H 7302:2009 (IEC 61788-2:2006)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 原理······························································································································· 3
5 試験条件························································································································· 3
6 装置······························································································································· 4
6.1 反応用マンドレルの材質(2−マンドレル法) ····································································· 4
6.2 反応用マンドレルの構造(2−マンドレル法) ····································································· 4
6.3 測定用マンドレルの材質(2−マンドレル法) ····································································· 4
6.4 測定用マンドレルの構造(2−マンドレル法) ····································································· 5
6.5 1−マンドレル法の試料準備 ····························································································· 5
6.6 測定準備 ······················································································································ 5
7 試料······························································································································· 5
7.1 反応熱処理用試料の取付け(2−マンドレル法) ·································································· 5
7.2 反応熱処理(2−マンドレル法) ······················································································· 5
7.3 測定用試料の取付け(2−マンドレル法) ··········································································· 5
7.4 試料の固定(2−マンドレル法) ······················································································· 6
7.5 1−マンドレル法の試料 ··································································································· 6
8 試験手順························································································································· 6
9 試験方法の精度及び正確度 ································································································· 7
9.1 Ic ································································································································ 7
9.2 温度 ···························································································································· 7
9.3 磁界 ···························································································································· 7
9.4 試料の支持構造 ············································································································· 8
9.5 試料の保護 ··················································································································· 8
10 試験結果の計算方法 ········································································································ 8
10.1 Ic基準 ························································································································ 8
10.2 n値(参考値) ············································································································ 9
11 報告事項 ······················································································································ 10
11.1 試料の表示 ················································································································· 10
11.2 Ic値に関する報告········································································································· 10
11.3 試験条件の報告 ··········································································································· 10
附属書A(参考)箇条1から箇条10までの追加参考情報 ···························································· 11
附属書B(参考)Nb3Sn複合超電導線のひずみ効果 ···································································· 21
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附属書C(参考)自己磁界効果 ······························································································ 23
附属書D(規定)1−マンドレル法 ·························································································· 25
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(3)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人国際超電
導産業技術研究センター(ISTEC)及び財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規
格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規
格である。
これによって,JIS H 7302:2000は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
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日本工業規格 JIS
H 7302:2009
(IEC 61788-2:2006)
超電導−第2部:臨界電流の試験方法−
ニオブ3すず複合超電導線
Superconductivity-Part 2:Critical current measurement-
DC critical current of Nb3Sn composite superconductors
序文
この規格は,2006年に第2版として発行されたIEC 61788-2を基に,技術的内容及び対応国際規格の構
