H 1345 : 1998
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS H 1345 : 1989は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,国際規格ISO 2355 : 1972, Chemical analysis of magnesium and its alloys-Determination of
rare earths-Gravimetric method(マグネシウム及びその合金の化学分析‐希土類定量方法‐重量法)に整合
させた。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1345 : 1998
マグネシウム合金中の希土類定量方法
Method for determination of rare earths in magnesium alloys
序文 この規格は,1972年に第1版として発行されたISO 2355, Chemical analysis of magnesium and its alloys
−Determination of rare earths−Gravimetric methodを元に,対応する部分については技術的内容を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
1. 適用範囲 この規格は,マグネシウム合金中の希土類定量方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 2355 : 1972 Chemical analysis of magnesium and its alloys−Determination of rare earths−
Gravimetric method
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS H 1331 マグネシウム合金分析方法の通則
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
3. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1331, JIS K 0050及びJIS K 8001の規定による。
4. 定量方法 希土類の定量方法は,水酸化ジルコニウム共沈・セバシン酸塩沈殿・しゅう酸塩沈殿分離
希土類酸化物重量法による。この方法は,希土類含有率0.2% (m/m) 以上10.0% (m/m) 以下の試料に適用
する。
5. 水酸化ジルコニウム共沈・セバシン酸塩沈殿・しゅう酸塩沈殿分離希土類酸化物重量法
5.1
要旨 試料を塩酸で分解し,大部分の希土類を水酸化ジルコニウムとともに沈殿させた後,こし分
ける。沈殿は硝酸と過酸化水素とで溶解し,保存する。ろ液にセバシン酸を加えて,ろ液中の希土類をセ
バシン酸塩として沈殿させる。沈殿をこし分け,強熱して酸化物とする。酸化物を保存しておいた溶液で
分解し,この溶液にしゅう酸を加え,希土類をしゅう酸塩として沈殿させた後こし分け,強熱して酸化物
とし,その質量をはかる。
5.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 硝酸・過酸化水素混合溶液 過酸化水素30mlに水150mlを加え,更に硝酸30mlを加える。
c) アンモニア水 (1+1,1+3,1+49)
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H 1345 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
d) 過酸化水素
e) 塩化アンモニウム
f)
しゅう酸溶液(飽和) しゅう酸二水和物約150gを熱水1 000mlに溶解し,室温まで冷却した後ろ過
する。
g) しゅう酸洗浄溶液 しゅう酸溶液(飽和)[f)]70mlに水を加えて液量を500mlとする。
h) セバシン酸溶液 セバシン酸50gにアンモニア水400mlを加えた後,水300mlを加えて溶解する。溶
液をろ過した後,水で液量を1lとする。この溶液は,ポリエチレン瓶に保存する。
i)
ブロモフェノールブルー溶液 調製方法は,JIS K 8001の4.4(指示薬)による。
5.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,試料中の希土類含有率に応じ,表1に従って,1mgのけ
たまではかる。
表1 試料はかり取り量及び塩酸の添加量
希土類含有率
% (m/m)
試料はかり取り量
g
塩酸添加量
ml
0.2以上 2.0未満
3.0
25.5
2.0以上 5.0未満
2.0
17.0
5.0以上 10.0以下
1.0
8.5
5.4
操作
5.4.1
予備操作 磁器るつぼ(1種B形15ml)を,使用に先立ち,ふたとともに約950℃の電気炉中で約
30分間強熱し,デシケーター中で室温まで放冷した後,その質量をはかる。この操作を恒量となるまで繰
り返し,デシケーター中に保存する。
5.4.2
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料(1)をはかり取ってビーカー (500ml) に移し入れ,水75mlを加え,時計皿で覆い,塩酸を試料は
かり取り量に応じて,表1に従って加え,反応が穏やかになったら数分間煮沸して分解する。時計皿
の下面及びビーカーの内壁を水で洗って時計皿を取り除く(2)。
b) 不溶解物を,ろ紙(5種C)を用いてこし分け(3),ビーカー及び沈殿を熱水で4,5回洗浄し,ろ液と洗
