サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

H 7101 : 2002  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人大阪科学

技術センター付属ニューマテリアルセンター (OSTEC) /財団法人日本規格協会 (JSA) から工業標準原

案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣

が改正した日本工業規格である。これによってJIS H 7101 : 1989は改正され,この規格に置き換えられる。 

なお,今回の改正では最近の技術動向を考慮し,Cu-Zn-Al合金に関する記載を削除し,また,2段階に

マルテンサイト変態を起こす場合への対応に関する改正を行った。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7101 : 2002 

形状記憶合金の変態点測定方法 

Method for determining the transformation  

temperature of shape memory alloys 

1. 適用範囲 この規格は,形状記憶合金(1)の示差走査熱量測定による変態点(2)測定方法について規定す

る。 

注(1) ここにいう形状記憶合金とは,室温付近に,又は室温を挟む上下の温度域に変態点をもつTi-Ni

系形状記憶合金などをいう。 

(2) 変態点とは,マルテンサイト変態温度及び逆変態温度をいう。 

備考1. 示差走査熱量測定は,一般にDSC (Differential Scanning Calorimetry) の略称で呼ばれる。 

2. 変態点測定方法には,示差走査熱量測定以外に,電気抵抗測定などもあるが,それらによる

数値と示差走査熱量測定による数値とは,常に一致するとは限らない。 

3. この規格によって測定される変態点は,溶体化処理を施した状態での変態点である。形状記

憶処理を施した材料又は素子の変態点については,この規格に準拠して測定するとよい。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法 

JIS Z 9041-1 データの統計的な解釈方法−第1部:データの統計的記述 

JIS Z 9041-2 データの統計的な解釈方法−第2部:平均と分散に関する検定方法と推定方法 

JIS Z 9041-3 データの統計的な解釈方法−第3部:割合に関する検定方法と推定方法 

JIS Z 9041-4 データの統計的な解釈方法−第4部:平均と分散に関する検定方法と検出力 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。 

a) 形状記憶効果 ある形状の合金を低温相(マルテンサイト)で変形して異なる形状にしても,高温相

(母相)が安定になる温度に加熱すると逆変態が起こり,変形前の形状に戻る現象。 

b) 形状記憶合金 形状記憶効果をもつ合金。Ti-Ni合金などがある。 

c) 形状記憶処理 所定の形状を記憶させるために行う処理。形状記憶処理には,一方向形状記憶処理と,

トレーニング,拘束加熱,強変形,拘束時効処理などの二方向形状記憶処理とがある。 

d) 変態点 合金の温度を上昇又は下降させた場合などに,ある相が他の相に変化する温度。形状記憶合

金の相変態には一般に温度幅があり,次の6種類の温度がある。 

1) Ms点 冷却に際し,母相からマルテンサイトへの変態が開始する温度(図1参照)。 

2) M*点 冷却に際し,母相からマルテンサイトへの変態においてピークの頂点となる温度(図2参照)。 

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3) Mf点 冷却に際し,母相からマルテンサイトへの変態が終了する温度(図1参照)。 

4) As点 加熱に際し,マルテンサイトから母相への変態が開始する温度(図1参照)。 

5) A*点 加熱に際し,マルテンサイトから母相への変態においてピークの頂点となる温度(図2参照)。 

6) Af点 加熱に際し,マルテンサイトから母相への変態が終了する温度(図1参照)。 

e) マルテンサイト変態 固体の相変態の一種で,高温で安定な相(母相)の温度領域から冷却していく

と,ある温度でせん断変形的な機構で低温相(マルテンサイト)に変化する変態。 

f) 

逆変態 冷却又は負荷に併って生じた相変態が加熱又は除荷に伴って母相に逆戻りする変態。 

g) 示差走査熱量測定 (DSC)  次の二つの測定方法の総称。 

1) 入力補償示差走査熱量測定(入力補償DSC) 試料及び基準物質を調整された速度で加熱又は冷却

する環境中で,等しい条件下に置き,試料及び基準物質の温度が同一に保たれるように,両者に加

えた単位時間当たりのエネルギー入力の差を温度の関数として測定する方法。 

2) 熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC) 試料及び基準物質を調整された速度で加熱又は冷却する

