
語が使われる場合は鏡面反射XRRを意味する。
注記3 この場合,散乱角(4.18)2θは,入射角(4.17)ωの2倍であ
る。検出される散乱X線強度は,ω,2θ又は散乱ベクトル(7.30)
qzの関数として測定される。散乱X線強度データは,通常qz
又はωの関数として示される。
specular XRR
6.18
表面支援レーザ
ー脱離/イオ
ン化,
SALDI
液体及び特定のマトリックスを組み合わせたMALDI(3.14)。
注記 特定のマトリックスとは,多くの場合グラファイトである。
surface-assisted
laser desorption /
ionization,
SALDI
6.19
表面拡張X線吸
収微細構造分
光法,
SEXAFS
X線吸収スペクトルを測定する代わりに,X線吸収によって発生するオ
ージェ電子(4.37)又は二次電子(4.401)を測定するXAFS(6.20)。
注記 オージェ電子又は二次電子を検出することによって,拡張X線吸
収微細構造分光法(6.8)よりも表面感度が増大する。
surface extended
X-ray absorption
fine structure
spectroscopy,
SEXAFS
6.20
X線吸収微細構
造分光法,
XAFS
吸収端の近傍又は高エネルギー域(通常は,数100 eV)でX線の吸収
を測定する手法で,微細構造(X線吸収係数の変調)を検出する測定法。
注記1 XAFSは,EXAFS(6.8)及びXANES(6.21)の両方を含んで
いる。それは,内殻準位から非占有の軌道又はバンドへの遷移
を伴うため,EXAFSを用いた局所的な原子の配置及び結合,
並びにXANESを用いた非占有状態の状態密度を主に反映して
いる。
注記2 XAFS,XANES及びNEXAFS(6.21)では,多くの場合でその
プリエッジの構造が化学結合の同定に使われるので(例 高分
子試料の炭素K吸収端における最低空軌道への励起であるπ*
共鳴),光電子を放出する原子の内殻準位の束縛エネルギー
(4.82)(吸収端)よりも数10 eV小さいエネルギーから通常は
測定を始める。
注記3 幾つかの内殻準位励起は,寿命が短いため観察される吸収端の
幅が広くなるが,多くの吸収端は幅が狭くそれらがX線吸収ス
ペクトルとして一般に観察される。
X-ray absorption
fine structure
spectroscopy,
XAFS
6.21
X線吸収端近傍
分光法,
XANES,
吸収端近傍拡張
X線吸収微細
構造分光法,
NEXAFS
吸収端近傍(約100 eV以内)のエネルギー領域のXAFS(6.20)。
注記1 XANESは,周囲の複数の原子によって低エネルギーの光電子
が多重散乱され,その干渉の結果生じるものである。局所的な
配位環境,酸化状態,分子軌道,混成軌道及びバンド構造(非
占有状態)の情報を与える。
注記2 XAFS,XANES及びNEXAFSでは,高分子試料の炭素K吸収
端における最低空軌道への励起であるπ*共鳴の例に見られる
ように,多くの場合でそのプリエッジの構造が化学結合の同定
に使われるので,光電子を放出する原子の内殻準位の束縛エネ
ルギー(4.82)(吸収端)よりも数10 eV小さいエネルギーから
通常は測定を始める。
注記3 幾つかの内殻準位励起は,寿命が短いため観察される吸収端の
幅が広くなるが,多くの吸収端は幅が狭く,それらがX線吸収
スペクトルとして一般に観察される。
X-ray absorption
near-edge
spectroscopy,
XANES,
near-edge extended
X-ray absorption
fine structure
spectroscopy,
NEXAFS
83
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
6.22
X線反射率測定,
XRR
平たんな試料から反射するX線を利用し,角度を関数とした反射X線
強度を解析することによって,表面(4.458)・界面粗さ,密度,膜厚及
び電子密度分布を解析する手法。
注記1 鏡面反射XRR(6.17)参照。
注記2 低発散の単色X線が必要である。多層膜試料では,膜厚は約1
nmから数μmの複数層をモデル化し,(条件付きで)測定デー
タに対してフィッティングできる。表面は,一般的に10 mm〜
40 mmであるビームフットプリント(7.5)全体で平たんである
必要がある。
X-ray
reflectometry,
XRR
6.23
X線定在波,