成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。
複合超電導線の臨界電流は,超電導線の使用目的に応じた設計限界を決めるために用いる。超電導線の
使用条件は,材料特性によって決定する。この規格によって得た試験結果は,対象とする超電導線の適用
の可能性を判断するための重要な情報となる。
この試験方法から得た結果は,製造条件,取扱い方法,経時変化,用途変更,使用環境などによる複合
超電導線の超電導特性の変化を検出するためにも適用できる。また,この規格に規定する注意事項を守れ
ば,この方法は,品質管理,受入試験又は研究目的の試験に適用できる。
複合超電導線の臨界電流は,多くの変動因子に左右される。複合超電導線を試験し,使用するときは,
これらの変動因子を考慮しなければならない。磁界,温度,試料・電流・磁界の相対的方向などの試験条
件は,使用目的,対象とする試料,試験に要求される精度によって決定する。試験結果に異常があれば,
複数の試料について測定することが望ましい。
この規格に網羅した試験方法は,銅安定化ニオブ・チタン合金複合超電導線の臨界電流の決定方法に関
する規格 (JIS H 7301[2]) とニオブ3すず複合超電導線の臨界電流に関するVAMAS(先進材料及び標準に
関するヴェルサイユプロジェクト)の標準化作業とに基づくものである。ニオブ3すず複合超電導線の臨
界電流は,銅安定化ニオブ・チタン合金複合超電導線に比べて,機械的なひずみに極めて敏感であること
で知られている。したがって,試験試料のひずみ状態に影響を与える試験手順に関して幾つかの制限が施
されている。これらの制限の背景については,附属書Bを参照されたい。
1
適用範囲
この規格は,銅対非銅部の体積比が0.2以上のブロンズ法,又は内部すず法によって作製したニオブ3
すず複合超電導線(以下,Nb3Sn複合超電導線という。)の臨界電流(以下,Icという。)試験方法につい
て規定する。
この試験方法は,上部臨界磁界の0.7倍以下の磁界において,Icが1 000 A未満,n値が12以上の超電導
線に適用する。Nb3Sn複合超電導線は,断面積が2 mm2未満のモノリシック超電導線とする。この試験方
法に用いる試料の形態は,誘導的に巻いたコイル状のものとする。
Icが1 000 A以上か,又は断面積が2 mm2以上の大きなNb3Sn複合超電導線においても,この試験方法
2
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で測定可能であるが,試験精度が落ちたり,自己磁界の影響(附属書C参照)がより顕著に現れる。精度
を落とさないためには,別の特別な試料の形態が必要であり,この規格では適用しない。
この試験方法は,ジェリーロール法など他の方法によって作製したNb3Sn複合超電導線にも原理的には
適用できるものである。また,この試験方法は,適切な変更を施せば,他の複合超電導線にも準用しても
よい。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61788-2:2006,Superconductivity−Part 2:Critical current measurement−DC critical current of
Nb3Sn composite superconductors (IDT)
なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 7005 超電導関連用語
注記 対応国際規格:IEC 60050-815:2000,International Electrotechnical Vocabulary−Part 815:
Superconductivity(MOD)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS H 7005によるほか,次による。
3.1
臨界電流 (Ic)
抵抗なしで流れるとみなせる最大直流電流値。
注記 Icは,磁界強度と温度との関数。
3.2
臨界電流基準(Ic基準)
電界強度E又は比抵抗ρを基にIcを決める基準。
注記 電界基準としてはE=10 μV/m又はE=100 μV/mが,比抵抗基準としてはρ=10−13 Ω・m又は
ρ=10−14 Ω・mがよく用いられる。
3.3
(超電導体の)n値
電界強度又は比抵抗の特定の範囲で電圧(U)と電流(I)との関係が,近似的にU∝I nの式で表されるときの
べき数。
3.4
クエンチ
超電導体又は超電導機器における超電導状態から常電導状態への制御不能,かつ,不可逆的な転移(現
象)。
注記 通常,超電導マグネットに対して用いられる用語。
3
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3.5
(フラクソンに作用する)ローレンツ力
電流によってフラクソンに働く力。
注記1 電流密度をJ,磁束密度をBとして,単位体積当たりの力はJ×Bとなる。
注記2 “クローン=ローレンツ力”は,IEV 121-11-20[1]で定義されている。
3.6
応力効果(ひずみ効果)
超電導体に機械的,熱的又は電磁気的な応力が作用したときの超電導特性の変化。
3.7
曲げひずみ (εb)
rを試料厚さの半分,Rは曲げ半径としてεb=100 r/Rで定義され,単純曲げによって生じる試料表面の
最大ひずみ (%)。
3.8
(複合超電導線の)カレント・トランスファー
複合超電導線中において,直流電流が超電導フィラメントから超電導フィラメントへ常電導の母材を介
して移ることによって,線の長手方向に電圧が生じる現象。
注記 Ic測定のとき,電流端子付近で電流が周囲から内部に流入し,超電導フィラメント間で電流分
布が不均一になるため,この現象が電流端子付近で起こる。
3.9
定速掃引法
ゼロからIc直上まで一定速度で試料電流を増加させながら,U-I特性データを収集する方法。
3.10
ステップ掃引法
試料電流を,ある時間間隔をおいて段階的に逐次増加又は減少させながら,U-I特性データを収集する
方法。
4
原理
複合超電導線のIcは,決められた一定の印加磁界及び一定圧力の液体冷媒に浸した特定の温度のもとで,
U-I特性データを測定して決定する。U-I特性データを得るには,試験試料に流す直流電流をゼロから増加
させ,生じたU-I特性データを記録する。Icは,特定の電界基準(Ec)又は比抵抗基準(ρc)に達したときの電
流値とする。Ec又はρcのいずれに対しても,各試料の長さに対応する基準電圧値 (Uc)が存在する。
5
試験条件
試験条件は,次による。
a) 試料は,らせん溝を備えた円筒状の反応用マンドレルに巻いて反応熱処理後,同じ角度のらせん溝を
備えた同じ直径の測定用マンドレルに移し替えることとする(2−マンドレル法)。
なお,試料を移し替えない方法(1−マンドレル法)を代替法とし,この方法については,附属書D
に規定する。
b) 試料の長さは,430 mm以上とする。
c) 試料は,十分な張力を加えるか,低温接着材を用いるか,又は両者を組み合わせた方法によって,測
4
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定用マンドレルに取り付ける。
d) この試験方法では,加える磁界の方向は,測定用マンドレル軸に平行とする。
e) この試験によって得られるIc測定値の精度は,変動係数(標準偏差を平均値で除した値の100倍)と
して,12 Tで4.2 K近傍での測定に対して3 %未満を目標とする。
f)
この試験方法では,カレント・トランスファー補正は行わないこととする。また,測定時に想定電圧
水準を超えるような著しいカレント・トランスファーがある場合は,その測定を無効とみなす。
g) この規格の使用に当たっての適切な安全及び衛生上の対策・注意事項を調査,確定し,規定限界値の
適用性を決定しておくことは,利用者の責任である。特に注意すべき事項を,次に示す。
h) 試料には,非常に低い電圧であるが,極めて大きな直流電流が流れているため直接人体に損害を与え
るような重大な事故を起こすことがある。例えば,リード線が工具,トランスファーチューブなどの
別の良導体を介してショートした場合は,大きなエネルギーの放出に伴うアークが発生し,やけどの
原因となるので,リード線は短絡しないよう処置する必要がある。磁界発生用超電導マグネットに蓄
えられたエネルギーがもし放出されると,大きな電流・電圧パルスの発生の原因となるか,極低温装
置に大量の熱エネルギーが移行し液体ヘリウムの急激な沸騰又は爆発の原因となるので,リード線が
短絡しないよう処置する必要がある。急激な沸騰条件下では,周辺区域が酸欠状態になるおそれがあ
るので,予備の排煙装置を用意する必要がある。超電導体を冷却し,超電導状態に遷移させるのに用
いる液体ヘリウム,低温液体,トランスファーチューブ,液体ヘリウム容器,装置の部品などに直接
肌を触れると,こぼれた低温液体に触れた場合と同じく,その場で凍り付くため十分な注意が必要で
ある。
6
装置
6.1
反応用マンドレルの材質(2−マンドレル法) マンドレルの材質は,次による。
a) 反応用マンドレルの材質は,表面処理を施すか,又は施さない耐熱性の材料とする。
b) 望ましい反応用マンドレルの材質を,A.3.1に推奨する。これらの材料のいずれを使用してもよい。
6.2
反応用マンドレルの構造(2−マンドレル法) マンドレルの構造は,次による。
a) 反応用マンドレルの一般的な形態は,個々の試料を移し替える測定用マンドレルとよく整合したもの
とする。
b) 反応用マンドレルの直径は,試料を巻き付けるときに生じる曲げひずみが5 %を超えない大きさのも
のとする。
c) マンドレルは,巻き付ける試料を収めるらせん溝を備え,そのピッチ角度は7度以下とし,溝の深さ
は試料の直径の少なくとも半分とする。
6.3
測定用マンドレルの材質(2−マンドレル法) 測定用マンドレルの材質は,次による。
a) 測定用マンドレルの材質は,絶縁材料又は導電性非強磁性材料とする。
b) Icは,試料と測定用マンドレルとの熱収縮差によって生じるひずみに強く影響される。
c) 測定温度における試料に生じるひずみは,−0.03 %〜0.03 %の範囲とする。もし,試料とマンドレル
との熱収縮差によるひずみがこれを超える場合には,マンドレルの材質を公表し,Icが過剰なひずみ
状態での測定であるとの注釈を付けることとする。
d) 望ましい測定用マンドレルの材質をA.3.3に推奨する。これらの材料のいずれを使用してもよい。
