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日本工業規格

JIS

 H

1110

-1989

亜鉛地金中のカドミウム定量方法

Methods for Determination of Cadmium in Zinc Metal

1.

適用範囲  この規格は,JIS H 2107(亜鉛地金)に規定された亜鉛地金中のカドミウムの定量方法に

ついて規定する。

引用規格:

JIS H 0301

  地金の試験並びに検査通則

JIS H 2107

  亜鉛地金

JIS K 0050

  化学分析方法通則

JIS K 0116

  発光分光分析方法通則

JIS K 0121

  原子吸光分析のための通則

JIS K 8013

  亜鉛粉末(試薬)

JIS Z 8401

  数値の丸め方

2.

一般事項  分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050(化学分析方法通則),JIS K 0116(発光分光分

析方法通則)及び JIS K 0121(原子吸光分析のための通則)による。

3.

分析試料の採り方及び取扱い方

3.1

試料の採り方  試料の採り方は,次による。

(1)

試料の採り方は,原則として JIS H 0301(地金の試験並びに検査通則)による。ただし,きりによっ

て削り取った試料は,清浄なはさみを用いて約 5mm 以下に切断する。

(2)

試料の採り方が,上記の規定によることができない場合には,受渡当事者間の協議によって定める。

3.2

試料の取扱い方  試料の取扱い方は,次による。

(1)

分析試料は,異物などによる汚染を防止するため,適当なふた付きガラス容器などに入れ,密封して

保存する。

(2)

分析試料は,その表面に油などが付着しているおそれがあるときは,あらかじめエタノール及びジエ

チルエーテルで洗浄して除去する。

3.3

試料のはかり方  試料のはかり方は,次による。

(1)

分析試料をはかり取る際には,試料をよくかき混ぜて平均組成を代表するように注意する。

(2)

分析試料のはかり取りには,原則として化学はかりを用い,10mg のけたまで読み取る。

4.

分析値のまとめ方

4.1

分析回数  分析回数は,原則として同一分析所において 2 回の繰返し分析を行う。

4.2

空試験  分析に当たっては,空試験を行い,測定値を補正する。


2

H 1110-1989

4.3

分析値の表示  分析値の表示は,質量百分率で表し,JIS H 2107 に規定された数値の有効最小位の

次のけたまで算出し,JIS Z 8401(数値の丸め方)によって丸める。

5.

定量方法の区分  カドミウムの定量方法は,次のいずれかによる。

(1)

原子吸光法  この方法は,カドミウム含有率 0.000 1wt%以上 1.0wt%以下の試料に適用する。

(2)

誘導結合プラズマ発光分光法  この方法は,カドミウム含有率 0.000 1wt%以上 1.0wt%以下の試料に適

用する。

6.

原子吸光法

6.1

要旨  試料を塩酸と硝酸との混酸で分解し,溶液を原子吸光光度計の空気・アセチレンフレーム中

に噴霧し,その吸光度を測定する。

6.2

試薬  試薬は,次による。

(1)

塩酸 (1+1)  

(2)

混酸(塩酸 45,硝酸 1)

(3)

亜鉛溶液  亜鉛 (99.995wt%) 100g を塩酸 400ml に分解し,加熱してシロップ状となるまで濃縮する。

室温まで冷却した後,水約 400ml を加えて溶解し,500ml の全量フラスコに水を用い移し入れる。亜

鉛粉末(試薬)  (JIS K 8013)  約 20g を加えてときどき振り混ぜながら約 30 分間放置した後,水を用

いて標線まで薄める。この溶液を乾いたろ紙(5 種 A)を用いて密栓のできる容器にろ過する。この

溶液 1ml は,亜鉛約 200mg を含む。

(4)

標準カドミウム溶液 (20

µgCd/ml)  カドミウム(99.9wt%以上)0.100g を硝酸 (1+3) 20ml で分解し,

常温まで冷却した後,1 000ml の全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄めて原液

(100

µgCd/ml)  とする。この原液を使用の都度,必要量だけ水で正しく 5 倍に薄めて標準カドミウム溶

液とする。

6.3

試料はかり取り量  試料はかり取り量は,5.0g とする。

6.4

操作

6.4.1

試料溶液の調製  試料溶液の調製は,次の手順によって行う。

(1)

