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K 0134 : 2002  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本分析機器工業会 (JAIMA) /財

団法人日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本

工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 0134 : 2002 

近赤外分光分析通則 

General rules for near-infrared spectrophotometric analysis 

1. 適用範囲 この規格は,近赤外分光光度計を用いて無機物及び有機物の定性分析又は定量分析を行う

場合の通則について規定する(1)。 

注(1) 近赤外線は,波長700〜2 500nm(波数14 286〜4 000cm−1)の領域を指すこととする。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 6802 レーザ製品の安全基準 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門) 

JIS K 0212 分析化学用語(光学部門) 

JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門) 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0211,JIS K 0212及びJIS K 0215によるほか,次

による。 

なお,括弧内の対応英語は参考のために示す。 

a) 干渉図形 (interferogram)  マイケルソン干渉計からの信号を光の光路差を横軸に,光の強度を縦軸

にとって示した図形。インターフェログラムともいう。 

b) アポダイゼーション (apodization)  干渉計が有限の走査距離をもつために生じるスペクトルのひず

みなどを軽減するために,干渉図形に適切な関数を重畳する数学的操作。 

c) 正反射法 (specular reflection method)  試料表面での光の正反射(鏡面反射)を用い,反射光の強度

を測定する方法。反射率は複素屈折率の関数となるので吸収スペクトルに直すにはクラマース−クロ

ニッヒ変換が必要である。 

d) クラマース−クロニッヒ変換 (Kramers−Kronig transformation)  反射測定で得られた複素屈折率

のスペクトルから吸収スペクトル及び/又は屈折率のスペクトルのそれぞれを求める方法。 

e) 拡散反射法 (diffuse reflection method)  試料からの散乱光を用い,反射光の強度を測定する方法。吸

収スペクトルに直すには,クベルカ−ムンク変換を用いて吸収スペクトルに変換する。 

f) 

クベルカ−ムンク変換 (Kubelka−Munk transformation)  拡散反射法で測定したスペクトルを吸収

スペクトルに変換する方法。 

g) 透過反射法 (transflectance)  底部に拡散反射板をもつセルに測定光を入射させたときに,透過及び

拡散反射した光をともに測定する方法。 

h) 音響光学フィルター (acousto-optical tunable filter ; AOTF)  物質中を伝ぱする音波の振動数を電気

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的に変化させ,格子間隔を変化させることのできる回折格子を利用したバンドパスフィルター。この

原理を利用した音響光学素子には回折格子として用いられるものもあり,音響光学的回折格子と呼ば

れる。 

i) 

ケモメトリックス (chemometrios)  数学的手法や統計的手法を適用し,最適手順及び最適実験計画

の立案・選択を行うとともに,化学的データから得られる化学情報量の最大化を目的とする手法の総

称。パターン認識,定量,ニユーラルネットワークなど多くの方法がある。 

4. 概要 近赤外分光分析法は,固体(粉体含む。)又は液体試料と近赤外光との相互作用による光の吸収

及び/又は散乱などを測定し,それらのスペクトルを用いて定性分析,定量分析を行う方法である。 

近赤外分光分析法に使用する装置には,回折格子,音響光学素子など用いた分光系で構成された分散形

近赤外分光光度計,干渉計,スペクトルを得るための演算器などで構成されたフーリエ変換形近赤外分光

光度計,干渉フィルターを用いた干渉フィルター形近赤外分光光度計などがある。 

近赤外分光分析法においては,固体(粉体含む。)試料では反射法,液体試料では透過法が主として用い

られる。得られたスペクトルから,主として重回帰分析法,因子解析法などの多変量解析法を用いて,定

性分析及び/又は定量分析を行う。 

5. 装置 

5.1 

装置の構成 

5.1.1 

分散形近赤外分光光度計 分散形近赤外分光光度計の構成の例を図1及び図2に示す。分散形近赤

外分光光度計には,分光部に分散素子として,回折格子,プリズム,音響光学素子などを用いる。検出の

方法には,単一波長における光を検出するもの及び複数の波長における光を同時に検出するものがある。

測光方式には,複光束方式及び単光束方式がある。また,照射方式には,試料に分光した光を照射するも

の及び試料に白色光を照射し,試料からの光を分光するものがある。 

図1 分散形近赤外分光光度計の一例 (A)  