XSW
光電子収量は,試料傾斜角度を走査してブラッグ条件が満たされたとき
に最大となることを利用した,結晶表面においてブラッグ条件近傍で生
じるX線の干渉を利用する手法。
注記 試料を傾けることによって,定在波の節をある結晶面から次の結
晶面まで走査できる。結晶格子における原子位置は,光電子強度
の試料傾斜角依存性の測定結果を動力学理論による計算結果と
比較することによって決定できる。
X-ray standing
waves,
XSW
7
表面分析に関する補助用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.1
吸収長
〈XRR〉eを自然対数の底とするとき,透過X線強度が1/eに減衰する
距離。
absorption length
7.2
後方散乱補正因
子,
後方散乱因子
〈AES〉一次電子(4.346)だけによって,試料中で直接誘起されたイ
オン化によって生成される全オージェ電子(4.37)の電流に対する,入
射電子と後方散乱電子(4.58)との両方によって生じたオージェ電子電
流の比に等しい因子(5.5)。
注記1 後方散乱率(7.3)参照。
注記2 AES(3.1)に関連する文献で“後方散乱因子”という用語を用
いている場合が多いが,この用語の使い方は曖昧である。論文
及び書籍によっては,後方散乱因子が後方散乱補正因子と同義
である場合もあれば,後方散乱因子が後方散乱率と同義で用い
られていることもある。実用的には,後方散乱補正因子Rはr
で表される後方散乱率を用いてR=1+rで与えられるため,こ
の曖昧な使用によって誤解を招くことは一般に少ない。誤解を
避けるために,後方散乱因子という用語は用いない方がよい。
注記3 単純な理論では,後方散乱補正因子は,入射電子線の強度,エ
ネルギー又は入射方向がオージェ電子放出の情報深さ(4.246)
の範囲内で変化しないという仮定の下で計算される。この仮定
は,対象とするオージェ遷移(4.46)の内殻イオン化エネルギ
ーに入射エネルギーが近くなるほど,又は入射電子の入射角
(4.17)が大きくなるほど適用できなくなる。そのような場合
は,より高度な電子輸送の理論を用いなければならない。例え
ば,入射電子のエネルギーが内殻イオン化エネルギーの2倍よ
りも低い場合に試料から放出される全オージェ電子電流は,入
射電子が変化しないとして計算した場合の半分以下となる。そ
のため入射電子が変化しないと仮定した場合の後方散乱補正
因子は,1以下となり,その結果,後方散乱率は負となる。こ
のような場合は,入射電子と後方散乱電子とに分解する考え方
は有効ではない。
backscattering
correction
factor,
backscattering
factor
(deprecated)
84
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.3
後方散乱率,
後方散乱因子
〈AES〉一次電子(4.346)だけによって直接誘起された試料中でのイ
オン化によって生成されるオージェ電子(4.37)の電流に対する,入射
電子と後方散乱電子(4.58)との両方によって生じたオージェ電子電流
の比。
注記1 後方散乱補正因子(7.2)参照。
注記2 AES(3.1)に関連する文献で“後方散乱因子”という用語を用
いている場合が多いが,この用語の使い方は曖昧である。論文
及び書籍によっては,後方散乱因子が後方散乱補正因子と同義
である場合もあれば,後方散乱因子が後方散乱率と同義で用い
られていることもある。実用的には,後方散乱補正因子Rはr
で表される後方散乱率を用いてR=1+rで与えられるため,こ
の曖昧な使用によって誤解を招くことは一般に少ない。誤解を
避けるために,後方散乱因子という用語は用いない方がよい。
注記3 単純な理論では,後方散乱率は,入射電子線の強度,エネルギ
ー,入射方向がオージェ電子放出の情報深さ(4.246)の範囲内
で変化しないという仮定の下で計算される。この仮定は,対象
とするオージェ遷移(4.46)の内殻イオン化エネルギーに入射
エネルギーが近くなるほど,又は入射電子の入射角(4.17)が
大きくなるほど適用できなくなる。そのような場合は,より高
度な電子輸送の理論を用いなければならない。例えば,入射電
子のエネルギーが内殻イオン化エネルギーの2倍よりも低い場
合に試料から放出される全オージェ電子の電流は,入射電子が
変化しないとして計算した場合の半分以下となる。そのため入
射電子が変化しないと仮定した場合の後方散乱補正因子は1以
