H 1288:2015
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般事項························································································································· 2
5 要旨······························································································································· 2
6 装置及び分析条件 ············································································································· 2
6.1 発光分光分析装置 ·········································································································· 2
6.2 装置の調整 ··················································································································· 3
6.3 装置性能の確認 ············································································································· 3
6.4 分析条件 ······················································································································ 3
7 検量線作成用試料,検量線校正用試料及び分析試料 ································································ 5
7.1 検量線作成用試料 ·········································································································· 5
7.2 検量線校正用試料 ·········································································································· 5
7.3 分析試料 ······················································································································ 5
8 試料の調製 ······················································································································ 5
9 操作······························································································································· 6
10 検量線 ·························································································································· 6
10.1 検量線の作成 ··············································································································· 6
10.2 検量線の校正 ··············································································································· 8
11 計算 ····························································································································· 9
附属書A(規定)スパーク放電発光分光分析装置 ······································································ 11
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本伸銅協会(JCBA)及び一
般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,
日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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ニッケル及びニッケル合金−
スパーク放電発光分光分析方法
Nickel and nickel alloys-
Methods for spark discharge atomic emission spectrometric analysis
1
適用範囲
この規格は,ニッケル,ニッケル合金及び超合金中の表1及び表2に規定する13成分の含有率を,スパ
ーク放電による発光分光分析方法によって定量する方法について規定する。ニッケル含有率(質量分率)
99.0 %以上の場合は表1を,ニッケル含有率(質量分率)99.0 %未満の場合は表2を適用する。
表1−適用分析成分及び定量範囲(ニッケル含有率99.0 %以上)
単位 質量分率(%)
適用分析成分
定量範囲
けい素
0.01
以上 0.60 以下
マンガン
0.005 以上 0.40 以下
りん
0.001 以上 0.045 以下
クロム
0.01
以上 0.50 以下
鉄
0.02
以上 0.8
以下
モリブデン
0.01
以上 0.15 以下
コバルト
0.005 以上 0.95 以下
銅
0.01
以上 0.45 以下
タングステン
0.01
以上 0.40 以下
アルミニウム
0.001 以上 0.90 以下
チタン
0.002 以上 0.50 以下
タンタル
0.003 以上 0.45 以下
ほう素
0.000 1 以上 0.15 以下
表2−適用分析成分及び定量範囲(ニッケル含有率99.0 %未満)
単位 質量分率(%)
適用分析成分
定量範囲
りん
0.001 以上 0.045 以下
アルミニウム
0.001 以上 0.90 以下
チタン
0.002 以上 0.50 以下
ほう素
0.000 1 以上 0.15 以下
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
2
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引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0203 鉄鋼用語(製品及び品質)
JIS H 1270 ニッケル及びニッケル合金−分析用試料採取方法及び分析方法通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0212 分析化学用語(光学部門)
JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門)
JIS Q 0032 化学分析における校正及び認証標準物質の使い方
JIS R 6001 研削といし用研磨材の粒度
JIS R 6010 研磨布紙用研磨材の粒度
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS G 0203,JIS K 0211,JIS K 0212及びJIS K 0215によるほ
か,次による。
3.1
発光強度測定値
発光強度法の場合は,発光分光分析法で求めた定量成分の発光強度。発光強度比法の場合は,定量成分
の発光強度と内標準元素(一般的にニッケル)の発光強度との比となる。
3.2
定時間積分法
発光強度測定において,発光したスペクトル線強度を一定時間積算した後,デジタル信号値に変換して
定量する方法。
3.3
パルス分布測定法(PDA法)
発光強度測定において,1パルスごとの発光強度をデジタル信号値に変換し,測定した全パルスの信号
値を統計処理した数値(平均値,中央値など)を用いて定量する方法。
3.4
冶金的履歴
分析試料の化学組成が同一であっても,金属組織及び析出物・介在物の形態によって,発光強度測定値
に影響を及ぼすような,溶湯試料の凝固速度,熱処理・圧延・鍛造などにおける加熱温度などの履歴。
4
一般事項
分析方法に必要な一般事項は,JIS H 1270による。
5
要旨
試料を切断又は切削した後,研削又は研磨して平面状に仕上げ,発光分光分析装置の試料支持台に取り
付けて電極として,対電極にタングステンを用いてスパークを発生させ,スペクトル線を分光器によって
分光し,定量成分のスペクトル線強度を測定する。
6
装置及び分析条件
6.1
発光分光分析装置
3
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発光分光分析装置は,附属書Aによるほか,次による。
a) 対電極 径2〜7 mmのタングステン棒で,先端を20〜120°の円すい(錐)状又は径1 mmの平面を
