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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人バイオインダストリー協会(JBA)
/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,
日本工業標準調査会の審議を経て,大臣が制定した日本工業規格である。
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 1
4. 装置 ······························································································································ 3
4.1 装置の構成 ··················································································································· 4
4.2 試料保存部,移動相保存部及び画分保存部 ·········································································· 4
4.3 送液部 ························································································································· 4
4.4 カラム部 ······················································································································ 5
4.5 検出部 ························································································································· 6
4.6 分画部 ························································································································· 6
4.7 装置制御部 ··················································································································· 6
4.8 温度制御部 ··················································································································· 6
4.9 データ処理部 ················································································································ 6
4.10 配管部 ························································································································ 6
5. 溶離液 ··························································································································· 7
6. カラム及び分離方式 ········································································································· 7
7. 操作 ······························································································································ 7
7.1 装置の設置 ··················································································································· 7
7.2 安全性 ························································································································· 7
7.3 負荷溶液の調製 ············································································································· 8
7.4 移動相 ························································································································· 8
7.5 溶媒 ···························································································································· 8
7.6 操作 ···························································································································· 8
8. 妥当性確認 ····················································································································· 9
9. スケールアップ ·············································································································· 11
10. 分取結果の表示項目 ······································································································ 12
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日本工業規格 JIS
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分取液体クロマトグラフィー通則
General rules for preparative liquid chromatography
1. 適用範囲 この規格は,物質の分取に用いる分取液体クロマトグラフィーの通則について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析通則
JIS K 0124 高速液体クロマトグラフ分析通則
JIS K 0127 イオンクロマトグラフ分析通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0214 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
JIS K 3600 バイオテクノロジー用語
JIS K 3610 生体工学用語(生体化学部門)
JIS Z 8103 計測用語
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0114,JIS K 0124,JIS K 0127,JIS K 0211,JIS K
0214,JIS K 3600,JIS K 3610,JIS Z 8103及びJIS Z 8122によるほか,次による。
a) 一般的な用語 一般的な用語の定義は次による。
1) 分取液体クロマトグラフィー(preparative liquid chromatography) 移動相として液体を用いるクロ
マトグラフィーによって目的物を分取する方法。
2) 精製(purification) 目的物から不純物を除去し,目的物の純度を高める操作。
3) 充てん層(packing layer) カラムに充てんされた充てん剤の層。
4) 負荷(load), 試料注入(sample injection) 試料をカラムに注入する操作。
5) 負荷量(load mass,load volume) カラムに注入する試料の質量,又は容量。
6) 負荷溶媒(load solvent,sample solvent) 試料を溶解する液体。
7) 溶離(elution) カラム内に保持されている成分を展開,溶出させる操作。
8) 溶出(elution) 液体を用いてカラム内に保持されている成分をカラム外へ流出させる操作。
9) 洗浄(cleaning) 目的物が分取された後,カラム内に残っている保持成分を溶出させる操作。
10) 洗浄溶媒(cleaning solvent) 目的物が分取された後,カラム内に残っている保持成分を溶出するた
めに用いる液体。
11) 再生(regeneration) 分取に用いた充てん剤の状態を初期状態に戻す操作。
12) 平衡化(reequilibration)分取に用いたカラムを初期状態に戻す操作。
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13) 分画(fractionation) カラムで分離され,溶出してきた成分を分け取る操作。
14) 画分,フラクション(fraction) 分画した溶液。
15) 溶媒回収(solvent recovery) 分取に用いた溶媒を再利用を目的に回収する操作。
16) チャレンジテスト(challenge test) 重要な製造工程において,最悪の事例を想定して製造条件が標
準の限界値にあるときの製品品質を確認するテスト。
b) 装置に関連する用語 装置に関する用語の定義は,次による。
1) プレカラム(precolumn) 不要な成分を除去し,必要な成分を含む画分をメインカラムに送るため
