H 1279 : 1998
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS H 1279 : 1988は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日本
工業規格を基礎にした国際規格の原案の提案を容易にするため,ISO 7529 : 1989 Nickel alloys−
Determination of chromium content−Potentiometric titration method with ammonium iron (II) sulfate, ISO 7530-1 :
1990 Nickel alloys−Flame atomic absorption spectrometric analysis−Part 1 General requirements and sample
dissolution, 及びISO 7530-3 : 1992 Nickel alloys−Flame atomic absorption spectrometric analysis−Part 3
Determination of chromium content を規格の一部とした。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許権,実用新案権,又は出願公開後の実
用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登
録出願にかかわる確認について責任をもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1279 : 1998
ニッケル合金中のクロム定量方法
Methods for determination of chromium in nickel alloys
序文 この規格は,対応国際規格であるISO 7529 : 1989 Nickel alloys−Determination of chromium content−
Potentiometric titration method with ammonium iron (II) sulfate, ISO 7530-1 : 1990 Nickel alloys−Flame atomic
absorption spectrometric analysis−Part 1 : General requirements and sample dissolution及びISO 7530-3 : 1992
Nickel alloys−Flame atomic absorption spectrometric analysis−Part 3 : Determination of chromium contentの対
応する部分と技術的内容が一致するように作成した日本工業規格である。
なお,対応国際規格に規定されていない四つの定量方法を日本工業規格として追加している。
1. 適用範囲 この規格は,ニッケル合金中のクロムの定量方法について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 7529 : 1989 Nickel alloys−Determination of chromium content−Potentiometric titration method
with ammonium iron (II) sulfate
ISO 7530-1 : 1990 Nickel alloys−Flame atomic absorption spectrometric analysis−Part 1 : General
requirements and sample dissolution
ISO 7530-3 : 1992 Nickel alloys−Flame atomic absorption spectrometric analysis−Part 3 :
Determination of chromium content
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS H 1270 ニッケル及びニッケル合金の分析方法通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8005 容量分析用標準物質
3. 一般事項 分析に共通な一般事項は,JIS H 1270,JIS K 8001及びJIS K 8005の規定による。
4. 定量方法の区分 クロムの定量方法は,次のいずれかによることとし,各定量方法の適用試料は,表
1による。
a) ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) 滴定法(A法) この方法は,クロム
含有率10% (m/m) 以上20% (m/m) 以下の試料に適用する。
b) ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) ・過マンガン酸カリウム逆滴定法 こ
の方法は,クロム含有率10% (m/m) 以上20% (m/m) 以下の試料に適用する。
c) ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) ニクロム酸カリウム逆滴定法 この
2
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
