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日本工業規格

JIS

 H

1662

- 1986

ジルコニウム及びジルコニウム

合金中のチタン定量方法

Methods for Determination of Titanium in

Zirconium and Zirconium Alloys

1.

適用範囲  この規格は,ジルコニウム及びジルコニウム合金中のチタン定量方法について規定する。

引用規格:

JIS H 1650

  ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方法通則

2.

一般事項  分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1650(ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方

法通則)による。

3.

定量方法  チタンの定量方法は,次のいずれかによる。

(1)

イオン交換分離ジアンチピリルメタン(以下,DAM という。

)吸光光度法  この方法は,チタン含有

率 0.000 5wt%以上の試料に適用する。

(2)

チオシアン酸・トリオクチルホスフィンオキシド(以下,TOPO という。

)抽出吸光光度法  この方法

は,チタン含有率 0.000 5wt%以上の試料に適用する。

4.

イオン交換分離 DAM 吸光光度法

4.1

要  旨  試料をふっ化水素酸及び硝酸で分解し,ほう酸を加え,陽イオン交換カラムに通してチタ

ンなどを吸着させ,ジルコニウムを流出させる。ふっ化水素酸・ほう酸溶液を通してチタンを溶離する。

ふっ化水素酸,過塩素酸及び硫酸を加え,加熱して白煙を発生させる。塩酸及び DAM を加えて呈色させ,

吸光度を測定する。

4.2

試  薬  試薬は,次による。

(1)

塩酸 (1+1)

(2)

硝  酸

(3)

過塩素酸

(4)

ふっ化水素酸

(5)

ふっ化水素酸 (1+9)    調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。

(6)

硫酸 (1+1)

(7)

ほ  う  酸

(8)

ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A  ほう酸 40g に,ふっ化水素酸 8ml 及び水 800∼900ml を加えてかき混

ぜ溶かした後,水で 1とする。調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。


2

H 1662 - 1986

(9)

ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B  ほう酸 25g に,ふっ化水素酸 19ml 及び水 800∼900ml を加えてかき混

ぜ溶かした後,水で 1とする。調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。

(10)

過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)

(11)

ジアンチピリルメタン溶液  DAM15g を硫酸 (1+1) 30ml 及び水 300ml に溶かし,水で 1とする。

(12)

標準チタン溶液 (10

µgTi/ml)    チタン(99.5%以上)0.100g を塩酸 (1+1) 50ml で加熱分解し,常温ま

で冷却した後,100ml のメスフラスコに塩酸 (1+1)  を用いて移し入れ,塩酸 (1+1)  で標線まで薄め

て原液 (100

µgTi/ml)  とする。この原液を使用の都度,必要量だけ水で正しく 10 倍に薄めて標準チタ

ン溶液とする。

4.3

器  具  器具は,原則として次による。

陽イオン交換カラム  一端を細くしたポリエチレン管(長さ 250mm,内径 10mm)に水でほぐした脱脂

綿を約 5mm の厚さに緩く詰め,水で膨潤させた強酸性陽イオン交換樹脂(74∼149

µm,交換容量 1.9meq/ml

以上のもの)約 10ml をスラリー状にして流し入れ,沈降させた後,その上に水でほぐした脱脂綿を約 5mm

の厚さに詰める。

脱脂綿の詰め方を調節するなどして流出液の流量を毎分 1.0∼1.5ml になるようにした後,

ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A50ml を流しておく。

4.4

試料はかり取り量  試料はかり取り量は,0.50g とする。

4.5

操  作  定量操作は,次の手順によって行う。

(1)

試料をはかり取って,ポリエチレンビーカー (100ml)(

1

)

に移し入れ,ポリエチレン時計皿で覆い,ふ

っ化水素酸 (1+9) 12ml を少量ずつ加えて分解し,不溶性残さがあれば,硝酸数滴を加えて水浴上で

加熱分解する。次に過マンガン酸カリウム溶液を微紅色を呈するまで加え,水で 50ml とし,ほう酸

2g

を加え,かき混ぜて溶かす。

(2)

時計皿をふっ化水素酸・ほう酸溶液 A5ml で洗って取り除き,溶液をかき混ぜた後,陽イオン交換カ

ラムに通す。ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A30ml でビーカーを洗ってカラムに通し,更にこの溶液 70ml

を通す。流出液は捨てる。

(3)

ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B50ml をカラムに通し,溶出液は四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml)

に受ける。

(4)

ふっ化水素酸 2ml,過塩素酸 0.5ml 及び硫酸 (1+1) 1ml を加え,加熱して過塩素酸の白煙を発生させ

る。

(5)

冷却後,少量の水でビーカー (100ml) に洗い移し,加熱して硫酸の白煙を十分発生させる。

(6)

冷却後,塩酸 (1+1) 8ml 及び水 10ml でメスフラスコ (50ml) に移し入れ,DAM 溶液 20ml を加えた

後,水で標線まで薄める。

(7) 20

分間放置後,溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,4.7 で得られる標準チタン溶液を添加しない

ときの溶液を対照液にして,波長 390nm 付近における吸光度を測定する。

(

1

)

水浴上で加熱しても変形しないものを用いる。

4.6

    験  空試験は,次のとおり行う。ふっ化水素酸 (1+9) 12ml をポリエチレンビーカー

(100ml)(

1

)

に取り,水浴上で加熱してほとんど蒸発乾固させた後,ほう酸 2g 及び水 50ml を加え,以下 4.5(2)

以降の手順に従って操作する。

4.7

検量線の作成  数個のビーカー (100ml) に標準チタン溶液 0∼10.0ml(チタンとして 0∼100

µg)の

各種液量を段階的に加え,以下 4.5(6)以降の手順に従って操作し,得た吸光度とチタン量との関係線を作

成して検量線とする。


3

H 1662 - 1986

4.8

計  算  4.7 で作成した検量線からチタン量を求め,試料中のチタン含有率を次の式によって算出す

る。

チタン

100

%

wt

×

m

A

ここに,

A

:  検量線から求めたチタン量 (g)

m

:  試料はかり取り量 (g)

5.

