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K 0120:2005  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本分析

機器工業会(JAIMA)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべき

との申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。 

これによって,JIS K 0120:1986は改正され,この規格に置き換えられる。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会

は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新

案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

K 0120:2005  

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

1. 適用範囲 ························································································································ 1 

2. 引用規格 ························································································································ 1 

3. 定義 ······························································································································ 1 

4. 装置 ······························································································································ 2 

4.1 装置の構成 ··················································································································· 2 

4.2 装置の性能表示 ············································································································· 6 

4.3 附属装置 ······················································································································ 8 

4.4 付加機能 ······················································································································ 9 

5. 操作方法 ······················································································································· 10 

5.1 装置の設置 ·················································································································· 10 

5.2 試料の調製 ·················································································································· 10 

5.3 装置操作条件の設定 ······································································································ 10 

6. スペクトル測定 ·············································································································· 11 

7. 定量 ····························································································································· 12 

8. データの質の管理 ··········································································································· 14 

9. 測定結果の記録 ·············································································································· 14 

10. 個別規格に記載すべき事項 ····························································································· 15 

10.1 記載すべき事項 ··········································································································· 15 

10.2 必要に応じて記載すべき事項 ························································································· 15 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 0120:2005 

蛍光光度分析通則 

General rules for fluorometric analysis 

1. 適用範囲 この規格は,蛍光光度分析装置を用いて,紫外可視から近赤外領域における蛍光強度を測

定し,これによって物質の定性及び定量分析を行う場合の通則について規定する。ただし,原子蛍光及び

蛍光X線を用いる方法には適用しない。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 

なお,括弧内の対応英語は,参考のために示す。 

a) 分光器(spectrograph, spectrometer) 一つの光源からの光を分散させて一つの焦点面上に波長順にス

リット像を結ばせる装置。 

b) モノクロメーター(monochrometor) 特定波長の光を取り出す装置。 

c) シングルモノクロメーター(single monochrometor) 一つの回折格子, プリズムなど,単一の分散素子

を用いたモノクロメーター。 

d) ダブルモノクロメーター(double monochrometor) 通常,二つのシングルモノクロメーターを光学的

に直列に結んだモノクロメーター。 

e) 単光束方式(single beam) 光度計及び分光光度計において光源から検出部までの間で,光路が分岐し

ていない方式。 

f) 

光学フィルター(optical filter) 特定の波長域の光を通過又は阻止するために用いる光学素子。 

g) ゼラチンフィルター(gelatin filter) 着色したゼラチン膜をガラス板などで挟み,特定の波長域の光を

取り出せるようにした光学フィルター。 

h) 干渉フィルター(interference filter) 薄膜又はその多重層の光の干渉作用を利用し,必要とする波長の

光を取り出せるようにした光学フィルター。 

i) 

色ガラスフィルター(color optical glass filter) 着色したガラスによって,特定の波長域の光を取り出

せるようにした光学フィルター。 

j) 

蛍光測定用セル(cell) 溶液,溶媒などによる蛍光を測定するために,それらを入れる容器。 

k) 光源(light source) 光分析機器において,光波(光量子)を発生・放射させる部分。 

l) 

分解(resolution) 相近接した2本のスペクトル線を分離できる分光器の能力。 

m) 迷光(stray light) モノクロメーターで分散され取り出された光の中で,目的とする波長光以外の光。 

n) 分析種(analyte) 分析試料又は試料溶液中の被検成分。 

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o) 光電子増倍管(photomultiplier tube) 光の照射によって電子を放出する陰極と電子を受け取る陽極と

をガラス管内に封入し,陰極と陽極との間に電子を増加させるための一つ以上の中間電極を備えた光

検出素子。 

p) フォトダイオード(photodiode) p-n接合面への光の照射によって生じる光起電効果を利用した光検出

素子。 

q) 蛍光光度計(fluorometer) 蛍光強度を測定する装置。励起光側及び蛍光側波長選択部の両者に光学フ

ィルターを用いる。 

r) 蛍光分光光度計(fluorospectrometer) 蛍光強度を測定する装置。励起光側又は蛍光側波長選択部のどち

らかにモノクロメーターを用い,他方に光学フィルターを用いる。 

s) 

分光蛍光光度計(spectrofluorometer) 蛍光強度を測定する装置。励起光側及び蛍光側波長選択部の両者

にモノクロメーターを用いる。 

t) 

