H 7007 : 2002
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,財団法人大阪科学
技術センター付属ニューマテリアルセンター (OSTEC) /財団法人日本規格協会 (JSA) から工業標準原
案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣
が改正した日本工業規格である。これによってJIS H 7007 : 1995は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,一部用語の定義,及び対応英語の改正を行った。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 7007 : 2002
金属系超塑性材料用語
Glossary of terms used in metallic superplastic materials
1. 適用範囲 この規格は,主として,工業的に広く使用されている,微細粒超塑性を示す金属系超塑性
材料に関する主な用語及びその定義について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0201 鉄鋼用語(熱処理)
JIS G 0202 鉄鋼用語(試験)
JIS H 7002 制振材料用語
JIS H 7004 アモルファス金属用語
JIS H 7006 金属基複合材料用語
JIS Z 2500 粉末や(冶)金用語
JIS Z 3001 溶接用語
JIS Z 9211 エネルギー管理用語(その1)
3. 分類 用語の分類は,次による。
a) 一般
b) 材料
c) 特性
d) 空洞
e) 成形
4. 定義 用語及び定義は,次による。
なお,参考のために対応英語を示す。
備考1. 一つの用語欄に,二つ以上の用語が併記してある場合には,記載してある順位に従って優先
的に使用する。
2. 定義欄に太文字で示した用語は,この規格に収録されているものである。
2
H 7007 : 2002
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a) 一般
番号
用語
定義
対応英語(参考)
1001
超塑性
多結晶材料の引張変形において,変形応力が高いひずみ速度依
存性を示し,局部収縮(ネッキング)を生じることなく数百%
以上の巨大な伸び (JIS G 0202) を示す現象。
superplasticity
1002
変態超塑性
変形中の相変態によって得られる超塑性。
温度変化による相変態を利用するものと等温変形中の相変態
を利用するものとがある。
transformation
superplasticity
1003
微細粒超塑性,
構造超塑性
温度変化,相変化又は相変態のいずれも伴わない変形によって
得られる超塑性。
微細粒超塑性は,初期結晶粒の寸法を小さくし,それを変形
中もある程度維持することによって得られる。
fine grained
superplasticity,
structural superplasticity
1004
超塑性発現条件
超塑性が現れ,かつ,継続するのに必要な条件。
条件には,内的因子の微細粒組織並びに外的因子の温度及び
ひずみ速度がある。
通常の外的因子としては,材料の融点(絶対温度)の半分以
上の温度と比較的ゆっくりした10−4s−1程度のひずみ速度とで
ある。
また,超塑性変形中,微細粒組織を維持することが重要であ
る。
requirement for
superplasticity
1005
高速超塑性
超塑性発現条件の一つであるひずみ速度が,10−2s−1以上のとき
に発現する超塑性。
high strain rate
superplasticity
b) 材料
番号
用語
定義
対応英語(参考)
2001
超塑性材料
超塑性を示す材料。
金属系材料では,アルミニウム合金系,チタン合金系,銅合
金系,亜鉛合金系,ニッケル合金系,鉄合金系などがあり,金
属間化合物,金属基複合材料 (JIS H 7006) などにも超塑性を示
すものがある。
superplastic materials
2002
微細粒超塑性組織 超塑性に適した組織。
金属系材料では,初期結晶粒の寸法が10μm程度以下の微細
で,かつ,変形中安定した組織。
fine grained superplastic
structure
2003
超塑性組織化処理 微細粒超塑性組織を作るための製造プロセス。
例えば,1)相変態 (JIS H 7002) 及び再結晶 (JIS G 0201) を利
用した結晶粒微細化プロセス,2)急冷凝固法による微細粉末の
製造とその固化とを利用する粉末や(冶)金法 (JIS Z 2500),
3)メカニカルアロイング法 (JIS H 7004) などによる方法があ
る。
processing for fine
grained superplastic
structure
c) 特性
番号
用語
定義
対応英語(参考)
3001
超塑性伸び
超塑性状態で,超塑性材料が示す破断伸び (JIS G 0202)。
superplastic elongation
3002
粒界すべり
隣合う結晶粒が互いにずれる現象。
超塑性の主な変形機構であり,このずれに対して付随調整機
構が働く。
grain boundary sliding
3003
付随調整機構
粒界すべりによって生じた粒界近傍に発生する応力集中を緩和
又は空洞形成を抑制するプロセス。
拡散流動,転位運動などが関与している。
