サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

background image

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

K 0088-1997 

排ガス中のベンゼン分析方法 

Methods for determination of benzene in flue gas 

1. 適用範囲 この規格は,排ガス中のベンゼンを分析する方法について規定する。 

備考1. この規格において,排ガスとは,燃料などの燃焼,その他の化学反応工程,石油関連工場に

おける作業工程などにおいて,煙道,煙突,ダクト(以下,ダクトという。)などに排出され

るガスをいう。 

2. この規格の引用規格を,付表1に示す。 

3. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,

参考として併記したものである。 

2. 共通事項 化学分析方法,排ガスの試料採取方法,ガスクロマトグラフ分析方法,吸光光度分析方法

及びガスクロマトグラフ質量分析方法に共通する事項については,それぞれJIS K 0050,JIS K 0095,JIS 

K 0114,JIS K 0115,JIS K 0123による。 

3. 分析方法の種類及び概要 分析方法の種類及び概要は,表1のとおりとする。 

表1 分析方法の種類及び概要 

分析方法の種類 

分析方法の概要 

適用条件 

要旨 

試料採取 

定量範囲 

volppm 

(mg/m3N) (1) 

ガスクロマトグ
ラフ法(2) 

試料ガスを直接,又は常温吸着濃
縮した後,水素炎イオン化検出器
付ガスクロマトグラフに導入し
てクロマトグラムを記録する。 

捕集バッグ法 
標準採取量:1l 
 
濃縮法 
標準採取量:200ml 

捕集バッグ法 

0.06〜2 500 

(0.2〜8 700) 

濃縮法 

0.001 5〜50 

(0.005〜175) 

ジニトロベンゼ
ン吸光光度法(3) 

試料ガスを硝酸アンモニウム―
硫酸に通して,ベンゼンをニトロ
化した後,中和し,2-ブタノンで
抽出する。アルカリを加えて発色
させ,吸光度 (560nm) を測定す
る。 

吸収瓶法 
吸収液:ニトロ化酸液 
液量:10ml 
標準採取量:10l 

2 〜 20 

(7〜700) 

6.2.1による。 

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注(1) 単位の“N”はNormalの頭文字であり,標準状態(0℃,1気圧)を示している。 