e) 絶縁層なしで導電性材料を用いる場合,試料電流がIcに達したときのマンドレルへの漏れ電流が,外
部から加えた電流の0.2 %未満となるようにする(9.5参照)。
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6.4
測定用マンドレルの構造(2−マンドレル法) 測定用マンドレルの構造は,次による。
a) マンドレルは,試料を収めるらせん溝を備えることとする。
b) マンドレルの直径,らせん溝のピッチ角度及びその深さと形状は,反応用マンドレルのそれに近いも
のとする。
c) 試料軸(電圧端子間部分)と磁界とのなす角度は83〜97度の範囲とし,この角度は±2度の正確さと
する。
d) マンドレルと電流端子との移行域(わたり部分)での応力集中を避けるため,電流端子は測定用マン
ドレルに強固に固定する。
6.5
1−マンドレル法の試料準備
1−マンドレル法で試料を準備する場合は,附属書Dによる。
6.6
測定準備
測定準備は,次による。
a) 超電導試料のU-I特性データを測定する器具一式は,試料プローブ,テスト用クライオスタット,マ
グネットシステム及びU-I特性測定システムからなる。
b) 試料,測定用マンドレル,試料支持構造,電圧端子,電流リードなどからなる試料プローブは,テス
ト用クライオスタット内に装入される。
c) 通常,クライオスタットは,試料に磁界を印加するソレノイド形超電導マグネットとその支持構造と
を含んでいる。
d) U-I特性測定システムは,直流電源,レコーダ及びそれに必要な増幅器,フィルタ及び電圧計,又は
それらを組み合わせた装置からなる。
e) コンピュータによるデータ収集システムも使用することができる。
7
試料
7.1
反応熱処理用試料の取付け(2−マンドレル法)
反応熱処理用試料の取付けは,次による。
a) 試験試料は,接合したりつなぎ合わせたりしてはならない。
b) Icの決定に比抵抗基準を適用する場合,試料の全断面積(S)は,5 %の精度で決定する。
c) 試料を反応用マンドレルに巻き付ける場合,試料に付加的なねじりを与えてはならない。
d) 試料は,形状を維持し,かつ,拡散による融着を最小にする配慮が必要で,ほとんどゼロの張力(引
張りひずみとして0.1 %未満)で反応用マンドレル上の溝に巻き付けることとする。
e) 試料は,マンドレルの両端に設けたそれぞれの孔に通して両端を曲げるか,これと同等な方法で反応
用マンドレル上に固定する。
f)
試料は,汚染の影響を避けるためにあらかじめ洗浄する。
7.2
反応熱処理(2−マンドレル法)
反応熱処理は,線材製造業者の仕様(許容誤差限界を含んだもの)に基づいて実施する。熱処理炉内部
の温度変動は,その限界を超えないように制御する。
7.3
測定用試料の取付け(2−マンドレル法)
測定用試料の取付けは,次による。
a) 反応熱処理を終えたら,測定用マンドレルにはめ込むために試料の端部を切ることとする。
b) 試料は,わずかに緩めて溝からはずし,反応用マンドレルを回転しながら引き抜く。
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c) 試料は,直ちに反応用マンドレルからはずすときと同様な方法で,測定用マンドレルに取り付けるこ
ととする。
d) 測定用マンドレル上に取り付けるとき,試料は溝の中へと導き,その一端をリング状の電流端子には
んだ付けする。
e) 試料は,溝の中にしっかり収まるように,既に固定した端部から始めてその全長にわたってなぞるこ
ととする。この作業によって溝の中に試料がしっかり収まることになる。その後,もう一方の自由に
なっている端部をリング状の電流端子にはんだ付けする。
f)
電流端子上のはんだ付けする部分の最小長さは,40 mm又は線材直径の30倍の長さの短い方を超え
るものとする。各端子には,3ターン以上は試料をはんだ付けしないこととする。
g) 電流端子と電圧端子との最短距離は,100 mmを超えるものとする。
h) 試料には電圧端子をはんだ付けする。図A.1に示すように,相互インダクタンスを最小に抑えるため,
電圧端子引き出し線のより戻した部分を試料に沿って配線することによって,試料と電圧端子とによ
って形成されるループ内の面積をできるだけ小さくする。
i)
電圧端子間距離は,150 mmを超えるものとし,試料に沿って5 %の正確度で測定する。
7.4
試料の固定(2−マンドレル法)
試料の固定は,次による。
a) 試料は,その動きを抑えるために,張力による方法,及び/又は低温接着剤(シリコーン真空グリー
ス,エポキシ樹脂など)を用いる方法によって測定用マンドレルに固定しなければならない。張力に
よって試料を固定する場合,測定用マンドレルに試料を取り付ける場合,張力を加えることとする(7.3
参照)。
b) 低温接着剤を用いる場合,溝内の試料に行きわたるのに必要な必要最小限の量とし,余分な接着剤は,
取付け作業後,試料の外面から取り除く。
c) Ic値の繰返し性を十分確保するために,試料はきちんと固定しなければならない。
d) 試料をマンドレルに固定するのに,はんだを用いてはならない。
7.5
1−マンドレル法の試料
1−マンドレル法の試料は,D.4による。
8
試験手順
試験手順は,次による。
a) データ収集段階では,試料を液体ヘリウム中に浸す。試料は,ヘリウムガスでゆっくり冷却し,それ
から液体ヘリウム浴にゆっくり装入するか,又は液体ヘリウム浴にゆっくり装入するか,若しくは最
初に液体窒素にゆっくり浸した後,液体ヘリウムに浸す。試料は,室温から液体ヘリウム(又は,液
体窒素)温度まで少なくとも5分間以上かけて冷却する。
b) クライオスタットは,Ic測定するために必要な環境を提供し,試料は液体ヘリウムに浸した状態で測
定されるものとする。液体ヘリウム浴は,冷媒温度が試験現場の大気圧に対して通常の液体ヘリウム
の沸点温度に近付くように操作されなければならない。
c) 液体ヘリウム浴の温度は,Ic測定する前後に必ず測定する。
d) クエンチ保護回路又はシャント抵抗を用いて試料を保護しない場合は,常電導状態になった試料が損
傷を受けないように,試料電流を流し過ぎないようにする。
e) 定速掃引法を用いる場合は,ゼロ電流からIcまでの掃引時間を10秒間以上とする。ステップ掃引法
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を用いる場合は,電流設定点間の電流掃引速度を,ゼロ電流からIcまで3秒間で掃引するよりも遅く
する。各電流設定点における電流のドリフトは,Icの1 %未満とする。
f)
直流磁界は,マンドレルの軸方向に加えることとする。磁界の強さとマグネットの通電電流との関係
は,あらかじめ測定しておく。また,マグネット通電電流は,Ic測定ごとに前もって測定する。
g) 電流と印加磁界との方向は,電圧端子間で試料にローレンツ力が内向きに働くように設定する。
h) 適正な試験条件の下での単調な電流増加中におけるU-I特性データを記録する。
i)
繰返し測定した結果が1 %以内の精度のとき,U-I特性データは有効となり,Icが決定されることと
する。このU-I特性データは,Icを決める基準電圧値以下の電圧に対して,通電時間にかかわらず安
定していなければならない。
j) U-I特性データにおける基線は,ステップ掃引法を用いた場合には,ゼロ電流で記録した電圧とし,
定速度掃引法を用いた場合には,Icの約0.1倍の平均電圧とする。
9
試験方法の精度及び正確度
9.1
Ic
Icは,次による。
a) 電源は,10 Hzから10 MHzまでの帯域幅で,Icでの周期的及びランダムな変動幅が±2 %未満の直流
電流を供給できるものとする。
b) 試料電流の測定には,少なくとも0.5 %の精度をもつ4端子標準抵抗を用いる。
c) U-I特性データの記録では,Uの測定結果を精確さ10 %まで,対応する電流を1 %の精度及び1 %
の正確度で許容する。
9.2
温度
温度は,次による。
a) 試験用クライオスタットは,Ic測定に必要な環境を提供するもので,液体ヘリウムに試料を浸して測
定する。試料温度は,液体と同じ温度と仮定する。液体温度は,圧力センサ又は適切な温度センサを
用いて±0.02 Kの精度で記録する。
b) 試料温度と液体ヘリウム浴温度との差は,極力小さくする。
c) クライオスタット内で測定されるヘリウム圧力を温度(T)に変換する場合は,ヘリウム温度と蒸気圧と
の関係(注記参照)から求める。圧力測定は,温度測定で要求される精度を確保するのに十分な正確
さで測定する。1 mを超える液体ヘリウム深さについては,ヘリウム液高の圧力に対する深さ補正が
必要となる。
注記1 液体ヘリウム深さをh,比重量をμHe(T)とすれば,液体ヘリウム圧力の変化はΔp=μHe(T)h
で与えられる。
注記2 ヘリウム温度と蒸気圧との関係は,次の文献に示される。
1) H.Preston-Thomas:“The International Temperature Scale of 1990 (ITS-90)”, Metrologia, 27
(1990) 3;27 (1990) 107 (Erratum)
2) 低温工学ハンドブック,低温工学協会編,(1993)113
9.3
磁界
磁界は,次による。
a) マグネットシステムの設定磁界は,電圧端子間の試料部分で,±1 %若しくは±0.02 Tのいずれかの
精確さ,又は±0.5 %若しくは±0.02 Tのいずれかの精度で,外部から印加できるものとする。
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b) 設定磁界の均一度は,電圧端子間の試料部分で,±0.5 %又は0.02 T以下のいずれかとする。
c) 設定磁界の周期的及びランダムな変動は,±1 %又は0.02 T以下のいずれかとする。
9.4
試料の支持構造
試料及びマンドレルの支持構造は,試料を適切に支持し,外部磁界の方向に対して試料の方向を適切に
保持するものでなければならない。試料支持具は,Icの繰返し測定において1 %の精確さが得られるよう
な適切な構造とする。
9.5
試料の保護
試料と並列にシャント抵抗又はクエンチ保護回路を用いる場合は,このシャント抵抗又は回路に流れる
電流を,Icにおいて全電流の0.2 %未満とする。
10 試験結果の計算方法
10.1 Ic基準
Icは,電界基準又は比抵抗基準を用いて決定する。ここで,比抵抗は,複合超電導線の全横断面を用い
て算出する(図1及び図2参照)。
a) 電界基準の適用
b) 比抵抗基準の適用