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図2 分散形近赤外分光光度計の一例 (B)  

a) 光源部 光源部は,光源用放射体,光源用電源などで構成する。 

1) 光源用放射体は,ハロゲンランプ,タングステンランプ,発光ダイオード,レーザー,炭化けい素,

ニッケル−クロム合金,セラミックなどを放射体材とし,近赤外光を安定に放射するもの。 

2) 光源用電源は,光源に安定した電圧及び電流を供給する機能をもつもの。 

b) 試料部 試料部は,試料セル,試料ホルダー,附属装置をそれぞれ単独に又はそれらを組み合わせて

取り付けることのできるホルダーなどで構成する。光ファイバーを用いる場合は,試料部は分光計か

ら分離して設置されることが多い。 

c) 分光部 分光部は,分散素子を用いて必要とする波長の光を取り出すためのもので,スリット,ミラ

ー,分散素子などで構成する。分散素子には,プリズム,回折格子,音響光学素子などがある。 

d) 測光部 測光部は,検出器及び増幅器で構成する。 

1) 検出器 入射した光をその強度に応じた電流又は電圧などの電気信号に変換するためのもので応答

速度,感度などの点で,半導体検出器が主として用いられる。そのほか,焦電形検出器,光電子増

倍管などが用いられる。 

2) 増幅器 検出器からの電気信号を,以降の信号処理系において処理しやすい大きさに増幅するもの。 

e) 信号処理部 信号処理部では,増幅器の出力信号から測定に必要な信号を分離し,出力する。信号処

理方式にはアナログ処理及びデジタル処理がある。 

f) 

