サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

background image

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 7006-1991 

金属基複合材料用語 

Glossery of terms used in metal matrix composites 

1. 適用範囲 この規格は,主として繊維を複合した金属基複合材料に関する主な用語及びその定義につ

いて規定する。 

2. 分類 用語の分類は,次による。 

(1) 複合材料 

(2) 素材 

(3) 成形法 

(4) 物性・評価 

3. 用語及び定義 用語及び定義は,次による。 

なお,参考のために対応英語を示す。 

備考1. 用語の中で ( ) を付けてあるものについては,同義又は略号を示す。 

2. 用語の定義の中に太文字で示した用語は,この規格に収録されているものである。 

(1) 複合材料 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

1001 金属基複合材料, 

(金属系複合材料), 
 (MMC)  

金属をマトリックス(2001参照)とする複合材料。 

metal matrix composite 

1002 繊維強化金属, 

 (FRM)  

長繊維(2003参照)や短繊維(2004参照)で強化した金属基
複合材料(1001参照)。 

fiber reinforced metal 

1003 一方向繊維強化金属 

一方向に配列されている繊維で強化した金属基複合材料(1001
参照)。 

unidirectionally fiber 

reinforced metal 

1004 ウイスカ強化金属 

セラミックスなどの高強度・高弾性率のウイスカ(2013参照)
によって強化した金属基複合材料(1001参照)。 

whisker reinforced metal 

1005 粒子強化金属, 

(粒子分散強化金属) 

粒子状の強化材(2002参照)によって,力学的特性などを向
上させた金属基複合材料(1001参照)。金属材料又はセラミッ
クス材料として取り上げられている析出強化合金,サーメッ
ト,酸化物粒子分散強化合金 (ODS) などは含まない。 

particle reinforced metal 

(2) 素材 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

2001 マトリックス, 

(母材), 
(基材) 

複合材料における素地材料。 

matrix 

background image

H 7006-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

2002 強化材 

マトリックス(2001参照)の強化を目的として複合材料に用
いる材料。 

参考 連続又は不連続の繊維状,粒子状,りん片状などの

形態がある。 

reinforcement 

2003 長繊維, 

(連続繊維) 

連続した繊維。 

参考 強化材として使用した場合,複合材料の中で連続し

た状態で存在する。 

continuous fiber,  
filament 

2004 短繊維 

繊維長が短いか又は短く切断した繊維。 
ウイスカ(2013参照)を含む。 

参考 強化材として使用した場合,複合材料の中で不連続

な状態で存在する。 

short fiber,  
discontinuous fiber,  
chopped fiber 

2005 CVD系繊維 

タングステン,炭素などをしん(芯)線としてほう素(ボロン),
炭化けい素などを化学蒸着 (CVD) 法によって析出させた繊
維。 

chemical vapor deposited 

fiber 

2006 前駆体系繊維 

繊維状の高分子材料,金属アルコキシドなどから焼成した繊
維。 

参考 炭素繊維,炭化けい素繊維,アルミナ繊維などがあ

る。 

fiber form precursor 

2007 金属繊維 

金属を繊維状にしたもの。 

参考 タングステン,モリブデンなどの高融点金属,ステ

ンレス鋼やピアノ線などの高強度金属,ベリリウム
などの高比弾性率金属の繊維などがある。 

metal fiber 

2008 無機繊維, 

(セラミック繊維) 

無機質を主成分とする繊維。 
金属繊維(2007参照)は含まない。 

inorganic fiber,  
ceramic fiber 

2009 ボロン繊維 

タングステン,炭素などをしん線として,ほう素(ボロン)を
化学蒸着 (CVD) 法によって析出させた繊維。 

参考 通常,直径は0.1〜0.2mmである。表面改質のため

に炭化けい素,炭化ほう素などの被覆を行ったもの
もある。 

boron fiber 

2010 炭素繊維, 

(カーボン繊維) 