下となり,その結果,後方散乱率は負となる。このような場合
は,入射電子と後方散乱電子に分解する考え方は使用しにくく
なる。
backscattering
fraction,
backscattering
factor
(deprecated)
7.4
バーカス効果,
バーカス−アン
ダーソン効果
重粒子(7.22)において,電子的阻止断面積(4.452)がベーテ理論から
ずれること。
注記1 ベーテ理論は,参考文献[12]において導出されている。
注記2 このような効果は,0.5 MeV以上のエネルギー領域で起こる。
Barkas effect,
Barkas-Andersen
effect
7.5
ビームフットプ
リント
〈XRR〉試料上におけるX線が照射される領域。
注記1 一般的な市販装置の場合,ビーム幅は200 μmであり,0.3°の
入射角(4.17)でのビームフットプリントは長さ38 mm,1°で
11.5 mm,0°で無限大である。ビーム幅100 μmの場合,それ
らの値は半分になる。
注記2 ビーム方向に沿ったビームフットプリントは,試料の表面
(4.458)に垂直な面内(ビームに対しても垂直)に設置された
適切なナイフエッジ絞りを用いることによって縮小させるこ
とができる。ナイフエッジは,X線ビームの中心が試料を照射
する位置の表面に平行かつ近接するように調整される。その近
接度は,フットプリントサイズを制限するだけでなく測定され
る信号強度(4.252)を減少する。
beam footprint
7.6
ビームスピルオ
フ
〈XRR〉試料に当たらない入射X線。
beam spill-off
85
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.7
ベールの法則,
ベール−ランベ
ルトの法則
着目している強度が走行距離の増加に伴って指数関数的に減衰するこ
とを表した法則。
注記 電子分光では,電子が直線軌道をとると仮定する近似において
は,電子の強度は減衰長さ(4.34)で与えられる減衰定数と走行
距離に応じて減衰する。電子の弾性散乱(4.80)を考慮したより
完全な取扱いでは,もはや直線ではない電子の軌跡に沿った走行
距離と電子の非弾性平均自由行程(4.243)とで与えられる減衰定
数に応じて,電子の強度が減衰する。
Beerʼs law,
Beer-Lambert law
7.8
ベグレンツング
効果
固体表面又は界面付近を移動する電子に対して,表面又は界面の存在に
よってバルク励起の確率が変化すること。
begrenzungs effect
7.9
ボーアの臨界角
ド・ブロイ波長(7.15)及びイオンと原子との最近接距離の比で与えら
れる原子核によるイオンの散乱角(4.18)。
注記 ボーアの臨界角以上の散乱角では,通常,量子力学的効果は無視
される。表面分析で採用される条件では,この角度は非常に小さ
い。
Bohrʼs critical
angle
7.10
バンチャー
イオンのパルス幅(4.355)を短くする装置。パルスイオンは,縮小さ
れた時間間隔で,ある点に到達する。
注記 ある点とは,通常,試料の表面(4.458)である。
buncher
7.11
コンプトン散乱
電子によるX線及び他の光子の散乱。
注記 光子は,散乱角(4.18)の大きさに依存して電子のリコイルによ
ってエネルギーを失う。
Compton
scattering
7.12
臨界角
〈XRR〉全反射(4.475)条件から入射角(4.17)を増加させたときに,
反射率が最初の変曲点になる入射X線ビームと試料の表面(4.458)と
の間の角度。
注記1 実用的には,臨界角は,よく反射X線強度が全反射条件の50 %
の強度まで減少した角度とされ,その誤差は,通常小さい。
注記2 試料の材質又は構造に対する臨界角は,シミュレーションソフ
トウエア又は次の式を用いることによって求めることができ
る。
θc ≈ (2δ)0.5
ここに,1−δ:n=1−δ−iβで与えられるX線の複素屈折率
の実部
critical angle
7.13
架橋剤
〈吸着〉表面(4.458)に吸着する分子とそれらの分子とは吸着しない
離れた分子を結合する適切な末端基をもつ分子。
cross-linker
7.14
架橋結合
〈高分子〉高分子鎖の一部の一つの原子と近接する高分子鎖又は同じ高
分子鎖のもう一つの原子との結合。
注記 架橋結合は高分子の剛性を増し,様々な溶媒への溶解性を低下さ
せる。
cross-linking
7.15
