2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 4311-1993
一般工業用鉛及び鉛合金管
Lead and lead alloy tubes for common industries
1. 適用範囲 この規格は,押出製造した一般工業用に使用する鉛及び鉛合金管(以下,管という。)につ
いて規定する。
なお,水道用鉛管は,JIS H 4312による。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS H 0321 非鉄金属材料の検査通則
JIS H 1121 鉛地金分析方法
JIS H 1123 鉛地金の発光分光分析方法
JIS H 1501 ホワイトメタル分析方法
JIS H 4312 水道用ポリエチレンライニング鉛管
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
2. 種類及び記号 管の種類及び記号は,表1のとおりとする。
表1 管の種類及び記号
種類
記号
参考
特色及び用途
工業用鉛管1種
PbT-1
鉛が99.9%以上の鉛管で,肉厚が厚く,化学工業用に適し,引張強さ10.5N/mm2,伸び60%
程度である。
工業用鉛管2種
PbT-2
鉛が99.60%以上の鉛管で,耐食性が良く加工性に優れ,肉厚が薄く,一般排水用に適し,
引張強さ11.7N/mm2,伸び55%程度である。
テルル鉛管
TPbT
テルルを微量添加した粒子分散強化合金鉛管で,肉厚は工業用鉛管1種と同じ鉛管。耐ク
リープ性に優れ,高温 (100〜150℃) での使用ができ,化学工業用に適し,引張強さ
20.5N/mm2,伸び50%程度である。
硬鉛管4種
HPbT4 アンチモンを4%添加した合金鉛管で,常温から120℃の使用領域においては,鉛合金とし
て高強度・高硬度を示し,化学工業用の装置類及び一般用の硬度を必要とする分野への適
用が可能で,引張強さ25.5N/mm2,伸び50%程度である。
硬鉛管6種
HPbT6 アンチモンを6%添加した合金鉛板で,常温から120℃の使用領域においては,鉛合金とし
て高強度・高硬度を示し,化学工業用の装置類及び一般用の硬度を必要とする分野への適
用が可能で,引張強さ28.5N/mm2,伸び50%程度である。
3. 品質
3.1
外観 管は,実用的に真円に近いものであって,かつ,使用上有害な欠陥があってはならない。
3.2
化学成分 管の化学成分は,表2及び表3による。
2
H 4311-1993
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表2 工業用鉛管1種,2種及びテルル鉛管の化学成分
種類
記号
化学成分 %
Pb
Te
Sb Sn Cu Ag* As* Zn* Fe* Bi*
工業用鉛管1種 PbT-1
残部 0.000 5以下*
合計0.10以下
工業用鉛管2種 PbT-2
合計0.40以下
テルル鉛管
TPbT
0.015〜0.025
合計0.02以下
注*
これらの元素の分析は,特に指定のない限り行わない。
表3 硬鉛管4種及び6種の化学成分
種類
記号
化学成分 %
Pb
Sb
Sn,Cu,その他の不純物*
硬鉛管4種 HPbT4
残部 3.50〜4.50
合計0.40以下
硬鉛管6種 HPbT6
5.50〜6.50
注*
これらの元素の分析は,特に指定のない限り行わない。
3.3
押広げ性 工業用鉛管2種は,6.2の押広げ試験を行った場合,裂けきずを生じてはならない。
4. 寸法,質量及びその許容差
4.1
標準寸法及び質量 管の標準寸法及び質量は,表4〜6による。
表4 工業用鉛管1種及びテルル鉛管の
標準寸法及び質量
内径
mm
肉厚 mm
1本の長さ
m
4.5 6.0
8.0 10.0
1mの質量 kg
20
3.9 5.6 −
−
10
25
4.7 6.6
9.4 −
30
5.5 7.7 10.8 14.3
3
40
7.1 9.8 13.7 17.8
50
8.7 12.0 16.5 21.4
65
11.1 15.2 20.8 26.7
75 12.7 17.3 23.7 30.3
90 15.1 20.5 27.9 35.6
2
100 16.8 22.7 30.8 39.2
備考 1mの質量は,密度を11.34g/cm3
として算出し,小数点第2位を四
捨五入したものである。
3
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表5 工業用鉛管2種の標準寸法及び質量
内径
mm
肉厚
mm
1本の長さ
m
1mの質量
kg
内径
mm
肉厚
mm
1本の長さ
m
1mの質量
kg
20
3.0
2
2.5
75
4.5
2
12.7
25
3.0
90
15.1
30
3.5
100
16.8
40
4.6
125
20.8
50
5.7
150
24.8
65
7.3
75
8.3
90
9.9
100
11.0
備考 1mの質量は,密度を11.34g/cm3として算出し,小数点第2位
を四捨五入したものである。
表6 硬鉛管4種及び6種の
標準寸法及び質量
内径
mm
肉厚
mm
1本の長さ
m
1mの質量 kg
HPbT4 HPbT6
25
4.5
3
4.6
4.6
