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H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 原理······························································································································· 2 

5 一般事項························································································································· 4 

6 測定装置························································································································· 5 

7 試験······························································································································· 5 

8 測定の精確さ ··················································································································· 6 

8.1 試料温度 ······················································································································ 6 

8.2 印加磁界 ······················································································································ 6 

8.3 ホール素子と試料上面との間げき······················································································ 6 

9 試験報告························································································································· 6 

附属書A(参考)箇条3から箇条6に関する追加情報 ································································· 8 

附属書B(参考)バルク高温超電導体の浮上力の測定方法 ··························································· 11 

附属書C(参考)試験報告(例) ··························································································· 14 

参考文献 ···························································································································· 16 

H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人国際超電導産業技術研究センター

(ISTEC)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出

があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は

もたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7313:2007 

(IEC 61788-9:2005) 

超電導−バルク高温超電導体の試験方法− 

捕そく(捉)磁束密度 

Superconductivity- 

Measurements for bulk high temperature superconductors- 

Trapped flux density of large grain oxide superconductors 

序文 

この規格は,2005年に第1版として発行されたIEC 61788-9を基に,技術的内容及び対応国際規格の構

成を変更することなく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

適用範囲 

この規格は,バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度を測定するための試験方法について規定する。 

なお,この規格は,試料温度が4.2 Kから90 Kまでの範囲における捕そく(捉)磁束密度の測定に適用

する。 

注記1 機関相互の比較に当たっては,液体窒素温度における捕そく(捉)磁束密度を用いるとよい。 

注記2 バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束に垂直な断面形状には,円形,長方形,六角形など

がある。 

なお,ここでいうバルクとは,対象とする超電導体の結晶状態が単結晶に近いもので,か

つ,結晶粒の大きさが数センチメートルに及ぶ大きな結晶体を指す。 

注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

IEC 61788-9:2005,Superconductivity−Part 9: Measurements for bulk high temperature 

superconductors−Trapped flux density of large grain oxide superconductors (IDT) 

なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示

す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS H 7005 超電導関連用語 

注記 対応国際規格:IEC 60050-815:2000, International Electrotechnical Vocabulary−Part 815: 

Superconductivity (MOD) 

H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 7005によるほか,次による。 

3.1 

捕そく(捉)磁束密度 (trapped flux density) 

バルク高温超電導体が捕そく(捉)する磁束の単位面積当たりの面密度。単位は,テスラ(T)で示す。 

注記 バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度はベクトル量であり,その大きさは,測定位置及

び温度に依存する。 

3.2 

最大捕そく(捉)磁束密度 (maximum trapped flux density) 

バルク高温超電導体の表面上の捕そく(捉)磁束密度分布における最大値。 

注記 通常,捕そく(捉)磁束密度のz軸成分だけを測定する。捕そく(捉)磁束密度のz軸成分の

値は,反磁界効果によって試料形状に強く依存する(A.2参照)。 

原理 

磁束ピニング特性をもつ超電導体は,図1に示すように,磁束を捕そく(捉)することが可能である。 

バルク高温超電導体内の磁束密度ベクトルBの回転 (∇×B)は,その臨界電流密度ベクトル (Jc)に比例

し,式(1)による。 

c

0μJ

B=

×

 ············································································· (1) 

式(1)は,一次元の直交座標系では,式(2)のように記述できる。 

y

J

x

B

c

0

z

μ

d

d

=

 ·············································································· (2) 

ここに, 

y

Jc: Jcのy軸成分 

また,式(1)は,円筒座標系では,式(3)のように記述できる。 

θ

c

0

z

μ

d

d

J

r

B=

 ·············································································· (3) 

ここに, 

θ

cJ: Jcの角度成分 

無限円柱(直径2R)における捕そく(捉)磁束密度(B)のz軸成分の最大値 (Bz,max)は,式(4)による。 

R

J

B

θ

c

0

max

z

μ

=

 ·········································································· (4) 

