H 1270:2015
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般事項 ························································································································· 2
5 分析試料の採取及び調製 ···································································································· 2
5.1 試料の採取方法 ············································································································· 2
5.2 試料の調製 ··················································································································· 3
5.3 試料のはかり方 ············································································································· 4
6 各成分定量方法 ················································································································ 4
7 分析値のまとめ方 ············································································································· 4
7.1 空試験 ························································································································· 4
7.2 分析回数 ······················································································································ 4
7.3 分析値の採択 ················································································································ 4
7.4 分析値の表示 ················································································································ 4
8 化学分析方法の許容差の取扱い方 ························································································ 4
8.1 化学分析方法の許容差 ···································································································· 4
8.2 分析値の精確さの検討 ···································································································· 5
8.3 許容差が規定されていない場合の取扱い方 ·········································································· 6
8.4 許容差の判定方法 ·········································································································· 7
9 化学分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ ·························································· 7
10 機器分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ························································· 7
11 再分析 ·························································································································· 7
12 審判分析 ······················································································································· 7
13 安全衛生に関する注意 ····································································································· 7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
伸銅協会(JCBA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改
正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格であ
る。
これによって,JIS H 1270:1998は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
H 1270:2015
ニッケル及びニッケル合金−
分析用試料採取方法及び分析方法通則
Nickel and nickel alloys-Sampling and general rules for analytical methods
1
適用範囲
この規格は,日本工業規格に規定するニッケル,ニッケル合金及び超合金の分析方法に共通な分析用試
料の調製方法,定量方法,分析値のまとめ方などについて規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0203 鉄鋼用語(製品及び品質)
JIS G 1281 ニッケルクロム鉄合金分析方法
JIS H 1272 ニッケル及びニッケル合金中の銅定量方法
JIS H 1273 ニッケル及びニッケル合金中の鉄定量方法
JIS H 1274 ニッケル及びニッケル合金中のマンガン定量方法
JIS H 1275 ニッケル及びニッケル合金中の炭素定量方法
JIS H 1276 ニッケル及びニッケル合金中のけい素定量方法
JIS H 1277 ニッケル及びニッケル合金中の硫黄定量方法
JIS H 1278 ニッケル及びニッケル合金中のりん定量方法
JIS H 1279 ニッケル合金中のクロム定量方法
JIS H 1280 ニッケル合金中のモリブデン定量方法
JIS H 1281 ニッケル合金中のバナジウム定量方法
JIS H 1282 ニッケル合金中のタングステン定量方法
JIS H 1283 ニッケル及びニッケル合金中のコバルト定量方法
JIS H 1284 ニッケル合金中のアルミニウム定量方法
JIS H 1285 ニッケル及びニッケル合金中のほう素定量方法
JIS H 1286 ニッケル合金中のチタン定量方法
JIS H 1287 ニッケル及びニッケル合金−蛍光X線分析方法
JIS H 1288 ニッケル及びニッケル合金−スパーク放電発光分光分析方法
JIS H 1289 ニッケル及びニッケル合金−ICP発光分光分析方法−ニオブ,タンタル及びジルコニウ
ム定量方法
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
2
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JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0119 蛍光X線分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS Q 0032 化学分析における校正及び認証標準物質の使い方
JIS R 6001 研削といし用研磨材の粒度
JIS R 6010 研磨布紙用研磨材の粒度
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第6部:精確さに関する値の実用的
な使い方
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS G 0203及びJIS K 0211による。
4
一般事項
分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0113,JIS K 0115,JIS K 0116,JIS K 0119及びJIS K
0121の規定による。
5
分析試料の採取及び調製
5.1
試料の採取方法
試料の採取方法は,次による。
a) 分析は,特に規定のない限り溶湯分析による。ただし,注文者の要求があるときは,製品分析を行う
ことができる。製品分析用の試料は,製品規格に規定されている機械試験用の供試材の採取位置から
採取してもよい。
なお,注文者が製品分析を要求する場合,溶湯分析に対する製品分析の許容変動値は,受渡当事者
間の協定による。
b) 溶湯分析の試料は,次による。
1) 通常,溶湯がとりべから鋳型に注入され,凝固するまでの一連の過程において溶湯を代表する位置
から採取する。
2) スプーン試料(長い柄の付いたスプーンで溶湯又は注入中の溶湯から試料を採取して小さな鋳型に
鋳込む方法で鋳込んだ試料)又はプローブ試料(溶湯に挿入した市販の試料採取用プローブを用い
溶湯から採取した試料)を用いる。
c) 真空アーク溶解(VAR),エレクトロスラグ再溶解(ESR)など溶湯から分析用試料が採取できない場
合は,鋳塊,鋳片又は塑性加工された材料から採取した分析用試料によって分析を行い,溶湯分析に
適用する。
d) 鋳込みままゆえの不均一性はある程度避け難いが,それを極力低減するために,次の点に注意する。
1) 表面被覆層,水分,ごみ及びその他の汚染物質を除く。