30
6
7.5
7.4
40
9.6
9.5
50
8
16.1
15.9
65
20.3
20.0
75
23.1
22.8
90 10
34.8
34.3
100
38.3
37.8
備考 1mの質量は,次の密度から算出
し,小数点第2位を四捨五入した
ものである。
HPbT4 11.08g/cm3
HPbT6 10.93g/cm3
4.2
寸法及び質量の許容差 管の寸法及び質量の許容差は,表7及び表8による。
表7 鉛管1種,2種及びテルル鉛管
の寸法並びに質量の許容差
内径
mm
内径の許容差
mm
30未満
±0.5
30以上
65未満
±1.0
65以上
100未満
±1.5
100以上
150未満
±2.0
肉厚
mm
厚さの許容差
mm
長さの許容差
mm
質量の許容差
%
3.0
±0.3
+30
0
±3
4.5〜 6.0
±0.45
8.0〜 10.0
±0.6
4
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表8 硬鉛管4種及び6種の寸法
並びに質量の許容差
内径
mm
内径の許容差
mm
30未満
±0.5
30以上
65未満
±1.0
65以上 150未満
±1.5
肉厚
mm
厚さの許容差
mm
長さの許容差
mm
質量の許容差
%
4.5
±0.4
+30
0
±3
6
±0.5
8
±0.6
10
±0.8
5. 製造方法 管は,押出製管機で製造しなければならない。
なお,テルル鉛管の場合の溶解温度及び注湯温度は,約500℃以上とする。
6. 試験
6.1
化学分析試験 化学分析試験は,次による。
(1) 鉛管については,JIS H 1121又はJIS H 1123による。
(2) テルル鉛管については,添加元素のテルルの分析は附属書によって行い,その他の成分はJIS H 1121
による。
(3) 硬鉛管4種及び6種については,JIS H 1501の規定によってSb,MSn及びCuについて分析を行う。
6.2
押広げ試験 押広げ試験は,試料を空間に手で保持,又はゴム板(厚さ約5mm)上に立てて,木製
又は軽金属製丸矢の底部の径に至るまで管軸に沿って徐々に打ち込む。試料は,鉛管を適当な長さ(200〜
600mm)に切り取る。丸矢は頂角40°,底面の径は鉛管内径の1.5倍の円すい形とする。
7. 検査 検査は,JIS H 0321によるほか,次による。
(1) 工業用鉛管1種及び2種 工業用鉛管1種及び2種は,外観,寸法及び質量を検査するとともに,工
業用鉛管1種は6.1,工業用鉛管2種は6.1及び6.2によって試験を行い,3.及び4.の規定に適合しな
ければならない。
(2) テルル鉛管 テルル鉛管は,外観,寸法及び質量を検査するとともに,6.1によって試験を行い,3.1,
3.2,4.1及び4.2の規定に適合しなければならない。
(3) 硬鉛管4種及び6種 硬鉛管4種及び6種は,外観,寸法及び質量を検査するとともに,6.1によって
試験を行い,3.1,3.2,4.1及び4.2の規定に適合しなければならない。
8. 表示 直管は1本又は一束ごとに,コイル状の管は1巻ごとに,適当な方法によって次の事項を表示
しなければならない。
(1) 種類又はその記号
(2) 寸法(内径×肉厚×長さ)及び質量(計算値)
5
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(3) 製造番号
(4) 製造業者名又はその略号
6
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附属書 鉛中のテルル定量方法
1. 適用範囲 この附属書は,鉛中のテルル定量方法について規定する。
2. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050及びJIS K 0121による。
3. 定量方法 テルルの定量方法は,臭化物・メチルトリオクチルアンモニウムブロミド抽出原子吸光法
による。この方法は,テルル含有率0.002% (m/m) 以上0.03% (m/m) 以下の試料に適用する。
4. 臭化物・メチルトリオクチルアンモニウムロミド抽出原子吸光法
4.1
要旨 試料を硝酸で分解し,硫酸を加え,硫酸の白煙を発生させて硝酸を除去した後,臭化水素酸
を加え,生成するテルルの臭化物錯体をメチルトリオクチルアンモニウムブロミドを含む酢酸ブチルで抽
出し,原子吸光光度計を用いて有機相の吸光度を測定する。
4.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 硝酸 (1+2)
(2) 臭化水素酸 (3+2)
(3) 硫酸 (1+1)
(4) 洗浄液 水550ml,臭化水素酸120ml及び硫酸 (1+1) 330mlを混合する。
(5) 硫酸ナトリウム(無水)
(6) 抽出溶媒 メチルトリオクチルアンモニウムクロリド10mlを酢酸ブチルで希釈して200mlとする。
この溶液を分液漏斗 (500ml) に移し入れ,臭化水素酸 (1+2) 200mlを加え,5分間激しく振り混ぜた
後,水相を取り除く。再び,臭化水素酸 (1+2) 200mlを加えて,5分間激しく振り混ぜた後,水相を
取り除き,有機相を抽出溶媒とする。
(7) 酢酸ブチル