反磁界効果及び形状効果を考慮する場合の測定対象試料の最大捕そく(捉)磁束密度は,式(5)による。 

R

J

t

R

D

B

θ

c

0

max

z

μ

=

··································································· (5) 

ここに, D

tR: バルク高温超電導体の形(半径と厚さとの比)

に依存する形状定数 

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図1−バルク高温超電導体における捕そく(捉)磁束密度の原理 

バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度測定には幾つかの方法がある。代表的な方法である磁界中

冷却(FC)法による着磁方法は,次の手順による。 

a) クライオスタットのコールドヘッドに試料を設置する。 

b) 続いて,外部磁界を超電導体に印加する。 

c) 次に,クライオスタットのコールドヘッドに設置した試料を冷却装置によって目的の温度まで冷却す

る。 

d) 目的の温度に達した後,外部磁界を取り除く。 

e) その後,ホール素子と試料上面との間げきを一定に保ちながら,ホール素子で試料表面上を走査して,

バルク高温超電導体が捕そく(捉)した磁束密度の分布を測定する。 

なお,捕そく(捉)磁束密度測定の実験設備配置の概略図を,図2に示す(参考文献[1]参照)。 

く(捉

)磁束

z

B

z

T

) 

測定位置 x 

y

J

x

B

c

0

z

μ

d

d

=

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図2−捕そく(捉)磁束密度測定の実験設備配置の概略図 

一般事項 

バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度の測定は,外部磁界を取り去った後,少なくとも15分間経

過した後に行う。 

注記 バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度は,通常,外部磁界を取り去ると,磁束フロー,

磁束クリープ(総称して“磁束緩和”という。)に起因する減衰を順に起こす(参考文献[2]参

照)。 

警告 この規格の適用に当たって,管理者及び作業者は,あらかじめ適切な安全及び衛生上の対策を

調査し,確定し,規定限界値の適用性を決定することが必要である。 

特に,バルク高温超電導体に捕そく(捉)された強い磁界は問題であり,磁界を遮へい(蔽)

