H 1699:2006
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,社団法人新金属協
会(JSNM)/財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによってJIS H 1699:1999は改正され,また,JIS H 1682:2002は廃止・統合され,この規格に置き
換えられる。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
H 1699:2006
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 一般事項 ························································································································ 1
4. 分析方法の区分 ··············································································································· 1
5. ICP発光分光分析法 ········································································································· 2
5.1 試薬 ···························································································································· 2
5.2 装置及び測定条件 ·········································································································· 4
5.3 試料はかりとり量 ·········································································································· 6
5.4 操作 ···························································································································· 6
5.5 空試験 ························································································································· 7
5.6 検量線の作成 ················································································································ 7
5.7 計算 ···························································································································· 7
6. 陰イオン交換分離ICP発光分光分析法 ················································································ 9
6.1 試薬 ···························································································································· 9
6.2 装置,器具及び測定条件 ································································································ 10
6.3 試料はかりとり量 ········································································································· 10
6.4 操作 ··························································································································· 10
6.5 空試験 ························································································································ 11
6.6 検量線の作成 ··············································································································· 11
6.7 計算 ··························································································································· 11
7. ICP発光分光分析法によるけい素の定量方法 ······································································· 14
7.1 水 ······························································································································ 14
7.2 器具 ··························································································································· 14
7.3 試薬 ··························································································································· 14
7.4 装置及び測定条件 ········································································································· 14
