K 0113 : 2005
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人電気化学
会(ECSJ)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出が
あり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS K 0113:1997は改正され,この規格に置き換えられる。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 760:1978,Determination of water―
Karl Fischer method (General method)を基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS K 0113には,次に示す附属書がある。
附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表
K 0113 : 2005
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 2
4. 分析方法の種類 ··············································································································· 2
5. 電位差滴定方法 ··············································································································· 2
5.1 装置 ···························································································································· 2
5.2 操作 ···························································································································· 3
5.3 記録の整理 ··················································································································· 4
5.4 保守及び管理 ················································································································ 5
5.5 個別規格に記載すべき事項 ······························································································ 5
6. 電流滴定方法 ·················································································································· 5
6.1 装置 ···························································································································· 5
6.2 操作 ···························································································································· 7
6.3 記録の整理 ··················································································································· 8
6.4 保守及び管理 ················································································································ 8
6.5 個別規格に記載すべき事項 ······························································································ 8
7. 電量滴定方法 ·················································································································· 8
7.1 装置 ···························································································································· 8
7.2 操作 ···························································································································· 9
7.3 記録の整理 ·················································································································· 10
7.4 保守及び管理 ··············································································································· 10
7.5 個別規格に記載すべき事項 ····························································································· 10
8. カールフィッシャー滴定方法 ···························································································· 10
8.1 容量滴定方法 ··············································································································· 11
8.2 電量滴定方法 ··············································································································· 15
8.3 水分気化−容量滴定法又は水分気化−電量滴定法 ································································ 16
8.4 保守及び管理 ··············································································································· 17