ド・ブロイ波長
波動−粒子の二重性に関するド・ブロイの概念から導かれた粒子の波
長。
注記 波長は,プランク定数と粒子の運動量の商として計算される。
de Broglie
wavelength
7.16
散乱面
〈XRR〉X線源,検出器,入射及び鏡面反射X線ビームを含む平面。
dispersion plane
7.17
アインシュタイ
ンの(光電子)
方程式
単色光の照射によって導体から放出された電子の運動エネルギー
(4.278)は,光電子が放出された表面(4.458)の仕事関数(4.487)を
光子のエネルギーから引いた値になることを示した式。
Einsteinʼs
(photoelectric)
equation
86
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.18
ファノプロット
非相対論的運動エネルギー(4.278)Eに特定の因子(5.5)を乗じた値
とEの対数とをプロットしたデータ。ベーテ理論によって記載される高
速の荷電粒子がある距離を走行する間に失うエネルギーの割合と一致
しているか又はずれているかを評価するために用いられる。
注記 高速の荷電粒子がガス中を単位長さS走行する間に起きるイオ
ン化の数をベーテの参考文献[12]理論に基づいて評価するための
プロットとしてU. ファノが参考文献[13]で提案したことに由来
して命名された。彼の相対論的扱いでは,2β2Sはln[β2/(1−β2)]−
β2に対してプロットされる。ここに,β=v/cで,vは粒子の速度,
cは光速度である。AES(3.1)及びXPS(3.23)で使用する目的
で,電子のエネルギーの関数として与えられた固体中での電子の
非弾性平均自由行程(4.243)λのデータセットの解析にファノプ
ロットが利用されてきた。このような応用では,E/λはlnEに対
してプロットされる。他の応用では,ある励起過程又はイオン化
に対する断面積(4.123)σとEとの積σEがlnEの関数としてプ
ロットされる。
Fano plot
7.19
G-SIMS-FPM,
フラグメント化
経路図による
G-SIMS
ドーターイオン(4.144)と親イオン(4.322)との関連を推定するため
に指数g(7.20)を変化させるG-SIMS(3.7)の発展手法。
G-SIMS-FPM,
G-SIMS with
fragmentation
pathway mapping
7.20
指数g
〈G-SIMS〉G-SIMS(3.7)スペクトルを得るために,異なる一次イオ
ン(4.348)源によって測定された二つのスペクトルのビーク強度比を
累乗するときの指数。
注記1 異なる一次イオンの条件としては,同じ一次イオン源で十分離
れたエネルギーをもつか,又は二つの異なる一次イオン源で同
じビームエネルギー(4.75)をもつかの二種類があり得る。
注記2 指数gの値は,G-SIMSスペクトルを得るには13が効果的であ
ると示されており,0〜40まで連続的に変化する。
g index
7.21
重イオン
アルゴンより重いイオン。
注記 中間質量イオン(7.25)及び軽イオン(7.26)参照。
heavy ion
7.22
重粒子
〈イオンビーム分析〉電子よりも重い粒子。
注記1 重イオン(7.21)参照。
注記2 イオンに関わる物理学のコミュニティで使用されており,他の
分野では意味が異なる場合がある。
heavy particle
7.23
内部トラック
有機材料中に入射した一次イオン(4.348)の飛跡中心から1 nm以内の
飛跡領域。
注記1 外部トラック(7.35)参照。
注記2 この領域では,電子的に蓄積されたエネルギーは,主に一次励
起とイオン化に費やされる。
infratrack
7.24
界面内殻準位シ
フト
2種の物質界面付近に存在する原子の結合状態がバルク中の原子と異な
ること又は原子位置がバルク中での位置と異なることに由来して,界面
原子の内殻準位光電子スペクトルに観察されるエネルギーシフト。
注記 表面内殻準位シフト(7.31)参照。
interface core-level
shift
7.25
中間質量イオン
リチウムとアルゴンとの間の質量をもつイオン。
注記 重イオン(7.21)及び軽イオン(7.26)参照。
intermediate-mass
ion
7.26
軽イオン
リチウムより軽いイオン。
注記 中間質量イオン(7.25)及び重イオン(7.21)参照。
light ion
87
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.27