7.5 試料はかりとり量 ········································································································· 15
7.6 操作 ··························································································································· 15
7.7 空試験 ························································································································ 16
7.8 検量線の作成 ··············································································································· 16
7.9 計算 ··························································································································· 16
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日本工業規格 JIS
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タンタルのICP発光分光分析方法
Methods for ICP emission spectrometric analysis of tantalum
1. 適用範囲 この規格は,ICP発光分光法によるタンタル中のアルミニウム,カルシウム,クロム,銅,
鉄,マグネシウム,マンガン,モリブデン,ニオブ,ニッケル,チタン,タングステン及びけい素の定量
方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS H 1680 タンタル−分析方法通則
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行精度及
び再現精度を求めるための基本的方法
3. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1680,JIS K 0050,JIS K 0116,JIS K 0557及びJIS Z
8402-2による。
4. 分析方法の区分 タンタル中の各元素の定量方法は,次のいずれかによる。
a) ICP発光分光分析法 この方法は,試料をふっ化水素酸と硝酸で分解し,これらを含んだまま耐ふっ
化水素酸試料導入装置(1)を装備したICP発光分光分析装置を用いてけい素を除いた不純物元素を直接
測定する方法で,定量元素及び定量範囲は,表1による。
注(1) 耐ふっ化水素酸試料導入装置は,分析装置と試料溶液が接触する部分がふっ化水素酸に侵され
ない材質で構成されているものをいう。
b) 陰イオン交換分離ICP発光分光分析法 この方法は,試料をふっ化水素酸と硝酸で分解し,陰イオン
交換分離法でタンタルを分離後,硫酸白煙処理によってふっ化水素酸と硝酸を除去して,通常の石英・
ガラス製試料導入装置を装備したICP発光分光分析装置を用いてけい素を除いた不純物元素を測定す
る方法で,定量元素及び定量範囲は,表2による。
c) ICP発光分光分析法によるけい素の定量方法 この方法は,けい素の揮散を防止するため,硝酸ナト
リウム共存下で試料をふっ化水素酸と硝酸で分解し,これらを含んだまま耐ふっ化水素酸試料導入装
置(1)を装備したICP発光分光分析装置を用いてけい素を直接測定する方法で,けい素の定量範囲は,
表3による。
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表 1 ICP発光分光分析法の定量元素及び定量範囲
定量元素
定量範囲
%(質量分率)
定量元素
定量範囲
%(質量分率)
アルミニウム
0.001 0〜0.020
マンガン
0.000 5〜0.020
カルシウム
0.000 5〜0.020
モリブデン
0.000 5〜0.050
クロム
0.000 5〜0.050
ニオブ
0.001 0〜0.20
銅
0.000 5〜0.050
ニッケル
0.000 5〜0.050
鉄
0.000 5〜0.050
チタン
0.000 5〜0.020
マグネシウム
0.000 5〜0.020
タングステン
0.003 0〜0.10
表 2 陰イオン交換分離ICP発光分光分析法の定量元素及び定量範囲
定量元素
定量範囲
%(質量分率)
定量元素
定量範囲
%(質量分率)
アルミニウム
0.000 2〜0.020
マンガン
0.000 1〜0.020
カルシウム
0.000 2〜0.020
モリブデン
0.000 3〜0.020
クロム
0.000 3〜0.020
ニオブ
0.000 3〜0.020
銅
0.000 1〜0.020
ニッケル
0.000 1〜0.020
鉄
0.000 8〜0.020
チタン
0.000 1〜0.020
マグネシウム
0.000 1〜0.020
タングステン
0.000 4〜0.020
表 3 ICP発光分光分析法によるけい素の定量範囲
定量元素
定量範囲%(質量分率)
けい素
0.000 5〜0.020
5. ICP発光分光分析法 試料をふっ化水素酸及び硝酸で分解した後,ICP発光分光分析装置のアルゴン
プラズマ中に噴霧し,定量元素の発光強度を測定する。
5.1
試薬 試薬は,次による(2)。
注(2) 試薬類は,JIS K 0116の5.4.2(試薬類)で規定するものも使用できる。
a) 硝酸
b) 硝酸(1+1)
c) 塩酸(1+1,1+9)
d) ふっ化水素酸(1+1)
e) 検量線作成用タンタル タンタル含有率99.9 %(質量分率)以上のタンタルで,定量元素を含有しな
いもの,又は定量元素の含有率が既知で,試料の含有率よりもできるだけ低いものを用いる。
f)
標準アルミニウム溶液A(Al:100 μg/mL) アルミニウム[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをは
かりとり,ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(1+1)20 mLを加えて穏やかに加
熱して分解する。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取
り除く。溶液を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準アルミニウ
ム溶液Aとする。
g) 標準アルミニウム溶液B(Al:10 μg/mL) 標準アルミニウム溶液A[f)]を使用の都度,必要量だ
け水で正確に10倍に薄めて標準アルミニウム溶液Bとする。
h) 標準カルシウム溶液A(Ca:100 μg/mL) 110 ℃で3時間乾燥してデシケーター中で室温まで放冷
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した炭酸カルシウムを正確に0.250 gはかりとり,ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,