ポリアクリロニトリル,レーヨン,ピッチなどの有機繊維を加
熱分解して得られた,実質的に炭素元素だけからなる繊維状の
炭素材料。 

carbon fiber,  
graphite fiber 

2011 炭化けい素繊維 

炭化けい素を主成分とする繊維。 

参考 前駆体系繊維を焼成したものと,しん線上に化学蒸

着 (CVD) 法によって炭化けい素を析出させたもの
との二種類がある。 

silicon carbide fiber 

2012 アルミナ繊維 

アルミナを主成分とする繊維。 

参考 製造方法の相異によって,種々の結晶構造をとり得

る。単結晶質のものと,多結晶質のものとがあり,
それぞれに短繊維と長繊維とがある。 

alumina fiber 

2013 ウイスカ 

転位などの内部欠陥の非常に少ない針状の金属や無機物の結
晶。 

参考 通常,直径数μm以下,長さ数十〜数百μm程度。炭

化けい素ウイスカ,窒化けい素ウイスカなどがある。 

whisker 

2014 プリフォーム 

金属基複合材料(1001参照)をつくるための仮成形体。 

参考 あらかじめ強化材だけを仮成形したものや,強化材

とマトリックスとを複合化してワイヤ状やシート状
にしたものなどがある。 

preform 

background image

H 7006-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

2015 ワイヤプリフォーム 

強化繊維の束に金属を浸透させたワイヤ状のプリフォーム
(2014参照)。 

composite wire,  
precursor wire,  
wire preform 

2016 グリーンテープ 

マトリックス金属の溶射や有機系接着剤で強化繊維を固定し
たテープ状又はシート状プリフォーム。 

参考 マトリックス金属はく(箔)上に形成したものもあ

る。 

green tape 

2017 モノレーヤテープ 

繊維が一層に並んだテープ状プリフォーム。 

mono-layer tape 

(3) 成形法 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

3001 溶融金属浸透法, 

(溶浸法) 

溶融金属を繊維間に浸透させて,複合材料を製造する方法。 liquid metal infiltration 

3002 高圧鋳造法, 

(溶湯鍛造法) 

金型内に溶湯を注入し,高い圧力を付加しながら凝固させる鋳
造法。 

参考 金属基複合材料を製造する場合には金型内に強化材

をあらかじめ装入しておく。 

squeeze casting 

3003 コンポキャスティング 固液共存状態の金属をかくはんしつつ,粒子,ウイスカ(2013

参照)などを投入して均一に混合,分散させ,複合化する方法。 

compocasting 

3004 拡散接合法 

固相域で温度,圧力を高め,原子の拡散によって材料を結合す
る方法。 

diffusion bonding 

3005 ホットプレス法 

真空又は不活性ガス雰囲気中で,マトリックス金属の融点又は
固相線以下の温度に加熱,一軸加圧し,複合化する方法。 

参考 固液共存領域で複合化する場合もある。 

hot pressing 

3006 熱間静水圧プレス法, 

 (HIP)  

ち密な金属基複合材料(1001参照)を得るために,アルゴン
ガスなどの気体を圧力媒体として,高温,高圧力下であらゆる
方向から均等に加圧する方法。 

hot isostatic pressing 

3007 ロール成形法 

ロール圧下力によって,マトリックス金属の塑性流動及び拡散
接合を利用して複合化する方法。 

roll diffusion bonding 

3008 シートインサート法 

主体となるマトリックス金属より低い溶融温度の金属シート
をシート状プリフォーム間に挿入,積層し,成形する方法。 

sheet insert bonding 

3009 粉末や(冶)金法 

マトリックス金属の粉末と強化材(2002参照)とを混合,加
圧,焼結して一体化する方法。 

powder metallurgy 

3010 プラズマ溶射法 

配列した強化繊維に,プラズマトーチでマトリックス金属を溶
射したり,基板上に短繊維(2004参照),ウイスカ(2013参照),
粒子とともにマトリックス金属を溶射する方法。 