2) ボイド,クラック,孔,ばり,重なり及びその他の表面欠陥を極力避ける。
3) 化学組成及び金属組織が試料間で差異を生じないような手段で冷却する。
3
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e) 試料の大きさは,再分析に配慮しなければならない。チップ又は粉末試料用には,通常,100 gあれば
十分である。
f)
発光分光分析用及び蛍光X線分析用は,設備仕様に依存する。
g) 試料は,溶湯の製造履歴と対応できるような固有の標識をラベル又はマーキングで付与する。
h) 分析用試料は,試料調製の途中若しくは終了後,汚染又は化学的変化が起きないような方法で隔離保
管する。
i)
鋳物の鋳込み試料を採取するときは,その平均品質を代表する試料を得るため,1融解ごとに2個以
上(融解量が特に少ないときには1個)の試料を採り,この試料を削って切粉を作り,これを十分に
混合して分析用試料とする。
5.2
試料の調製
試料の調製は,次による。
a) 前処理 表面に酸化被膜が付いているような場合は,組成の変化の特徴及びその範囲を検討し,除去
する。
b) チップ状の分析用試料 チップ状の分析用試料の調製は,次による。
1) ドリルせん孔,フライス切削,旋盤加工,打ち抜きなどで調製する。
2) 切断トーチによる熱影響部から調製してはならない。
3) 採取設備,工具,コンテナなどは,分析用試料汚染防止のため,あらかじめ洗浄しておく。
4) チップの色が極力変化しないような条件で切削する。
5) 成分変化のない条件で試料を熱処理して軟化してもよい。
6) 冷却剤を使用した切削は,例外的には許容されるが,その後に適切な溶媒でチップを洗浄する。
7) 分析試料をはかりとる前に,チップを入れた容器を転がすなどしてチップを混合する。
c) 塊状の分析用試料 塊状の分析用試料の調製は,次による。
1) 分析方法に適した寸法,形状のものを,のこぎり,といし切断,せん断又は打ち抜きで切り出す。
2) 発光分光分析又は蛍光X線分析は,十分な厚さのある材料でできている製品横断面に対応する試料
部位から切り出された試料について行う。
d) 塊状の分析用試料の表面の調製 塊状の分析用試料の表面の調製は,次による。
1) 切断トーチの熱影響部での調製は,行ってはならない。
2) 試料調製用装置は,試料が加熱されないような設計がされているのが望ましい。
3) 調製後の分析用試料の表面は,平滑で,かつ,分析の精確さに影響する欠陥があってはならない。
4) 調製は,手動又は自動のいずれでも行うことができる。
5) 分析用試料の調製の最終段階で用いる発光分光分析用の研磨材は,ベルト用にはJIS R 6010に規定
する粒度P36〜P240,グラインダ用にはJIS R 6001に規定する粒度F 36〜F 240が一般的には適し
ている。
6) 蛍光X線分析方法では,表面調製するために選択された方法によって,試料と試料との間の表面仕
上げが再現性よく行われることを確認する。また,表面が汚れていてはならない。
注記 研磨材の影響は,分析方法によって異なる。
7) 発光分光分析方法を用いる場合には,予備放電操作によって研磨による汚染物質は蒸発し,分析用
試料の表面は一般には清浄になる。しかし,新しい研磨ディスクを用いる場合は,表面汚染を避け
るように注意する。
8) 蛍光X線分析方法を用いる場合には,表面調製の全ての段階で,表面に粒子状物質が付着していな
4
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いこと,及び欠陥がないことを目視で調べる。欠陥があった場合は,表面を再仕上げするか,又は
廃棄する。分析用試料は乾燥し,調製した表面を汚染しないように注意する。
5.3
試料のはかり方
試料のはかり方は,次による。
a) 分析試料をはかりとる際には,よくかき混ぜて平均組成を代表するように注意し,また,異物が混入
していないことを確かめなければならない。
b) 分析試料のはかりとりには,化学はかりを用い,1 mg又は0.1 mgの桁まで読み取る。
なお,0.1 mgの桁までの読取りは,分析方法の個別規格に規定している場合及び有効数字4桁の定
量値を必要とする場合である。
c) 分析試料のはかりとり量は,各成分の定量方法規格で規定する。
6
各成分定量方法
分析試料中の各成分の定量方法は,次のいずれかの方法の中から,各成分の予想含有率に適した分析方
法を選択する。
a) 次に掲げる規格に規定された化学分析方法の場合
JIS G 1281,JIS H 1272,JIS H 1273,JIS H 1274,JIS H 1275,JIS H 1276,JIS H 1277,JIS H 1278,
JIS H 1279,JIS H 1280,JIS H 1281,JIS H 1282,JIS H 1283,JIS H 1284,JIS H 1285,JIS H 1286,
JIS H 1289
b) 次に掲げる規格に規定された機器分析方法の場合
JIS H 1287,JIS H 1288
7
分析値のまとめ方
7.1
空試験
化学分析方法による分析においては,分析方法規格群の各規格に空試験の規定がなくても,全操作を通
じて空試験を行い,分析値を補正する。
7.2
分析回数
分析回数は,分析依頼者からの要求による。要求がない場合は,JIS Z 8402-6によるのが望ましい。た
だし,8.2 a) の真度の検討を行って分析値の妥当性が確認されれば,1回の分析でもよい。
7.3
分析値の採択
化学分析方法による分析においては,8.2の分析値の精確さの検討,特に8.2 a) の真度の検討を行って