塩酸(1+1)10 mLを少量ずつ加えて分解した後,加熱して二酸化炭素を追い出す。常温まで冷却し
た後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000 mLの全量フ
ラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準カルシウム溶液Aとする。
i)
標準カルシウム溶液B(Ca:10 μg/mL) 標準カルシウム溶液A[h)]を使用の都度,必要量だけ水
で正確に10倍に薄めて標準カルシウム溶液Bとする。
j)
標準クロム溶液A(Cr:100 μg/mL) クロム[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,ビ
ーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(1+1)30 mLを加えて穏やかに加熱して分解す
る。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液
を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準クロム溶液Aとする。
k) 標準クロム溶液B(Cr:10 μg/mL) 標準クロム溶液A[j)]を使用の都度,必要量だけ水で正確に
10倍に薄めて標準クロム溶液Bとする。
l)
標準銅溶液A(Cu:100 μg/mL) 銅[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,ビーカー(200
mL)に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸(1+1)20 mLを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで
冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000 mLの
全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準銅溶液Aとする。
m) 標準銅溶液B(Cu:10 μg/mL) 標準銅溶液A[l)]を使用の都度,必要量だけ水で正確に10倍に薄
めて標準銅溶液Bとする。
n) 標準鉄溶液A(Fe:100 μg/mL) 鉄[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,ビーカー(200
mL)に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸(1+1)20 mLを加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで
冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄して時計皿を取り除く。溶液を1 000 mLの
全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準鉄溶液Aとする。
o) 標準鉄溶液B(Fe:10 μg/mL) 標準鉄溶液A[n)]を使用の都度,必要量だけ水で正確に10倍に薄
めて標準鉄溶液Bとする。
p) 標準マグネシウム溶液A(Mg:100 μg/mL) マグネシウム[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをは
かりとり,ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,水50 mL加えた後,塩酸(1+1)20 mL
を少量ずつ加えて穏やかに加熱して分解する。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内
壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標
線まで薄めて標準マグネシウム溶液Aとする。
q) 標準マグネシウム溶液B(Mg:10 μg/mL) 標準マグネシウム溶液A[p)]を使用の都度,必要量だ
け水で正確に10倍に薄めて標準マグネシウム溶液Bとする。
r) 標準マンガン溶液A(Mn:100 μg/mL) マンガン[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,
ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(1+1)20 mLを加えて穏やかに加熱して分解
する。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶
液を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準マンガン溶液Aとす
る。
s)
標準マンガン溶液B(Mn:10 μg/mL) 標準マンガン溶液A[r)]を使用の都度,必要量だけ水で正
確に10倍に薄めて標準マンガン溶液Bとする。
t)
標準モリブデン溶液A(Mo:100 μg/mL) モリブデン[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかり
とり,ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(1+1)20 mLと少量の硝酸(1+1)と
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を加え,穏やかに加熱して分解する。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で
洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄
めて標準モリブデン溶液Aとする。
u) 標準モリブデン溶液B(Mo:10 μg/mL) 標準モリブデン溶液A[t)]を使用の都度,必要量だけ水
で正確に10倍に薄めて標準モリブデン溶液Bとする。
v) 標準ニオブ溶液A(Nb:100 μg/mL) ニオブ[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,白
金皿(100番)又は四ふっ化エチレン樹脂ビーカー(100 mL)に移し入れ,ふっ化水素酸(1+1)20 mL
と数滴の硝酸とを加えて加熱して分解し,常温まで冷却した後,溶液を1 000 mLのポリエチレン全量
フラスコ(3)に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準ニオブ溶液Aとする。
注(3) 使用する前に,JIS K 0050の9.3.2(全量フラスコ)に準じて,校正を行う。また,侵食による
分析成分の汚染がなく,校正されたものであればほかの材質のものも使用できる。
w) 標準ニオブ溶液B(Nb:10 μg/mL) 標準ニオブ溶液A[v)]を使用の都度,必要量だけ水で正確に
10倍に薄めて標準ニオブ溶液Bとする。
x) 標準ニッケル溶液A(Ni:100 μg/mL) ニッケル[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,
ビーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,硝酸(1+1)10 mLを加えて穏やかに加熱して分解
