H 1286 : 1999 (ISO 11433 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
今回の新規制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の
作成及び日本工業規格を基礎にした国際規格の原案の提案を容易にするために,ISO 11433 : 1993, Nickel
alloys−Determination of titanium content−Diantipyrylmethane molecular absorption spectrometric methodを翻訳
し日本工業規格とした。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1286 : 1999
(ISO 11433 : 1993)
ニッケル合金中のチタン定量方法
Methods for determination of titanium in
nickel alloys
序文 この規格は,1993年に第1版として発行されたISO 11433 Nickel alloys−Determination of titanium
content−Diantipyrylmethane molecular absorption spectrometric methodを翻訳し,技術的内容及び規格票の様
式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で下線(点線)を施してある箇所は,原国際規格にない事項である
1. 適用範囲 この規格は,ニッケル合金中の0.3% (m/m) 以上5.0% (m/m) 以下のチタン含有率を定量す
るための吸光光度法について規定する。この方法を一部変更して,タングステン及び/又はタンタルを含
む合金のチタンの定量方法にも適用できる。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。この規格発行の時点ではそれぞれの規格の発行版表示は正しいものであるが,規格はすべて改正され
るものであるので,この規格を使用することに合意した当事者は,常に最新版の規格を適用する。IEC及
びISOのメンバーには最新の国際規格のリストが配布されている。
ISO 385-1 : 1984 Laboratory glassware−Buretts−Part 1 : General requirements
ISO 648 : 1977 Laboratory glassware−One-mark pipettes
ISO 1042 : 1983 Laboratory glassware−One-mark volumetric flasks
ISO 5725 : 1986 Precision of test methods−Determination of repeatability and reproducibility for a standard
test method by inter-laboratory tests
3. 原理 分析試料を塩酸及び硝酸で分解する。硫酸を加えて加熱し,硫酸の白煙を発生させて塩酸及び
硝酸を追い出す。チタンジアンチピリルメタン錯体を生成させ,波長390nmにおける試料溶液の吸光度を
測定する。
4. 試薬 分析の際は,ほかに記述がない限り,分析級として認められた試薬及び蒸留水又はこれと同等
の純度の水を用いる。
4.1
塩酸 (ρ20=1.18g/ml)
4.2
塩酸(ρ20=1.18g/ml 希釈1+1)
4.3
硫酸(ρ20=1.84g/ml 希釈1+1) 水100mlに硫酸100mlをゆっくりと,間断なく加える。
4.4
硝酸 (ρ20=1.41g/ml)
2
H 1286 : 1999 (ISO 11433 : 1993)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.5
アンモニア水 (ρ20=0.88g/ml)
4.6
硫酸水素カリウム (KHSO4)
4.7
アスコルビン酸溶液 アスコルビン酸 (C6H8O6) 20gを水に溶解し,水で液量を200mlとする。
4.8
しゅう酸溶液 しゅう酸二水和物 [(COOH) 2・2H2O] 10gを水に溶解し,水で液量を200mlとする。
4.9
