H 2123 : 1999
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS H 2123 : 1990は改正され,この規格に置き換えられる。この規格は,
国際規格の整合化を図るためISO 431を元に作成した日本工業規格である。
JIS H 2123には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) 銅−水素ぜい化試験
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 2123 : 1999
形銅
Copper billets and cakes
序文 この規格は,1981年に第2版として発行されたISO 431 : 1981, Copper refinery shapesを元に,対応
する部分(品質の外観及び物性,寸法の許容差,表示等)については技術的内容を変更することなく作成
した日本工業規格であるが,試験方法のうち,対応国際規格には規定されていない規定内容(繰返し曲げ
試験)を日本工業規格として追加し,また,適用範囲,種類,等級,品質の化学成分は対応国際規格の内
容を変更した。
なお,点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,展伸材に用いる無酸素形銅,タフピッチ形銅及びりん脱酸形銅(以下,形銅
という。)について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 431 : 1981 Copper refinery shapes
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS C 3002 電気用銅線及びアルミニウム線試験方法
JIS H 0301 非鉄金属地金のサンプリング,試料調製及び分析検査通則
JIS H 1051 銅及び銅合金中の銅定量方法
JIS H 1058 銅及び銅合金中のりん定量方法
JIS H 1101 電気銅地金分析方法
JIS H 1202 電子管用無酸素銅分析方法
ISO 2626 Copper-hydrogen embrittlement test
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H 2123 : 1999
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3. 種類及び記号 形銅の種類及び記号は,表1による。
表1 種類及び記号
種類
記号
用途例(参考)
名称
合金番号
形状
無酸素形銅 1種 C 1011 ビレット C 1011 CB
電子管用の棒・線・管など
ケーク
C 1011 CC
電子管用の板・条など
2種 C 1020 ビレット C 1020 CB
棒,線,管,ブスバーなど
ケーク
C 1020 CC
板,条,ブスバーなど
タフピッチ形銅
C 1100 ビレット C 1100 CB
棒,線,管,ブスバーなど
ケーク
C 1100 CC
板,条,ブスバーなど
りん脱酸形
銅
1種 C 1201 ビレット C 1201 CB
棒,線,管など
ケーク
C 1201 CC
板,条など
2種 C 1220 ビレット C 1220 CB
棒,線,管など
ケーク
C 1220 CC
板,条など
4. 品質
4.1
外観 形銅は,実用上有害な収縮孔,鋳割れ,鋳巣,異物の巻込みなどがなく品質均一でなければ
ならない。
4.2
化学成分 化学成分は,表2による。
表2 化学成分
単位 %
種類
化学成分
Cu
P
O
その他
無酸素形銅
1種 99.99以上 0.0003以下 0.001以下 Pb 0.001以下
Zn 0.000 1以下
Bi 0.001以下
Cd 0.000 1以下
Hg 0.000 1以下
S 0.001 8以下
Se 0.001以下
Te 0.001以下
2種 99.96以上
−
0.001以下
−
タフピッチ形銅
99.90以上
−
−
−
りん脱酸形
銅
1種 99.90以上 0.004以上
0.015未満
−
−
2種 99.90以上 0.015以上
0.040以下
−
−
4.3
水素ぜい性 水素ぜい性は,次による。
4.3.1
C 1011及びC 1020は,6.2の水素ぜい化試験において,6.2.1の繰返し曲げ試験で,繰返し曲げを4
