H 8680-2 : 1998
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。これによってJIS H 8680 : 1993は廃止され,廃止されたJIS H 8680のうちの渦電流式
測定法は,この規格に置き換えられる。
今回の制定では,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成,及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案への提案を容易にするために,JIS H 8680に規定されていた4種類
の測定方法のうち,(1)顕微鏡断面測定法,(2)渦電流式測定法,(3)スプリットビーム顕微鏡測定法をそれぞ
れJIS H 8680-1,JIS H 8680-2,JIS H 8680-3として独立した規格とし,(4)皮膜質量法については,その規
格の内容から分離し,JIS H 8688として規格を作成した。
JIS H 8680-2には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) 皮膜厚さ標準板仕様
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 8680-2 : 1998
アルミニウム及びアルミニウム合金の
陽極酸化皮膜厚さ試験方法−
第2部:渦電流式測定法
Test methods for thickness of anodic oxide
coatings on aluminium and aluminium alloys−
Part 2 : Eddy current method
序文 この規格は,1982年に発行されたISO 2360, Non-conductive coatings on non-magnetic basis metals−
Measurement of coatings thickness−Eddy current methodを元に技術的内容を変更することなく作成した日本
工業規格である。また,皮膜厚さ標準板の仕様について,新たに附属書(参考)を加えた。アルミニウム
及びアルミニウム合金に施された陽極酸化皮膜の皮膜厚さにかかわる試験方法として規定したこの規格は,
顕微鏡断面測定法,渦電流式測定法及びスプリットビーム顕微鏡測定法の3部で構成され,その適用は,
製品の形状,皮膜の種類,皮膜厚さなどを配慮した受渡当事者間の協定による。
1. 適用範囲 この規格は,アルミニウム及びアルミニウム合金の製品(以下,製品という。)に施した陽
極酸化皮膜(以下,皮膜という。)の渦電流式測定法による皮膜厚さ試験方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 2360 : 1982 Non-conductive coatings on non-magnetic basis metals−Measurement of coating
thickness−Eddy current method
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格を構成する
ものであって,その後の改正版・追補は適用しない。発行年を付記していない引用規格は,その最新版を
適用する。
JIS H 0201:1998 アルミニウム表面処理用語
JIS H 8601:1992 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜
JIS Z 8401:1961 数値の丸め方
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 0201による。
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4. 概要 高周波電流の流れている誘導コイルを試験片に近づけると,素地に高周波渦電流が生じるが,
そのときの距離によって変化する誘導コイルのインピーダンスを測定して,その値を皮膜厚さに変換する
方法で,非破壊の測定方法である。この測定法では,素地の材質,表面の粗さ及び平面度が測定値に影響
を及ぼしやすいので注意する。
5. 測定器 測定器は,次による。
測定器は,適切な高周波発振器,測定用プローブ(誘導コイル),インピーダンス検出器などで構成され
ているもので,6.の管理用標準板を用いて適正に管理されていなければならない。
6. 皮膜厚さ標準板 皮膜厚さ標準板は,次による。
a) 管理用標準板 管理用標準板は,測定値の再現性にかかわる測定器の機能検定,校正用標準板作製に
かかわる測定器の校正を行う標準板で,附属書の2.a)に記載するものを用いる。
b) 校正用標準板 校正用標準板は,生産管理及び商品試験にかかわる測定器の校正を行う標準板で,附
属書の2.b)又は2.c)に記載するいずれかを用いる。
7. 試験片 試験片は,次による。
a) 測定箇所は,製品の有効面とする。ただし,製品について試験できない場合は,製品と同一の材料(1)
