H 1359 : 1998
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS H 1359 : 1972は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,規定する二つの定量方法のうち国際規格ISO 6827 : 1981, Aluminium and aluminium
alloys−Determination of titanium content−Diantipyrylmethane photometric method(アルミニウム及びアルミニ
ウム合金−チタン定量方法−ジアンチピリルメタン吸光光度法)と対応する方法について整合させた。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1359 : 1998
アルミニウム及びアルミニウム
合金中のチタン定量方法
Methods for determination of titanium in aluminium and aluminium alloys
序文 この規格は,1981年に第1版として発行されたISO 6827, Aluminium and aluminium alloys−
Determination of titanium content−Diantipyrylmethane photometric methodを元に,対応する部分については,
技術的に差異のないことを確認して作成した日本工業規格である。
なお,対応国際規格がない一つの定量方法を日本工業規格として追加している。
1. 適用範囲 この規格は,アルミニウム及びアルミニウム合金中のチタン定量方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 6827 : 1981 Aluminium and aluminium alloys−Determination of titanium content−
Diantipyrylmethane photometric method
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS H 1351 アルミニウム及びアルミニウム合金の分析方法通則
JIS H 2151 スポンジチタン
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0115 吸光光度分析通則
3. 一般事項 この方法に共通な一般事項は,JIS H 1351,JIS K 0050及びJIS K 0115の規定による。
4. 定量方法の区分 チタンの定量方法は,次のいずれかによる。
a) 過酸化水素吸光光度法 この方法は,チタン含有率0.001% (m/m) 以上0.3% (m/m) 以下の試料に適用
する。ただし,けい素含有率の高い試料及びバナジウム又はクロムを含む試料には適用しない。
b) ジアンチピリルメタン吸光光度法 この方法は,チタン含有率0.001% (m/m) 以上0.3% (m/m) 以下の
試料に適用する。
5. 過酸化水素吸光光度法
5.1
要旨 試料を水酸化ナトリウムで分解した後,硫酸及び硝酸を加えて酸性とし,これにりん酸と過
酸化水素を加えて呈色させ,光度計を用いて,その吸光度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 混酸 水500ml中に硫酸(1+1)160ml及び硝酸340mlを加える
b) りん酸
c) 水酸化ナトリウム溶液 水酸化ナトリウム40gを水100mlに溶解して,ポリエチレン瓶に保存し,そ
の上澄み液を使用する。
d) 過酸化水素(1+9)
e) 炭酸ナトリウム
f)
標準チタン溶液 (0.1mgTi/ml) 金属チタン[99.6% (m/m) 以上,JIS H 2151の1種相当品]0.100gを
はかり取ってビーカー (300ml) に移し入れ,硫酸(1+1)50ml及び塩酸(1+1)10mlを加え,加熱して分
解した後,更に硝酸(1+1)1mlを加え,加熱蒸発して硫酸の白煙を発生させる。放冷した後,注意しな
がら水約10mlを少量ずつ加え,可溶性塩類を溶解する。常温まで冷却した後,溶液を1 000mlの全量
フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
5.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,試料中のチタン含有率に応じ,表1に従って1mgのけた
まではかる。
表1 試料はかり取り量
チタン含有率
% (m/m)
試料はかり取り量
g
0.005未満
5.0
0.005 以上0.02 未満
3.0
0.02 以上0.1 未満
1.0
0.1 以上0.3 以下
0.50
5.4
操作
5.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次のいずれかの手順によって行う。
a) 試料中のチタン含有率が0.02% (m/m) 以上0.3% (m/m) 以下の場合
1) 試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。
2) 時計皿で覆い,試料はかり取り量に応じて,水酸化ナトリウム溶液 [5.2 c)] を表2に従って少量ず
つ加え,激しい反応が終わった後,穏やかに加熱して完全に分解する。
3) 放冷した後,溶液を振り混ぜながら混酸 [5.2 a)] 50mlを加えて酸性とし,加熱して可溶性塩類を溶
解し,更に煮沸して酸化窒素などを追い出し,常温まで冷却する。
