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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7152-1996 

アモルファス金属 

単板磁気特性試験方法 

Methods of measurement of the magnetic properties of amorphous  

metals by means of a single sheet tester 

1. 適用範囲 この規格は,商用周波数におけるアモルファス金属薄帯の鉄損特性及び交流磁化特性を,

Hコイル法による単板磁気試験装置によって測定する方法について規定する。 

特性試験における適用範囲として,通常の鉄損測定の適用磁束密度は,1.5Tまでとし,交流磁化測定の

適用磁界の強さは,1kA/mまでとする。 

備考1. アモルファス金属薄帯は高透磁率材料であるため,磁束密度Bと磁気分極Jはほぼ等しく,

この規格においては磁束密度Bを用いる。 

2. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS H 7004 アモルファス金属用語 

参考 本試験方法において磁束検出コイルと空げき補償コイルを用いて測定する値は,磁気分極Jで

ある。磁気分極は,一様に磁化された試料の磁束を生じさせる単位断面積当たりの分極の強さ

をいい,磁界の強さをH,真空の透磁率をμ0とするとき,B=J+μ0Hの関係にある。 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS H 7004による。 

3. 測定の原理 鉄損特性試験と交流磁化特性試験の測定は,試料に加えられた磁界の強さと磁束を同時

に検出する方法によって次のように行う。 

均一な磁界及び磁束の範囲に置いたHコイルによって磁界の強さを検出し,Bコイルによって磁束を検

出する。鉄損は,HコイルとBコイルの出力電圧から求める。試料に加える均一磁界の範囲をできるだけ

広くするためにヨークを用いる。 

4. 試験条件 

4.1 

試験温度 試験は,原則として23±5℃の温度で行う。 

4.2 

試験用電源 試験に用いる電源は,次による。 

(1) 試験に際しては,4.3の磁化条件を満たすことのできる電源(附属書の2.1参照)を用いる。試験の電

圧及び周波数の安定度は,±0.2%以内とする。 

(2) 電源のインピーダンスは,励磁コイルのインピーダンスに比べて,無視出来るほど小さくする。 

4.3 

磁化条件 試料の長手方向が地磁気方向に直交するように試験器を設置し,試料を消磁する。また,

Bコイルに誘起する電圧は正弦波とし,その波形率が,1.10〜1.12の範囲になるようにする。 

H 7152-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

備考 磁界及び磁束波形が正・負対称でない場合は,試料を試験器から取り除いてヨークの消磁を行

い,その後再び条件を満たすように試験器の方向の微調整を行う。 

5. 試料 

5.1 

試料の寸法 試料の寸法は,最小長さをヨーク外側の寸法以上とし,最小幅をHコイル幅より大き

く,最大幅を巻枠の内側寸法より小さくする。 

備考1. 試料の長さがヨーク外側寸法以上あっても,測定値に大きな影響を与えないが,試料の挿入,

取出しに必要な長さとする。 

2. 試料の幅が狭いものしか得られない場合には,複数の試料を1層に並べて試料の寸法条件を

満たすようにしてもよい。ただし,それぞれの試料の磁気特性がほぼ等しい場合に限る。 

5.2 

試料の採取 試料は,適当な切断機などを用いて切断し,切断部にばりやかえりを残さないように

する。試料は,長さ方向を材料の鋳造方向に合わせて採取する。試料の長さ方向と鋳造方向との角度は,

±0.5゚の許容差内になければならない。 

5.3 

試料の処理 試料は,次の磁界中熱処理を行うものとする。 

(1) 熱処理 熱処理は,次によって行う。 

(a) 昇温速度及び冷却速度 昇温速度及び冷却速度は,毎分3〜10℃とする。 

参考 昇温速度及び冷却速度は,毎分5℃を目標とする。 

(b) 加熱 試料の最適加熱条件は,材料によって異なるので,あらかじめ実験によって最適な温度・時

間を決めるか,製造者の推奨条件を採用する。一例としては,試料を温度350〜380℃で30〜120分

間保持する。 

備考 実用上,試料温度が所定の範囲に入るように,熱処理炉温度で管理しても良い。 

(c) 試料の取出し 試料は,100℃以下まで冷却した後,炉から取り出す。 

(2) 印加磁界 磁界は,試料の長さ方向に加えるものとし,試料内部の磁界の強さは,800A/m以上とす

る。磁界は試料の取出し時まで印加する。 