に,メインカラムの前に設置するカラム。
2) ガードカラム(guard column) 試料中の不純物や強吸着成分によるメインカラムの劣化を防ぐため
に,メインカラムの前に設けるカラム。
3) スカベンジャーカラム(scavenger column) 移動相溶媒由来の不純物及び粒子状物質を除去する
ためにメインカラムの前に設けるカラム。
4) フリット,カラムフィルタ(frit,column filter) 充てん剤をカラム内に保持し,移動相を通過させ
る多孔板。
5) 分散板(distributor) カラム断面方向に試料及び/又は移動相が均一に負荷,通液するようにカラ
ムの入口及び/又は出口に設ける整流板。
6) カラム槽(column oven) カラムの温度を一定に保つために,カラムを収容する槽。
7) カラムジャケット(column jacket) カラムの温度を一定に保つためにカラムの周囲に取り付けるも
の。
8) カラム管(empty column) カラムを収納している管。空カラムともいう。
9) カラム栓(column end fitting, column terminator) 溶液をカラムに導入又は流出するための構造物。
10) 可動栓型カラム(end fitting adjustable column, adjustable-terminator column) カラムの大きさに
よってカラム栓の位置を調節できるように設計したカラム。
11) アクシャルコンプレッション型カラム (axial compression column) 可動カラムで,溶媒の流れ方向
に圧力をかけられるカラム。
12) ラジアルコンプレッション型カラム(radial compression column) カラムに対して溶媒の流れの垂直
方向から圧力をかけられるカラム。
13) オートサンプラ(automatic sampler) 自動的にカラムに試料を負荷する装置。
14) 多波長検出器(photodiode array detector) 移動相中での試料成分の吸光スペクトル及び吸光度の
時間変化を移動相の流れを止めることなく連続的に測定する装置。
15) ダンパ(damper) ポンプによる脈流を低減する装置。
c) 方法に関する用語 方法に関する用語の定義は,次による。
1) シングルカラムシステム(single column separation system) 1本のカラムを用いて分取するクロ
マトグラフ法システム。
2) マルチカラムシステム(multiple column separation system) 2本以上のカラムを組み合わせて分取
するクロマトグラフ法システム。
3) カラムスイッチング(column switching) 2本以上のカラムを切り替えて分取する方法。最初のカ
ラムで分離した必要な画分を他のカラムに負荷し,さらに分離を行って分取する。この場合,カラ
ムを切り替えるために切り替えバルブを用いる。また,異なる分離モードを組み合わせたりする。
4) 半連続試料注入法(semi-continuous sample injection method) 最初に負荷した試料の目的物ピーク
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が,次に負荷する試料の目的物ピークとカラム内で重ならないような時間間隔で負荷する方法。
5) 擬似移動床クロマトグラフィー(simulated moving bed chromatography) 原料及び溶離液の供給
排出位置を切り替えて固定相を動かすことなく行う連続クロマトグラフィー。
6) アイソクラチック溶離法(isocratic elution) 一定組成の溶離液を用いて試料成分を展開,溶出させ
る方法。
d) 操作パラメータに関する用語 操作パラメータに関する用語は,次による。
1) 充てん密度(packing density) カラム管内の充てん剤の質量をベッドボリュームで除した値。
2) ベッドボリューム(bed volume,略号:BV) カラム内の充てん剤の容積(充てん層の高さにカラ
ム断面積を乗じた値)。
3) 溶媒強度(solvent strength) カラム内に保持した試料成分を溶出するときの溶媒の溶出力を表す。
試料成分を早く溶出させる溶媒は,遅く溶出させる溶媒より“溶媒強度が強い”という。
4) 線速度(linear velocity,略号:LV) カラム内の移動相の速度で,その大きさは単位時間当たりの
流量をカラム断面積で除した値。
5) 空間速度(space velocity,略号:SV) 1時間にカラムに通液する移動相容量をカラム内の充てん
剤容積で除した値。
6) 負荷率(load ratio) 負荷量とカラムに充てんしている充てん剤量との比率。ここで,充てん剤量
とは,シリカゲル系充てん剤などの乾燥状態で市販されている充てん剤は,充てん剤質量,ポリマ
ー系充てん剤などの湿潤状態で市販されている充てん剤は,充てん剤体積を用い,混乱防止のため,
負荷率の単位(質量%又は質量/体積%)を明記する。
7) 精製速度(purification rate) 単位時間当たりの目的物の精製質量。
8) ピークの広がり(peak broadening) 試料成分の溶出液中の分布幅。
9) ピーク対称度(asymmetry factor,略号:As) ベースラインから10%のピーク高さの位置におけ
るピーク幅をピークトップからベースラインへ下ろした垂線で二分したとき,ピーク立ち下がり側
の距離をピーク立ち上がり側の距離で除した値(As 0.1)。