注記 Icを決定する電界基準の適用方法[図1 a)]及び比抵抗基準の適用方法[図1 b)]を示す。
図1−正常なU-I特性
9
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a) 電界基準の適用
b) 比抵抗基準の適用
注記 低電流域で直流領域として示されるカレント・トランスファー成分を伴うU-I特性曲線上で,Icを決定する場合
の電界基準の適用方法[図2 a)]及び比抵抗基準の適用方法[図2 b)]を示す。
図2−カレント・トランスファーを伴うU-I特性
a) 電界基準を用いる場合 電界基準値(Ec)を10 μV/m及び100 μV/mとして,Ic値を決定する。
100 μV/mの電界基準値でのIc値を正しく測定するのが困難な場合は,100 μV/m未満の電界基準で
代用するか,又は比抵抗基準を用いた測定を行う。
Icは,基線に対する電圧が基準電圧値(Uc)に相当するU-I特性曲線上の点に対応する電流として決定
する[図1 a)参照]。
c
cLE
U=
·················································································· (1)
ここに,
Uc: 図1 a)に示す基準電圧値 (μV)
L: 電圧端子間距離 (m)
Ec: 電界基準値 (μV/m)
b) 比抵抗基準を用いる場合 比抵抗基準値(ρc)を10−14 Ω・m及び10−13 Ω・mとして,Ic値を決定する。
Icは,次の式(2)による。
Icは,基線に対する電圧が比抵抗基準値に対応する基準電圧値(Uc)に相当するU-I特性曲線上の点に
対応する電流として決定する[図1 b)参照]。
S
L
ρ
I
U
/
c
c
c=
············································································ (2)
ここに,
Uc: 図1 b)に示す基準電圧値 (μV)
Ic: 図1 b)に示す電流 (A)
ρc: 比抵抗基準値 (μΩ・m)
S: 全横断面積 (m2)
c) カレント・トランスファーのある場合 カレント・トランスファー線は,基線からIcの0.7倍の電流
に相当するU-I特性曲線上の平均電圧に対して直線を引く[図2 a)及び図2 b)参照]。この直線にこう
(勾)配がある場合,それはカレント・トランスファーしたものと考えられる。Icが有効であるため
には,そのこう配は,0.3 Uc /Ic未満でなければならない。
ここで,Uc及びIcは,10 μV/m又は10−14 Ω・mの基準で決定した値とする。
10.2 n値(参考値)
n値は,Icが決定される領域近傍でlog V対log Iをプロットしたこう配とするか,又は10.1で決定した
二つの異なる基準値から求めた2個のIc値を用いて計算する。
n値を決定するために用いた基準値の範囲は,報告事項とする。
注記 A.7.2参照。
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11 報告事項
11.1 試料の表示
試験に用いた試料の識別のために,可能な限り次の事項を表示する。
a) 試料の製造業者名
b) 種類及び/又は記号
c) ロット番号
d) 原材料及びその化学組成
e) 線材の形状,線材の全横断面積,超電導フィラメント数,超電導フィラメント直径,超電導フィラメ
ントの体積率,銅対非銅部体積比,拡散バリヤー,安定化銅及びその他の基材,ツイストピッチ長及
びツイスト方向
f)
製造方法(ブロンズ法,内部すず法など)
11.2 Ic値に関する報告
Ic値及びIc値を求めるために用いた基準は,報告しなければならない。
11.3 試験条件の報告
次の試験条件を報告する。
a) 試験磁界及び磁界の均一度
b) 試験温度及び温度の正確度
c) 試験コイルの巻数
d) 電圧端子間距離及び試料の全長
e) 電流端子から電圧端子までの最短距離
f)
電流端子間の最短距離
g) 電流端子のはんだ付け部分の長さ
h) 試料固定方法及び固定に用いた材質の名称
i)
反応用マンドレル及び測定用マンドレルの材質
j)
反応用マンドレル及び測定用マンドレルの直径
k) 溝の深さ,形状,ピッチ及び角度
l)
反応熱処理条件
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附属書A
(参考)
箇条1から箇条10までの追加参考情報
A.1 序文
この附属書は,Icの測定値に重大な影響を及ぼす変動因子及び規格利用に当たっての注意すべき事項の
幾つかについて参考として記載する(附属書B参照)。
この規格は,銅対非銅部体積比(すなわち,安定化銅のNb3Snフィラメント及び拡散バリヤーを含めた
すべての構成基材に対する体積比)が0.2未満の線材の場合,低い磁界におけるU-I特性が安定しない場
合があるため適用しない。
この規格は,広範囲な超電導線の特性値を総括するために,元々1990年代半ばに書かれたものなので,
2000年代初めに開発された新しい高性能なNb3Sn線材をこの範囲に含めるものとする。一方,Icを増やし
安定性を減らす方向(低銅比,高電流密度,有効なフィラメント径及び大きな線径)に超電導線材の特性
値を特別に組み合わせて設計されることを予想していなかった。この話題は,責任ある分科会によって詳
細に議論され,次の統一見解になっている。この規格は,その適用範囲において有効であり,繰返し性の
あるI c値と箇条8に列挙したU-I特性データが変動しないことを重要な要求事項にしている。これらの高
性能なNb3Sn線材を検査するユーザは,この繰返し性とデータが変動しないという要求に合わせるために,
電流端子抵抗及び電流端子と測定用マンドレルとの界面付近での試料の損傷の監視及び調整を必要とする。
この規格は,試験現場の大気圧を操作して,通常の液体ヘリウム沸点温度に近付けた液体ヘリウムに試
料を浸して試験されることを要求している。通常の液体ヘリウム沸点温度以外の温度の液体ヘリウム中で
の試験,ガス中での試験又は真空中での試験は,この標準の範囲外である。
この試験方法に規定した試験条件に従えば,実際に利用される長い超電導線の最終的な品質評価に対し
ても,必要とされる精度を得ることができる。
A.2 試験方法
試験方法は,次の各項を参考にする。
a) この試験方法において,反応用マンドレルと測定用マンドレルとの両方を用意する。反応用マンドレ
ルに巻き付けた試料は,Nb3Snを形成するために700 ℃近傍で反応熱処理する。反応熱処理後,試料
を測定用マンドレルに移し替える。試料の変形を回避するため,両方のマンドレルは,同じ直径とし,
その上に同じらせん溝を備えることとする。
b) 例えば,試験磁界の上限(上部臨界磁界の0.7倍)は,温度4.2 K付近で17 Tとなる。
c) 試料の最小全長は430 mmで,これは次の要素の合計である。
− 電流端子のはんだ付け長さ(各々40 mm)
− 電流端子と電圧端子との間の距離(各々100 mm)
− 電圧端子間の最小距離 (150 mm)
d) この規格の目標精度は,試験機関相互の共通試験結果に基づいて設定したものである。過去の共通試
験結果(第1回及び第2回VAMAS共通試験及び日本国内共通試験)を用いて,Ic測定の精度に影響
を及ぼす多くの変数の公差を定式化した。試験機関相互の比較のための目標精度を,4.2 K近傍の12 T
における測定に対して3 %未満の変動係数(標準偏差をIc測定値の平均値で除した値の100倍)とし
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た。
e) 多くの測定値から得られる結果がどのように分布するかについても変動係数によって分かる。しかし
ながら,重大な系統誤差があるときは,二つの試験機関での測定値は,変動係数の2倍以上も異なる
場合もある。
f)
4.2 Kで12 Tを超える磁界におけるIcの測定のとき,予想され,かつ,許容される正確度は,磁界,
温度,ひずみ及び要求される電圧感度に対してIcが敏感に変化するので,変動係数が高くなる。この
ときの変動係数は,上部臨界磁界の0.7倍の磁界(4.2 Kにおいて約17 T)において5 %になる。
g) この試験方法において,Icの測定精度に影響する大きな要因の一つは,磁界の精確さであるが,磁界
の校正は難しいことから公差を更に厳しくするのは,現実的でない。
h) このような試験条件の遵守が難しい簡略化した試験(簡略試験)では,その精度は落ちるものの,こ
の規格を一般的な試験手順の指針として用いることもできる。
i)
簡略試験では,試験条件の範囲を広げることも許容されるが,厳密な共通試験及び性能検証では,試
験の容易さを目標とする精度との兼ね合いを考えたうえで厳密な試験条件を設定する必要がある。
j)
Nb3Sn試料に,外部ひずみがほとんどない場合(反応熱処理のままのひずみ状態)に対して,多少の
ひずみを与えるようなマンドレル材質を用いる測定では,一貫性のあるIc測定結果が得られるだろう。
しかし,これらの測定結果は,外部ひずみがほとんどない場合での測定結果とでは差が生じる。特に,
Ti-6Al-4V(質量分率6 %のアルミニウムと質量分率4 %のバナジウムとを含むチタン合金)製の測
定用マンドレルを用いる場合,その熱収縮が試料の熱収縮よりも小さいため,一般的にはわずかに張
力を負荷した状態でIcを測定することになる。しかしながら,Ti-6Al-4V製マンドレルを用いた国際
共通試験において得られた結果は,相互によい一致を示していることも事実である。ステンレス鋼製
マンドレルを用いた場合でも,VAMAS[3]及び共通試験[4]において極めてよく一致した結果が得られて
いる。
k) しかしながら,ステンレス鋼製マンドレルを用いる場合,その熱収縮が試料の熱収縮と極めて近いか,
又はわずかに試料の熱収縮よりも大きいため,マンドレルの厚さの設計,試料の締め付け及び試料の
固定に熟練が必要である。このようなマンドレル材質の選定は,許容範囲内であると考えられる。
l)
短尺の直線状の試料での測定は,試料の断面積が長さに比較して小さい場合に限り,簡略試験用への
適用を考えることができる。しかしながら,単純化のため,この試験方法には含めない。
m) 試料をマンドレルに無誘導巻き(バイファイラー)し,エポキシ樹脂で固定して測定する方法でも,
この試験の目標に近い精度が得られるが,この試験方法から除外する。無誘導巻き試料では,ローレ
ンツ力が試料のある長さにわたって試料をマンドレルから離れる方向に働くが,試料の動きを固定す
るのにシリコーン真空グリースでは不十分である。
