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H 8611 : 1999 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日

本工業規格である。これによって,JIS H 8611 : 1993は改正され,この規格に置き換えられる。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許権,実用新案権,又は出願公開後の実

用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,

このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登

録出願にかかわる確認について責任をもたない。 

JIS H 8611には,次に示す附属書がある。 

附属書1(参考) めっき前の応力除去のための熱処理条件 

附属書2(参考) めっき後の水素ぜい性除去のための熱処理条件

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 8611 : 1999 

電気カドミウムめっき 

Electroplated coatings of cadmium on iron or steel 

序文 この規格は,1.適用範囲の備考に示す対応国際規格を元に,対応する部分についてはこれらの対応

国際規格を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規

定されていない規定項目を日本工業規格として追加している。 

1. 適用範囲 この規格は,鉄及び鋼素地上に防食の目的で行った有効面の電気カドミウムめっき(以下,

めっきという。)について規定する。 

備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。 

ISO 2082 : 1986 Metallic coatings−Electroplated coatings of cadmium on iron or steel 

参考1. 防食の目的でクロメート皮膜を施す場合には,JIS H 8625による。 

2. このめっきを行う場合は,作業条件及び作業環境に十分配慮する。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。 

JIS H 0400 電気めっき及び関連処理用語 

JIS H 0404 電気めっきの記号による表示方法 

JIS H 8501 めっきの厚さ試験方法 

JIS H 8504 めっきの密着性試験方法 

JIS H 8625 電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜 

JIS Z 9031 ランダム抜取方法 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 0400によるほか,次による。 

a) 有効面 (significant surface)  被覆されているか又は被覆されるべきで,その被覆が主要な性能及び外

観にかかわる部品の表面。 

b) 局部厚さ (local thickness)  指定面積内における指定測定回数の平均値 

c) 最小局部厚さ (minimum local thickness)  品物の有効面上において確認された局部厚さの最低値 

4. 等級,記号及び使用環境 

4.1 

等級及び記号 

a) 等級 めっきの等級は,表1のとおりとし,めっきの最小厚さによって6等級に分ける。 

b) 記号 めっきの記号は,JIS H 0404による。 

4.2 

使用環境,使用環境条件及び記号 使用環境,使用環境条件及び記号は,JIS H 0404による。

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H 8611 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考 防食の目的でめっき製品を使用する場合,その使用環境を参考表1のとおり区分し,記号で示

す。 

表1 めっきの等級及びめっきの最小厚さ 

μm 

等級 めっきの最小厚さ 

参考 

ISOのサービス 

コンディションナンバー 

1級 

 2 

− 

2級 

 5 

3級 

 8 

4級 

12 

5級 

20 

6級 

25 

参考表1 使用環境,使用環境条件及び記号 

使用環境 

使用環境条件 

記号 

参考 

ISOのサービス 

コンディションナンバー 

例 

通常の屋内環境 

住宅,事務所など 

湿度の高い屋内環境 

浴室,ちゅう(厨)房など 

通常の屋外環境 

田園,住宅地域など 

腐食性の強い屋外環境 

海浜,工業地域など 

5. 品質 

5.1 

めっきの外観 めっきの外観は,9.2によって試験を行い,めっきの有効面に,ざらつき,焦げ,割

れ,ピット,素地の露出などのめっきの欠陥,膨れ,はく離などの密着不良の徴候,さらに汚れ,きずな

どがあってはならない。 

備考1. 外観の程度が指定される場合には,受渡当事者間の協定による。 

2. 有効面に通電用接点を取ることが避けられない場合には,その箇所の指定は受渡当事者間の

協定による。 

5.2 

めっきの最小厚さ めっきの最小厚さは,9.3によって試験を行い,表1に適合しなければならない。 

参考 有効面について規定がない場合,直径20mmの球が接触しない面積は,有効面とみなさない。

また,有効面が100mm2未満の製品の場合,最小厚さは平均厚さの最小値とし,有効面が100mm2

以上の製品の場合,最小厚さは局部厚さの最小値とする。 

5.3 

めっきの密着性 めっきの密着性は,9.4によって試験を行い,めっきのはく離又は膨れがあっては

ならない。 

5.4 

化成皮膜の適用 化成皮膜の適用は,受渡当事者間の協定による。 

備考1. 化成皮膜の中でもクロメート皮膜は,カドミウムめっきの耐食性を向上させる。カドミウム

めっき上のクロメート皮膜の等級及び種類については,JIS H 8625による。 

2. 発注者の指定によって,クロメート処理を省略又は他の皮膜に代えることができる。 

6. 素地 めっき前の素地の状態は,めっきの品質に重大な影響を及ぼす。特に,素地材料が発注者から

供給される場合には,発注者は,加工仕様書などに,素地材料に関する情報を示さなくてはならない。 

H 8611 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7. めっき前の応力除去 鉄及び鋼素地について,めっき前の応力除去が指定されている場合その条件は,