10) スケールアップファクター(scale up factor) スケールアップする倍率。
11) 精度管理(quality control) 併行精度(repeatability),再現精度(reproducibility),変動係数(coefficient
of variation,略号:CV)などにより構成される管理手法。(参照JIS Z 8103)
e) その他の用語 その他の用語は,次による。
1) 排除限界 (exclusion limit) 充てん剤の細孔径に入り込める分子サイズの上限。
2) SEC校正曲線(SEC Calibration curve) サイズ排除クロマトグラフィーにおいて用いる試料成分の
溶出体積と分子量の対数値との関係を示す線。
3) 強吸着成分(highly retained sample) 保持容量が大きくて洗浄を行っても容易に溶出しない成分。
4) イオン対試薬(ionpairing reagent) イオン性の成分及びイオン対を形成するイオン性化合物。
5) デッドスペース(dead space) 移動相の流れが滞留する部分。
4. 装置
4.1
装置の構成 分取液体クロマトグラフは,試料保存部,移動相保存部,送液部,カラム部,検出部,
分画部,画分保存部,廃液部,データ処理部,装置制御部,温度制御部及び配管部で構成する。基本構成
の一例を図1に示す。
a) 試料又は移動相と接する部分の材料は,試料の変質及び吸着を生じさせない,試料又は移動相によって
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侵されない,試料又は移動相を汚染させないなどの条件を満たすものを選択して用いる。
b) 装置制御部は,自動制御を行う場合に用いる。
c) 温度制御部は,必要に応じて設置する。
装置制御部
試料
温度制御部 データ処理部
保存部
廃液部
移動相
送液部 カラム部
検出部
分画部
画分
保存部
保存部
図1 分取液体クロマトグラフの基本構成の一例
備考 実線:試料の移動を表す。 点線:制御信号系を表す。
4.2
試料保存部,移動相保存部及び画分保存部
a) 試料保存部,移動相保存部及び画分保存部の各槽の材質は,試料及び溶媒によって侵されたり,試料
及び溶媒を汚染したりすることのないものとする。
b) ふた付きのタンクを用いる場合は,タンク内の気体が出入りする部分を設け,必要に応じて,適切な
フィルタを取り付ける。
4.3
送液部
4.3.1
ポンプ 送液部のポンプは,次の条件を満足しなければならない。
a) 流量は目的に応じた精度をもつ。
b) 流量調節が可能である。
c) 必要な圧力で送液が可能である。
d) 脈流が小さい。
e) 接液部の材質が試料又は移動相によって侵されない。
f)
接液部の材質及び構造によって試料や又は移動相が汚染されない。
g) デッドスペースが少ない構造である。
4.3.2
試料,移動相のろ過 試料又は移動相中の微粒子及びごみは,カラムの目詰まりの原因になるので,
カラムに入るまでの前段階で適切なろ過を行って除去する。
4.3.3
溶媒混合
a) 溶媒と混合する方式は,高圧混合方式及び低圧混合方式のいずれかによる。
1) 高圧混合方式 2台以上のポンプを用いて,各ポンプの吐出量を調節することによって吐出側で混
合する方式。
2) 低圧混合方式
1台のポンプを用いて,吸引側で混合する方式
対象となる溶媒を混合して所定割合の溶離液を調製する場合,各溶媒槽からの配管にバルブを設け,
バルブの開閉時間を制御することによって,ポンプ吸引側で混合を行う。
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b) 必要に応じて混合機を設ける。
c) 混合に伴い気泡が発生する場合は,適切な手段で気泡の除去,抑制を行う。
4.4
カラム部 カラム部は,カラム管,カラム栓,分散板,フリット,及び充てん剤で構成する(図2)。
カラムは,パックドカラム,可動栓型カラム,アクシャルコンプレッション型カラム,ラジアルコンプレ
ッション型カラムなどとする。
a) カラムは,分取目的に適した性能をもたなければならない。
b) カラム内の充てん層は,操作条件下で安定に維持されなければならない。
図2 カラム構成
4.4.1
カラム管 カラム管の材質は,ステンレススチール,ガラス,プラスチック製などとし次の条件を
満足しなければならない。
a) 使用に耐える十分な強度をもつ。
b) 内面は,平滑である。
c) 材質は,試料又は移動相によって侵されたり,試料及び移動相を汚染したりしない。
4.4.2
カラム出入口の構造 カラム出入口は、カラム内部と外部を仕切るカラム栓,試料及び移動相を充
てん層に均一に負荷,通液させるための分散板及び充てん剤を支持し、移動相を通過させるためのフリッ
トで構成する。
カラム栓は、カラム管端部に固定されるもの及びカラム内を移動させることができるピストンタイプのも
のとする。カラム出入り口の構造は次の条件を満足しなければならない。
a) カラム栓,分散板及びフリットは,使用に耐える十分な強度をもつものとする。
b) カラム栓,分散板及びフリットの接液部の材質は,試料及び移動相によって侵されたり,試料及び移
動相を汚染したりすることのないものを用いる。
c) カラム栓は,試料及び移動相の漏れがないようにシール構造を備えるものとする。
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d) 分散板は,カラム入口から導入される試料及び移動相が充てん層断面に均一に分散させる構造をもつ