する。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶
液を1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準ニッケル溶液Aとす
る。
y) 標準ニッケル溶液B(Ni:10 μg/mL) 標準ニッケル溶液A[x)]を使用の都度,必要量だけ水で正
確に10倍に薄めて標準ニッケル溶液Bとする。
z) 標準チタン溶液A(Ti:100 μg/mL) チタン[99.9 %(質量分率)以上]0.100 gをはかりとり,ビ
ーカー(200 mL)に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸(1+1)80 mLを加えて穏やかに加熱して分解す
る。常温まで冷却した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を塩酸(1+1)で洗浄し,時計皿を取り
除く。溶液を1 000 mLの全量フラスコに塩酸(1+1)を用いて移し入れ,塩酸(1+1)で標線まで薄
めて標準チタン溶液Aとする。
aa) 標準チタン溶液B(Ti:10 μg/mL) 標準チタン溶液A[z)]を使用の都度,必要量だけ塩酸(1+9)
で正確に10倍に薄めて標準チタン溶液Bとする。
ab) 標準タングステン溶液A(W:100 μg/mL) タングステン酸ナトリウム二水和物(Na2WO4・2H2O)
0.180 gをはかりとり,ビーカー(200 mL)に移し入れ,適量の水で溶解する。溶液を1 000 mLの全
量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて標準タングステン溶液Aとする。
ac) 標準タングステン溶液B(W:10 μg/mL) 標準タングステン溶液A[ab)]を使用の都度,必要量だ
け水で正確に10倍に薄めて標準タングステン溶液Bとする。
5.2
装置及び測定条件
5.2.1
ICP発光分光分析装置 ICP発光分光分析装置は,JIS K 0116に規定されたもので,耐ふっ化水素
酸試料導入装置(1)を装備し,5.2.3のa) 及びb) の再現性基準を満足する性能で,表1の各定量元素につい
てそれぞれの定量下限を測定するのに十分な感度をもつものとする。
5.2.2
分析線の選定 定量元素の発光強度の測定に用いる分析線は,表4の波長の分析線を使用する(4)。
注(4) 精度及び真度を確認してあれば,ほかの波長を用いて測定できる。また,高次スペクトル線が
使用可能な装置では,高次スペクトル線を使用できる。バックグラウンド補正機能が付いてい
る装置では,バックグラウンド補正機能についても使用できる。
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表 4 測定波長
単位 nm
定量元素
波長
アルミニウム
167.08
394.40
カルシウム
393.37
クロム
267.72
銅
224.70
鉄
239.56
マグネシウム
279.55
マンガン
294.92
モリブデン
281.62
ニオブ
322.55
ニッケル
352.45
チタン
336.12
タングステン
209.48
224.88
5.2.3
測定条件の設定 測定条件は,各定量元素について,次の二つの再現性基準を両方とも満足するよ
うに設定しなければならない。
a) 定量下限域再現性基準 次の手順に従って操作し,各定量元素ごとに得られる10個の定量値の相対
標準偏差が,表5の相対標準偏差上限値以下でなければならない。
1) 検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入
れ,5.4.1のb) 及びc) の手順に従って操作した後,再現性基準の検討をしようとしている定量元素
の標準溶液を表5に従って正しく加え,5.4.1 d) の操作を行う。
注(5) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカーを使用することができる。その場合,水浴の代わりにホットプ
レートなどによる加熱をすることができる。
2) 検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入れ
る。以下,5.4.1のb)〜d) の手順に従って1) の操作と並行して操作する。
3) 1) 及び2) で得た溶液の一部を用いて,5.4.2の操作を行い,定量元素の発光強度を測定する。
4) 1)〜3) の操作と並行して,5.6の手順に従って定量元素の検量線を作成する。
5) 3)で得た発光強度と,4) で作成した検量線とから定量元素の量を求め,定量元素の定量値(タンタ
ル中の含有率に換算した含有率)を,次の式によって小数点以下4けたまで算出する。
100
000
.1
×
−
=
B
A
C
ここに, C: 定量元素の定量値[%(質量分率)]
A: 1) で調製した溶液を用いて3) で得た発光強度と,4) で作成し
た検量線とから求めた定量元素の量(g)
B: 2) で調製した溶液を用いて3) で得た発光強度と,4) で作成し
た検量線とから求めた定量元素の量(g)
6) 3)〜5) の操作を10回繰り返し,10個の定量値を求め,その相対標準偏差を算出する。
6
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表 5 定量下限域再現性基準試験における標準溶液添加量及び相対標準偏差上限値
分析成分
使用する標準
溶液の適用箇条
標準溶液添加量
mL
分析成分添加量
μg
分析成分換算含有率
%(質量分率)
相対標準偏差上限値
%
アルミニウム
5.1 g)
2.0
20
0.002
10
カルシウム
5.1 i)
1.0
10
0.001
2
クロム
5.1 k)
2.0
20
0.002
5
銅
5.1 m)
2.0
20
0.002
5
鉄
5.1 o)
2.0
20
0.002
5
マグネシウム
5.1 q)
1.0
10
0.001
2
マンガン
5.1 s)
1.0
10
0.001
5
モリブデン
5.1 u)
2.0
20
0.002
5
ニオブ
5.1 w)
2.0
20
0.002
5
ニッケル
5.1 y)
2.0
20
0.002
5
チタン
5.1 aa)
1.0
10
0.001
2
タングステン
5.1 ac)
1.0
100
0.010
5
b) 定量上限域再現性基準 次の手順に従って操作し,各定量元素ごとに得られる10個の定量値の相対
標準偏差が,表6の相対標準偏差上限値以下でなければならない。
1) 検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入
れ,5.4.1のb) 及びc) の手順に従って操作した後,再現性基準の検討をしようとしている定量元素
の標準溶液を,表6に従って正確に加え,5.4.1 d) の操作を行う。
2) a) の2)〜6) の手順に従って操作する。
表 6 定量上限域再現性基準試験における標準溶液添加量及び相対標準偏差上限値
分析成分
使用する標準
溶液の適用箇条
標準溶液添加量
mL
分析成分添加量
μg
分析成分換算含有率
%(質量分率)
相対標準偏差上限値
%
アルミニウム
5.1 f)
2.0
200
0.02
2
カルシウム
5.1 h)
2.0
200
0.02
2
クロム
5.1 j)
5.0
500
0.05
2
銅
5.1 l)
5.0
500
0.05
2
鉄