液を合わせ,ビーカー (300ml) に集める。不溶解物は捨てる。
c) ろ液及び洗液に水を加えて液量を約100mlとする。
注(1) 試料は,厚さ1mm以下とする。
(2) 不溶解物が認められない場合には,次のb)の操作は行わない。
(3) 銀を含む試料の場合は,ろ紙に少量のろ紙パルプを入れてろ過する。
5.4.3
水酸化ジルコニウム共沈分離 水酸化ジルコニウムの共沈分離は,次の手順によって行う。
a) 5.4.2c)で得た溶液にブロモフェノールブルー溶液 [5.2i)] 3〜5滴を加え,溶液の色が青紫になるまでア
ンモニア水 (1+1) 及び/又はアンモニア水 (1+3) を加える。沸騰するまで加熱した後,熱源から降
ろし,ときどきかき混ぜながら5分間放置する。
b) 沈殿をろ紙(5種A)を用いてこし分け,熱水でろ紙及び沈殿を十分に洗浄する。ろ液と洗液の合量
が250mlを超えないようにして,ビーカー (500ml) に集め,試料溶液 (A) として保存する。
c) ろ紙上の沈殿を,沸騰させた硝酸・過酸化水素混合溶液 [5.2b)] 10mlを少量ずつろ紙上に加えて,そ
の都度熱水で洗浄して溶解し,更にろ紙を熱水で5,6回洗浄する。ろ液と洗液は,元のビーカー (300ml)
に集め,液量が約25mlになるまで加熱して濃縮し,試料溶液 (B) として保存する。
5.4.4
セバシン酸塩の沈殿分離 セバシン酸塩の沈殿分離は,次の手順によって行う。
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H 1345 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 5.4.3b)で得た試料溶液 (A) に塩化アンモニウム10gを加え,アンモニア水 (1+1) 及び/又はアンモ
ニア水 (1+3) を加えてpH8.5に調節した後,アンモニア水 (1+49) 10mlを加える。約90℃に加熱し
た後ビーカーを熱源から降ろし,かき混ぜながらセバシン酸溶液 [5.2h)] 20mlを加える。ときどきか
き混ぜながら15分間放置する。
b) 沈殿をろ紙(5種B)を用いてこし分け,ろ紙及び沈殿をアンモニア水 (1+49) で十分に洗浄し,次
にアンモニア水 (1+1) 20mlを数回に分けてろ紙上に注いで洗浄する。
c) 沈殿をろ紙とともに磁器るつぼ(1種B形15ml)に移し入れ,注意して加熱し,ろ紙を完全に灰化し,
更に750〜800℃の電気炉中で約30分間強熱した後,室温まで放冷する。
5.4.5
しゅう酸塩の沈殿分離 しゅう酸塩の沈殿分離は,次の手順によって行う。
a) 5.4.4c)で得たるつぼの内容物を,5.4.3c)で保存しておいた試料溶液 (B) の入ったビーカーに少量の水
を用いて移し入れ,溶液を加熱しながら,過酸化水素2, 3滴を加えて完全に分解する。ビーカーを
熱源から降ろし,ビーカーの内壁を水で洗浄し,水で液量を約125mlとする。
b) 溶液をかき混ぜながら,しゅう酸溶液 [5.2f)] 25mlを少量ずつ加える。ビーカーを沸騰水浴上で30分
間加熱した後,室温で約12時間(一夜間)静置する。沈殿をろ紙(5種C)を用いてこし分け,ろ紙
及び沈殿をしゅう酸洗浄溶液 [5.2g)] で十分に洗浄する。
5.4.6
希土類酸化物のひょう量 希土類酸化物のひょう量は,次の手順によって行う。
a) 5.4.5b)で得た沈殿をろ紙とともに,5.4.1で保存しておいた磁器るつぼに移し入れ,約500℃で穏やか
に加熱し,ろ紙を完全に灰化する。
b) るつぼを約950℃の電気炉中で,約30分間強熱する。過塩素酸マグネシウムの入ったデシケーター中
で室温まで放冷した後,その質量をはかる。この操作を恒量となるまで繰り返す。
c) b)で得た質量から,5.4.1で得たるつぼの質量を差し引く。
5.5
空試験 空試験は,行わない。
5.6
計算 試料中の希土類含有率を,次の式によって算出する。
100
0
1
×
×
m
F
m
RE=
ここに,
RE: 試料中の希土類含有率 [% (m/m]
m1: 5.4.6c)で得た質量 (g)
F: ミッシュメタルに対するファクター=0.832(4)
m0: 試料はかり取り量 (g)
注(4) 希土類の組成がミッシュメタルと相違するときは,次のファクターを
用いなければならない。
La
0.852 7
Ce
0.814 1
Pr
0.827 7
Nd
0.857 4
Didymium
0.853
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H 1345 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS改正原案調査作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
藤 沼 弘
東洋大学工学部
村 上 徹 朗
工学院大学
俣 野 宣 久
川崎製線株式会社
大河内 春 乃
科学技術庁金属材料技術研究所
廣 瀬 浩 二
工業技術院標準部
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会技術部
山 本 寿 美
古河電気工業株式会社横浜研究所分析技術センター
井 川 洋 志
昭和電工株式会社千葉事業所
水 砂 博 文
住友電気工業株式会社研究開発部門特性評価センター
山 田 哲 夫
株式会社神戸製鋼所アルミ・銅事業本部技術部
冨 田 百合男
宇部興産株式会社建設資材事業本部技術開発部
鈴 木 通
中央工産株式会社野田工場
(事務局)
井 波 隆 夫
社団法人軽金属協会技術開発部