環境中で,等しい条件下に置き,試料と基準物質との間の温度差を温度の関数として測定する方法。 

このとき,試料と基準物質との温度差が単位時間当たりの熱エネルギーの入力の差に比例してい

る。したがって,両者のDSCは,本質的(物理的)に等価である。 

h) DSC装置 示差走査熱量測定に用いる装置。 

i) 

DSC曲線 縦軸に試料と基準物質との温度が同一に保たれるように両者に加えた単位時間当たりの

エネルギー入力の差を,横軸に温度をとり,示差走査熱量測定において描かれる曲線。 

j) 

基準物質 示差走査熱量測定において,比較に用いる物質。 

k) ベースライン 試料に相変態が生じない温度領域でのDSC曲線。 

l) 

溶体化処理 合金を高温側の固溶体領域まで加熱して,その温度に適切な時間保持し,固溶体化する

処理。 

4. 測定装置及び基準物質 

4.1 

測定装置 測定装置は,次の要件を備えたDSC測定装置を用いる。 

a) 二つの容器ホルダをもち,容器ホルダの熱容量は同等で,かつ同一な熱交換条件で加熱・冷却できる

構造である。 

b) 5〜10℃/minの加熱・冷却速度で,温度を上昇・下降させることができ,その精度が,±0.5℃/minで

ある。 

c) DSC曲線が自動記録できる。 

d) 容器は,試料によって侵されることのない熱伝導率の高い材料で作られている。 

備考1. 測定装置は,JIS K 7121の5.(装置及び器具)及び7.(温度の校正)の規定を準用して調整し

ておくことが必要である。 

2. 測定装置は,常にDSC曲線のベースラインが,できるだけ温度軸に平行になるように調整さ

れていなければならない。 

4.2 

基準物質 基準物質は,測定温度範囲で変態のない安定な物質(αアルミナ粉,純アルミニウム,白

金など)を用いる。ただし,試料の量が少ないときには空のアルミニウム容器を用いてもよい。 

5. 試料 試料は,次による。 

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.1 

試料の質量 1回の測定に供する試料の質量は,測定精度上,必要十分な量として,20〜50mgとす

る。同一ロットから2回分以上採取する。 

備考 試料質量によって,測定される変態点に変化が生じるときがある。 

5.2 

試料の作製 試料は,素材から適切な工具を用いて切り出す。この場合,6.a)で,試料をDSC装置

の容器に詰めるときに,試料ができるだけ容器内の底面全体に接触するような形状にする。また,試料の

表面は,平滑かつ清浄でなければならない。 

5.3 

試料の熱処理 試料に対し,900℃で30分間の溶体化処理を行う。雰囲気は無酸化性とする。溶体

化処理後の試料は水冷する。 

備考1. 試料の熱処理は,加工履歴の影響などを消去して,素材本来の変態点を得るために行う。 

2. 形状記憶処理を施した線,板,帯,棒など,又は素子の変態点を測定する場合には,熱処理

を行わなくてもよい。ただし,この場合,試料切出しによる加工ひずみの影響を受けること

があるので,十分注意する必要がある。 

6. 測定 測定は,次の手順によって行う。 

a) 試料及び基準物質を,それぞれDSC装置用容器に詰め,容器のふたを閉じる。 

備考 基準物質の質量は,測定する試料の質量に対応したものとする。 

b) 試料及び基準物質を詰めた容器を,室温付近に設定したDSC装置のそれぞれの容器ホルダの中央に入

れる。 

この場合,容器の底面全体が容器ホルダ内の底面に接触するようにする。 

備考 容器底面と容器ホルダ内の底面との接触がよくないと,測定結果に誤差を生じるので,十分注

意しなければならない。 

c) 室温からAf点+30℃以上の温度まで加熱し(図1参照),2〜5分間保持する。その後,DSC曲線を記

録しながら下限温度(Mf点−30℃)まで冷却し,2〜5分間保持する。次に,加熱[上限温度(Af点+

30℃以上)]しながらDSC曲線を記録する。走査温度範囲は,発熱ピークの低温側と吸熱ピークの高

温側で,それぞれ30℃にわたるようにする。(図1参照)。 

