2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1362-1994
アルミニウム及びアルミニウム
合金中のバナジウム定量方法
Method for determination of vanadium
in aluminium and aluminium alloys
1. 適用範囲 この規格は,アルミニウム及びアルミニウム合金中のバナジウム定量方法について規定す
る。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS H 1351 アルミニウム及びアルミニウム合金の分析方法通則
2. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1351による。
3. 定量方法 バナジウムの定量方法は,N−ベンゾイル−o−トリルヒドロキシルアミン抽出吸光光度法
による。この方法は,バナジウム含有率0.001% (m/m) 以上0.20% (m/m) 以下の試料に適用する。
4. N−ベンゾイル−o−トリルヒドロキシルアミン抽出吸光光度法
4.1
要旨 試料を塩酸と過酸化水素とで分解する。硫酸を加え,加熱して硫酸の白煙を発生させる。水
を加えて可溶性塩類を溶解し,過マンガン酸カリウムでバナジウムを酸化してから,N−ベンゾイル−o−
トリルヒドロキシルアミン(以下,BTAという。)を加え,生成するBTAバナジウム錯体をトルエンに抽
出した後,光度計を用いて有機相の吸光度を測定する。
4.2
試薬 試薬は,次による。
(1) 塩酸 (1+1)
(2) 硝酸
(3) 硝酸 (1+1)
(4) ふっ化水素酸
(5) 硫酸 (1+1)
(6) りん酸
(7) 過酸化水素
(8) 亜硝酸ナトリウム溶液 (5g/l) 使用の都度,調製する。
(9) 硫酸ナトリウム(無水)
(10) ふっ化ナトリウム溶液 (50g/l) この溶液の上澄み液を使用する。
(11) 塩化アルミニウム溶液 (0.05gAl/ml) 塩化アルミニウム六水和物111gをはかり取って,ビーカー
(300ml) に移し入れ,水約200mlを加えて溶解した後,溶液を250mlの全量フラスコに水を用いて移
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し入れ,水で標線まで薄める。
(12) 過マンガン酸カリウム溶液 (3g/l) この溶液は,褐色瓶に保存する。
(13) 尿素溶液 (200g/l)
(14) アミド硫酸溶液 (5g/l)
(15) BTA溶液 BTA0.1gをはかり取ってビーカー (100ml) に移し入れ,エタノールを20.0ml加えて溶解
し,溶液を100mlの全量フラスコにトルエンを用いて移し入れ,トルエンで標線まで薄める。
(16) トルエン
(17) 標準バナジウム溶液 (5μgV/ml) バナジン酸アンモニウム0.229 6gをはかり取って,ビーカー (500ml)
に移し入れ,水約200mlと硫酸 (1+1) 10mlを加え,時計皿で覆い,加熱して完全に溶解する。室温
まで放冷した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。溶液を1 000ml
の全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原液 (100μgV/ml) とするこの原液を使用
の都度,必要量だけ水で正しく20倍に薄めて,標準バナジウム溶液とする。
4.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,表1による。
表1 試料はかり取り量
バナジウム含有率
% (m/m)
試料はかり取り量
g
0.001以上
0.01以上
0.01未満
0.20以下
1.0
0.50
4.4
操作
4.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次のいずれかによる。
(1) バナジウム含有率0.01% (m/m) 未満の試料
(a) 試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。
(b) 時計皿で覆い,塩酸 (1+1) 25mlを少量ずつ加え,反応が穏やかになったら加熱して,分解する(1)。
ほとんど分解してから,過酸化水素2mlを加え,引き続き加熱して試料を完全に分解する。室温ま
で放冷した後,硫酸 (1+1) 30mlを加え,注意しながら加熱して濃縮し,硫酸の白煙を数分間発生
させる。
(c) 室温まで放冷した後,時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,水を加えて液量を約70ml
として時計皿で覆い,加熱して塩類を溶解する。室温まで放冷した後,時計皿の下面を水で洗浄し,
時計皿を取り除く(2)。
(d) 溶液をろ紙(5種B)を用いてろ過し,温水で洗浄する。ろ液及び洗液を,ビーカー (300ml) に受
け,液量が約60mlになるまで加熱して濃縮し,主液として保存する。不溶解物はろ紙と共に白金
るつぼ(30番)に移し入れ,注意して加熱して,ろ紙を完全に灰化する。次に,白金るつぼを750
〜800℃の電気炉中で約20分間加熱した後,室温まで放冷する。硝酸 (1+1) 5mlを加え,ふっ化水
素酸約3mlを少量ずつ加えて不溶解物を完全に分解する。硫酸 (1+1) 2,3滴を加え,加熱して硫
酸の白煙を発生させた後,室温まで放冷し,少量の温水で塩類を溶解し,主液の入ったビーカーに,
少量の水を用いて移し入れる。
(e) 溶液を分液漏斗 (200ml) に水を用いて移し入れ,水で液量を約90mlにする(3)。
注(1) 分解しにくい試料の場合には,硝酸8mlを加え,加熱して試料を完全に分解する。