データ処理部 データ処理部では,データ変換,スペクトル解析などを行う。データ変換には,反射

率・透過率・吸光度変換,クベルカ−ムンク変換,微分変換,正規化変換などがある。スペクトル解

析には多変量解析などがある。またそのほか,差スペクトル計算,ベースライン補正,検量線作成,

スペクトルデータ検索などがある。 

g) 表示・記録・出力部 表示・記録・出力部は,CRT,液晶,LED,プリンターなどで構成する。デー

タ,分析結果,データ処理結果などを記録計,プリンターなどに出力する。また,外部出力端子をも

つものもある。 

5.1.2 フーリエ変換形近赤外分光光度計 図3に,フーリエ変換形近赤外分光光度計の構成の一例を示す。

装置は,光源部,分光測光部,光ファイバー部(2),試料部,信号処理部,データ処理部(2),表示・記録・

出力部などで構成する。 

注(2) 光ファイバー部は必す(須)の構成要素ではない。また,データ処理部が独立した部となって

いない装置もある。 

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図3 フーリエ変換形近赤外分光光度計の一例 

a) 光源部 光源部は,光源用放射体,光源用電源などで構成する。 

1) 光源用放射体 5.1.1a)の1)による。 

2) 光源用電源 5.1.1a)の2)による。 

b) 分光測光部 分光測光部は,干渉計,サンプリング信号発生器,検出器,増幅器,A/D変換器などで

構成する。 

1) 干渉計 マイケルソン干渉計,トランセプト干渉計,偏光干渉計などを用いる。 

2) サンプリング信号発生器 干渉図形の測定に用いるサンプリングパルス信号を発生するもの。通常,

ヘリウム−ネオンレーザーの干渉信号を用いる。 

3) 検出器 5.1.1d)1)による。 

4) 増幅器 5.1.1d)2)による。 

5) A/D変換機 アナログ信号をデジタル信号に変換する機能をもつもの。 

c) 光ファイバー部 光ファイバー部は,光ファイバー,コリメーターなどで構成され,分光光度計本体

から離れた場所に設置された試料部へ光を伝送する機能をもつ。分光光度計本体内に試料部が設置さ

れている場合などでは,光ファイバー部のない構成となることもある。 

1) 光ファイバーは一般には石英ガラス系光ファイバーが使用されるが,長波長域 (2 000〜2 500nm) に

はふっ化物,カルコゲナイトなどの光ファイバーが使用されることもある。 

2) コリメーターは,干渉計から出射された光を光ファイバーに入射し,また,光ファイバーから出射

された光を検出器に入射するときのインターフェース機能をもつ。 

d) 試料部 5.1.1b)による。 

e) 信号処理部 信号処理部は,干渉図形を,スペクトルに変換するためのフーリエ変換機能をもつ。 

f) 

データ処理部 5.1.1f)による。 

g) 表示・記録・出力部 5.1.1g)による。 

5.1.3 

干渉フィルター形近赤外分光光度計 干渉フィルター形近赤外分光光度計の一般的な構成の例を

図4に示す。干渉フィルター形近赤外分光光度計には,分光部に干渉フィルターを用いる。測光方式には,

複光束方式及び単光束方式がある。また,光源からの光を分光せずに照射する方式及び波長選択された光

を試料に照射する方式がある。 

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図4 干渉フィルター形近赤外分光光度計の一例 

a) 光源部 光源部は光源用放射体,光源用電源などで構成する。 

1) 光源用放射体 5.1.1a)の1)による。 

2) 光源用電源 5.1.1a)の2)による。 

b) 分光部 分光部は,干渉フィルターを用いて必要とする波長の光を取り出すためのもので,ミラー,

レンズ,干渉フィルターなどで構成する。 

c) 試料部 5.1.1b)による。 

d) 測光部 

1) 検出器 5.1.1d)の1)による。 

2) 増幅器 5.1.1d)の2)による。 

e) 信号処理部 5.1.1e)による。 

f) 

データ処理部 5.1.1f)による。 

g) 表示・記録・出力部 5.1.1g)による。 

5.2 

附属装置 附属装置には次のものがあり,必要に応じて使用する。 

なお,これら附属装置には,試料温度を変えることのできる温度可変機能を付加したもの,光ファイバ

ーによって分光測光部から分離できる形式のものもある。 

a) 液体試料用セル 液体試料の測定に用いるセル。 

b) 粉体試料用セル 粉体試料の測定に用いるセル。 

c) 粒状体試料用セル 粒状体試料の測定に用いるセル。 

d) スラリー状試料用セル スラリー状試料の測定に用いるセル。 

e) フィルム保持装置 フィルム又は板状試料の測定に用いる試料保持装置。 

f) 

積分球附属装置 積分球の内面に,波長に対して非選択性の拡散反射材料を備えた装置。反射率又は

透過率の測定に用いる。 

g) 拡散反射測定装置 拡散反射光を測定する装置。粉体試料又は不均一試料の表面近傍における近赤外

吸収の測定に用いる。 

h) 透過反射測定装置 透過した光を拡散反射板によって反射させ測定する装置。波長に対して非選択性

の拡散反射板を備える。液体試料,粉体試料又はスラリー状試料の拡散反射率及び透過率の測定に用

いる。 

i) 

正反射測定装置 

1) 相対反射測定装置 正反射率を標準反射板を対照として測定する装置。 

2) 絶対反射測定装置 正反射率を絶対値として測定する装置。入射角が変えられる装置もある。 

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j) 

光音響測定装置 試料に周期性をもつ光を照射して,試料内の周期的な熱変化による膨張・収縮を圧

力変化として検出する装置。近赤外吸収が非常に強くほかの方法で測定することが困難な試料に用い

ることができる。 

k) 顕微近赤外測定装置 微小部分を測定する装置。光路及び対物鏡の切替えによって透過及び/又は反

射測定ができる。 

l) 