ジアンチピリルメタン溶液 ジアンチピリルメタン一水和物 (C23H24N4・H2O) 4gを塩酸(4.2)25mlで
溶解し,水で液量を200mlとする。
4.10 塩化ナトリウム溶液 塩化ナトリウム (NaCl) 117gを水で溶解し,水で液量を500mlとする。
4.11 チタン標準原液 (0.200g/ml) オキシしゅう酸チタンカリウム二水和物0.739gを水で溶解する硫酸
(4.3)50mlを加え,加熱して硫酸の白煙を発生させる。冷却した後,水で薄める。溶液を500mlの全量フラ
スコに移し入れ,水で標線まで薄める。
4.12 チタン標準溶液 (25μg/ml) チタン標準原液(4.11)25.0mlを200mlの全量フラスコに取る。硫酸
(4.3)20mlを加える。溶液を常温まで冷却した後,水で標線まで薄める。
5. 器具 通常の実験器具及び以下に示す器具を使用する。
5.1
清浄なコニカルビーカー (125ml)
5.2
全量フラスコ ISO 1042のA級に適合した容量50ml,100ml,200ml,250ml及び500mlのもの。
5.3
ピペット ISO 648のA級に適合した5mlのもの。
5.4
ミクロビュレット ISO 385-1のA級に適合した0.02mlの目盛付きの容量10mlのもの。
5.5
分光光度計 波長390nmの吸光度が測定できるもの。
6. サンプリング及び試料調製
6.1
分析用試料のサンプリング及び調製は,一般的に合意された方法,又は合意されたものがない場合
は関連する国際規格に従って行う。
6.2
通常の分析用試料の形状は,粉状,粒状,切削片又は切粉であるので,それ以上の試料調製の必要
はない。
6.3
分析用試料が切削及びドリリング工程で油又はグリースで汚染されているおそれのあるときは,高
純度のアセトンで洗浄して空気中で乾燥し清浄にする。
6.4
分析用試料がいろいろなサイズの粒子又はかけらを含んでいるときは,分析試料を二分器法によっ
て得る。
7. 操作
7.1
試料溶液の調製
7.1.1
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,表1に従って,0.1mgのけたまではかる。
表1 試料はかり取り量
試料中のチタン含有量
% (m/m)
試料はかり取り量
g
0.3以上 3.0未満
0.19 〜0.21
3.0以上 5.0以下
0.099〜0.11
3
H 1286 : 1999 (ISO 11433 : 1993)
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7.1.2
試料の分解 試料をはかり取って,コニカルビーカー (120ml) に移し入れる。塩酸(4.1)10ml及び
硝酸(4.4)3mlを加える。十分に加熱し,完全に分解するまで加熱を続ける。もし,合金が分解しないとき
には,少量の混酸(塩酸3,硝酸1)を加える。塩酸(4.1)1mlを余分に加え,試料が完全に分解するまで加
熱する。
参考 原文には,混酸としか記載されていないが,便宜上内容を追加した。
7.1.3
最終試料溶液の調製 硫酸(4.3)7mlを加え,硫酸の白煙が発生するまで加熱する。冷却した後,タ
ンタルの存在の有無によって7.1.3.1又は7.1.3.2の手順に従って操作する。
7.1.3.1
タンタルを含まない場合 しゅう酸溶液(4.8)20mlを加え,加熱して塩類を溶解する。溶液を冷却
し,7.1.4の手順に従って操作する。
7.1.3.1.1
タングステンを含む場合 十分なアンモニア水(4.5)を加え,アルカリの溶液とする。タングス
テン酸が溶解するまで溶液を煮沸する。冷却した後,塩酸(4.1)20mlを加え,酸性とする。冷却した後,7.1.4
の手順に従って操作する。
7.1.3.2
タンタルを含む場合 水30mlを加え,加熱して塩類を溶解した後,再び冷却する。ろ紙パルプ
を詰めたろ紙を用いてろ過する。沈殿を温水で洗浄する。ろ液を保存する。沈殿をろ紙とともに白金るつ
ぼに移し入れる。800℃で灰化した後,冷却する。硫酸水素カリウム(4.6)1gを加え,白金のふたで白金る
つぼを覆い,注意して融解する。冷却した後,るつぼをしゅう酸溶液(4.8)20mlを加えたビーカー (150ml) に
移し入れる。注意して加熱し,融成物を溶解する。白金るつぼを洗って取り除く。しゅう酸で処理した溶
液を元のろ液と合わせ,7.1.4の手順に従って操作する。