及び同一の皮膜の処理条件(2)で作られた試験片を用いてもよい。
b) 試験片は,汚れに応じて適切な溶剤(3)を浸した柔らかい布などを用いて,あらかじめ清浄にしておく。
注(1) 材料の種類・質別及び処理前の表面状態は,製品と同じでなければならない。
(2) 前処理及び皮膜の処理は,製品と同一の浴及び同一条件で,製品と同一の性能が得られるよう
に行われなければならない。
(3) アセトン,エタノール,エチルエーテル,メチルエチルケトンなどをいい,試験片を腐食した
り,保護皮膜を作るものを用いてはならない。
8. 操作 操作は,次の順序で行う。
a) 校正用標準板にプローブを当て,測定器の指定された校正方法に従って目盛(表示値)を調整する(4)。
校正用標準板にプラスチックフィルムを用いて校正する場合は,試料と材質・形状の同じ素地上で行
う。
b) 試験片の測定部(直径約8mmの範囲)にプローブを当て,目盛を読み取り,これを5回以上繰り返す。
注(4) 連続して測定する場合は,適宜途中で校正を行う。
備考 校正用標準板と試験片の材質が異なる場合は,あらかじめ顕微鏡断面測定法によって実際の皮
膜厚さとの関係を調べ補正する必要がある。
9. 試験結果の表し方 試験結果は,5回以上の測定値 (μm) の平均をJIS Z 8401によって丸め,小数点
以下1位の数値で表す。この数値は,JIS H 8601に規定する測定点皮膜厚さに相当する。
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附属書(参考) 皮膜厚さ標準板仕様
この附属書は,皮膜厚さ標準板の仕様例であって,規定の一部ではない。
1. 適用範囲 この附属書は,皮膜厚さ標準板の仕様について適用する。
2. 皮膜厚さ標準板 皮膜厚さ標準板は,次による。
a) 管理用標準板
素地
: 素地材質は,A1050P(1)とする。
標準寸法及び形状 : 標準寸法は,40mm×40mm,厚さ1.5〜2.0mmとし,表面粗さは0.1Ra以下とす
る。
皮膜厚さ
: 測定器の校正方法と測定対象の皮膜厚さを考慮し選定する。
表示値
: 管理用標準板に接する部分の数箇所の皮膜厚さを顕微鏡断面測定法によって測
定し,その平均値を表示値として,併せて個々の測定値の最大値及び最小値の
差を明記する。
注(1) 別途に他の材質(均質な皮膜化成が可能であるもの。)の管理用標準板
を作製してもよい。
b) 校正用標準板(陽極酸化皮膜)
素地
: 材種は製品と同じとし,厚さ0.8mm以上とする。
皮膜厚さ : 測定器の校正方法と測定対象皮膜の厚さを考慮し選定する。
表示値
: 表示値は次の手順で決める。
1) 作製した校正用標準板は中央部の皮膜厚さを管理用標準板又は校正用標準板で校正
した渦電流式測定器によって測定する。
2) 1)で測定した同一ロットの校正用標準板のうち1枚を無作為に抽出し,顕微鏡測定
法によって中央部の皮膜厚さを測定する。
3) 1)の渦電流式測定法で測定した値と,2)の顕微鏡測定法で測定した値との対比から
補正値を求める。
4) 3)で得られた補正値によって,1)で得られた一連の校正用標準板の測定値を補正し
て表示値とする。
c) 校正用標準板(プラスチックフィルム)
素材
: ポリエステル,テトロンなどの耐久性に比較的優れ,厚さの均一なプラスチック
フィルムとする。
標準寸法
: 40×40mm程度で,有効部に関する表示又は記述をする。
フィルムの厚さ : 測定器の校正方法と測定対象皮膜の厚さを考慮し選定する。
表示値
: 表示値は,管理用標準板で校正した渦電流式測定器又は最小表示0.1μmのマイ
クロメータによってフィルムの厚さを5回以上測定し,その平均値とする。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
制定原案調査作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
馬 場 宣 良
元東京都立大学
○ 大 嶋 清 治
工業技術院標準部
後 藤 敬 一
通商産業省基礎産業局
○ 橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
佐 藤 敏 彦
芝浦工業大学
田 村 和 男
東京都立工業技術センター
福 田 芳 雄
科学技術庁金属材料技術研究所
星 野 重 夫
武蔵工業大学
◎ 松 下 静 夫
元工業技術院製品科学研究所
三 田 郁 夫
元東京都立工業技術センター
新 井 元 彦
理研アルマイト工業株式会社
○ 石 黒 明 康
立山アルミニウム工業株式会社
○ 菊 池 哲
軽金属製品協会
○ 西 沢 和 由
昭和アルミニウム株式会社技術研究所
○ 大 木 隆 喜
トステム株式会社建材研究所
○ 大 中 隆
株式会社日本アルミ技術研究所
○ 坂 下 満 雄
三協アルミニウム工業株式会社
田 中 義 朗
日本軽金属株式会社
西 村 健二郎
不二サッシ株式会社
○ 藤 原 憲 彦
株式会社中金
○ 山 本 尚 三
YKK株式会社
(事務局)
佐 藤 信 幸
軽金属製品協会
小山田 誠
軽金属製品協会
備考 ◎:小委員会委員長
○:小委員会委員