8.5 個別規格に記載すべき事項 ····························································································· 17
附属書(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ···································································· 19
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0113 : 2005
電位差・電流・電量・カールフィッシャー
滴定方法通則
General rules for methods of potentiometric, amperometric, coulometric, and
Karl Fischer titrations
序文 この規格は,分析試料の形態及び分析対象を特定しないで電位差,電流,電量及びカールフィシャ
ーの四つの滴定方法全般を規定した分析通則(General rule)である。
この規格に,全体として対応する国際規格は制定されていない。ただし,カールフィシャー滴定方法に
ついては,一般的方法を規定したISO 760が存在するが,1978年に制定されて以来改正されていない。こ
のため,ISO 760:1978は,カールフィシャー滴定方法の中で当時主流であった容量滴定法だけの規定であ
り,その後一般に広まった同滴定方法の中の他の方法である,電量滴定法,水分気化−電量滴定法,水分
気化−容量滴定法などの規定がない。
したがって,この規格は,カールフィシャー滴定方法の中の容量滴定方法については1978年に第1版と
して発行されたISO 760 Determination of water−Karl Fischer method (General method)を翻訳し,技術的内容
を変更し,また対応国際規格が制定されていないこれ以外の電位差滴定方法などについては,必要な技術
的内容を盛り込んで作成した日本工業規格である。
なお,国際規格と対応している箇条である8.1(容量滴定方法)において,点線の下線を施してある箇所
は,原国際規格を変更している事項である。この規格全体の変更の一覧表をその説明をつけて,附属書(参
考)に示す。
1. 適用範囲 この規格は,電位差滴定方法,電流滴定方法,電量滴定方法及びカールフィッシャー滴定
方法を用いる場合の通則について規定する。
なお,滴定操作手順などは,個別規格で規定し,この規格では規定しない。
備考 この規格のカールフィッシャー滴定方法の部分の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 760:1978,Determination of water―Karl Fischer method (General method) (MOD)
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0126 フローインジェクション分析通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 8005 容量分析用標準物質
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K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS K 8322 クロロホルム(試薬)
JIS K 8540 (+)-酒石酸ナトリウム二水和物(試薬)
JIS K 8574 水酸化カリウム(試薬)
JIS K 8777 ピリジン(試薬)
JIS K 8891 メタノール (試薬)
JIS K 8895 2-メトキシエタノール (試薬)
JIS K 8920 よう素(試薬)
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS K 0211及びJIS K 0213によるほか,次による。
a) 繰返し性 同一条件で繰返し測定したときのばらつきの程度。併行精度。
b) 滴定曲線 滴定の終点を決定するため,指示電位差,pH又は指示電流(Y)を縦軸に,滴加した滴定用
溶液の体積(X)又は滴定剤を発生するのに要した電気量(X)を横軸にとって,滴定の進行の様子を表す
曲線。
c) 滴定曲線の微分曲線 滴定曲線の差分量(ΔY/ΔX)又は微分量(dY/dX)を縦軸に,Xを横軸にとって表し
た曲線。
d) 指示電極 滴定の終点を決定するのに用いる電位又は電流を測定するための電極。
e) 指示電位差 参照電極に対して測った指示電極の電位差。
f)
指示電流 指示電極を流れる電流。
g) 電位差変化率 Yを電位差とし,Xを滴定用溶液の体積又は滴定剤を発生させるのに要した電気量と
したときのΔY/ΔX 又はdY/dX。
h) 被滴定溶液 目的成分の定量を行うために滴定される溶液。
i)
滴定用溶液 既知の濃度の滴定剤を含む溶液。
j)
力価 カールフィッシャー試薬を用いて水を滴定するとき,カールフィッシャー試薬の単位体積当た
りの水の当量。ミリグラム毎ミリリットル(mg/ml)で表す。
k) 水標準品 水の質量濃度が既知である溶液又は固体。
4. 分析方法の種類 この規格で規定する分析方法の種類は,次による。
a) 電位差滴定方法 指示電位差を終点検出に用いる滴定方法。
b) 電流滴定方法 指示電流を終点検出に用いる滴定方法。
c) 電量滴定方法 滴定剤を電解発生させ,それに要する電気量から目的成分の量を求める滴定方法。
d) カールフィッシャー滴定方法 カールフィッシャー試薬によって,水分を求める滴定方法。
備考 電位差滴定方法及び電流滴定方法は,終点検出に用いる物理量に基づく名称であり,それぞれ
は電量滴定方法と重複することがある。
5. 電位差滴定方法
5.1
装置
5.1.1
構成 電位差滴定装置は,滴定部,制御部及び表示記録部で構成する。その一例を,図1に示す。
5.1.2
滴定部 滴定部は,滴定槽,検出器及び滴定剤添加装置で構成する。
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K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図 1 電位差滴定装置の構成 (一例)
a) 滴定槽 滴定槽は滴定を行う容器であり,検出器及び滴定剤添加装置が装着でき,溶液をかき混ぜる
ことができるものとする。滴定槽の材料は,溶出・変質しないものとする。
b) 検出器 検出器は,指示電極及び参照電極で構成する。
c) 滴定剤添加装置 滴定剤添加装置は,滴定用溶液を用いる場合は,滴定用溶液を定量的に添加できる
装置(1)とし,電量滴定の場合は7.1.2 c)による。
注(1) ビュレット, 自動ビュレットなど。
5.1.3
制御部 制御部は,指示電位差を高入力抵抗をもつ増幅器で増幅し,表示記録部,滴定剤添加装置
などを作動させるための信号に変換する性能をもつもの。
5.1.4
表示記録部 表示記録部は,指示電位差を表示又は記録する。必要に応じて,滴定曲線,滴定結果
などを表示又は記録する装置を附属させる。
備考 制御部及び表示記録部としてpH計を用いてもよい。
5.1.5
装置の点検 装置の点検は,次による。
a) 日常点検 装置の性能確認を次の要領で実施する。測定用試料は,JIS K 8005で規定する容量分析用
標準物質及びそれら標準物質を用いて標定された標準液又はその他の標準液とする。これら測定用試
料を用いて滴定操作を行う。
備考1. 一般的には,測定結果は,標準液の既定値に対し97〜103 %である。
2. より信頼性の高い結果を要求される場合は,公的機関が認証している標準物質を使用する。
b) 定期点検 装置の点検は,据付時及び定期的に行う。
1) 制御部及び表示記録部については,電気的試験装置(標準電圧発生器など)を用いて,入力電圧の
直線性,繰返し性及び入力インピーダンス試験を行う。
2) 滴定剤添加装置については,添加量精度及び繰返し性試験を行う。
