H 1282 : 1998
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS H 1282 : 1988は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許権,実用新案権,又は出願公開後の実
用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登
録出願にかかわる確認について責任をもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1282 : 1998
ニッケル合金中のタングステン
定量方法
Methods for determination of tungsten in nickel alloys
序文 この規格は,対応国際規格がないので,対応国際規格がない二つの定量方法を日本工業規格として
規定している。
1. 適用範囲 この規格は,ニッケル合金中のタングステン定量方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。この引用規格は,その最新版を適用する。
JIS H 1270 ニッケル及びニッケル合金の分析方法通則
3. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS H 1270の規定による。
4. 定量方法の区分 タングステンの定量方法は,次のいずれかによることとし,各定量方法の適用試料
は,表1による。
a) イオン交換分離チオシアン酸カリウム吸光光度法 この方法は,タングステン含有率2% (m/m) 以上
10% (m/m) 以下の試料に適用する。
b) イオン交換分離ICP発光分光法 この方法は,タングステン含有率2% (m/m) 以上10% (m/m) 以下の
試料に適用する。
5. イオン交換分離チオシアン酸カリウム吸光光度法
5.1
要旨 試料を塩酸,硝酸及びふっ化水素酸で分解した後,加熱して濃縮し,シロップ状とする。塩
酸及びふっ化水素酸を加えて塩類を溶解し,陰イオン交換カラムを通してタングステンを他の成分から分
離する。溶出液に硝酸,過塩素酸及び硫酸を加え,加熱して乾固する。水酸化ナトリウムを加えて塩類を
溶解した後,塩類を加えて酸性とし,塩化すず (II) と塩化チタン (III) とを用いてタングステンを還元し
た後,チオシアン酸カリウムを加えてタングステンのチオシアン酸錯体とし,光度計を用いて,その吸光
度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 硝酸
c) 過塩素酸
2
H 1282 : 1998
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d) ふっ化水素酸
e) ふっ化水素酸 (1+25)
f)
硫酸 (1+1)
g) 溶離液 塩酸830ml及びふっ化水素酸100mlをポリエチレン瓶 (1 000ml) に入れ,水で液量を1 000ml
とする。
h) 水酸化ナトリウム溶液 (100g/l)
i)
再生後,塩化アンモニウム214g及びふっ化アンモニウム37gを水500mlに溶解し,溶液をポリエチ
レン瓶 (1 000ml) に水を用いて移し入れ,水で液量を1 000mlとする。
j)
塩化すず (II) 溶液 塩化すず (II) 二水和物45gを塩酸50mlに加熱した後,水50mlを加えるこの溶
液は使用の都度調製する。
k) 塩化チタン (III) 溶液[約20% (m/m)]
l)
チオシアン酸カリウム溶液 (200g/l)
m) 標準タングステン溶液 (500μgW/ml) 調製は,次のいずれかによる。
表1 定量方法及び適用試料
試料
イオン交換分離
チオシアン酸カリウム
吸光光度法
イオン交換分離
ICP発光分光法
合金番号
合金記号
NW0276 NiMo16Cr15Fe6W4
○
○
NW6455 NiCr16Mo16Ti
−
−
NW6022 NiCr21Mo13FeW3
○
○
NW6007 NiCr22Fe20Mo6Cu2Nb
−
−
NW6985 NiCr22Fe20Mo7Cu
−
−
NW6002 NiCr21Fe18Mo9
−
−
ニッケルモリブデンクロム合金鋳物
○
○
1) タングステン[99.9% (m/m) 以上]0.500gを白金皿にはかり取り,ふっ化水素酸5mlを加え,硝酸
を滴加しながら加熱して分解した後,硫酸 (1+1) 5mlを加え,加熱して乾固する。放冷した後,水
酸化ナトリウム溶液 (100g/l) 10mlを加え,加熱して塩を溶解し,常温までに冷却した後,溶液を1
000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
2) タングステン酸ナトリウム二水和物0.897gを水で溶解し,溶液を1 000mlの全量フラスコに水を用
いて移し入れ,水で標線まで薄める。
5.3
器具 器具は,次による。
陰イオン交換カラム 長さ約400mm,内径約10mmの一端を細くしたポリエチレン管又は透明ポリ塩化ビ
ニル管の底部に水でほぐした脱脂綿又はポリエチレンウールを約5〜10mmの厚さに緩く詰め,水で膨張
させた強塩基性陰イオン交換樹脂(粒径74〜149μg,交換容量1.3ミリ当量/ml以上のもの)約20mlをス
ラリー状にして流し入れる。樹脂が沈降した後,その上に水でほぐした脱脂綿又はポリエチレンウールを
約5mmの厚さに緩く詰める。脱脂綿又はポリエチレンウールの詰め方を調節するなどして流出液の流量
