2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
K 0064-1992
化学製品の融点及び
溶融範囲測定方法
Test methods for melting point and melting range
of chemical products
1. 適用範囲 この規格は,化学製品の常温以上300℃以下の融点及び溶融範囲を測定するための一般的
な方法について規定する。
備考1. 融点は,明確な温度を示す物質について適用する。
2. 溶融範囲は,油脂,ワックス,ワセリンなど多成分の混合物,ガラス,アモルファス物質な
ど,明確な融点を示さない物質について適用する。
3. 個別の製品又は製品群の規格において,この規格と異なる測定方法が規定されている場合に
は,その規格に規定する方法による。
4. 化学製品には,揮発性,爆発性,放射性などが強いために,この規格を用いるとき試験の安
全を確保できないものもある。この規格に規定する方法は一般的な方法であり,あらかじめ
安全性を十分に確認できるものに適用する。
5. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 7410 石油類試験用ガラス製温度計
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 8401 数値の丸め方
日本薬局方(第12改正)
2. 一般事項
2.1
用語の定義 この規格で用いる用語の定義は,JIS K 0050及びJIS K 0211による。
2.2
共通事項 試験に共通する一般事項は,JIS K 0050による。
また,ガラス器具は,JIS R 3503によって,数値の丸め方はJIS Z 8401による。
3. 融点測定方法 融点測定方法は,次のいずれかによる。
(1) 目視による方法
(2) 光透過量の測定による方法
3.1
目視による方法
3.1.1
要旨 毛管に充てんした試料を加熱液中で加熱し,目視によって融点を求める。
2
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3.1.2
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1) 融点測定装置 温度計の水銀球に,毛管の試料充てん部が密接するように固定して,加熱容器中の加
熱液のほぼ中央,加熱容器の底から温度計の先端まで約20mmのところに取り付けたもの。一例を付
図1に示す。
また,加熱液のかき混ぜ循環方式による融点測定装置を用いてもよい。一例を付図2に示す。この
ときは,試料を充てんした毛管の下端が温度計の水銀球に近接するように固定する。
(2) 加熱容器 硬質1級ガラス製のもの。形状及び寸法の一例を付図1に示す。
(3) 加熱液 水,シリコーン油など。シリコーン油は,耐熱温度が測定温度以上のもので,25℃における
動粘度が50〜100mm2/sのもの。
(4) ふた 四ふっ化エチレン樹脂製,ゴム製又はコルク製のもの。
(5) 温度計 日本薬局方(第12改正)に規定する浸線付温度計(棒状)1号〜6号。ただし,予想融点が
70℃以下のときは,JIS B 7410に規定するSOP 57〜59を用いてもよい。
(6) 毛管 内径0.8〜1.2mm,壁の厚さ0.2〜0.3mm,長さ約150mmで,一端を閉じた硬質ガラス製のもの。
(7) 加熱器 加熱液の温度を,予想融点より15℃低い温度から,5℃高い温度まで加熱することができ,
かつ,加熱液の温度上昇速度を約3℃/min及び約1℃/minに調節可能なもの。
(8) デシケーター 乾燥剤としてシリカゲルを入れたもの。
3.1.3
試料の前処理 試料を微細な粉末とし,特に規定するもののほかは,デシケーター中で24時間乾
燥する。
3.1.4
操作 操作は,次のとおり行う。
(1) 乾燥した試料を毛管に充てんし,閉じた一端を下にして,ガラス板又は陶板上に立てた長さ約70cm
のガラス管の内部に落とし,はずませて固く詰め,試料の層を約3mmとする。
(2) 加熱液を加熱して,予想した融点より約10℃低い温度まで徐々に上昇させる。
(3) 温度計の浸没線を加熱液の液面に合わせる。
(4) 試料を入れた毛管を付図1又は付図2に示すように固定する。
(5) 加熱液の温度が1分間に約3℃上昇するように加熱し,予想した融点より約5℃低い温度となった後,
1分間に約1℃上昇するように加熱を続ける。
(6) 試料が毛管内で溶融して固体を認めなくなったとき,温度計の最小目盛の101まで読み取り,融点の測
定値とする。
(7) (1)〜(6)を3回以上行い,測定値の平均値を小数点以下第1位に丸めて融点とする。
3.2
光透過量の測定による方法
3.2.1
要旨 試料の温度による状態変化を,光の透過量の変化によつて電気的に検出し,同時にその温度
を記録して融点を求める。
備考 溶融状態において光を透過しない製品には適用できない。
3.2.2
装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1) 装置 必要に応じて,装置は融点既知の物質を用い,その測定結果が3.1と差がないことを確認する。
装置の一例を付図3に示す。
(2) 毛管 内径0.8〜1.2mm,壁の厚さ0.2〜0.3mmで,一端を閉じた硬質ガラス製のもの。長さは装置に
よって異なるが,装着したときの露出部分の長さが10〜20mmのもの。
(3) デシケーター 3.1.2(8)による。