三角セル(triangular cell) 三角形の形状で光量子計の容器としても用いられるセル。 

u) 蛍光偏光(fluorescence polarization) 蛍光における偏光現象。この測定を行う装置では励起光側及び蛍

光側の両側に偏光子を置く。 

v) りん光(phosphorescence) 通常,三重項から一重項への遷移によって生じる発光。光照射によってり

ん光が放出される場合は,励起光より長波長の光を発光する。 

w) 光量子計(quantum counter) 量子収率が一定であるローダミンBなどの溶液に励起光を吸収させ,こ

れから放射される蛍光を測定し,励起光の強度を求める装置。 

x) 蛍光スペクトル(fluorescence spectrum) 励起光側波長を固定し,観測される蛍光強度を蛍光側波長に

対してプロットしたスペクトル。 

y) 励起スペクトル(excitation spectrum) 蛍光側波長を固定し,観測される蛍光強度を励起光側波長に対

してプロットしたスペクトル。 

z) ラマン散乱(raman scattering) 振動数ν0の入射光に対してν0±νiの光が散乱される現象。νiは分子及

び結晶に固有の振動数。 

aa) 消光(quenching) ある化学種の蛍光又はりん光が他の化学種によって減少する現象。 

ab) 同期スペクトル(synchronous spectrum) 励起光側及び蛍光側の両モノクロメーターに一定の波長差

で同時に,かつ,同じ速度で走査させ,観測される蛍光強度を励起波長又は蛍光波長に対してプロッ

トしたスペクトル。 

ac) スペクトル補正(spectrum correction) 得られた蛍光又は励起スペクトルから,光源の分光特性及び光

学系の装置特性を補正するための操作。 

4. 装置  

4.1 

装置の構成  

4.1.1 

蛍光光度計 蛍光光度計の構成例を,図1に示す。蛍光光度計は,光源部,励起光側波長選択部,

試料部,蛍光側波長選択部,測光部,信号処理部,データ処理部及び表示・記録・出力部で構成する。蛍

光光度計は,波長選択部として,光学フィルターを用いる。 

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図 1 蛍光光度計の構成の一例 

a) 光源部 光源部は,光源,点灯用電源,集光系などで構成する。 

1) 光源 光源は,励起光を安定に放射するものとし,次による。 

− キセノンランプ 200〜900 nmの波長域で用い,連続点灯する。 

− タングステンランプ 320 nm以上の波長域で用いる。 

− ハロゲンランプ 320 nm以上の波長域で用いる。 

− 水銀ランプ 253.7 nm,365.0 nm,435.8 nm及び546.1 nmの輝線を用いる。 

− 重水素ランプ 185〜400 nmの波長域で用いる。 

− レーザー 様々な種類があり,発振波長で用いる。 

− その他の光源 LEDなどがある。 

2) 点灯用電源 点灯用電源は,光源を点灯させ,その輝度を一定に保つ機能をもつ。 

3) 集光系 集光ミラー,集光レンズなどで構成する。 

b) 励起光側波長選択部 励起光側波長選択部は,光源から放射される光の中から分析に必要な励起光の

波長を選択する。色ガラスフィルター,ゼラチンフィルター,干渉フィルター又はこれらを組み合わ

せた光学フィルターで構成する。単色性の光源を用いたものでは,波長選択部が省かれることもある。 

c) 試料部 試料部は,試料を励起光の光路中に置き,放射される蛍光を蛍光側波長選択部に導く機能を

もつもので,蛍光測定用セル,セルホルダーなどで構成する。 

1) 蛍光測定用セル 気体,液体などの測定試料を保持するもので,測定波長範囲内で高い透過性をも

ち,蛍光がないか,あっても極めて弱く,測定試料に侵されない材質からなる。蛍光測定用セルに

は,角形セル,ミクロセル,キャピラリーセル,フローセルなどがある。 

2) セルホルダー 各種のセルを励起光の光路中に固定するもので,試料から放射される蛍光強度を変

動させない構造のものとする。 

d) 蛍光側波長選択部 蛍光側波長選択部は,試料から放射される蛍光の中から分析に必要な波長を選択

する。色ガラスフィルター,ゼラチンフィルター,干渉フィルター又はこれらを組み合わせた光学フ

ィルターで構成する。 

e) 測光部 測光部は,検出器及び増幅器で構成する。 

1) 検出部 入射光の光強度をその強度に比例した電気信号に変換するもので,光電子増倍管,フォト

ダイオードなどがある。 

2) 増幅器 検出器からの電気信号を,信号処理系において処理しやすい大きさに増幅するもの。 

表示・記録・出力部 

光源部 

励起光側波長選択部 

(光学フィルター) 

試料部 

蛍光側波長選択部 

(光学フィルター) 

信号処理部 

データ処理部 

測光部 

検出器 

増幅器 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

f) 

