2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 7153-1991
アモルファス金属磁心の
高周波磁心損失試験方法
Measuring method for high frequency core loss in
amorphous magnetic cores
1. 適用範囲 この規格は,アモルファス金属磁心を400Hz〜1MHzの正弦波の交流電源で励磁した場合
の磁心損失を試験する方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS H 7004 アモルファス金属用語
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7004による。
3. 試験条件
3.1
試験温度 試験温度は,原則として23±5℃とする
3.2
試験用電源 試験に用いる電源は,広帯域の電力増幅器で次のような特性を備えたものとする。
(1) 試験時の電源の電圧及び周波数の安定度は,それぞれ±0.2%以内でなければならない。
(2) 電源電圧の波形率は1.11±0.01以内とすることが望ましい。
備考 電源電圧を正弦波に保つため,電源内部インピーダンスは励磁コイルのインピーダンスに比べ
できるだけ小さくすること。
なお,磁心の力率が低いときは大きい電源容量が必要になるので,電源の選定には十分に注
意する。
(3) 標準測定における周波数は,1kHz, 10kHz, 100kHz及び1MHzとする。
3.3
標準測定における最大磁束密度 標準測定における最大磁束密度は,50mT, 100mT, 200mT, 500mT及
び1000mTとする。ただし,飽和磁束密度の80%以下とする。
4. 試料 試料は,次による。
(1) 磁心の形状はトロイダル形とし,巻線に際して応力を受けないようにケースに納める。
磁心寸法は,原則として表1による。ただし,受渡当事者間の協定によって別に定める場合は,こ
の限りではない。
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表1 磁心寸法
単位mm
番号
外径
内径
高さ
No.1
40±5
25±5
10
No.2
28±4
20±4
10
No.3
20±2
15±2
10
No.4
20±2
15±2
5
No.5
12±2
8±2
5
(2) 巻線は磁路に沿って一様に巻くこと。ただし,1MHz近傍で巻数が極めて少なくなった場合はこの限
りではない。
また,巻数は,原則として表2に示す値とする。ただし,受渡当事者間の協定によって別に定める
場合は,この限りではない。
表2 巻数の値
周波数
磁心寸法
最大磁束密度
番号
50mT
100mT
200mT
500mT
1 000mT
1kHz
No.1
−
−
30
30
30
No.2
−
−
40
40
40
10kHz
No.1
10
10
10
10
−
No.2
20
20
20
20
−
100kHz
No.2
5
5
5
5
−
No.3
5
5
5
5
−
No.4
10
10
10
10
−
No.5
10
10
10
10
−
1MHz
No.3
2
2
2
−
−
No.4
2
2
2
−
−
No.5
2
2
2
−
−
(3) 試料は,測定前に原則として消磁するものとし,消磁周波数は,1kHzとする。ただし,受渡当事者間
の協定によって別に定める場合は,この限りではない。
5. 寸法及び質量の測定 磁心の実効断面積を求めるため,あらかじめ磁心の内径,外径及び質量を測定
する。寸法及び質量の測定器の精度は,それぞれ±1%及び±0.5%以内とする。平均直径Dmは,次の式(1)
によって求める。
2
i
o
m
D
D
D
+
=
········································································ (1)
ここで, Dm: トロイダル磁心の平均直径
Do: トロイダル磁心の外径
Di: トロイダル磁心の内径
6. 磁心損失測定装置 磁心損失測定装置は,次の2種類の測定法に対し,それぞれ図1又は図2のよう
に結線する。
(1) 高周波電力計を用いた高周波磁心損失測定法 400Hz〜100kHzの周波数範囲で用い,高周波電力計を
使って測定する。
(2) 波形記憶装置を用いた高周波磁心損失測定法 400Hz〜1MHzの周波数範囲で用い,波形記憶装置とコ
ンピュータとを組み合わせて測定する。