方法は,クロム含有率10% (m/m) 以上20% (m/m) 以下の試料に適用する。
d) 原子吸光法(A法) この方法は,クロム含有率0.01% (m/m) 以上2.0% (m/m) 以下の試料に適用す
る。
e) 原子吸光法(B法) この方法は,クロム含有率0.01% (m/m) 以上4.0% (m/m) 以下の試料に適用す
る。
f)
ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) 滴定法(B法) この方法は,クロム
含有率1.0% (m/m) 以上30% (m/m) 以下の試料に適用する。
表1 定量方法及び適用試料
試料
定量方法
合金番号
合金記号
ペルオキソ
二硫酸アン
モニウム酸
化硫酸二ア
ンモニウム
鉄 (II) 滴定
法
(A法)
ペルオキソ
二硫酸アン
モニウム酸
化硫酸二ア
ンモニウム
鉄 (II) 過マ
ンガン酸カ
リウム逆滴
定法
ペルオキソ
二硫酸アン
モニウム酸
化硫酸二ア
ンモニウム
鉄 (II) 二ク
ロム酸カリ
ウム逆滴定
法
原子吸光法
(A法)
原子吸光法
(B法)
ペルオキソ
二硫酸アン
モニウム酸
化硫酸二ア
ンモニウム
鉄 (II) 滴定
法
(B法)
NW0001
NiMo30Fe5
−
−
−
○
○
○
NW0665
NiMo28
−
−
−
○
○
○
NW0276
NiMo16Cr15Fe6W4
○
○
○
−
−
○
NW6455
NiCr16Mo16Ti
○
○
○
−
−
○
NW6022
NiCr21Mo13Fe4W3
−
−
−
−
−
○
NW6007
NiCr22Fe20Mo6Cu2Nb
−
−
−
−
−
○
NW6985
NiCr22Fe20Mo7Cu
−
−
−
−
−
○
NW6002
NiCr21Fe18Mo9
−
−
−
−
−
○
ニッケルモリブデン合金鋳物
−
−
−
○
○
−
ニッケルモリブデンクロム合金鋳物
○
○
○
−
−
○
ニッケルクロム鉄合金鋳物
○
○
○
−
−
○
5. ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) 滴定法(A法)
5.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,過塩素酸及びりん酸を加え,加熱濃縮して過塩素酸の白煙を
発生させた後,触媒として硝酸銀を加え,更にペルオキソ二硫酸アンモニウムを加えてクロムを酸化し,
二クロム酸とする。生成した過マンガン酸を塩酸で還元した後,1, 10-フェナントロリンを指示薬として
二クロム酸を硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液で滴定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 塩酸 (1+3)
c) 硝酸
d) 過塩素酸
e) りん酸
f)
硝酸銀溶液 (20g/l)
g) 過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)
h) ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (200g/l) この溶液は,使用の都度調製する。
3
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
i)
0.1mol/l (0.1N) 硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 調製及び標定方法は,JIS K 8001の4.5(27)
[0.1mol/l硫酸アンモニウム鉄 (II) 溶液]による。
j)
1,10−フェナントロリン溶液1,10−フェナントロリン塩酸塩−水和物3gを水200mlに溶解する。
5.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.20gとし,0.1mgのけたまではかる。
5.4
操作
5.4.1
試料の分解 試料をはかり取ってビーカー (500ml) に移し入れ,時計皿で覆い,塩酸30m1及び硝
酸10mlを加え,穏やかに加熱して完全に分解する。放冷した後,時計皿の下面を水で洗浄して時計皿を
取り除く。過塩素酸15m1及びりん酸5mlを加え,加熱濃縮して過塩素酸の白煙を発生させ,更に数分間
加熱を続ける。
5.4.2
クロムの酸化 クロムの酸化は,次の手順によって行う。
a) 5.4.1で得た溶液に温水約150mlを加えてかき混ぜ,約1分間煮沸して残存する塩素を除去する。
b) 硝酸銀溶液10mlを加え,次にペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 [5.2i)] 20mlを少量ずつ加えた後,
3〜5分間煮沸して完全にクロムを二クロム酸に酸化するとともに,過剰のペルオキソ二硫酸アンモニ
ウムを分解する(1)。
c) 塩酸 (1+3) 5mlを加えて過マンガン酸を分解し,2〜3分間煮沸する。溶液の色がなお赤紫を呈してい
るときは,更に塩酸 (1+3) 2〜3mlを加えて2〜3分間煮沸し(2),過マンガン酸を完全に還元する。流
水で十分に冷却した後,水で液量を約150mlとする。
注(1) 試料中のマンガン含有率が少なく,過マンガン酸の呈色が生じない場合には,過マンガン酸カ
リウム溶液を滴加してわずかに赤紫色を呈するようにする。