もたせた円すい台状に電極成形機で成形して用いる。
b) アルゴン 酸素,炭化水素,窒素及びその他の不純物が少ない体積分率99.99 %以上のもの。アルゴ
ンの純度は定量値に影響を与えるため,ボンベで装置に供給する場合には,十分注意しなければなら
ない。
6.2
装置の調整
装置の調整は,A.1.3による。
6.3
装置性能の確認
装置性能を維持するために,定期的に確認のための測定を実施する。
6.4
分析条件
分析試料の種類,共存成分,同時定量成分の種類及び定量成分の含有率に応じ,装置性能基準を満足す
るように分析条件を設定する。分析条件の例及びその関連事項を,表3〜表6に示す。新しく成形された
対電極に交換した直後,及び放電を多数回繰り返した状態での発光強度は不安定となる場合があるため,
安定した発光強度が得られる分析回数の範囲を事前に調査しておく。
表3−分析条件の例
項目
内容
分光器内の圧力
2.7 Pa以下
分光器の逆線分散
1 nm/mm以下
入口スリット幅
20〜50 µm
測光方式
定時間積分法
時間分解PDA測光法
分析試料と対電極との間隙
3.0〜6.0 mm
発光時のアルゴンガス流量
4〜18 L/min
励起条件及び放電条件
表5及び表6を参照
4
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表4−分析線の例
単位 nm
適用分析成分
分析線の波長a)
適用分析成分
分析線の波長a)
けい素
Si
I 212.42
Si
I 251.61
Si
I 288.16
銅
Cu II 224.26
Cu I 327.40
マンガン
Mn II 290.02
Mn II 293.31
タングステン
W
II 220.45
りん
P
I 177.50
P
I 178.29
P
I 214.91
アルミニウム
Al
I 394.40
Al
I 396.15
クロム
Cr II 265.85
Cr II 267.72
Cr II 298.92
チタン
Ti
II 324.20
Ti
II 337.28
鉄
Fe II 259.94
Fe II 271.44
Fe
I 271.90
Fe
I 302.06
ほう素
B
I 182.58
B
I 182.64
B
II 206.72
B
I 208.96
B
I 249.68
モリブデン
Mo II 202.03
Mo II 277.54
タンタル
Ta
II 240.06
コバルト
Co II 258.03
Co I 345.35
ニッケル(内標準元
素)
Ni II 227.73
注a) 高次線を使用してもよい。
表5−励起条件の例
No.
励起条件
関連事項
二次電圧
V
静電容量
μF
自己誘導
μH
二次抵抗
Ω
周波数
Hz
I
300〜1 000
2〜12
3〜35
残留分〜5
200〜600
主に予備放電に適用
II
300〜1 000
2〜20
(1) 10,140
(2) 20,160
残留分〜10
40〜500
主にりん,ほう素,アルミニウムの定
量に適用
III
300〜700
1.5〜2.5
5〜20
残留分〜10
40〜500
上記以外の成分の定量に適用
IV
300〜500
(1) 4,2,2
(2) 2,2,2
(1) 2,20,140
(2) 2,2,150
(3) 2,22,142
(4) 8,16,198
残留分
40〜500
1パルスの発光強度を時間分割し定量
するための励起源
V
300〜500
2,2
198,1 008
残留分
40〜500
アークライクスパーク
VI
200〜500
5
120
残留分
60〜400
放電エネルギー制御
・二次電圧200 V:0.1 J
・二次電圧280 V:0.2 J
VII
300〜850
0.5〜2.5
5〜180
残留分〜10
40〜500
対電極先端の付着物を除去するため
に適用
5
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表6−放電条件の例
適用例
予備放電
りん,チタン,ア
ルミニウム及び
ほう素の定量
左記以外の成分
の定量
対電極のクリー
ニング
適用例1
放電順序
1
3
2
4
励起条件a)
I〜VIのいずれか
II,III,IV,VI
II,III,IV,VI
金属ブラシ研摩
予備放電数
500〜4 000
500〜4 000
100〜4 000
測定パルス数
−
1 000〜2 000
1 000〜2 000
適用例2
放電順序
1
2
3
4
励起条件a)
II
IV
III
V
予備放電数
1 000
200
200
45
測定パルス数
−
1 500
1 500
−
適用例3
放電順序
−
1
−
2
励起条件a)
なし
IV
なし
金属ブラシ研摩
予備放電数
700〜3 000
測定パルス数
1 000〜2 000
注a) 表5の励起条件No.を示す。
7
検量線作成用試料,検量線校正用試料及び分析試料
7.1
検量線作成用試料
検量線作成用試料は,分析試料と冶金的履歴及び化学組成が近似し,分析試料中の定量元素の含有率を
内挿する範囲で,定量元素の含有率が適切な間隔をもつように最低3個以上の試料を用意して一系列のも
のとして用いる。