(2) 定量下限は,捕集バッグ法では試料ガス5ml,濃縮法では試料ガス200ml相当をガスクロマトグラフ

に導入した場合を示した。濃縮法では試料ガス1l相当の導入も可能である。また,備考にガスクロ
マトグラフ質量分析法を用いることができることを規定している。 

(3) 定量範囲は,試料ガス10lを通した吸収液 (10ml) を50mlに薄めて分析用試料溶液とした場合を示し

た。 

4. 試料ガス採取方法 

4.1 

採取方法の種類及び共通事項 試料ガスの採取方法は,捕集バッグ法,濃縮法及び吸収法による。

分析に用いる試料ガスの採取位置は,代表的なガスが採取できる点を選び,同一採取位置において接近し

た時間内に,試料ガスを2回以上採取して分析することが望ましい。 

4.2 

捕集バッグ法 この方法は,ガスクロマトグラフ法に適用する。 

4.2.1 

試薬及び試薬溶液の調製 

(1) 試薬 

水酸化ナトリウム JIS K 8576に規定するもの。 

(2) 試薬溶液の調製 

水酸化ナトリウム溶液 (40g/l)  洗浄瓶に入れるもので,水酸化ナトリウム4gを水に溶かし100ml

とする。 

4.2.2 

器具及び装置 

(1) 捕集バッグ(4) 図1に例示するふっ素樹脂又はポリエステル系フィルム製の袋で,容積は1〜5l,ふ

っ素樹脂製のスリーブ及びシリコーンゴムパッキン付き栓を備えたもの。吸引用気密容器に入れて試

料ガスを採取する。 

参考 市販品には,テドラーバッグなどがある。 

(2) 吸引用気密容器 図1に例示する形状で,透明樹脂製。捕集バッグを入れて試料ガスを採取できる大

きさで,気密にできるもの。試料ガス採取用の導管 (R1) を接続できるコック (P3) 及び容器内を排気

するための導管 (R2) を接続できるコック (P4) を備える。 

図1 捕集バッグ及び吸引用気密容器の一例 

(3) 試料ガス採取装置 図2に例示する構成のうち,濃縮法で用いる部分を除いたものとし,次の条件を

備えていなければならない。 

(3.1) 採取管 (B) は,排ガス中の腐食性ガスによって侵されない材質,例えば,ガラス管,石英ガラス管,

四ふっ化エチレン樹脂管などを用いる。 

(3.2) 試料ガス中にダストなどが混入することを防ぐため,採取管の先端又は適当な位置に適当なろ過材

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(5)を詰める。 

(3.3) 試料ガス中の水分が凝縮することを防ぐため,採取管からコック (P1) までの間を加熱できる構造

(6)とする。 

なお,この間の接続部分は,すり合わせ継ぎ手管,シリコーンゴム管又は四ふっ化エチレン樹脂

管などを用いる。 

(3.4) 装置各部の接続に漏れがないように組み立てる。 

図2 試料ガス採取装置の一例 

注(4) ベンゼンが低濃度の場合には,捕集バッグの代わりにキャニスター(捕集缶)を用いてもよい。 

(5) 排ガス中の成分と化学反応を起こさないもの,例えば,シリカウール,無アルカリガラスウー

ルを用いる。 

(6) 配管はできるだけ短くし,水分が凝縮して測定値に影響するおそれがある場合には,採取管 (B) 

からコック (P1) までの間を120℃程度に加熱する。 

4.2.3 

採取操作 操作は,次のとおり行う。ここに示す装置の記号は,図2の記号を示す。また,切換コ

ックの向きは図2のような配列の場合について示す(7)(8)。 

(1) 吸引用接続口 (Q2) と捕集バッグの導管 (R1) とを接続し,コック (P3) 及び吸引用気密容器のコック 

(P4) を開き,切換コック (P2) を吸引ポンプ側に回し,吸引ポンプ (L) を作動させて,捕集バッグ

内を脱気する。十分に脱気した後,切換コック (P2) を閉じ

,吸引ポンプ (L) を停止させる。コッ

ク (P3) も閉じる。 

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(2) 捕集バッグの導管 (R1) を試料採取用接続口 (Q1) につなぎ換え,吸引用気密容器の導管 (R2) と吸引

用接続口 (Q2) とを接続する。 

(3) 切換コック (P1,P2) をバイパス側に回した後(P1は),P2は

),吸引ポンプ (L) を作動させて,

試料ガス採取管 (B) から切換コック (P1) までの配管内を試料ガスで十分に置換する。 

(4) 切換コック (P1) を捕集バッグ側に回し

,コック (P3) を開き,切換コック (P2) を吸引用気密容器

側に回して

,捕集バッグ内に試料ガスを約1〜2l採取する。 

(5) 切換コック (P1,P2) を回し(P1は,P2は),コック (P3) を閉じる。吸引ポンプ (L) を停止する。 

(6) ガスメータの温度計 (N) によってガスの温度を測定する。 

(7) 捕集バッグの導管 (R1) 及び吸引用気密容器の導管 (R2) を試料ガス採取装置から外す。 

注(7) ここの操作は,試料ガス採取装置の吸引ポンプ (L) を利用して,捕集バッグの脱気と試料ガス

の採取を行うようになっているが,操作(1)と操作(4)は吸引用気密容器に別のポンプが附属して

いれば,それを用いて行えばよい。この場合,R2とQ2との接続も必要ない。 

(8) 捕集バッグの代わりに,キャニスターを用いる場合には,4.2.3の操作に準じ,吸引用接続口 (Q2) 