(2) 塩酸 (1+3) を追加した場合には,煮沸時間が3分間を超えると,クロム酸の一部が還元されて
低値を与えるので,煮沸時間は2〜3分間を守らなければならない。
5.4.3
滴定 5.4.2c)で得た溶液に,1,10−フェナントロリン溶液 [5.2j)] 0.2〜0.3mlを指示薬として加
え,0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 [5.2i)] で滴定し,溶液の色が青緑から赤褐色に変わっ
た点を終点とし,0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液の使用量を求める。
5.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
5.6
計算 試料中のクロム含有率を,次の式によって算出する。
(
)
100
001733
.0
2
1
×
×
×
−
=
m
f
V
V
Cr
ここに,
Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
V1: 5.4.3で得た0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液使用量 (ml)
V2: 5.5で得た0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液使用量 (ml)
f: 0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液のファクター
m: 試料はかり取り量 (g)
6. ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) ・過マンガン酸カリウム逆滴定法
6.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,過塩素酸及びりん酸を加え,加熱濃縮して過塩素酸の白煙を
発生させた後,触媒として硝酸銀を加え,更にペルオキソ二硫酸アンモニウムを加えてクロムを酸化し,
二クロム酸とする。生成した過マンガン酸を塩酸で還元した後,二クロム酸を一定量の硫酸二アンモニウ
ム鉄 (II) で還元し,過剰の硫酸二アンモニウム鉄 (II) を過マンガン酸カリウム標準溶液で滴定する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
4
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 塩酸 (1+3)
c) 硝酸
d) 過塩素酸
e) りん酸
f)
硝酸銀溶液 (20g/l)
g) 過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)
h) ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (200g/l) 5.2h)による。
i)
0.1mol/l (0.1N) 硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 5.2i)による。
j)
0.02mol/l (0.1N) 過マンガン酸カリウム標準溶液 調製,保存及び標定方法は,JIS K 8001の4.5(7)
(0.02mol/l過マンガン酸カリウム溶液)による。
6.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.20gとし,0.1mgのけたまではかる。
6.4
操作
6.4.1
試料の分解 試料の分解は,5.4.1による。
6.4.2
クロムの酸化 クロムの酸化は,5.4.2による。
6.4.3
滴定 6.4.2で得た溶液に硫酸二アンモニウム鉄 (II) 溶液 [6.2i)] 30.0mlを加え,直ちに0.02mol/l
過マンガン酸カリウム標準溶液 [6.2j)] で滴定し,溶液の色がわずかに赤紫を呈した点を終点とし,
0.02mol/l過マンガン酸カリウム標準溶液の使用量を求める。
6.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
6.6
計算 試料中のクロム含有率を,次の式によって算出する。
(
)
100
733
001
.0
1
2
×
×
×
−
=
m
F
V
V
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
V2: 6.5で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
V1: 6.4.3で得た過マンガン酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
F: 0.1mol/l過マンガン酸カリウム標準溶液のファクター
m: 試料はかり取り量 (g)
7. ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸二アンモニウム鉄 (II) ・二クロム酸カリウム逆滴定法
7.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,過塩素酸及びりん酸を加え,加熱濃縮して過塩素酸の白煙を
発生させた後,触媒として硝酸銀を加え,更にペルオキソ二硫酸アンモニウムを加えてクロムを酸化し,
二クロム酸とする。生成した過マンガン酸を塩酸で還元した後,二クロム酸を一定量の硫酸二アンモニウ
