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K 0144:2018 (ISO 14707:2015) 

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 測定原理························································································································· 2 

5 装置······························································································································· 4 

5.1 グロー放電発光源 ·········································································································· 4 

5.2 光学系 ························································································································· 6 

5.3 光電検出器及び測定装置 ································································································· 6 

6 手順······························································································································· 7 

6.1 装置の検定 ··················································································································· 7 

6.2 分析方法 ······················································································································ 7 

附属書A(参考)安全性 ······································································································· 10 

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(2) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,表面化学分析技術

国際標準化委員会(JSCA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業

規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業

規格である。これによって,JIS K 0144:2001は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

  

日本工業規格          JIS 

K 0144:2018 

(ISO 14707:2015) 

表面化学分析−グロー放電発光分光分析方法通則 

Surface chemical analysis-Glow discharge optical emission spectrometry 

(GD-OES)-Introduction to use 

序文 

この規格は,2015年に第2版として発行されたISO 14707を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

グロー放電発光分光分析方法(以下,GD-OESという。)は,固体試料の元素成分を定量するために用い

られる。GD-OESはバルク分析又は深さプロファイル分析に使用される。バルク分析の場合は,深さ方向

の元素成分の変化は無視できると仮定する。これに対し,深さプロファイル分析の主目的は,深さ方向の

組成変化を記録することである。GD-OESによって分析できる層の厚さは,数nmから約100 μmまでの範

囲である。 

一般の機器分析にいえることであるが,GD-OESのよしあしは,機器の調整方法と操作の仕方とによる。

この規格は,GD-OESによって可能な限り最良の品質を得るために守らなければならない標準的な指針を

示すものである。 

適用範囲 

この規格は,グロー放電発光分光分析方法を,バルク分析又は深さプロファイル分析に適用する場合の

通則について規定する。この規格では,固体試料だけについて記載し,粉末・ガス試料又は液体の分析に

は言及しない。現在ある規格及び今後発行されるGD-OESの個別規格と一体として用いる分析装置及び分

析方法について記載するものである。 

長年にわたって開発されてきたグロー放電発光源は幾つかの型式があるが,円筒状の陽極をもつグリム

タイプは,直流電源及び高周波電源の両方で現在最も多く使用されている。陰極との接点は,元来のグリ

ムタイプは前面にあるが,例えば,マーカスタイプの放電発光源では,試料の背面に位置していることに

留意すべきである。ここに規定する通則は,同じく他の形式の放電発光源にも同様に適用できるもので,

グリムタイプの機器はあくまでも例である。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 14707:2015,Surface chemical analysis−Glow discharge optical emission spectrometry (GD-OES)

−Introduction to use(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

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引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS H 8501 めっきの厚さ試験方法 

注記 対応国際規格:ISO 3497:1990,Metallic coatings−Measurement of coating thickness−X-ray 

spectrometric methods(MOD) 

JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部:一般的な原理及び定義 

注記 対応国際規格:ISO 5725-1:1994,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and 

results−Part 1: General principles and definitions(IDT) 

JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行精度及

び再現精度を求めるための基本的方法 

注記 対応国際規格:ISO 5725-2:1994,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and 

results−Part 2: Basic methods for the determination of repeatability and reproducibility of a standard 

measurement method(IDT) 

JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部:標準測定方法の中間精度 

注記 対応国際規格:ISO 5725-3:1994,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and 

results−Part 3: Intermediate measures of the precision of a standard measurement method(IDT) 

JIS Z 8402-4 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第4部:標準測定方法の真度を求め

るための基本的方法 

注記 対応国際規格:ISO 5725-4:1994,Accuracy (trueness and precision) of measurement methods and 

results−Part 4: Basic methods for the determination of the trueness of a standard measurement 

method(IDT) 

ISO 6955:1982,Analytical spectroscopic methods−Flame emission, atomic absorption, and atomic 

fluorescence−Vocabulary 

ISO 11505:2012,Surface chemical analysis−General procedures for quantitative compositional depth profiling 

by glow discharge optical emission spectrometry 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 8501,JIS Z 8402-1,JIS Z 8402-2,JIS Z 8402-3,JIS Z 8402-4,