5.1 n)
5.0
500
0.05
2
マグネシウム
5.1 p)
2.0
200
0.02
2
マンガン
5.1 r)
2.0
200
0.02
2
モリブデン
5.1 t)
5.0
500
0.05
2
ニオブ
5.1 v)
20.0
2 000
0.20
2
ニッケル
5.1 x)
5.0
500
0.05
2
チタン
5.1 z)
2.0
200
0.02
2
タングステン
5.1 ab)
10.0
1 000
0.10
2
5.3
試料はかりとり量 試料はかりとり量は,1.00 gとし,1 mgのけたまではかる。
5.4
操作
5.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入れる。
b) ふっ化水素酸(1+1)8 mLを加えた後,ポリエチレン時計皿(6)で覆い,硝酸(1+1)2 mLを少量ず
つ加えて水浴上で加熱して分解する。
7
H 1699:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注(6) 四ふっ化エチレン樹脂時計皿を使用することができる。
c) 放冷した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。
d) 溶液を100 mLのポリエチレン全量フラスコ(3)に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
5.4.2
発光強度の測定 5.4.1 d) で得た溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中へ噴霧
し,5.2.3で設定した測定条件によって,5.2.2で選定した分析線の波長における各定量元素の発光強度を測
定する。
5.5
空試験 検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)
に移し入れる。以下,5.4.1 b)〜5.4.2の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行う。
5.6
検量線の作成 検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gずつを必要に応じて3〜7個のポリエチレン
ビーカー(100 mL)(5)にはかりとり,5.4.1のb) 及びc) の手順に従って操作した後,定量元素の標準溶液
[5.1 f)〜ac)]を表7に従って正確に加える(7)。以下,5.4.1 d) 及び5.4.2の手順に従って操作し,得た各定
量元素の発光強度と検量線用溶液中の量(8)との関係線を作成し,検量線とする。
注(7) 検量線用溶液の調製は,表7の各溶液の中から試料中の定量成分含有率に適応した検量線用溶
液を少なくとも3点以上選択して行うことができる。
(8) 検量線作成用タンタル中に定量元素が含まれている場合は,標準溶液として添加した元素量に
加算される。
5.7
計算 5.4.2及び5.5で得た発光強度と,5.6で作成した検量線とから,各定量元素量を求め,試料中
の定量元素含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
3
2
1
×
−
−
=
m
A
A
A
E
ここに, E: 定量元素の含有率[%(質量分率)]
A1: 試料溶液中の定量元素検出量(g)
A2: 空試験液中の定量元素検出量(g)
A3: 5.5で用いた検量線作成用タンタル[5.1 e)]1.000 gに含まれる
定量元素量(g)
m: 試料はかりとり量(g)
8
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表 7 検量線用溶液の定量成分添加量
分析成分
検量線用溶液 1
検量線用溶液 2
検量線用溶液 3
検量線用溶液 4
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
アルミニウム
−
0.0
0
−
−
−
−
−
−
5.1 g)
1.0
10
カルシウム
−
0.0
0
−
−
−
−
−
−
5.1 i)
1.0
10
クロム
−
0.0
0
5.1 j)
5.0
500
−
−
−
5.1 k)
1.0
10
銅
−
0.0
0
5.1 l)
5.0
500
−
−
−
5.1 m)
1.0
10
鉄
−
0.0
0
5.1 n)
5.0
500
−
−
−
5.1 o)
1.0
10
マグネシウム
−
0.0
0
−
−
−
−
−
−
5.1 q)
1.0
10
マンガン
−
0.0
0
−
−
−
−
−
−
5.1 s)
1.0
10
モリブデン
−
0.0
0
5.1 t)
5.0
500
−
−
−
5.1 u)
1.0
10
ニオブ
−
0.0
0
5.1 v)
10.0
1 000
5.1 v)
20.0
2 000
5.1 w)
1.0
10
ニッケル
−
0.0
0
5.1 x)
5.0
500
−
−
−
5.1 y)
1.0
10
チタン
−
0.0
0
−
−
−
−
−
−
5.1 aa)
1.0
10
タングステン
−
0.0
0
5.1 ab)
10.0
1 000
−
−
−
5.1 ac)
1.0
10
分析成分
検量線用溶液 5
検量線用溶液 6
検量線用溶液 7
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
アルミニウム
5.1 g)
5.0
50
5.1 f)
1.0
100
5.1 f)
2.0
200
カルシウム
5.1 i)
5.0
50
5.1 h)
1.0
100
5.1 h)
2.0
200
クロム
5.1 k)
5.0
50
5.1 j)
1.0
100
5.1 j)
2.0
200
銅
5.1 m)
5.0
50
5.1 l)
1.0
100
5.1 l)
2.0
200
鉄
5.1 o)
5.0
50
5.1 n)
1.0
100
5.1 n)
2.0
200
マグネシウム
5.1 q)
5.0
50
5.1 p)
1.0
100
5.1 p)
2.0
200
マンガン
5.1 s)
5.0
50
5.1 r)
1.0
100
5.1 r)
2.0
200
モリブデン
5.1 u)
5.0
50
5.1 t)
1.0
100
5.1 t)
5.0
500
ニオブ
5.1 w)
5.0
50
5.1 v)
1.0
100
5.1 v)
2.0
200
ニッケル
5.1 y)
5.0
50
5.1 x)
1.0
100
5.1 x)
2.0
200
チタン
5.1 aa)
5.0
50
5.1 z)
1.0
100
5.1 z)
5.0
500
タングステン
5.1 ac)
5.0
50
5.1 ab)
1.0
100
5.1 ab)
2.0
200
7
H
1
6
9
9
:
2
0
0
6
7
H
1
6
9
9
:
2
0
0
6
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6. 陰イオン交換分離ICP発光分光分析法 試料をふっ化水素酸及び硝酸で分解し,陰イオン交換カラム
に通してタンタルを吸着して除去した後,流出液に硫酸を加えて加熱し,白煙を発生させる。酒石酸及び
水を加えて塩類を溶解した後,ICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,定量元素の発光強
度を測定する。
6.1
試薬 試薬は,次による。