ム鉄 (II) で還元し,ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを指示薬として,過剰の硫酸二アンモニウム
鉄 (II) を二クロム酸カリウム標準溶液で滴定する。
7.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 塩酸 (1+3)
c) 硝酸
d) 過塩素酸
e) りん酸
f)
硝酸銀溶液 (20g/l)
g) 過マンガン酸カリウム溶液 (10g/l)
5
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
h) ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液 (200g/l) 5.2h)による。
i)
0.1mol/l (0.1N) 硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 5.2i)による。
j)
60
1
mol/l (0.1N) 二クロム酸カリウム標準溶液 調製方法は,JIS K 8001の4.5(23)(60
1
mol/l二クロム酸
カリウム溶液)による。
k) ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶液 ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム0.2gを少量の
水に溶かし,水を用いて液量を100mlとする。この溶液は,褐色瓶に入れて保存する。
7.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.20gとし,0.1mgのけたまではかる。
7.4
操作
7.4.1
試料の分解 試料の分解は,5.4.1による。
7.4.2
クロムの酸化 クロムの酸化は,5.4.2による。
7.4.3
滴定 7.4.2で得た溶液に硫酸二アンモニウム鉄 (II) 溶液 [7.2i)] 30.0mlを加えた後,直ちにジフ
ェニルアミンスルホン酸ナトリウム溶液 [7.2k)] 1mlを指示薬として加え,60
1
mol/l二クロム酸カリウム
標準溶液 [7.2j)] で滴定し,溶液の色が緑から青緑に変わり,最後の一滴で紫を呈する点を終点とし,
60
1
mol/l二クロム酸カリウム標準溶液の使用量を求める。
7.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
7.6
計算 試料中のクロム含有率を,次の式によって算出する。
(
)
100
733
001
.0
1
2
×
×
×
−
=
m
F
V
V
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
V2: 7.5で得た二クロム酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
V1: 7.4.3で得た二クロム酸カリウム標準溶液使用量 (ml)
F:
60
1
mol/l二クロム酸カリウム標準溶液のファクター
m: 試料はかり取り量 (g)
8. 原子吸光法(A法)
8.1
要旨 試料を塩酸と硝酸とで分解し,二硫酸カリウムを添加した後,溶液を原子吸光光度計の空気・
アセチレンフレーム中に噴霧し,その吸光度を測定する。
8.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 硝酸
c) ニッケル 99.9% (m/m) 以上でクロム含有率が0.005% (m/m) 以下のもの。
d) 鉄 99.9% (m/m) 以上でクロム含有率が0.005% (m/m) 以下のもの。
e) モリブデン酸アンモニウム溶液 (10mgMo/ml) 七モリブデン酸六アンモニウム四水和物18.4gを温水
約600mlに溶解し,常温まで冷却した後,溶液を1 000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水
で標線まで薄める。この溶液は,使用の都度調製する。
f)
二硫酸カリウム溶液 (100g/l)
g) 標準クロム溶液(100μgCr/ml)二クロム酸カリウム [JIS K 8005] を正確に0.283gはかり取り,水約
100mlに溶解し,溶液を1 000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
8.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,0.20gとする。
8.4
操作
6
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
8.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかり取って,ビーカー (200ml) に移し入れる。
b) 時計皿で覆い,塩酸10m1及び硝酸3mlを加え,穏やかに加熱して完全に分解し,引き続き加熱を続
けて窒素酸化物を追い出す。常温まで冷却した後,時計皿の下面を水で洗浄して時計皿を取り除き,
溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れる(3)。
c) 二硫酸カリウム溶液10mlを加えた後,水で標線まで薄める。
注(3) この溶液中のクロム量が600μg以上の場合には,水で標線まで薄めた後,クロム量が100〜600μg