及びISO 6955:1982による。 

測定原理 

GD-OESによる分析は,次の操作によっている。 

a) 分析条件に適した大きさをもつ,一般に平板又はディスク状の試料を調製する(幅3 mm以上の円形

又は長方形で,直径又は縦横ともに通常20 mm〜100 mmのサイズが適している。)。 

b) グロー放電プラズマ中で発生するイオンスパッタリング及び粒子衝突による分析元素を原子化及び励

起する。 

c) 分析種の特性スペクトル線の発光線強度を測定する(深さプロファイルの場合には,放電開始からの

時間とともに発光強度を記録する。)。 

d) 既知の組成の標準物質を用いた校正により,試料に含まれる分析種の量を決定する(深さプロファイ

ル分析においては,組成とスパッタ速度とが既知の標準物質を用いた校正によって,スパッタ深さも

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決定する。)。 

GD-OESの模式図の例を,図1に示す。GD-OESは,発光源としてグロー放電部をもつ。グロー放電部

は,通常プラズマガスとしてアルゴンが入った真空部で構成されている。このプラズマガス中に置かれた

陽極と陰極との間に200 V〜2 000 Vの制御した高電圧をかけたときにグロー放電プラズマは持続する。分

析対象の固体試料が陰極として働く。 

グロー放電における試料物質の原子化は,イオン及び中性原子が負極(陰極)に衝突することで起こる

陰極スパッタリングによって行われる。プラズマ中で生成したイオンは,プラズマ中の電場によって陰極

表面に向かって加速される。イオン又は中性原子が表面に衝突するとき,その運動エネルギーは,表面原

子に伝わり,表面原子の一部がプラズマ中に放出される。プラズマ中にスパッタされた試料原子は電子又

は他の粒子との非弾性衝突によってイオン化又は励起される。励起された分析種原子の大部分は,元素特

有の波長の光を発して低エネルギー電子状態へ脱励起する。発光は分散素子,通常は回折格子を含む光学

分光計によって分析する。この発光は,適切な光学・電気機器を使って変換され,分析信号となる。多元

素を同時測定するために,通常,ポリクロメータ(多元素同時検出型分光器)が使用される。ポリクロメ

ータに設定されていないスペクトル線を測定するために,スキャニングモノクロメータ(走査型分光器)

が設置されていることもある。また,電荷結合素子(CCD)検出器は,広い波長域のスペクトルを連続的

に測定できる。金属,メタロイド及び非金属を問わず,通常,周期表のほとんどの元素を検出できる。 

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図1−GD-OESの模式図 

装置 

装置は,少なくとも次の要素で構成されている。 

5.1 

グロー放電発光源 

グリムタイプのグロー放電発光部の概略を,図2に示す。発光部には幾多の改良がなされてきた。箇条

4で示すように,試料は陰極として用いられる。陽極は,内径が1 mm〜10 mmで,代表的には4 mmの管

状のものである。陽極の先端面と陰極表面との間の距離は,一般に0.1 mm〜0.3 mmである。このため,

イオンスパッタは,陽極の内径にほぼ等しい直径をもった試料表面の円状の領域に限られる。 

グロー放電発光源を操作するためには,幾つかの周辺機器が必要になる。周辺機器は,電源,一つ又は

二つの真空排気系,プラズマガス供給源及び制御した方法でガスを導入する器具,並びに真空計からなっ

ている。冷却水を循環させた金属ブロックなどの冷却機構が,薄い試料に対して必要になる場合がある。 

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図2−グロー放電源の一例(グリム円筒状の陽極) 

a) 放電源パラメータ グロー放電装置は,直流(DC)又は高周波(RF)モードで動作させることがで

きるもの。また,直流電圧に高周波電圧を重ね合わせるなど,二つのモードの組合せも報告されてい

る。直流及び高周波電力モードの両方において,パルス放電も印加電力を周期的に開閉するために用

いられている。 

1) 直流電源では,電気的パラメータとして放電電流(1 mA〜200 mA)及び電圧(200 V〜2 000 V)が

適切である。電気的パラメータのほかに,機器の特性に対して他のパラメータも重要である。それ

らは,陽極の内径(1 mm〜10 mm),ガスの種類及び純度(例えば,99.999 %以上のアルゴン),ガ

ス流量及び圧力(100 ml/min〜500 ml/min,100 Pa〜1 500 Pa),並びに試料の物理的性質(例えば,

二次電子放出効率,スパッタリング収率)である。これらの全ての因子の複合的な効果によって,

グロー放電の分光化学的な特性が決まる。一般に,一定の電圧及び電流を得るために,ガス流量は

実時間とともに変えることを推奨する。例として,低合金鋼の直流のGD-OESバルク分析に対する

典型的な操作条件は,内径4 mmの陽極を用いた場合,アルゴン流量は250 ml/min,放電電圧は600 

V〜1 000 V,放電電流は20 mA〜60 mAである。スパッタリング速度は,与えられた条件下で20 nm/s

〜160 nm/sに変化し,代表的な値は100 nm/sである。 

注記 放電ガス流速が放電源の操作圧力を制御する実際的な方法であると考えられているが,そ

の推奨範囲は,放電源ごとに異なる特有のものである。ここでは,グリムランプについて

言及している。 

2) 高周波グロー放電の典型的な条件は,直流と同じ範囲のアルゴン流量及び直流と類似した放電の電

力及び電圧である。GD-OES装置の電気的なパラメータとして,進行電力及び反射電力,実効電圧

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(RMS),又は高周波波形のピーク電圧・電流を測定することに留意することが重要である。導電