a) 硝酸
b) 硝酸(1+1)
c) ふっ化水素酸
d) ふっ化水素酸(1+1)
e) 硫酸(1+1)
f)
硝酸・ふっ化水素酸溶液A 硝酸77 mL及びふっ化水素酸185 mLに水を加えて液量を1 000 mLとす
る。溶液は,清浄な栓付きのポリエチレン容器に保存する。
g) 硝酸・ふっ化水素酸溶液B 硝酸357 mL及びふっ化水素酸8 mLに水を加えて液量を1 000 mLとす
る。溶液は,清浄な栓付きのポリエチレン容器に保存する。
h) 水酸化カリウム溶液(112 g/L)
i)
硝酸アンモニウム
j)
ふっ化アンモニウム
k) ふっ化水素アンモニウム
l)
硝酸アンモニウム・ふっ化アンモニウム溶液 硝酸アンモニウム240 g,ふっ化アンモニウム18 g及
びふっ化水素アンモニウム14 gを水に溶解し,水で液量を1 000 mLとする。溶液は,清浄な栓付き
のポリエチレン容器に保存する。
m) 酒石酸溶液(100 g/L)
n) 標準アルミニウム溶液A(Al:100 μg/mL) [5.1 f)]による。
o) 標準アルミニウム溶液B(Al:10 μg/mL) [5.1 g)]による。
p) 標準カルシウム溶液A(Ca:100 μg/mL) [5.1 h)]による。
q) 標準カルシウム溶液B(Ca:10 μg/mL) [5.1 i)]による。
r) 標準クロム溶液A(Cr:100 μg/mL) [5.1 j)]による。
s)
標準クロム溶液B(Cr:10 μg/mL) [5.1 k)]による。
t)
標準銅溶液A(Cu:100 μg/mL) [5.1 l)]による。
u) 標準銅溶液B(Cu:10 μg/mL) [5.1 m)]による。
v) 標準鉄溶液A(Fe:100 μg/mL) [5.1 n)]による。
w) 標準鉄溶液B(Fe:10 μg/mL) [5.1 o)]による。
x) 標準マグネシウム溶液A(Mg:100 μg/mL) [5.1 p)]による。
y) 標準マグネシウム溶液B(Mg:10 μg/mL) [5.1 q)]による。
z) 標準マンガン溶液A(Mn:100 μg/mL) [5.1 r)]による。
aa) 標準マンガン溶液B(Mn:10 μg/mL) [5.1 s)]による。
ab) 標準モリブデン溶液A(Mo:100 μg/mL) [5.1 t)]による。
ac) 標準モリブデン溶液B(Mo:10 μg/mL) [5.1 u)]による。
ad) 標準ニオブ溶液A(Nb:100 μg/mL) [5.1 v)]による。
ae) 標準ニオブ溶液B(Nb:10 μg/mL) [5.1 w)]による。
10
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
af) 標準ニッケル溶液A(Ni:100 μg/mL) [5.1 x)]による。
ag) 標準ニッケル溶液B(Ni:10 μg/mL) [5.1 y)]による。
ah) 標準チタン溶液A(Ti:100 μg/mL) [5.1 z)]による。
ai) 標準チタン溶液B(Ti:10 μg/mL) [5.1 aa)]による。
aj) 標準タングステン溶液A(W:100 μg/mL) [5.1 ab)]による。
ak) 標準タングステン溶液B(W:10 μg/mL) [5.1 ac)]による。
6.2
装置,器具及び測定条件
6.2.1
ICP発光分光分析装置 ICP発光分光分析装置は,JIS K 0116に規定されたものとし,表2の各定
量元素についてそれぞれの定量下限を測定するのに十分な感度をもつものとする。
6.2.2
陰イオン交換カラム 陰イオン交換カラムは,次による。
一端を細くしたポリエチレン管(長さ約250 mm,内径10 mm)に水でほぐした脱脂綿又は合成繊維綿
を約5 mmの厚さに緩く詰め,水で膨潤させた強塩基性陰イオン交換樹脂(粒径75〜150 μm)10 mL(9)を
スラリー状にして流し入れ,沈降させた後,その上に水でほぐした脱脂綿又は合成繊維綿を約5 mmの厚
さに緩く詰める。このカラムは,脱脂綿又は合成繊維綿の詰め方を調節するなどして,流出液の流速を毎
分1.0〜1.5 mLになるようにしておく。
注(9) 同種の陰イオン交換樹脂でも交換特性,粒径,適正使用量などの違いがあり,タンタルの吸着,
溶離などの状況が異なることもある。したがって,あらかじめ6.4.3 c)で得られた溶液について
タンタルの流出量が1 mg以下であることを確認しておく。
6.2.3
分析線の選定 定量元素の発光強度の測定に用いる分析線は,表8に示す波長の分析線を使用す
る(4)。
表 8 測定波長
単位 nm
定量元素
波長
アルミニウム
167.08
309.27
カルシウム
393.37
クロム
205.55
銅
324.75
鉄
238.20
マグネシウム
279.55
マンガン
257.61
モリブデン
202.03
ニオブ
309.42
ニッケル
221.65
チタン
334.94
タングステン
207.91
6.3
試料はかりとり量 試料はかりとり量は,1.00 gとし,1 mgのけたまではかる。
6.4
操作
6.4.1
準備操作 準備操作は,次の手順によって行う。
a) 陰イオン交換カラム(6.2.2)に水酸化カリウム溶液[6.1 h)]20 mL,水20 mLを順次通す。
b) 硝酸・ふっ化水素酸溶液A[6.1 f)]100 mLを通す。
11
H 1699:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.4.2
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入れ,ふっ化水素酸(1+1)8 mLを加
えた後,ポリエチレン時計皿(6)で覆い,硝酸(1+1)2 mLを少量ずつ加えて水浴上で加熱して分解す
る。
b) 時計皿の下面を硝酸・ふっ化水素酸溶液A[6.1 f)]5 mLで洗浄して,時計皿を取り除く。
6.4.3
定量成分の分離 定量成分の分離は,次の手順によって行う。
a) 6.4.2 b) で得た溶液を,6.4.1で準備操作の終わった陰イオン交換カラムに通す。次に硝酸・ふっ化水
素酸溶液A[6.1 f)]10 mLでビーカーを洗ってカラムに通し,この操作を更に1回繰り返す。引き続
き硝酸・ふっ化水素酸溶液B[6.1 g)]100 mLをカラムに通し,流出液はすべてポリエチレンビーカー
(200 mL)(10)に受ける(11)。
注(10) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカー(200 mL)を使用することができる。
(11) 陰イオン交換カラムは,硝酸アンモニウム・ふっ化アンモニウム溶液[6.1 l)]100 mL,次いで
水20 mL,水酸化カリウム溶液[6.1 h)]20 mL,水20 mL及び硝酸・ふっ化水素酸溶液A[6.1
f)]100 mLを順次通すことによって,再使用することができる。
b) 四ふっ化エチレン樹脂ビーカー(100 mL)(12)に流出液の一部を移し入れ,硫酸(1+1)1.0 mLを加え,
ホットプレート上で弱く加熱して濃縮しながら,残りの流出液を数回に分けて移し入れ,最後は少量
の水を用いてすべての流出液を移し入れ,濃縮を続ける(13)。濃縮した後は,徐々に温度を上げて硫酸
の白煙を認めたら加熱をやめる。放冷した後,酒石酸溶液[6.1 m)]1.0 mL及び水3 mLを加え,加熱
して蒸発残留物を溶解する。
注(12) 白金皿(100番)を使用することができる。
