日本工業規格
JIS
H
1661
- 1986
ジルコニウム及びジルコニウム
合金中のアルミニウム定量方法
Methods for Determination of Aluminium in
Zirconium and Zirconium Alloys
1.
適用範囲 この規格は,ジルコニウム及びジルコニウム合金中のアルミニウム定量方法について規定
する。
引用規格:
JIS H 1650
ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方法通則
JIS K 0116
発光分光分析方法通則
2.
一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1650(ジルコニウム及びジルコニウム合金の分析方
法通則)及び JIS K 0116(発光分光分析方法通則)による。
3.
定量方法 アルミニウムの定量方法は,次のいずれかによる。
(1)
イオン交換分離 8‐キノリノール(以下,オキシンという。
)抽出吸光光度法 この方法は,アルミニ
ウム含有率 0.000 2wt%以上の試料に適用する。
(2)
イオン交換分離誘導結合プラズマ(以下,ICP という。
)発光分光分析法 この方法は,アルミニウム
含有率 0.001wt%以上の試料に適用する。
4.
イオン交換分離オキシン抽出吸光光度法
4.1
要 旨 試料をふっ化水素酸及び硝酸で分解し,ほう酸を加え,陽イオン交換カラムに通してアル
ミニウム,チタンなどを吸着させ,ジルコニウムを流出させる。ふっ化水素酸・ほう酸溶液を通してチタ
ンを溶離し,次にふっ化水素酸を通してアルミニウムを溶離する。溶出液にほう酸を加えて別の陽イオン
交換カラムに通し,洗浄して残存する微量のジルコニウムを除いた後,希ふっ化水素酸でアルミニウムを
溶離する。ほう酸を加えた後,オキシンとアンモニアを加えて生成するアルミニウム・オキシン錯体をク
ロロホルムに抽出し,光電光度計を用いて吸光度を測定する。
4.2
試 薬 試薬は,次による。
(1)
塩酸 (1+2)
(2)
硝 酸
(3)
ふっ化水素酸 (1+5,1+9,1+250) 調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。
(4)
ほう酸
(5)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A ほう酸 40g に,ふっ化水素酸 8ml 及び水 800∼900ml を加えてかき混
2
H 1661 - 1986
ぜ溶かした後,水で 1l とする。調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。
(6)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B ほう酸 25g に,ふっ化水素酸 19ml 及び水 800∼900ml を加えてかき混
ぜ溶かした後,水で 1l とする。調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。
(7)
アンモニア水 (1+1)
(8)
硫酸ナトリウム(無水)
(9)
過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)
(10)
オキシン溶液 オキシン 2g を氷酢酸 4ml に加熱して溶かし,水で 100ml とする。
(11)
クロロホルム
(12)
標準アルミニウム溶液 (4.0
µgAl/ml) アルミニウム(99.9%以上)0.100g を塩酸 (1+1) 20ml で加熱
分解し,常温まで冷却した後 1 000ml のメスフラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原
液 (100mgAl/ml) とする。この原液を使用の都度,必要量だけ水で正しく 25 倍に薄めて,標準アルミ
ニウム溶液とする。
4.3
器 具 器具は,原則として次による。
(1)
陽イオン交換カラム A 一端を細くしたポリエチレン管(長さ 250mm,内径 10mm)に水でほぐした
脱脂綿を約 5mm の厚さに緩く詰め,水で膨潤させた強酸性陽イオン交換樹脂(74∼149
µm,交換容量
1.9meq/ml
以上のもの)約 10ml をスラリー状にして流し入れ,沈降させた後,その上に水でほぐした
脱脂綿を約 5mm の厚さに詰める。脱脂綿の詰め方を調節するなどして流出液の流量を毎分 1.0∼1.5ml