光電効果起因仕
事関数
光子の吸収によって導体表面(4.458)から電子を放出させるのに必要
な光子の最低エネルギー。
注記1 多結晶固体表面に露出した結晶粒のファセットの仕事関数
(4.487)は,ファセットによって異なる値をもつ。そのため,
物質から離れた位置では平均的に電界がない状態であっても,
ファセットの表面付近では局所的又はまだらに電界が存在す
る。最も低い仕事関数をもつファセット近傍に存在するまだら
な電界は,放出された光電子を引き戻すことになる。これら電
子は,適切な引き出し電界を印可した場合だけ検出できる。引
出し電界を印可しない場合に測定される光電効果起因仕事関
数は,面内の平均的な仕事関数に等しくなる。
注記2 表面が引き出し電界にさらされると,光子の最低エネルギー,
すなわち光電効果起因仕事関数の値が小さくなる。この減少の
程度は,引出し電界の強度と様々なファセットの大きさに依存
する。
注記3 仕事関数は,よく光電子放出の実験によってより測定される。
この手法では,最も低いエネルギーをもつ電子とフェルミ準位
(4.211)とから放出された電子のエネルギー差を光子のエネル
ギーから差し引くことによって,仕事関数を求める。このよう
な実験では,He Iの紫外線が一般的に用いられる。実測される
最低エネルギーの値は,引き出し電界の有無に依存する。多く
の出版物で,スペクトルの最低エネルギーと分光器のエネルギ
ー分解能(4.384)をデコンボリューションした後の最低エネル
ギーとが混同されている。エネルギー分解能が有限であること
を無視すると,仕事関数の値が小さくなるという誤りが生じ
る。
photoelectric work
function
7.28
エクストリンシ
ックプラズモ
ン
電子が固体中を移動する間に励起されるプラズモン(4.339)。
注記1 イントリンシックプラズモン(7.29)参照。
注記2 電子によって励起されるエクストリンシックプラズモンの数
を記載する確率は,電子の走行長に依存する。均一試料のオー
ジェ電子分光法(3.1)及び光電子分光法の通常の応用において
は,確率は,パラメータs/λのポアソン分布に従う。ここで,s
は走行長,λは非弾性平均自由行程である。
extrinsic plasmon
7.29
イントリンシッ
クプラズモン
光電子又はオージェ電子(4.37)が励起された局所領域において,これ
ら電子の生成と同時に励起されるプラズモン(4.339)。
注記1 エクストリンシックプラズモン(7.28)参照。
注記2 イントリンシックプラズモンの励起密度は,励起された多重プ
ラズモンの数の関数としてポアソン分布に従う。
注記3 イントリンシックプラズモンは,内殻正孔(4.237)が突然生成
された結果として励起される。通常,内殻正孔は動かず,有限
の寿命をもつと仮定される。エクストリンシックプラズモンと
イントリンシックプラズモンとの間の干渉も起こり得る。
intrinsic plasmon
7.30
散乱ベクトル,
q又はQ
〈XRR〉逆空間において,散乱波数ベクトルと入射波数ベクトルとの差
を与えるベクトル。
注記 波数ベクトル(7.36)参照。
scattering vector q
or Q
88
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
番号
用語
定義
対応英語(参考)
7.31
表面内殻準位シ
フト
バルク中の原子と比べて表面(4.458)又は表面近傍の原子の配位数が
小さいことに由来して内殻準位の光電子分光で観察されるエネルギー
のシフト。
注記 表面内殻準位シフトは,単結晶及びナノ粒子で度々観察され,露
出している結晶面に依存する。シフトはバルクのバンド構造に依
存し,低束縛エネルギー(4.82)側又は高束縛エネルギー側の両
方へのシフトが起こり得る。最外原子層については,シフトは0.4
eVにも達することがある。XPS(3.23)において試料の表面垂直
方向又はそれに近い放出角(4.16)で光電子を検出する場合には,
分析深さは,通常,多数の原子層となる。したがって,試料表面
すれすれの放出角にすることで,最外原子層のシフトを最も明瞭
に観察できる。表面第2層及び第3層のシフトを分離して観察す
ることも可能である。
surface core-level
shift
7.32
高速イオン
ボーア速度c/137を超える速度で移動するイオン。ここで,cは光の速
度。
注記 アルゴン及び金を例にとると,この基準は,各々1 MeV及び5
