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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7204-1995 

水素吸蔵合金の水素化熱測定方法 

Method for measuring the heat of hydriding reaction of 

hydrogen absorbing alloys 

1. 適用範囲 この規格は,水素吸蔵合金の水素化熱を熱量計で求めるための測定方法について規定する。 

備考1. この方法は,脱水素化熱の測定に適用してもよい。 

2. 水素化熱の測定は,熱量計による以外に,vanʼt Hoffの式を用いる方法がある。 

3. 熱量計では,単位水素量当たりの反応熱が測定できる。 

4. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS H 7003 水素吸蔵合金用語 

JIS H 7201 水素吸蔵合金の圧力−組成等温線(PCT線)の測定方法 

JIS K 0512 水素 

JIS Z 8801 試験用ふるい 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7003によるほか,次による。 

(1) vanʼt Hoffの式 気相−固相間反応における水素吸蔵平衡圧の温度変化から水素化熱を算出する式 

(2) DTA曲線 試料及び基準物質を同一の熱的条件下におき,調整された速度で,両者の温度を変化させ

ながら,両者間の温度差を試料の温度の関数として測定する方法で得られる曲線で,ここでは,熱電

対起電力−時間図の曲線を用いる。 

(3) 等温ベースライン 双子形熱量計の温度を一定に設定し,定常状態になった後に得られるDTA曲線 

(4) DTA面積 測定されたDTA曲線の図で等温ベースラインとDTA曲線とで囲まれた面積 (V・s) 

(5) 熱等量 双子形熱量計の校正実験で,ジュール熱とDTA面積の間に成立する比例定数 (J/V・s) 

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H 7204-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3. 測定装置 測定装置は,JIS H 7201の4.(測定装置)によるほか,次の各部分から構成する。測定装

置の基本構成図を図1に示す。 

図1 測定装置の基本構成 

(1) 双子形熱量計 双子形熱量計は,試料管,感温板,ヒートシンク,熱電対,マイクロヒータで構成し,

熱等量が測定できる構造とする。 

なお,双子形熱量計の概念図を図2に示す。 

図2 双子形熱量計の概念図 

(1.1) 試料管 試料管は,2本用い同質材同形状の金属管で,一本は対比用空管,他の一本はマイクロヒ

ータを設置した試料充てん(填)用管とし,互いにガス管に接続する。 

(1.2) 感温板 感温板は,同質材同形状の金属製で,試料管と均一に接触させる。 

(1.3) ヒートシンク ヒートシンクは金属製で,その熱容量は,感温板の熱量の変化に影響を与えないよ

うに充分に大きいものを用いる。 

(1.4) 熱電対 熱電対は,充分に起電力が高く,応答性の良いものとする。 

H 7204-1995  

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(1.5) マイクロヒータ マイクロヒータは,次の特性をもたなければならない。 