信号処理部 測定に必要な信号を分離し出力するもので,信号処理の方法には,アナログ処理とデジ

タル処理とがある。 

g) データ処理部 データ処理部では,蛍光強度を光子数に比例する量に変換することなどを行う。その

他の機能として,検量線作成などがある。 

h) 表示・記録・出力部 表示・記録・出力部は,CRT,液晶,LED,プリンターなどで構成する。測定

波長(励起光側波長,蛍光側波長)(1),蛍光強度,濃度などを記録計,プリンターなどに出力する。

また,外部出力端子をもつものもある。 

注(1) 波長の代わりに,波数(cm-1),エネルギー(eV)なども用いられる。 

4.1.2 

分光蛍光光度計 分光蛍光光度計の構成例を,図2に示す。分光蛍光光度計は,光源部,励起光側

波長選択部,試料部,蛍光側波長選択部,測光部,信号処理部,データ処理部,表示・記録・出力部で構

成する。分光蛍光光度計は,波長選択部として,モノクロメーターを用いる。 

図 2 分光蛍光光度計の構成の一例 

a) 光源部 光源部は,光源,点灯用電源,集光系などで構成する。 

1) 光源 光源は,励起光を安定に放射するものとし,次による。 

− キセノンランプ 200〜900 nmの波長域で用いる。連続点灯するものとパルス点灯するものと

がある。 

− タングステンランプ 4.1.1a)1)による。 

− ハロゲンランプ 4.1.1a)1)による。 

− 水銀ランプ 4.1.1a)1)による。 

− 重水素ランプ 4.1.1a)1)による。 

− レーザー 4.1.1a)1)による。 

− その他の光源 4.1.1a)1)による。 

2) 点灯用電源 4.1.1a)2)による。 

3) 集光系 4.1.1a)3)による。 

b) 励起光側波長選択部 励起光側波長選択部は,光源から放射される光の中から分析に必要な励起光の

波長を選択する。波長選択部はモノクロメーターを用いる。モノクロメーターにはシングルモノクロ

メーター,ダブルモノクロメーターなどがある。 

c) 試料部 4.1.1c)による。また,試料部が光ファイバープローブで構成されているものもある。 

光源部 

励起光側波長選択部 

(モノクロメーター) 

試料部 

蛍光側波長選択部 

(モノクロメーター) 

信号処理部 

データ処理部 

表示・記録・出力部 

測光部 

検出器 

増幅器 

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d) 蛍光側波長選択部 蛍光側波長選択部は試料から放射される蛍光の中から分析に必要な波長を選択す

る。波長選択部はモノクロメーターを用いる。モノクロメーターにはシングルモノクロメーター,ダ

ブルモノクロメーターなどがある。 

e) 測光部 4.1.1e)による。 

f) 

信号処理部 4.1.1f)による。 

g) データ処理部 データ処理部では,データ変換,検量線作成などを行う。データ変換には,蛍光強度

の光子数に比例した量への変換,微分変換,パーセント透過率などがある。その他の機能として,差

スペクトル計算,スペクトルデータ検索などがある。 

h) 表示・記録・出力部 表示・記録・出力部は,CRT,液晶,LED,プリンターなどで構成する。測定

波長(励起光側波長,蛍光側波長)(1),蛍光強度,濃度などを記録計,プリンターなどに出力する。

また,波長(1)と蛍光強度との関係を示す2次元又は3次元のスペクトルを記録計,プリンターなどに

出力する。また,外部出力端子をもつものもある。 

4.1.3 

蛍光分光光度計 蛍光分光光度計の構成例を,図3及び図4に示す。蛍光分光光度計は,光源部,

励起光側波長選択部,試料部,蛍光側波長選択部,測光部,信号処理部,データ処理部及び表示・記録・

出力部で構成する。蛍光分光光度計は,励起光側又は蛍光側波長選択部のいずれかにモノクロメーターを

用い,他方に光学フィルターを用いる。 

図 3 蛍光分光光度計の構成の一例(励起光側に光学フィルターを用いたもの) 

光源部 

励起光側波長選択部 

(光学フィルター) 

試料部 

蛍光側波長選択部 

(モノクロメーター) 

信号処理部 

データ処理部 

表示・記録・出力部 

測光部 

検出器 

増幅器 

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図 4 蛍光分光光度計の構成の一例(蛍光側に光学フィルターを用いたもの) 

a) 光源部 光源部は,光源,点灯用電源,集光系などで構成する。 

1) 光源 光源は,励起光を安定に放射するものとし,次による。 

− キセノンランプ 4.1.2a) 1)による。 

− タングステンランプ 4.1.1a)1)による。 

− ハロゲンランプ 4.1.1a)1)による。 

− 重水素ランプ 4.1.1a)1)による。 

− その他の光源 4.1.1a)1)による。 

2) 点灯用電源 4.1.1a)2)による。 

3) 集光系 4.1.1a)3)による。 

b) 励起光側波長選択部 励起光側波長選択部は,光源から放射される光の中から分析に必要な励起光の

波長を選択する。波長選択部は,光学フィルター又はモノクロメーターを用いる。光学フィルターは,

色ガラスフィルター,ゼラチンフィルター,干渉フィルター又はこれらを組み合わせたもので構成す

る。単色性の光源を用いたものでは,波長選択部が省かれることがある。モノクロメーターには,シ

ングルモノクロメーター,ダブルモノクロメーターなどがある。 

c) 試料部 4.1.1c)による。 

d) 蛍光側波長選択部 蛍光側波長選択部は,試料から放射される蛍光の中から分析に必要な波長を選択

する。波長選択部は光学フィルター又はモノクロメーターを用いる。光学フィルターは,色ガラスフ

ィルター,ゼラチンフィルター,干渉フィルター又はこれらを組み合わせたもので構成する。モノク

ロメーターには,シングルモノクロメーター,ダブルモノクロメーターなどがある。 

e) 測光部 4.1.1e)による。 

f) 