備考1. 磁界の電源は,交流としてもよいが,この場合には,近傍の鉄加工品などに渦電流による局

部過熱の発生に注意する。 

2. 試料が有限長であるので,試料の長さ方向端部では反磁界の影響を受けるため,次のような

対策を行う。 

① できるだけ磁界を試料の磁束密度が飽和する強さにする。 

② 試料を含む閉磁路を形成する。 

③ 試料枚数を制限する。 

3. 試料を開磁路で励磁する場合は,試料全長にわたって磁界ができるだけ均一になるように,

十分長いソレノイドコイルを用いる。 

(3) 雰囲気 熱処理時の雰囲気は,非酸化性雰囲気とする。 

参考 非酸化性雰囲気としては,窒素,水素,真空などがあるが,一般的には,露点が−50℃以下の

窒素ガスが比較的容易に入手できるので使用に便利である。 

(4) 平坦度保持 試料の平坦度を保持するために,適当な厚さをもつ非磁性の金属平板で試料の上下を挟

み,適切な荷重を加える。 

備考 同時に多数枚を熱処理する場合は,平坦度の良い試料を得るために,試料2〜3枚ごとに平板を

挿入することが望ましい。 

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5.4 

試料の消磁 測定の前に試料を消磁する。 

参考 消磁は,測定磁界より十分に高い磁界から交流磁界を緩やかに減少させる方法が有効である。 

5.5 

試料の実効断面積 試料の実効断面積As (m2) は,試料の長さ,質量と密度から式(1)によって求める。

試料は,1枚ごとに質量と長さを測定し,記録する。測定は,0.1%の精度で,有効数字4けたまで求める。 

l

m

A

m

 ·················································································· (1) 

ここに, 

m: 試料の質量 (kg) 

ρm: 試料の密度 (kg/m3) 

l: 試料の長さ (m) 

5.6 

試料の設置 試料は,巻枠幅方向の中央に置く。 

6. 測定回路 鉄損特性試験及び交流磁化特性試験に用いる磁気特性測定装置は,単板磁気試験器,電源,

各増幅器及び計測器から構成され,図1のように結線して使用する。装置の仕様,組立及び校正法は,附

属書による。 

図1 磁気特性測定回路 

7. 磁気試験 

7.1 

試料枚数 測定に際して,試料は,1枚を原則とする。ただし,試料の幅が狭いものしか得られない

場合には,5.1(試料の寸法)備考2.による。 

7.2 

鉄損の測定方法 鉄損の測定は,次による。 

(1) 測定すべき磁束密度の波高値B (T) におけるBコイルの出力電圧EB (V) を式(2)で計算する。 

B

A

fN

E

B

S

B

B

α

π

2

 ··································································· (2) 

ここに, 

f: 測定周波数 (Hz) 

NB: Bコイルの巻数 

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AS: 試料の実効断面積 (m2) 

αB: B増幅器の増幅率 

B: 磁束密度の波高値 (T) 

備考 μ0HがJに対して無視できないときは式(2)のBはJとし,設定磁束密度からHコイルで測定さ

れた磁界の強さによるμ0Hを差し引いた値を代入してEBを決める。 

(2) 図1において,切換開閉器S1とS2を②側に,S3を①側に入れて,平均値形電圧計をモニタとして用

いて試料を交流消磁した後,S1とS2を①側に切り換える。 

(3) 周波数を指定の値に保ち,Bコイルの出力電圧(平均値形電圧計の読み)EB (V) が式(2)で算出した値

となるように,電源電圧を調整する。 

(4) 鉄損WS(W/kg)を,電力計の読みW (W) から式(3)によって計算する。 

(

)

B

H

B

H

H

S

N

A

N

m

W

l

W

α

α

μ

τ

0

 ··························································· (3) 

ここに, 

l: 試料の長さ (m) 

τ: 積分器の時定数 (S) 

W: 電力計の読みから求めた電力 (W) 

μ0: 真空の透磁率4π×10-7 (H/m) 

m: 試料の質量 (kg) 

(NHAH): Hコイルのエリアターン (m2) 

NB: Bコイルの巻数 

αH: H増幅器の増幅率 

αB: B増幅器の増幅率 

7.3 

交流磁化特性の測定方法 交流磁化特性の測定は,次による。 

(1) 測定すべき磁界の強さの波高値H (A/m) におけるHコイルの出力電圧EH (V) を式(4)で計算する。 

(

)