(13) 注(10)を適用して四ふっ化エチレン樹脂ビーカー(200 mL)を使用した場合は,流出液に硫酸
(1+1)1.0 mLを加えた後,流出液の全量をホットプレート上で加熱して濃縮を行うことがで
きる。
c) 溶液を50 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
6.4.4
発光強度の測定 6.4.3 c) で得た溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中へ噴霧
し,6.2.3で選定した分析線の波長における各定量元素の発光強度を測定する。
6.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
6.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) 定量元素ごとに数個の50 mLの全量フラスコに,酒石酸溶液[6.1 m)]1.0 mL及び硫酸(1+1)1.0 mL
を取り,定量元素の標準溶液[6.1 n)〜ak)]をそれぞれ表9に従って正確に加え(14),水で標線まで薄
める。
注(14) 検量線用元素複合溶液は,各定量元素の発光強度に対してほかの共存元素の影響がないことが
確認されていれば,複数の定量元素の標準溶液を混合して調製することができる。
b) これらの溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,6.2.3で選定した分析線
の波長における各定量元素の発光強度を,試料溶液及び空試験溶液と並行して測定し,得た各定量元
素の発光強度と検量線用溶液中の量との関係線を作成し,検量線とする。
6.7
計算 6.4.4及び6.5で得た発光強度と,6.6で作成した検量線とから,各定量元素量を求め,試料中
の定量元素含有率を次の式によって算出する。
12
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
E
ここに, E: 定量元素の含有率[%(質量分率)]
A1: 試料溶液中の定量元素検出量(g)
A2: 空試験液中の定量元素検出量(g)
m: 試料はかりとり量(g)
13
H 1699:2006
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表 9 検量線用溶液の定量成分添加量
分析成分
検量線用溶液 1
検量線用溶液 2
検量線用溶液 3
検量線用溶液 4
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
使用する
標準溶液の
適用箇条
標準溶液
添加量
mL
定量成分
添加量
μg
アルミニウム
−
0.0
0
6.1 n)
0.50
50
6.1 n)
1.00
100
6.1 n)
2.00
200
カルシウム
−
0.0
0
6.1 p)
0.50
50
6.1 p)
1.00
100
6.1 p)
2.00
200
クロム
−
0.0
0
6.1 r)
0.50
50
6.1 r)
1.00
100
6.1 r)
2.00
200
銅
−
0.0
0
6.1 t)
0.50
50
6.1 t)
1.00
100
6.1 t)
2.00
200
鉄
−
0.0
0
6.1 v)
0.50
50
6.1 v)
1.00
100
6.1 v)
2.00
200
マグネシウム
−
0.0
0
6.1 x)
0.50
50
6.1 x)
1.00
100
6.1 x)
2.00
200
マンガン
−
0.0
0
6.1 z)
0.50
50
6.1 z)
1.00
100
6.1 z)
2.00
200
モリブデン
−
0.0
0
6.1 ab)
0.50
50
6.1 ab)
1.00
100
6.1 ab)
2.00
200
ニオブ
−
0.0
0
6.1 ad)
0.50
50
6.1 ad)
1.00
100
6.1 ad)
2.00
200
ニッケル
−
0.0
0
6.1 af)
0.50
50
6.1 af)
1.00
100
6.1 af)
2.00
200
チタン
−
0.0
0
6.1 ah)
0.50
50
6.1 ah)
1.00
100
6.1 ah)
2.00
200
タングステン
−
0.0
0
6.1 aj)
0.50
50
6.1 aj)
1.00
100
6.1 aj)
2.00
200
7
H
1
6
9
9
:
2
0
0
6
7
H
1
6
9
9
:
2
0
0
6
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7. ICP発光分光分析法によるけい素の定量方法 試料を硝酸ナトリウム共存の下でふっ化水素酸及び硝
酸で分解した後,耐ふっ化水素酸試料導入装置(1)を装備したICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中
に噴霧し,けい素の発光強度を測定する。
7.1
水 本分析法に使用する水は,JIS K 0557に規定する種別A3又はA4の水とする。
なお,使用する水は,あらかじめけい素の定量試験を行い,使用に支障のないことを確認しておく。
7.2
器具 器具は,ポリエチレンビーカー,ポリエチレン容器,四ふっ化エチレン樹脂ビーカー及び四
ふっ化エチレン樹脂時計皿を使用し,これらは事前に適切な酸洗いを行った後,水ですすぎ洗いをして使
用する。
7.3
試薬 試薬は,次による。試薬類は,けい素含有率が特に低く,けい素分析試験に支障のない純度
のものを用い,ポリエチレン容器に保存する。
a) 硝酸(1+1)
b) ふっ化水素酸(1+1)
c) 硝酸ナトリウム溶液(50 g/L)
d) 炭酸ナトリウム
e) 検量線作成用タンタル タンタル含有率 99.9 %(質量分率)以上のタンタルで,けい素を含有しな
いもの,又はけい素の含有率が既知で,試料の含有率よりもできるだけ低いものを用いる。
f)
標準けい素溶液A(Si:100 μg/mL) あらかじめ1 000 ℃に強熱し,デシケーター中で室温まで放冷
した二酸化けい素含有率99.95 %(質量分率)の二酸化けい素0.214 gを白金るつぼにはかりとり,炭
酸ナトリウム1.0 gを加えて混合し,加熱して融解する。放冷した後,温水約100 mLを入れたポリエ
チレンビーカー(200 mL)(5)に浸し,ポリエチレン時計皿(6)で覆い,水浴上で温めて融成物を溶解し
た後,白金るつぼを水洗して取り出す。常温まで冷却し,1 000 mLのポリエチレン全量フラスコ(3)
に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原液とする(15)。
注(15) 市販のけい素標準溶液(1 000 μg/mL)を必要量だけ水で正しく10倍に薄めて使用できる。
g) 標準けい素溶液B(Si:50 μg/mL) 標準けい素溶液A[7.3 f)]を使用の都度,必要量だけ水で正し
く2倍に薄めて標準けい素溶液Bとする。
h) 標準けい素溶液C(Si:10 μg/mL) 標準けい素溶液A[7.3 f)]を使用の都度,必要量だけ水で正し
く10倍に薄めて標準けい素溶液Cとする。
7.4
装置及び測定条件
7.4.1
ICP発光分光分析装置 ICP発光分光分析装置は,JIS K 0116に規定されたもので,耐ふっ化水素
酸試料導入装置(1)を装備し,7.4.3 a) 及びb) の各再現性基準を満足することを確認しておくことが必要で