検量線作成用試料中の定量元素の含有率は,JIS H 1270に定められた化学分析方法又はその分析所にて
技術的に確認され文書化された化学分析方法を用いて決定する。その場合,十分に均質で一つ以上の成分
に認証の付いた化学分析用の認証標準物質又はJIS Q 0032記載の所内標準物質を含む実用標準物質を併行
分析し,その定量結果と認証標準物質又はJIS Q 0032記載の所内標準物質を含む実用標準物質の認証値又
は標準値との差の絶対値が,その分析方法の対標準物質許容差以下であることを確認する。
7.2
検量線校正用試料
検量線校正用試料は,検量線作成用試料の系列の中から適切なものを選んで用いてもよいが,均質で測
定値の再現性がよいものであれば,検量線作成用試料でなく,冶金的履歴及び化学的組成が近似しなくて
もよい。2点で検量線を校正する場合には,検量線の上限及び下限付近のものをそれぞれ選び,1点で検量
線を校正する場合には,検量線の上限付近のものを選ぶ。
7.3
分析試料
分析試料は,JIS H 1270の5.1(試料の採取方法)に従って採取し,放電可能な分析面の径を,通常,10
mm以上の平面に成形できる塊状又は板状のものであることが必要である。これら試料の分析面は,巣,
ガスホールなどの表面欠陥がないようにする。
8
試料の調製
試料の調製は,切断機械又は切削機械を用いて分析面の径が10 mm以上,厚さ3 mm以上の形状に加工
し,この大きさが確保できない試料の場合は,補助具を用いる。分析面の加工は,放電面が平らに,また,
その粗さが一定に仕上がるように管理された研削機械又は研磨機械で平面状に調製する。研磨による試料
6
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の温度上昇は,発光条件によっては定量値に影響を及ぼす場合があるため,常に一定温度となるような調
製条件にする必要がある。
研磨に研磨ベルトを用いる場合の研磨材は,JIS R 6010に規定する粒度P36〜P240を用いる。グライン
ダを用いる場合の研磨材は,JIS R 6001に規定する粒度F 36〜F 240を用いる。
と(砥)粒の材質によっては分析面を汚染し,定量値に影響を与える場合があるため,目的に合わせた
材質の選択を行う。
9
操作
操作は,次のいずれかによる。
a) 発光強度法 発光強度法は,次による。
1) 6.2に従って調整された試料支持台に,箇条8で調製した分析試料,及び対電極[6.1 a)]を設置す
る。
2) 6.4に従って決定した分析条件1) で発光させ,発光強度2) を測定する。
3) 2) で得た発光強度を発光強度測定値とする。
b) 発光強度比法 発光強度比法は,次による。
1) a) の1) 及び2) の手順に従って操作する。
2) a) の2) で得た定量成分の発光強度と内標準元素の発光強度との比を求め,発光強度測定値とする。
注1) 繰返し精度のよい測定条件をあらかじめ選定しておく。測定条件の例を表3〜表6に示す。
2) 繰返し精度のよい適用分析成分及び内標準元素の分析線をあらかじめ選定しておく。また,
共存元素の影響を考慮して選定する必要がある。分析線の例を,表4に示す。
10
検量線
10.1
検量線の作成
検量線の作成は,次のいずれかによる。ただし,検量線の作成に用いる,検量線作成用試料(7.1)が3
個の場合は,一次回帰式である,式(1)又は式(5)に限定する。
a) 品種別検量線の作成 分析試料と冶金的履歴及び化学組成が近似し,定量成分含有率範囲をほぼ等分
できる検量線作成用試料(7.1)を,箇条9の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行い,定
量元素の発光強度測定値と検量線作成用試料中の定量元素の含有率とから式(1)又は式(2)のいずれか
の関係線を作成して検量線3) とする4)。
1
i
1
i
b
I
a
W
+
=
············································································· (1)
2
i
2
2
i
2
i
c
I
b
I
a
W
+
+
=
···································································· (2)
ここに,
Wi: 検量線作成用試料の定量成分iの標準値[%(質量分率)]
Ii: 検量線作成用試料の定量成分iの発光強度測定値
a1,b1: 定数項
a2,b2,c2: 定数項
注3) 検量線は,適切な含有率範囲で分割して作成してもよい。
4) 検量線をあらかじめ作成してある場合には,1個又は2個の検量線校正用試料(7.2)を検量
線作成用試料(7.1)の代わりに用いて,箇条9の手順に従って発光強度測定値を求め,得た
発光強度測定値を用いて,あらかじめ作成してある検量線の時間変動を校正した検量線を作
成し,それを使用してもよい。
7
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b) 基準検量線5) の作成 基準検量線の作成は,次による。