4) 時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。
5) 溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れる。
b) 試料中のチタン含有率が0.02% (m/m) 未満の場合
1) 試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。
2) 時計皿で覆い,試料はかり取り量に応じて,水酸化ナトリウム溶液 [5.2 c)] を表2に従って,少量
ずつ加え,激しい反応が終わった後,穏やかに加熱して完全に分解する。
3) 放冷した後,炭酸ナトリウム約2g及び温水約200mlを加え,沈殿をこし分け,温水で沈殿及びろ
紙を十分に洗浄する。ろ液及び洗液は捨てる。沈殿を温水を用いて元のビーカーに洗い移し,ろ紙
上から混酸 [5.2 a)] 50mlを注いで沈殿を移し入れたビーカーに受け,ろ紙に付着した沈殿及びビー
カー中の沈殿を溶解する。溶液を煮沸して酸化窒素などを追い出した後,常温まで冷却する。
4) 時計皿の下面及びビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く。
5) 溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れる。
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H 1359 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2 水酸化ナトリウム溶液使用量
試料はかり取り量
g
水酸化ナトリウム溶液使用量
ml
5.0
40
3.0
20
1.0
10
0.50
10
5.4.2
呈色 5.4.1のa)5)又はb)5)で得た溶液にりん酸5ml及び過酸化水素(1+9)5mlを加え,水で標線ま
で薄める。
5.4.3
対照液の調製 対照液の調製は,次の手順によって行う。
a) 5.4.1のa)1)又はb)1)ではかり取った試料と同量の試料を別にはかり取って,ビーカー (300ml) に移し
入れる。以下,5.4.1 a)の2)〜5)又は5.4.1 b)の2)〜5)の手順に従って,5.4.1のa)1)又はb)1)ではかり取
った試料と並行して操作する。
b) りん酸5mlを加え,水で標線まで薄める。
5.4.4
吸光度の測定 5.4.2で得た溶液の一部を光度計の吸収セル (10mm) に取り,5.4.3 b)で得た溶液を
対照液として,波長400nm付近の吸光度を測定する。
5.5
空試験 空試験は,行わない。
5.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) 数個の100mlの全量フラスコに標準チタン溶液 [5.2 f)] 0〜20.0ml(チタンとして0〜2mg)を段階的に
取り,これを第一系列とする。
b) a)と同じ数の100mlの全量フラスコに,標準チタン溶液 [5.2 f)] をa)と同量ずつ段階的に取り,これ
を第二系列とする。
c) 各全量フラスコに水酸化ナトリウム溶液 [5.2 c)] 10ml,混酸 [5.2 a)] 50ml及びりん酸5mlを加える。
d) 第一系列の全量フラスコに過酸化水素(1+9)5mlを加えた後,水で標線まで薄め,第二系列の全量フラ
スコに水を加えて標線まで薄める。
e) 溶液の一部を光度計の吸収セルに取り,第一系列の溶液の波長400nm付近の吸光度を,チタン量が同
じ第二系列の溶液を対照液として,それぞれ測定し,得た吸光度とチタン量との関係線を作成して検
量線とする。
5.7
計算 5.4.4で得た吸光度と5.6で作成した検量線とからチタン量を求め,試料中のチタン含有率を,
次の式によって算出する。
100
×
m
A
Ti=
ここに, Ti: 試料中のチタン含有率 [% (m/m)]
A: 試料溶液中のチタン検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
6. ジアンチピリルメタン吸光光度法
6.1
要旨 試料を塩酸と過酸化水素とで分解した後,溶液の一部を分取し,アスコルビン酸とジアンチ
ピリルメタンとを加えてチタンを呈色させ,光度計を用いて,その吸光度を測定する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸(1+1,1+19)
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b) 硝酸(1+1)
c) ふっ化水素酸
d) 硫酸(1+1)
e) 過酸化水素
f)
L (+) ‐アスコルビン酸溶液 L (+) ‐アスコルビン酸10gを100mlの水に溶解する。この溶液は使
用の都度,必要量を調製する。
g) ジアンチピリルメタン溶液 ジアンチピリルメタン一水和物4gを塩酸(1+19)100mlに溶解する。この
溶液は使用の都度,必要量を調製する。
h) 標準チタン溶液 (10μgTi/ml) 標準チタン溶液 (0.1mg/ml) [5.2 e)] を塩酸(1+19)で正しく10倍に薄
めて,標準チタン溶液とする。
6.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,1.00gとし,1mgのけたまではかる。
6.4
操作
6.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。
b) 時計皿で覆い,塩酸(1+1)30mlを加え,加熱して分解する。激しい反応が終わった後,過酸化水素1ml