(a) 水素ガスと反応しないものを用いる。 

(b) 真空,水素ガス加圧の繰返し及び水素化による試料膨張に耐える構造とする。 

(c) 試料の量に応じた容量のものを用いる。 

(d) 反応熱による温度上昇に耐えるものとする。 

(e) 試料と電気的に絶縁できる構造とする。 

(f) 電源は,直流安定化電源を用いる。 

(2) 記録系 記録系は,ジュール熱,DTA面積が高精度で求まるものを用いる。 

(3) 恒温槽 恒温槽は,JIS H 7201の5.3(機器の精度)による。 

4. 測定準備 

4.1 

試料 試料は,JIS H 7201の5.1(試料)によるほか,次によって準備する。 

(1) 試料の粉砕 試料は,測定直前に粉砕し,JIS Z 8801に規定する目開き500μmの網ふるいを全通する

まで粉砕する。 

(2) 試料の量 試料の量は,マイクロヒータが埋まる量とする。 

(3) ガスの純度 水素化熱測定において使用するガスの純度は,次による。 

(a) 水素ガスの純度は,JIS K 0512に規定する3級又はそれと同等以上とする。 

(b) ヘリウムガスの純度は,99.99%以上とする。 

4.2 

試料の前処理 試料の前処理は,JIS H 7201の5.2(試料の前処理)による。 

5. 測定方法 

5.1 

水素圧の設定 試料のPCT線を,JIS H 7201の6.(測定方法)によって測定し,その結果に基づい

て,水素化熱測定時の水素圧を設定する。 

5.2 

双子形熱量計の校正 双子形熱量計の校正は,次の熱等量の測定方法による。 

(1) 熱等量は,反応熱測定温度で測定し,測定温度は恒温槽で調整する。 

(2) 試料管内のヘリウムガス置換は,1分間真空排気を行い,0.1〜0.2MPaのヘリウムガスを導入し,1分

間保持する。これを3回繰り返す。測定ヘリウムガス圧は,5.1で求めた水素圧と同等とする。 

(3) 測定装置が定常状態に到達後,昇温前(ジュール熱投入前)の等温ベースラインの位置をDTAレコー

ダに記録し,マイクロヒータに定電流で所定の時間通電し,ジュール熱投入後のDTA曲線を記録する。 

(4) ジュール熱投入中にマイクロヒータの電圧が1%以上変化するときは,電圧をレコーダに記録し,ジ

ュール熱を算出する。 

(5) ジュール熱投入後のDTA曲線は,昇温前(ジュール熱投入前)の等温ベースラインの位置に戻るまで

記録し,図3のDTA面積S0を求める。 

(6) 異なる投入ジュール熱について,(4)〜(5)を3〜5回繰り返す。 

(7) 各測定ごとに6.4の式(3)によって,熱等量α (J/V・s) を求め,それらの算術平均値を算出し,本測定の

熱等量平均値αとする。 

備考 DTA曲線が時間軸に平行になったとき,熱量計は定常状態に到達したと判断する。 

5.3 

水素化熱測定方法 水素化熱測定は,次による。 

(1) 反応系内を真空排気処理してから,活性化処理を再び行い,水素吸蔵合金の反応性を確認する。 

(2) 恒温槽は,所定の測定温度に保持し,脱水素化する。 

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H 7204-1995  

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(3) 測定装置が定常状態に到達した時点で,昇温前の等温ベースラインの位置をDTAレコーダに定める。 

(4) 図1において,蓄圧器を含めた弁I1〜弁I4間に所定の圧力Pdに水素ガスを充てん(填)する。 

(5) 弁I4を開き,試料に水素ガスを吸収させ,水素化熱のDTA曲線を記録する。 

(6) 水素化熱のDTA曲線は,昇温前の等温ベースラインの位置に戻るまで記録し,図3のDTA面積Sを

求め,更に測定終了時の水素ガス圧Prʼ を記録する。 

備考 DTA曲線が昇温前の等温ベースラインの位置に戻ったとき,水素化反応は平衡状態に到達した

と判断する。 

図3 DTA曲線 

6. 計算 

6.1 

PCT線図 1回の測定ごとの対合金質量百分率 (mass%) の変化量⊿W又は水素と合金の原子数比の

変化量⊿ (H/M) は,JIS H 7201の7.(計算)の計算式によって算出する。 

6.2 

合金中の最終水素量 合金中の最終水素量nの計算式は,式(1)による。 

d

d

r

r

r

r

r

r

d

d

d

T

V

T

V

p

T

V

p

T

V

p

n

=R1

 ········································ (1) 

ここに, 

n:合金中の最終水素量 (mol H2) 

R:気体定数 (8.314J・mol−1・K−1) 

Vd:蓄圧器を含む測定系室温部分の容積 (cm3) 

Vr:測定系試料温度部分の容積 (cm3) 

Td:測定系室温部分の温度 (K) 

Tdʼ:DTA測定終了時の測定系室温部分の温度 (K) 

Tr:試料温度(恒温槽の温度) (K) 

Pr:温度Td,試料温度Tr及び弁I4を開いた状態で,反応前の定常

状態にあるときの水素ガス圧 (MPa) 