信号処理部 4.1.1f)による。 

g) データ処理部 4.1.2g)による。 

h) 表示・記録・出力部 4.1.2h)による。 

4.1.4 

液体クロマトグラフ用蛍光検出器 液体クロマトグラフ用蛍光検出器は,蛍光光度計,分光蛍光光

度計又は蛍光分光光度計の試料部に液体クロマトグラフ用セルを備えたもので,液体クロマトグラフの検

出器として用いられる。構成は,4.1.1,4.1.2又は4.1.3による。 

4.2 

装置の性能表示 装置の性能表示は,次による。装置の性能試験は取扱説明書などに記載された時

間,装置を通電した後に行う。 

光源部 

励起光側波長選択部 

(モノクロメーター) 

試料部 

蛍光側波長選択部 

(光学フィルター) 

信号処理部 

データ処理部 

表示・記録・出力部 

測光部 

検出器 

増幅器 

K 0120:2005  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 蛍光光度計  

1) 波長 波長選択フィルターの種類及び中心波長を表示する。 

2) 分解 波長選択フィルターから射出する光のスペクトル幅を波長で表す。最大強度の1/2となる波

長を長短両波長側に求め,そのときの波長差として表す(2)。 

注(2) 検知器の暗電流などの影響を受け,検知器に光が入射していない場合の装置の出力が必ずしも

ゼロにはならず,プラス又はマイナスのオフセットが出る場合がある。この場合,正しい値を

得ることができないため,オフセットの補正を行う。 

3) 測光安定性 一定条件下で,蛍光強度の変動量を時間当たりで表す。 

b) 分光蛍光光度計  

1) 波長正確さ 波長正確さの測定は,次のいずれかによる。 

1.1) 低圧水銀ランプ,キセノンランプ,蛍光灯などから放射される輝線を測定し,強度が極大を示す

波長を求め,与えられた波長表示からのかたよりで表す。 

1.2) 試料部に拡散素子と波長校正用光学フィルターを装着し,励起光側又は蛍光側のいずれか一方を0

次光に設定し,他方の波長を走査し吸収を測定して吸収の極大値を求め,フィルターに与えられ

た波長表示値からのかたよりで表す。 

2) 波長設定の繰返し性 4.2.2a)の測定を複数回繰り返し,吸収又は強度の極大を示す波長の読取値の

ばらつきで表す(2)。 

3) 分解 モノクロメーターの出射スリットから射出する光のスペクトル幅を波長で表す。最大強度の

1/2となる波長を長短両波長側に求め,そのときの波長差として表す。 

4) 感度 水のラマン散乱スペクトル又は硫酸キニーネを測定し,感度を計算する。結果は,測定に用

いた方法,励起側波長及び蛍光側波長とともに記録する。 

4.1) ラマン散乱を用いる場合 水のラマン散乱スペクトルを測定し,ラマン散乱の強度Sとラマン散

乱光強度のノイズNを求め,S/Nを用いて表す。 

励起光側及び蛍光側モノクロメーターのスペクトルバンド幅によってSが変化し,レスポンスに

よってNが変化するため,これらとともに記録する。 

4.2) 硫酸キニーネを用いる場合 硫酸キニーネの蛍光を測定し,蛍光強度S及びブランクレベルノイ

ズNを求め,S/Nが2となる硫酸キニーネの濃度で表す。 

励起光側及び蛍光側モノクロメーターのスペクトルバンド幅によってSが変化し,レスポンスに

よってNが変化するため,これらとともに記録する。 

備考1. ラマン散乱の強度Sは,バックグラウンド処理の方法によって異なる。また,ノイズNはレ

スポンス処理などのデータ処理の有無によっても変化する。したがって,バックグラウンド

処理及びデータ処理方法も表示することが望ましい。 

2. 異なる装置間では処理方法を同一にすることが困難なため,感度を単純に比較することがで

きない場合がある。 

5) 測光安定度 水のラマン散乱を利用し,ラマン散乱光強度の一定測定時間での変動幅を散乱光強度

で規格化して表す。励起光側及び蛍光側モノクロメーターのスペクトルバンド幅及びレスポンスに

よって,値が変化するため,これらとともに記録する。 

6) 迷光 迷光は,モノクロメーターから出射する光強度に対し,設定波長以外の波長の光強度を総和

として測定し,比率で表す。励起光側及び蛍光側のモノクロメーターに対し求める。 

6.1) 励起光側 三角セル又は短光路長のセルに入れたローダミンB溶液を用い,蛍光側波長を640 nm

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に設定し,励起光を透過しない短波長カットフィルターを励起光側に入れたときの信号レベルと,