MeVより高いエネルギーに相当する。
swift ion
7.33
テザリング
表面(4.458)に分子が吸着する過程。
注記 分子は,表面を修飾すること,初めに他の分子に吸着すること,
又は架橋することによって,表面に吸着する。
tethering
7.34
熱電子起因仕事
関数
温度Tの導体から放出される電子の電流密度Jを決める見かけの仕事関
数(4.487)を記載し,−kT ln(J/AT2)で表されるパラメータ。ここに,k
はボルツマン定数,Aはリチャードソン定数である。
注記1 多結晶物質の熱電子起因仕事関数は,最も低い仕事関数をもつ
結晶面の値に近い。
注記2 リチャードソン定数Aは,A=(4πmk2e)/h3=1.201 73×106
Am−2K−2で与えられる。ここで,mは電子の質量,eは素電荷,
hはプランク定数である。
thermionic work
function
7.35
外部トラック
有機材料中に入射した一次イオン(4.348)の飛跡中心から1 nmから100
nmの飛跡領域。
注記1 内部トラック(7.23)参照。
注記2 この領域では,電子的に蓄積されたエネルギーは,主に内部ト
ラック内での一次イオンと固体内電子との衝突によって生じ
る二次電子(4.401)に費やされる。高速イオン(7.32)に関し
ては,このエネルギーの割合が内部トラックのそれよりも大き
くなり得る,すなわち分子イオンを生成しやすい。
ultratrack
7.36
波数ベクトル,
k
〈XRR〉X線の伝ぱ(播)の方向を記載,大きさが2π/λと等しい逆空
間におけるベクトル。ここで,λはX線の波長。
注記1 散乱ベクトル(7.30)参照。
注記2 異なる研究分野において,波数ベクトルは2π/λ又は1/λとされ
る。XRR(6.22)においては,通常,前者が用いられる。
wave vector,
k
89
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
8
多変量解析に関する補助用語
番号
用語
定義
対応英語(参考)
8.1
人工ニューラル
ネットワーク,
ANN,
ニューラルネッ
トワーク
人工ニューロンという単純な処理単位のネットワークで構成され,複雑
で大域的な振る舞いを示す分散型並列局所処理を用いた計算モデル。
注記1 ANNの振る舞いは,ニューロン間の結合とニューロンパラメ
ータとで決まる(例えば,入力荷重とバイアス)。
注記2 適応性ネットワークでは,学習(トレーニング)期間の間に希
望される出力を生成するようにニューロンパラメータが変化
する。
注記3 ANNは,複雑な関係のモデル化,パターン認識,分類,デー
タ処理,決断などを含む広い範囲の応用において用いられてい
る。
注記4 ANNは,非線形な系のモデル化において特に有用である。
artificial neural
network,
ANN,
neural network
90
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
附属書A
(参考)
IEC 60050-111,国際電気技術用語集−
第111部:物理及び化学からの抽出語
表面分析では,表面固有ではない特定の一般的な用語で混乱が発生する可能性がある。この混乱を減ら
すために,IEC 60050-111 [11]から抽出した用語をこの附属書に記載する。
番号
用語
定義
対応英語(参考)
A.1
係数
異なる種類の二通りの数量を除した結果。
注記 係数は,ある次元をもつ数量である。
coefficient
A.2
因子
乗数として使用される数。
注記 係数は,同じ種類の二通りの数量の商であり,一次元の数量を定
義する。
factor
A.3
商
除法による結果。
注記1 物理量の分野では,商という用語は,同じ種類又は異なる種類
の複数の数量から新たな数量を定義するために用いられる。
注記2 商a/bは,“aをbで除する商”という言葉で表現される。
quotient
A.4
比
同じ種類の二通りの数量の商。
注記1 比は次元がなく,数で表記される。
注記2 比c/dは,“dに対するcの比”という言葉で表現される。
ratio
A.5
面密度,
表面...密度
数量を表面積で除する商を示す数量の名称。
例 空間質量又は表面質量密度,空間電荷又は空間電荷密度。
areic,
surface ... density
A.6
〜の密度
ある数量を面積で除する商が示す束又は流れを表す数量の名称。
例 熱流速密度,電流密度。