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備考1. 図2の同軸ケーブルの長さは,原則として0.5m以下とする。
2. 試料の2次コイル及び電流検出抵抗から同軸ケーブルまでの配線は,極力短くする。
図1 高周波電力計を用いた高周波磁心損失測定回路
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図2 波形記憶装置を用いた高周波磁心損失測定回路
7. 測定方法
7.1
測定原理 励磁電源から1次コイルに流入する励磁電流i0(瞬時値)と2次コイルに発生する誘起
電圧e2(瞬時値)によって,単位体積当たりの磁心損失Pcを次の式(2)で,単位質量当たりの磁心損失Pcʼ
を次の式(2')で求める。
∫
=
0
0
0
2
0
2
1
0
1
1
T
c
dt
i
e
T
N
N
V
P
··························································· (2)
d
m
V=
0
···················································································· (3)
∫
=
′
0
0
0
2
0
2
1
1
1
T
c
dt
i
e
T
N
N
m
P
··························································· (2')
ここに, Pc: 単位体積当たりの磁心損失 (W/m3)
Pc': 単位質量当たりの磁心損失 (W/kg)
V0: 磁心体積 (m3)
m: 磁心の質量(kg)
d: 磁心の密度 (kg/m3)
T0: 電源の周期 (s)
N1: 1次コイルの巻数
N2: 2次コイルの巻数
e2: 2次誘起電圧の瞬時値 (V)
i0: 励磁電流の瞬時値 (A)
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7.2
高周波電力計を用いた高周波磁心損失測定法 試料を励磁し,平均値指示形電圧計の読みEBがあら
かじめ設定した最大磁束密度Bmに基づく計算値になるように,電源電圧を調整する。周波数は所定の値
に保つ。平均値指示形電圧計の読みEBは,次の式(4)によって求める。
m
s
B
B
A
fN
E
2
4
=
········································································· (4)
m
s
D
d
m
A
π
=
·············································································· (5)
ここで, EB: 平均値指示形電圧計の読み (V)
f: 測定周波数 (Hz)
N2: 2次コイルの巻数
As: 磁心の実効断面積 (m2)
Bm: 最大磁束密度 (T)
m: 磁心の質量 (kg)
d: 磁心の密度 (kg/m3)
Dm: 磁心の平均直径 (m)
次に,励磁コイルに直列に挿入された電流検出抵抗Rsの端子電圧es(1)と2次コイルの誘起電圧e2を高周
波電力計のそれぞれの測定端子に入力する。このとき,電力計の指示値Qは磁心損失に比例し,次の式に
よって単位体積当たりの磁心損失Pc又は単位質量当たりの磁心損失Pc'を求める。
Q
N
R
V
N
P
s
c
2
0
1
=
·········································································· (6)
Q
m
N
R
N
P
s
c
2
1
'=
········································································· (6')
ここに,
Pc: 単位体積当たりの磁心損失 (W/m3)
Pc': 単位質量当たりの磁心損失 (W/kg)
V0: 磁心体積 (m3)
Rs: 電流検出抵抗値 (Ω)
m: 磁心の質量 (kg)
N1: 1次コイルの巻数
N2: 2次コイルの巻数
Q: 電力計の指示値(二つの入力電圧の瞬時値の積の平均値を示
す。)
備考 電流検出抵抗の精度は±0.1%とする。
注(1) 電流検出抵抗Rsの端子電圧esは,次の式で求める。
es=es×i0 ·················································································· (7)
7.3