入れないときの信号レベルを読み取り,その割合で表す。励起光側波長及び使用した短波長カッ

トフィルターとともに記録する。蛍光側モノクロメーターの迷光が多く,正確に測定できない場

合には,散乱光除去フィルターを蛍光側に挿入する。一例を,図5に示す。 

6.2) 蛍光側 試料室に石英,硫酸バリウムなどでできた拡散素子を置き,励起光側モノクロメーター

の波長を0次光に設定する。蛍光側波長を透過しない短波長カットフィルターを蛍光側に入れた

ときと,入れないときの出力信号レベルを読み取り,その割合で表す。蛍光側波長及び使用した

短波長カットフィルターとともに記録する。一例を,図6に示す。 

図 5 迷光測定の一例(励起光側) 

図 6 迷光測定の一例(蛍光側) 

c) 蛍光分光光度計  

1) 波長正確さ(3) b)1)による。 

2) 波長設定の繰返し性(3) b)2)による。 

3) 分解(3) b)3)による。 

4) 感度(3) b)4)による。 

5) 測光安定度(3) b)5)による。 

6) 迷光(3) b)6)による。 

注(3) 装置によっては,測定できないこともある。 

d) 液体クロマトグラフ用蛍光検出器 a),b)又はc)による。 

4.3 

附属装置 附属装置には,次のものがあり,必要に応じて用いる。附属装置には,試料の温度を維

持する機能をもつものなどがある。 

a) 自動試料導入装置(シッパー) 液体試料を吸引し試料部に導入する装置。試料導入のタイミングに同

励起光 

蛍光 

三角セル 

(散乱光除去フィルター) 

短波長カットフィルター 

励起光 

(0次光) 

蛍光 

拡散素子 

短波長カットフィルター 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

期して自動的に測定し,測定後は排出する機能をもつものなどがある。負圧で吸引するもの,ペリス

タルティックポンプなどで送液するものがある。 

b) セル交換装置 複数のセルを交換して測定するための装置。手動で行うもの及び自動で行うものがあ

る。 

c) 蛍光偏光測定装置 試料に照射する励起光,試料から放射される蛍光の特定偏光成分を透過させる装

置。偏光子の回転を手動で行うもの及び自動で行うものがある。 

d) 薄層クロマトグラフ用スキャナー 薄層プレート,ろ紙,セルロースプレート,フィルム状ゲルなど

に展開分離された試料の表面蛍光測定に用いる。 

e) 固体試料ホルダー 固体試料を保持するために使用する。 

f) 

試料温度可変装置 試料の温度を上昇・下降・一定にする機能をもつ装置。 

g) 低温測定附属装置 液化窒素又は液化ヘリウム温度に試料を保ち,測定する装置。 

h) りん光測定附属装置 りん光スペクトル及びりん光減衰曲線の測定に用いる装置。りん光減衰曲線か

らりん光寿命を求めることが可能である。 

i) 

吸収セルホルダー 波長差なしの同期スペクトル測定によって,吸収スペクトルを測定するために用

いる。 

j) 

ストップトフロー附属装置 高速反応を測定するための装置。試料と試薬とを短時間で混合すること

が可能である。 

k) マイクロプレート附属装置 マイクロプレート中の試料を測定するための装置。 

l) 

副標準光源 光量子計を用いた,スペクトル補正範囲外の長波長領域で,スペクトル補正を行うため

に使用する。 

4.4 

付加機能 主な付加機能には,次のものがあり,必要に応じて用いる。 

a) 測定に関する付加機能  

− 繰返し測定 

− 経時変化測定 

− 同期スペクトル測定(励起光,蛍光波長の同時走査) 

b) スペクトルに関する付加機能  

− スペクトル補正 

− 三次元スペクトル測定 

− スペクトルの拡大又は縮小 

− スムージング 

− ピーク検出 

− 軸単位の変換(波長,波数,エネルギーなど) 

− ピーク,バレーなどの蛍光値及び波長の読取り 

− ピーク,バレーなどの近辺におけるスペクトルの面積計算 

− 微分計算 

c) スペクトル間演算の付加機能  

− スペクトル間の四則演算 

d) スペクトルからの情報抽出に関する付加機能  

− 定量情報,濃度変換及び統計処理 

− 定性情報,スペクトルデータ検索及びデータベース作成 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

e) データの保存  

− 装置に内蔵された形式による保存 

− JCAMP-DXなど互換性をもつ形式による保存 

− テキストファイル形式による保存 

5. 操作方法  

5.1 

装置の設置 装置の設置条件は,次による。ただし,製造業者などによって装置の設置条件が定め

られている場合にはその条件によって行う。光源部において発生したオゾンを解消する機能をもたない装

置では,室内の換気に注意する必要がある。励起光を試料に照射しながら試料を肉眼で観察する場合は,

紫外線の障害を避けるための注意が必要である。 

a) 電磁誘導の影響を与える装置が近くにない。 

b) 強い振動又は継続的な振動がない。 

c) ほこりが少ない。 

d) 腐食性ガスがない。 

e) 直射日光が当たらない。 

f) 