偏光装置 偏光特性をもたせる装置。偏光による近赤外光の透過特性及び反射特性の測定に用いる。 

m) フローセル ポンプによって試料を流すことができるセル。主に,多数の試料を測定する場合に用い

る。 

5.3 

付加機能 付加機能には次のものがあり,必要に応じて用いる。 

a) スペクトルのX軸,Y軸に関する付加機能 

1) スペクトルの拡大,縮小 

2) スムージング 

3) ピーク検出 

4) 透過率−吸光度変換 

5) クラマース−クロニッヒ変換 

6) クベルカ−ムンク変換 

7) 軸単位の変換(波長,波数,エネルギーなど) 

8) スペクトルの正規化(光路長の規格化) 

9) スペクトルの高さ又は面積強度計算 

10) 微分計算 

11) ベースライン補正 

12) 乗算的散乱補正 (multiplicative scatter correction ; MSC)  

b) スペクトル間演算の付加機能 

1) スペクトル間の四則演算 

2) 差スペクトル 

c) スペクトルからの情報抽出に関する付加機能 

1) 定性情報,スペクトルデータ検索,データベース作成 

2) 定量情報,統計処理 

d) データの保存 

1) 装置に内蔵された形式による保存 

2) JCAMP−DXなど互換性をもつ形式による保存 

6. 試料調製方法 固体,粉体及び液体の測定における試料調製の方法の一般的事項について規定する。

ただし,個別規格に規定されている場合には,それによる。 

附属装置などを用いて,透過,反射,光音響などの測定を行う場合の試料調製については個別規格によ

るか,装置の取扱説明書による。 

6.1 

一般的注意 近赤外分光分析を行うときには,試料の状態,手法,使用する附属装置の性能など種々

の条件を考慮して,分析の目的に合った結果が得られる試料調製方法を選択する。定性分析においては,

最も強い吸収ピークの透過パーセントが数%になるように試料を調製することが望ましい。 

定量分析においては,意図する目的に合わせ,個別規格,取扱説明書を参考にして適切な濃度,厚さ,

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セルの光路長などを選ぶことが望ましい。 

6.2 

固体 試料によって使用する附属装置を選択する。選択した附属装置によって得られるスペクトル

に含まれる情報が異なる。また,溶媒に試料を溶かして分析をする場合もある。 

6.2.1 

透過法 透過法を採用する場合は試料厚さを調節する必要がある。一般にS/N比が最良となる吸光

度で0.1〜2(透過率で79〜1%)になるように試料厚さを調節する。 

6.2.2 

反射法 固体では拡散反射装置,透過拡散装置,反射測定装置などが用いられる。拡散反射装置で

は,実験条件及び装置によって有効な光路長が異なり,スペクトルの形に影響を与えることがある。再現

性のよいスペクトルを得るために,適切な実験条件及び装置の使用方法を選ぶ。 

6.3 

粉体 粒状物質を全粒のまま測定する方法及び粉砕して測定する方法がある。粒度の変化は,スペ

クトルのベースライン及びピーク強度のシフトに大きく影響するため,同一の粉砕機及び粉砕条件を用い

る。一般に,試料は粉砕機のスクリーン(スクリーンの目開き1mm程度)を通過させて粒度をそろえる。

粉砕によって生じた試料の温度上昇は測定値に影響を与えるため,粉砕後は環境からの影響を受けないよ

うに密閉容器に入れ,数分間放冷するとよい。 

6.3.1 

透過法 試料粒度に応じて適切な光路長をもつセルを選択する。試料を充てんし,指定の圧力を加

えて測定を行う。充てん方法は装置附属の取扱説明書による。 

6.3.2 

反射法 反射測定面を平滑化するため,セルに試料を充てんし,指定の圧力を加えて測定を行う。