7.1.4
希釈
7.1.4.1
チタン含有率が1.0% (m/m) 未満の場合 試料溶液(7.1.3.1,7.1.3.1.1又は7.1.3.2)を100mlの
全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
7.1.4.2
チタン含有率が1.0% (m/m) 以上5.0% (m/m) 以下の場合 試料溶液(7.1.3.1,7.1.3.1.1又は
7.1.3.2)を250mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。
7.2
呈色
7.2.1
ピペット(5.3)を用い,試料溶液(7.1.4.1又は7.1.4.2)5.0mlを2個の50mlの全量フラスコ(5.2)にそ
れぞれ分取する。
7.2.2
塩酸(4.2)5.0ml,アスコルビン酸溶液(4.7)5.0ml及び塩化ナトリウム溶液(4.10)20.0mlを両方の全量
フラスコに加える。溶液を振り混ぜた後,数分間放置する。
7.2.3
1個の全量フラスコにジアンチピリルメタン溶液(4.9)10.0mlを加える。
7.2.4
両方の全量フラスコに水を加えて標線まで薄め,40分間放置する。
7.3
吸光度の測定
7.3.1
7.2.4の両方の全量フラスコの溶液の一部を吸収セル (1cm) に移し入れ,水を対照液として,分光
光度計(5.5)を用い,波長390nmの吸光度を測定する。
7.3.2
ジアンチピリルメタンを加えた試料溶液の吸光度からジアンチピリルメタンを加えない試料溶液
の吸光度を差し引く。
7.4
空試験 試料と並行して,試料と同様の操作ですべての試薬の同じ量を用いて試薬空試験を行う。
7.5
検量線の作成
7.5.1
ミクロビュレット(5.4)を用い,50mlの全量フラスコに標準チタン溶液(4.12)0ml,1.0ml,2.0ml,3.0ml,
4.0m1及び5.0mlを取る。
7.5.2
7.2.2の手順に従って,塩酸,アスコルビン酸溶液及び塩化ナトリウム溶液を加える。
4
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7.5.3
ジアンチピリルメタン溶液(4.9)10.0mlを加える。水で標線まで薄める。40分間放置する。この標
準系列は,1m1当たり,0μg,0.5μg,1.0μg,1.5μg,2.0μg及び2.5μgのチタンに相当する。
7.5.4
7.3の手順に従って検量線溶液の吸光度を測定する。チタン濃度が0μg/ml以外の検量線溶液の吸光
度からチタン濃度0μg/mlの検量線溶液の吸光度を差し引く。
7.5.5
正味の吸光度を検量線溶液のそれぞれのチタン濃度 (μg/ml) に対してプロットする。
7.6
定量数 定量は,少なくても2回行う。
7.7
検査試験 同一合金系のチタン含有率既知の一つ又はそれ以上の試料を用い,同じ操作を試料と並
行して行い,この方法の精度を検査するとよい。
8. 結果の表示
8.1
計算
8.1.1
検量線(7.5.5)を使って試料溶液(7.3.2)及び空試験(7.4)の正味の吸光度をチタンの濃度 (μg/ml) に換
算する。
8.1.2
分析試料のチタン含有率を次の式によって算出する。
m
V
W
×
×
−
=
5
50
)
(
0.
Ti
Ti
Ti
ρ
ρ
ここに, WTi: 試料中のチタン含有率 (g/t)
ρTi: 試料溶液(8.1.1)中のチタン検出量 (μg/ml)
ρTi.0: 空試験溶液(8.1.1)中のチタン検出量 (μg/ml)
V: 試料溶液(7.1.4.1又は7.1.4.2)の液量 (ml)
m: 試料はかり取り量(7.1.1)(g)
参考 原文における計算式に誤りがあるので,採用していない。
8.2
精度
8.2.1 分析所間試験 4か国,11分析所が四つの標準的な組成の試料を用いたこの操作の試験に参加した。
異なった2日に繰り返し試料を分析した。試料の大略な組成を表2に示す。
表2 試料の組成 [% (m/m)]
試料
Al
Co
Cr
Fe
Hf
Mo
Nb
Ta
Ti
W
Ni
RE-1
5.5
10
9
−
1.6
−
−
2.6
1.5
10
残
RE-2
0.5
0.5
20
18
−
3
5
−
1.0
−
残
RE-3
1.9
19
22
−
−
−
1
1.4
3.7
2
残
RE-4
3.0
10
14
−
−
4
−
−