Prʼ:弁I4を開き,DTA測定終了時の水素ガス圧 (MPa) 

Pd:蓄圧器内の水素ガス圧 (MPa) 

6.3 

ジュール熱 ジュール熱の計算式は,式(2)による。 

H 7204-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

t

V

I

Q

 ············································································· (2) 

ここに, 

Q:試料に投入されたジュール熱 (J) 

I:マイクロヒータに流した電流 (A) 

V:マイクロヒータの端子電圧 (V) 

t:通電時間 (s) 

備考 ヒータ電圧の時間変化を記録した電圧−時間図からジュール熱を算出する場合は,式(2)の電圧

と時間の積の項は積分法で算出する。 

6.4 

熱等量 熱等量の計算式は,式(3)による。 

0

S

Q

α

 ···················································································· (3) 

ここに, 

α: 熱等量 (J/V・s) 

Q: 試料に投入されたジュール熱 (J) 

S0: ジュール熱を与えたときのDTA面積 (V・s) 

6.5 

水素化熱 水素化熱の計算式は,式(4)による。 

H

n

S

q

α

····································································· (4) 

ここに, 

⊿q:nモルの水素ガスが反応したときの水素化熱量 (J) 

α:熱等量の平均値 (J/V・s) 

S:nモルの水素ガスが反応したときのDTA面積 (V・s) 

n:合金中の最終水素量 (mol H2) 

⊿H:水素化熱 (J/mol H2) 

7. 報告 報告には,次の事項を記入する。 

(1) 試料(組成式,製造業者名,製造方法,熱処理の有無と温度,時間,雰囲気など) 

(2) 水素ガス純度 

(3) 試料質量 

(4) 測定温度 

(5) 活性化処理条件(真空脱気温度・時間など) 

(6) 双子形熱量計の校正条件(ヘリウムガス純度と圧力) 

(7) 熱等量 

(8) DTA測定終了時の水素ガス圧 

(9) 合金中の最終水素量 

(10) 水素化熱 

(11) 測定年月日 

(12) その他の報告事項 

H 7204-1995  

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JIS原案作成委員会 水素吸蔵合金試験方法委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

○ 田 村 英 雄 

大阪大学 

(グループリーダー) 

○ 黄  燕 清 

東海大学 

内 田 裕 久 

東海大学 

須 田 精二郎 

工学院大学 

○ 藤 田 欽一郎 

九州東海大学 

天 野 宗 幸 

科学技術庁金属材料技術研究所 

○ 小 黒 啓 介 

工業技術院大阪工業技術研究所 

加 山 英 男 

財団法人日本規格協会 

高 木 譲 一 

工業技術院標準部 

○ 二 瓶 正 俊 

社団法人日本鉄鋼連盟 

野 村   頸 

工業技術院物質工学工業技術研究所 

押 谷 政 彦 

ユアサコーポレーション 

梶 田 耕 三 

日立マクセル株式会社 

兜 森 俊 樹 

株式会社日本製鋼所 

蒲 生 孝 治 

松下電器産業株式会社 

河 合 重 征 

積水化学工業株式会社 

清 水 孝 純 

大同特殊鋼株式会社 

○ 高 崎 洋 一 

真空理工株式会社 

東 馬 秀 夫 

三徳金属工業株式会社 

新 妻 昭 弘 

株式会社豊田自動織機製作所 

野 原 清 彦 

川崎製鉄株式会社 

福 井 康 二 

愛知製鋼株式会社 

○ 松 原   豊 

日本重化学工業株式会社 

森 下   強 

マツダ株式会社 

米 津 育 郎 

三洋電機株式会社 

和 久 芳 春 

宇部興産株式会社 

浜 辺 順 彦 

日本軽金属株式会社 

(事務局) 

守 安 禎四郎 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアル

センター 

脇 坂 啓 司 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアル

センター 

備考 ○印は、ワーキンググループ委員も兼ねる。