plasma spraying 

3011 イオンプレーティング 蒸発させた原子をイオン化し,さらに電界によって加速して繊

維に付着させる方法。 

参考 繊維にマトリックス金属を被覆したり,繊維表面を

改質するために用いる。 

ion plating 

3012 表面改質 

強化材(2002参照)とマトリックス(2001参照)とのぬれ性
(4008参照)の向上や,化学反応の抑制のために,強化材の
表面に処理を施すこと。 

参考 ぬれ性の向上のためには金属を被覆し,反応の抑制

のためにはセラミックスを被覆することが多い。 

surface modification 

background image

H 7006-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(4) 物性・評価 

番号 

用語 

定義 

対応英語(参考) 

4001 複合則 

複合材料の弾性率,強度,その他の物性値を,主として繊維体
積含有率(4002参照)の関数として表す関係式。 

参考 通常,下記のような線形関係式を指す。 

Xc=VfXf+ (1−Vf) Xm 

ただし,Xc, Xf及びXmはそれぞれ複合材料,繊維

及びマトリックスの物性値,Vfは繊維体積含有率で
ある。 

rule of mixtures 

4002 繊維体積含有率 

複合材料の見かけの体積に対する繊維の体積割合。 

volume fraction of fiber 

4003 空孔率, 

(気孔率), 
(ボイド率) 

複合材料の見かけの体積に対する空孔の体積割合。 

void content 

4004 繊維配向角 

基準方向と繊維とのなす角度。 

fiber orientation angle 

4005 アスペクト比 

強化繊維の長さと,長さ方向に垂直な断面の直径との比。 

aspect ratio 

4006 界面 

強化材(2002参照)とマトリックス(2001参照)との境界面。 interface 

4007 適合性 

強化材(2002参照)とマトリックス(2001参照)との相性。 

参考 その良否は界面における反応性,ぬれ性,接着性な

どに起因し,複合材料の着目される特性から判断さ
れる。 

compatibility 

4008 ぬれ性 

液体が固体表面の上に広がる性質。 

参考 ぬれの程度は,通常接触角の測定によって示され,

固体/気体,液体/気体,液体/固体間の界面張力
によって定まる。 

wettability 

4009 プルアウト 

破断時に繊維がマトリックス金属から引き抜かれること。 

pull-out 

H 7006-1991  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

金属基複合材料用語JIS原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

○ 若 島 健 司 

東京工業大学精密工学研究所 

(幹事) 

○ 北 村   厚 

東レ株式会社 

○ 平 野 一 美 

工業技術院機械技術研究所 

○ 塩 田 一 路 

科学技術庁金属材料技術研究所 

○ 澤 田 吉 裕 

工業技術院大阪工業技術試験所 

○ 小 松 幹 也 

日産自動車株式会社 

宇都宮   真 

三菱電機株式会社 

坂 本   昭 

三菱重工業株式会社 

伊 藤 好 二 

川崎重工業株式会社 

榊 原 俊 夫 

富士重工業株式会社 

西 出 重 人 

石川島播磨重工業株式会社 

伊 丹   哲 

住友重機械工業株式会社 

溝 口 孝 遠 

株式会社神戸製鋼所 

外 山 和 男 

住友金属工業株式会社 

志 賀 千 晃 

川崎製鉄株式会社 

今 井 義 一 

日本カーボン株式会社 

西     正 

宇部興産株式会社 

小 屋 美 廣 

三菱化成株式会社 

溝 渕   直 

三菱アルミニウム株式会社 

東   和 臣 

大阪チタニウム製造株式会社 

安 部 康 明 

住友化学工業株式会社 

山 田 銑 一 

株式会社豊田中央研究所 

木 村 章 三 

株式会社島津製作所 

津 金 秀 幸 

工業技術院標準部 

(事務局) 

後 藤 康 夫 

財団法人大阪科学技術センター付属 
ニューマテリアルセンター 

脇 坂 啓 司 

財団法人大阪科学技術センター付属 
ニューマテリアルセンター 

なお,○印は,用語規格作成WG委員を示す。