注記 また,英語では,密度は,より一般的には体積質量を意味する。
density of …,
... density (2)
A.7
線,
線密度
量を長さで除する商を示す数量の名称。
例 線質量又は線質量密度,線電流又は線電流密度。
注記 “線(lineic)”という修飾語は,単に類似する数量を区別するた
めの数量の名称に付加される(例 線イオン化,線膨張係数)。
lineic …,
linear ... density
A.8
濃度
特に混合物中の物質を対象に,数量を全体積で除する商を示す数量の名
称に付加する用語。
例 物質の量を表す濃度B,Bの分子濃度,イオン濃度。
concentration
91
K 0147-1:2017 (ISO 18115-1:2013)
参考文献
[1] ASTM E673-03,Standard terminology relating to surface analysis
[2] IUPAC Compendium of Chemical Terminology, 2nd Edition, eds A.D. McNaught and A. Wilkinson, Blackwell,
London, 1997
[3] IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, electronic version, at http://goldbook.iupac.org/
[4] ISO 80000-10:2009,Quantities and units−Part 10: Atomic and nuclear physics
[5] CURRIE,L.A., Nomenclature in evaluation of analytical methods including detection and quantification
capabilities, Pure and Applied Chemistry, 1995, Vol. 67, No. 10, pp. 1699-1723
[6] GRIES, W..H., Preparation and certification of ion-implanted reference materials−A critical review, Pure and
Applied Chemistry, 1992, Vol. 64, No. 4, pp. 545-574
[7] Appendix to “Manual of symbols and terminology for physico-chemical quantities and units”, Pure and Applied
Chemistry, 1972, Vol. 31, No. 4, p. 579
[8] ISO Guide 30:1992,Terms and definitions used in connection with reference materials
[9] ISO/IEC Guide 99,International vocabulary of metrology−Basic and general concepts and associated terms
(VIM)
注記 上記のガイドは,TS Z 0032 国際計量計測用語−基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)
として公表されている。
[10] MOHR, P.J., TAYLOR, B.N., and NEWELL, D.B., CODATA Recommended Values of the Fundamental
Physical Constants: 2002, http://physics.nist.gov, and Reviews of Modern Physics, 2005, Vol. 77, No. 1, pp.
1-107,最新の値はhttp://physics.nist.gov/constantsを参照。
[11] IEC 60050-111:1996,International Electrotechnical Vocabulary−Chapter 111: Physics and chemistry, pp.
10-12
[12] Bethe H.A. Ann. Phys. (Leipzig). 1930, 5 pp. 325-400
[13] Fano U. Phys. 1954, 95 pp. 1198-1200