5.0
4
残
8.2.2
統計解析
8.2.2.1
ISO 5725に従って分析所間試験プログラムの繰り返し実験の結果を評価した。ISO 5725に示さ
れているコクラン (Cochron) 及びディクソン (Dixon) 検定によってデータを統計的に棄却するかどうか
検定した。
8.2.2.2
コクランの検定の原理は,もし室内分散がほかの分析所と比較して顕著に大きい場合,一連の結
果は棄却されるというものである。ディクソンの検定は,一つの分析所の平均値がほかの分析所の平均値
から大きくかけ離れているかどうかを決定するものである。
8.2.2.3
ISO 5725に従って同一条件測定精度及び再現精度を信頼性95%で計算した。統計解析結果を表3
に示す。
5
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表3 統計解析の結果
試料
平均
% (m/m)
室内標準偏差 室間標準偏差 同一条件分析精度
再現精度
RE-1
1.49
0.015
0.026
0.041
0.084
RE-2
0.37
0.007
0.012
0.019
0.038
RE-3
3.69
0.018
0.026
0.050
0.088
RE-4
5.09
0.022
0.044
0.063
0.139
8.2.2.4
試料RE-1で一つの分析所がコクランの検定で棄却された。
9. 妨害 モリブデンを含む場合には,チタン報告値(8.1.2参照)がモリブデン含有率1% (m/m) ごとに
チタン含有率0.001% (m/m) 高くなるので,モリブデンは高いバイアスの原因と考えられる。
10. 試験報告 次の項目について,試験報告を行う。
a) 分析方法に関する引用規格
b) 分析結果
c) 独立繰り返し数
d) 分析中の特異現象
e) 国際標準に規定されていない操作手順又は追加した操作手順
6
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国際規格整合化推進本委員会及び
ニッケル及びニッケル合金分析方法工業標準原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
神 尾 彰 彦
東京工業大学工学部
後 藤 敬 一
通商産業省基礎産業局非鉄金属課
◎ 大 嶋 清 治
工業技術院標準部材科規格課
村 田 祐 滋
東京都立工業技術センター金属部
竹 内 孝 夫
科学技術庁金属材料技術研究所
◎ 橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
太 田 裕 二
社団法人日本銅センター技術部
大 屋 武 夫
ステンレス協会
佐 藤 秀 樹
社団法人日本電子材料工業会技術部
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会技術部
赤 峰 淳 一
社団法人日本電機工業会技術部
篠 原 脩
社団法人日本ガス石油機器工業会技術部
山 添 哲 郎
通信機械工業会技術部
村 岡 良 三
社団法人日本自動車部品工業会技術部
山 下 満 男
富士電機株式会社生産技術研究所
安 井 毅
株式会社東芝材料部品事業部開発技術部
◎ 田 中 尚 生
三菱マテリアル株式会社桶川製作所
恒 原 正 明
古河電気工業株式会社金属事業本部
菅 沼 輝 夫
日鉱金属株式会社倉見工場技術部
大 関 哲 雄
大木伸銅工業株式会社技術部
中 島 安 啓
株式会社神戸製鋼所アルミ・銅事業本部技術部
田部井 和 彦
三菱マテリアル株式会社桶川製作所
岡 村 明 人
三菱伸銅株式会社若松製作所品質保証部
◎ 藤 沢 裕
日本伸銅協会技術部
○ 町 田 克 巳
住友金属鉱山株式会社中央研究所分析センター
○ 山 下 務
株式会社東芝材料部品事業部品質保証部
○ 久留須 一 彦
古河電機工業株式会社横浜研究所分析技術センター
○ 中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター顧問
○ 豊 嶋 雅 康
住友軽金属工業株式会社研究開発センター
(関係者)
和 田 隆 光
財団法人日本規格協会技術部国際整合化規格室
相 馬 南海雄
日本伸銅協会総務部
山 本 寿 美
古河電気工業株式会社横浜研究所
天 川 義 勝
株式会社ジャパンエナジー分析センター
備考 ◎印:本委員会及び原案作成分科会委員
○印:原案作成分科会委員