備考 より信頼性の高い結果を要求される場合は,国際標準に対してトレーサビリティーのある試験
装置を使用する。
5.2
操作
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
滴 定 槽
検
出
器
滴定剤添加装置
参照電極
指示電極
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.2.1
滴定曲線又はその微分曲線の作成方法 指示電位差(2)又はpHをY,滴定用溶液の体積をXとし,
滴定曲線又はその微分曲線を作成する。終点付近の曲線の形が明りょうに描けるように留意する。ただし,
電量滴定の場合は,滴定剤添加装置に供給した電気量又はそれから求めた滴定剤の量をXとする。
注(2) 混乱のおそれがないときには,その絶対値をYとしてもよい。
5.2.2
終点決定方法 終点決定方法は,次による。
a) 滴定曲線を用いる場合は,次のいずれかによる。
1) 変曲点法 滴定曲線の変曲点 又は 滴定曲線の傾斜が最大の点を必要な精度で決定できるときは,
その点の横軸の読みを終点とする。
2) 交点法 図2に示すように滴定曲線に45°の傾きの二つの接線を引き,これらから等距離にある平
行な線と滴定曲線との交点に対応する横軸の読みを終点とする。
b) 滴定曲線の微分曲線を用いる場合は,図3に示すように電位差変化率の絶対値が最大となる点の横軸
の読みを終点とする。
図 2 終点決定方法(一例) 図 3 終点決定方法(一例)
5.2.3
手動滴定 手動滴定は,次による。
a) 滴定曲線の作成方法は,5.2.1による。
b) 終点決定方法は,5.2.2による。
c) その他の操作は,JIS K 0050による。
5.2.4
自動滴定 自動滴定には,自動終点検出形の滴定又は終点電位設定形の滴定がある。
a) 自動終点検出形の滴定 電位差変化率が最大になる点を検出し,これを終点として,滴定用溶液の体
積又は滴定剤添加装置に供給した電気量若しくはそれを用いて演算処理した結果を表示し又は記録す
る。
b) 終点電位設定形の滴定 指示電位差が,あらかじめ設定しておいた値に達したときを終点として,滴
定用溶液の体積又は滴定剤添加装置に供給した電気量若しくはそれを用いて演算処理した結果を表示
し又は記録する。
5.3
記録の整理 電位差滴定に当たっては,次のうち必要な事項を整理し,記載する。ただし,電量滴
定の場合は,7.3 による。
終点
加えた滴定用溶液の体積
電
位
差
変化
率
終点
加えた滴定用溶液の体積
指
示
電
位差
5
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 測定年月日及び測定者名
b) 電位差滴定装置の製造業者名及び形式記号(附属装置がある場合は,その名称及び形式。)
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 滴定用溶液の組成,標定方法及び標定の際に用いた標準液名又は標準物質名(更に, 滴定用溶液が市
販品の場合は,製造業者名及び識別番号。)
e) 指示電極及び参照電極の種類並びに仕様
f)
滴定条件(温度,かき混ぜ条件,滴定速度,不活性気体の通気の有無など。)
g) 終点までに要した滴定用溶液の体積及び終点における指示電位差又はpHの値(終点電位設定形の自動
滴定の場合は,あらかじめ設定した指示電位差又はpHの値。)
h) 滴定結果
i)
その他の事項
5.4
保守及び管理
5.4.1
電位差滴定装置の設置 電位差滴定装置は,次の条件を備えた場所に設置する。
a) 温度5〜35 ℃,相対湿度85 %以下で急激な変化を生じない。
b) 振動,水漏れがなく,直射日光が当たらない。
c) 腐食性ガス及びほこりが少なく,換気性がよい。
d) 障害となるような電気的雑音がない。
5.4.2
安全についての注意事項
a) 電気配線は,すべて電気的に安全であり,絶縁及び接地は,確実でなければならない。
b) 試料及び試薬の取扱いは,爆発性,引火性,毒性,有害性などに十分注意して行い,これらの廃棄に
当たっては,安定化,無害化などに配慮しなければならない。
5.5
個別規格に記載すべき事項 電位差滴定方法による分析方法を規定するに当たっては,少なくとも
次の各項目を規定しなければならない。ただし,電量滴定方法による場合は,7.5による。
a) 測定対象成分及び濃度範囲
b) 試料の採取方法及び保存方法
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 滴定用溶液の成分,濃度範囲及び標定方法
e) 指示電極及び参照電極の種類並びに仕様
f)
終点決定方法
g) 滴定回数
h) 分析結果の表示方法
備考 フローインジェクション滴定方法を用いてもよい。滴定方法の詳細は,JIS K 0126による。
6. 電流滴定方法
6.1
装置
6.1.1
構成 電流滴定装置は,滴定部,制御部及び表示記録部で構成する。その一例を図4及び図5に示
す。
6.1.2
滴定部 滴定部は,滴定槽,検出器及び滴定剤添加装置で構成する。
a) 滴定槽 滴定槽は,5.1.2 a)による。
b) 検出器 一つの指示電極を用いる電流滴定方法の場合には,検出器は,指示電極,参照電極及び補助
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
電極で構成する。参照電極を補助電極と兼用するときには,参照電極の表面積は,指示電極の表面積
の100倍以上とし,かつ,内部抵抗は500 Ω以下とする。二つの指示電極を用いる電流滴定方法の場
合には,検出器は,材料及び形状が同じ一対の指示電極で構成する。
図 4 電流滴定装置(一つの指示電極を用いる場合)の構成 (一例)
図 5 電流滴定装置(二つの指示電極を用いる場合)の構成 (一例)
c) 滴定剤添加装置 滴定剤添加装置は,5.1.2 c)による。
6.1.3
制御部 制御部は,指示電流を増幅して表示記録部,滴定剤添加装置などを作動させる性能をもつ
部分とポテンシオスタットとで構成する。ポテンシオスタットは,参照電極に対する指示電極の電位又は
二つの指示電極間の電位差を制御する。参照電極を補助電極に兼用する場合又は二つの指示電極を用いる
場合には,ポテンシオスタットに代えて定電圧直流電源を用いてもよい。
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
滴 定 槽
検
出
器
滴定剤添加装置
参照電極
指示電極
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
滴 定 槽
検
出
器
滴定剤添加装置
指示電極
又は
参照電極
指示電極
補助電極
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6.1.4
表示記録部 表示記録部は,指示電流を表示又は記録する。必要に応じて,滴定曲線,滴定結果な
どを表示又は記録する装置を附属させる。
6.1.5
装置の点検 装置の点検は,次による。
a) 日常点検 5.1.5 a)による。
b) 定期点検 装置の点検は,据付時及び定期的に行う。
1) 制御部及び表示記録部については,電気的試験装置(標準電圧発生器など)を用いて,印加電圧・
電流の直線性,入力電圧・電流の直線性及び繰返し性試験を行う。
2) 滴定剤添加装置については,添加量精度及び繰返し性試験を行う。
備考 より信頼性の高い結果を要求される場合は,国際標準に対してトレーサビリティーのある試験
装置を使用する。
6.2
操作
6.2.1
滴定曲線の作成方法 指示電流をY,滴定用溶液の体積をXとして,滴定曲線を作成する。終点付
近の曲線の形が明りょうに描けるように留意する。ただし,電量滴定の場合には,滴定剤添加装置に供給
した電気量又はそれから求めた滴定剤の量をXとする。
6.2.2
終点決定方法 滴定曲線は,通常,二つの直線部分を含む曲線からなる。直線部分をそれぞれ外挿
して交点を求め,その点の横軸の読みを終点とする。終点決定方法の一例を,図6及び図7に示す。
図 6 終点決定方法(一例)
6.2.3
手動滴定 手動滴定は,次による。