n) 非強磁性のステンレス鋼マンドレルに,はんだを接着剤として用いて測定する方法は,簡略試験では
許容できるが,マンドレルに分流する電流の量を推定するのは難しく,特に,超電導性はんだを接着
剤として用いて,低い磁界で測定する場合は,定量が更に困難になる。
o) この試験方法は,長方形断面の試料に対しても適用できる。この場合,反応熱処理した試料を測定用
マンドレルに移し替える場合は,反応熱処理用も測定用もともに溝なしが望ましい。試料を移し替え
ない場合は,マンドレルにはV形ではなく角形の溝を備えることが望ましい。いずれの場合も試料を
測定用マンドレルに固定するためにエポキシ樹脂の使用を推奨する。
p) この規格に規定しなかった複合超電導線のIc測定方法については,今後,検討することとする。
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A.3 装置
A.3.1 反応用マンドレルの材質 反応用マンドレルの材質として,次のものを推奨する。
a) 反応熱処理のときに試料と融着しない限り,他の材質のものを使用してもよい。
b) しかしながら,材料の熱膨張係数は,試料線材の熱膨張係数に近いことが望ましい。
c) セラミック及びグラファイト
− グラファイト
− アルミナ
− ジルコニア
d) 表面処理した合金
− セラミック(又は炭素)で被覆したステンレス鋼
− 強く表面酸化したステンレス鋼
− セラミック(又は炭素)で被覆したTi-6Al-4V又はTi-5Al-2.5Sn(質量分率5 %のアルミニウムと
質量分率2.5 %のすずとを含むチタン合金)
A.3.2 反応用マンドレルの構造 反応用マンドレルの構造は,次のものを推奨する。
a) 例えば,直径1 mmの試料に対する5 %の曲げひずみは,20 mmの反応用マンドレルの直径に対応す
る。
b) 反応用マンドレル上の溝の形状は,V形が望ましい。角形の溝又は溝なしのマンドレルを使用する場
合は,注意が必要である。反応用マンドレルに溝を付けない場合,測定用マンドレルのピッチとほと
んど同じで,しかも一様なピッチを得るために試料はスペーサと共巻きする。
c) 7度のピッチ角は,24 mmのマンドレル直径に対して9 mmのピッチに相当する。
A.3.3 測定用マンドレルの材質 測定用マンドレルの材質は,次のものを推奨する。
a) この規格において,試料に負荷されるひずみは,0.03 %未満になるように制御する。0.03 %の熱収縮
は,4.2 K近傍12 TでのIc値を約2 %偏らせる。ひずみの一つの重要な原因は,液体ヘリウム温度ま
で冷却するときの試料と測定用マンドレルとの間の熱収縮率のミスマッチにある。試料断面における
構成要素の占積率に依存するが,Nb3Sn複合超電導線における室温から4.2 Kの範囲での代表的な熱
収縮量は,0.25 %から0.30 %である。
b) 測定用マンドレルの熱収縮量が試料の熱収縮量より小さい場合,試料には冷却によって張力が負荷さ
れる。この張力は,試料とマンドレルとの間のすき間によって緩和できる。この場合,冷却時に巻き
付けの緩みが一部解消されることを考慮する。一方,測定用マンドレルの熱収縮量が試料の熱収縮量
を超える場合,試料の緩みは巻き付け時の緩みに付加される。したがって,測定用マンドレル材の熱
収縮は試料に加わるひずみを最小限にし,冷却時に試料に残る緩みを取り除けるようなものを選択す
るべきである。
c) 表A.1に示すNb3Sn及び代表的な関連材料の熱収縮データに基づいて,測定用マンドレル材質を次の
ように推奨する。代替材質については,適合性を検討するためにあらかじめ注意深く簡略試験を行う。
− 推奨マンドレル材質
・ ガラス繊維の方向が試料に沿うような配置のガラス繊維エポキシ樹脂複合材料
・ 繊維の方向が管の軸に垂直となるよう板状の材料から作ったガラス繊維エポキシ樹脂複合管
・ 繊維を巻き付けた構造の薄肉ガラス繊維エポキシ樹脂複合管
− 代替材質
・ SUS316Lのような非強磁性ステンレス鋼で,絶縁層で覆われた又は覆われていないもの
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
・ 絶縁層で覆われた又は覆われていないTi-6Al-4V,ただし,この材料は4.2 K,2 T以下の磁界で
は,超電導性を示すため適用が制限される。
・ 絶縁層で覆われた又は覆われていないTi-5Al-2.5Sn,ただし,この材料は3.7 K,2 T以下の磁界
では超電導性を示すため適用が制限される。
− その他の材質
・ 非強磁性銅合金で,絶縁層で覆われたもの
・ セラミックを分散したエポキシ樹脂
・ アルミナセラミック
d) さらに特別なものとして,NEMA(米国電気製造協会)の標準ガラス繊維エポキシ樹脂である板材か
ら削り出したG10管を推奨する。第2次VAMAS共通試験では,この種のマンドレルを適用した。そ
の理由は,板材から適切に機械加工したG10管の熱収縮が,その幾何学的理由によってあまり変化し
ないこと及びNb3Sn試料の熱収縮に近いことによる。
e) ステンレス鋼製マンドレルは,マンドレル厚さの設計,試料の巻き締め及び固定に関して熟練した技
術を必要とする。
f)
Ti-6Al-4V製マンドレルを用いると,通常,わずかな張力下でIcを測定することになる。巻き付け時
の残留緩みが比較的大きい場合,すなわち,熱収縮が試料の熱収縮未満の材料,例えば,チタン合金
は冷却時の残留緩みを最小にする目的で適用できる。
g) 反応用マンドレルと測定用マンドレルとが同材質である場合,そのマンドレルは反応用と測定用の両
方に共用してもよい。この場合,反応熱処理後試料を反応用マンドレルから測定用マンドレルに移し
替える必要がない。しかしながら,反応熱処理後試料がマンドレルに融着しないように処置する必要
がある。この作業は,A.4.3に述べるように非常に注意を要する。1−マンドレルを用いる場合のマン
ドレルの材料,構造及び試料準備の詳細については,附属書Dに記載される。
h) 絶縁層で覆われていない導電性マンドレルを用いたときの漏れ電流は,適正な試験条件のもとでマン
ドレルに試料を付けたときと,付けないときとの電圧測定から推定することができる。試料を付けな
い場合の電流端子間の基線電圧に対する電圧降下を測定することによって,端子抵抗を含む漏れ電流
の流れる経路の抵抗が求められる。次に,試料を取り付けたときの電流端子間の電圧降下を先に求め
た経路抵抗で除することによって漏れ電流を求めることができる。
i)
もし,測定する超電導線が熱的に不安定であるならば,試験試料とマンドレルが並列回路となって導
電性のあるマンドレルを通じて大きなリーク電流が流れる可能性がある[5]。すなわち,正規の電圧端
子の外側にある超電導線の部分が,大きなリーク電流を生じながら,常電導状態に転移することにな
り,実際に試料を通じて流れる正味の電流を低下させ,誤解を招く結果になりやすい。このようなこ
とが生じているかどうかは,試料につながっている電流リード間の電圧を測定する診断用端子の電圧
をモニタしたり,記録したりすることによって,簡単に検出される。
A.3.4 測定用マンドレルの構造 測定用マンドレルの構造は,次のものを推奨する。
a) 反応用と測定用マンドレルとの直径の差は,0.5 %未満とする。直径で0.5 %の差は,試料に多くて
0.1 %のひずみを印加することになる[A.4.3 c)参照]。
b) 巻付け形のガラス繊維エポキシ樹脂複合管の厚さが薄い場合,管の厚さは6.3 c)の定義を満足するた
めに管半径の25 %未満が望ましい。
c) 測定用マンドレル上の溝は,V形が望ましい。角形の溝又は溝がないマンドレルを用いる場合,低温
接着剤又はエポキシ樹脂を用いて試料と接着してもよい(A.4.4参照)。
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d) 図A.1に示すように,電流端子は,円筒形の銅リングから作ることが望ましく,このリングの外径は,
試料のコイル内径とほぼ同じにして,曲げひずみを最小に抑える。
注記 ゼロ電圧用端子対は,接地ループ又はコモンモード電圧の検出に使用される。電圧測定用端子対(こ
こでは,説明を明確にするため,端子間距離は短く示してある。)とは別に,一組の端子対が図に示す
ように試料に取り付けられ,その一方が試料に,他方がゼロ電圧用端子対に接続されている。ゼロ電
圧用端子対は,電圧測定用端子対の寄生誘導電圧をシミュレートするために,小さな線材ループで構
成されている。この対で測定される電圧は,試料電流には依存せず,電流掃引速度の関数となるもの
で,もし,試料電流の関数として測定された場合は,別の要因があると考えられる。
図A.1−ゼロ電圧端子対を付けた試料マンドレルの構成
e) また,電流端子へ電流を供給する電流リード線は,試料両端部付近の熱発生を抑えるため,電流容量
の更に大きい超電導リード線を用いてもよい。
f)
超電導リード線は,銅リングに一部巻き付け,有効接触抵抗を小さくする。超電導リードのIcが試料
のIcを大幅に上回っている場合は,リード線を銅リング円周の90 %を超えて巻き付けることが望ま
しい。
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A.4 試料
A.4.1 反応熱処理用試料の取付け
反応熱処理用試料の取付けは,次を推奨する。
a) 比抵抗基準を用いる場合は,試料を取り付ける前に,試料の断面積を測定し,その値を使ってIcを決
定する。Icの決定には,断面積測定の精度は5 %で十分であるが,臨界電流密度(Jc)の決定が必要な場
合には,1 %の精度が望ましい。
b) クロムめっきのような被覆材料は,試料の最終熱処理前後で適切,かつ,注意深く処理しておく必要
がある。
c) コイル状試料は,巻き枠に巻かれた状態での曲がりぐせと同じ状態で取り付ける。
d) マンドレル上に試料を固定する別の方法として,孔に通す代わりにねじを用いてマンドレルの両端に
固定してもよい。
e) 内部すず法で作製した試料の端部は,試料の温度が反応熱処理開始時においてすずの融点以上に上昇
して,すずが流出するのを防止するために製造業者の指示に従って封止してもよい。端部は,炉の加
熱帯域の外部に引き伸ばしておく。また,端部は,十分熟練した作業者によって溶接封止してもよい。
f)
一般に,試料は,エタノール及びアセトンのような有機溶剤を用いて,きれいにふき取っておく。
A.4.2 反応熱処理
反応熱処理は,次を推奨する。
a) 製造業者の仕様書がない場合,時間及び炉の中の試料を置くべき空間における位置による温度の変動