注5) 共存成分及びニッケル量の影響を,例えば,次に規定するスペクトル重なり補正係数を用い
て補正することによって,検量線作成用試料と冶金的履歴の近似した品種で化学組成が異な
る分析試料中の成分を定量する場合に用いることができる。
1) スペクトル重なり補正係数6) の算出 ニッケル及び定量成分iからなる,一連のNi-i二元系標準物
質7) の定量成分iの発光強度を箇条9の手順によって測定し,この発光強度測定値と定量成分iの
標準値との関係をNi-i二元系検量線とする。次に,ニッケル及び共存成分jからなる一連のNi-j二
元系標準物質を用いて,定量成分iの分析線における発光強度をNi-i二元系標準物質と同一条件で
測定し,その発光強度測定値とNi-i二元系検量線とから定量成分iに相当する見掛けの定量値ΔXi
を求める。
なお,Ni-j二元系標準物質中に含まれる定量成分iの影響が無視できない場合は,定量成分iの含
有率を見掛けの定量値から差し引いた後,補正係数ljを算出する必要がある。
このΔXiと共存成分jの含有率との関係を,最小二乗法によって一次回帰計算を行い,式(3)から
スペクトル重なり補正係数ljを求める。
なお,二元系試料がない場合は検量線定数を含め重回帰法で求めることができる。
C
W
l
X
+
×
=
∆
j
j
i
········································································ (3)
ここに,
ΔXi: Ni-j二元系標準物質の定量成分iの見掛けの定量値[質
量分率(%)]
Wj: Ni-j二元系標準物質の共存成分jの定量値[質量分率
(%)]
lj: 定量成分iに対する共存成分jのスペクトル重なり補正
係数
C: 定数
注6) 定量成分の定量値に対する共存成分の影響の割合を示す補正係数。すなわち,定量成分i
のスペクトル線に共存成分jのスペクトル線が重なるとき,定量成分iの見掛けの発光強度
は実際の強度より高い値となる。このような場合に,定量成分iに対する共存成分jの影響
量を補正するための係数。
7) ニッケルを主成分とし,一つの定量成分だけを添加した標準物質で他成分を含むが,その
含有率ができるだけ少ないものをいう。
2) 推定基準値の算出 検量線作成用試料(多元系)の定量成分iの標準値Wi及び共存成分jの標準値
Wj並びに1) で求めた補正係数ljを用いて,式(4)から
iˆXを算出し,これを検量線作成用試料(多元
系)の定量成分iの推定基準値とする。
(
)
j
jW
l
W
X
×
Σ
+
=
i
iˆ
····································································· (4)
ただし,ニッケル量補正をする場合は,式(4)の含有率Wi及びWjに代え含有率をニッケル含有率
(WNi)の割合で除した値(ニッケル量比)Wi' 及びWj' を用いて,式(4)から
iˆXを算出し,これを検
量線作成用試料(多元系)の定量成分iの推定基準値とする。
Wi'=Wi / (WNi / 100)
Wj'=Wj / (WNi / 100)
3) 基準検量線の作成 2) で推定基準値
iˆXを求めた検量線作成用試料(多元系)について,箇条9の
手順に従って分析試料と同一条件で操作し,得た定量成分の発光強度測定値Iiと推定基準値
iˆXとか
8
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ら式(5)又は式(6)のいずれかの関係式を求めて基準検量線とする8)。
1
i
1
iˆ
b
I
a
X
+
=
············································································· (5)
2
i
2
2
i
2
iˆ
c
I
b
I
a
X
+
+
=
···································································· (6)
ここに,
iˆX: 2) で得た検量線作成用試料の定量成分iの推定基準値
[質量分率(%)]
Ii: 検量線作成用試料の定量成分iの発光強度測定値
a1,b1: 定数項
a2,b2,c2: 定数項
注8) 基準検量線は,検量線の近似などに起因する微小誤差のために,真の二元系検量線とは完
全に一致しないこともある。
c) 品種別基準検量線の作成 a) の品種別検量線及びb) の基準検量線を用いて得た定量値について許容
差以内の精確さが得られない場合に,定量値の誤差が最小となるように共存成分の影響及びニッケル
量変動の影響の補正を分析試料の冶金的履歴ごと又は適切な成分含有率ごとに,b) の手順に従って操
作し,IiとXiとの関係式を求め,品種別基準検量線とする。
10.2
検量線の校正
検量線の校正は,次による。
a) 検量線校正用試料を定期的に定量し,あらかじめ実験的に求めた,室内再現許容差を満足することを
確認する。これは一定の頻度で行う。また,次の1)〜9) に示すような装置変動要因が発生した場合に
は,検量線の校正を行う。
1) 電源電圧の急激な変化があった場合