a) 滴定曲線の作成方法は,6.2.1による。
b) 終点決定方法は,6.2.2による。
c) その他の操作は,JIS K 0050による。
6.2.4
自動滴定 自動滴定には,終点電流設定形の滴定又は滴定曲線自動記録形の滴定がある。
a) 終点電流設定形の滴定 指示電流があらかじめ設定しておいた値に達したときを終点とし,滴定用溶
液の体積又は滴定剤添加装置に供給した電気量若しくはそれを用いて演算処理した結果を表示し又は
記録する。
b) 滴定曲線自動記録形の滴定 滴定曲線を記録する。終点決定方法は,6.2.2による。
終点
加えた滴定用溶液の体積
指
示
電
流
終点
加えた滴定用溶液の体積
指
示
電
流
図 7 終点決定方法(一例)
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6.3
記録の整理 電流滴定に当たっては,次のうち必要な事項を整理し記載する。ただし,電量滴定の
場合は,7.3による。
a) 測定年月日及び測定者名
b) 電流滴定装置の製造業者名及び形式記号(附属装置がある場合は,その名称及び形式。)
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 滴定用溶液の組成,標定方法及び標定の際に用いた標準液名又は標準物質名(更に, 滴定用溶液が市
販品の場合は,製造業者名及び識別番号。)
e) 指示電極,参照電極及び補助電極の種類並びに仕様
f)
滴定条件(温度,かき混ぜ条件,滴定速度,不活性気体の通気の有無など。)
g) 参照電極に対する指示電極の電位又は二つの指示電極の間の電位。
h) 終点までに要した滴定用溶液の体積及び終点における指示電流値(終点電流設定形の自動滴定の場合
は,あらかじめ設定した指示電流値。)
i)
滴定結果
j)
その他の事項
6.4
保守及び管理 5.4による。
6.5
個別規格に記載すべき事項 電流滴定方法による分析方法を規定するに当たっては,少なくとも次
の各項目を規定しなければならない。ただし,電量滴定方法による場合は,7.5による。
a) 測定対象成分及び濃度範囲
b) 試料の採取方法及び保存方法
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 滴定用溶液の成分,濃度範囲及び標定方法
e) 指示電極及び参照電極の種類並びに仕様
f)
参照電極に対する指示電極の電位又は二つの指示電極の間の電位差
g) 終点決定方法
h) 滴定回数
i)
分析結果の表示方法
7. 電量滴定方法
7.1
装置
7.1.1
構成 電量滴定装置は,滴定部,制御部及び表示記録部で構成する。その一例を,図8に示す。
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図8 電量滴定装置の構成 (一例)
7.1.2
滴定部 滴定部は,滴定槽,検出器及び滴定剤添加装置で構成する。
a) 滴定槽 滴定槽は,5.1.2 a)による。
b) 検出器 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合には5.1.2 b),電流滴定方法を用いる場合には6.1.2
b)による。
c) 滴定剤添加装置 滴定剤添加装置は,電気分解によって電気量に比例する物質量の滴定剤を発生する
性能をもつもので,発生電極及び対極で構成する。発生電極は,滴定槽中の溶液に浸し,対極は,対
極用電解液に浸す。滴定槽中の溶液と対極用電解液との間には,液の混合を防ぐための隔膜を置く。
7.1.3
制御部 制御部には,滴定剤添加装置を制御する部分を含む。その他の部分は,終点検出に電位差
滴定方法を用いる場合には5.1.3,電流滴定方法を用いる場合には6.1.3による。滴定剤添加装置を制御す
る部分は,滴定剤を発生するための電流を供給し,供給した電気量に対応する信号を出力する機能をもつ
ものとする。
7.1.4
表示記録部 表示記録部は,滴定剤添加装置に供給した電気量若しくはそれから求めた滴定剤の物
質量と指示電位差又は指示電流とを表示又は記録する性能をもつものとする。必要に応じて,滴定曲線,
滴定結果などを表示又は記録する装置を附属させる。
7.1.5
装置の点検 装置の点検は,次による。
a) 日常点検 5.1.5 a)による。
b) 定期点検 装置の点検は,据付時及び定期的に行う。
1) 制御部及び表示記録部について,電気的試験装置を用いて実施する。
2) 滴定剤添加装置に供給する電解電流値の直線性の試験を行う。
3) 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合は,5.1.5による。
4) 終点検出に電流滴定を用いる場合は,6.1.5による。
備考 より信頼性の高い結果を要求される場合は,国際標準に対してトレーサビリティーのある試験
装置を使用する。
7.2
操作
7.2.1
滴定曲線又はその微分曲線の作成方法 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合には,5.2.1によ
る。電流滴定方法を用いる場合には,6.2.1による。
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
滴 定 槽
滴定剤添加装置
検 出 器
発生電極
対 極
10
K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.2.2
終点決定方法 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合には5.2.2,電流滴定方法を用いる場合に
は6.2.2による。
7.2.3
手動滴定 手動滴定は,次による。
a) 滴定曲線の作成方法は,7.2.1による。
b) 終点決定方法は,7.2.2による。
c) その他の操作は,JIS K 0050による。
7.2.4
自動滴定 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合には,5.2.4による。電流滴定方法を用いる場
合には,6.2.4による。
7.3
記録の整理 電量滴定に当たっては,次のうち必要な事項を整理し記載する。
a) 年月日及び測定者名
b) 電量滴定装置の製造業者名及び形式記号(附属装置がある場合はその名称及び形式。)
c) 被滴定溶液(滴定剤発生試薬を含む。)の調製方法
d) 滴定剤を発生させるための条件(溶液の組成及び量,発生電極及び対極の種類及び仕様,隔膜の種類及
び仕様,対極用電解液の組成,電解条件など。)
e) 指示電極及び参照電極の種類並びに仕様
f)
滴定条件(温度, かき混ぜ条件, 不活性気体の通気の有無など。)
g) 終点検出に電位差滴定方法を用いる場合には,終点までに要した電気量及び終点における指示電位差
又はpHの値(終点電位差設定形の自動滴定の場合は,あらかじめ設定した指示電位差又はpHの値),
電流滴定方法を用いる場合には,終点までに要した電気量及び終点における指示電流値(終点電流設定
形の自動滴定の場合は,あらかじめ設定した指示電流値。)
h) 滴定結果
i)
その他の事項
7.4
保守及び管理 5.4による。
7.5
個別規格に記載すべき事項 電量滴定方法による分析方法を規定するに当たっては,少なくとも次
の各項目を規定しなければならない。
a) 測定対象成分及び濃度範囲
b) 試料の採取方法及び保存方法
c) 被滴定溶液(滴定剤発生試薬を含む。)の調製方法
d) 滴定剤を発生させるための条件(溶液の組成及び量,発生電極及び対極の種類及び仕様,隔膜の種類及
び仕様,対極用電解液の組成,電解条件など。)
e) 指示電極及び参照電極の種類並びに仕様
f)
電流滴定方法を用いる場合には,参照電極に対する指示電極の電位又は二つの指示電極の間の電位差
g) 終点決定方法
h) 滴定回数
i)
分析結果の表示方法
8. カールフィッシャー滴定方法 カールフィッシャー滴定は,よう素(I2)と水(H2O)が物質量で1:1
で反応することに基づく。塩基としてピリジンを用いた場合,反応は式(1)のように表される。
CH3OH+SO2+C5H5N→[C5H5NH]SO3CH3