に接続して内部を真空にした後,試料採取用接続口 (Q1) につなぎ換えて試料ガスを採取する。

排ガス用に用いたものを大気用に用いてはならない。なお,キャニスター内部の洗浄は,メタ

ノール,水の順で洗い,真空に引いた後,清浄な空気を入れ,加熱して約8時間保持する。次

いで真空に引いておく。 

4.3 

濃縮法 この方法は,低濃度試料の場合のガスクロマトグラフ法に適用する。 

4.3.1 

試薬,材料 

(1) アセトン JIS K 8034に規定するもの。 

(2) 多孔性ポリマービーズ ベンゼンの捕集剤で,4.3.2(1)の濃縮管に0.6gを詰め,20℃において,ベンゼ

ンを50ppm程度含む試料ガスを1l吸引しても,ベンゼンが流出せず,また200℃に加熱して脱離した

とき,ベンゼンの回収率が95%以上のものを用いる。 

4.3.2 

器具及び装置 

(1) 濃縮管 図3に示すガラス製のもので,内部をアセトンで洗浄し,乾燥後,多孔性ポリマービーズ0.6g

を詰め,両端をシリカウールでふさぐ。一端はステンレス鋼注射針,他端は注射筒を装着できるよう

にすり合わせとする。これを窒素気流中で230℃に約2時間加熱し,分析上の妨害となる不純物を除

去しておく。 

なお,保存時には両端にシリコーンゴム栓を必ず施し,密封しておくこと。注射針を装着した場合

には,装着部分の気密を保つため,ふっ素樹脂系のテープを巻いておく。 

図3 濃縮管 (U) の一例 

(2) ステンレス鋼注射針 

(3) 注射筒 ガラス製コックをつけた容量200mlのもの。JIS K 0050の9.3.1(全量ピペット)に準じて器

差づけしたもの。 

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(4) 試料ガス採取装置 4.2.2(3)に同じ。ただし,図2の捕集バッグ法を用いる部分を除いたもの。 

4.3.3 

採取操作 操作は,次のとおり行う(9)。ここに示す装置の記号は図2による。 

(1) 試料採取用接続口 (Q1) にシリコーンゴム栓をはめる。 

(2) 4.2.3(3)と同様に操作して,試料ガス採取管 (B) から切換コック (P1) までの配管内を試料ガスで十分

に置換する。 

(3) コック (P5) をつけた注射筒 (V) をつないだ濃縮管 (U) の先端に注射針を取り付け,試料採取用接続

口 (Q1) のシリコーンゴム栓に刺し,切換コック (P1) を濃縮管側に回し,約0.2l/minの吸引速度で

注射筒 (V) のピストンを引く。 

(4) 試料ガスをベンゼン濃度に応じて20〜200ml吸引した後,吸引を止め,注射筒をつないだ濃縮管 (U) 

を試料ガス採取装置から外し,コック (P5) を閉じ,直ちに注射筒 (V) の目盛を読む。 

(5) 濃縮管 (U) からコックをつけた注射筒 (V) を外し,濃縮管の両端にふっ素樹脂栓をはめ密封してお

く。 

(6) ガスメータの温度計 (N) の温度と,マノメータ (O) のゲージ圧を測定する。また,大気圧を測定す

る 

注(9) 注射筒の代わりに捕集バッグに採取した試料ガスを濃縮管に通してもよい。この場合には,4.3.3

及び4.4.3の操作に準じて行う。ただし,試料ガスの濃縮管への吸引は,図2の吸引用接続口 (Q2) 

を利用して行うことができる。この方法では,試料ガスを1l程度まで採取できる。なお,試料

ガス採取量は4.4.4によって算出する。 

4.3.4 

試料ガス採取量 次の式によって標準状態 (0℃,101.32kPa {760mmHg}) における試料ガス採取量

を乾きガス量 (VSD) 又は湿りガス量 (VSW) として算出する。 

(1) 乾きガス量を求める場合 

32

.

101

15

.

273

15

.

273

V

a

a

SD

P

P

t

V

V

×

+

×

=

(2) 湿りガス量を求める場合 

c

P

P

t

V

V

V

a

a

SW

41

.

22

32

.

101

15

.

273

15

.

273

+

×

+

×

=

ここに, 

VSD: 乾きガス量 (ml) 

VSW: 湿りガス量 (ml) 

Va: 注射筒 (S) 内に吸引した試料ガスの採取目盛の読み (ml) 

t: ガスメータにおける温度 (℃) 

Pa: 大気圧 (kPa {mmHg}) 

Pv: t℃における飽和水蒸気圧 (kPa {mmHg}) 

c(10): JIS Z 8808で求めた排ガス中の水分量 (mmol) 

273.15: 0℃における絶対温度 (K) 

101.32: 1気圧に対応する圧力 (kPa) 

22.41: 標準状態における気体1mmolの体積 (ml) 