になるように,溶液を別の100m1全量フラスコに分取する。
8.4.2
吸光度の測定 8.4.1c)で得た溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気・
アセチレンフレーム中に噴霧し,波長357.9nmにおける吸光度を測定する。
8.5
空試験 8.6の検量線作成操作において得られる標準クロム溶液を添加しない溶液の吸光度を,空試
験の吸光度とする。
8.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) ニッケル [8.2c)] 0.13g及び鉄 [8.2d)] 0.010gを数個はかり取り,それぞれビーカー (200ml) に移し
入れ,8.4.1b)の操作を行った後,モリブデン酸アンモニウム溶液 [8.2e)] 6mlを加える(4)。
b) 標準クロム溶液 [8.2g)] 0〜6.0ml(クロムとして0〜600μg)を段階的に加え,以下,8.4.1c)及び8.4.2
の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行い,得た吸光度とクロム量との関係線を作成し,
その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(4) 8.4.1b)で注(3)を適用した場合には,水で標線まで薄めた後,8.4.1b)で分取した試料溶液と同
量ずつを100mlの全量フラスコに分取する。
8.7
計算 計算は,次のいずれかによる。
a) 8.4.1b)で分取しなかった場合 8.4.2及び8.5で得た吸光度と,8.6で作成した検量線とからクロム量
を求め,試料中のクロム含有率を次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のクロム検出量 (g)
A2: 空試験液中のクロム検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
b) 8.4.1b)で分取をした場合 8.4.2及び8.5で得た吸光度と,8.6で作成した検量線とからクロム量を求
め,試料中のクロム含有率を次の式によって算出する。
100
100
4
3
×
×
−
=
B
m
A
A
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
A3: 分取した試料溶液中のクロム検出量 (g)
A4: 分取したさく(窄)試験液中のクロム検出量 (g)
B: 分取した試料溶液の量 (ml)
m: 試料はかり取り量 (g)
9. 原子吸光法(B法)
7
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9.1
要旨 試料を塩酸と硝酸との混酸で分解し,乾固近くまで加熱濃縮する塩酸を加え,乾固近くまで
加熱した後,塩酸及び塩化ストロンチウムを加え,溶液を原子吸光光度計の一酸化二窒素・アセチレンフ
レーム中に噴霧し,その吸光度を測定する。
9.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 塩酸 (1+1)
c) 硝酸
d) 硝酸 (1+1)
e) 混酸(塩酸3,硝酸1) この混酸は,使用の都度調製する。
f)
塩化ストロンチウム溶液 塩化ストロンチウム六水和物113.5gをはかり取り,ビーカー (1l) に移し
入れ,水約400mlを加え,加熱して溶解する。常温まで冷却した後,溶液を1 000mlの全量フラスコ
に水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
g) 標準クロム溶液(50μgCr/ml) クロム[99.9% (m/m) 上]1.000gをはかり取ってビーカー (300ml) に
移し入れ,時計皿で覆い,塩酸 (1+1) 30mlを加え,加熱して分解する。常温まで冷却した後,時計
皿の下面を水で洗って時計皿を取り除き,塩酸35mlを加えて塩類を溶解し,溶液を1 000mlの全量フ
ラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原液(1 000μgCr/ml)とする。この原液50.0mlを
1 000mlの全量フラスコに取り,塩酸50mlを加え,水で標線まで薄めてクロム標準溶液とする。この
溶液は,ポリエチレン瓶に移し入れて保存する。
9.3
試料はかり取り量 試料はかり取り量は,1.0gとする。
9.4
操作
9.4.1
試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料中のクロム含有率が0.01% (m/m) 以上0.1% (m/m) 未満の場合
1) 試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。
2) 時計皿で覆い,混酸 [9.2e)] 20mlを加え,穏やかに加熱して完全に分解し(5),放冷した後,時計皿
の下面を水で洗って時計皿を取り除く。
3) 塩酸25mlを加え,乾固近くまで加熱する(6)。この操作をもう一度繰り返す。
4) 放冷した後,塩酸5ml及び水約20mlを加え,加熱して塩類を溶解する。
5) 常温まで冷却した後,溶液を100mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,塩化ストロンチウム溶
液 [9.2f)] 4mlを加え,水で標線まで薄める(7)。