H2O+I2+[C5H5NH]SO3CH3+2C5H5N→[C5H5NH]SO4CH3+2[C5H5NH]I ·················· (1)
11
K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
カールフィッシャー滴定方法には,容量滴定方法と電量滴定方法とがあり,試験の目的に応じて選定す
る。終点検出は,一対の白金電極を用いる電流制御電圧検出方法による。
備考1. 滴定操作は,自動滴定方法による。
2. 終点検出は,電圧制御電流検出方法によることもできる。この場合は,手動滴定方法によっ
てもよい。
3. 試料によっては,水分気化法を用いる(水分気化装置を用いて試料の水分を気化させ,キャ
リアーガスで滴定溶媒又は電解液に捕集し、カールフィッシャー水分計で測定する方法)。
8.1
容量滴定方法
8.1.1
装置 装置は,次による。
a) 構成 自動滴定装置は,滴定部,制御部及び表示記録部で構成する。その一例を,図9に示す。
b) 滴定部 滴定部は,滴定槽,検出器,カールフィッシャー試薬溶液添加装置などで構成する。
1) 滴定槽 滴定槽は,滴定を行う容器であり,大気中の水分が浸入しない構造とする。検出器,カー
ルフィッシャー試薬溶液添加装置,試料注入口及び乾燥管が装着でき,溶液をかき混ぜることので
きるもの。また,滴定槽の材料は,溶出・変質のしないもの。
2) 検出器 検出器は,一対の白金電極で構成する。それらの電極間に電流を流し,電極間の電圧を測
定することによって終点を検出する。
図 9 容量滴定方法自動滴定装置の構成(一例)
3) カールフィッシャー試薬溶液添加装置 カールフィッシャー試薬溶液添加装置は,カールフィッシ
ャー試薬溶液を定量的に添加できる装置(1)。
c) 制御部 制御部は,検出した電圧を増幅し,表示記録部,カールフィッシャー試薬溶液添加装置など
を作動させるための信号に変換する機能をもつもの。
d) 表示記録部 表示記録部は,使用したカールフィッシャー試薬溶液の力価と滴定に要したその体積と
から水分を計算し,得られた結果を表示又は記録する。
e) 装置の点検 装置の点検は、据付時及び定期的に行う。また,必要に応じて,使用前・使用後に点検を
行う。
8.1.2
試薬 試薬は,次による。
a) メタノール JIS K 8891に規定するメタノールで,かつ,水分が質量分率0.05 %以下のものを用いる。
水分がこれを超える場合は,メタノール1 000 mlに乾燥用合成ゼオライト30 gを加えて密栓し,とき
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
カールフィッシャー
試薬溶液添加装置
検 出 器
滴 定 槽
12
K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
どき緩やかに振り混ぜながら約8時間放置し,更に16時間静置後,透明な上澄みの部分を採取して用
いる。湿気を遮って保存する。
b) クロロホルム JIS K 8322に規定するクロロホルムで,かつ,水分が質量分率0.01 %以下のものを用
いる。水分がこれを超える場合は,クロロホルム1 000 mlに乾燥用合成ゼオライト30 gを加えて密栓
し,ときどき緩やかに振り混ぜながら約8時間放置し,更に16時間静置後,透明な上澄みの部分を用
いる。湿気を遮って保存する。
c) 2-メトキシエタノール JIS K 8895 に規定する2-メトキシエタノールで,かつ,水分が質量分率
0.05 %以下のものを用いる。水分がこれを超える場合は,2-メトキシエタノールを蒸留し,初留分を
捨ててから留出したものを用いる。湿気を遮って保存する。
d) 2-エトキシエタノール 2-エトキシエタノール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)の純度
が質量分率98 %以上で,水分が質量分率0.05 %以下のものを用いる。水分がこれを超える場合は2-
エトキシエタノール1 000 mlに乾燥用合成ゼオライト30 gを加えて密栓し,ときどき緩やかに振り混
ぜながら約8時間放置し,更に16時間静置後,透明な上澄みの部分を採取し用いる。湿気を遮って保
存する。
e) 4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン 4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)
の純度が質量分率98 %以上で,水分が質量分率0.3 %以下のものを用いる。
f)
ピリジン JIS K 8777 に規定するピリジンで,かつ,水分が質量分率0.05 %以下のものを用いる。
水分がこれを超える場合は,ピリジンにJIS K 8574に規定する水酸化カリウムを加え,密栓し数日間
放置後,湿気を遮って蒸留し,初留分を捨てた留出物を用いる。湿気を遮って保存する。
g) イミダゾール イミダゾールの純度が質量分率99 %以上で,水分が質量分率0.3 %以下のものを用
いる。
h) 2-メチルアミノピリジン 2-メチルアミノピリジンの純度が質量分率98 %以上で,水分が質量分率
0.3 %以下のものを用いる。
i)
(+)-酒石酸ナトリウム二水和物 JIS K 8540に規定する(+)-酒石酸ナトリウムの水溶液から再結晶さ
せた結晶を十分水を除いてから,室温で相対湿度約50 %で乾燥し,恒量(含水量を一定)としたものを
用いる。
j)
滴定溶媒 通常,メタノールを用いる。その他試料に応じてメタノール−クロロホルム,メタノール
−ホルムアミドなどの混合溶媒を用いてもよい。しかし,メタノールと反応する試料に対してはメタ
ノールを含まない滴定溶媒で,水分が質量分率0.05 %以下のものを用いる。
k) カールフィッシャー試薬溶液 JIS K 8920に規定するよう素85 gをメタノール670 mlに溶かし,ピ
リジン270 mlを加え,よく混合してから氷冷する。この混合溶液に,その温度が20 ℃を超えないよ
うに注意しながら乾燥した二酸化硫黄を通じる。その増量が65 gに達したとき,二酸化硫黄を通じる
のをやめる。これをカールフィッシャー試薬溶液とする。この場合,メタノールの代わりに2-メトキ
シエタノール,クロロホルム,2-エトキシエタノール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル),
4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカルボナート)又はそれらの混合物を用いてもよい。
また,ピリジンの代わりにイミダゾール又は2-メチルアミノピリジンを用いてもよい。この試薬溶液
は,湿気及び光を遮り,温度変化の小さい20℃以下の場所に保存する。この試薬溶液の標定は,調製
してから24時間後に行う。また,日時の経過とともに濃度が低下するので,使用の都度,標定しなけ
ればならない。
備考 カールフィッシャー試薬溶液は,市販品を用いてもよい。
13
K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
メタノール25〜50 mlを滴定槽にとり,これにカールフィッシャー試薬溶液を8.1.3 a) 1)によって,終点
まで正しく滴加する。次に,この液に標準品として(3),水約30〜50 mgを0.1 mgのけたまではかって速や
かに加えるか,又は酒石酸ナトリウム二水和物約150 mgを0.1 mgのけたまではかりとり,直ちにカール
フィッシャー試薬溶液を用いて滴定する。
注(3) 標準品として市販のアンプル入り水標準品(10 mg/g)約2 gを用いてもよい。
備考 水を標準品として用いる場合で,更に精度を要する場合,0.01 mgのけたまではかる。
滴定の方法は,8.1.3 a) 2)による。質量 m1の水と当量のカールフィッシャー試薬溶液の体積
をVaとすると,F=m1/Vaをカールフィッシャー試薬溶液の力価という。力価は,次の式によっ
て求める。
水を用いた場合,
a
1
V
m
F=
酒石酸ナトリウム二水和物を用いた場合,
a
08
.