注(10) 無視しても差し支えない場合が多い。 

4.4 

吸収瓶法 この方法は,ジニトロベンゼン吸光光度法に適用する。 

4.4.1 

試薬及び試薬溶液の調製 

(1) 試薬 

(a) 水 JIS K 0557に規定する種別A2のもの。 

(b) 硫酸 JIS K 8951に規定するもの。 

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(c) 硝酸アンモニウム JIS K 8545に規定するもの。 

(2) 試薬溶液の調製 

(a) ニトロ化酸液 ビーカー500mlに硫酸約100mlをとり,これを水を半分程度入れたビーカー1lに浸

すなどして冷却しながら,粉末にした硝酸アンモニウム50gを少量ずつ加えて溶かし,更に硫酸を

加えて全量を約250mlにする。冷却後ガラス瓶に移し入れ,密栓して保存する。 

4.4.2 

器具及び装置 

(1) 共栓付試験管 容量50mlで,10ml及び20mlの標線があるもの。 

(2) 吸収瓶 図4に例示する目盛付吸収瓶 (25ml) を2個用意する。 

図4 吸収瓶の一例 

(3) 試料ガス採取装置 図5に例示する構成で,4.2.2(3.1)〜(3.4)の条件を備えていなければならない。 

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図5 試料ガス採取装置の一例 

4.4.3 

採取操作 操作は,次のとおりとする。ここに示す装置の記号は図5による。 

(1) あらかじめ乾かした吸収瓶2個 (F,H) を用意し,試料ガス採取の直前に,ニトロ化酸液10mlずつを

それぞれ入れる。1個は試料ガス用,1個はバイパス用とする。 

(2) 吸収瓶 (F,H) を装置の所定の位置に接続し,吸引ポンプ (L) を作動させ,切換コック (P1,P2) を

バイパス側に回して,採取管 (B) から切換コック (P2) までの配管内を試料ガスで十分に置換する(11)。 

(3) 切換コック (P1,P2) を回して試料ガスを吸収瓶に通す。吸引速度は0.5〜1l/minとする。 

(4) 試料ガス0.5〜10lを採取した後(12),切換コック (P1,P2) をバイパス側に回し,吸引ポンプ (L) を停

止する。 

(5) ガスメータ (M) の指示を0.01lのけたまで読み取り,ガスメータの温度計 (N) の温度,マノメータ 

(O) のゲージ圧を測定する。また,大気圧を測定する。 

(6) 吸収瓶 (F) を試料ガス採取装置から外す。 

注(11) 排ガス中に水分が多く含まれているときは,除湿剤として,炭酸カリウム,硫酸カリウム,又

は硫酸マグネシウムなどを用い,約10lの排ガスをバイパス側に通してから採取する。 

(12) 試料ガス採取量は,ベンゼンとして0.02〜0.2ml(約80〜800μg)になるようにする。 

4.4.4 

試料ガス採取量 次の式によって,標準状態 (0℃,103.32kPa {760mmHg}) における試料ガス採取

量を乾きガス量 (VsD) 又は湿りガス量 (VsW) として算出する。 

(1) 乾きガス量で求める場合 

(1.1) 湿式ガスメータを用いる場合 

)

(

41

.

22

32

.

101

15

.

273

15

.

273

b

a

P

P

P

t

V

V

V

m

a

SD

+

+

+

×

+

×

=

(1.2) 乾式ガスメータを用いる場合 

)

(

41

.

22

32

.

101

15

.

273

15

.

273

b

a

Pm

P

t

V

V

a

a

SD

+

+

+

×

+

×

=

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(2) 湿りガス量で求める場合 

(2.1) 湿式ガスメータを用いる場合 

)

(

41

.

22

32

.

101

15

.

273

15

.

273

c

b

a

P

Pm

P

t

V

V

V

a

SW

+

+

+

+

×

+

×

=

(2.2) 乾式ガスメータを用いる場合 

)

(

41

.

22

32

.

101

15

.

273

15

.