ものとする。
e) 分散板は,カラム出口では充てん層から溶出する試料成分及び移動相を均一に集水できる構造をもつ
ものとする。
f)
フリットは,カラム内から充てん剤を流出しないように,少なくとも充てん剤より小さな目の幅のも
の。
4.4.3
充てん剤 充てん剤は,操作条件下で物理的及び化学的に安定なものを用いる。
4.5
検出部 検出器は,カラムから溶出してきた試料成分を直接的又は間接的に検出できるものを用い
る。
4.5.1
吸光光度計 移動相中での試料成分の吸光度を測定するものとする。
4.5.2
示差屈折計 移動相中の試料成分と参照する溶液(一般には移動相と同じ溶液を用いる。)との屈
折率の差を検出するものとする。
4.5.3
電気伝導率計 移動相と移動相中の試料成分との電気伝導率の差を測定するものとする。
4.5.4
その他の検出器 その他の検出器として次に示すものとする。
a) 蛍光光度計
b) 電気化学検出計
c) 化学発光光度計
d) 旋光光度計
4.6
分画部 分画部は,カラムから溶出した試料成分のうち,必要な部分を分画できる構造をもち,次
の要件を満たすものとする。
a) バルブ操作などによって流路を切り替えて分画できる。
b) 分画部の配管にはデッドスペースがない。
4.7
装置制御部 装置制御部は,クロマトグラフを構成するポンプ,バルブ,検出器,記録器などに作
動命令を送り,装置を自動制御する部分をいう。装置制御部には,コンピュータ,シーケンサ,操作盤な
どを用いる。
装置制御部及びクロマトグラフを構成する機器のインターフェイスとしては,信号の入出力機器(I/Oボ
ードなど),信号変換器(A/D,D/A変換器など)及びRS232Cなどの通信方式を用いる各種通信機器があ
る。装置制御部は次の要件を満たすものとする。
a) ポンプの送液制御ができる。
b) 検出器からの信号を受けてあるいは時間制御によりピークの分画ができる。
4.8
温度制御部 温度制御部は,移動相温度及びカラム温度を制御するための装置を備えた部分をいう。
温度制御は,熱交換器,恒温槽,ジャケット,保温材などを用いて行う。
温度制御装置は,移動相又はカラムを必要な温度範囲に保つことができるものとする。
4.9
データ処理部 データ処理部は,記録装置及びデータ処理装置で構成する。
a) データ処理装置 クロマトグラム,保持時間,ピーク面積値などを表示できるものとする。
b) 記録装置 記録装置は,クロマトグラムなどを記録するもので,必要に応じて取り付ける。
4.10 配管部 配管部は,移動相及び試料が流れる配管,並びにバルブ部分で構成する。
配管の材質は,ステンレススチール,ふっ素樹脂,その他の合成樹脂,ゴムなどとする。
a) 配管及びバルブは,使用に耐える十分な強度をもつものとする。
b) 配管及びバルブの接液部は,試料及び移動相により侵されたり,試料及び移動相を汚染したりするこ
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とのないものを用いる。
c) 配管,バルブ及び継ぎ手は,互換性を配慮したものを用いることが望ましい。ここで,互換性は配管
径,ねじの形式などをいう。
5. 溶離液 溶離液は,次による。
a) 溶離液は,充てん剤に対して不活性で,試料の分取,及び検出に適したものを用いる。
b) 溶離液中の微粒子及びごみは,カラム目詰まりの原因になるので,カラムに入るまでの前段階で適切
なろ過を行って除去する。
6. カラム及び分離方式の分類 カラムと分離方式は,分離モードによる分類及びカラムシステムによる
分類とする。
a) 分離モードによる分類
1) 順相クロマトグラフィー
2) 逆相クロマトグラフィー
3) イオン交換クロマトグラフィー
4) サイズ排除クロマトグラフィー
5) アフィニティクロマトグラフィー
b) カラムシステムによる分類
1) シングルカラムシステム
2) マルチカラムシステム
3) 擬似移動床クロマトグラフィー
4) 超臨界流体クロマトグラフィー
7. 操作
7.1
装置の設置 装置の設置は,次による。
a) 腐食性ガス及びほこりが少なく,換気が良い室内に設置する。
b) 振動及び直射日光を避ける。
c) 強い磁気及び高周波の影響を避ける。
d) 供給電源は,装置の仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数とし,電圧変動は±10%とする。
e) 接地抵抗1000オーム未満の接地点を設ける。
7.2
安全性 安全性は,次による。
a) 試料及び移動相の取扱い並びに移動相溶媒の回収は,危険性及び有害性に十分に注意して行う。それ
らの廃棄についても安全化,無毒化などの配慮をする。
b) 危険物の取扱いについては,関連法規の規定及び所轄消防署の指導に従う。また,必要に応じて装置
を防爆仕様(耐圧防爆,内圧防爆,安全増防爆,本質安全防爆など)とする。
c) 毒物,劇物の取扱いについては,関連法規の規定に従う。また,必要に応じて保護具(保護めがね,
手袋,防毒マスクなど)を着用する。
d) 装置は,接地点に接地する。
e) 高圧容器詰めのガスを利用するときは,関連法規の規定に従う。また,高圧ガスに関する法規に規定
された圧力以下の容器を扱う場合は,容器が転倒しないように固定する。
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f)
装置運転に先立ち,配管接続部,流路などから液漏れ及びガス漏れがないことを十分に点検する。
g) 電気を用いた装置は,感電するおそれがあるので,装置の点検修理は,原則として電源を切って行う。