は,ともに±5 ℃以内となるよう推奨する。
b) 特に指定されていない限り,おおよそ10−3 Pa (10−5 Torr)以下の真空又はおおよそ105 Pa (760 Torr)の高
純度不活性ガス雰囲気のもとで試料を反応熱処理させることを推奨する。
A.4.3 測定用試料の取付け
測定用試料の取付けは,次を推奨する。
a) 反応熱処理用マンドレル上のらせん溝中の試料を測定用マンドレルのらせん溝に移し替えるとき,曲
げひずみで試料に損傷を与えないように十分な注意をしなければならない。
b) 拡散によって試料と反応用マンドレルとの間に融着が生じている場合,試料を移し替えるとき,試料
に損傷を与える可能性が極めて大きい。したがって,反応用マンドレルから試料を移し替える前にマ
ンドレルへの融着状況を十分調べる必要がある。試料に大きな損傷を与えそうな重度の融着があるな
らば,試料は捨てなければならない。
c) 試料を軽く押さえて,反応用マンドレルからその中で試料が回るように取り出す。これは,マンドレ
ルから無理に試料を引っ張り出すことによって起こる巻き直径の増大を幾分でも緩和するものである。
この操作中に試料に付加されるひずみが約0.1 %を下回るようにすることが極めて重要である。これ
は,巻き直径DをΔDだけ増加し,線径をdとすると,次の式(A.1)の関係になる。
)
/
(
001
.0
Δ
2d
D
D<
·································································· (A.1)
d) 例えば,d=1 mm,D=40 mmとすると,ΔDは約1.6 mm未満になる。この操作は,手作業で熟練し
た作業者が注意深く実行する。試料の取出しが完了すれば,速やかに同様の操作で測定用マンドレル
に試料をねじ込む。
e) 反応熱処理用マンドレルから測定用マンドレルへ試料を移し替える作業は,可能な限り試料に損傷を
与えないように行う。一例として,らせん溝を付けた二つのマンドレルの端と端とを位相を合わせて
17
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固定すると実行できる。
f)
電流端子に複数周回(ターン)はんだ付けすると,ゆっくり減衰する磁界を誘導する。この磁界は,
外部磁界の設定値を変えたときに誘導電流によって発生したものである。
A.4.4 試料の固定
試料の固定は,次を推奨する。
a) 試料が動くと,早期のクエンチ(不可逆熱暴走)及び電圧ノイズを引き起こし,ついにはIc値の繰返
し性を悪くする。
b) 巻付け張力は,試料と測定用マンドレルとの間の熱収縮の差に依存するが,試料をマンドレルに保持
するのに効果的である。しかしながら,試料をマンドレルに固定するためにシリコーン真空グリース,
エポキシ樹脂などの低温接着剤の使用を推奨する。
c) 低温接着剤は,クエンチの可能性を減らすが,接着材の量が多過ぎると,試料から液体ヘリウムへの
熱の流れが妨げられ,クエンチを起こす場合がある。
d) 試料をしっかりと固定するためには,測定用マンドレルの表面は粗面仕上げで,かつ,清浄にし,ま
た試料表面をきれいにしておく必要がある。
e) 試料及び測定用マンドレルにはいろいろな種類があるので,ある決まった試料固定法だけを指定する
ことは実際的でない。
f)
測定用マンドレルの両電流端子の間で試料をはんだ付けすることは,漏れ電流の推定を困難にし,か
つ,クエンチのような不安定性が見掛け上抑えられ,試料にかかる熱収縮の効果を増大させるなどの
理由から,適用しない。
A.5 試験方法
試験方法は,次を推奨する。
a) 試料は,液体ヘリウム容器中のマグネットの中央に保持し,電流及び電圧リード線を室温から液体ヘ
リウム温度の部分まで配線するため,試料を支持するジグを用いる。
b) 試料の電圧リードは,発生する熱起電力を減らすために,液体ヘリウムから室温まで継ぎ目がない銅
線を用いる。また,室温部分のすべての接続箇所は,等温に保つ。液体ヘリウムに浸されている接続
箇所は,一定温度になっているか注意を要する。
c) 試料の冷却速度は,測定したIcに影響を及ぼす。固定用にグリースを用いる場合,その凝固温度以下
になるまで実質的に十分な機械的強度が得られない。その結果,試料とマンドレルとの間の固着強度
は冷却中変化することになり,試料とマンドレルとの間の熱収縮差も変化する。このことは,別の冷
却速度で冷却した試料とは機械的に異なった状況にすることになる。
d) 試料が常電導状態に転移するとき試料電流によって生じる損傷を避けるために,クエンチ保護回路又
はシャント抵抗を必要とすることがある。
e) 定速掃引法では,誘導電圧及び試料の発熱を考えて,ゼロからIcまで電流を増やす時間を10 秒間以
上とする。掃引時間が10秒間の短い場合,掃引速度,電圧感度,試料のクエンチ履歴,及び外部磁界
の履歴に依存して変化するこの誘導電圧は,マンドレルへのカレント・トランスファーによる電圧の
ように現れ[6],9.1に規定するIc測定の有効性の制約を受けることになる。試料がクエンチした後又は
外部磁界が変化した後では,10秒間程度の速いサイクルで電流をIcまで流してゼロに戻すことによっ
て,その後の測定では,この誘導電圧の影響は緩和される。
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H 7302:2009 (IEC 61788-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
f)
ステップ掃引法では,定速掃引法に比べて,各設定電流まで速い掃引速度が許容される。しかし,速
く電流を掃引した後で,短い静置時間が必要とされる。この静置時間は,掃引速度,電圧感度,試料
のクエンチ履歴,及び外部磁界の履歴に依存するが,3秒間は必要である。試料がクエンチした後又
は外部磁界が変化した後で,速いサイクルで電流をIcまで流してからゼロに戻すことによって,その
後の測定では,誘導電圧の影響は緩和される。
g) 予想される基準電圧に比較してシステムノイズが大きい場合は,定速掃引法では,データが平均化す
るようにゼロからIcまで掃引する時間を150 秒間よりも大きくすることが望ましい。この場合,電流
端子の熱容量及び/又は冷却面積を増やし,長時間の測定による熱の発生を抑えるような配慮が必要
となる。ステップ掃引法では,U-I特性データについては離散的であるが,各電流値に平均化された
データであるという特徴がある。
h) 試料電流が時間とともに変化すると電圧端子に正又は負の電圧が誘導される。この望ましくない電圧
の発生原因は,電流掃引速度にその電圧が比例することから確認できる。もし,この電圧がUcと比較
して顕著であれば,電流掃引速度を低くするか,電圧端子と試料とによって形成されるループ面積を
減らすようにするか,又はステップ掃引法を利用する。
i)
電流が増加中は,時間とともにローレンツ力が増加するので間欠的な滑り又は連続した試料の動きが
生じることに注意する。もし,これを原因として発生する電圧がUcと比較して顕著であれば,ローレ
ンツ力の方向が内向きであるかを確認するか,試料支持方法を改善するか,又はステップ掃引法を利
用する。
j)
有効なU-I特性データが得られない場合は,試料のクエンチ保護の方法を改善することによって正し
くIc値の繰返し性が得られるようにする。改善方法は,試料支持方法又は熱的安定性(電流端子を長
くするか,試料表面の接着剤を少なくするなどによって)を改善することが望ましい。
k) 基線電圧には,熱起電力電圧,オフセット電圧,接地ループ電圧,コモンモード電圧などが寄与して
いる。これらの電圧は,個々のU-I特性データを記録している間,比較的安定している。熱起電力電
圧及びオフセット電圧のわずかの変化は,U-I特性データの測定の前後に基線電圧を測り,また直線
的経時変化を仮定することによって,ほぼ取り除くことができる。もし,基線電圧の変化がUcに比べ
て顕著であれば,試験装置の構成を変更する必要がある。
l)
接地ループ及びコモンモード電圧の変化は,試料電流とは明確な相関関係はもたず,もし,この電圧
が大きければ,変化を抑える手立てが必要である。これらの電圧が大きく,かつ,重畳した場合,カ
レント・トランスファーによる電圧との区別がつきにくくなるため,分流の程度によっては測定の有
効性が制限される。コモンモード電圧の問題の有無をチェックするには,試料電流の関数としてゼロ
電圧用端子対(図A.1参照)による電圧を測定する。この対で測定される電圧は,試料電流には依存
せず,電流掃引速度の関数となるもので,もし,試料電流の関数として測定されれば,別の要因があ
ると考えられる。
A.6 試験方法の精度及び正確度
試験方法の精度及び正確度は,次を推奨する。
a) 自己磁界効果の大きさの試料電流,コイル直径,ピッチなどに対する複雑な依存性は,検出できる程
度の系統的誤差に影響を及ぼす。ほぼ同一の試料に関して試験機関間で定めた目標精度に対しては,
自己磁界効果はそれほど影響するとは考えられない。もし,必要であれば,試験報告に記載されたデ
ータを基にIcに対する自己磁界効果を見積もることは可能である。自己磁界効果に関するこれ以上の
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H 7302:2009 (IEC 61788-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
検討は,附属書Cを参照。
b) 試料の溶断などを避けるため試料電圧があらかじめ設定された値を超えたときに,試料電流をゼロに
リセットするクエンチ保護回路がIc測定には,必要になることがある。
c) 試験機関でのIc測定システムの総合的な精度を評価する任意試験方法として,標準試料を入手し検討
する方法がある。
d) Nb3Sn線のIc測定のとき,Nb-Ti線における場合に比較して機械的ひずみに起因する技術的な困難さ
が加わる。個々の実験室的方法における総合的な精度及び正確度を評価するために機関間試験を推奨
する。
A.7 試験結果の計算方法
A.7.1 Ic基準
用途によっては,非銅部断面積が比抵抗基準に用いられる。外部安定化線の場合,この面積は,通常,
重量法によって銅対非銅部断面積比を測定して決定する。別な方法として,写真解析法によって決定する
こともできる。対応する標準試験方法として,IEC 61788-12がある。
IEC 61788-12,Superconductivity−Part 12: Matrix to superconductor volume ratio measurement−