ある。分光測光部は,試料溶液(Ta:10 mg/mL)中の低濃度けい素(0.1 μg/mL)を測定するとき,波長
251.61 nmにおけるけい素分析線の発光スペクトルは,波長251.60 nm付近及び波長251.63 nm付近のタン
タルによる各発光スペクトル線とそれぞれ分離できることが必要である。例えば,分光器の性能は,回折
格子溝数3 600本/mm以上で焦点距離1 m前後,スリット幅が入口20 μm,出口30 μm程度あり,半値幅
で6〜8 pm程度をもつ高分解能のICP発光分光分析装置を用いることが望ましい。
7.4.2
分析線の選定 けい素の発光強度の測定に用いる分析線は,251.61 nmの波長を使用する。
なお,中心波長で発光強度を測定した後,けい素分析線の中心波長波から低波長側へ約0.018 nm移動し
た最適位置でバックグラウンド強度を測定し,中心波長での発光強度測定値からそれを差し引き,けい素
の純発光強度を求める。また,測定のときは,タンタルの干渉を避けることを目的にけい素の分析線の最
高強度位置を事前に求め,その位置で分光器の波長を固定して測定する。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.4.3
測定条件の設定 測定条件は,次の二つの再現性基準を両方とも満足するように設定しなければな
らない。
a) 定量下限域再現性基準 次の手順に従って操作し,得られる10個のけい素定量値の相対標準偏差が,
表10の相対標準偏差上限値以下でなければならない。
1) 検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入
れ,7.6.1のb) 及びc) の手順に従って操作した後,再現性基準の検討をするけい素の標準溶液を表
10に従って正しく加え,7.6.1 d) の操作を行う。
2) 検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入
れる。以下,7.6.1のb)〜d) の手順に従って1) の操作と並行して操作する。
3) 1) 及び2) で得た溶液の一部を用いて,7.6.2の操作を行い,けい素の発光強度を測定する。
4) 1)〜3) の操作と並行して,7.8の手順に従ってけい素の検量線を作成する。
5) 3) で得た発光強度と,4) で作成した検量線とからけい素の量を求め,けい素の定量値(タンタル中
の含有率に換算した含有率)を,次の式によって小数点以下4けたまで算出する。
100
500
.0
×
−
=
B
A
C
ここに, C: けい素の定量値[%(質量分率)]
A: 1) で調製した溶液を用いて3) で得た発光強度と,4) で作成した
検量線とから求めたけい素の量(g)
B: 2) で調製した溶液を用いて3) で得た発光強度と,4) で作成した
検量線とから求めたけい素の量(g)
6) 3)〜5) の操作を10回繰り返して10個の定量値を求め,その相対標準偏差を算出する。
表 10 定量下限域再現性基準試験における標準溶液添加量及び相対標準偏差上限値
分析成分
使用する標準
溶液の適用箇条
標準溶液添加量
mL
分析成分添加量
μg
分析成分換算含有率
%(質量分率)
相対標準偏差上限値
%
けい素
7.3 h)
0.50
5.0
0.001
20
b) 定量上限域再現性基準 次の手順に従って操作し,各定量元素ごとに得られる10個の定量値の相対標
準偏差が,表11の相対標準偏差上限値以下でなければならない。
1) 検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入
れ,7.6.1のb) 及びc) の手順に従って操作した後,再現性基準の検討をするけい素の標準溶液を表
11に従って正確に加え,7.6.1 d) の操作を行う。
2) a) の2)〜6) の手順に従って操作する。
表 11 定量上限域再現性基準試験における標準溶液添加量及び相対標準偏差上限値
分析成分
使用する標準
溶液の適用箇条
標準溶液添加量
mL
分析成分添加量
μg
分析成分換算含有率
%(質量分率)
相対標準偏差上限値
%
けい素
7.3 g)
2.00
100.0
0.020
2
7.5
試料はかりとり量 試料はかりとり量は,0.50 gとし,1 mgのけたまではかる。
7.6
操作
7.6.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)に移し入れる。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 硝酸ナトリウム溶液[7.3 c)]1 mL及びふっ化水素酸(1+1)4 mLを加えた後,ポリエチレン時計皿(6)
で覆い,硝酸(1+1)2 mLを少量ずつ加えて水浴上で加熱して分解する。
c) 放冷した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,ポリエチレン時計皿を取り除く。
d) 溶液を50 mLのポリエチレン全量フラスコ(3)に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
7.6.2
発光強度の測定 7.6.1 d) で得た溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中へ噴霧
し,7.4.3で設定した測定条件によって,7.4.2で選定した分析線の波長におけるけい素の発光強度を測定
する。
7.7
空試験 検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gをはかりとってポリエチレンビーカー(100 mL)(5)
に移し入れる。以下,7.6.1 b)〜d) 及び7.6.2の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行う。
7.8
検量線の作成 検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gずつを必要に応じて4個のポリエチレンビー
カー(100 mL)(5)にはかりとり,以下,7.6.1 b) 及びc) の手順に従って操作した後,けい素の標準液B[7.3
g)]を表12に従って正確に加える。以下,7.6.1 d) 及び7.6.2の手順に従って操作し,得たけい素の発光強
度と検量線用溶液中の量(16)との関係線を作成し,検量線とする。
注(16) 検量線作成用タンタル中にけい素が含まれている場合は,標準溶液として添加したけい素量に
加算される。
表 12 検量線用溶液のけい素添加量
検量線用溶液 1
検量線用溶液 2
検量線用溶液 3
検量線用溶液 4
標準溶液
添加量
mL
けい素
添加量
μg
標準溶液
添加量
mL
けい素
添加量
μg
標準溶液
添加量
mL
けい素
添加量
μg
標準溶液
添加量
mL
けい素
添加量
μg
0.00
0
0.50
25
1.00
50
2.00
100
7.9
計算 7.6.2及び7.7で得た発光強度と,7.8で作成した検量線とから,けい素量を求め,試料中のけ
い素含有率を,次の式によって算出する。
100
)
(
3
2
1
×
−
−
=
m
A
A
A
E
ここに, E: けい素の含有率[%(質量分率)]
A1: 試料溶液中のけい素検出量(g)
A2: 空試験液中のけい素検出量(g)
A3: 7.8で用いた検量線作成用タンタル[7.3 e)]0.500 gに含まれる
けい素量(g)
m: 試料はかりとり量(g)