3.2.3
試料の前処理 試料の前処理は,3.1.3による。
3
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3.2.4
操作 操作は,次のとおり行う。
(1) 3.1.4(1)によって,試料の充てんを行う。
(2) 試料の昇温速度が1分間に約1℃上昇となるように操作条件を設定して融点を測定する。
(3) (1)及び(2)を3回以上行い,測定値の平均値を小数点以下第1位に丸めて融点とする。
4. 溶融範囲測定方法 溶融範囲測定方法は,次のとおりとする。
4.1
要旨 溶融範囲は,収縮点から溶融終点までの温度幅とする。
4.2
装置及び器具 装置及び器具は,3.1.2による。
4.3
試料の前処理 試料の前処理は,3.1.3による。
4.4
操作 試料の充てんは3.1.4(1)によって行い,以後は,次のとおり行う。
(1) 加熱液を加熱して,予想する溶融範囲より約10℃低い温度まで徐々に上げる。
(2) 温度計の浸没線を加熱液の液面に合わせた後,試料の入った毛管を挿入し,その試料部分が温度計の
水銀球の中央にくるように固定する。
(3) 加熱液を,その温度が1分間に約3℃上昇するように加熱し,予想する温度より約5℃低い温度からは
1分間に約1℃上昇するように加熱を続ける。
(4) 注意して試料を観察し,湿潤点を経て収縮点に達したときの温度を温度計の最少目盛の101まで読み取
り,収縮点の測定値とする。
(5) 続いて,崩壊点,液化点を経て溶融終点に達したときの温度を温度計の最少目盛の101まで読み取り,
測定値(1)とする。
注(1) 試験は,試料の充てんから(5)までの操作を3個以上の試料について行い,測定値の平均値をそれ
ぞれ収縮点及び溶融終点とし,収縮点から溶融終点までの温度幅を溶融範囲とする。
備考 加熱による試料の変化は,次の5段階(参考図1参照)が観察される。
(a) 湿潤点 試料が毛管内壁に接する面に細かい液滴が一様に生じるとき。
(b) 収縮点 試料が収縮し,毛管内壁との間に明らかにすきまが生じるとき。
(c) 崩壊点 収縮した試料が下方に崩壊して液化が始まるとき。
(d) 液化点 崩壊した試料がいくらか固体のままで液中に残っているが,液面の上部が完全なメニスカ
スを形成するとき。
(e) 溶融終点 液中に残っている固体の試料が完全に液化するとき。
参考図1 加熱による試料の変化
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付図1 融点測定装置の一例
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付図2 融点測定装置の一例
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付図3 融点自動検出測定装置の一例
参考 測定原理 金属ブロック(炉)に差し込まれた毛管は,あら
かじめセットされた昇温速度で加熱する。光源からの光は,
光路を通って試料に達する。
試料の溶融の過程中光透過率は増加し,光検出器で検出さ
れ,更に電位に変換出力される。出力はデータ処理された後,
記録計に出力され融点曲線が記録される。
5. 化学製品を取り扱うときの注意事項 化学製品を取り扱うときには,まずその物質の名称を確認し,
その安全性について確認する。その物質の物性など情報が不十分で安全性の確認ができないときは,事前
に調査を行い,十分な安全性の対策を施したうえで取り扱う。
危険性,有害性,放射性などに関し法規上の規制があるものについては,十分な準備と対策を施した後,
関連する法令・規則によって取り扱わなければならない。
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化学製品一般試験方法JIS改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
JIS委員会
小委員会 第2分科会
(委員長) 荒 木 峻
東京都立大学
○
細 川 幹 夫
工業技術院標準部
○
寺 西 大三郎
通商産業省基礎産業局
○
三 井 清 人
通商産業省計量研究所
○
○
川 瀬 晃
通商産業省化学技術研究所
○
○
主査
○
平 井 信 次
通商産業省通商産業検査所
○
○
武 田 寧
厚生省国立衛生試験所
○
栗 原 力
財団法人化学品検査協会
○
岩 見 妙 晴
社団法人日本化学会(旭化成工業株式会社)
○
大 森 道 昭
日本科学機器団体連合会(株式会社離合社)
○
○
○
加 藤 幸 雄
日本理化学硝子機器工業会
(柴田科学器械工業株式会社)
○
○
坂 田 衞
日本分析機器工業会(株式会社島津製作所)
○
辻 洋 典
石油化学工業協会
○
猪 瀬 太 郎
社団法人日本芳香族工業会
○
○
○
竹 内 幸 夫
日本試薬連合会(和光純薬工業株式会社)
○
○
○
池 田 順 一
財団法人日本規格協会
○
西 川 光 一
社団法人日本化学工業協会
○
桑 田 真 一
三菱化成株式会社総合研究所
○
幹事
○
前 川 正 和
株式会社住化分析センター
○
○
幹事
○
鈴 木 正 儀
昭和電工株式会社川崎工場
○
○
三 浦 一 清
三井東圧化学株式会社総合研究所
○
○
鈴 木 作 世
株式会社明峯社製作所
○
松 隈 義 則
日本石鹸洗剤工業会
○
寺 本 芳 彦
セイコー電子工業株式会社
○
田 坂 勝 芳
工業技術院標準部
○
○
(事務局) 吉 田 千 秋
社団法人日本化学工業協会
○
○