Copper to non-copper volume ratio of Nb3Sn composite superconducting wires
注記 対応日本工業規格:JIS H 7308 超電導−超電導体に対するマトリックス体積比試験方法−
ニオブ3すず複合超電導線の非銅部に対する銅部体積比 (IDT)
10−14 Ω・mの抵抗基準を採用する場合は,信号対雑音比を大きくするため,電圧端子間の距離をより
長くし,例えば,500 mm以上にする必要性が生じる場合もある。
もし,判定基準に比べて大きな分流による電圧が発生する場合は,電流端子と電圧端子間距離とを大き
くする。
A.7.2 n値(参考値)
n値は,次による。
a) Ic近傍の超電導体のU-I特性は,通常,経験的にべき乗則で近似できる。
n
I
I
U
U
)
/
(
0
0
=
········································································ (A.2)
ここに,
U: 試料電圧 (μV)
U0: 基準電圧 (μV)
I: 試料電流 (A)
I0: 基準電流 (A)
n値: べき指数で,U-I曲線の傾きを反映する。
b) log U対log Iの関係は,Icを決定するための電界基準Ec =10 μV/m近くの電流領域においても必ずし
も直線的でなく,したがって,n値を決定するための判定基準範囲を報告する必要がある。この範囲
は,10 μV/mから100 μV/m又は10−14 Ω・mから10−13 Ω・mとするのが一般的である。
c) 決定されたn値の変動係数は,20 %という大きな値になる場合があるので,n値を決める試験方法は
任意事項とする。
d) n値の変動に影響するその他の因子として,次のものがある。
− 電圧ノイズ
− 電流リップル
− 試料の冷却(使用する接着剤の量)
− 磁界のリップル及び均一度
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− 試料電流の自己磁界
− 試料に対する熱こう配
表A.1−Nb3Sn超電導体及び関連材料の熱収縮データ
熱収縮
%
材質
温度
K
273
200
150
100
50
20
10
4
Nb3Sna)
0
0.055
0.08
0.115
0.135
0.15
0.15
Nb3Snb)
0
0.05
0.08
0.11
0.13
0.15
0.15
Nb3Sn
複合線a)
0
0.12
0.17
0.23
0.26
0.27
0.27
OFHC銅
焼鈍材c)
0
0.118
0.18
0.252
0.288
0.295
0.295
G10,
繊維に平行方向d)
0
0.09
0.13
0.175
0.205
0.215
0.220
0.225
G10,
繊維に垂直方向d)
0
0.28
0.428
0.54
0.62
0.64
0.65
0.655
ステンレス鋼
AISI SUS316c)
0
0.111
0.173
0.23
0.262
0.265
0.265
0.265
ステンレス鋼
AISI SUS304c)
0
0.11
0.172
0.23
0.261
0.264
0.264
0.264
Ti-6Al-4V合金c)
0
0.062
0.10
0.132
0.15
0.152
Ti-5Al-2.5Sn合金c)
0
0.061
0.096
0.128
0.147
0.152
0.152
0.153
Cu-5Sn合金c)
0
0.118
0.182
0.252
0.291
0.297
0.297
0.297
Cu-13.5Sn合金a)
0
0.12
0.22
0.28
0.32
0.33
0.33
注記 各値は,273 Kのときをゼロとしている。
注a) A. G. Rupp, Filamentary A15 Superconductors, edited by M. Suenaga and A. F. Clark, Plenum Press, NY (1980)
155
b) J. W. Ekin, et al. Technical report, NBSIR 86-3044, NBS (1986)
c) Handbook on Materials for Superconducting Machinery, NBS (1974, 1976)
d) A. F. Clark, et al. IEEE Trans. on Magnetics, MAG-17 (1981) 2316
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H 7302:2009 (IEC 61788-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
Nb3Sn複合超電導線のひずみ効果
a) Nb3Sn超電導体は極めてもろく,その電気的性質はかなり小さな機械的ひずみによって不可逆的に変
化する。Nb3Sn複合超電導線のIcが機械的ひずみに敏感であることもよく知られている。図B.1に,
Nb3Sn複合超電導線におけるIcの典型的な1軸引張ひずみ依存性を示す。1軸引張ひずみに加えて,
Nb3Sn複合超電導線は曲げ,ねじり及び横方向ひずみに対しても敏感である。
b) 典型的なNb3Sn複合多しん超電導線は,拡散障壁を介した安定化銅で囲まれたブロンズ母相中に
Nb3Snフィラメントを埋め込んだものである。フィラメントは,他の複合基材に比較して異なった熱
収縮特性をもっている。したがって,複合超電導線が熱処理と冷却とを経るとフィラメントに予ひず
みがかかる。
c) 4.2 Kの自然な状態におけるNb3Sn複合超電導線の予ひずみ又は潜在的ひずみは,他の基材に対する
超電導体の比率,とりわけ線材断面における銅と拡散障壁との割合によって影響を受ける。ここでい
う自然な状態とは,試験試料に何ら外部から付加的なひずみを与えないことを意味する。自然な状態
で測定したIcは,線材の潜在的な特性を与えることになる。
d) 自然な状態で得たIcに近いIcデータを得るために,測定用マンドレルと線材との熱収縮差を最小にす
る(すなわち,付加的ひずみを最小にする)ことが望ましい。Nb3Sn複合超電導線は,ひずみに極め
て敏感であるため,マンドレルの熱収縮及び線材の取付方法によって測定結果が変動する。
e) 実際,線材は,それを支持する水準がかなり異なるもの,電磁力に起因する応力があるもの又はない
もの様々なスタイルの巻線に適用する。例えば,双極マグネットに適用すれば,ソレノイド形マグネ
ットに比較してかなり異なった応力条件になる。したがって,マグネットの設計者は,特定のマグネ
ットの仕上がり特性を精度良く予測するために,Icのひずみ依存性に関するデータを利用しなければ
ならない。
f)
巻線内部における運転状態での線材のIc及びマグネットの仕上がり特性は,次のようなデータを使っ
て評価する。すなわち,ある種類の測定用マンドレルを用いた線材のデータ,線材内部の潜在的ひず
みの見積値及びIcのひずみ依存性に関するデータである。予ひずみは,実測又は,複合基材の幾何学
配置及び特性値を使った計算のいずれかであらかじめ知ることができる。ひずみ依存性は,Ic対ひず
みを測定する試験設備の能力の範囲で測定されるべきものである。
22
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注記 Icは,Nb3Snフィラメントの予ひずみに対応する引張ひずみ近傍で最大値に到達し,それ以降ひずみの増大とと
もに急速に低下する。ひずみ効果比率の影響は,高磁界ほど大きくなる。これとは対照的に,Nb-Ti合金複合超
電導線のIcは,4.2 K,7 Tにおける1 %の付加的ひずみに対する影響は4 %に過ぎない。超電導線のIcのひず
み依存性は,Nb3Sn化合物の化学量論性及び結晶配列,並びに複合体の幾何学的配置によって変わる。
図B.1−典型的なNb3Sn複合超電導線における種々の磁界に対するIcの1軸引張
ひずみ依存性[7]
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附属書C
(参考)
自己磁界効果
a) コイル状の試料で通電電流が大きいときは,試料自身が発生する磁界のためIcの測定値に自己磁界の
効果が含まれるようになる。この自己磁界は,印加された磁界とは別に発生するため,試料が受ける
磁界の合計は,導体の断面部位によって,加えられる外部磁界よりも大きくなる。試験機関によって
は,この余分の自己磁界の効果を,次の方法によって,近似的に補正している場合もある。
b) 試験機関間でIc測定値を比較する場合は,個々の機関の試料がほとんど同程度の自己磁界の影響を受
けるので,Icデータに対する自己磁界補正は,実際上不必要である。測定用マンドレルの直径及びピ
ッチによる自己磁界効果の違い(これは,試験機関間の比較で管理できる。)と印加磁界の均一度との
違いの程度は,試験機関間に存在する。試験機関間の比較では,試料は,ほとんど同一であるので,
自己磁界効果の補正をする必要はほとんどない。自己磁界効果の補正を施したIcデータをもった機関
と施さないデータをもった機関とがデータの比較をした場合,これは比較不能となる。したがって,
試験機関間の比較では,Icの自己磁界補正はしないほうがよい。
c) しかしながら,このことは異なる直径をもつ線材の臨界電流密度(Jc)を比較する場合には,自己磁界の
補正が必要であり,有用である。異なる直径の線材のJcを比較する場合には,導体の受ける自己磁界
は異なるため補正されなければならない。自己磁界補正をすれば,異なる直径をもつ線材のJcが比較
可能なデータとなる。近似的な補正は,長い直線状の線材の磁界を基準として,次の式(C.1)で表され
る。
・
=
)
π
2(/
μ0
SF
r
I
B
································································· (C.1)
ここに,
BSF: 近似的な自己磁界 (T)
μ0: 真空の透磁率 (4π×10−7 H/m)
I: 電流 (A)
r: 線材の半径 (m)
この等式は,次の式(C.2)のようにも表すことができる。
d
I
B
/
)
10
4(
4
SF
・
=
−
×
································································ (C.2)
ここに,
BSF: 近似的な自己磁界 (T)
I: 電流 (A)
d: 線材の直径 (mm)