273

c

b

a

Pm

P

t

V

V

a

SW

+

+

+

+

×

+

×

=

ここに, 

VSD: 乾きガス量 (l) 

VSW: 湿りガス量 (l) 

V: ガスメータで測定したガス量 (l) 

t: ガスメータにおける温度 (℃) 

Pa: 大気圧 (kPa {mmHg}) 

Pm: ガスメータにおけるゲージ圧 (kPa {mmHg}) (13) 

Pv: t℃における飽和水蒸気圧 (kPa {mmHg}) 

a(13): 吸収液に捕集された分析対象成分ガス (mol) 

b(13): 吸収液に捕集された分析対象成分ガス以外のガス (mol) 

c(13): JIS Z 8808によって求めた水分の量 (mol) 

注(13) 無視しても差し支えない場合が多い。 

参考 圧力にmmHgを用いる場合には,式中の101.32を760とする。 

5. 分析用試料溶液の調製 吸収瓶法の場合の分析用試料溶液の調製は,次のとおり行う。 

(1) 水20mlを入れたビーカー100mlに,試料ガスを吸収した吸収瓶 (F) の内容液(ニトロ化酸液)を水

で冷却しながら少量ずつ水で洗い移す。 

(2) 冷却後,更に全量フラスコ50mlに水で洗い移す。水を標線まで加え,分析用試料溶液とする。 

6. 定量方法 

6.1 

ガスクロマトグラフ法 

6.1.1 

試薬及び試薬溶液の調製 

(1) 試薬及び高圧ガス 

(a) ベンゼン JIS K 8858に規定するもの。 

(b) ヘキサン JIS K 8848に規定するもので,6.1.3の測定条件で操作したとき,ベンゼン又は妨害成分

が検出されないもの。 

(c) ヘリウム 高圧ガス。窒素を用いてもよい。 

(d) 水素 高圧ガス 

(e) 空気 高圧ガス 

(2) 試薬溶液などの調製 

(a) ベンゼン−ヘキサン溶液 全量フラスコ100mlにベンゼンを正確に10mlとり,ヘキサンを標線ま

で加え,よく振り混ぜて原液とする。低濃度ベンゼン測定用には,この原液をヘキサンで25〜50

倍に薄めて希釈溶液とする。 

(b) 検量線用標準ガス(14) あらかじめ内部を窒素で洗浄,置換しておいた6.1.2(1)のガス捕集瓶数本に,

ベンゼン−ヘキサン原液の1〜40μlを段階的にマイクロシリンジで正確にとって注入し揮発させる。

これらの検量線用標準ガス1mlは,ベンゼン−ヘキサン溶液注入量をα (μl),ガス捕集瓶の容積を1 

background image

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

000mlとすれば,気体ベンゼンとして0.252×α/10 (μl) (0℃,101.32kPa {760mmHg}),又はベンゼン

0.879×α/10 (μg) を含む。 

注(14) 浸透拡散管を使用する校正ガス調製装置によって調製したものを用いてもよい。 

6.1.2 

器具及び装置 

(1) ガス捕集瓶 図6に例示する1 000ml程度の容積をもつガラス製の瓶。容積をJIS K 0050の9.3.2(全

量フラスコ)に準じて器差づけしておく。 

図6 ガス捕集瓶の一例 

(2) マイクロシリンジ 液体用の全量10,50μl及び気体用の全量5mlのもの。 

(3) 気化導入装置 濃縮管に捕集したベンゼンを,ガスクロマトグラフへ導入するための装置で,図7に

示す加熱器,温度調節器及び切換コックから成る。 

図7 気化導入装置の一例 

(4) ガスクロマトグラフ 水素炎イオン化検出器 (FID) を備えたもの。キャリヤーガスにはヘリウム又は

窒素,検出器の燃料ガスには水素,助燃ガスには空気を用いる。 

(5) カラム 次のいずれかを用いる。 

(a) 充てんカラム 内面をよく洗浄した内径3〜4mm,長さ3〜5mのほうけい酸ガラス管,ステンレス

鋼管又はふっ素樹脂管を用い,塩酸で十分に洗浄した後,水洗,乾燥した白色けいそう土担体(粒

径149〜250μm)に適当な固定相液体(15)を20〜30%含浸させた充てん剤をこれに詰めたもの。 

(b) キャピラリーカラム 内径0.1〜1mm程度,長さ10〜60m程度の溶融シリカ管,ほうけい酸ガラス

管又はステンレス鋼管の内面に適当な固定相液体(16)を塗布又は化学結合させたもの。 

注(15) N,N‐ビス(2‐シアノエチル)ホルムアミド,1,2,3‐トリス(2‐シアノエトキシ)‐プロ

パン,ポリエチレングリコール1500,シリコーン油などで,試料中のベンゼンが単離でき

10 

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

るもの。 

(16) メチルシリコン,フェニルメチルシリコン系などの無極性又は微極性若しくはポリエチレ

ングリコール系の中極性液体で,試料中のベンゼンが単離できるもの。 

6.1.3 

定量操作 操作は次のとおり行う。 

(1) ガスクロマトグラフを作動状態とする。測定条件は,次のとおりとする。 

(充てんカラムを用いる場合) 