h) 検出器に用いられる光源ランプの保守及び交換に際し,検出器によっては点灯時,紫外線が放射され
ている場合があるので,必ず眼の保護具を用いる。また,検出器は,発熱していることがあるので,
直接触れるときは冷えていることを確認する。
7.3
負荷溶液の調製 負荷溶液の調製は,次による。
a) 負荷溶媒は,試料が溶解する溶媒を用いる。
b) 負荷溶媒に溶存しない不純物,微粒子などは,あらかじめフィルタなどで除去する。
c) 負荷溶媒は,溶離液と溶媒強度が同じか又は弱い溶媒を用いるのが望ましい。
7.4
移動相 移動相は,次による。
a) 装置,カラムなどに悪い影響を及ぼさない。
b) 検出器は,ベースラインが低く安定である。
c) 溶離過程で気泡を発生しないように十分に脱気する。
7.5
溶媒 溶媒は,次による。
a) 溶媒は,大量に用いるので非常に純度の高いものが望ましい。
参考 高速液体クロマトグラフィー用規格の溶媒が市販されている。
b) できるだけ反応性がなく,粘度の小さいものが望ましい。
c) 検出器での検出感度が小さいものが望ましい。
7.6
操作
7.6.1
分取準備及び条件の設定 分取準備及び条件の設定は,次による。
a) カラムの準備
b) 移動相の調製及び流量の設定
c) 負荷液の調製
d) カラム及び移動相の温度設定
e) 検出器の感度設定
f) データ処理部の条件設定
g) 分画容器の準備
7.6.2
分取の実施 分取の実施は,次による。
a) 溶離液の送液開始
b) ベースラインの安定度の確認
c) 試料負荷 ポンプ,ループなどでカラムに試料を負荷する。
d) 目的成分の分画 目的ピークを必要に応じて分画する。
7.6.3
分取画分の分析 分取画分の純度分析及び定量を行う。分析法及び定量法は,分析対象物に適した
方法で行う。
7.6.4
分取結果の整理 分取結果の整理は,次による。
a) クロマトグラムの整理
1) 分取実施日時及び分取実施者名
2) 分取装置名
3) カラムの名称及びロット番号
4) 充てん剤の名称,ロット番号及び充てん量
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5) 移動相の種類と流量(グラジエントの場合はグラジエント条件)
6) 液圧力
7) カラム及び移動相の温度
8) 検出器の名称及び検出条件
9) 試料名及び試料ロット番号
10) 試料負荷量及び負荷溶媒の種類
11) 分画条件
12) クロマトグラムの分画位置及び画分番号の記述
13) 記録条件
14) その他必要事項
b) 分取画分の整理 各分取画分の純度及び回収率を求め,必要画分を特定する。
8. 妥当性確認 分取液体クロマトグラフィーの妥当性確認を行う場合は,次による。
a) 据付時適格性確認(Installation Qualification:略語IQ) 設備の適格性を確認するため,設備が正し
く製作,組立て及び据付けられていることを照合する。照合に際しては以下の文書を使用し,照合結
果はIQチェックリスト及びIQ相違報告書にまとめる。
1) 機器の取り扱いを含む図書。例えば,Drawing & Document Index,General Specification Instrument
Specificationなど。
2) 設計図面(Engineering Drawings) 機器の完成図などの図面。
3) 購入仕様書 購入側及びメーカー側の購入仕様書を用いて設置されているものと比較する。
4) 機器リスト(Equipment List) 図面及び仕様書を基に作成したすべての機器リストの存在及び設置
を確認する。
5) 予備部品リスト 予備部品リストを照合する。
6) 計装機器リスト “重要”の区別がされている計装機器のリストの存在及び設置を確認する。重要
機器については,校正記録の存在を確認する。
7) 製品接触面の材質リスト 製品に接触する材質のリスト。接触材質が製品に対して溶出したり,反
応したりしないものであることを確認する。
8) 用役の品質 すべての用役が要求仕様どおり接続され,供給されていることを確認する。
9) セットポイント及びパラメーター 要求されたセットポイントが設定されていることを確認する。
10) 作業標準書(Standard Operating Procedure:略語SOP)必要な操作,メンテナンス,洗浄,校
正などのSOP。
11) IQチェックリスト 取り付けるべき機器及び部品が正しく取り付けられていることを確認。
12) IQ相違報告書
1)〜11)の項目を検証して相違がある場合は,この報告書に記録し,解決方法
を記し,必要に応じて処置を行う。
b) 運転適格性確認(Operational Qualification:略語OQ) 設備の適格性を確認するため,設備が設
定仕様どおり機能することを確認する。次の検査による動作確認が必要である。1)〜7) の項目を検
証して相違がある場合は,検査成績書及びOQ報告書に記録し,解決方法を記し,処置を行う。
1) 計装機器の校正 OQに必要な計装機器類を一覧表にし,校正状況を確認する。校正がJISなどの
公定法で校正され,校正期限が有効範囲内であり,トレーサビリティーがあることを確認する。
2) 制御の流れ及び安全装置の検査 安全装置及びインターロックの試験を行い,コントロールシーケ
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ンスが期待どおり動作することを確認する。
3) ポンプの性能検査 規定どおりの圧力で,規定どおりの流量が得られることを確認する。