H

A

N

f

E

H

H

H

H

α

πμ0

2

 ··························································· (4) 

ここに, 

μ0: 真空の透磁率4π×10−7 (H/m) 

f: 測定周波数 (Hz) 

(NHAH):  Hコイルのエリアターン (m2) 

αH:  H増幅器の増幅率 

H: 磁界の強さの波高値 (A/m) 

(2) 図1において,切換開閉器S1とS2を②側に,S3を①側に入れて,平均値形電圧計をモニタとして用

いて試料を交流消磁した後,S1を①側に,S3を②側に切り換える。 

(3) 周波数を指定の値に保ち,H増幅器の出力電圧(平均値形電圧計の読み)EH (V) が式(4)で算出した値

となるように,電源電圧を調整する。 

(4) S3を①側に切り換えて平均値形電圧計の読みEB (V) を求める。設定した磁界の強さに対する試料の磁

束密度B (T) を式(5)によって求める。 

B

S

B

B

A

fN

E

B

α

π

2

 ····································································· (5) 

ここに, 

f: 測定周波数 (Hz) 

NB: Bコイルの巻数 

AS: 試料の実効断面積 (m2) 

αB: B増幅器の増幅率 

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8. 報告 試験結果報告書には,次の事項を記入する。 

(1) 供試材の種類,及び製造業者 

(2) 試料の寸法,質量 

(3) 試料の熱処理条件 

(4) 単板磁気試験器の仕様(ヨーク形状・寸法,Bコイル及びHコイルの寸法) 