することが必要である。また,着磁用マグネットに蓄えられたエネルギーは,大電圧パルス及

び/又は大電流パルスを発生させるか,又は急激な沸騰,爆発状態を起こすような大量の熱エ

ネルギーを極低温装置に与えるため注意が必要である。低温液体トランスファーライン,貯蔵

ホール素子

バルク高温超電導体 

着磁用マグネット

クライオスタット

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

容器及び装置部品に直接触れると,直ちに凍り付くことがある。このため,こぼれた液体冷媒

との接触と同様に,装置部品などへの接触には十分な注意が必要である。 

測定装置 

6.1 

クライオスタット クライオスタットは,バルク高温超電導体試料用の支持材及び液体冷媒で構成

する。試料の温度制御のために液体冷媒の代わりに冷凍機冷却装置を用いてもよい。バルク高温超電導体

は,測定中に温度が上昇する傾向にあるので,液体冷媒の量又は冷凍機冷却装置の能力は,試料の温度上

昇を避けるために十分余裕をもつように選定する。 

6.2 

着磁用マグネット 着磁用マグネットは,バルク高温超電導体の捕そく(捉)磁束密度が飽和する

程度の磁束密度を供給でき,かつ,バルク高温超電導体の大きさより大きな空間に磁界を発生できるよう

なものとする。ただし,着磁用マグネットが発生する磁界強度が十分に高ければ,印加磁界の分布は均一

である必要はない(A.3参照)。 

なお,着磁用マグネットにはパルスマグネットを用いてはならない。 

6.3 

バルク高温超電導体の支持材 バルク高温超電導体の支持材は,捕そく(捉)磁束密度測定をして

いる間,バルク高温超電導体に作用する大きな電磁力に耐えるように,非磁性で,かつ,高い機械強度(A.4

参照)をもち,バルク高温超電導体をしっかりと固定できるものとする。 

6.4 

磁束密度分布測定装置 磁束密度分布測定装置は,一つ又は複数のホール素子(A.5参照)で走査で

きる装置で構成し,次による。 

a) ホール素子の有効測定面積は,試料の大きさの2 %未満とする。 

b) 分解能は0.001 T未満でなければならない。 

c) ホール素子の走査範囲は,試料の大きさより大きくなければならない。 

d) 試料上面と保護樹脂層の厚さを含めたホール素子との間げきは,試料の厚さの10 %未満とする(A.6

参照)。 

6.5 

温度センサ 温度センサは,次による。 

a) 温度センサは,バルク高温超電導体の温度測定に最適な仕様のものを選定する。 

b) 温度センサは,試料表面にできるだけ近いところに配置できる構造とする。 

c) 温度センサは,磁界によって著しく影響を受けるものであってはならない。 

注記 磁界の影響が少ない温度センサとして,例えば,金鉄合金・クロメル熱電対温度計がある。 

試験 

試験は,次による。 

a) 着磁 着磁は,次の手順によって行う。 

1) 試料をクライオスタット内の支持材にセットする。 

2) 着磁用マグネットによる静磁界中で冷却する。 

3) 試料が完全に冷却された時点で,着磁用マグネットを取り去るか,又は印加磁界をゼロにする。 

4) 磁束フロー及び磁束クリープの強い影響を避けるため,b)の磁束密度の測定を行うまでに試験片を

そのままの状態に少なくとも15分間以上放置する。 

5) 試料温度を測定する。 

なお,直径3 cmを超える一般的な寸法のバルク高温超電導体を試料とする場合は,試料全体が目

標温度に達するまで長い時間がかかるため,b)の測定を行うまで,試料をこの測定温度に保持する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記1 5)の保持時間は,バルク高温超電導体試料の大きさ及び熱伝導率から見積もることがで

きる。 

注記2 補強材によって,バルク高温超電導体試料の機械的強度を向上させてもよい。 

b) 測定 バルク高温超電導体に捕そく(捉)された磁束密度の分布を,ホール素子で測定する。 

ホール素子は,ホール素子と試料表面との間げきを一定に保ちながら,あらかじめ決められた格子上の

磁界のz軸成分を測定するために試料のx-y平面上を走査する。複数のホール素子を配列して,試料の捕

そく(捉)磁束密度を測定してもよい。 

測定間隔は,走査するx-y平面の最大寸法の10 %未満でなければならない。ただし,ホール素子の間隔

が測定間隔を満たし,試料全体をホール素子で覆う場合は,走査なしで測定してもよい。 

測定の精確さ 

8.1 

試料温度 

クライオスタットに液体冷媒を用いる場合は,冷媒温度を試料温度とする。液体冷媒の代わりに冷凍機

冷却装置を用いる場合は,コールドヘッド上の試料の温度を試料温度とする。いずれの場合も,試料温度

は,±0.25 Kの精確さで測定しなければならない。 

8.2 

印加磁界 

印加磁界は,±0.05 Tの精確さで測定しなければならない。 

8.3 

ホール素子と試料上面との間げき 

試料の上面と保護樹脂層の厚さを含めたホール素子との間げきを,±10 %の精確さで測定しなければな

らない。 

試験報告 

試験報告書には,次の情報を記載し,注文者に報告しなければならない。ただし,捕そく(捉)磁束密

度分布図は,注文者の要求による(附属書C参照)。 

a) 試料 試料の素性に関して記載する情報は,次による。 

1) 形状及び寸法 

2) 結晶成長後の処理(補強,照射など) 

b) 試験条件 試験条件に関して記載する情報は,次による。 

1) 着磁用マグネットの最高磁界及び有効口径 

2) 外部磁界をゼロにするまでの時間 

3) 外部磁界を除去してから測定を開始するまでの保持時間 

4) ホール素子の仕様(種類,外形寸法,有効測定面積,校正曲線及び感度) 

5) ホール素子の取付位置 

6) 支持材への試料の取付方法 

7) 支持材の材質,形状及び寸法 

8) クライオスタットの仕様 

9) 温度センサの形式 

10) バルク高温超電導体に対する温度センサの位置 

c) 捕そく(捉)磁束密度 捕そく(捉)磁束密度に関して記載する情報は,次による。 

1) 最大捕そく(捉)磁束密度 

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2) ホール素子と試料上面との間げき 

3) 試料温度 

4) 外部磁界 

5) 捕そく(捉)磁束密度分布図 

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附属書A 

(参考) 