チオシアン酸 TOPO 抽出吸光光度法

5.1

要  旨

  試料を硫酸及びふっ化水素酸・ほう酸溶液で分解し,塩酸と塩化すず (II) を加えて鉄など

を還元した後,チタンのチオシアン酸錯体を生成させ,TOPO−シクロヘキサンに抽出し,吸光度を測定

する。

5.2

試  薬

  試薬は,次による。

(1)

塩  酸

(2)

硝  酸

(3)

硫酸 (1+4)

(4)

ふっ化水素酸・ほう酸溶液  ふっ化水素酸 100ml をかき混ぜながら,ほう酸 50g を少量ずつ加えて溶

かす。調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。

(5)

ジルコニウム(99wt%以上)  チタン含有率の低いもの

(6)

塩化すず (II) 溶液  塩化すず (II) (2 水和物)100g を塩酸 (1+3) 400ml に溶解し,水で 500ml に薄

め,少量のすずを加えて褐色瓶に保存する。

(7)

チオシアン酸アンモニウム溶液 (500g/l)

(8)

 TOPO

‐シクロヘキサン溶液

TOPO3.9g

をシクロヘキサンに溶かし,シクロヘキサンで 1とする。

(9)

標準チタン溶液

(10

µgTi/ml)

4.2(12)

による。

5.3

試料はかり取り量

  試料はかり取り量は,1.0g とする。

5.4

操  作

  定量操作は,次の手順によって行う。

(1)

試料をはかり取って,ポリエチレンビーカー (100ml)

(

1

)

に移し入れ,ポリエチレン時計皿で覆い,硫

酸 (1+4) 20ml 及びふっ化水素酸・ほう酸溶液 4ml を少量ずつ加えて分解する

(

2

)

。不溶性残さがあれ

ば硝酸数滴を加えて分解する。

(2)

常温まで冷却した後,時計皿を水で洗って取り除き,100ml のメスフラスコに水を用いて移し入れ,

水で標線まで薄め,直ちにポリエチレン容器に移し入れる。この溶液を正しく 10ml 分取し,ポリエ

チレン分液漏斗 (100ml) に移し入れる。

(3)

塩酸 15ml 及び塩化すず (II) 溶液 2ml を加え,軽く振り混ぜる。チオシアン酸アンモニウム溶液 3ml

を加えた後,TOPO‐シクロヘキサン溶液を正しく 10ml 加え,約 10 分間振り混ぜる。

(4)

静置後,有機層を乾いたろ紙(5 種 A)でろ過し,ろ液の一部を光度計の吸収セルに取り,シクロヘ

キサンを対照液として,波長 420nm 付近の吸光度を測定する。

(

2

)

分解の速さは試料の厚さによって異なる。必要ならば水浴中で加熱して分解する。

5.5

検量線の作成

  ジルコニウム 1g ずつをはかり取り,数個のポリエチレンビーカー (100ml) に移し入

れ,これに標準チタン溶液 0∼10.0ml(チタン量として 0∼100

µg)を段階的に加えた後,硫酸 (1+4) 20ml

及びふっ化水素酸・ほう酸溶液 4ml を加えて分解する。以下,

5.4(2)

以降の手順に従って操作し,得た吸光

度とチタン量との関係線を作成し,この関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。


4

H 1662 - 1986

5.6

計  算

5.5

で作成した検量線からチタン量を求め,試料中のチタン含有率を次の式によって算出す

る。

チタン

100

%

wt

×

m

A

ここに,

A

:  検量線から求めたチタン量 (g)

m

:  試料はかり取り量 (g)

B

:  試料溶液の分取比

ジルコニウム及びジルコニウム合金中のチタン

定量方法改正

JIS

原案作成委員会  構成表

氏名

所属

多  田  格  三

社団法人新金属協会ジルコニウム分析委員会主査

橋  谷      博

島根大学

吉  森  孝  良

東京理科大学

河  口  広  司

名古屋大学

大河内  春  乃

科学技術庁金属材料技術研究所

小  森  卓  二

日本原子力研究所

林      正太郎

動力炉・核燃料開発事業団

小  川  欣  也

日本ニユクリア・フユエル株式会社

谷  口  政  行

株式会社神戸製鋼所

束  原      巌

古河電気工業株式会社

中  村      靖

日本鉱業株式会社

仲  山      剛

住友金属工業株式会社

野  村  紘  一

三菱金属株式会社

山  本      宏

通商産業省基礎産業局

安  部      惠

工業技術院標準部

澤  口  健  治

社団法人新金属協会

今  井  康  弘

事  務  局