カラム温度 

70〜80℃ 

キャリヤーガス流量 

35〜60ml/min 

燃料ガス流量 

35〜50ml/min 

助燃ガス流量 

0.4〜0.6ml/min 

(キャピラリーカラムを用いる場合) 

カラム温度 

50〜80℃(昇温を行う場合は40〜120℃) 

キャリヤーガス流量(17) 

0.1〜30ml/min 

分岐比(18) 

1 : 0〜1 : 40 

付加ガス(メイクアップガス)流量 

35〜60ml/min 

燃料ガス流量 

30〜50ml/min 

助燃ガス流量 

0.4〜0.6ml/min 

(2) 試料ガスを次のいずれかの操作によってガスクロマトグラフに導入し,ガスクロマトグラムを記録す

る。 

(a) 捕集バッグ法の場合 4.2によって試料ガスを採取した後,捕集バッグのシリコーンゴムパッキン栓

に気体用シリンジを刺して,試料ガスを正確に一定量 (2〜5ml) とる。ガスクロマトグラフに導入

し,ガスクロマトグラムを記録する。 

(b) 濃縮法の場合 4.3によって試料ガスを採取した濃縮管にシリコーンゴム栓と注射針を取り付け,こ

れを図7のように気化導入装置に接続する。しばらくキャリヤーガスをカラムに流した後,切換コ

ックを切り換えて濃縮管にキャリヤーガスを流す。記録計の指示が安定した後,濃縮管を200℃ま

で約1分間で加熱昇温させ,試料をガスクロマトグラフへ導入し,ガスクロマトグラムを記録する。 

(3) クロマトグラム上のベンゼンに相当するピークについて,ピーク面積を求める。 

(4) 試料ガスの代わりにベンゼンを除去した窒素又は空気を用い,濃縮法の場合は,4.3.3に準じて試料ガ

ス採取操作を行った後,(1)〜(3)に準じて操作して空試験値を求める。 

(5) 6.1.4によって作成した検量線からベンゼン量(μl又はμg)を求める。 

注(17) キャピラリーカラムの内径によって流量は異なる。 

(18) キャピラリーカラムの内径,ベンゼン濃度などによって分岐比を適宜選択する。 

6.1.4 

検量線の作成 

(1) 捕集バッグ法の場合 6.1.1(2)(b)で調製した検量線用標準ガスの入った数個のガス捕集瓶から,気体用

シリンジを用いてそれぞれその一定量 (0.2〜5ml) をとり,6.1.3(1)〜(4)[操作(2)は(a)による。]に準

じて操作を行う。気体ベンゼンの体積 (μl) 又は質量 (μg) と,空試験の値を差し引いたピーク面積と

の関係線を作成する。 

(2) 濃縮法の場合 6.1.1(2)(b)で調製した検量線用標準ガスの入った数個のガス捕集瓶から気体用シリン

ジを用いて一定量 (0.2〜5ml) をとり,4.3.2(1)で調製した濃縮管に注入する。以下6.1.3(1)〜(4)[操作

(2)は(b)による。]に準じて操作を行う。気体ベンゼンの体積 (μl) 又は質量 (μg) と,空試験の値を差

11 

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

し引いたピーク面積との関係線を作成する。 

6.1.5 

計算 次の式によって,試料ガス中のベンゼンの濃度を算出する。 

S

b

a

V

V

V

V

C

000

1

)

(

×

=

S

b

a

W

V

W

W

C

000

1

)

(

×

=

CW=CV×3.49 

ここに, 

Cv: 試料ガス中のベンゼンの体積濃度 (volppm) 

Cw: 試料ガス中のベンゼンの質量濃度 (mg/m3N) 