箇条3から箇条6に関する追加情報 

序文 

この附属書は,箇条3から箇条6に関する追加情報を記載するものであって,規定の一部ではない。 

A.1 捕そく(捉)磁束密度の絶対値 

反磁界効果によって捕そく(捉)磁束密度のz軸成分の大きさは,バルク高温超電導体の形状に大きく

依存する。z軸成分(Bz)だけではなく磁界のx軸成分(Bx)及びy軸成分(By)も含めたすべての軸成分

を測定でき反磁界効果が無視できる場合には,捕そく(捉)磁束密度の絶対値は,通常,

2

z

2

y

2

x

B

B

B

B

+

+

=

ρ

と定義できる。 

A.2 捕そく(捉)磁束密度に及ぼす形状効果 

捕そく(捉)磁束密度は,試料の形状,特にアスペクト比(試料幅/試料厚)に大きく依存する。Jc−B

特性(臨界電流密度−磁束密度特性)が一定の場合,捕そく(捉)磁束密度は試料厚さの増加とともに増

大し,ある一定の値で飽和する(図A.1参照)。このため,試料間の相互比較を行う場合は,試料の形状を

同じにする必要がある。さらに,試料形状が異なる場合には,形状効果の補正が必要となる。 

注記1 試料は,直径15 mmである(参考文献[3]参照)。 
注記2 捕そく(捉)磁束密度は,試料厚さの増加とともに増大し,飽和する。 

図A.1−捕そく(捉)磁束密度(Bz)の厚さ依存性 

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0

5

10

15

20

Measurement
Simulation

B

[T

]

Sample thickness [mm]

試料厚さ(mm) 

● 測定値 

   シミュレーション 

B

z

T

● 測定値 

   シミュレーション 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.3 着磁用マグネット 

着磁用マグネットとして,バルク高温超電導磁石又は電磁石を用いてよいが,クライオスタット内の試

料位置での磁界の均一性を確保する必要がある。また,磁界の強さは,バルク高温超電導体の捕そく(捉)

磁束密度を飽和させるのに十分な大きさが必要である。ただし,磁界の強さが十分大きければ,磁界の均

一性は,それほど必要ではない。この磁界の強さは,飽和捕そく(捉)密度及び試料の形状で決まる反磁界

効果から求める。例えば,アスペクト比(試料幅/試料厚)が2.5の超電導試料を完全に磁化するには,

飽和磁束密度の少なくとも1.75倍の強さの外部磁界が必要である。アスペクト比が大きくなると,この値

は更に大きくなる。 

A.4 バルク高温超電導体の補強 

バルク高温超電導体試料は,捕そく(捉)磁束密度の測定中の電磁力によって大きな熱応力を受ける。

もろいセラミックスであるバルク高温超電導体は,この熱応力によって壊れてしまうことがあるため,バ

ルク高温超電導体をあらかじめ補強することが望ましい。 

補強法には,一般に金属リングを用いるが,最近,樹脂含浸法が,バルク高温超電導体の機械特性の改

善に有効であることが判明した。この樹脂含浸法は,バルク高温超電導体を溶融した樹脂中に真空下で浸

すもので,表面近くのクラック及びボイドに樹脂が入り込むことによって,バルク高温超電導体の機械的

性質を著しく改善できる。 

A.5 磁界センサ 

捕そく(捉)磁束密度の測定に用いる磁界センサは,ホール素子,ピックアップコイルなどいろいろあ

るが,一般的な磁界センサはホール素子である。ホール素子には温度依存性があるものが多いため,セン

サの校正方法とともにセンサの温度も知っておく必要がある。 

なお,ホール素子の温度を確実にするには,センサを液体窒素に浸すとよい。 

A.6 間げき距離ゼロへの外挿 

捕そく(捉)磁束密度の値を公平に比較するためには,間げき距離ゼロでの値を求める必要がある。こ

の値は,測定時の有限の間げき距離(z軸方向)での測定値から,円柱形状の試料の場合,式(A.1)によっ

て,z = 0に外挿することによって求めることができる(参考文献[4]参照)。 

()