性試料がスパッタリングされた場合,直流バイアスと呼ばれる平均電圧を測定することができる。

電力測定において,入射電力は高周波電源によってグロー放電システムに供給された進行電力であ

ることを理解しなければならない。電源ケーブル,冷却システムなどの電力損失,及びプラズマイ

ンピーダンスの不完全な整合に起因する反射電力のために,実効電力は供給電力よりも低く,実効

電力が実際にはグロー放電内部で消費されることを意味している。プラズマ点火前に,電力損失を

自動測定するためのシステムを採用することができる。この値は,測定中に入射電力から差し引か

れ,かなり正確な値で実効電力を測定できる。同様に,電圧/電流の測定においても,プラズマ中

の実効的な放電電圧/電流を正確に表していない場合がある。高周波電源は,いずれの場合におい

ても,通常3 MHz〜41 MHzの間である。一般的な固定周波数は,国内及び国際的な規制を遵守す

るために,6.78 MHz又は13.56 MHzである。 

導電性の試料以外に,高周波GD-OESによって,非導電性の試料の分析も可能である。非導電性

の試料表面をスパッタする速度は,一般に,1 nm/s〜50 nm/sの範囲である。導電性基板上の非導電

性層も測定対象となる場合がある。これらの試料に対して,印加する高周波電圧は,用いる装置に

よっても異なるが,一般に導電性試料の場合よりも高くなる。 

3) 直流及び高周波電力モードの両方において,スパッタリング速度を制御して高分子フィルムなどの

表面皮膜の損傷を低減するために,パルス放電が用いられる。パルス放電の周波数及びデューティ

ー比は分析対象試料に応じて決定するのが望ましい。それらの代表的な値は,それぞれ100 Hz〜300 

Hz及び20 %である。 

b) 放電源及び分光器のインタフェース 励起した試料の原子から放出される光は,レンズ又はミラーを

介して分光器の入口スリットへ導かれる。200 nmより短い波長をもった光(すなわち,真空紫外光)