回行って破断してはならない。又は,6.2.2の顕微鏡試験を行って結晶粒界に水素ぜい化特有の多数の気泡
又は粒界分離を示す組織があってはならない。
4.3.2
C 1201は,6.2の水素ぜい化試験を行った場合,6.2.2の顕微鏡試験において,結晶粒界に水素ぜい
化特有の多数の気泡又は,粒界分離を示す組織があってはならない。
4.3.3
4.3.1及び4.3.2とは別にISO 2626に従い,同様な試験を行ってもよい。
4.4
導電率 導電率は,次による。
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4.4.1
C 1011は,6.3によって導電率試験を行って,101%以上とする。
4.4.2
C 1020は,6.3によって導電率試験を行って,100%以上とする。
4.4.3
C 1100は,6.3によって導電率試験を行って,100%以上とする。
なお,ISO 431に規定される導電率の表記については,表3に示す。
表3 導電率換算表
電気特性
規格値
換算値(参考)
導電率
導電率
質量抵抗率
体積抵抗率
%IACS 最小
MS/m 最小
Ωg/m2 最大
Ωmm2/m 最大
100.0
58.00
0.153 28
0.017 24
101.0
58.58
0.151 76
0.017 07
5. 寸法の許容差 寸法の許容差は,表4及び表5による。
表4 ビレット寸法の許容差
区分
許容量
径
200mm以下
±3.0mm
200mmを超えるもの 当事者間の協定による
長さ
±2%
備考 長さの許容差を (+) 又は (−) だけに指定す
る場合は,上記数値の2倍とする。
表5 ケークの寸法の許容差
区分
寸法
許容量
厚さ及び幅 200mm以下
±6mm
200mmを超えるもの ±3%
長さ
200mm以下
±6mm
200mmを超えるもの ±3%
6. 試験
6.1
化学分析試験 化学成分の分析試験は,次による。
6.1.1
C 1011は,JIS H 1202及びJIS H 0301による。
6.1.2
C 1020は,JIS H 1101による。
6.1.3
C 1100は,JIS H 1101による。
6.1.4
C 1201及びC 1220は,JIS H 1051及びJIS H 1058による。
6.2
水素ぜい化試験 水素ぜい化試験は,次の手順による。
C 1011,C 1020,及びC 1201の水素ぜい化試験は,形銅の一部を鍛造又は熱間圧延をした後,径2.0〜
3.0mmの線に引き抜いた試料から取った試験片を用い,水素気流中で850±25℃,30分間加熱した後,室
温で次の繰返し曲げ試験又は顕微鏡試験を行う。
なお,この方法によらず,ISO 2626に従い同様な試験を行い,これに代えることもできる。
6.2.1
繰返し曲げ試験 繰返し曲げ試験は,曲げの内側半径を線径の2.5倍とし,繰返し曲げ方向は図1
のとおり交互に反対方向に行い,垂直の位置から90°曲げた後,もとの位置に戻し,これを1回とする。
次に反対方向へ90°曲げた後,もとの位置に戻し,これを2回とし,これを継続する。
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図1 曲げ試験要領
6.2.2
顕微鏡試験 顕微鏡試験は,試験片を研磨しエッチングを行い,倍率を150〜300倍にして顕微鏡
で観察する。
6.3
導電率試験 導電率試験は,次による。
導電率試験は,形銅の一部を鍛造又は熱間圧延をした後,径2.0〜3.0mmの線に引き抜き,約500℃で
30分以上無酸化焼なまししたものをJIS C 3002の6.導電率によって行う。
7. 検査 検査は,次のとおり行う。
7.1
形銅は,外観及び寸法を検査するとともに6.によって試験を行い,4.の規定に合格しなければならな
い。ただし,受渡当事者間の協定によって,4.3.2及び4.4.3を省略することができる。
7.2
その他一般事項は,JIS H 0301による。
8. 表示 製品又は送り状には,次の事項を適切な方法によって表示しなければならない。ただし,受渡
当事者間の協定によって,a)及びb)を省略することができる。
a) 種類又はその記号
b) 製造番号又はそれを表す記号
c) 製造業者名又はその略号
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附属書(参考) 銅−水素ぜい化試験