(

)

(

)

+

+

+

+

+

+

+

z

z

R

R

z

D

z

D

z

R

R

D

z

C

z

B

2

2

2

2

z

ln

ln

················ (A.1) 

ここに, 

C: 臨界電流密度に関係する定数 

R: 円柱の半径 

D: 円柱の高さ 

例えば,直径30 mm,厚さ15 mmの円柱状の試料で,捕そく(捉)磁束密度のピーク値が間げき距離ゼ

ロで2.6 Tとすると,捕そく(捉)磁束密度は図A.2に示すように,有限の間げき距離(z)に対して減衰す

る。しかし,式(A.1)は1次的な近似式であって,臨界電流密度の磁界依存性が大きい場合はよい近似にな

らない。 

background image

10 

H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記1 試料は直径30 mm,厚さ15 mm。最大捕そく(捉)磁束密度は,間げき距離ゼロのとき2.6 T。 
注記2 ある間げき距離での捕そく(捉)磁束密度の値が分かれば,任意の間げきでの値を求めるこ

とができる。 

図A.2−捕そく(捉)磁束密度の間げき距離依存性 

11 

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附属書B 

(参考) 

バルク高温超電導体の浮上力の測定方法 

序文 

この附属書は,バルク高温超電導体の浮上力の測定方法について記載するものであって,規定の一部で

はない。 

B.1 原理 

浮上力は,バルク高温超電導体(以下,“BHTSC”という。)の特性評価に使用することがある。浮上力

の測定方法は,捕そく(捉)磁束密度測定よりも簡便な方法ではあるが,原理的に,使用する永久磁石の

磁界の強さ及び空間分布に制限がある。 

B.2 装置 

B.2.1  永久磁石 

標準の測定方法では,同一の磁気特性(BHmax,Br及びBc)及び同一の寸法(半径及び高さ)をもつ永

久磁石(以下,“PM”という。)を使用するとよい。BHTSCの寸法が同じでない場合でも,少なくとも,

PMとBHTSCとの寸法比率は比較のために一定にしておくとよい。 

また,PMの磁気特性は,温度に強く依存しているため,浮上力の測定時は,PMの温度を一定に維持す

るよう特段の配慮が必要である。PMの温度を一定に維持するために,PMの表面を低熱伝導率のエポキシ

樹脂などの材料で覆うとよい。可能であれば,BHTSCを入れるクライオスタットを熱絶縁するか,又は

PMを熱絶縁することが望ましい。 

B.2.2 バルク超電導体の支持材 

浮上力の測定の間,超電導体には大きな電磁力が作用するため,BHTSCはしっかり支持材に固定すると

よい。クライオスタット内で冷却される支持材及びBHTSCを,測定の間,一定の温度に保つため,クラ

イオスタットの冷却能力は,BHTSCの温度上昇を防ぐのに十分な容量をもつものがよい。支持材の機械的

強度は,浮上力測定の間,BHTSCの動きを防ぐのに十分な強度が必要であるため,通常,低温になるほど

硬くなる材料によってBHTSCを支持材に接着するとよい。可能であれば,BHTSCを非磁性金属のさやを

使って支持材に固定することが望ましい。 

B.2.3 PMの移動装置 

PMの移動装置は,PMがBHTSCに向かって近づいていくとき,及び離れていくときのそれぞれについ

て浮上力を測定できるものがよい。PMが近づく速度は,磁束フロー及び磁束クリープによる減衰並びに

浮上力に影響するため,十分遅くするとよい。 

B.2.4 浮上力の測定装置 

浮上力の測定装置は,引張試験機を組み込んだ電磁力測定システムが望ましい。 

B.3 浮上力の測定 

浮上力の測定は,次による。 

a) 浮上力は,PMとBHTSCとのギャップごとに測定するとよい。初期ギャップは,BHTSCがPMの磁

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H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