検討結果が満足できる場合にだけ分析値を採択することが望ましい。
7.4
分析値の表示
分析値は,質量分率で表し,百分率を示す%を用いて表示する。ただし,分析値が非常に小さい場合は,
μg/gで表示してもよい。分析値の報告桁は,分析依頼者からの要求による。要求がない場合は,分析方法
の許容差を考慮して決定する。数値の丸め方は,JIS Z 8401による。
日本工業規格(JIS)の製品規格の規定によって分析値を報告する場合は,製品規格に規定された化学成
分の数値の有効最小位の桁数に,JIS Z 8401の規則Aによって丸める。
8
化学分析方法の許容差の取扱い方
8.1
化学分析方法の許容差
5
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化学分析方法の許容差は,化学分析方法の個別規格に規定する。ただし,個別規格で“分析精度”を規
定している場合は,室内標準偏差及び室間標準偏差にf (n) を乗じて,それぞれ室内再現許容差及び室間再
現許容差とする。f (n) の値は,JIS Z 8402-6の表1(許容範囲の係数)による。nの値は,室内再現許容差
の場合は同一分析室内における分析回数,室間再現許容差の場合は分析に関与した分析室数とする。
許容差又は分析精度を規定していない場合は,8.3による。
8.2
分析値の精確さの検討
分析値の精確さの検討は,次によって行う。
a) 真度の検討 分析試料と化学的特性が近似し,認証値又は標準値が分析試料予想含有率に近い認証標
準物質又はJIS Q 0032記載の所内標準物質を含む実用標準物質(以下,認証標準物質又は実用標準物
質という。)を一つ選んで,試料はかりとり量及び定量操作が分析試料と全く同一で,分析試料と併行
して分析し,得られた認証標準物質又は実用標準物質の分析結果と認証値又は標準値との差の絶対値
が,採用した分析方法の対標準物質許容差以下の場合は,同時に分析して得られた分析試料の分析値
の真度は満足できるものと判断する。複数の試料について,分析操作が同一で,分析試料予想含有率
が認証値又は標準値に近いとみなされる場合は,それらの試料に対し,一つの認証標準物質又は実用
標準物質によって真度の検討を行ってもよい。
対標準物質許容差は,分析方法規格に対標準物質許容差が規定されている場合は,その規定に従う。
対標準物質許容差の規定がなく,室間再現許容差計算式が規定されている場合は,対標準物質許容
差C(質量分率)は,次のいずれかの方法によって求める。
1) 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証書に個々のデータが記載され,認証値又は標準値決
定時の分析値の標準偏差が求められる場合は,式(1)によって求める。
2
R
C
2
C
2
s
N
s
C
+
=
········································································ (1)
ここに,
sC: 試料と併行に分析した認証標準物質又は実用標準物質の
認証値又は標準値決定時の分析値の標準偏差(標準偏差
を求める個々のデータは,認証値又は標準値決定試験参
加分析室ごとの平均値)(質量分率)
NC: 用いた認証標準物質又は実用標準物質の認証値又は標準
値決定試験参加分析室数
sR: 室間再現標準偏差(質量分率)[室間再現許容差計算式に
おいて,f (n)=1とし,含有率の項に認証値又は標準値を
入れて得た値]
2) 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証書に,個々のデータが記載されていなく,不確かさ
の値だけが記載されている場合は,式(2)によって求める。
(
)
2
R
2
CRM/
2
s
k
U
C
+
=
······························································· (2)
ここに,
UCRM: 使用した認証標準物質又は実用標準物質の認証値又は標
準値の不確かさ
k: 包含係数。JIS K 0211に定義され,拡張不確かさを得る
ために合成標準不確かさに乗じる係数で,通常は2〜3
の値をとる。
国際一致規格で,室間再現許容差が数値の表で示されている場合は,認証値又は標準値における
室間再現許容差を補間法によって求め,得た値に0.357 1(=1.0/2.8)を乗じた値を室間再現標準偏
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差として式(1)又は式(2)に代入してCを求める。
室間再現許容差が規定されていない場合は,式(3)においてmCRMに認証標準物質又は実用標準物
質の認証値又は標準値[質量分率(%)]を入れて室間再現標準偏差を求め,その値を式(1)又は式(2)
に代入してCを求める。
4
653
.0
CRM
R
46
032
.0
m
s
×
=
······························································ (3)
注記1 補間法とは,例えば隣り合った2点間について一次式を求め,この一次式から許容差を近
似することをいう。
b) 併行精度の検討 同一分析室において,同一分析用試料を併行条件で2回分析して得られた2個の分
析結果の範囲が,その分析方法規格に規定している併行許容差(r)以下であれば,これら2個の分析
結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,併行許容差計算式の成分含有率の項には,2
個の分析値の平均値を代入する。