4) 制御装置の入出力検査 信号出力の確認は,信号をキーボードなどから入力して,出力作動及びデ
バイスの反応による動作確認を行う。
5) バッチシミュレーション及びプログラム機能チェック 適切な移動相を用いてすべてのステップが
正常に作動することをシミュレーションによって確認する。プロセスのパラメータによってバルブ,
ポンプ,タイマーなどが正常に作動するか,アラームなどが正常に動くかを確認する。
6) プログラムの検証 適切な移動相を用いて,手動によって試験を行う。
それぞれのステップの機能の記述及びプログラムのフローチャートを参照し,各ステップでのチ
ャレンジ試験内容を定める。可能なチャレンジ試験とは,誤った命令,バルブの誤開(又は誤閉),
アラームが作動する状況などである。この場合は,通常カラムを外しておく。
7) 装置洗浄 医薬品を製造する機器については,使用済みの機器であれば,今までの物質が残留物と
して混入しないように洗浄を行う。また,新規購入機器であれば,製造搬入時に機器に付着してい
る微粒子,油分などが許容値以下となるように洗浄を行う。
8) OQ相違報告 1)〜7) の項目を検証して相違がある場合は,OQ相違報告書に記録し,解決方法を
記し,処置を行う。
c) 性能適格性確認(Performance Qualification) 稼働適格性を確認するため,設備が設定仕様どおり機
能することにより,意図した性能を発揮することを確認する。
実際の試料を用いて実液運転を行い,最悪の場合を想定し,チャレンジテストを行うなどして,あ
らかじめ決められた判定基準と照合し,期待された結果が恒常的に得られることを確認する。
d) カラムの性能評価 定期的に適切な頻度で実施する。あらかじめ決められた標準条件でクロマトグラ
ムを測定し,理論段数,及びピーク対称度が管理基準値内にあることを確認する。
1) 理論段数は,半値幅法によって測定する。
2) ピーク対称度は,ピーク高さの10%の位置の対称度で測定する
3) カラムの性能評価は,次の条件で実施する。
カラム:分取に用いるカラムを用いる。
移動相:適切な溶離液を用いる。
流速 :一定の値を用いる。( 例えば,線流速 2m/hなど)
温度 :一定の温度範囲内にする。
検出 :試料を検出できるものを用いる。
試料 :標準物質又は目的物などの試料成分
負荷量:少量(通常10-6~10-4g試料/充てん剤量)
e) 装置のキャリブレーション 適切な頻度で定期的に実施する。
1) ポンプ ポンプ流量の評価設定流量と実測流量との差を求め,管理基準値内にあることを確認する。
なお,実測流量は,移動相を送液し,これを容器に受け取り,その量を測定することによって求
める。
2) 検出器
2.1) 吸光光度計 波長正確さ,波長設定繰返し精度,測光正確さ,測光繰返し精度,ベースライン平
坦度,ベースライン安定度,ノイズレベルなどを測定し,管理基準値内であることを確認する。
2.2) 示差屈折計 ランプ交換,フローセル交換及び検出素子(フォトダイオード)交換実施時に,標
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準物質(しょ糖など)の水溶液及び純水を用いてスパン調整を行う。
3) 計器類 圧力計,温度計などは,トレーサビリティーが確立されている標準器を用いて校正する。
9. スケールアップ
a)スケールアップは,次のいずれかによる。
このような変更を行う場合,各充てん剤に対し,流速と理論段数との関係,通液圧と流速との関係のデ
ータがあればあらかじめ理論段数及び通液圧の予測ができる。通液圧は,下記パラメータの変更で変化し,
また,装置の耐圧を決める上で重要なパラメータになるため把握しておく必要がある。
1) 最も単純なスケールアップは,次に示すバラメーターを変えずに,カラム径を大きくする方法であり,
カラム径の比の2乗のスケールアップが可能である。
充てん剤
移動相の線流速
温度
試料の負荷率
負荷溶媒
カラム長さ
2) 理論段数が同じであればカラムの分離性能は同じであると考え,理論段数が同じになるように次のパ
ラメータを変更し,経済性の良い条件に設定後,カラム径を大きくしてスケールアップすることがで
きる。ただし,小形カラムを用い,変更後の条件で,分離の確認を行っておくことが望ましい。
充てん剤の粒径
移動相の種類及び組成
カラムの長さ
b) スケールアップに伴い,経済性及び取扱い上,次の項目を考慮する。
1) 充てん剤
品質が安定している。
安定に大量供給されている。
2) 移動相溶媒
組成が単純である。
回収が容易である。
廃棄が容易である。
3) 装置
構成機器の仕様が適切である。
自動化の程度が適切である。
装置の妥当性確認が行われている。
危険物を扱う場合は,適切な防爆グレードとなっている。
必要な耐圧をもつ。
10. 分取結果の表示項目
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a) 試料名及び試料起源
b) クロマトグラフシステムの記録
1) 分取実施日時及び分取実施者名
2) 分取装置名
3) カラムの名称及びロット番号
4) 充てん剤の名称,ロット番号及び充てん量
5) 移動相の種類及び流量(グラジエントの場合は,その条件)
6) 通液圧力
7) カラム及び移動相の温度
8) 検出器の名称及び検出条件
9) 試料名及び試料ロット番号
10) 試料負荷量及び負荷溶媒の種類
11) 分画条件
12) クロマトグラムの分画位置及び画分番号の記述
13) 記録条件
14) 記録ファイル番号
15) 各画分の分析結果(純度,回収率など)
c) 分取品の純度