accommodation process
3004
ひずみ速度感受性
指数,m値
一般に変形応力σ (N/mm2) は,ひずみ速度
)
(
1
−s
ε&
の増加によ
って上昇し,その関係が,
m
Kε
σ
&
=
によって表されるとき,
strain rate sensitivity
exponent,
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
mをひずみ速度感受性指数,又は単にm値という。
ここに,Kは定数でありmは,
ε
σ
&
log
log
∂
∂
=
m
で定義
される。
ひずみ速度感受性指数は,超塑性状態ではおよそ0.3以上と
なり,超塑性状態でない場合に比べて大きいので,ひずみ速度
感受性指数の大小は,超塑性発現条件を知るうえで重要な指針
となる。
また,このひずみ速度感受性指数の逆数はn値(応力指数)
である。
m value
3005
K値
一般に,変形応力σ (N/mm2) とひずみ速度
)
(
1
−
s
ε&
との関係が,
m
Kε
σ
&
=
で表される係数で,変形応力のレベル(大きさ)を表
す材料定数である。
超塑性成形において,K値は成形しやすさの目安であり,K
値が小さいほど成形における加工力は小さい。
K value
3006
ひずみ速度急変法 超塑性材料を超塑性変形中にひずみ速度を急激に変化させてひ
ずみ速度感受性指数を求める方法(図1参照)。
図1
strain rate change test,
jump test
3007
S字状曲線
一般に超塑性材料の変形応力とひずみ速度の関係を両対数プロ
ットしたときに得られる曲線の形状(図2参照)。
曲線傾斜の最も大きな領域(高m値領域)を領域IIと呼び,
超塑性の発現する領域に相当する。これよりも低ひずみ速度及
び高ひずみ速度領域をそれぞれ領域I,IIIと呼ぶ。
図2
sigmoidal curve
3008
超塑性変形構成式 超塑性変形の内的因子である結晶粒の寸法と外的因子である温
度及びひずみ速度の関係を表す構成式。
その一般的表現は,次の式の例で表される。
constitutive equation for
superplastic flow
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番号
用語
定義
対応英語(参考)
ε&= (AD0Gb/kT) (b/d) p (σ/G) nexp (−Q/RT)
ここに,D0exp (−Q/RT) :拡散係数 (m2/s) (JIS Z 9211)
G:横弾性係数 (N/mm2)
b:バーガース・ベクトル (m)
T:変形温度 (K)
k:ボルツマン定数 (J/mol/K)
d:結晶粒の寸法 (m) (JIS H 7002)
R:ガス定数 (J/mol/K)
σ:変形応力 (N/mm2)
Q:活性化エネルギー (J/mol)
p:結晶粒度指数
n:応力指数
ε&:ひずみ速度 (s−1)
A:定数
超塑性変形における各値の典型的な値として,n=2 (m=0.5),
p=2〜3,また,活性化エネルギーQは,自己格子拡散の活性化
エネルギーQLと粒界の自己拡散の活性化エネルギーQgbとの二
通りが報告されている。
この式は,簡略化して,
m
ε
σ
&
K
=
を用いる(3004参照)。
3009
ひずみ速度一定試
験
超塑性の基本的特性である変形応力,破断伸びなどを評価する
引張試験の一つである。
クロスヘッド速度一定試験と異なり,試験片平行部のひずみ
速度を常に一定に保つ試験法である。
constant strain rate test
3010
超塑性ひずみ誘起
粒成長
超塑性変形中,ひずみの増大とともに起こる結晶粒の成長又は
粗大化 (JIS G 0201) すること。
その成長速度は,無負荷での粒成長よりも大きい。
superplastic strain
enhanced grain
growth,
superplastic strain
induced grain growth
d) 空洞
番号
用語
定義
対応英語(参考)
4001
空洞,
空洞形成
超塑性変形中に粒界に発生する空孔状の欠陥
超塑性成形後の材料の機械的性質の劣化の主因である。
cavity,
cavitation
e) 成形
番号
用語
定義
対応英語(参考)
5001
超塑性成形
超塑性を利用した塑性加工法の総称。
例として,超塑性ブロー成形,超塑性バルジ成形,超塑性鍛
造などがある。
superplastic forming
5002
超塑性ブロー成形 超塑性材料を超塑性状態でブロー成形すること。
圧力媒体は,主にガス,真空,液体,微粉末などを利用する。
板及び管の超塑性成形の主な成形法である。
superplastic blow
forming
5003
超塑性バルジ成形 超塑性ブロー成形のうち,張出し加工によって膨らみを与える
成形法。
superplastic bulge
forming
5004
超塑性鍛造,
恒温鍛造
超塑性材料を超塑性状態で行う鍛造。
従来の塑性加工法では成形・加工が困難なニッケル基超合金,
チタン合金,金属間化合物などの難加工材の鍛造に利用される
成形法で,温度とひずみ速度とを制御して最適な超塑性状態を
維持しながら鍛造する。
最終製品に近い形状[ニアネットシェイプ (JIS Z 2500)]に
成形可能で,加工代(しろ)を少なくできるので難加工材料に
superplastic forging,
isothermal forging