備考1. 加熱・冷却速度は5〜10±0.5℃/minとする。加熱・冷却速度により,測定される変態点に変

化が生じうる。 

2. あらかじめ,ベースラインが温度軸にほぼ平行になるように調整し,試料のAs点及びAf点を

推定しておくことが望ましい。 

3. 変態点の測定は,同一ロットについて少なくとも2回行った方がよい。 

7. 変態点の算出 変態点の算出は,次による。 

a) Ms点,Mf点,As及びAf点は,図1のようにDSC曲線の各ベースラインの延長線と各ピークの最大傾

斜線の延長線との交点として記録紙上から求める。 

background image

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

備考 ベースラインは,低温側と高温側とで本質的にその水準が異なる。 

図1 冷却・加熱に伴うDSC曲線からの変態点の求め方 

b) マルテンサイト変態が2段階に起き,二つのピークが十分に分離していない場合は,冷却の際の最初

の変態のMf点と二つ目の変態Ms点,また,加熱の際の低温側の変態のAf点と高温側の変態のAs点が

決定しにくい。このような場合は,各ピークのM*点及びA*点を取ってもよい(図2参照)。 

なお,高温側の変態の変態点にはMʼ*のように “ ʼ ” をつけて,低温側の変態点と区別する。 

図2 二つのピークが十分に分離していない場合の変態点の求め方 

c) 試料ごとに各変態点を求める。次に同一ロットごとに,各変態点についてJIS Z 9041-1,JIS Z 9041-2,

JIS Z 9041-3及びJIS Z 9041-4によって平均値を求め,小数点第1位を2捨3入し,0.5℃単位に丸め

る。 

8. 報告 報告書には,次の事項のうち要求される事項を記載する。 

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 供試材の種類,履歴及び製造業者名 

b) 1回の測定に供した試料の質量,形状 

c) 試料の作製方法及び熱処理条件 

d) 使用したDSC装置の形式及び製造業者名 

e) 使用した基準物質 

f) 

測定回数 

g) 変態点(Ms点,M*点,Mf点,As点,A*点及びAf点) 

二つの変態ピークが現れるときは,Msʼ点,Mfʼ点,Asʼ点,及びAfʼ点も記述。また,それらのピーク

のすそが十分に分離していない場合にはMfʼ点の代わりにMʼ*点,Ms点の代わりにM*点,Af点の代わ

りにA*点,As点の代わりにAʼ*点。 

h) DSC曲線 

i) 

測定年月日 

j) 

その他,受渡当事者間で協定した事項 

金属系新素材JIS原案作成委員会 形状記憶合金(変態点測定方法)分科会 構成表 

氏名 

所属 

(主査) 

亀 井   清 

関西大学工学部 

(委員) 

植 村 幸 生 

阪南大学商学部 

大 塚 和 弘 

筑波大学物質工学系 

笹 谷   勇 

工業技術院標準部 

清 水 謙 一 

大阪大学産業科学研究所 

菅 原 淳 夫 

財団法人日本規格協会 

杉 本 孝 一 

関西大学工学部 

中 西 典 彦 

甲南大学理学部 

西 川 雅 弘 

大阪大学工学部 

本 間 敏 夫 

東北大学選鉱製錬研究所 

三 輪 敬 之 

早稲田大学理学工学部 

宮 城 政 和 

大阪府立産業技術総合研究所 

大 方 一 三 

加藤発条株式会社特品開発部 

清 永 欣 吾 

日立金属株式会社冶金研究所 

小 林 淳 二 

古河電気工業株式会社研究開発本部 

鈴 木 喜久男 

住友特殊金属株式会社技術部 

高 島 孝 弘 

株式会社神戸製鋼所技術開発部 

高 橋   淳 

日本発条株式会社精密ばね事業部 

新 山 善 之 

大同特殊鋼株式会社研究開発本部 

馬 継 俊 夫 

関東特殊製鋼株式会社精密機材部 

水 原   誠 

住友電気工業株式会社特殊線事業部 

宮 川   清 

住友金属工業株式会社総合技術研究所 

山 内   清 

東北金属工業株式会社金属材料事業部 

(事務局)  

