日本工業規格
JIS
H
1670-
1982
ジルコニウム及びジルコニウム
合金中のほう素定量方法
Method for Determination of Boron in Zirconium and Zirconium Alloys
1.
適用範囲 この規格は,ジルコニウム及びジルコニウム合金中のほう素定量方法について規定する。
引用規格:
JIS H 1650
ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方法通則
2.
一般事項 定量方法について共通な一般事項は,JIS H 1650(ジルコニウム及びジルコニウム合金の
分析方法通則)による。
3.
方法の区分 ほう素の定量方法は,蒸留分離クルクミン吸光光度法(ロソシアニン法)による。この
方法は,ほう素含有率 0.00001%以上の試料に適用する。
4.
蒸留分離クルクミン吸光光度法(ロソシアニン法)
4.1
要旨 試料を硫酸,硫酸アンモニウム及び水で加熱分解する。メチルアルコールを加え,ほう素を
ほう酸メチルとして蒸留し,水酸化ナトリウムに吸収させる。吸収液からメチルアルコールを揮散させ,
蒸発乾固した後,塩類を塩酸と酢酸に溶かす。クルクミン,硫酸及びメチルアルコールを加えて呈色させ,
吸光度を測定する。
4.2
試薬 試薬は,次による。(1), (3)∼(6), (9)及び(10)は,ポリエチレン瓶に入れて保存する。
(1)
水 石英蒸留器で蒸留したもの。
(2)
硫酸 硫酸 50ml を白金皿(100 番)に取り,ふっ化水素酸 2∼3ml を加え,加熱して強い白煙を発生
させた後放冷する。石英ビーカー (100ml) に移し入れ,吸湿しないように保存する。
(3)
混酸 A(塩酸 1,酢酸 2)
(4)
混酸 B 氷酢酸を石英三角フラスコに取り,冷やし,かき混ぜながら(2)のようにして調製した等容の
硫酸を注意して加える。
(5)
水酸化ナトリウム溶液 (0.8
w
/
v
%)
(6)
硫酸アンモニウム 硫酸アンモニウム約 100g を石英皿 (200ml) に取り,メチルアルコール 100ml を
加え,ポリエチレン棒でかき混ぜた後,上澄み液を捨てる。メチルアルコール 100ml を加えて上記の
操作を繰り返した後,熱板上で加熱して乾燥させる。
(7)
不活性ガス 窒素又はアルゴン
(8)
メチルアルコール
(9)
クルクミン溶液 (0.15
w
/
v
%)
クルクミン 0.15g を石英ビーカー (200ml) にはかり取り,酢酸 100ml
2
H 1670-1982
に加熱溶解する。調製後 1 週間以内に使用する。
(10)
標準ほう素溶液 (0.2
µgB/ml) ほう酸 0.0572g を水に溶かして 100ml のメスフラスコに移し入れ,水
で標線まで薄めて原液とする。この原液を使用の都度水で正しく 500 倍に薄めて標準溶液とする。
4.3
装置及び器具 装置及び器具は,次による。
(1)
蒸留装置 装置の一例を図に示す。装置はすべて石英製で,三角フラスコ (200ml) (a),試薬注入管 (b)
及び冷却器 (c) から成る。
(2)
受器 石英ビーカー (100ml) の 35ml に相当する箇所に印を付けて用いる。
4.4
試料はかり取り量 試料は,1.0g を 1mg のけたまではかり取る。
4.5
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
(1)
試料をはかり取って乾いた石英三角フラスコ (200ml) に移し入れ,硫酸 25ml,硫酸アンモニウム 1.0g
及び水 5.0ml を加え,200∼250℃で 15∼20 分間加熱して分解し,放冷する。
(2)
受器に水酸化ナトリウム溶液 5ml を入れ,冷却器流出口の先端がその中に浸るようにする。三角フラ
スコ内に四ふっ化エチレン樹脂被覆回転子を入れ,蒸留装置を連結する。かき混ぜながらメチルアル
コール 100ml を試薬注入管から少しずつ加える(
1
)
。三角フラスコ内に水酸化ナトリウム溶液が逆流し
ない程度に不活性ガスを送りながら,15∼20 分間で 30ml が留出するように加熱蒸留する。受器中の
液量が約 35ml になったら加熱をやめ,冷却器流出口の先端を少量のメチルアルコールで洗浄する。
(3)
この溶液を白金皿(100 番)又は四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml) に少量のメチルアルコール
で洗い移し,煮沸しない程度に加熱してメチルアルコールを揮散させ,更に加熱を続けて蒸発乾固す
る。
(4)
混酸 A1.0ml を加え,ポリエチレン棒で塩類をよくほぐした後,棒を洗いながらクルクミン溶液 5.0ml
を加えてよく混合する。混酸 B4.0ml を加えてよく混合した後,20 分間放置する。メチルアルコール
30ml
を加えて呈色錯体を溶解し,50ml のメスフラスコに移し入れ,メチルアルコールで標線まで薄
め,直ちにポリエチレン瓶 (100ml) に移し入れ,10 分間放置する。
(5)
この溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,メチルアルコールを対照液として,波長 550nm 付近の吸
光度を測定する。
注(
1
)
突沸したり,吸収液が逆流するおそれがあるので注意を要する。
4.6
計算 4.7 で作成した検量線からほう素量を求め,試料中のほう素含有率を次の式によって算出する。
ほう素 (%)
100
×
W
A
=
ここに
A
: 検量線から求めたほう素量 (g)
W
: 試料はかり取り量 (g)
4.7
検量線の作成
数個の乾いた石英三角フラスコ (200ml) に標準ほう素溶液 0∼5ml(ほう素として 0
∼1.0
µg)の各種液量を段階的に分取し,
表
に従って水を加えた後,硫酸 25ml 及び硫酸アンモニウム 1.0g
を加え,200∼250℃で 15∼20 分間加熱した後,放冷する。以下,
4.5(2)
∼
4.5(5)
の手順に従って操作し,得
た吸光度とほう素量との関係線を作成して検量線とする。
3
H 1670-1982
表
単位
ml
標準ほう素溶液分取量
水添加量
0 5.0
1 4.0
2 3.0
3 2.0
4 1.0
5 0
4
H 1670-1982
図 蒸留装置の一例
5
H 1670-1982
原案作成委員会の構成表
氏名
所属
多 田 格 三
橋 谷 博
日本原子力研究所
中 島 篤之助
日本原子力研究所
吉 森 孝 良
東京理科大学
須 藤 恵美子
金属材料技術研究所
栢 明
動力炉・核燃料開発事業団
岩 崎 守 彦
株式会社三菱金属中央研究所
小 川 欣 也
日本ニュクリア・フュエル株式会社
谷 口 政 行
株式会社神戸製鋼所
束 原 巖
古河電気工業株式会社
中 村 靖
日本鉱業株式会社
仲 山 剛
住友金属工業株式会社
吉 田 信 之
工業技術院標準部
黒 田 和 夫
社団法人新金属協会