波形記憶装置を用いた高周波磁心損失測定法 試料を励磁し所定の最大磁束密度Bmに設定した後,
2次誘起電圧e2と電流検出抵抗の電圧降下esとを検出し,A/D変換して波形記憶装置に取り込む。これら
の信号をコンピュータに転送し,式(2)に従って磁心損失を計算する。ここで,磁束密度の波高値Bmを,
次によって求める。
(1) 磁束密度の時間変化を,次の式に従って求める。
()
∫
=
t
s
dt
e
A
N
t
B
02
2
1
····································································· (8)
ここに,
B (t): 磁束密度の瞬時値 (T)
N2: 2次コイルの巻数
As: 磁心の実効断面積 (m2)
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e2: 2次誘起電圧の瞬時値 (V)
(2) 1周期内におけるB (t) の最大値と最小値からそれらの差∆Bを求め,次の式によって最大磁束密度Bm
を算出する。
2
B
Bm
∆
=
··············································································· (9)
ここに,
Bm: 最大磁束密度 (T)
∆B: 磁束密度の最大値と最小値の差 (T)
8. 磁心損失測定装置の校正 磁心損失測定装置の校正は,次による。
(1) 発振器の出力電圧を測定装置の二つの入力端子に接続した場合,測定装置の指示が発振器電圧の二乗
平均値に対し,表3の誤差以内でなければならない。ただし,発振器の電圧測定用電圧計の精度は,
100kHz未満では±0.5%以内,100kHz以上では±2%以内とする。
表3 磁心損失測定装置の許容誤差
周波数
許容誤差
400Hz以上 100kHz未満
±2%
100kHz以上
±5%
(2) 発振器出力電圧及びそれと同じ振幅で90°(誤差±0.3°以下)位相の遅れた電圧(振幅は(1)の場合と同
じ)を測定装置のそれぞれ入力端子に接続した場合,測定装置の指示が(1)の場合の1%以下でなけれ
ばならない。
(3) 以上の校正を周波数1kHz, 10kHz, 100kHz及び1MHz(1MHzは波形記憶装置を用いた場合)において
行う。
備考 (2)の校正を行うには,位相誤差の保証された二相発振器を用いるとよい。
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ニューマテリアルセンターアモルファス金属規格委員会 構成表
氏名
所属
(主査)
新 宮 秀 夫
京都大学工学部
(幹事)
若 宮 正 行
松下電器産業株式会社映像音響研究センター
(委員)
大 中 逸 雄
大阪大学工学部
○ 榊 陽
千葉大学工学部
中 田 高 義
岡山大学工学部
池 田 要
工業技術院標準部
中 島 貞 夫
工業技術院大阪工業技術試験所
阿 蘇 興 一
ソニー株式会社中央研究所
洗 暢 茂
シャープ株式会社電化システム事業本部
石 堂 偉 生
関西変成器株式会社
伊 丹 哲
住友重機械工業株式会社機械事業本部
○ 猪 俣 浩一郎
株式会社東芝総合研究所
馬屋原 暉
日本板硝子株式会社中央研究所
大 村 俊 次
三菱電機株式会社材料研究所
鹿 野 良 孝
株式会社島津製作所産業機械事業部
佐 藤 駿
新日本製鐵株式会社第一技術研究所
十代田 哲 夫
株式会社神戸製鋼所技術開発本部
富 田 俊 郎
住友金属工業株式会社研究開発本部
萩 原 道 明
ユニチカ株式会社中央研究所
花 井 義 泰
愛知製鋼株式会社研究開発部
花 岡 克 巳
株式会社ダイヘン電力機器事業部
日 高 謙 介
福田金属箔粉工業株式会社研究所金属粉研究部
○ 広 重 嘉 捷
三井石油化学工業株式会社機能材研究所
藤 村 亮
日本非晶質金属株式会社営業部
森 下 勉
マツダ株式会社技術研究所
○ 三 井 正
TDK株式会社フェライト事業部
三 井 朋 晋
内橋エステック株式会社技術部
森 戸 延 行
川崎製鉄株式会社技術研究本部
安 田 伊佐雄
三洋電機株式会社中央研究所
○ 山 内 清 隆
日立金属株式会社磁性材料研究所
山 名 幹 也
山陽特殊製鋼株式会社技術研究所
○ 山 本 孝 明
東英工業株式会社
吉 田 友 芳
関西電力株式会社総合技術研究所
(事務局)
牧 浦 宏 文
財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアル
センター
(○印は,規格作成ワーキンググループ委員を兼ねる。)