を加え,穏やかに加熱して完全に分解し,更に加熱を続け,過剰の過酸化水素を分解する。常温まで
冷却した後,時計皿の下面とビーカーの内壁を水で洗浄し,時計皿を取り除く(1)。
c) 溶液をろ紙(5種B)を用いてろ過し,ろ紙及び不溶解物を水で洗浄し,洗液はろ液と合わせて主液
としてビーカー (300ml) に保存する。不溶解物はろ紙とともに白金るつぼ(20番)に移し入れ,加熱
してろ紙を灰化する。放冷した後,硝酸(1+1)5mlを加え,ふっ化水素酸3mlを少量ずつ加えて不溶
解物を完全に分解する。硫酸(1+1)を,3,4滴加え,加熱蒸発して硫酸の白煙を発生させる。放冷し
た後,少量の温水を加えて塩類を溶解する。溶液を主液の入ったビーカーに水を用いて移し入れ,液
量が約80mlになるまで加熱して濃縮した後,常温まで冷却する。
d) 溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
注(1) 溶液中に不溶解物が認められない場合には,次のc)の操作は行わない。
6.4.2
呈色 呈色は,次の手順によって行う。
a) 6.4.1 d)で得た溶液を,チタン含有率に応じて表3に従って,2個の50ml全量フラスコに分取する(2)。
表3 分取量
チタン含有率
% (m/m)
分取量
ml
0.001 以上0.05未満
20
0.05 以上0.10未満
10
0.10 以上 0.3 以下
4
b) L (+) ‐アスコルビン酸溶液 [6.2 f)] 2mlを加えて振り混ぜ,2〜3分間放置した後,全量フラスコの1
個にジアンチピリルメタン溶液 [6.2 g)] 10mlを加え,水で標線まで薄め,残りの1個には,ジアンチ
ピリルメタン溶液を加えないで,水で標線まで薄め,15分間放置する。
注(2) 銅含有率が2.5% (m/m) 以上で分取量が20mlの場合には,塩酸(1+1)10mlを加える。
6.4.3
吸光度の測定 6.4.2 b)で得た溶液の一部を光度計の吸収セル (10mm) に取り,ジアンチピリルメ
タン溶液を加えない溶液を対照液として,ジアンチピリルメタン溶液を加えた溶液の波長390nm付近の吸
光度を測定する(3)。
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注(3) 試料中のチタン含有率が0.005% (m/m) 以下の試料では,50mmの吸収セルを用いるのが望まし
い。
6.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
なお,空試験液の吸光度の測定は,水を対照液とする。
6.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) 数個の50mlの全量フラスコに標準チタン溶液 [6.2 h)] 0〜12.0ml(チタンとして0〜120μg)を段階的
に取り,これを第一系列とする。
b) a)と同じ数の50mlの全量フラスコに,標準チタン溶液 [6.2 h)] をa)と同量ずつ段階的に取り,これ
を第二系列とする。
c) 各全量フラスコに塩酸(1+1)10mlを加えた後,L (+) -アスコルビン酸溶液 [6.2 f)] 2mlを加えて振り混
ぜ,2〜3分間放置する。
d) 第一系列の全量フラスコにジアンチピリルメタン溶液 [6.2 g)] 10mlを加え,水で標線まで薄め,第二
系列の全量フラスコに水を加えて標線まで薄める。
e) 溶液の一部を光度計の吸収セル (10mm) に取り,第一系列の溶液の波長390nm付近の吸光度を,チタ
ン量が同じ第二系列の溶液を対照液としてそれぞれ測定し,得た吸光度とチタン量との関係線を作成
して検量線とする。
6.7
計算 6.4.3で得た吸光度から,6.5で得た吸光度を差し引いて得られる吸光度と,6.6で作成した検
量線とからチタン量を求め,試料中のチタン含有率を,次の式によって算出する。
100
100
1×
×B
m
A
Ti=
ここに, Ti: 試料中のチタン含有率 [% (m/m)]
A: 分取した試料溶液中のチタン検出量 (g)
B: 分取した試料溶液の量 (ml)
m: 試料はかり取り量 (g)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JISアルミニウム分析改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
畦 上 尚
株式会社日軽分析センター機器分析室
藤 沼 弘
東洋大学工学部
村 上 徹 朗
工学院大学
俣 野 宣 久
川崎製線株式会社
大河内 春 乃
科学技術庁金属材料技術研究所
廣 瀬 浩 二
工業技術院標準部
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会技術部
荻 嶋 淳
三菱アルミニウム株式会社富士製作所
川 口 修
スカイアルミニウム株式会社技術研究所
北 村 照 夫
昭和アルミニウム株式会社技術研究所
泉 巌
日本軽金属株式会社蒲原製造所分析センター
中 田 滋
古河電気工業株式会社福井事業所
坂 巻 博
日本軽金属株式会社船橋工場
豊 嶋 雅 康
住友軽金属工業株式会社研究開発センター
山 田 哲 夫
株式会社神戸製鋼所アルミ・銅事業本部
佐 藤 豊
東洋アルミニウム株式会社研究開発本部研究所
井 川 洋 志
昭和電工株式会社千葉事業所
久留須 一 彦
古河電気工業株式会社横浜研究所分析技術センター
水 砂 博 文
住友電気工業株式会社研究開発部特性評価センター
船 渡 好 人
株式会社島津製作所第一分析事業部
松 原 道 夫
セイコー電子工業株式会社科学機器営業部
(事務局)
井 波 隆 夫
社団法人軽金属協会技術開発部