環境温度は,15〜35 ℃とする。 

g) 相対湿度45〜80 %で変化が少なく,結露しない。 

5.2 

試料の調製 試料の調製は,個別規格に規定する方法によって行うが,試料中の分析種が揮散,不

溶化,変質などによる損失のないように試料の組成,形態及び分析種の性状,濃度などを考慮する。蛍光

光度分析用の溶媒は,次の項目を考慮して用いる。 

a) 励起波長において蛍光性がない。 

b) 溶存酸素が十分に少ない。 

c) 蛍光光度分析用に精製された市販溶媒の使用。 

d) 溶媒自体の蛍光及びラマン光の影響。 

5.3 

装置操作条件の設定 操作条件の設定は,次による。 

5.3.1 

蛍光光度計  

a) 光源の選択 

b) 励起光側のフィルターの選択 

c) 励起光側の光量の選択 

d) 蛍光側フィルターの選択 

e) 蛍光強度の選択 

5.3.2 

分光蛍光光度計  

a) 光源の選択 

b) 測光モード(4)の選択 

注(4) 蛍光強度,りん光強度及び補正の有無 

c) 励起光側及び蛍光側の波長の選択 

d) 励起光側及び蛍光側モノクロメーターのスペクトル幅の選択 

e) 励起光側及び蛍光側モノクロメーターの走査方法の選択 

f) 