充てん方法は装置の取扱説明書による。 

6.3.3 

光音響法 密閉されたセルに密に試料を充てんする。対照試料として黒体試料である炭素(カーボ

ンブラック)を用いることがある。 

6.4 

液体 試料の状態及び測定目的に適した,附属装置及び光路長をもつセルを用いる。試料の温度,

濁りなどに注意する。 

6.4.1 

透過法 石英ガラスセル,フローセルなどに注入して測定する。その取扱方法は附属装置の取扱説

明書による。挿入形プローブを用いて行う方法もある。その取扱方法は取扱説明書による。 

6.4.2 

透過反射法 透過反射セルを用いて測定する。懸濁した試料などに用いる。その取扱方法は附属装

置の取扱説明書による。挿入形プローブを用いて行う方法もある。その取扱方法は取扱説明書による。 

6.4.3 

光音響法 6.3.3による。 

操作方法 

7.1 

装置の設置 装置の設置条件は,次による。ただし,製造業者などによって装置の設置条件が定め

られている場合はそれに従う。 

a) 腐食性ガスがなく,ほこりが少ない。 

b) 測定波長範囲において,吸収を示すガスが少ない。 

c) 相対湿度は75%以下とし,結露しない。 

d) 設置場所の温度は15〜30℃で,温度変化が少ない。 

e) 直射日光が当たらない。 

f) 

振動が少ない。 

g) 電源の電圧及び周波数の変動が少ない。 

h) 電源に高周波及びスパイク状雑音が少ない。 

i) 

電磁誘導の影響を与える装置が近くにない。 

j) 

設置場所が傾斜していない。 

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k) 空調機からの風が直接当たらない。 

l) 

装置周囲に保守のためのスペースを確保する。 

7.2 

測定方法 装置の取扱いは,取扱説明書などによる。装置の使用に当たっては,あらかじめ定めら

れた手順に従って点検を行い,異常のないことを確認した後,暖機運転を行って安定化させる。また,必

要に応じ標準物質を測定し,波長,ゲインの調整などを行う。 

装置の測定条件の設定は,次による。 

7.2.1 

分散形近赤外分光光度計 次の事項のうち,必要なものについて設定を行う。 

a) 測定条件設定 

1) スペクトル表示モード 透過率,吸光度,反射率など 

2) 走査波長範囲 

3) スペクトルバンド幅(スリット幅) 

4) 走査速度 

5) サンプリング間隔 

6) 走査回数(積算回数) 

7) ベースライン補正 

8) 光源 

9) 検出器(種類,作動条件) 

b) データ処理情報 5.3に示したものから必要に応じて選択設定する。また,測定結果を識別するための

情報として次の項目を必要に応じて記録する。 

1) 試料名 

2) 測定者名 

3) データファイル名 

4) コメント 

7.2.2 

フーリエ変換形近赤外分光光度計 次の事項のうち,必要なものについて設定を行う。 

a) 測定条件設定 

1) スペクトル表示モード 透過率,吸光度,反射率など 

2) 記録波長範囲 

3) サンプリング間隔 

4) 走査回数(積算回数) 

5) アポダイゼーション関数 

6) 光源 

7) 検出器(種類,作動条件) 

8) アパチャー 

9) 移動鏡の移動速度 

10) ビームスプリッターの種類 

b) データ処理情報 7.2.1b)による。 

7.2.3 

干渉フィルター形近赤外分光光度計 次の事項のうち,必要なものについて設定を行う。 

a) 測定条件設定 

1) スペクトル表示モード 透過率,吸光度,反射率など 

2) 測定波長 

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3) 光源 

4) 検出器(種類,作動条件) 