(5) 測定年月日 

(6) 試験結果 

(7) その他,受渡当事者間で協定した事項 

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附属書 測定装置の仕様,組立及び校正法 

1. 適用範囲 この附属書は,単板磁気特性試験を行うための測定装置の仕様,組立及び校正法について

規定する。 

2. 測定装置仕様 

2.1 

試験用電源 試験用電源の仕様は,次による。 

(1) 電圧及び周波数の安定性がよく,測定中における電圧及び周波数の変動の幅は,指定値の±0.2%以内

とする。 

(2) Bコイルに誘起する電圧を正弦波に保つため,電源の出力インピーダンスは,励磁コイルのインピー

ダンスに比べて十分に小さくする。 

(3) Bコイルに誘起する電圧の波形率は,1.10〜1.12の範囲になるようにする。 

(4) 試験用電源は,Bコイルの誘起電圧波形の負帰還制御が行える電子式電源を用いてもよい。 

2.2 

単板磁気試験器 試験器は,試料に加わる磁界及び磁束が測定範囲にわたって均一になるものとす

る。 

(1) ヨーク ヨークは,次による。 

なお,附属書図1(a)に横複ヨーク形,(b)に縦複ヨーク形の構造の参考例を示す。 

(a) ヨークに生じる鉄損や,ヨーク部に必要な起磁力の小さい材料を用いる。 

参考 ヨーク材料としては,方向性けい素鋼帯や鉄-ニッケル合金板などを用いる。 

(b) ヨークの断面積は,試料の断面積より十分大きくして,ヨーク部の磁気抵抗を小さくするとともに,

漏れ磁束を少なくして,磁界分布と試料内の磁束分布の均一化が図れる面積とする。 

(c) 試料とヨークの接触面は,磁束の通路として十分な面積をもち,試料の全幅がヨークに接する構造

とする。 

(d) ヨークの形は,地磁気の影響を受けにくく,消磁の容易な複ヨーク形とする。 

(e) 縦複ヨーク形では,上側ヨークによって試料に機械的なひずみが生じないようにするとともに,温

度変化による試料の伸縮に拘束が加わらない構造とする。 

(2) 巻枠 励磁コイルとBコイルを巻くために用いる巻枠は,次による。 

(a) 絶縁物で作られた中空の長方形断面をもつものとする。 

(b) 巻枠の長さは,ヨークの窓寸法よりわずかに短くする。 

(c) 巻枠の内側の中空部分には,試料とHコイルが入るため,巻枠の内幅は,試料の最大幅より少し大

きくし,高さは,Hコイルと試料の厚さの和より少し大きくする。 

(3) Bコイル Bコイルは,試料の磁束を検出するために用いるもので,次による。 

(a) Bコイルの長さは,試料中の磁束分布が均一とみなせる範囲とし,Hコイルの長さと同一にする。 

(b) 引出線は,電磁誘導を避けるため,ねん架を行う。 

(4) 励磁コイル 励磁コイルは,試料に磁界を印加するために用いるもので,次による。 

(a) 磁界の分布を一様にするため,励磁コイルの巻線長をヨーク窓寸法にできるだけ近づけ,巻線ピッ

チを均一にする。 

(b) 巻数は,適用磁界の強さと試験用電源の最大電流に対応して選定する。 

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(c) 励磁コイルは,磁束波形をひずませないため,直流抵抗に比べてリアクタンスが大きいことが望ま

しい。そのためにコイルは,整列・多層巻とする。 

(5) Hコイル Hコイルは,試料表面の長さ方向に加えられる磁界の強さを検出するために用いるもので,

次による。 

(a) 長さは,Bコイルと同一とし,幅は,試料幅より少し狭くなるように,長方形の板状巻枠に細い絶

縁皮膜付き銅線を均一に巻き付ける。 

(b) 引出線は,電磁誘導を避けるため,ねん架を行う。 

参考 Hコイル法は,磁界の強さが試料表面からの距離によって変化しないと仮定できる場合に用い

られる方法である。この条件は,試料に加わる反磁界がほとんど無視できる場合に成立するが,

試料の透磁率や寸法比(板の断面積/板の長さ),試料とヨーク間のエアギャップ寸法によって

変化する。 

(6) 空げき補償 空げき補償の方法は,次による。 

なお,空げき補償されたBコイルで測定される電圧の平均値は,磁束密度ではなく,磁化の強さの

ピーク値に比例したものである。 

(a) 2個の巻線からなる空心の相互誘導器を空げき補償コイルとして用いる場合,空げき補償コイルの1

次側を励磁コイルに直列に,2次側をBコイルに逆直列に接続する。試験器に試料を挿入しない状

態で1次側に交流を流したときに,Bコイルと空げき補償コイルに誘起する電圧の和が最小になる

ように相互誘導器を調節する。 

参考 この方法では,実際に試験器に試料が入ったとき,試料の磁化と共に誘起する反磁界の影響を

無視しているので,その分が過補償となる。 

また,空げき補償コイルの1次側インピーダンスと単板磁気試験器の励磁コイルのインピー

ダンスとの相対関係によって,高磁束密度領域でBコイルの誘起電圧のひずみが増加する。 

(b) 試料にかかる磁界の強さを直接検出しているHコイル出力を利用して,Bコイル出力を補償する場

合は,Hコイル出力にHコイルのエリアターンに対するBコイルのエリアターンの比を掛けた電圧

を,Bコイル出力から差し引くことによって行う。 

なお,Bコイルのエリアターンは,試験器に試料を挿入しないで励磁コイルに電流を流して磁界

を作り,校正されたエリアターンのHコイルの出力とBコイルの出力との比較によって求めること

ができる。 

参考 この方法では,試料面に対して垂直方向の磁界分布に傾斜があるときには,試料面からの距離

とともに磁界の強さが大きくなるので,その分だけ補償不足となる。 

2.3 

H増幅器及び積分増幅器 H増幅器は,Hコイルの出力電圧を増幅するとともに,低出力インピー

ダンスに変換して測定誤差を低減する。この増幅器は,Hコイルの出力電圧の測定に影響を及ぼさないた

め,高い入力インピーダンスとするとともに,波高率の大きい波形を増幅するため,ダイナミックレンジ

が広く直線性に優れているものを使用する。 

積分増幅器は,高精度の演算増幅器によって構成されたミラー形の積分器を用いる。 

H増幅器及び積分増幅器の性能は,附属書表1による。 

なお,Hコイルの出力信号を増幅し,高速A−D変換で数値信号としてこれを演算処理するもので,附

属書表1と同等性能であれば,それを使用してもよい。この場合,電力計への入力としてデジタル信号の

まま,又はD−A変換で再度アナログ信号としても性能が附属書表1を満足できればよい。 

また,B増幅器,平均値形電圧計及び電力計と一体化された計器でも,性能が附属書表1と同等であれ

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ば,使用してもよい。 

附属書表1 H増幅器及び積分増幅器の性能 

項目 

性能 

入力インピーダンス 

500kΩ以上 

出力インピーダンス 

 15Ω以下 

増幅率の変動 

±0.3%以下 (47Hz〜20kHz) 