励起光及び蛍光強度の選択 

5.3.3 

蛍光分光光度計  

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) フィルターに関する項目は,5.3.1による。 

b) モノクロメーターに関する項目は,5.3.2による。 

6. スペクトル測定 励起スペクトル及び蛍光スペクトルの測定は,次の手順によって行う。励起スペク

トル及び蛍光スペクトルを測定し,スペクトルから情報抽出[4.4d)]することによって定性分析を行うこ

とがある。 

a) 励起スペクトルの測定 励起スペクトルの測定は,蛍光分光光度計(蛍光側に光学フィルターを用い

たもの)又は分光蛍光光度計を用いて行う。 

1) 単光束方式による測定 単光束方式は,次の方法で行うことができる。 

1.1) 蛍光側の波長は,蛍光の極大値又は分析に必要な波長に合わせる。 

1.2) 目的とする試料を含まない対照セルを試料部に入れ,励起側モノクロメーターを必要とする波長

範囲内で,波長間隔10 nmおきに対照セルの蛍光強度を測定する。ピーク付近では測定波長間隔

を密にする。 

1.3) 試料の入った試料セルを試料部に入れ,1.2)と同様に測定する。 

1.4) 各測定点における試料セルの蛍光強度から対照セルの蛍光強度を差し引き,波長と蛍光強度の関

係曲線を求め,励起スペクトル(5)を測定する。 

注(5) 得られた励起スペクトルは,その装置の特性(光源のスペクトル分布,モノクロメーターなど

の光学系の反射及び吸収の分光特性)を含んだもので,装置特性を含まないスペクトルを得る

ため,スペクトル補正を行う。 

2) 記録式単光束方式による測定 記録式単光束方式は,次の方法で行うことができる。 

2.1) a)1)1.1)と同様の操作を行う。 

2.2) 目的とする試料を含まない対照セルを試料部に入れ,励起側モノクロメーターを必要とする波長

範囲を走査し,対照セルの蛍光強度を測定する。 

2.3) 試料の入った試料セルを試料部に入れ,2.2)と同様に測定する。対照セルの蛍光強度を補正して,

励起スペクトルとすることがある。 

3) 蛍光を得るための励起波長の決定 蛍光を得るための励起波長の決定は,次の方法で行うことがで

きる。 

3.1) 文献値などが得られる場合にはこれを用いることができる。文献値などが得られない場合には,

分光光度計による吸収スペクトルを用いるか,蛍光側分光器を用い特定の波長又は全発光による

スペクトルを測定し,利用してもよい。 

3.2) 分光光度計を用い,吸収スペクトルを測定する。得られた吸収スペクトルの吸収ピークを励起波

長として,蛍光スペクトルを測定する。ここで得られた最大の強度が得られる蛍光波長に固定し,

再度,励起スペクトルを測定し,蛍光強度が最大となる励起波長を決定する。 

3.3) 蛍光光度計を用いて励起スペクトルを測定する。分光蛍光光度計の場合には,蛍光側の分光器を

特定の蛍光波長に固定するか又は分光せずに全発光によるスペクトルを測定することができる。

得られた蛍光スペクトルのピークに蛍光側分光器を固定し,再度励起スペクトルを測定し,最適

な励起波長を選択することがある。また,分光しない全波長を含む白色光を照射し蛍光を測定し,

ピークの移動の有無から励起波長を求めることができる。 

b) 蛍光スペクトルの測定 蛍光スペクトルの測定は,蛍光分光光度計(励起光側に光学フィルターを用

いたもの)又は分光蛍光光度計を用いて行う。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

1) 単光束方式による測定 単光束方式は,次の方法で行うことができる。 

1.1) 励起光側の波長を選択する。 

1.2) 目的とする試料を含まない対照セルを試料部に入れ,蛍光側モノクロメーターを必要とする波長

範囲内で,波長間隔10 nmおきに対照セルの蛍光強度を測定する。ピーク付近では測定波長間隔

を密にする。 

1.3) 試料の入った試料セルを試料部に入れ,1.2)と同様に測定する(6)。 

注(6) 蛍光強度は,試料の蛍光の他に溶媒の蛍光,セルの蛍光,溶媒のラマン光などが含まれている。 

1.4) 各測定点における試料セルの蛍光強度から対照セルの蛍光強度を差し引き,波長と蛍光強度との

関係曲線を求め,蛍光スペクトル(7)を測定する。 

注(7) 得られた蛍光スペクトルは,その装置の特性(光源のスペクトル分布,モノクロメーターなど

の光学系の反射や吸収の分光特性)を含んだもので,装置の特性を含まないスペクトルを得る

ためにはスペクトル補正を行う。 

2) 記録式単光束方式による測定 記録式単光束方式は,次の方法で行うことができる。 

2.1) 励起光側の波長を選択する。 

2.2) 目的とする試料を含まない対照セルを試料部に入れ,蛍光側モノクロメーターを必要とする波長

範囲を走査し,対照セルの蛍光強度を測定する。 

2.3) 試料の入った試料セルを試料部に入れ2.2)と同様に測定する。対照セルの蛍光強度を補正して,

蛍光スペクトルとすることがある。 

7. 定量 定量分析は,濃度既知の試料群の蛍光強度から求めた検量線又は蛍光強度の時間変化を用いて,

測定試料の濃度又は特性値を算出して行う。定量方法には次の方法がある。 

a) 検量線法 分析種の濃度が既知で,濃度が異なる幾つかの試料について,蛍光強度の測定を行い(8),

蛍光強度と分析種の濃度との関係式によって表された検量線を作成する。次に,測定試料の測定を行

い,試料に含まれている分析種の濃度を関係式によって算出し,定量を行う。 

注(8) 試料と同一の前処理を行い,同一条件で測定することが望ましい。 

備考 通常,定量には,液体又は気体試料を用いるが,濃度既知の試料がある場合には,固体試料で

も定量分析ができる。固体試料では,表面反射・散乱などの定量分析に及ぼす影響に留意する。 

実際の手順は,検量線用溶液を個別規格に規定した方法によって調製し,これらの溶液の蛍光強度を測

定する。検量線用試料中の分析種の濃度を横軸に,蛍光強度を縦軸にとり,検量線を作成する(9)。 

検量線の一例を,図7に示す。この検量線によって,分析種の濃度を求める(10)(11)。 

注(9) 分析種及び共存物質が懸濁質である場合,解離又は会合を起こすとき,分析種の濃度が高すぎ

るときなどには,検量線が直線にならないことがある。また,濃度が高いときに,濃度消光に

よって蛍光強度が下がることがある。 

試料が懸濁している場合は,試料による蛍光強度に加え,散乱による光の増加が観測される

ため,分析種による蛍光強度を正確に測定できないことがある。 

(10) 検量線は,直線を示す範囲内での使用が望ましい。曲線となる場合には,濃度によっては測定

精度が悪くなる場合がある。 

(11) 検量線用溶液は,分析種の濃度が内挿値となるような濃度に調製することが望ましい。 

参考 検量線が直線で,あらかじめ原点近傍を通ることが確認されている場合には,予想される分析

種の濃度近傍の検量線用溶液を用いて,一点の測定点だけで検量線を作成することができる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図 7 検量線法の一例 

b) 標準添加法 定量する同一試料溶液から4個以上の試料を等しくとる。1個を除き,これに分析種の

濃度が既知である溶液を,それぞれ濃度が段階的に異なるように加える。これらの試料及び先に除い

た1個の試料に溶媒を加え,一定量として測定試料を調製し,蛍光強度を測定する。それぞれに加え

た分析種の濃度を算出し,標準液の添加による分析種の濃度の増加量を横軸(12)に,蛍光強度を縦軸に

とり,関係線を作成する。関係線と横軸との交点(図8に示す点X)から分析種の濃度又は量を求め

る(13)。 

注(12) 分析種の濃度と一定濃度で濃度既知の標準液の添加量又は一定量の添加回数との間に比例関係

が成立するため,横軸に添加量又は添加回数をとることができる。 

(13) 標準添加法は,関係式が一次で,かつ,蛍光強度からブランク値を除いた値で作成した検量線

が原点を通過する場合にだけ適用する。 

図 8 標準添加法の一例 

検量線用試料中の分析種の濃度 




分析種の濃度 

測定試料の蛍光強度 




標準液の添加による分析種の濃度の増加量 

試料溶液による蛍光強度 

標準液の添加による蛍光強度の増加 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) その他の定量方法 その他の定量方法は,次による。 