b) データ処理情報 7.2.1b)による 

7.3 

補正及び検査方法 

7.3.1 

波長 装置の波長の正確さは,吸収ピークの波長が確定された物質,例えばポリスチレン,NIST 

SRM-1920, 水蒸気などの吸収ピークと装置の指示値との偏りから求める。規定された物質がない場合,補

正の方法については,装置の取扱説明書による。 

7.3.2 

透過%0 装置の取扱説明書による。 

7.3.3 

透過%100 装置の取扱説明書による。 

7.3.4 

直線性 近赤外領域に吸収をもつ成分の濃度が段階的となるよう,試料を調製し,吸光度と濃度と

の関係線を作成し,その直線性を調べる。 

7.3.5 

分解能 装置の取扱説明書による。 

7.3.6 

繰返し性 安定な試料を同一条件で短い時間内に複数回測定し,指示値のばらつきが規定の範囲内

にあることを確認する。波長については,例えば,7.3.1に示すような物質を用いて同様の確認をする。 

7.3.7 

校正 波長精度(正確さ及び繰返し性),吸光度(正確さ及び繰返し性)などの分光性能及びノイ

ズなど装置自体の基本性能について検査し,必要ならば校正を行う。自動校正機能をもつ装置においても,

定期的に検査を実施し,データを保存することによって装置の管理を行う。その頻度,方法は各装置の取

扱説明書によるが,そのための手順を文書に定め,維持する。校正状態を表示するため,適切な標識によ

って識別する。 

8. 定性分析 ここでは,吸収スペクトルを用いる定性分析方法について規定する。 

近赤外領域では,中赤外領域と異なり,主に基準振動の倍音,結合音がスペクトルとして現れる。 

これらの吸収スペクトルによって官能基及び原子団の存在を推定する。また,全体のスペクトルパター

ンの比較によって物質の定性を行う。標準スペクトルとの対比だけではなく,近赤外スペクトル全体を一

つのパターンとみなし,試料の識別を行う。多変量解析などのケモメトリックス手法を用い識別を行うこ

とが多い。 

多変量解析の主な手法としては,主成分分析,因子分析,クラスター分析,判別分析,SIMCA, PLS, KNN

法がある。また,ニユーラルネットワーク手法によるパターン認識を用いることもある。 

9. 定量分析 定量分析は,濃度又は特性値既知の試料群のスペクトルから求められた検量線及び換算方

程式によって,測定試料の各成分濃度又は特性値を算出して行う(3)。 

注(3) この規格では,石油のオクタン価,セタン価,蒸気圧及び密度,膜厚,バンドギャップなどの

特性値の測定は,定量分析として取り扱う。 

9.1 

検量線法 濃度既知の検量線用試料を用いて,ある特定波長における吸光度又はそれに比例する数

値で表したピーク高さ,面積強度などと濃度との関係線を作成し,検量線とする。この検量線を用いて被

検試料の分析対象成分の濃度を算出する。 

9.2 

多変量解析法 解析には,測定した波長領域のすべて又は一部のスペクトル強度データを用いる。

近赤外分光分析に使用される多変量解析法は,ケモメトリックスと総称される手法の一つである。 

定量分析には回帰分析法が主として用いられる。回帰分析法には,重回帰分析法,因子解析法[主成分

回帰分析法,部分最小二乗法(PLS回帰分析法)]などがある。 

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ニユーラルネットワークは,回帰分析法とは異なり学習機能をもち,データの逐次学習によってモデル

パラメーターが決定される。 

a) 重回帰分析法 標準となる試料のスペクトルデータ群を用い,最小二乗法によって試料のスペクトル

データに関連付ける計算式を求め各成分の濃度を算出する。 

b) 因子解析法 主成分回帰分析法及びPLS回帰分析法は,スペクトルデータ群がら分析対象に共通な因

子を抽出し,共通な因子に対して回帰分析を行う。 

9.3 

定量値の表示 数値の表示は,JIS K 0050による。 

10. 安全,保守 

10.1 安全 使用上の安全確保のため製造業者の取扱説明書,関連する法令及び規則などに関する知識の

熟知,化学物質の特性の把握,作業者の教育訓練などの対策を施さなければならない。特に,次の事項に

ついては,十分に注意する必要がある。 

a) 電気 通電状態で高電圧部分や通電部には手を触れない。また,絶縁及び接地が十分に行われていな

ければならない。 

b) レーザー レーザー光が直接目に入らないように注意する。 

c) 高圧ガス 高圧ガス保安法及びそれに関連する諸法規の基準に従う。 

d) 液化窒素 必ず保護具を着用して取り扱う。また,換気に注意する。 

e) 有害物質 測定試料などの取扱いについては十分に注意する。また,廃棄については,適切な処理を

行う。 

備考 レーザー取扱いの安全に関しては,JIS C 6802を参照する。 

10.2 保守 装置の保守に関しては,7.1を満たす場所であることを確認し,点検・保守の項目,内容,期

間などに関する基準(4)を設けて装置の点検を行う。 

注(4) 製造業者の提供する取扱説明書などによる。 

11. 測定結果の整理 測定結果には,次の事項のうち必要なものについて記録する。 

a) 測定年月日 

b) 測定者名 

c) 測定場所 

d) 試料名 

e) データファイル名 

f) 