位相誤差 

±3分以下 (47Hz〜2kHz) 

2.4 

B増幅器 B増幅器は,Bコイルの出力電圧を増幅するとともに,低インピーダンスに変換して測定

誤差を低減する。Bコイルの出力電圧の測定に影響を及ぼさないために,高い入力インピーダンスをもつ

ものとする。 

出力側に平均値形電圧計と電力計が接続され,波形補正を行うときは,出力電圧の一部が負帰還信号と

して用いられるため,低い出力インピーダンスをもつものとする。B増幅器の性能は,附属書表2による。 

なお,Bコイルの出力信号を増幅し,高速A−D変換で数値信号としてこれを演算処理するものでも,

B増幅器としての性能が附属書表2と同等であれば,使用してもよい。 

また,H増幅器,積分増幅器,平均値形電圧計及び電力計が一体化された計器でも,性能が附属書表2

と同等であれば,使用してもよい。 

附属書表2 B増幅器の性能 

項目 

性能 

入力インピーダンス 

500kΩ以上 

出力インピーダンス 

 15Ω以下 

増幅率の変動 

±0.3%以下 (47Hz〜2kHz) 

位相誤差 

±3分以下 (47Hz〜400Hz) 

2.5 

平均値形電圧計 平均値形電圧計は,試料の磁束密度B(ピーク値)と磁界の強さH(ピーク値)

を測定するために使用する。入力インピーダンスが100kΩ以上で,誤差±0.2%以内のデジタル電圧計,又

は,これと同等の性能をもつ電圧計を用いる。 

参考1. 中心対称波形の微分電圧の平均値が原波形のピーク値に比例することを利用しているが,1

周期中の符号変化が1回でない場合は誤差を生じる。 

2. 測定波形が正弦波からひずんだ場合は,電圧計によって測定精度が異なるので注意が必要で

ある。 

2.6 

電力計 電力計は,H増幅器及び積分増幅器の出力とB増幅器の出力の乗算を行い,その電力を求

める。形式としては時分割乗算を行うもの,デジタル化された数値を演算するものなどがあるが,いずれ

の形式でも附属書表3の性能を満足するものとする。ただし,入力としてデジタル信号を用いる電力計で

は,その入力インピーダンスは附属書表3に制限されないものとする。 

附属書表3 電力計の性能 

項目 

性能 

入力インピーダンス 

3kΩ以上 

誤差 

フルスケールの±0.5%以下 
(47Hz〜400Hz,力率1〜0において) 

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3. 校正 最大入力の範囲内における増幅器の増幅率及びHコイルのエリアターンは,0.5%の精度で測定

する。Hコイルのエリアターンの校正は,0.2%の精度のエリアターンの標準コイルと一様な交流磁界中の

出力との比較によるか,又は,長いソレノイドの一様磁界領域の磁界の強さは,計算で得られるので,こ

のソレノイドの交流磁界によるHコイルの出力から求める。ソレノイドに流す電流値は,標準抵抗による

電圧降下を高精度デジタル電圧計で測定して求める。 

積分増幅器の校正は,周波数f (Hz) の正弦波電圧をH増幅器の入力端子に入力し,入力電圧einと積分

増幅器の出力電圧eoutをデジタル電圧計で読んで行う。einとeoutは式(1)で示される関係がある。 

τω

α

τ

α

in

H

in

H

out

e

dt

e

e

 ······························································· (1) 

ここに, 

αH: H増幅器の増幅率 

τ: 積分器の時定数 (S) 

ω: 2πf (s-1)  