宮 崎 剛 直 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

広 岡 芳 康 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

金属系新素材JIS原案作成委員会 形状記憶合金分科会 構成表 

氏名 

所属 

(主査) 

亀 井   清 

関西大学工学部 

(中立委員) 

池 田 順 一 

財団法人日本規格協会技術・検査部 

植 村 幸 生 

阪南大学商学部 

加 藤 康 宏 

工業技術院標準部 

清 水 謙 一 

大阪大学産業科学研究所 

杉 本 孝 一 

関西大学工学部 

宮 城 政 和 

大阪府立産業技術総合研究所 

(生産者委員)  

大 方 一 三 

加藤発条株式会社特品開発部 

鈴 木 喜久男 

住友特殊金属株式会社技術部 

鈴 木 雄 一 

古河電気工業株式会社横浜研究所 

高 島 孝 弘 

株式会社神戸製鋼所材料研究所 

高 橋   淳 

日本発条株式会社精密ばね事業本部 

(利用者委員)  

大 西 啓 靖 

国立大阪南病院整形外科・人工関節クリニック 

篠 崎 彰 大 

株式会社ワコール中央研究所 

高 橋 純 造 

大阪大学歯学部 

轟   恒 彦 

松下電器産業株式会社空調研究所 

(事務局) 

山 本 紀 征 

シャープ株式会社電化システム研究所 

宮 崎 剛 直 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

広 岡 芳 康 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

JIS改正委員会 構成表(平成12年3月) 

氏名 

所属 

(主査) 

清 水 謙 一 

金沢工業大学高度材料科学研究開発センター 

(幹事) 

小 林 淳 二 

形状記憶合金協会 

(委員) 

大 塚 和 弘 

筑波大学物質工学系 

佐分利 敏 雄 

関西大学工学部材料物性工学科 

坂 本 英 和 

帝京大学理工学部材料科学工学科 

立 石 哲 也 

工業技術院 産業技術融合領域研究所 

浅 井 真 人 

古河電気工業株式会社 研究開発本部 横浜研究所 

大 方 一 三 

株式会社パイオラックスメディカルデバイス 

岡 村 賢 治 

株式会社シグマ開発本部 

関 野 信 雄 

関東特殊製鋼株式会社 精密機材部 

高 橋 裕 也 

大同特殊鋼株式会社星崎工場 

轟   恒 彦 

松下電器産業株式会社エアコン社 

鳴 海 省 吾 

相互発條株式会社 新製品開発部 

山 内   清 

株式会社トーキン電子材料事業本部 

橋 本   進 

財団法人日本規格協会 

(事務局)  

石 田 哲 也 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

日 向 正 範 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

石 原   薫 

財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター 

H 7101 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業標準調査会 標準部会 非鉄金属技術専門委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

神 尾 彰 彦 

東京工業大学名誉教授 

(委員) 

藍 田   勲 

株式会社神戸製鋼所 

有 川 彰 一 

財団法人日本船舶標準協会 

一 瀬   明 

住友金属鉱山株式会社 

今 福   豊 

日本伸銅協会(三菱マテリアル株式会社) 

碓 井 栄 喜 

社団法人軽金属学会(株式会社神戸製鋼所) 

齋 藤 鐵 哉 

独立行政法人物質・材料研究機構 

酒 井 勝 之 

社団法人日本アルミニウム協会(三菱アルミニウム株式会社) 

中 村   守 

独立行政法人産業技術総合研究所 

西 村   尚 

東京都立大学工学部機械工学科 

平 山 晴 彦 

日本鉱業協会 

村 上 陽 一 

社団法人日本電機工業会 

柳 沢 健 史 

古河電気工業株式会社 

山 田 桑太郎 

社団法人日本鉄道車輛工業会