2) 分光器内の真空度が劣化した場合
3) 集光レンズ又は保護石英ガラス板を清掃した場合
4) アルゴンガスボンベのロットを変更した場合
5) 試料調製研磨材を取り替えた場合
6) 対電極を取り替えた場合
7) 分光器入射光に対する入口スリットの相対位置を調整した場合
8) 装置の修理調整を行った場合
9) 長期間分析を休止した場合
b) 検量線の校正は,例えば,次の方法による。
検量線作成時からの発光強度測定の変化を,検量線含有率範囲の上限及び下限付近の2個の検量線
校正用試料を用いて式(7)によって補正する9)。この校正結果が妥当かどうかは,認証標準物質又は実
用標準物質を定量し,あらかじめ実験的に求めた室内再現許容差内であることを確認する。
β
α
+
×
=
'
I
I
i
i
··········································································· (7)
ここに,
Ii: 分析試料中の定量成分iの補正後強度測定値
'
I
'
I
I
I
iL
iH
iL
iH
−
−
=
α
'
I
I
iH
iH
×
−
=
α
β
Ii': 分析試料中の定量成分iの未補正強度測定値
IiH: 高濃度側検量線校正試料中の定量成分i検量線作成時の
発光強度測定値
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IiL: 低濃度側検量線校正試料中の定量成分i検量線作成時の
発光強度測定値
IiH': 高濃度側検量線校正試料中の定量成分i定量時の発光強
度測定値
IiL': 低濃度側検量線校正試料中の定量成分i定量時の発光強
度測定値
注9) 計算上は,分析試料の発光強度測定値に対する校正となっているが,検量線を校正する効果
は同一である。
11
計算
計算は,次による。
a) 品種別検量線を用いる場合 箇条9で得た発光強度測定値Iiと10.1 a) で作成して10.2で校正した検
量線とからWiを求め,試料中の定量成分iの定量値とする。
b) 基準検量線又は品種別基準検量線を用いる場合 基準検量線又は品種別基準検量線を用いる場合は,
次による。
1) 発光強度法の場合
1.1) 未補正定量値の算出 箇条9 a) で得た発光強度測定値Iiと10.1 b) 3) で作成して10.2で校正した
検量線とから
iˆXを求め,これを未補正定量値Xiとする。
1.2) 定量値の算出 1.1) で得たXi及び10.1 b) 1) で求めたljを用いて,次の式(8)によって定量値を算
出する。
(
)
j
jW
l
X
W
×
Σ
−
=
i
iˆ
····································································· (8)
ここに,
iˆW: 分析試料中の定量成分iの定量値[質量分率(%)]
Xi: 1.1) で得た分析試料中の定量成分iの未補正定量値[質
量分率(%)]
Wj: 分析試料中の共存成分jの含有率[質量分率(%)]10)
注10) 補正計算は共存成分の積を用いて行うため,共存成分の含有率を知る必要がある。この
共存成分の含有率は,他の方法又は発光分光分析方法で求めた定量値を用いる。
2) 発光強度比法の場合
2.1) 未補正定量値の算出 箇条9 b) で得た発光強度測定値Iiと10.1 b) 3) で作成して10.2で校正した
検量線とから
iˆXを求め,これを未補正定量値Xiとする。
2.2) 定量値の算出 2.1) で得たXi及び10.1 b) 1) で求めたljを用いて,式(8)によって定量値を算出す
る。ニッケル量補正をした場合は,式(9)によって'
Wiˆを計算し,定量値とする。
100
/
ˆ
ˆ
ˆ
Ni
i
i
W
W
'
W =
······································································· (9)
ここに,
iˆW: 分析試料中の定量成分iの定量値[質量分率(%)]
'
Wiˆ: 分析試料中の定量成分iのニッケル量補正定量値[質量
分率(%)]
Ni
ˆW: 分析試料中のニッケル含有率[質量分率(%)]
他の方法で求めた定量値又は次の式(10)によって求めた
近似値を用いる。
100
100
100
ˆNi
Σ
+
Σ
−
=
cor
non
W
W
W
······························································· (10)
10
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ここに,
ΣWnon: 他の方法で求めた共存成分の定量値の和又はニッケル
量補正しない成分の定量値
iˆW[質量分率(%)]の和
ΣWcor: ニッケル量補正する成分のニッケル量補正前の定量値
iˆW[質量分率(%)]の和
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附属書A
(規定)
スパーク放電発光分光分析装置
A.1 装置
A.1.1 装置の概要