1) 消光を用いる方法 分析種が蛍光性の試薬と反応し,その蛍光が消光する現象を利用して定量分析

を行うことができる。あらかじめ,蛍光強度の減少と分析種の濃度との関係を求めておく。 

2) 2波長を用いる方法 2種類の物質の状態が存在する場合,それぞれの励起波長が異なることがある。

二つの波長での蛍光強度をそれぞれ測定することによって,各々の濃度を求めることができる。 

3) 蛍光偏光を用いる方法 偏光を用いた蛍光を測定することによって,分子の大きさと溶媒の粘性と

の相関に関する情報及び蛍光寿命に関する情報を得ることができる。 

d) 時間変化測定 蛍光強度の時間変化測定を行うことによって,分析種の定量を行う方法がある。  

e) 定量値の表し方 定量値の表し方は,JIS K 0050による。 

8. データの質の管理 データの質の管理には,次の項目が重要である。 

a) 装置の性能確認 次に示す項目から必要なものを選択し,日常点検及び定期点検によって装置の性能

を確認し,装置のバリデーションを行う。定期点検は標準操作手順書を作成し,標準操作手順書によ

って行うと便利である。また,装置バリデーション用のソフトウェアが用意されている場合は,ソフ

トウェアによって行うこともできる。 

1) 蛍光光度計  

1.1) 励起光側フィルターの中心波長 

1.2) 励起光側フィルターの半値幅 

1.3) 蛍光側フィルターの中心波長 

1.4) 蛍光側フィルターの半値幅 

1.5) 測光安定性 

備考 必要に応じて,上記以外の項目を追加することができる。 

2) 分光蛍光光度計  

2.1) 励起光側波長正確さ 

2.2) 励起光側波長設定の繰返し性 

2.3) 励起光側分解 

2.4) 蛍光側波長正確さ 

2.5) 蛍光側波長設定の繰返し性 

2.6) 蛍光側分解 

2.7) 迷光 

2.8) 測光安定度 

備考 必要に応じて,上記以外の項目を追加することができる。 

3) 蛍光分光光度計  

3.1) フィルターに関する項目は1)と同じ。 

3.2) モノクロメーターに関する項目は2)と同じ。 

3.3) 測光安定度 

b) 試料の調製 測定対象に応じて,5.2に示す内容によって適切に調製する。 

9. 測定結果の記録 測定結果は,必要に応じて,次の事項を記録する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 測定年月日及び測定者名 

b) 試料名 

c) 測定成分 

d) 試料の前処理法 

e) 装置の名称及び型式 

f) 

励起光については,光源の種類,波長,波長幅,フィルターの種類など 

g) 蛍光については,測定波長,波長幅,フィルターの種類,検出器の種類など 

h) 試料部[4.1.1c)]の種類 

i) 

空試験値 

j) 

スペクトル補正の有無 

k) 個別規格に規定のある場合は,その事項 

10. 個別規格に記載すべき事項 蛍光光度法による定量分析方法を規定するときは,次の条件の検討を行

ってから分析方法を決定し,必要事項を記載する。 

10.1 記載すべき事項  

a) 分析種及びその濃度範囲 

b) 試料の採取方法及び保存方法 

c) 定量方法の種類 

d) 分析装置の構成及び試料部(4.1.1)の種類 

e) 励起光側波長及び蛍光側波長 

f) 

分析結果の表示方法 

g) 分析回数 

10.2 必要に応じて記載すべき事項  

a) 励起・蛍光スペクトルの例示 

b) 試料の分解,分離,濃縮,反応などの前処理 

c) 試薬の調製方法 

d) 使用した溶媒 

e) 検量線用溶液の調製方法及び保存方法 

f) 

酸,塩基の濃度(pH)による蛍光強度の変化の程度と分析に適した緩衝液の選定 

g) 共存物質による干渉を受けるときは,その除去方法又はマスキング剤の選択 

h) 安定剤の選択 

i) 

温度,放置時間及び励起光照射による蛍光強度の変化 

j) 

試薬の濃度及び/又は添加順序を変えたときの影響 

k) 分析試料調製から測定までの時間 

l) 

蛍光の取り出し角度,集光の有無など(液体試料では考慮しなくてよい) 

関連規格 JIS K 8008:1992 生化学試薬通則