測定モード/測定方法 

g) 測定条件 

h) データ処理条件 

i) 

対照物質 

j) 

装置の名称及び形式 

k) 校正の周期及び方法 

12. 個別規格に記載すべき事項 近赤外分光分析方法を用いる個別規格には,必要に応じて次の項目を規

定する。 

12.1 定性分析 

11 

K 0134 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 試料採取方法及び保存方法 

b) 試料調製方法 

c) 附属装置の種類 

d) 測定条件 

e) データ処理方法 

f) 

対照試料の種類 

g) 分析結果の表示方法 

12.2 定量分析 

a) 試料採取方法及び保存方法 

b) 分析対象成分の定量範囲 

c) 試料調製方法 

d) 附属装置の種類 

e) 測定条件 

f) 

定量方法の種類 

g) 対照試料の種類 

h) 検量線作成方法 

i) 

測定回数 

j) 

分析結果の表示方法 

13. データの質の管理 データの質の管理においては,次の3項目が重要である。 

a) 装置の性能確認 

b) 適切な試料の調製 

c) 定量分析におけるデータの質の管理 

13.1 装置の性能確認 7.3に記述した項目のうち必要なものについて確認するとともに,10.2に記述した

内容に従い定期的な点検を行う。 

13.2 適切な試料の調製 測定対象に応じて,6.に示した内容に従って適切な調製を行う。 

13.3 定量分析におけるデータの質の管理 定量分析には,9.1の方法に従って定量を行う場合と,9.2の

方法に従って定量を行う場合とがあり,データの質の管理においてはそれぞれ異なる方法を用いる。 

13.3.1 検量線法におけるデータの質の管理 9.1の方法に従って定量を行う場合には,データの質の管理

として,検出下限の確認,繰返し性の確認を必要に応じて行う。検出下限及び繰返し性の確認は,あらか

じめ定めた評価基準値と比較して行う。基準に達しない場合は,装置の性能,試料の調製などについて再

検討を行う。 

a) 検出下限の確認 検出下限は例えば次の方法によって行う。 

1) 測定対象の空試験試料を準備する。 

2) 測定対象の予測される検出下限付近の濃度 (Ci) の試料を準備する。 

3) 1)の試料を10回連続して測定し,測光値の平均値 (Xb) と標準偏差 (Sb) を算出する。 

4) 2)の試料を10回連続して測定し,測光値の平均値 (Xi) を算出する。 

5) 次の式によって検出下限 (DL) を算出する。 

DL=3Sb/k 

 k=[ (Xi−Xb) /Ci] 

12 

K 0134 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ここに, 

k: 検量線の傾き 

3: 危険率0.14%となるように選択された定数(IUPACの勧告によ

る。) 

使用する試料濃度,測定回数は目的に応じて変更することができる。 

b) 繰返し性の確認 繰返し性の確認は測定対象の典型的な濃度 (Ct) の試料を準備し,その試料の複数

回連続測定から定量値を求め,定量値の変動係数 (CV%) を算出して確認する。 

13.3.2 多変量解析法におけるデータの質の管理 9.2の方法に従って定量を行う場合には,多変量解析に

よって求めた関係式の妥当性を必要に応じて確認する。あらかじめ定めた妥当性の評価基準との比較結果

によって,必要であれば関係式を補正する又は新たな関係式を設定する。評価基準の指標には,SEC 

(Standard error of calibration),SEP (Standard error of prediction),バイアス,スキューなどがある。必要に応