b) 試料中のクロム含有量が0.1% (m/m) 以上4.0% (m/m) 以下の場合。
1) a)の1)〜4)の手順に従って操作する。
2) 常温まで冷却した後,溶液を500mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,塩酸25mlを加えた後,
水で標線まで薄める(7)。
3) 溶液を表2の分取量に従って100mlの全量フラスコに分取し,表2に従って塩酸を加えた後,塩化
ストロンチウム溶液 [9.2f)] 4mlを加え,水で標線まで薄める。
表2 分取量及び塩酸添加量
試料中のクロム含有率
% (m/m)
分取量
ml
塩酸添加量
ml
0.1以上 0.8未満
50.0
3
0.4以上 4.0以下
10.0
5
8
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注(5) 完全に分解しないときは,塩酸1mlを追加する。
(6) 乾固しないように注意する。
(7) 加水分解生成物が認められた場合には,乾いたろ紙を用いてろ過するか,又は遠心分離によっ
て除去する。
9.4.2
吸光度の測定 9.4.1のa)5)又はb)3)で得た溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子
吸光光度計の空気・アセチレンフレーム中に噴霧し,波長357.9nmにおける吸光度を測定する。
9.5
空試験 試薬だけを用いて,9.4.1及び9.4.2の手順に従って試料と同じ操作を試料と並行して行う
(8) 。
注(8) 9.4.1b)3)で試料溶液を分取する場合には,空試験液も試料溶液と同量分取する。
9.6
検量線の作成 数個の100mlの全量フラスコに標準クロム溶液 [9.2g)] 0〜20.0ml(クロムとして0
〜1 000μg)を段階的に取り,塩化ストロンチウム溶液 [9.2f)] 4ml及び塩酸5mlを加え,水で標線まで薄
める。各溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気・アセチレンフレーム中に噴
霧し,波長357.9nmにおける吸光度を試料と並行して測定し,得た吸光度とクロム量との関係線を作成し,
その関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
9.7
計算 計算は,次のいずれかによる。
a) 試料溶液の調整を9.4.1a)によって行った場合 9.4.2及び9.5で得た吸光度と,9.6で作成した検量線
とからクロム量を求め,試料中のクロム含有率を次の式によって算出する。
100
2
1
×
−
=
m
A
A
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のクロム検出量 (g)
A2: 空試験液中のクロム検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
b) 試料溶液の調整を9.4.1b)によって行った場合 9.4.2及び9.5で得た吸光度と,9.6で作成した検量線
とからクロム量を求め,試料中のクロム含有率を次の式によって算出する。
100
500
4
3
×
×
−
=
B
m
A
A
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
A3: 分取した試料溶液中のクロム検出量 (g)
A4: 分取した空試験液中のクロム検出量 (g)
m: 試料はかり取り量 (g)
B: 分取した試料溶液の量 (ml)
10. ペルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸ニアンモニウム鉄 (II) 滴定法(B法)
10.1 要旨 試料を塩酸と硝酸との混酸で分解し,硫酸を加え,加熱濃縮して硫酸の白煙を発生させた後,
触媒として硝酸銀を加え,さらにペルオキソ二硫酸アンモニウムを加えてクロムを酸化し,二クロム酸と
する。煮沸して過剰のペルオキソ二硫酸アンモニウムを分解し,塩酸でマンガン (VII) をマンガン (II) に
還元した後,電位差滴定装置を用いて,二クロム酸を硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液で滴定する。
10.2 試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) 塩酸 (1+3)
9
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
c) 硝酸
d) 硫酸 (1+3)
e) 混酸(塩酸3,硝酸1)使用の都度調製する。
f)
硝酸銀溶液 (15g/l)
g) ペルオキソ二硫酸アンモニウム
h) 0.1mol/l (0.1N) 硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 5.2i)による。
10.3 装置 電位差滴定装置は,以下のものを用いる。
a) 指示電極 白金電極を用いる。
b) 参照電極 銀/塩化銀電極,飽和カロメル電極又は硫化水銀 (II) 電極を用いる。
10.4 試料はかり取り量 試料はかり取り量は,表3による(9)。
注(9) 試料中のクロム含有率が8% (m/m) 以上の場合は,0.1mgのけたまではかる。
表3 試料はかり取り量
試料中のクロム含有率
% (m/m)
試料はかり取り量
g
1.0以上 4.0未満