スパーク放電発光分光分析装置は,励起電源部,光源部,集光部,分光部,受光部及び測光部からなる。
励起電源部では,試料の励起源を光源部に供給して発光させる。集光部では,この光を集光して分光部に
導く。分光部では,入射した光を各元素のスペクトル線に分光して受光部で受ける。測光部では,受光部
に入射した各元素のスペクトル線強度を光電的に測定して,指示・記録又はその測定値を元素含有率に換
算して表示する。
A.1.2 装置の構成
装置は,次の単位装置で構成する。その例を図A.1に示す。
図A.1−スパーク放電発光分光分析装置構成図の例
a) 励起電源装置 試料を放電によって蒸発気化して励起発光させるための電力を光源部に供給できるも
ので,次のいずれかを用いる。
1) 直流高圧スパーク(DC HVS)電源装置 高圧変圧器で電圧を約10 kV以上に上げ,整流管又は整
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流器で整流してコンデンサに充電し,これを同期回転断続器で順次放電することが可能な装置。
2) 低圧コンデンサ放電電源装置 大容量のコンデンサを最高1 kV程度に充電した後,高圧スパーク放
電によって点火することが可能な装置。
b) 光源装置 試料を放電によって発光させて光源とするために,試料電極・対電極の支持,特定ガスを
用いる発光雰囲気の調節,電極保持部分の水冷などが可能な装置。その例として図A.2に示す,平面
試料用電極支持台は,通常,径20 mm以上の平面試料が保持可能で,発光雰囲気にアルゴンなどを使
用して,その流量を流量計及び自動弁によって調節できるようになっている。
1 集光レンズ
3 アルゴンガス流入口
5 試料
2 保護石英ガラス板
4 対電極
6 アルゴンガス流出口
図A.2−平面試料用電極支持台の例
c) 集光装置 集光レンズ系を用いて光源からの光を集光して分光系に入射させる装置。通常はコリメー
タ結像法を用い,これは一個の集光レンズを入口スリットの前に置き,光源からの光を集光して入口
スリットを均一に照射し,コリメータ上に結像する。
d) 分光器 入口スリット系,分光系及び出口スリット系によって構成し,入口スリット系から入射した
光を,分光系で分光し,出口スリット系によって各元素のスペクトル線に選別できるもの。通常,器
内を真空下で使用する真空形又は常圧下で使用する常圧形を用いる。
1) 入口スリット系 入口スリット及びその位置調整機構によって構成し,スリット幅が固定のもの又
は可変のものがある。通常,固定形を用いる。
2) 分光系 回折格子又はプリズムを用いたものがある。通常,回折格子による分光系を用いる。回折
格子による分光系には,凹面回折格子又は平面回折格子を備えたものがあり,凹面回折格子には,
パッシェン・ルンゲ形,イーグル形など,平面回折格子には,エバート形があるが,通常,パッシ
ェン・ルンゲ形分光系を用いる。パッシェン・ルンゲ形分光系を図A.3に示す。
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1 入口スリット
2 凹面回折格子
3 出口スリット
4 焦点面
5 ローランド円
図A.3−パッシェン・ルンゲ形分光系
3) 出口スリット系 出口スリットを通ったスペクトル線を光電子増倍管の光電陰極面上に結像させる
ための凹面反射鏡,出口スリットにスペクトル線を入射させる石英ガラス屈折板などで構成する。
出口スリットは,通常,スリット幅が固定である。ただし,適用する分析材質によって,分析線に
対する妨害スペクトル線の影響の程度が異なるため,装置導入時にメーカーにて適正なスリット幅
を選択し,設置する。
e) 測光装置 光電子増倍管,積分ユニット,記録計,操作回路などで構成し,出口スリットからの光を
光電子増倍管に受けて電流に変え,各スペクトル線の強度を測定できるもの。その測光方式には,積
分ユニット及び記録計による電圧測定方式又は直接計数変換による電気量測定方式を用いる。
1) 光電子増倍管 使用する分析線の波長に対して適切な波長感度領域のもので,その特性は,SN比
が大で感度が高く,疲労回復の早い特性をもち,その光電子増倍管の印加電圧を,スペクトル線強
度に応じて調節できるもの。
2) 積分ユニット 漏れ及び履歴現象の極めて小さいコンデンサ並びにリレー群からなり,光電子増倍
管の出力電流を充電して記録計,指示計又は含有率換算機に信号として出力できるもの。
3) 記録計,指示計及び含有率換算機 記録計及び指示計には,通常,デジタル表示計を用い,積分ユ
ニットの出力信号を測定し,通常,その測定値を,内標準線に対する相対値として記録・指示する
ことが可能なもの。含有率換算機は,その相対値を対応する元素含有率に自動的に換算できる機能
をもつもの。
4) 操作回路 多数のリレー,スイッチ,タイマなどで構成し,測光装置及び発光装置の各部分に対す
る作動指令を自動的に制御することが可能なもの。
A.1.3 装置の調整
装置の調整は,次による。装置は,常に正常な運転ができるように十分に整備しておかなければならな
い。
a) 発光装置の調整 発光装置の調整は,次による。
励起電源装置の回路の諸元,光源装置の雰囲気ガス流量などは,試料の種類,定量成分,その定量