23004
.
36
2
V
m
F
×
=
アンプル入り水標準品(10 mg/g)を用いた場合,
a
a
3
V
f
m
F
×
=
ここに,
F: 力価 (mg/ml)
m1: はかり取った水の質量 (mg)
m2: はかり取った酒石酸ナトリウム二水和物の質量 (mg)
Va: 終点までに要したカールフィッシャー試薬溶液の体積(ml)
m3: はかり取ったアンプル入り水標準品の質量 (g)
fa: アンプル入り水標準品の水の質量濃度 (mg/g)
この操作を3回以上繰返し行い,繰返し性を確認する。求めた力価の平均値を実試
料測定の場合の力価とする。
備考1. 一般的に,繰返し性は,相対標準偏差値で5 %以内である。
2. 標定には,水の質量濃度が既知である水−メタノ一ル溶液を用いてもよい。しかし,濃度が
変化しやすいため,使用には十分な注意が必要である。
3. より信頼性の高い結果を要求される場合は,標準品及び標準品の質量測定に用いる天びんは,
国際標準に対してトレーサビリティーのあるものを用いる。
l)
水−メタノール溶液 メタノール約500 mlを乾燥した全量フラスコ1 000 mlにとり,水約2 gを0.1
のけたまで正しくはかって加え,更にメタノールを標線まで加える。湿気及び光を遮り,温度変化の
小さい場所に保存する。
標定 水−メタノール溶液10 mlを全量ピペットではかりとり,滴定槽に加える。カールフィッシャ
ー試薬溶液で滴定する。滴定の方法は,8.1.3 a)による。水−メタノール溶液の水の質量濃度は,
次の式によって求める。
10
bF
V×
=
ρ
ここに, ρ: 水−メタノール溶液中の水の質量濃度 (mg/ml)
Vb: 終点までに要したカールフィッシャー試薬溶液の体積(ml)
F: カールフィッシャー試薬溶液の力価 (mg/ml)
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K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 市販の水−メタノール溶液を用いてもよい。
8.1.3
操作 操作は,次による。
a) 直接滴定方法
1) 試料に適した滴定溶媒(4)を滴定槽に入れる。カールフィッシャー試薬溶液で終点まで滴定する(5)。
注(4) 滴定溶媒の使用量は,滴定槽の容量及び形状によって適宜決める。
(5) 滴定溶媒中及び滴定槽中に残存する水分による誤差をなくすために行う操作である。したがっ
て,この場合に消費されたカールフィッシャー試薬溶液の体積は,計算に用いないので記録す
る必要はない。
2) 試料を正しくはかりとり,この滴定槽に速やかに加え,かき混ぜ機でかき混ぜながらカールフィッ
シャー試薬溶液で終点まで滴定する。
3) 試料中の水分の質量百分率は,次の式によって算出する。
100
s
c×
×
=
m
V
F
W
ここに, W: 水分の質量百分率(%)
Vc: 終点までに要したカールフィッシャー試薬溶液の体積(ml)
F: カールフィッシャー試薬溶液の力価(mg/ml)
ms: 試料の質量(mg)
b) 逆滴定方法
1) 試料に適した滴定溶媒(4) を滴定槽に入れる。カールフィッシャー試薬溶液で終点まで滴定する(5)。
2) 試料を正しくはかりとり,この滴定槽に速やかに加え,かき混ぜ機でかき混ぜる。
3) これにカールフィッシャー試薬溶液を必要な体積より更に数ミリリットル(ml)過剰に加え,加えた
カールフィッシャー試薬溶液の全体積を正確にはかっておく。
4) 水―メタノール溶液で終点まで逆滴定する。
5) 試料中の水分の質量百分率は,次の式によって求める。
100
s
m
d
×
×
−
×
=
m
V
F
V
W
ρ
ここに, W: 水分の質量百分率 (%)
Vd: 加えたカールフィッシャー試薬溶液体積 (ml)
F: カールフィッシャー試薬溶液の力価 (mg/ml)
Vm: 終点までに要した水―メタノール溶液の体積 (ml)
ρ: 水−メタノール溶液の水の質量濃度 (mg/ml)
ms: 試料の質量 (mg)
c) 測定精度確認 正しく測定されていることを確認するため,標準品による確認試験を行う。標定時に
用いた,標準品の種類、採取量のいずれかを変え,標準品の水分の質量濃度の測定を3回以上行う。
備考 一般に,測定結果は,標準品の既知水分質量濃度の95〜105 %である。
8.1.4
記録の整理 カールフィッシャー滴定における容量滴定に当たっては,次のうち必要な事項を整理
し記載する。
a) 年月日及び測定者
b) カールフィッシャー滴定用容量滴定装置の製造業者名及び形式記号(附属装置がある場合は,その名
称及び形式。)
c) 被滴定溶液の調製方法
d) カールフィッシャー試薬溶液(市販品の場合は,製造業者名及び商品名。)の力価
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
e) 水―メタノール溶液(市販品の場合は,製造業者名及び商品名。)の水の質量濃度
f)
滴定溶媒の組成(市販品の場合は,製造業者名及び商品名。)
g) その他の滴定条件(温度,かき混ぜ条件,滴定速度,不活性気体の通気の有無など。)
h) 直接滴定方法の場合には,終点までに要したカールフィッシャー試薬溶液の体積。逆滴定方法の場合
には,加えたカールフィッシャー試薬溶液の体積及び終点までに要した水−メタノール溶液の体積。
i)
滴定結果
j)
その他の事項
8.2
電量滴定方法
8.2.1
装置 装置は,次による。
a) 構成 自動滴定装置は,滴定部,制御部及び表示記録部で構成する。その一例を,図10に示す。
b) 滴定部 滴定部は滴定槽,検出器及び滴定剤添加装置で構成する。
図 10 電量滴定方法自動滴定装置の構成 (一例)
1) 滴定槽 滴定槽は,滴定を行う容器であり,大気中の水分が浸入しない構造とする。検出器,滴定
剤添加装置,試料注入口及び乾燥管が装着でき,溶液をかき混ぜることのできるもの。また,滴定
槽の材料は,溶出・変質しないもの。
2) 検出器 8.1.1 a) 2)による。
3) 滴定剤添加装置 滴定剤添加装置は,電気分解によって電気量に比例する物質量のよう素を発生す
る機能をもつもので,陽極として作用する発生電極及び対極で構成する。よう素発生電極は,滴定
槽中の陽極液(発生液)に浸す。対極は,陰極液(対極液)に浸す。滴定槽中の陽極液(発生液)