Va: 検量線から求めた気体ベンゼンの体積 (μl) 

Vb: 空試験で得られた気体ベンゼンの体積 (μl) 

Vs: 試料ガス量 (ml) (19) 

Wa: 検量線から求めたベンゼンの質量 (μg) 

Wb: 空試験で得られたベンゼンの質量 (μg) 

3.49: ベンゼン1volppmに相当する質量濃度 (mg/m3N) 

注(19) 捕集バッグ法によった場合には,6.1.3(2)(a)でガスクロマトグラフに導入した試料ガス量 (ml)。

また,濃縮法によった場合には,4.3.4で算出した試料ガス採取量 (ml)。 

備考 ガスクロマトグラフ法の代わりに,ガスクロマトグラフ質量分析法を用いてもよい。この場合

の操作は,6.1.3に準じて行い,選択イオン検出法 (SIM) によってベンゼンから生成する特徴

的なイオン[例えば,分子イオン,M+ (m/z78),又はプロトン化分子,MH+ (m/z79)]を測定

する。この方法は,一般に,ガスクロマトグラフ (FID) 法より感度がよい。 

6.2 

ジニトロベンゼン吸光光度法 

6.2.1 

適用条件 この方法は,トルエン,キシレン,クロロベンゼン,エチルベンゼンが共存すると正の

誤差が生じるので,その影響を無視又は除去できるときに適用する。 

6.2.2 

試薬及び試薬溶液の調製 試薬及び試薬溶液の調製方法は,次のとおりとする。 

(1) 試薬 

(a) 水 JIS K 0557に規定する種別A2のもの。 

(b) 水酸化カリウム JIS K 8574に規定するもの。 

(c) フェノールフタレイン JIS K 8799に規定するもの。 

(d) エタノール (95)  JIS K 8102に規定するもの。 

(e) 2−ブタノン JIS K 8900に規定するもの。 

(f) ベンゼン JIS K 8858に規定するもの。 

(g) ニトロ化酸液 4.4.1(2)(a)で調製したもの。 

(2) 試薬溶液の調製 

(a) 水酸化カリウム溶液 水酸化カリウム70gを水に溶かして100mlにする。 

(b) フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン0.5gをエタノール (95) に溶かして100mlにす