試料をはかり取って,ビーカー (300ml) に移し入れる。

(2)

時計皿で覆い,混酸 30ml を加えて分解する。激しい反応が終わったら,穏やかに加熱して完全に分

解し,引き続き加熱し液量が約 25ml となるまで濃縮する。常温まで冷却した後,時計皿の下面を水

で洗浄して時計皿を取り除く。

(3)

水約 20ml 及び塩酸 (1+1) 20ml を加えた後,100ml の全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線

まで薄める(

1

)

(

1

)

この溶液中のカドミウム量が600

µg を超える場合には,カドミウム量が100∼600µg になるよう

に溶液を100ml の全量フラスコに分取し,分取した溶液中の塩酸量が10ml となるように塩酸 (1

+1)  を添加した後,水で標線まで薄める。

6.4.2

吸光度の測定  6.4.1.(3)で得た溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空

気・アセチレンフレーム中に噴霧し,波長 228.8nm における吸光度を測定する。

6.5

空試験  試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。

6.6

検量線の作成

6.6.1

試料用検量線の作成  試料用検量線の作成は,次の手順によって行う。


3

H 1110-1989

(1)

亜鉛溶液    [6.2(3)] 25ml(

2

)

を数個の 100ml の全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 20ml を加える。

(2)

標準カドミウム溶液    [6.2(4)] 0∼30.0ml(カドミウムとして 0∼60

µg)を段階的に加え,水で標線ま

で薄める。溶液の一部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気・アセチレンフレーム

中に噴霧し,波長 228.8nm における吸光度を試料と並行して測定し,得た吸光度とカドミウム量との

関係線を作成し,その関係線を原点を通るように平行移動して試料用検量線とする。

(

2

)  6.4.1(3)

(

1

)

を適用した場合は,分取した試料溶液中に含まれる亜鉛量とほぼ同じになるよう

に亜鉛溶液を取る。

6.6.2

空試験用検量線の作成(

3

)

  標準カドミウム溶液  [6.2(4)] 0∼3.0ml(カドミウムとして 6∼60

µg)を

段階的に数個の 100ml の全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 20ml を加え,水で標線まで薄める。溶液の一

部を,水を用いてゼロ点を調整した原子吸光光度計の空気・アセチレンフレーム中に噴霧し,波長 228.8nm

における吸光度を空試験と並行して測定し,得た吸光度とカドミウム量との関係線を作成し,その関係線

を原点を通るように平行移動して空試験用検量線とする。

(

3

)

試料溶液の吸光度と比較して空試験液の吸光度が著しく低い場合は,6.6.1で作成した検量線を

用いてもよい。

6.7

計算  計算は,次のいずれかによる。

(1)  6.4.1(3)

で分取をしない場合  6.4.1.2 及び 6.5 で得た吸光度と,6.6 で作成した検量線とからカドミウム

量を求め,試料中のカドミウム含有率を次の式によって算出する。

カドミウム

100

%

2

1

×

=

m

A

A

wt

ここに,  A

1

:  試料溶液中のカドミウム検出量 (g)

A

2

:  空試験液中のカドミウム検出量 (g)

m

:  試料はかり取り量 (g)

(2)

  6.4.1(3)

で分取をした場合  6.4.2 及び 6.5 で得た吸光度と,6.6 で作成した検量線とからカドミウム量

を求め,試料中のカドミウム含有率を次の式によって算出する。

カドミウム

100

%

4

3

×

×

=

B

m

A

A

wt

ここに,  A

3

:  分取した試料溶液中のカドミウム検出量 (g)

A

4

:  分取した空試験液中のカドミウム検出量 (g)

m

:  試料はかり取り量 (g)

B

:  試料溶液及び空試験液の分取比

7.