になるようにした後,塩酸 (1+2) 50ml,ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A50ml を順次通しておく。
(2)
陽イオン交換カラム B (1)と同様にしてスラリー状強酸性陽イオン交換樹脂約 5ml を詰めたカラムを
作る。
4.4
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.50g とする。
4.5
操 作 定量操作は,次の手順によって行う。
(1)
試料をはかり取って,ポリエチレンビーカー (100ml)(
1
)
に移し入れ,ポリエチレン時計皿で覆い,ふ
っ化水素酸 (1+9) 12ml を少量ずつ加えて分解し,不溶性残さがあれば,硝酸数滴を加えて水浴上で
加熱分解する。溶液が微紅色を呈するまで過マンガン酸カリウム溶液を加え,水で 50ml に薄めて,
ほう酸 2g を加え,かき混ぜて溶かす(
2
)
。
(2)
時計皿をふっ化水素酸・ほう酸溶液 A5ml で洗って取り除き,溶液をかき混ぜた後,陽イオン交換カ
ラム A に通す。ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A30ml でビーカーを洗ってカラムに通し,ふっ化水素酸・
ほう酸溶液 A70ml を通す。流出液は捨てる。
(3)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B50ml をカラムに通し,溶出液は捨てる(
3
)
。
(4)
ふっ化水素酸 (1+250) 50ml をカラムに通し,溶出液はポリエチレンビーカー (100ml) に受け,ほう
酸 1.25g を加え,かき混ぜて溶かし,この溶液を陽イオン交換カラム B に通す(
4
)
。
(5)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B30ml をカラムに通し,流出液は捨てる。
(6)
ふっ化水素酸 (1+250) 30ml をカラムに通し,溶出液はポリエチレンビーカー (100ml) に受け,ほう
酸 1g を加え,かき混ぜて溶かす(
5
)
。
(7)
水で約 70ml とし,オキシン溶液 3ml を加え,次にチモールブルー試験紙を用い,アンモニア水 (1+
1)
を加えてこの溶液の pH を 9.8∼10.5 に調節する。
(8)
分液漏斗 (200ml) に移し入れ,水で約 100ml とした後,クロロホルムを正しく 10ml 加え,約 1 分間
振り混ぜる。
(9)
静置後,クロロホルム層をあらかじめ硫酸ナトリウム(無水)1g を入れた栓付三角フラスコ (30ml) に
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移し入れ,軽く振り混ぜる(
6
)
。
(10)
この溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,波長 390nm 付近の吸光度を測定する。
注(
1
)
水浴上で加熱しても変形しないものを用いる。
(
2
)
空試験は次のとおり行う。ふっ化水素酸 (1+9) 12ml をポリエチレンビーカー (100ml)(水浴上
で加熱しても変形しないものを用いる。
)に取り,加熱してほとんど乾固するまで蒸発させた後,
ほう酸 2g 及び水 50ml を加え,以下 4.5(2)以降の手順に従って操作する。
(
3
)
この溶出液からチタンを定量することができる。その場合,その溶液は四ふっ化エチレン樹脂
ビーカー (100ml) に受ける。
(
4
)
陽イオン交換カラム A は再使用できない。
(
5
)
陽イオン交換カラム B は,ふっ化水素酸 (1+5) 50ml,塩酸 (1+2) 50ml 及びふっ化水素酸・ほ
う酸溶液 A50ml を通せば再使用できる。
(
6
)
分液漏斗の脚に脱脂綿を軽く詰めて通すか,乾いたろ紙でろ過して水を除いてもよい。ただし,
始めの数 ml は捨てる。
4.6
検量線の作成 数個のビーカー (100ml) に標準アルミニウム溶液 0∼10.0ml(アルミニウムとして 0
∼40
µg)を段階的に取り,以下 4.5(7)以降の手順に従って操作し,得た吸光度とアルミニウム量との関係
線を作成して検量線とする。
4.7
計 算 4.6 で作成した検量線からアルミニウム量を求め,試料中のアルミニウム含有率を次の式に
よって算出する。
アルミニウム
100
%
wt
×
m
A
=
ここに,
A
: 検量線から求めたアルミニウム量 (g)
m
: 試料はかり取り量 (g)
5.