序文 この附属書は、引用規格であるISO 2626 : 1973, Copper-hydrogen embrittlement testを翻訳したもので,
規定の一部ではない。
なお,引用規格であるISO/R398は1985年にISO 7438へ統廃合されている。
1. 適用範囲 この附属書は,脱酸銅及び無酸素銅の水素ぜい化試験について,記述する。
2. 引用規格
ISO/R398 Bend test for copper and copper alloys
ISO 2625 Copper and copper alloys−Reverse bend
ISO 7438 : 1985 Metallic materials−Bend test
3. 要旨 試験片を準備し,水素気流中で加熱する。金属の中に酸素があれば,反応が起き,ぜい化が発
生する。空気と試験片が接触しないように冷却する。この後ぜい化は,密着曲げか繰返し曲げによって,
また顕微鏡観察で判定する。
4. 試験片
4.1
密着曲げ試験片 都合のよい長さで,厚さ又は直径が12mm以下では原寸大とする。すべての角は,
丸めて滑らかにする。原寸大でない試験片は,材料の原表面がある程度含まれているものとする。
4.2
繰返し曲げ試験片 適切な長さで,厚さ又は直径が2.5mm以下のものとする。すべての角は,丸め
て滑らかにする。原寸大でない試験片は,材料の原表面がある程度含まれているものとする。
4.3
顕微鏡観察の試験片 都合のよい大きさで,少なくとも一つの面は,材料表面が含まれるものとす
る。
5. 手順
5.1
水素中暴露 上記で準備した試験片を,10%以上水素を含む雰囲気炉で加熱する。825〜875℃で30
分間保持し,炉内雰囲気の中で冷却するか水冷する。
5.2
ぜい化検査
5.2.1
密着曲げ試験 常温で密着曲げ試験を行う。長手方向に直角に一様な力を加えて,試験片の図AB
を曲げ,A端がCの位置になるようにする。材料の原表面が,曲げの外側になるようにすべきである。(附
属書図1参照)
附属書図1 密着曲げ試験
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曲げは,通常2段階で行う。第1段階は,V形に試験片を曲げるためにISO 7438に規定しているいずれ
かの方法による。試験方法の選択で,試験片の最小長さが決まる。
第2段階は,V形に開いている端を例えばバイスで締めるように,試験片の2本の足を一様な力で接触
するようにする。曲げの後,割れの有無について材料の原表面を目視検査する。
5.2.2
繰返し曲げ試験 ISO 2625に従って繰返し曲げ試験を行う。
試験片を10回繰返し曲げする。材料の原表面に最大応力が掛かるようにする。曲げの後,割れの有無に
ついて,拡大鏡なしで目視によって,原表面を検査する。
5.2.3
顕微鏡検査 試験片の外面と直角に切断する。断面を研磨し,必要に応じてエッチングする。倍率
200倍の顕微鏡で,ガス反応の形跡,又はぜい化による結晶の粒界分離を検査する。
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
後 藤 佐 吉
東京大学名誉教授
(主査)
菅 沼 惇
三菱マテリアル株式会社
(委員)
小 川 修
東京大学元教授
長谷川 良 祐
科学技術庁金属材料技術研究所
後 藤 敬 一
資源エネルギー庁鉱業課
大 嶋 清 治
工業技術院標準部
長谷部 守 邦
社団法人日本電線工業会
藤 沢 裕
日本伸銅協会
恒 原 正 明
古河電気工業株式会社
波多野 和 浩
日本鋳銅株式会社
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
北 村 修
住友金属鉱山株式会社
井 上 和 義
東邦亜鉛株式会社
渡 辺 堅 治
同和鉱業株式会社
佐 藤 啓 一
日鉱金属株式会社
中 尾 靖
古河機械金属株式会社
栗 栖 一 之
日本冶金工業株式会社
藤 川 充 由
三井金属株式会社
神 尾 悟
三菱マテリアル株式会社
(関係者)
榎 本 正 敏
工業技術院標準部
和 田 隆 光
財団法人日本規格協会
柿 本 明 廣
三菱マテリアル株式会社
(事務局)
渡 辺 昌 弘
日本鉱業協会
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
工 藤 大 和
日本鉱業協会