1.5〜2.0
4.0以上 8.0未満
0.5〜1.0
8.0以上 15未満
0.3〜0.5
15以上 30以下
0.2〜0.3
10.5 操作
10.5.1 試料溶液の調製 試料溶液の調製は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかり取って,ビーカー (500ml) に移し入れる。
b) 混酸 [10.2e)] 20mlを加え,加熱して分解する(10)(11)。
c) 硫酸 (1+1) 20mlを加え,白煙が発生するまで加熱濃縮する。放冷した後,熱水100mlを少量ずつ加
え残留物が溶解するまで煮沸する。
d) 水を加えて液量を200mlとし,多孔質の磁器又は沸騰石を加え,沸騰するまで加熱する。硝酸銀溶液
5m1及びぺルオキソ二硫酸アンモニウム5gを加え,穏やかに15分間加熱する(12)。
e) 塩酸 (1+3) 5mlを加え,過マンガン酸の赤紫色が完全に消えるまで,更に5分間煮沸を続けた後(13),
室温まで冷却する。
注(10) 分解しにくい場合には,分解するまで塩酸1mlずつ加える。
(11) 合金によっては,混酸 [10.2e)] の代わりに硝酸2ml及び塩酸30mlを加える。
(12) 試料中のマンガンの含有量が少なく,過マンガン酸の呈色が生じない場合は,過マンガン酸カ
リウム溶液を滴加してわずかに赤紫色を呈するようにする。
(13) 溶液の色がなお赤紫色を呈しているときは,更に塩酸 (1+3) 5mlを加えて5分間煮沸を行う。
溶液がまだ赤紫色を呈している場合には,赤紫色が完全に消えるまでこの操作を繰り返す。
10.5.2 滴定 10.5.1e)で得た溶液の入っているビーカーを電位差滴定装置に置き,電位差計の電極[10.3
のa)及びb)]を挿入して,溶液をかき混ぜながら0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液 [10.2h)]
で滴定し,電位差計の指示が急激に変化する点を終点として,0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶
液の使用量を求める。
10.6 空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
10.7 計算 試料中のクロム含有率を,次の式によって算出する。
10
H 1279 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(
)
100
001733
.0
2
1
×
×
×
−
=
m
F
V
V
Cr
ここに, Cr: 試料中のクロム含有率 [% (m/m)]
V1: 10.5.2で得た硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液使用量 (ml)
V2: 10.6で得た硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液使用量 (ml)
F: 0.1mol/l硫酸二アンモニウム鉄 (II) 標準溶液のファクター
m: 試料はかり取り量 (g)
ニッケル及びニッケル合金分析方法工業標準原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
神 尾 彰 彦
東京工業大学工学部
後 藤 敬 一
通商産業省基礎産業局非鉄金属課
◎ 天 野 徹
工業技術院標準部材料規格課
村 田 祐 滋
東京都立工業技術センター金属部
竹 内 孝 夫
科学技術庁金属材料技術研究所
◎ 橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
太 田 裕 二
社団法人日本銅センター技術部
大 屋 武 夫
ステンレス協会
佐 藤 秀 樹
社団法人日本電子材料工業会技術部
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会技術部
赤 峰 淳 一
社団法人日本電機工業会技術部
篠 原 脩
社団法人日本ガス石油機器工業会技術部
山 添 哲 郎
通信機械工業会技術部
村 岡 良 三
社団法人日本自動車部品工業会技術部
山 下 満 男
富士電機株式会社生産技術研究所
安 井 毅
株式会社東芝材料部品事業部開発技術部
◎ 田 中 尚 生
三菱マテリアル株式会社桶川製作所
恒 原 正 明
古河電気工業株式会社金属事業本部
菅 沼 輝 夫
日鉱金属株式会社倉見工場技術部
大 関 哲 雄
大木伸銅工業株式会社技術部
中 島 安 啓
株式会社神戸製鋼所アルミ・銅事業本部技術部
田部井 和 彦
三菱マテリアル株式会社桶川製作所技術管理室
岡 村 明 人
三菱伸銅株式会社若松製作所品質保証部
○ 町 田 克 巳
住友金属鉱山株式会社中央研究所
○ 山 下 努
株式会社東芝材料部品事業部品質保証部
○ 山 本 寿 美
古河電気工業株式会社横浜研究所
○ 中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
○ 豊 嶋 雅 康
住友軽金属工業株式会社研究開発センター
(事務局)
○ 藤 沢 裕
日本伸銅協会技術部
(関係者)
久留須 一 彦
古河電気工業株式会社横浜研究所
天 川 義 勝
株式会社ジャパンエナジー分析センター
和 田 隆 光
財団法人日本規格協会
相 馬 南海雄
日本伸銅協会総務部
備考1. ◎印を付けてある委員は分科会委員を兼ねる。
2. ○印を付けてある委員は分科会委員だけである。