る。 

(c) ベンゼン標準液 全量フラスコ100mlにニトロ化酸液50mlをとり,水で冷却しながらベンゼン1ml

をピペットで加え,更にニトロ化酸液を加えて全量を100mlにする。室温で30分間放置した後,

この溶液2mlをピペットでとり,ニトロ化酸液を加えて100mlにする。この溶液1mlは,気体のベ

ンゼン50.5μl,又はベンゼン176μgを含む。 

12 

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2.3 

定量操作 操作は,次のとおり行う。 

(1) 共栓付試験管50mlに,5.で調製した分析用試料溶液1.0mlをピペットでとる。 

(2) 水を加えて約5mlにした後,フェノールフタレイン溶液1滴を加え,水酸化カリウム溶液を滴加して

中和し,冷却した後,水を加えて全量を10mlとする。 

(3) 2−ブタノン10mlを加え,栓をして2分間強く振り混ぜた後,静置して二層に分離させる。上層の2

−ブタノンをピペットで別の共栓付試験管に移す。元の試験管内の水層に,更に2−ブタノン2mlを

加えて振り混ぜ,上層を分離して先の抽出液に合わせる。 

(4) この抽出液に2−ブタノンを加えて10mlの目盛に合わせる。これに水酸化カリウム溶液10mlを加え

て栓をし,2分間強く振り混ぜ,静置して分離する。 

(5) 吸収セルに,上層の抽出液の一部をピペットを用いて移しとり,波長560nm付近の吸光度を測定する。

対照には,ベンゼンを含まないニトロ化酸液10mlを共栓付試験管50mlにとり,(2)〜(4)の操作を行っ

たものを用いる。吸光度の測定は,発色後30〜50分の間に行う。 

(6) 6.2.4によって作成した検量線からベンゼン量(μl又はμg)を求める。 

6.2.4 

検量線の作成 共栓付試験管50ml 5本に,ベンゼン検量線用溶液0.25〜4.0mlを段階的にピペット

で正確にそれぞれとり,ニトロ化酸液を加えて10mlとし,更に水を加えて全量を50mlとし,振り混ぜる。

これらの液からそれぞれ1.0mlずつを共栓付試験管50mlにとり,それぞれ6.2.3(2)〜(5)の操作を行い,気

体ベンゼンの体積 (μl) 又は質量 (μg) と吸光度との関係線を作成する。 

6.2.5 

計算 次の式によって,試料ガス中のベンゼンの濃度を算出する。 

S

a

V

V

V

C

50

×

=

S

a

W

V

W

C

50

×

=

CW=CV×3.49 

ここに, 

Cv: 試料ガス中のベンゼンの体積濃度 (volppm) 

Cw: 試料ガス中のベンゼンの質量濃度 (mg/m3N) 

Va: 検量線から求めた気体ベンゼンの体積 (μl) 

Vs: 4.4.4で算出した試料ガス量 (l) 

Wa: 検量線から求めたベンゼンの質量 (μg) 

3.49: ベンゼン1volppmに相当する質量濃度 (mg/m3N) 

7. 分析結果の記録及び分析値のまとめ 

7.1 

記録項目 分析結果として記録する項目は,次のとおりとする。 

(1) 分析値 

(2) 分析方法の種類 

(3) 試料ガスの採取日時 

(4) その他必要と認められる事項 

7.2 

排ガス分析値の求め方 分析は,試料採取ごとにそれぞれ2回行い,その平均値を求め,有効数字2

けたに丸める。 

13 

K 0088-1997  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

付表1 引用規格 

JIS K 0050 化学分析方法通則 

JIS K 0095 排ガス試料採取方法 

JIS K 0114 ガスクロマトグラフ分析通則 

JIS K 0115 吸光光度分析通則 

JIS K 0123 ガスクロマトグラフ質量分析通則 

JIS K 0557 化学分析用の水 

JIS K 8034 アセトン(試薬) 

JIS K 8102 エタノール (95) (試薬) 

JIS K 8545 硝酸アンモニウム(試薬) 

JIS K 8574 水酸化カリウム(試薬) 

JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬) 

JIS K 8799 フェノールフタレイン(試薬) 

JIS K 8848 ヘキサン(試薬) 

JIS K 8858 ベンゼン(試薬) 

JIS K 8900 2‐ブタノン(試薬) 

JIS K 8951 硫酸(試薬) 

JIS Z 8808 排ガス中のダスト濃度の測定方法 

JIS K 0088排ガス中のベンゼン分析方法改正原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

荒 木   峻 

東京都立大学名誉教授 

(分科会長) 

飯 田 芳 男 

成蹊大学工学部 

細 川 幹 夫 

工業技術院標準部繊維化学規格課 

湯 本   登 

通商産業省立地公害局公害防止指導室 

西 尾 哲 茂 

環境庁大気保全局大気規制課 

指 宿 堯 嗣 

工業技術院資源環境技術総合研究所大気環境保全部 

溝 口 次 夫 

国立環境研究所地域環境研究グループ 

西 川 雅 高 

国立環境研究所化学環境部 

堀   雅 宏 

横浜国立大学工学部 

金 子 幹 宏 

神奈川県環境科学センター大気環境部 

野々村   誠 

東京都立工業技術センター無機化学部 

岩 崎 好 陽 

東京都環境科学研究所大気部 

黒 木 勝 也 

日本規格協会技術・検査部 

坪 井 信 博 

社団法人日本鉄鋼連盟(川崎製鉄株式会社) 

金 田 幸 三 

電気事業連合会立地環境部 

岡 崎   豊 

石油連盟(共同石油株式会社技術部) 

河 合   操 

社団法人産業公害防止協会調査部 

大 木 正 己 

財団法人化学品検査協会東京事業所環境事業部 

丸 山   博 

社団法人日本分析機器工業会(京都電子工業株式会社) 

八 木 孝 夫 

株式会社島津製作所応用技術部東京分析センター 

鈴 木 弘 七 

新日本気象海洋株式会社 

西 海   里 

株式会社環境管理センター 

北 村   哲 

株式会社テスコ 

世 良   昇 

社団法人日本環境測定分析協会 

(事務局) 

計 良 敏 雄 

社団法人日本環境測定分析協会