を毎分1.0〜1.5mlになるようにする。陰イオン交換カラムの例を付図1に示す。
5.4
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.20gとする。
5.5
操作
5.5.1
予備操作 陰イオン交換カラム(5.3)にふっ化水素酸 (1+25) 50mlを通す。
3
H 1282 : 1998
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5.5.2
試料の分解 試料をはかり取り,四ふっ化エチレン樹脂ビーカー (100ml) に移し入れ,ポリエチ
レン時計皿で覆い,塩酸20ml,硝酸5ml及びふつ化水素酸5mlを加え,穏やかに加熱して分解する。時計
皿の下面を水で洗浄して時計皿を取り除き,シロップ状になるまで加熱して濃縮する。塩酸1ml及びふっ
化水素酸1mlを加え,再びシロップ状になるまで加熱して濃縮する。ふっ化水素酸 (1+25) 50mlを加え,
加熱して塩類を溶解した後,室温まで放冷する。
5.5.3
タングステンの分離 タングステンの分離は,次の手順によって行う。
a) 5.5.2で得た溶液を陰イオン交換カラム(5.3)に通した後,ふっ化水素酸 (1+25) 約40mlを用いて数回
に分けて四ふっ化エチレン樹脂ビーカーを洗い,その都度洗液をカラムを通し,更にふっ化水素酸 (1
+25) 80mlを通す。流出液は捨てる。
b) 引き続きカラムに溶離液 [5.2 g)] 150mlを10ml,10ml及び130mlと分けて通し,溶出液は四ふっ化エ
チレン樹脂ビーカー (300ml) に受ける(1)。
注(1) カラムを再使用する場合には,カラムに再生液 [5.2 i)] を10mlずつ2回,更に130ml通し,次に
水を10mlずつ2回通した後,更に150ml通しておく。
5.5.4
呈色 呈色は,次の手順によって行う。
a) 5.5.3 b)で得た溶出液を液量が約10mlになるまで加熱して濃縮する。硝酸5ml,過塩素酸2ml及び硫
酸 (1+1) 10mlを加え,加熱濃縮して白煙を数分間発生させた後,放冷する。四ふっ化エチレン樹脂
ビーカーの内壁を少量の水で洗浄し,加熱して乾固する。水酸化ナトリウム溶液8mlを加え,加熱し
て塩類を溶解する。常温まで冷却した後,溶液を200mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で
標線まで薄める。この溶液25.0mlを250mlの全量フラスコに分取する。
b) 塩酸75ml,塩化すず (II) 溶液 [5.2 j)] 25ml及び塩化チタン (III) 溶液1mlを加えてよく振り混ぜた後,
流水中で冷却する。チオシアン酸カリウム溶液25mlを加え,水で標線まで薄める。
5.5.5
吸光度の測定 5.5.4 b)で得た溶液の一部を光度計の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液として,
波長400nm付近における吸光度を測定する。
5.6
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
5.7
検量線の作成 標準タングステン溶液 [5.2 m)] を0〜5.0ml(タングステンとして0〜2.5mg)を段階
的に数個の250mlの全量フラスコに取り,水酸化ナトリウム溶液1ml及び水25mlを加える以下,5.5.4 b)
及び5.5.5の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行い,得た吸光度とタングステン量との関係線
を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
5.8
計算 5.5.5及び5.6で得た吸光度と5.7で作成した検量線とからタングステン量を求め,試料中のタ
ングステン含有率を,次の式によって算出する。
100
200
25
2
1
×
×
−
m
A
A
W=
ここに, W: 試料中のタングステン含有率 [% (m/m)]
A1: 分取した試料溶液中のタングステン検出量 (g)
A2: 分取した空試験液中のタングステン検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
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H 1282 : 1998
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6. イオン交換分離ICP発光分光法
6.1
要旨 試料を塩酸,硝酸及びふっ化水素酸で分解した後,加熱して濃縮し,シロップ状とする。塩
酸及びふっ化水素酸を加えて塩類を溶解し,陰イオン交換カラムを通してタングステンを他の成分から分
離する。溶出液に硝酸,過塩素酸及び硫酸を加え,加熱して乾固する。水酸化ナトリウムを加えて塩類を
溶解し,溶液をICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,その発生強度を測定する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 硝酸
c) 過塩素酸
d) ふっ化水素酸
e) ふっ化水素酸 (1+25)
f)
硫酸 (1+1)
g) 溶離液 5.2 g)による。
h) 水酸化ナトリウム溶液 (100g/l)
i)
再生液 5.2 i)による。