c) 室内精度(中間精度)の検討 同一分析室において,同一分析用試料を,時間などの誤差因子を変え
て2回分析して得られた2個の分析結果の範囲が,その分析方法規格に規定している室内再現許容差
(Rw)以下であれば,これら2個の分析結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,室内
再現許容差計算式の成分含有率の項には,2個の分析値の平均値を代入する。
注記2 JIS Z 8402-3では,併行標準偏差と再現標準偏差との間の誤差因子をもつ場合を中間精度
と呼んでいて,この語が正規の用語であるが,従来からの呼称に従って,室内精度の用語
を用いる。
d) 室間精度の検討 二つの異なる分析室において,同一分析用試料をそれぞれ分析して得られた結果の
範囲が,その分析方法規格に規定している室間再現許容差(R)以下であれば,これら二つの分析室
の分析結果の間に異常な差はないものと判断する。この場合,室間再現許容差計算式の成分含有率の
項には,2個の分析値の平均値を代入する。
8.3
許容差が規定されていない場合の取扱い方
分析方法規格に許容差又は分析精度が規定されていない場合の許容差,又は分析方法規格の定量範囲に
対して許容差若しくは分析精度の適用範囲が狭い場合の適用範囲外の許容差は,次の式によって算出する。
a) 併行許容差
8
663
.0
1
8
041
.0
m
r
×
=
····································································· (4)
ここに,
r: 併行許容差[質量分率(%)]
m1: 併行許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量分率
(%)]
b) 室内再現許容差
8
663
.0
2
w
7
062
.0
m
R
×
=
·································································· (5)
ここに,
Rw: 室内再現許容差[質量分率(%)]
m2: 室内再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量
分率(%)]
c) 室間再現許容差
4
653
.0
3
9
090
.0
m
R
×
=
···································································· (6)
ここに,
R: 室間再現許容差[質量分率(%)]
m3: 室間再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[質量
分率(%)]
7
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8.4
許容差の判定方法
併行許容差,室内再現許容差及び室間再現許容差の判定は,各々の分析結果の報告桁を報告桁の一番少
ない結果に合わせてその差を求め,許容差も分析結果の報告桁に丸めて比較する。対標準物質許容差の判
定は,分析結果の報告桁を認証値又は標準値の表示桁に合わせてから認証値又は標準値との差を求めて比
較する。ただし,分析結果の報告桁が少なく,認証値又は標準値の表示桁に合わせることができない場合
は,認証値又は標準値及び許容差を分析結果の報告桁に丸めて比較する。
許容差を分析結果の報告桁に丸めるとゼロとなる場合は,その報告桁の位が1となる値を許容差とする。
9
化学分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ
化学分析方法によって得た定量値(質量分率)は,8.2 a) に規定された認証標準物質を用いた真度を満
足していれば,適用した分析方法の国際単位系(SI)への計量計測トレーサビリティが得られている。
10
機器分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ
機器分析方法によって得た定量値(質量分率)の計量計測トレーサビリティは化学分析方法で分析し,
併行して分析した認証標準物質又は実用標準物質の分析値によって精確さが確認された標準値をもつ試料
と冶金的履歴が同じ標準物質群によって作成された検量線を使って分析することで得られる。機器分析用
の認証標準物質又は実用標準物質は,分析試料と冶金的履歴が異なる場合があり,その影響で機器用認証
標準物質又は実用標準物質を用いて作成した検量線が精確でない可能性があるため,精確さが確認された
標準値をもつ試料と冶金的履歴が同じ標準物質(群)を用いて検量線の確認又は修正を行う必要がある。
検量線の精確さ確認の方法は,個別規格による。
11
再分析
機器分析方法による分析値に疑義が生じた場合は,化学分析方法によって再分析することができる。
12
審判分析
審判分析が必要となった場合は,化学分析方法で実施する。
13
安全衛生に関する注意
原子吸光分析,ICP発光分光分析並びに炭素及び硫黄の定量における高圧ガスの取扱い,原子吸光分析
におけるフレームの点火・消火,蛍光X線分析におけるX線の被ばく,危険薬品(三酸化二ひ素,ふっ化
水素酸,有機溶媒など)の使用及び廃棄処理には十分に注意し,災害の防止及び環境の保全に努めなけれ
ばならない。
参考文献 JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部:一般的な原理及び定
義
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部:標準測定方法の中間
精度