を用いる場合には,グロー放電源から検出器までの全体の光学的な経路から酸素分子を十分に排除し

なければならない。これは,酸素分子が200 nmより短い領域に非常に強い吸収帯をもつからである。

窒素(又はアルゴン)などの適切な純ガスで系を置換することによって,又は約1 Pa以下の圧力に光

学経路を真空排気することによって,酸素を光学系から取り除くことができる。放電源と分光器とを

分離する窓(レンズ)を定期的に清掃しなければならない。 

5.2 

光学系 

一般的な装置は,分析元素に対応した固定チャンネルをもった多元素同時検出型分光器(例えば,ポリ

クロメータ)を装備している。また,走査型分光器(モノクロメータ)を多元素同時検出型分光器と併用

することも一般的に行われている。多元素同時検出型分光器又は走査型分光器のいずれにおいても,スペ

クトルバンドパス,すなわち,分光器の有効スペクトル分解能は,装置の回折格子の分散と幾何学的スリ

ット幅とで決まる。 

5.3 

光電検出器及び測定装置 

多くのグロー放電分光器は,信号検出のための光電子増倍管を備えている。最適な性能,すなわち,信

号強度,感度及び検出能を達成するには,低暗電流及び最大量子効率をもつ光電子増倍管が必要である。

さらに,非線形応答及びその飽和を避けるために,光電子増倍管のゲインを正しく選択しなければならな

い。この光電子増倍管のゲインは,分析種の濃度が異なる試料群を用いて,最も低濃度でも十分な感度が

得られ,一方最も高濃度でも検出器の飽和が起きないように調整する。電荷結合素子(CCD),電荷注入

素子(CID)などのアレイ型検出器は,広範囲なスペクトル線を同時検出するために使用される。データ

の保存及び評価のためには,増幅された検出器の出力をアナログ/デジタル変換器によってデジタル化し,

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コンピュータに転送する。 

手順 

6.1 

装置の検定 

6.1.1 

一般事項 

可能な限り最良の分析結果を出すためには,分光器及びそのシステムに接続する全ての装置の性能を検

定することが必要である。装置納入の際に機器製造業者による検定がなされていない場合は,自ら検定を

行う必要があるとともにその後も,定期的検定を行う必要がある。検査すべき主な部分は,グロー放電源,

光学系及び電気測定装置である。 

6.1.2 

グロー放電源 

適切な放電発光源パラメータ[5.1 a) 参照]及び試料(例えば,鉄鋼試料)を使って,次の事項を確認

しなければならない。 

a) 対象となるスペクトル線と連続バックグラウンド又はプラズマガス線との強度比で評価した放電中の

スパッタリング及びプラズマ状態の安定性 

b) 選択した試料による一定の放電条件下でのスパッタリング速度 

c) ガスの品質及び真空システムの気密性 

d) 陽極部の状態(例えば,陽極の先端面と試料表面との間隔) 

6.1.3 

光学系及び電気測定装置 

次の事項について検定しなければならない。 

a) 入射レンズで結像したグロー放電像を用いる分光器の入口スリットの位置合わせ。 

b) 適切な試料(例えば,低合金鋼試料)による使用する波長の範囲における分光器のスペクトル分解能,

並びに波長調整の精確さ及び安定性。 

c) 適切な時間にわたっての測定における,グロー放電をオン・オフしたときの検出器の読み出しの安定

性。 

6.2 

分析方法 

6.2.1 

一般事項 

検出限界,精確さ及び再現精度に対するグロー放電分光法の十分な分析能力を得るために,測定は適切

な放電条件下で行わなければならない。その適切な条件は,分析する試料の種類によっても異なるが,次

に記載する指針に従って分析する必要がある。 

GD-OESによる定量分析は,6.2.2〜6.2.4の手順で行う。 

6.2.2 

校正用試料の準備 

校正手順の信頼性によって,得られる分析結果の精確さが決まる。発光分光分析では,既知の組成の校

正試料を使用することが必要である。認証標準物質を使用することが望ましいが,標準物質も許容される。

校正試料の化学組成又は冶金履歴は,測定対象試料にできる限り類似していなければならない。分析元素

のスパッタリング速度と発光強度とを分析成分濃度の関数として求めるために,校正試料を用いる。 

深さプロファイルの定量化のための校正試料の組成は,必ずしも表面組成によく似ている必要はないが,

スパッタリング速度が再現性よく決められるものでなければならない。詳細は,ISO 11505:2012による。 

校正試料の形状及び寸法は,放電源の形状仕様によって異なる。試料は平らで,真空用シール材の接触

面を覆うのに十分な大きさでなければならない。さらに,その表面はよい真空を得るために滑らかで陽極

との間隔が適切な位置であることが必要である。正常な放電を持続するには,陽極の内壁及び先端面の試

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料蒸着物は,清掃器具によって定期的に取り除かなくてはならない。このため,リーマが通常使用される。 