界を捕そく(捉)することを避けるために十分に大きく取るとよい。初めに,PMをBHTSCに近づけ

たときの浮上力を測定し,続いてPMを遠ざけたときの浮上力を測定するとよい。この浮上力測定の

間,常に磁束はBHTSCによって捕そく(捉)されているため,その往復サイクルの後,BHTSCを,

臨界温度以上に暖めるとよい。このBHTSCによって捕そく(捉)された磁束は,第2回目の往復サ

イクルにおける浮上力に影響を与えるため,浮上力及びギャップは,PMのBHTSCに対する移動速度

をコンピューターに記録するとよい。 

b) 浮上力測定において,PMの移動速度を徐々に減少させながら浮上力測定を繰り返すとよい。PMの移

動速度が十分に遅い場合,浮上力−ギャップ曲線は,往復で同じ曲線になり,この状態における浮上

力を指定したギャップにおける測定値としてよい。しかし,機械設計に用いる浮上力は,この値より

小さくなるため,機械設計に用いる浮上力の値を求める方法は,PMが指定したギャップに十分にゆ

っくりと近づき,浮上力の減衰をモニターしながら,1時間保持するとよい。このときの浮上力を,

指定したギャップにおける,1時間保持時の浮上力とするとよい。 

c) 浮上力をより普遍的な結果とするため,BHTSCを完全な反磁性体として扱ったときに得られる理論的

な最大値に対する割合として求めることもできる。この場合,測定条件はあまり重要ではなく,いか

に理論的最大値を計算するかが問題となる。このため,PM製造業者は,この値を得るためのコンピ

ュータープログラムを独自に開発している。 

B.4 捕そく(捉)磁束密度と浮上力との関係 

捕そく(捉)磁束密度は,浮上力測定に用いた磁界強度が試料中心到達磁界に比べ十分に大きい場合に

だけ,浮上力と強い相関関係がある。磁界強度が試料中心到達磁界に比べ十分に大きいという条件は,大

型のBHTSCの浮上力が従来のPMによって測定される場合,ほとんどの実験において成立しない。しか

しながら,ミクロな臨界電流密度 (Jc) の磁界依存性を確認できた場合は,捕そく(捉)磁束密度を,浮上

力の計算に用いてもよい。 

超電導体の磁化を,式(B.1)に示す。 

()

()d

B

AJ

H

M

c

=

 ···································································· (B.1) 

ここに, M: 磁化 
 

A: 幾何学的定数 

Jc: 臨界電流密度 

d: 超電導電流回路の回路長 

式(B.1)は,超電導電流が完全な超電導状態となっている超電導体に流れている条件下において,浮上力

と捕そく(捉)磁束との両方に適用できる。このような条件は,捕そく(捉)磁束密度測定では容易に満

たされるが,外部磁界がBHTSCの中心に達しない浮上力測定においては,そうではない。磁束の部分浸

入状態での磁化Mを,式(B.2) に示す。 

d

J

H

H

M

c

2

+

=

 ······································································· (B.2) 

ここに, 

H: 外部磁界 

磁束の部分浸入状態での磁化は材料パラメータである臨界電流密度 (Jc) と超電導電流回路の回路長  

(d) との単純な関数とはならない。さらに,浮上力及び磁界こう(勾)配は,式(B.3)の関係にある。 

z

d

H

d

F

z

z

z

M

=

 ········································································ (B.3) 

式(B.3)で,下付き添え字zは,これらの値の直交座標成分である。 

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しかし,捕そく(捉)磁束密度測定の結果から,浮上力の計算に用いられる臨界電流密度 (Jc) の磁界依

存性が得られる。 

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附属書C 
(参考) 

試験報告(例) 

序文 

この附属書は,箇条9に規定する試験報告の例を記載するものであって,規定の一部ではない。 

C.1 試料 

試料に関する報告の例を,次に示す。 

a) 形状及び寸法:直径46 mm,高さ15 mm 

b) 結晶成長後の処理:エポキシ樹脂含浸(厚さ0.5 mm) 