(8) 標準テルル溶液 (5μgTe/ml) テルル[99.9% (m/m) 以上]0.500gをはかり取ってビーカー (200ml) に
移し入れ,時計皿で覆い,硝酸10mlを加え,穏やかに加熱して分解した後,時計皿の下面及びビー
カーの内壁を水で洗浄して時計皿を取り除き,硫酸 (1+1) 40mlを加え,加熱して硫酸の白煙を発生
させる。室温まで放冷した後,水を少量ずつ加えて塩類を溶解する。溶液を500mlの全量フラスコに
水を用いて移し入れ,常温まで冷却した後,水で標線まで薄めて原液 (1mgTe/ml) とする。この原液
を使用の都度,必要量だけ水で正しく200倍に薄めて標準テルル溶液とする。
4.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,1.0gとし,1mgのけたまではかる。
4.4
操作
4.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
(1) 試料をはかり取ってビーカー (200ml) に移し入れる。
(2) 時計皿で覆い,硝酸 (1+2) 15mlを加え,穏やかに加熱して分解する。時計皿の下面及びビーカーの
内壁を水で洗って時計皿を取り除く。硫酸 (1+1) 50mlを加え,加熱して蒸発し,硫酸の白煙を十分
に発生させる。室温まで放冷した後,ビーカーの内壁を少量の水で洗浄し,再び加熱して硫酸の白煙
を発生させる。
(3) 室温まで放冷した後,水20mlを少量ずつ加える。溶液及び沈殿を100mlの全量フラスコに水を用い
7
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て移し入れ,常温まで冷却した後,水で標線まで薄めてよく振り混ぜ,静置して沈殿を沈降させる。
4.4.2
テルルの抽出 テルルの抽出は,次の手順によって行う。
(1) 4.1.1(3)で得た溶液の上澄液10.0mlを分液漏斗 (100ml) に分取し,水を10ml及び臭化水素酸 (3+2) を
正確に10ml加え,水で液量を50mlとする。
(2) 抽出溶媒 [4.2(6)] を正確に10ml加え,約5分間激しく振り混ぜる。静置して二相に分離した後,水
相を除去する。洗浄液 [4.2(4)] を50ml加え,約30秒間激しく振り混ぜ,静置して二相に分離した後,
水相を除去する。
(3) 有機相を乾いたろ紙又は脱脂綿を通して,目盛付共栓試験管 (15〜20ml) に移し入れ,酢酸ブチルを
加えて液量を正確に10mlとする(1)。
注(1) 乾いたろ紙又は脱脂綿による脱水が不十分で,吸光度測定時のベースラインが不安定なときに
は,硫酸ナトリウム(無水)約1gを加えて脱水する。
4.4.3
吸光度の測定 4.4.2(3)で得た有機相の一部を,酢酸ブチルを用いて零点を調整した原子吸光光度
計の空気・アセチレンフレーム中に噴霧し,波長214.3nmにおける吸光度を測定する。
4.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
4.6
検量線の作成 標準テルル溶液 [4.2(8)] 0〜6.0ml(テルルとして0〜30μg)を,あらかじめ水10ml
を入れた数個の分液漏斗 (100ml) に段階的に加え,それぞれに硫酸 (1+1) を5ml及び臭化水素酸 (3+2)
を正確に10ml加え,水でそれぞれの液量を50mlとする。以下,4.4.2(2)〜4.4.3の手順に従って試料と平
行して操作し,得た吸光度とテルル量との関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して
検量線とする。
4.7
計算 4.4.3で得た吸光度から4.5で得た吸光度を差し引いて得られる吸光度と,4.6で作成した検量
線とからテルル量を求め,試料中のテルル含有率を,次の式によって算出する。
100
100
10
%(m/m)
×
×
=
m
A
テルル
ここに, A: 分取した試料溶液中のテルル検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
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JIS H 4311 原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
西 川 精 一
東京大学名誉教授
黒 木 勝 也
財団法人日本規格協会
服 部 幹 雄
通商産業省工業技術院標準部
古 賀 英 宜
通商産業省基礎産業局
榎 本 政 実
通商産業省基礎産業局
津 金 秀 幸
通商産業省工業技術院標準部
大 熊 敬 尚
財団法人日本規格協会
大 森 悟 郎
科学技術庁金属材料技術研究所
久保田 賢 二
日本鉛亜鉛需要研究会
佐々木 巌
全国管工事協同組合連合会
久 野 義 雄
斉久工業株式会社
鶴 田 利 行
硫酸協会
岡 井 正 孝
佐藤金属株式会社
宮 崎 正 巳
全国鉛管鉛板工業協同組合
菅 野 宗 敏
株式会社ニチエン化工
田 村 省 三
日東化工機株式会社
井 上 多喜男
合資会社井上金属工業所
湯 沢 誠
東京鉛株式会社
鈴 木 郁 夫
ヨシザワLA株式会社
(事務局)
矢 口 隆 一
全国鉛管鉛板工業協同組合