じて適切な指標を用い評価基準と比較して評価を行う。 

なお,多変量解析によって求めた定量のための関係式を検量線と表現することもある。 

a) 評価基準の指標 

1) SEC(関係式作成時の標準誤差) SECは関係式作成時の誤差eciの標準偏差として次の式で算出さ

れる。 

1

2

Σ

=

p

n

e

SEC

ci

eci=yci−yri 

ここに, 

eci: 関係式作成時の誤差 

yci: 関係式作成時の標準物質の定量された濃度 

yri: 標準物質に付与された濃度 

n: 関係式作成時,測定に使用した標準物質の数 

p: 関係式の説明変数の数 

2) SEP(関係式評価時の標準誤差) SEPは関係式評価時の誤差epiの標準偏差として次の式で算出さ

れる。 

1

)

(

2

Σ

=

n

e

e

SEC

pi

pi

epi=ypi−yri 

ここに, 

epi: 関係式評価時の誤差 

pi

e: epiの平均値 

ypi: 関係式評価時の標準物質の定量された濃度 

yri: 標準物質に付与された濃度 

n: 関係式評価時,測定に使用した標準物質の数 

3) バイアス バイアスは関係式評価時の誤差epiの平均値として次の式で算出される。 

n

e

SEC

pi

Σ

=

ここに, 

epi: 関係式評価時の誤差 

n: 関係式評価時,測定に使用した標準物質の数 

4) スキュー スキューは関係式評価時,X軸を標準物質に付与された濃度,Y軸を関係式評価時の標

準物質の定量濃度として評価測定時のデータをプロットし,各測定点を直線回帰した結果の傾きと

して算出する。 

b) データの質の管理の実施 多変量解析法におけるデータの質の管理の実施は次のように行う。 

13 

K 0134 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

1) 関係式の作成時 定量のための新しい関係式を作成する場合,あらかじめ標準的な方法によって成

分濃度又は特性値を測定した物質(標準物質)を複数用いてそのスペクトルの測定を行い,得られ

たスペクトルを基に多変量解析を行い関係式(スペクトル強度と濃度との関係式)を作成する。次

に,その関係式の評価を行うために,作成時とは異なる複数の標準物質を用いてそのスペクトルの

測定を行い,それぞれの標準物質の成分濃度又は特性値を算出する。必要に応じて,SEP, バイアス,

スキューを算出し,関係式の採用又は再設定などを判断する。 

2) 定期的な関係式の評価 必要に応じて,関係式の評価を定期的に行う。評価方法は1)に記載された

関係式評価手順に従う。 

3) 日常的な測定での管理 日常の測定においては,測定の最初に2)の項目のうち目的に応じて簡略化

して評価を行う。 

日常的測定での管理の例を次に示す。 

− 標準物質個数を限定して測定を行いバイアスの確認を行う。 

− バイアスがあらかじめ定めた評価基準値以内であることを確認する。 

− バイアスが基準値を超える場合,あらかじめ定められた手順に従い,測定条件の見直し,バイ

アス補正,関係式の再設定などを行う。 

なお,日常の測定においてバイアスの記録を継続して行い,変化の傾向によって関係式の評価を

行うこともできる。 

日本工業標準調査会 標準部会 一般化学技術専門委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

川 瀬   晃 

セイコーインスツルメンツ株式会社科学機器事業部 

(委員) 

齋 藤   壽 

社団法人日本分析機器工業会 

角 田 欣 一 

群馬大学工学部応用化学科 

中 村   陽 

旭化成株式会社研究開発本部基盤技術センター 

中 村   進 

独立行政法人産業技術総合研究所 

中 村   洋 

東京理科大学薬学部 

西 川 輝 彦 

石油連盟 

西 本 右 子 

神奈川大学理学部化学科 

槇     宏 

日本プラスチック工業連盟 

松 本   潔 

社団法人日本化学工業協会 

松 本 保 輔 

財団法人化学物質評価研究機構 

森 嵜 功 一 

社団法人日本試薬協会