測定中に問題が起こらないように,適切な校正試料を用いて次の事項を調べておかなくてはならない。 

a) 定量する分析元素の濃度範囲 

b) 試料又は放電ガスに起因するスペクトル線干渉の有無 

c) バックグラウンド発光及びその時間的ゆらぎの寄与 

d) 深さプロファイルに対しての適切なスパッタリング速度及びデータ取込み速度 

6.2.3 

測定系の最適化 

一般に,機器製造業者が作成した操作手順書には,校正試料を用いて装置立上げのために行う様々な操

作が明記されている。通常,次の事項を明示する。 

a) グロー放電部への試料の装着及び放電源を1 Pa程度まで真空排気する。 

b) 適正な放電条件(例えば,ガス流量,圧力)を設定する。 

c) 分析元素の波長を選択する。 

d) 信号強度の最適化のために,測定パラメータ(検出器のゲイン,積分時間など)及び放電パラメータ

(直流モードでは放電電圧及び電流,高周波モードでは電力など)を調整する。 

e) グロー放電を開始し,選択した条件で試料を分析する。 

それぞれのスペクトル線及び元素について,検量線を作成する。検量線は,バルク分析又は深さプロフ

ァイル測定に応じて,機器製造業者が推奨する適切なモデルによって作成する。自己吸収によって校正曲

線が非線形となった場合は,必要に応じて,他のスペクトル線を選ばなければならない。他の分析対象元

素からのスペクトル線の干渉がある場合は,機器製造業者から提供される方法に従って検量線を補正しな

ければならない。 

6.2.4 

測定結果の検証 

GD-OESにおける分析結果の信頼性は,次に記載する方法に従って明確に検証することが求められる。 

a) 少なくとも一つ以上の標準物質を基準として,分析結果の妥当性を検証することが望ましい。すなわ

ち,GD-OESで定量した分析元素の含有量が,適正な統計誤差の範囲内でその標準値と一致する必要

がある(JIS Z 8402-1,JIS Z 8402-2,JIS Z 8402-3及びJIS Z 8402-4参照)。 

b) 実際の分析を行う場合は,GD-OESで定量した試料の分析対象元素の含有量は,GD-OES以外の分析

方法で求めた分析結果と比較することが望ましい。この場合の他の分析方法としては,測定対象とな

る試料の分析元素及びマトリックス組成を勘案して,信頼性の高い分析結果を得ることができると一

般に認められているものを使用することが理想的である。二つの分析方法で得られた結果を比較する

場合には,個々の分析方法における繰返し精度(併行精度)及び再現精度について特に留意するのが

望ましい(JIS H 8501,JIS Z 8402-1,JIS Z 8402-2,JIS Z 8402-3及びJIS Z 8402-4参照)。 

6.2.5 

報告書 

GD-OESにおいては,測定に使用した次の実験条件(パラメータ)を記録しておき,かつ,分析結果を

報告するときにはこれらを付記することが望ましい。 

a) 励起源の種類(直流又は高周波) 

b) 直流励起源の場合,放電電圧及び電流 

c) 高周波励起源の場合,印加電力,反射電力及び周波数(可能な場合,実効電力,並びに導電性の試料

の測定の場合は実効電圧及び直流バイアス電圧) 

d) 放電ガスの種類及び純度 

e) ガス流量 

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f) 

ガス圧力(測定に使用した圧力計の種類及び位置) 

g) 陽極の形状及び寸法(特に内径) 

h) 測定時間又はスパッタリング時間 

i) 

分析線の波長 

j) 

分析元素の含有量 

k) 検出限界 

l) 

測定の繰返し精度 

m) スパッタリング量及びスパッタ深さ 

10 

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附属書A 

(参考) 

安全性 

A.1 一般 

GD-OESの安全については,今まで法規及び規格に記載されておらず,この方法に関して特に法規又は

推奨法はないが,装置操作者及びその周囲の安全のために,次のような多くの注意を払わなければならな

い。予防措置は,次の具体的な状況に関わっている。 

a) 高電圧電源の使用方法及び装置の接地方法 

b) 高周波の使用方法 

c) 圧縮ガス容器の使用及び保管方法 

d) 操作前及び操作中の安全点検 

A.2 高電圧電源の使用方法及び装置の接地 

電気配線は,法規に従って行わなければならない。特に,装置の接地には注意を払い,接地の有効性も

確認しなければならない。試料を取り扱う場合は,試料と陽極との間の高電圧は切っておかなければなら

ない。放電源又は試料に触れる前に,電源のコンデンサの放電を行わなければならない。 

A.3 高周波の使用法 

高周波による危害について確かな知識が不足している場合には,電磁波をできるだけ少なくしなければ

ならない。欧州電磁的両立性指令(2014/30/EU)が2014年2月に採択されており,2016年4月20日に実

施されている。これは,欧州におけるほぼ全ての電気・電子装置に適用されている。機器が過度の電気的

干渉を起こさないように,かつ,過度に影響を受けないようにする必要がある。 

A.4 圧縮ガス容器の使用及び保管方法 

圧縮ガス容器(以下,容器という。)は,定期的に特定機関によって点検されなければならない。容器は,

できれば実験室内において使用したり,実験室内に保管したりしないことが望ましい。直射熱から離れた

通気性のよいところであり,係員が安全点検しやすい実験室外部に常時設置するのが望ましい。容器は,

減圧弁を備えていなければならない。二つ以上の容器が使用又は隣接して保管されている場合には,使用

中の容器に目印を付けておかなければならない。同じ容器で二つ以上の機器に供給するときには,使用し

ている機器を常に明示しなくてはならない。一般的な検査は,容器の安全性を確実にするために使用する

ごとに行うことが望ましい。毎日又は作業シフトで実験室の最後の人が,全ての容器について,適切な状

態であることを確認することが望ましい。 

A.5 操作前及び操作中の安全点検 

全ての安全装置が機能しているかどうかを装置の使用前に確認しなければならない。グロー放電の開始

前及び開始後のしばらくは,十分な真空状態が保たれるよう,ガスの流量及び圧力の安定性を点検しなけ

ればならない。