誘導結合プラズマ発光分光法

7.1

要旨  試料を塩酸と硝酸との混酸で分解し,溶液を誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラ

ズマ中に噴霧し,その発光強度を測定する。

7.2

試薬  試薬は,次による。

(1)

塩酸 (1+1)  

(2)

混酸(塩酸 45,硝酸 1)

(3)

亜鉛溶液  6.2(3)による。

(4)

標準カドミウム溶液 A (1mgCd/ml)  カドミウム(99.9wt%以上)0.100g を硝酸 (1+3) 20ml で分解し,

常温まで冷却した後 100ml 全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。

(5)

標準カドミウム溶液 B (20

µgCd/ml)  6.2(4)による。


4

H 1110-1989

7.3

試料はかり取り量  試料はかり取り量は,5.0g とする。

7.41

操作

7.4.1

試料溶液の調製  試料溶液の調製は,6.4.1 による(

4

)

(

4

)

(

1

)

は適用しない。

7.4.2

発光強度の測定  7.4.1 で得た溶液の一部を,誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ

中に噴霧し,波長 226.502nm における発光強度を測定する(

5

)

(

6

)

(

5

)

精度及び正確さを確認してあれば,他の波長を用いて測定してもよい。高次のスペクトル線が

使用可能な装置では高次のスペクトル線を用いてもよく,また,バックグラウンド補正機構が

付いている装置では,バックグラウンド補正機構を用いてもよい。

(

6

)

溶液中のカドミウム量が 10mg 以上になる場合は,分析線の選択,光電子増倍管の印加電圧な

ど測定条件を検討し,検量線の直線性を確保する。

7.5

空試験  試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。

7.6

検量線の作成

7.6.1

試料用検量線の作成  試料用検量線の作成は,次の手順によって行う。

(1)

亜鉛溶液  [7.2(3)] 25ml を数個の 100ml の全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 20ml を加える。

(2)

標準カドミウム溶液 A [7.2(4)]  及び標準カドミウム溶液 B [7.2(5)]  の各種液量(カドミウムとして 0∼

50mg

)を段階的に加え,水で標線まで薄める。

(3)

溶液の一部を,誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長 226.502nm にお

ける発光強度を試料と並行して測定し,得た発光強度とカドミウム量との関係線を作成し,その関係

線を原点を通るように平行移動して試料用検量線とする。

7.6.2

空試験用検量線の作成(

7

)

  標準カドミウム溶液 B [7.2(5)] 0∼3.0ml(カドミウムとして 0∼60

µg)

を段階的に数個の 100ml の全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 20ml を加え,水で標線まで薄める。溶液の

一部を,誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長 226.502nm における発光強

度を空試験と並行して測定し,得た発光強度とカドミウム量との関係線を作成し,その関係線を原点を通

るように平行移動して空試験用検量線とする。

(

7

)

試料溶液の発光強度と比較して空試験液の発光強度が著しく弱い場合は,7.6.1で作成した検量

線を用いてもよい。

7.7

計算  7.4.2 及び 7.5 で得た発光強度と,7.6 で作成した検量線とからカドミウム量を求め,試料中の

カドミウム含有率を次の式によって算出する。

カドミウム

100

%

2

1

×

=

m

A

A

wt

ここに,  A

1

:  試料溶液中のカドミウム検出量 (g)

A

2

:  空試験液中のカドミウム検出量 (g)

m

:  試料はかり取り量 (g)


5

H 1110-1989

JIS

改正原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

増  田  彰  正

東京大学

荒  木  誠  司

大蔵省造幣局

安  藤      厚

工業技術院地質調査所

高  野  日出男

資源エネルギー庁

加  藤  康  宏

工業技術院標準部

池  田  順  一

財団注人日本規格協会

市  川  五  朗

住友金属鉱山株式会社

稲  垣  勝  彦

三井金属鉱業株式会社

大  野      茂

東邦亜鉛株式会社

佐  山  恭  正

三菱金属株式会社

高  橋  廣  志

同和鉱業株式会社

束  原      巌

古河電気工業株式会社

外  岡  和  夫

足尾製錬株式会社

中  村      靖

日本鉱業株式会社

岩  橋  康  夫

日本鉱業協会

(関係者)

緒  方  憲  一

工業技術院標準部材料規格課

坂  元  耕  三

工業技術院標準部材料規格課

田  辺  省  吾

足尾製錬株式会社

田  山  健  一

同和鉱業株式会社

高  見      博

古河電気工業株式会社

永  岡      信

三井金属鉱業株式会社

野  村  紘  一

三菱金属株式会社

村  井  幸  男

日本鉱業株式会社

山  本  壽  美

古河電気工業株式会社

波  部  武  雄

三井金属鉱業株式会社