イオン交換 ICP 発光分光分析法
5.1
要 旨
試料をふっ化水素酸及び硝酸で分解し,ほう酸を加え,陽イオン交換カラムに通してアル
ミニウム,チタンなどを吸着させ,ジルコニウムを流出させる。ふっ化水素酸・ほう酸溶液を通してチタ
ンを溶離し,次にふっ化水素酸を通してアルミニウムを溶出させる。溶出液に硝酸及び過塩素酸を加え,
加熱して蒸発乾固する。塩類を塩酸に溶かし,ICP 発光分光分析装置を用いて発光強度を測定する。
5.2
試 薬
試薬は,次による。
(1)
塩酸 (1+1)
(2)
硝 酸
(3)
過塩素酸
(4)
ふっ化水素酸 (1+9,1+250)
(5)
ほ う 酸 調製及び保存には,ポリエチレン容器を用いる。
(6)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A 調製及び保存は,
4.2(5)
による。
(7)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B 調製及び保存は,
4.2(6)
による。
(8)
過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)
(9)
イットリウム溶液 (1mgY/ml) 酸化イットリウム 0.635g をはかり取り,塩酸 10ml を加えて加熱分解
する。常温まで冷却した後,水で正しく 500ml とする。
(10)
標準アルミニウム溶液 (4.0
µgAl/ml)
4.2(12)
による。
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H 1661 - 1986
5.3
器 具
器具は,原則として次による。
陽イオン交換カラム A
4.3(1)
による。
5.4
試料はかり取り量
試料はかり取り量は,0.50g とする。
5.5
操 作
定量操作は,次の手順によって行う。
(1)
試料をはかり取って,ポリエチレンビーカー (100ml)
(
1
)
に移し入れ,ポリエチレン時計皿で覆い,ふ
っ化水素酸 (1+9) 12ml を少量ずつ加えて分解し,不溶性残さがあれば,硝酸数滴を加えて水浴上で
加熱分解する。溶液が微紅色を呈するまで過マンガン酸カリウム溶液を加え,水で 50ml に薄めて,
ほう酸 2g を加え,かき混ぜて溶かす
(
7
)
。
(2)
時計皿をふっ化水素酸・ほう酸溶液 A5ml で洗って取り除き,溶液をかき混ぜた後,陽イオン交換カ
ラムに通す。ふっ化水素酸・ほう酸溶液 A30ml でビーカーを洗ってカラムに通し,ふっ化水素酸・ほ
う酸溶液 A70ml を通す。流出液は捨てる。
(3)
ふっ化水素酸・ほう酸溶液 B50ml をカラムに通し,溶出溶液は捨てる
(
3
)
。
(4)
ふっ化水素酸 (1+250) 50ml をカラムに通し,溶出液は四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml) に受
ける。硝酸 1ml 及び過塩素酸 1ml を加え,加熱して蒸発乾固する。
(5)
塩酸 (1+1) 5.0ml を加えて塩類を溶かし,25ml のメスフラスコに移し入れ
(
8
)
,水で標線まで薄める。
(6)
ICP
発光分光分析装置を用い,溶液の一部を ICP 発光分光分析装置のプラズマトーチ中に噴霧し,波
長 309.271nm 又は 396.153nm の発光強度を測定する。
注(
7
)
空試験は次のとおり行う。ふっ化水素酸 (1+9) 12ml をポリエチレンビーカー (100ml)(水浴上
で加熱しても変形しないものを用いる。
)に取り,加熱してほとんど乾固するまで蒸発させた後,
ほう酸2g 及び水50ml を加え,以下
5.5(2)
以降の手順に従って操作する。
(
8
)
2
本以上の波長によるスペクトルの同時測定が可能な装置では,
内標準法によることができる。
内標準法を用いるときは,イットリウム溶液 5ml を正しく加える。この場合
5.5(6)
で波長
309.271nm
又は 396.153nm(アルミニウム)及び 371.030nm(イットリウム)の発光強度を測定
し,アルミニウムとイットリウムの発光強度の比を求める。
5.6
検量線の作成
数個の 25ml のメスフラスコに標準アルミニウム溶液 0∼10.0ml(アルミニウムとし
て 0∼40
µg)を段階的に取り,塩酸 (1+1) 5.0ml を加えて
(
8
)
,水で標線まで薄める。以下
5.5(6)
の手順に従
って操作し,試料と並行して測定した発光強度とアルミニウム量との関係線を作成して検量線とする。
5.7
計 算
5.6
で作成した検量線からアルミニウム量を求め,試料中のアルミニウム含有率を次の式に
よって算出する。
アルミニウム
100
%
wt
×
m
A
=
ここに,
A
: 検量線から求めたアルミニウム量 (g)
m
: 試料はかり取り量 (g)
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H 1661 - 1986
ジルコニウム及びジルコニウム合金中のアルミニウム
定量方法改正
JIS
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
多 田 格 三
社団法人新金属協会ジルコニウム分析委員会主査
橋 谷 博
島根大学
吉 森 孝 良
東京理科大学
河 口 広 司
名古屋大学
大河内 春 乃
科学技術庁金属材料技術研究所
小 森 卓 二
日本原子力研究所
林 正太郎
動力炉・核燃料開発事業団
小 川 欣 也
日本ニユクリア・フユエル株式会社
谷 口 政 行
株式会社神戸製鋼所
束 原 巌
古河電気工業株式会社
中 村 靖
日本鉱業株式会社
仲 山 剛
住友金属工業株式会社
野 村 紘 一
三菱金属株式会社
山 本 宏
通商産業省基礎産業局
安 部 惠
工業技術院標準部
澤 口 健 治
社団法人新金属協会
今 井 康 弘
事務局