j)
標準タングステン溶液 (500μgW/ml) 5.2 m)による。
6.3
器具 器具は,5.3による。
6.4
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,5.4による。
6.5
操作
6.5.1
予備操作 予備操作は,5.5.1による。
6.5.2
試料の分解 試料の分解は,5.5.2による。
6.5.3
タングステンの分離 タングステンの分離は,5.5.3による。
6.5.4
試料溶液の調製 6.5.3で得た溶出液を液量が約10mlになるまで加熱して濃縮した後,硝酸5ml
及び過塩素酸2mlを加え,加熱して乾固する。放冷した後,水酸化ナトリウム溶液8mlを加え,加熱して
塩類を溶解する。常温まで冷却した後,溶液を200mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線ま
で薄める。この溶液25.0mlを100mlの全量フラスコに分取し,水を用いて標線まで薄める。
6.5.5
発光強度の測定 6.5.4で得た溶液の一部をICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波
長239.709nmにおける発光強度を測定する(2)。
注(2) 精度及び正確さを確認してあれば,他の波長を用いて測定してもよい。高次のスペクトル線の
測定が可能な装置では,高次のスペクトル線を用いてもよく,またバックグラウンド補正機構
が付いている装置では,バックグラウンド補正機構を用いてもよい。
6.6
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
6.7
検量線の作成 標準タングステン溶液 [6.2 j)] を0〜5.0ml(タングステンとして0〜2.5mg)を段階
的に数個の100mlの全量フラスコに取り,水酸化ナトリウム溶液1mlを加え,水を用いて標線まで薄める。
この溶液の一部をICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長239.709nmにおける発光強度を
試料と並行して測定し(2),得た発光強度とタングステン量との関係線を作成し,その関係線を原点を通る
ように平行移動して検量線とする。
6.8
計算 6.5.5及び6.6で得た吸光度と6.7で作成した検量線とからタングステン量を求め,試料中のタ
ングステン含有率を,次の式によって算出する。
5
H 1282 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100
200
25
2
1
×
×
−
m
A
A
W=
ここに, W: 試料中のタングステン含有率 [% (m/m)]
A1: 分取した試料溶液中のタングステン検出量 (g)
A2: 分取した空試験液中のタングステン検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
付図1 陰イオン交換カラムの例
6
H 1282 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ニッケル及びニッケル合金分析方法工業標準原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
神 尾 彰 彦
東京工業大学工学部
後 藤 敬 一
通商産業省基礎産業局非鉄金属課
◎ 天 野 徹
工業技術院標準部材料規格課
村 田 祐 滋
東京都立工業技術センター金属部
竹 内 孝 夫
科学技術庁金属材料技術研究所
◎ 橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
太 田 裕 二
社団法人日本銅センター技術部
大 屋 武 夫
ステンレス協会
佐 藤 秀 樹
社団法人日本電子材料工業会技術部
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会技術部
赤 峰 淳 一
社団法人日本電機工業会技術部
篠 原 脩
社団法人日本ガス石油機器工業会技術部
山 添 哲 郎
通信機械工業会技術部
村 岡 良 三
社団法人日本自動車部品工業会技術部
山 下 満 男
富士電機株式会社生産技術研究所
安 井 毅
株式会社東芝材料部品事業部開発技術部
◎ 田 中 尚 生
三菱マテリアル株式会社桶川製作所
恒 原 正 明
古河電気工業株式会社金属事業本部
菅 沼 輝 夫
日鉱金属株式会社倉見工場技術部
大 関 哲 雄
大木伸銅工業株式会社技術部
中 島 安 啓
株式会社神戸製鋼所アルミ・銅事業本部技術部
田部井 和 彦
三菱マテリアル株式会社桶川製作所技術管理室
岡 村 明 人
三菱伸銅株式会社若松製作所品質保証部
○ 町 田 克 巳
住友金属鉱山株式会社中央研究所
○ 山 下 務
株式会社東芝材料部品事業部品質保証部
○ 山 本 寿 美
古河電気工業株式会社横浜研究所
○ 中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
○ 豊 嶋 雅 康
住友軽金属工業株式会社研究開発センター
(事務局)
藤 沢 裕
日本伸銅協会技術部
(関係者)
久留須 一 彦
古河電気工業株式会社横浜研究所
天 川 義 勝
株式会社ジャパンエナジー分析センター
和 田 隆 光
財団法人日本規格協会
相 馬 南海雄
日本伸銅協会総務部
備考1.
◎印を付けてある委員は分科会委員を兼ねる。
2.
○印を付けてある委員は分科会委員だけである。