式(1)からH増幅器の増幅率を含むαH/τが求まる。 

この回路の位相の誤差は,αH/τの周波数特性を測定することによって調べられる。すなわち,eout/einが所

要の周波数範囲で周波数に対して反比例の関係にあれば,位相の誤差は無視できる。 

4. 単板試験器の構造・組立例 試料寸法を横複ヨーク形単板試験器用100×500mm,縦複ヨーク形単板

試験器用100×330mmとした場合の試験器について以下に示す。 

4.1 

ヨーク 

(1) 横複ヨーク形単板磁気試験器 ヨークは方向性けい素鋼帯又は鉄−ニッケル合金板を積層して四角形

に組む[附属書図1(a)及び附属書図2参照]。附属書表4にヨーク寸法例を示す。ヨークは絶縁物で作

られた台上に水平に保持し,特に試料の接する面は,凹凸をなくして試料と密着するようにする。 

附属書表4 横複ヨーク形単板磁気試験器のヨーク寸法 

単位mm 

項目 

寸法 

幅 

100 

積層厚さ 

ヨーク極間最長距離 

500 

(2) 縦複ヨーク形単板磁気試験器 ヨークは,方向性けい素鋼帯又は鉄−ニッケル合金板を積層してC形

に組む[附層書図1(b)参照]。附属書表5にヨーク寸法例を示す。ヨークは,絶縁物で作られた台上に

水平に保持し,特に試料の接する面は,凹凸をなくして試料と密着するようにする。 

附属書表5 縦複ヨーク形単板磁気試験器のヨーク寸法 

単位mm 

項目 

寸法 

幅 

15 

積層厚さ 

120 

ヨーク極間最長距離 

330 

4.2 

巻枠 巻枠は,中空の長方形断面をもつものとし,絶縁物で作る(附属書図3参照)。巻枠は,試料

位置がヨーク窓の中央にくるよう配置する。 

4.3 

Bコイル Bコイルは,導体径0.5mmの絶縁皮膜付き銅線を,巻枠の長さ方向の中心に対して対称

に長さ200mmの間に1層に均一に巻く。巻数は約340ターンとする。 

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H 7152-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.4 

励磁コイル 励磁コイルは,Bコイルの外側に導体径1.0mmの絶縁皮膜付き銅線を,巻枠の全長

294mmの間に均一に3層に巻いて直列接続とする。巻数は各層約270ターンとする。 

4.5 

Hコイル Hコイルは,厚さ1.6mm,幅85mm,長さ270mmの絶縁物で作られた板状巻枠に密着し

て,導体径0.2mmの絶縁皮膜付き銅線を長さ200mmの間に1層に均一に巻く。巻数が約900ターンのと

き,エリアターンは約0.130m2となる。Hコイルは,試料にできるだけ近い位置に配置し,Hコイルの面

と試料面とが平行になるように固定する。Hコイルの長さ方向の位置はBコイルのそれに一致させる。 

附属書図1 複ヨーク形単板磁気試験器の構成例 

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11 

H 7152-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書図2 横複ヨーク形単板磁気試験器例 

注* 公差はマイナス側に零とする 

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12 

H 7152-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書図3 コイル断面例 

注* 公差はマイナス側に零とする 

注** 公差はプラス側に零とする 

関連規格:JIS C 2550 電磁鋼板試験方法 

JIS C 2556 電磁鋼板単板磁気特性試験方法 

IEC 404-3 Magnetic materials Part 3:Methods of measurement of the magnetic properties of 

magnetic sheet and strip by means of a single sheet tester 

ASTM A 804-82 Standard test methods for altenating-magnetic properties of materials at power 

fre-quencies using sheet-type test specimens 

JIS H 7152 改正原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

新 宮 秀 夫 

京都大学大学院工学研究科 

(幹事) 

中 田 高 義 

岡山大学工学部 

(幹事代行) 

石 原 好 之 

同志社大学工学部 

(委員) 

佐 藤   駿 

東京工業大学工学部 

土 屋 英 司 

広島電機大学工学部 

赤 嶺 淳 一 

社団法人日本電機工業会 

天 野   徹 

工業技術院標準部 

出 井 和 弘 

株式会社高岳製作所 

岡 崎 靖 雄 

新日本製鉄株式会社 

13 

H 7152-1996  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

岡 部 正 志 

三菱電機株式会社 

小 畑 良 夫 

川崎製鉄株式会社 

上 條 保 彦 

株式会社ダイヘン 

堀 江 宏 道 

株式会社東芝 

矢 後 克 二 

愛知電機株式会社 

山 本 孝 明 

東英工業株式会社 

吉 沢 克 仁 

日立金属株式会社 

(事務局) 

守 安 禎四郎 

財団法人大阪科学技術センター付属ニュ

ーマテリアルセンター 

石 原   薫 

財団法人大阪科学技術センター付属ニュ

ーマテリアルセンター