(2) 溶液中に不溶解物などの沈殿が認められないときは,次の(d)の操作は行わない。
(3) あらかじめ分液漏斗の90mlの位置に印を付けておくとよい。
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(2) バナジウム含有率0.01% (m/m) 以上の試料
(a) (1)の(a)〜(d)の手順に従って操作する。
(b) 溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。溶液を試料中のバナジ
ウム含有率に応じて表2に従って分液漏斗 (200ml) に分取し,表2に従って硫酸 (1+1) を加えた
後,水で液量を約90mlにする(3)。
表2 分取量及び硫酸添加量
バナジウム含有率
% (m/m)
分取量
ml
硫酸 (1+1) 添加量
ml
0.01以上 0.05未満
0.05以上 0.10未満
0.10以上 0.20以下
40
20
10
18
24
27
4.4.2
錯体の生成と抽出 錯体の生成と抽出は,次による。
(1) 4.4.1の(1)(e)又は(2)(b)で得た溶液に,過マンガン酸カリウム溶液[4.2(12)]2,3滴を加えて振り混ぜる。
10分後(4)尿素溶液5mlを加え,振り混ぜながら亜硝酸ナトリウム溶液[4.2(8)]を赤紫の色が消えるまで
滴下する。分液漏斗に栓をし,約10秒間激しく振り混ぜて,過剰の亜硝酸ナトリウムを分解する。ア
ミド硫酸溶液2ml,ふっ化ナトリウム溶液[4.2(9)]2ml及びりん酸3mlを加えて振り混ぜる(5)。
(2) BTA溶液[4.2(15)]10.0mlを加え,3分間激しく振り混ぜる。静置して二層に分離した後,水相(下層)
を捨て,有機相(上層)を硫酸ナトリウム(無水)約1gを入れた共栓付三角フラスコ (30ml) に移し
入れ,栓をし,軽く振り混ぜて脱水する。
注(4) この間に過マンガン酸カリウムの赤紫の色が消えたら,更に1,2滴を加えて,赤紫の色を持続
させる。
(5) 抽出時の液温が呈色に及ぼす影響が大きいので,検量線作成も同一条件で操作する。
4.4.3
吸光度の測定 4.4.2(2)で得た呈色した有機相の一部を,光度計の吸収セル (10mm) に取り,トル
エンを対照液として波長440nm付近の吸光度を測定する(6)。
注(6) 有機相に抽出されたBTAバナジウム錯体の呈色は,少なくとも30分間は安定であるが,溶媒の
揮発に注意する必要がある。
4.4.4
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
4.4.5
検量線の作成 塩化アルミニウム溶液[4.2(11)]を,そのアルミニウム量が4.4.1の(1)(e)又は(2)(b)で
得た試料溶液中のアルミニウム量と同量になるように数個のビーカー (300ml) に取り,標準バナジウム溶
液[4.2(17)]0〜20.0ml(バナジウムとして0〜100μg)を段階的に加える。硫酸 (1+1) 30mlを加えた後,注
意しながら加熱して濃縮し,硫酸の白煙を数分間発生させる。以下4.4.1の(1)(c)及び(e),4.4.2並びに4.4.3
の手順に従って試料と並行して操作し,得た吸光度とバナジウム量との関係線を作成し,この関係線を原
点を通るように平行移動して検量線とする。
4.4.6
計算 計算は,次のいずれかによる。
(1) 4.4.1(1)によって試料溶液を調製した場合 4.4.3で得た吸光度から,4.4.4で得た吸光度を差し引いて
得られる吸光度と,4.4.5で作成した検量線とからバナジウム量を求め,試料中のバナジウム含有率を,
次の式によって算出する。
100
)
/
%(
×
m
A
m
m
=
バナジウム
ここに,
A: 試料溶液中のバナジウム検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
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(2) 4.4.1(2)によって試料溶液を調製した場合 4.4.3で得た吸光度から,4.4.4で得た吸光度を差し引いて
得られる吸光度と,4.4.5で作成した検量線とからバナジウム量を求め,試料中のバナジウム含有率を,
次の式によって算出する。
100
100
)
/
%(
×
×B
m
A
m
m
=
バナジウム
ここに,
A: 試料溶液中のバナジウム検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
B: [4.4.1(2)(b)]で分取した試料溶液及び空試験液の量 (ml)
JIS改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
畦 上 尚
株式会社日軽分析センター
藤 沼 弘
東洋大学工学部
村 上 徹 朗
工学院大学
俣 野 宣 久
川崎製線株式会社
大河内 春 乃
科学技術庁金属材料技術研究所
揖 斐 敏 夫
通商産業省基礎産業局
高 木 譲 一
工業技術院標準部
久留須 一 彦
古河電気工業株式会社
福 田 政 志
昭和電工株式会社
小 島 盛 昭
株式会社フジクラ
水 砂 博 文
住友電気工業株式会社
美 蔦 芳 宏
株式会社神戸製鋼所
松 原 道 夫
セイコー電子工業株式会社
船 渡 好 人
株式会社島津製作所
中 田 滋
古河電気工業株式会社
安 部 正 明
東洋アルミニウム株式会社
北 村 照 夫
昭和アルミニウム株式会社
石 上 守
三菱アルミニウム株式会社
鈴 木 圏
スカイアルミニウム株式会社
西 尾 正 浩
住友軽金属工業株式会社
坂 巻 博
日本軽金属株式会社
蠏 庄 作
社団法人軽金属協会
(事務局)
井 波 隆 夫
社団法人軽金属協会