d) 通電電流から決めたJcと直流磁化測定から計算によって求めたJcとの差異を解明したり,またJcの最
適化の研究において,直径の異なる線材のJc測定値を補正したりするため,上記の近似的な補正を用
いる。さらに,この補正方法は簡単で,応用範囲が広く,また,有効性が実証されていることから,
線材及びケーブルのIc測定値と磁気特性との相関を立証する目的にも用いられる。式(C.1)による近似
では,銅対非銅部体積比,マトリックスの比抵抗,フィラメントのツイストピッチ,フィラメントの
配列,フィラメント間の電流再配分,測定用マンドレルの直径,らせんピッチなどからの影響は考慮
されていない。
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e) この近似的補正法は,測定パラメータが自己磁界効果を強めない限り,それが意図している目的のた
めには,十分正確である。しかしながら,試験機関間の比較には,正確であるとはいえず,機関間で
異なる幾つかのパラメータについて補正しようとしても,その補正は極めて複雑で,その複雑な補正
をしてもなおかつ十分な正確度は得られない。この近似的自己磁界補正は,測定用マンドレルの直径
及びらせんピッチによる影響を考慮していないので,これらのパラメータが,Jcの比較に用いるIc測
定値に与える影響度を減らす手段を講じなければならない。このことは,Icが大きい(300 Aを超える)
試料又はIcの磁界依存が大きくなる低磁界(3 T未満)での測定では,7度に近いピッチ角で大きい直
径(30 mmを超える)の測定用マンドレルを用いるべきであることを意味している。指針をよりはっ
きりさせるためには,これらの影響について更に研究が必要である。通電によるIcは,自己磁界なし
では測定不可能で,曲げひずみのIcに及ぼす影響も,多くの実験で自己磁界効果と関係することが確
認されているので,自己磁界効果の研究には難しさが伴う。
f)
試験機関間の比較で自己磁界の影響を減らす簡便な方法としては,測定用マンドレルの直径及びピッ
チを標準化することである。しかし標準化しようとすると,パラメータの選択として最小直径に偏り
がちで,このことは機関間の比較にはふさわしいが,簡略試験では最小直径に決めることは実際的で
ない。また,この規格の適用対象となる各種導体群に適する測定マンドレルを一つだけ決めることは
できない。その理由の一つは,最も大きい導体に適するマンドレルの直径は,多くの試験機関で使わ
れているマグネットの有効内径(測定空間)より大きくなることである。
g) 自己磁界効果をある程度規格化するのに用いられるもう一つの方法は,双方向に電流を流して測定し
たIcを平均化することである。これによって,測定用マンドレルの直径と巻ピッチとの影響を減らす
ことができる。しかしこの規格では,逆方向(ローレンツ力がマンドレルから離れる方向)に電流を
流さないので,この方法は適用しない。
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附属書D
(規定)
1−マンドレル法
D.1 適用
1−マンドレル法におけるマンドレルの材質,その構造及び試料についてを,この附属書で規定する。
D.2 マンドレルの材質
マンドレルは,絶縁材料,又は絶縁層をもつ若しくは絶縁層のない導電性非強磁性の材料で製作され,
次の要求事項を満足しなければならない。
a) 反応熱処理中に試料と拡散接合しない材料である。
b) 室温から反応熱処理温度における熱膨張係数が試料の熱膨張係数と近い材料である。
c) 室温から測定温度まで冷却したときに試料に発生する総合ひずみが±0.03 %以内の材料である。
次の材料が推奨される。上記要求条件が満たされるのであれば,他の材料を使用することに制限はない。
− セラミック(又はカーボン)が被覆された非強磁性ステンレス鋼
− 表面を十分に酸化処理された非強磁性ステンレス鋼
− セラミック(又はカーボン)が被覆されたTi-6Al-4V又はTi-5Al-2.5Sn
典型的な非強磁性ステンレス鋼は,SUS304L又はSUS316Lである。また,Ti-6Al-4V及びTi-5Al-2.5Sn
は,それぞれ4.2 K,3.7 Kの温度で2 T以下の磁界で超電導状態になるので注意する。
D.3 マンドレルの構造
マンドレルの構造は,次による。
a) 試料をマンドレルに巻き付けたときに発生する曲げひずみが5 %未満になるように,マンドレルの直
径は,十分な大きさでなければならない。
b) マンドレルの厚さは,マンドレルへの漏れ電流がないように十分薄くなければならない。また,マン
ドレルへの漏れ電流は,試料の電流がIcに到達したときに全電流の0.2 %未満でなければならない
(9.5参照)。
c) マンドレルには,試料を巻き付けるためのらせん溝があってもなくても構わない。らせん溝がある場
合,溝のピッチ角度は7度未満とする。また,溝の深さは,少なくとも試料の直径の半分とする。
なお,溝の形状はV字形が望ましい。
d) 四角溝のマンドレル又は溝のないマンドレルを使用するときは,注意が必要である。溝のないマンド
レルを使用するときは,試料は一定の巻ピッチを確保するためにスペーサと共巻しなければならない。
e) マンドレルと電流端子との境界部に応力集中が発生しないように,電流端子をしっかりとマンドレル
に固定する。
f)
一般に,電流端子は,図A.1に示すような円筒状の銅リングが使用される。銅リングの外径は,試料
の曲げひずみを最小にするためにコイル巻きにされた試料の内径とほぼ等しくしなければならない。
g) 次に本体の6.4 c)及び6.4 d)に戻る。
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D.4 試料
D.4.1 試料の固定
試料の固定は,次による。
a) 試験試料には,接合又はつなぎ合わせ部があってはならない。
b) Icの決定に比抵抗基準を適用する場合,試料の全断面積(S)は5 %の精度で決定する。
c) 試料は,その先端を曲げて電流端子の小さい孔を通してマンドレル上に保持する。又は,同等の方法
で固定しなければならない。
d) 試料は,ほとんど張力ゼロ(引張ひずみとして0.1 %未満)でマンドレル上の溝又は巻ガイドに従っ
て巻かなければならない。これによって接触圧力が最小となり,拡散による融着が防止される。
e) 試料をマンドレルに巻き付けるとき,試料に付加的なねじりを与えてはならない。
f)
試料をマンドレルに巻き付けた後,試料の先端を曲げてもう片方の電流端子の小さい孔を通してマン
ドレル上に保持する。又は,同等の方法で固定しなければならない。
g) 試料は,汚染の影響を避けるためにあらかじめ洗浄する。
D.4.2 反応熱処理
反応熱処理は,線材製造者の仕様に基づいて実施される。仕様には許容誤差限界を含むものとし,それ
を超えてはならない。熱処理炉の試料装入空間の温度変動は,これらの限界を超えないように制御する。
D.4.3 測定用試料の取付け
測定用試料の取付けは,次による。
a) 反応熱処理後,試料の片方の固定端部を切断し,端部をわずかに回転させて試料とマンドレルとの拡
散融着がないことを確認する。
b) 試料の固定した側の端部を電流端子リングにはんだ付けする。試料がマンドレルの溝及び巻ガイドの
中にしっかりと収まるように,既に固定した側の端部から始めて試料の全長にわたってなぞる。次に,
切断した側の試料の端部を電流端子リングにはんだ付けする。
c) 電流端子にはんだ付けする部分の最小長さは,40 mm又は線材直径の30倍の長さのいずれかの短い
方を超えるものとする。各電流端子には,3ターン以上は試料をはんだ付けしない。
d) 電流端子と電圧端子との最短距離は,100 mmを超えるものとする。
e) 電圧端子を試料にはんだ付けする。試料と電圧端子とで構成される面積及び通電電流による相互イン
ダクタンスを最小とするために,図A.1に示すように電圧端子引き出し線のよじっていない部分を試
料に沿わせて配線する。
f)
電圧端子間距離(L)は,5 %の精度で測定し,その長さは150 mmを超えるものとする。
g) 7.4に戻り,処置を完了させる。
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H 7302:2009 (IEC 61788-2:2006)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] IEC 60050-121,International Electrotechnical Vocabulary−Part 121: Electromagnetism
[2] JIS H 7301 超電導−第1部:臨界電流の試験方法−ニオブ・チタン合金複合超電導線
注記 対応国際規格:IEC 61788-1,Superconductivity−Part 1:Critical current measurement−DC critical
current of Nb-Ti composite superconductors (IDT)
[3] KIRCHMAYR, H., SIDDALL, MB. and SMATHERS, DB. Cryogenics, Vol. 35, VAMAS Supplement, 1995,
pp. S93-S94
[4] ITOH K., TANAKA Y. and OSAMURA K., in Proc. of the 6th ICEC/ICMC, Kitakyushu, Japan, Elsevier
Science, 1996, pp. 1787-1790
[5] GOODRICH, Loren F., WIEJACZKA, Julie A., and SRIVASTAVA, Ashok N., IEEE Trans. On Appl.
Supercond., 1995, Vol. 5 (3), pp. 3442-3444
[6] GOODRICH LF. and STAUFFER, TC. Advances in Cryogenic Engineering, 2002, Vol. 48B, pp. 1142-1149
[7] VAMAS technical working party for superconducting materials, Cryogenics, Vol. 35, VAMAS Supplement,
1995, pp. S65-S80. See also KATAGIRI, K., OKADA, T. WALTERS, CR., EKIN JW. ibid. pp. S85-S88