C.2 試験条件 

試験条件に関する報告の例を,次に示す。 

a) 着磁用マグネットの最高磁界及び有効口径:10 T超電導マグネット(Nb-Ti,Nb3Sn混成型),有効口

径10 cm 

b) 外部磁界をゼロにするまでの時間:10分(2 Tから0 Tまで) 

c) 外部磁界を除去してから測定を開始するまでの保持時間:20分 

d) ホール素子の仕様:低温用ホールセンサ(FW Bell,BHA-921,感度0.8 mV/kG, アキシャル型,直径

6.35 mm,厚さ5.08 mm,有効測定面積:直径0.5 mm) 

e) ホール素子の取付位置:Δx及びΔyは0.5 mm間隔とし,50 mm×50 mmの面積を走査 

f) 

支持材への試料の取付方法:クライオスタットのFRP板にシリコングリスで接着 

g) 支持材の材質,形状及び寸法:直径60 mm,厚さ5 mmの銅板 

h) クライオスタットの仕様: 

1) 材質:FRP製 

2) 寸法:外径99 mm,内径90 mm,高さ210 mm 

3) 冷却方式:液体冷媒(液体窒素) 

i) 

温度センサの形式:GaAIAs ダイオード(Lakeshore TG-120) 

j) 

バルク高温超電導体に対する温度センサの位置:液体冷媒中の試料側面 

C.3 捕そく(捉)磁束密度 

捕そく(捉)磁束密度に関する報告の例を,次に示す。 

a) 最大捕そく(捉)磁束密度:最高点で1.1 T 

b) ホール素子と試料上面との間げき距離:1.0 mm(磁界センサの樹脂厚さ0.3 mmを含む。) 

注記 間げき0 mmでの値は,式(A.1)によって見積もることができる。 

c) 試料温度:77.5 K 

d) 外部磁界:2 T 

e) 捕そく(捉)磁束密度分布図:図C.1に示す。 

background image

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単位 mm 

a) 立体図 

b) 平面図 

図C.1−捕そく(捉)磁束密度の分布図 

y (mm) 

x (mm) 

0

48

1

2

1

6

2

0

2

4

2

8

3

2

3

6

4

0

4

4

4

8

5

2

5

6

6

0

6

40

4

8

12

16

20

24

28

32

36

40

44

48

52

56

60

64

1-1.2
0.8-1
0.6-0.8
0.4-0.6
0.2-0.4
0-0.2
-0.2-0

   1〜1.2 

  0.8〜1 

  0.6〜0.8 

  0.4〜0.6 

  0.2〜0.4 

   0〜0.2 

−0.2〜0 

y (mm) 

x (mm) 

B (T) 

0369

1

2

1

5

1

8

2

1

2

4

2

7

3

0

3

3

3

6

3

9

4

2

4

5

4

8

5

1

5

4

5

7

6

0

6

3

0

8

16

24

32

40

48

56

64

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1-1.2
0.8-1
0.6-0.8
0.4-0.6
0.2-0.4
0-0.2
-0.2-0

1〜1.2 

  0.8〜1 

  0.6〜0.8 

  0.4〜0.6 

  0.2〜0.4 

0〜0.2 

−0.2〜0 

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H 7313:2007 (IEC 61788-9:2005) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] K. Nagashima et al.: "Trapped field on stacked plates of YBCO superconductors", Advances in 

Superconductivity VIII (1996) 727 - 730 

[2] D. A. Cardwell et al.: "Round robin measurements of the flux trapping properties of melt processed 

Sm-Ba-Cu-O bulk superconductors", Physica C 412-414 (2004) 623 - 632 

[3] H. Fukai et al.: "The effect of geometry on the trapped magnetic field in bulk superconductors", Superconductor 

Science & Technology 15 (2002) 1054 - 1057 

[4] I. G. Chen et al.: "Characterization of YBa2Cu3O7 including critical current density Jc by trapped magnetic field", 

Journal Applied Physics 72 (1992) 1013 - 1020