と陰極液(対極液)との間には,液の混合を防ぐために隔膜を置く。
c) 制御部 制御部は,滴定剤添加装置を制御する部分を含むものとし,その他は5.1.3による。滴定剤添
加装置を制御する部分は,よう素を発生するための電流を供給し,供給した電気量に対応する信号を
出力する。
d) 表示記録部 表示記録部は,滴定剤添加装置に供給した電気量から水分を計算し,その結果を表示又
は記録する。
滴 定 部
制
御
部
表
示
記
録
部
滴 定 槽
滴定剤添加装置
検 出 器
よう素発生電極
対 極
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
8.2.2
試薬 電解液(6)は,次のものを組み合わせて用いる。
注(6) メタノールと反応する試料に対しては,メタノールを含む有機溶媒を用いてはならない。
備考 電解液は市販品を使用してもよい。
a) 陽極液 (発生液) よう化物イオン,二酸化硫黄,ピリジン又はそれに代わる塩基とメタノールなどの
有機溶媒との混合溶液。
b) 陰極液 (対極液) 無機塩,第四級アンモニウム塩,アミン塩酸塩などの有機塩とメタノ一ルなどの有
機溶媒との混合溶液。
8.2.3
操作 操作は,次による。
a) 滴定剤添加装置(発生室)に陽極液(発生液),陰極室(対極室)に陰極液(対極液)を入れ,陽極液をかき混
ぜながら,よう素を発生させるための電流を流し,終点まで滴定する(7)。
注(7) 陽極液中及び滴定槽中に残留する水分による誤差をなくすために行う操作である。したがって,
この場合の水分量は,計算に用いないので記録する必要はない。
b) この陽極液に試料を速やかに加え,かき混ぜ機でかき混ぜながら電流を流して終点まで滴定する。そ
のときの水分量を読み取る。
c) 試料中の水の質量百分率は,次の式によって求める。
100
s
×
=mG
W
ここに, W: 水の質量百分率 ( %)
G: 水の質量の表示値 (mg)
ms: 試料の質量 (mg)
d) 正しく測定されていることを確認するため,標準品による確認試験を行う。水5 μlをマイクロシリン
ジではかりとるか,アンプル入りの水標準品約1 mlを0.1 mgまではかりとり,水分質量濃度の測定
を3回以上行う。
備考 一般的に,測定結果は,標準品の既知水分質量濃度の95〜105 %である。
8.2.4
記録の整理 カールフィッシャー滴定における電量滴定に当たっては,次のうち必要な事項を整理
し記載する。
a) 測定年月日及び測定者名
b) カールフィッシャー滴定用電量滴定装置の製造業者名及び形式記号(附属装置がある場合は,その名
称及び形式。)
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 電解液 (陽極液及び陰極液)の組成 (市販品の場合は, 製造業者名及び商品名。)
e) 電解液 (陽極液及び陰極液)の使用量
f)
滴定条件 (温度,かき混ぜ条件,滴定速度,不活性気体の通気の有無など。)
g) 滴定結果
h) その他の事項
8.3
水分気化−容量滴定法又は水分気化−電量滴定法
8.3.1
要旨 試料を乾燥窒素又は空気の気流中で加熱して,試料中の水分を気化させ,水分計の滴定溶媒
又は電解液に捕集してカールフィッシャー滴定を行う。カールフィッシャー滴定法は,水分量に応じて容
量滴定法,電量滴定法のいずれかを用いる。
17
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
8.3.2
水分気化装置 水分気化装置は,気化部,乾燥部及びキャリアーガス供給部から構成される (図11
参照)。
図 11 水分気化装置の構成 (一例)
8.3.3
試薬 カールフィッシャー試薬は,8.1.2 j), k)又は8.2.2のものと同等のものを用いる。ただし滴定
溶媒は揮発するのを防ぐため,1,2-エタンジオール(エチレングリコール)又は1,2-プロパンジオール(プ
ロピレングリコール)を添加するとよい。
8.3.4
操作 水分気化装置が設定温度に達して十分に温度が安定したら,系内を無水状態にし,試料を水
分気化装置に投入し試料中の水分を気化させ,その水分を測定する。
8.3.5
測定精度確認 正しく測定できていることを確認するため,水分気化法用の水標準品による確認試
験を行う。水標準品約100 mgを0.1 mgまではかりとり,製造業者指定の温度で気化させ,水分質量濃度
の測定を3回以上行う。
備考 一般に,測定結果は,標準品の既知水分質量濃度の95〜105 %である。
8.4
保守及び管理
8.4.1
カールフィッシャー滴定装置の設置 次の事項のほかは,5.4.1による。
a) 試料採取器具は,よく乾燥したものを用い,操作中に大気中の水分を取り込まないようにする。
b) 大気中の水分の浸入による妨害を防ぐため,装置と大気の連結部には乾燥したシリカゲル,活性アル
ミナなどの乾燥剤を入れた乾燥管を用いる。また,ガラス器具の連結部は,すべてすり合わせとし,
グリース(カールフィッシャー試薬溶液及び電解液と反応したり,溶解しないもの。)を塗って大気か
らの吸湿を防ぐ。
c) カールフィッシャー試薬溶液及び電解液を保存する場合は,冷暗所に置き,吸湿しないように注意す
る。
8.4.2
安全についての注意事項
a) 電気配線は,すべて電気的に安全であり,絶縁及び接地は確実でなければならない。
b) 試料及び試薬の取扱いは,爆発性,引火性,毒性,有害性などに十分注意して行い,これらの廃棄に
当たっては,安定化,無害化などに配慮しなければならない。
c) カールフィッシャー試薬溶液,電解液及びその廃液は,必ず所定の場所に回収し,環境汚染のないよ
うに処分しなければならない。
8.5 個別規格に記載すべき事項 カールフィッシャー滴定方法による分析方法を規定するに当たっては,
少なくとも次の各項目を規定しなければならない。
a) 測定対象成分及び濃度範囲
b) 試料の採取方法及び保存方法
測定部
滴定槽
制御部
加熱管
乾
燥
剤
流
量
計
水分計
気化部
乾燥部
乾燥窒素
空気
キャリアーガス供給部
加熱部
18
K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
c) 被滴定溶液の調製方法
d) 滴定方法
e) 装置及び試薬