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H 7007 : 2002
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
番号
用語
定義
対応英語(参考)
適した成形法である。
(JIS Z 2500参照:ホットアイソスタティック成形)
5005
超塑性拡散接合
超塑性を利用した拡散を伴う固相接合。
超塑性材料をインサート材として利用し,非超塑性材料を拡
散接合する方法もある。
(JIS Z 3001参照:拡散接合)
superplastic diffusion
bonding
5006
超塑性成形/拡散
接合
超塑性材料を用いて,成形と拡散接合とを同時に行う一体成形
法。
最終製品に近い寸法・形状をもつ複雑な製品が成形できる。
superplastic forming/
diffusion bonding
5007
背圧成形法
超塑性ブロー成形,超塑性バルジ成形において,成形中の空洞
形成を抑制するために背圧を付加する成形方法(図3参照)。
図3
back pressure forming
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H 7007 : 2002
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
超塑性合金分科会 構成表
氏名
所属
(主査)
○ 西 村 尚
東京都立大学工学部
(グループリーダ) ○ 東 健 司
大阪府立大学工学部
大 沢 泰 明
法政大学工学部
岩 崎 源
姫路工業大学工学部
古 城 紀 雄
大阪大学工学部
高 山 善 匡
宇都宮大学工学部
松 木 賢 司
富山大学工学部
本 橋 嘉 信
茨城大学工学部
鳥 阪 泰 憲
工業技術院機械技術研究所材料工学部
堀 端 真 彦
奈良教育大学教育学部
呂 芳 一
科学技術庁金属材料技術研究所
高 木 譲 一
工業技術院標準部
二 瓶 正 俊
社団法人日本鉄鋼連盟
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
○ 青 田 健 一
株式会社神戸製鋼所
長 田 邦 明
ナス・マードック株式会社
木 村 南
オリエント時計株式会社
田 形 勉
スカイアルミニウム株式会社
○ 前 原 泰 裕
住友金属工業株式会社
水 沼 晋
新日本製鐵株式会社
○ 安 田 健
株式会社日立製作所
山 内 徹
三菱マテリアル株式会社
○ 吉 田 英 雄
住友軽金属工業株式会社
吉 田 裕 志
日本冶金工業株式会社
(事務局)
守 安 禎四郎
財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター
脇 坂 啓 司
財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター
備考 ○印は,ワーキンググループ委員も兼ねる。
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H 7007 : 2002
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
超塑性材料分科会 構成表(平成12年3月)
氏名
所属
(主査)
西 村 尚
東京都立大学大学院工学研究科
(リーダー)
東 健 司
大阪府立大学大学院工学研究科
(委員)
古 城 紀 雄
大阪大学留学生センター
広 橋 光 治
千葉大学工学部
水 沼 晋
神奈川工科大学
本 橋 嘉 信
茨城大学工学部
岩 崎 源
姫路工業大学工学部
高 山 善 匡
宇都宮大学工学部
大 澤 泰 明
法政大学工学部
松 木 賢 司
富山大学工学部
堀 端 眞 彦
奈良教育大学教育学部
呂 芳 一
科学技術庁金属材料技術研究所
鳥 阪 泰 憲
工業技術院機械技術研究所 基礎技術部
向 井 敏 司
大阪市立工業研究所
猪 口 泰 州
富士電波工業株式会社
今 井 克 哉
日本高周波鋼業株式会社技術開発部
長 田 邦 明
日本冶金工業株式会社商品開発部
木 村 南
オリエント時計株式会社
田 形 勉
スカイアルミニウム株式会社技術研究所
藤 原 徹 男
株式会社日立製作所日立研究所
前 原 泰 裕
住友金属工業株式会社エレクトロニクス技術研究所
山 内 徹
三菱マテリアル株式会社総合研究所
吉 田 英 雄
住友軽金属工業株式会社第一部
(事務局)
日 向 正 範
財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター
石 原 薫
財団法人大阪科学技術センター付属ニューマテリアルセンター
日本工業標準調査会 標準部会 非鉄金属技術専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
神 尾 彰 彦
東京工業大学名誉教授
(委員)
藍 田 勲
株式会社神戸製鋼所
有 川 彰 一
財団法人日本船舶標準協会
一 瀬 明
住友金属鉱山株式会社
今 福 豊
日本伸銅協会(三菱マテリアル株式会社)
碓 井 栄 喜
社団法人軽金属学会(株式会社神戸製鋼所)
齋 藤 鐵 哉
独立行政法人物質・材料研究機構
酒 井 勝 之
社団法人日本アルミニウム協会(三菱アルミニウム株式会社)
中 村 守
独立行政法人産業技術総合研究所
西 村 尚
東京都立大学工学部
平 山 晴 彦
日本鉱業協会
村 上 陽 一
社団法人日本電機工業会
柳 沢 健 史
古河電気工業株式会社
山 田 桑太郎
社団法人日本鉄道車輌工業会