受渡当事者間の協定による。 

なお,対応国際規格に参考として記載されているめっき前の応力除去のための熱処理条件を附属書1(参

考)に示す。 

8. めっき後の水素ぜい(脆)性除去 鉄及び鋼素地上のめっきにおいて,めっき後の水素ぜい性除去を

行うことが指定されている場合には,めっき後,少なくとも4時間以内に熱処理によって,水素ぜい性除

去を行う。熱処理条件は,受渡当事者間の協定による。 

なお,対応国際規格に参考として記載されているめっき後の水素ぜい性除去のための熱処理条件を附属

書2(参考)に示す。 

9. 試験 

9.1 

試験片の作製 試験片は,通常,製品から作製する。ただし,めっき製品それ自体を試験片として

用いることができない場合には,代替試験片によって試験を行う。 

代替試験片の作製は,可能な限りめっき部品の作製と同じ材質の素地を用い,同じめっき条件で行わな

くてはならない。 

9.2 

外観試験 外観試験は,目視によって行い,ざらつき,焦げ,割れ,ピット,素地の露出などのめ

っきの欠陥,密着不良の徴候,汚れやきずなどの有無を調べる。 

9.3 

厚さ試験 厚さ試験は,JIS H 8501に規定する顕微鏡断面試験方法,磁力式試験方法,電解式試験

方法,蛍光X線式試験方法,β線式試験方法,測微計による試験方法の中の触針走査法及び質量計測によ

るめっき付着量試験方法の中のめっき破壊質量法のいずれかによる。 

9.4 

密着性試験 密着性試験は,JIS H 8504に規定する試験方法による。 

10. 検査 検査は,次による。 

a) めっきは9.によって試験を行い,5.の規定に適合したものを合格とする。 

b) 試験片は,同一部品のロットからJIS Z 9031によって抜き取る。 

備考1. 検査項目及び試験方法の選択に関しては,受渡当事者間の協定による。 

2. 試験片の数,検査順序及び検査対象箇所並びに試験片の代替使用は,受渡当事者間の協定に

よる。 

11. めっきの呼び方 めっきの呼び方は,JIS H 0404による。 

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H 8611 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

例1. 鋼素地上,電気カドミウムめっき25μm以上 

例2. 鋼素地上,電気カドミウムめっき6級 

12. 表示 送り状又は納品書に,次の事項を表示する。 

a) めっきの記号 

b) 加工年月日 

c) 加工業者名 

d) 発注書,加工仕様書などに記載されためっき品質の試験結果 

13. 発注書又は加工仕様書への記載事項 発注者は,発注書又は加工仕様書に次の事項を記載しなければ

ならない。ただし,付記事項については,受渡当事者間の協定によって省略してもよい。 

a) 基本事項 

1) 素地材料の性質,状態及び仕上がり 

2) めっきの記号 

3) めっきの有効面 

参考 図面に指示するか,又は印を付けた実物見本を提出するとよい。 

4) めっきの外観 

参考 限度見本を提出するとよい。 

5) 許容できるめっき表面の欠陥の種類,大きさ,範囲及び場所 

6) クロメート皮膜の種類又は他の化成皮膜の適用 

7) 検査方法(用いられる密着性試験方法など) 

b) 付記事項 

1) 必要な熱処理 

2) 必要とするめっき品質とその試験方法 

3) めっきされた部品に対する特別な包装の必要条件 

4) その他,特別な前後処理及び制限 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書1(参考) めっき前の応力除去のための熱処理条件 

1. 適用範囲 この附属書は,鉄及び鋼素地などに対するめっき前の応力除去のために施す一般的な熱処

理条件を,参考として示したものである。 

2. 熱処理条件 必要に応じて,附属書1表1に示す条件で熱処理を施す。 

参考 表面硬化鋼は,硬度の低下が許容範囲に留まるなら,130〜150℃,5時間以上の熱処理を行っ

てもよい。 

附属書1表1 めっき前の応力除去の熱処理条件 

引張強さ 

MPa 

温度 

℃ 

時間 

1 050まで 

− 

− 

1 051〜1 450 

190〜220 

 1 

1 451〜1 800 

190〜220 

18 

1 800超 

190〜220 

24 

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H 8611 : 1999  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書2(参考) めっき後の水素ぜい性除去のための熱処理条件 

1. 適用範囲 この附属書は,めっき後の水素ぜい性除去のために施す一般的な熱処理条件を,参考とし

て示したものである。 

2. 熱処理条件 必要に応じて,附属書2表1に示す条件で熱処理を施す。 

参考 表面硬化鋼は,190〜220℃,2時間以上の熱処理を行ってもよい。 

附属書2表1 めっき後の水素ぜい性除去の熱処理条件 

引張強さ 

MPa 

温度 

℃ 

時間 

1 050まで 

− 

− 

1 051〜1 450 

190〜220 

 8以上 

1 451〜1 800 

190〜220 

18以上 

1 800超 

190〜220 

24以上 

JIS改正原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

神 戸 徳 蔵 

東京都鍍金工業組合 

(委員) 

青 江 徹 博 

OEAガルバノ事務所 

磯   明 夫 

福島県ハイテクプラザ 

伊 藤 哲 司 

財団法人日本ウェザリングテストセンター 

榎 本 英 彦 

大阪市立工業研究所 

海老名 延 郎 

ヱビナ電化工業株式会社 

大 嶋 清 司 

工業技術院標準部材料規格課 

大 高 徹 雄 

上村工業株式会社 

金 子 國 雄 

社団法人表面技術協会 

古 賀 孝 昭 

荏原ユージライト株式会社 

斎 藤 いほえ 

東京都城南地域中小企業振興センター 

須 賀   蓊 

スガ試験機株式会社 

滝 沢 貴久男 

三洋電機株式会社 

豊 永   実 

豊永表面技術事務所 

橋 本 繁 晴 

財団法人日本規格協会 

星 野 重 夫 

武蔵工業大学 

三田村 勝 昭 

スガ試験機株式会社 

山 添 英 司 

富士通株式会社 

矢 島 勝 司 

工業技術院物質工学工業技術研究所 

矢 部   賢 

矢部技術事務所 

山 崎 龍 一 

神奈川県産業技術総合研究所 

山 本 壮兵衛 

山本サーフェイス・エンヂニヤリングコンサルタント 

&ラボラトリー 

渡 辺   博 

株式会社東芝 

(事務局) 

及 川 耕 一 

社団法人表面技術協会