f)
測定条件
g) 滴定回数
h) 分析結果の表示方法
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K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書(参考) JISと対応する国際規格との対比表
JIS K 0113:2004 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
ISO 760:1978 水分測定−カールフィッシャー法(一般的方法)
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ)
国際
規格
番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の
項目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術
的差異の理由及び今後の対策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
技術的差異の内容
1.適用範囲
電位差滴定方法,電流滴定方法,
電量滴定方法及びカールフィシ
ャー滴定方法を用いる場合の通
則を規定。
ISO
760
1
大部分の固体又は液体化学製
品中の遊離水又は結晶水を測
定するための,一般的方法を
規定。
視覚法及び電気的法の2つの
滴定方法を規定。
MOD/追加
ISO規格は,カールフィ
シャー法の中の容量滴
定方法のみを規定。JIS
は,4つの滴定方法につ
いて規定。
ISO規格を所管する
TC/SC/WGが長期間活動停
止している。
このためISO規格は,市場
要求を満たした規格に改正
されていない。
2.引用規格
JIS K 0050外,合計12のJIS。
−
−
MOD/追加
−
−
3.定義
主な用語の定義を規定。
−
−
MOD/追加
−
−
4.分析方法の
種類
a) 電位差滴定方法
b) 電流滴定方法
c) 電量滴定方法
d) カールフィシャー滴定方法
−
−
MOD/追加
−
−
5. 電位差滴定
方法
装置,操作,記録の整理及び保
守及び管理について規定。
−
−
MOD/追加
−
−
6. 電流滴定方
法
装置,操作,記録の整理及び保
守及び管理について規定。
−
−
MOD/追加
−
−
7. 電量滴定方
法
装置,操作,記録の整理及び保
守及び管理について規定。
−
−
MOD/追加
−
−
8. カールフィ
シャー滴定方
法
・原理及び反応式を記載。
・滴定方法には,容量滴定方法
及び電量滴定方法があり,試験
の目的に応じて選定する。
2
3
原理
反応
MOD/変更
最近の試薬に対応すべ
く,ISO規格のピリジン
の変わりにアミンの一
般式で反応式を記載。
2
K
0
11
3
:
2
0
0
4
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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K 0113 : 2005
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ) JISの規定
(Ⅱ)
国際
規格
番号
(Ⅲ) 国際規格の規定
(Ⅳ) JISと国際規格との技術的差異の項
目ごとの評価及びその内容
表示箇所:本体
表示方法:点線の下線
(Ⅴ) JISと国際規格との技術
的差異の理由及び今後の対
策
項目番号
内容
項目
番号
内容
項目ごと
の評価
項目ごとの評価
8.1
容量滴定法
ISO規格の分析方法は,古
い技術内容であり,現在は
使用されていない。
次回ISO改正時に,改正
提案する。
8.1.1装置
滴定のために必要な装置について規定。
5
装置
5.1直接滴定用装置(視覚
法,電気適法)
5.2逆滴定用装置(電気的
法)
MOD/変更 ISO規格の装置は旧式の
ため,現在では使用され
ていない。
8.1.2試薬
滴定のために必要な試薬について規定。
4
試薬及び材料
MOD/変更 ISO規格は,ピリジンを
用いた古い組成の試薬を
規定。JISは,現在使用さ
れている試薬を規定。
8.1.3操作
直接滴定方法,逆滴定方法及び測定精度
確認のための操作について規定。
6
視覚法
MOD/削除 現在では使用されていな
い方法のため,削除。
7
電気的直接滴定方法
MOD/変更 現在実施の方法に変更し
て規定。
8
電気的逆滴定方法
8.1.4記録の整理
容量滴定に当たって記録に記載すべき
必要な事項を規定。
9
試験報告書
MOD/追加 測定に用いた試薬及び装
置の詳細,滴定条件など
の記載項目を追加。
8.2
電量滴定方法
−
−
MOD/追加
−
−
8.3
水分気化−容量滴定方法又は水分気化
−電量滴定方法
試料中の水分を気化させ捕集したあと
測定する,カールフィッシャー滴定方
法について規定。
−
−
MOD/追加
−
−
8.4
保守及び管理
−
−
MOD/追加
−
−
8.5
個別規格に記載すべき事項
−
−
MOD/追加
−
−
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:MOD
備考1. 項目ごとの評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
2
K
0
11
3
:
2
0
0
4
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
― MOD/削除……… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
― MOD/追加……… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
― MOD/変更……… 国際規格の規定内容を変更している。
2.
JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次のとおりである。
― MOD…………… 国際規格を修正している。
2
K
0
11
3
:
2
0
0
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。