範囲などによって適切な条件をあらかじめ決定しておく。
1) 予備通電 励起電源装置の電気的作動が安定するまで,あらかじめ適切な時間通電しておく。必要
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があれば,励起電源装置の高圧変圧器の一次電圧を電圧調整器によって,所定の電圧に設定する。
この一次電圧は,十分に安定していなければならない。
2) 励起電源装置の制御間隙の調整 高圧回路の出力に分析間隙と直列に設けた空間間隙のある装置で
は,その電極の放電面を定期的に成形し,スペーサーを用い所定の間隙にし,常に規定の放電電圧
になるように調整する。
3) 雰囲気ガス流量の調整 雰囲気ガスの流量は,試料の発光に影響するため,発光中及び休止中の流
量が所定の値となるように,流量計を調整する。
b) 光学系の調整 集光装置及び分光器の光学系の調整は,次による。点検及び調整は,あらかじめ実施
しておかなければならない。
1) 集光レンズ及びその保護石英ガラス板の点検 汚染されているときは清浄にする。汚染の有無は,
通常,積分時間の増加又は感度の低下によって点検する。
2) 分光器内圧力の調整 真空形分光計の器内圧力は,装置に応じた真空度を保持する。
3) 分光器入射光の位置の調整 分光器入射光の位置を調整して,スペクトル線波長の位置を出口スリ
ットに正確に合わせる。自動調整機構をもつ装置では,その作動状況を確かめる。
c) 測光装置の調整 測光装置の点検及び調整は,次による。
1) 予備放電 光電子増倍管を含む測定回路が安定に作動するようになるまで,あらかじめ測光装置に
適切な時間通電しておく。
2) 予備放電時間及びパルス数の決定 予備放電時間及びパルス数は,分析試料,定量元素の種類,発
光条件,内標準法を用いる場合の定量元素の発光線と内標準線との組合せなどによって異なるため,
あらかじめ実験的に確かめて決める。
3) 積分時間及びパルス数の調整 積分時間及びパルス数の設定は,分析精度,所要時間,分析線の強
度などを基準にして,あらかじめ実験的に定める。
4) 測定強度範囲の規制 定量元素の濃度範囲及びスペクトル線の特性に応じて,各光電子増倍管の印
加電圧を調整しておく。
A.2 装置の設置
装置の設置に当たっては,機種に応じた設置条件を満たさなければならない。通常,次の事項に留意す
る。
a) 装置は,ほこりが少なく,腐食性ガスが入らない室内に設置することが望ましい。
b) 装置を設置する分析室内は,通常,温度を22〜25 ℃とし,その変動を±1 ℃の範囲で,相対湿度を
60 %以下に保持する。ただし,分光器が恒温機構を内蔵し,装置の電気回路の絶縁抵抗が湿度に対し
て十分に大きい場合は,この限りではない。
c) 分光器は,できるだけ振動の少ない場所に設置し,必要ならば,防振床,防振ゴムなどを用いて振動
の影響を受けないようにする。
d) 装置の電源は,電圧変動を±1 %以内に保持するために定電圧装置を介して供給し,できるだけ周波
数変動の少ないものであることが望ましい。
e) 装置を安定に作動させ,他の機器への妨害雑音を軽減するために,接地抵抗20 Ω以下の専用の接地設
備を設けなければならない。
f)
光源部にガスを供給する装置の場合には,ガスの配管は内面を清浄にしたステンレス鋼管,銅管など
を用い,接合部分ができるだけ短いことが望ましい。
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g) 装置は,直射日光の当たらないところに置き,電灯光線がコリメータに直接入射しないようにする。
A.3 安全衛生
分光分析を行う場合の安全衛生については,次の事項に注意する。
a) 電気配線は全て規格に適合するものを使用し,装置の絶縁及び接地は,十分に行わなければならない。
b) 全部の電気回路を切断できる1個の主開閉器を備えなければならない。
c) 装置の点検・修理は,やむを得ない場合を除き,主開閉器を切ってから行う。主開閉器の開閉は,呼
称しながら行うなどの方法によって,十分に注意して操作する。特に,回路にコンデンサを含む励起
電源装置においては,開閉器を切った後も,短時間帯電していることがあるので放電させてから行う。
通電中の点検は,2名以上で行い,感電時の応急措置法を明確に決めておくことが望ましい。
d) 装置を設置する室内は,試料発光時に発生する有毒ガス及びほこり,雰囲気として供給するガスなど
の室内充満を避ける処置をする。
e) 発光源からの紫外線放射光を直接見ないように注意する。必要があれば,紫外線防止の保護具を使用
する。
f)
電気火災に備えて消火器具を室内に設置しておくことが望ましい。
g) 騒音を発生する装置を使用する場合には,できるだけ吸音構造にすることが望ましい。
h) 試料調製用機械の操作方法は,十分に習得してから行う。高速度切断機,ベルトサンダ,グラインダ
などには,安全カバー,集じん装置などを備える。切削用の旋盤,ボール盤などの操作には手袋を使
用してはならない。目に切りくずの入るおそれのある場合には,保護具を用いる。切削研磨くずの処
理をおろそかにしてはならない。