2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 1103-1995
電気銅地金の光電測光法による
発光分光分析方法
Method for photoelectric emission spectrochemical analysis of
electrolytic cathode copper
1. 適用範囲 この規格は,JIS H 2121に規定する電気銅地金の光電測光法による発光分光分析方法につ
いて規定する。
この規格は,ひ素,アンチモン,ビスマス,鉛及び鉄の定量に適用する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS H 1101 電気銅地金分析方法
JIS H 2121 電気銅地金
JIS Z 2611 金属材料の光電測光法による発光分光分析方法通則
2. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS Z 2611による。
3. 定量元素及び定量範囲 定量元素及び定量範囲は,表1による。
表1 定量元素及び定量範囲
定量元素
定量範囲 % (m/m)
ひ素
0.000 1 以上 0.006 以下
アンチモン
0.000 1 以上 0.01 以下
ビスマス
0.000 1 以上 0.002 以下
鉛
0.000 1 以上 0.01 以下
鉄
0.000 1 以上 0.02 以下
4. 要旨 分析試料を黒鉛製の補助電極に入れ,対電極に黒鉛を用いて,直流アーク又は高圧整流スパー
クを発生させ,発光スペクトルを分光器によって分光し,定量元素のスペクトル強度を光電測光法によっ
て測定する。
5. 試料の調製
5.1
分析試料の製調 分析試料の調製は,次による。
(1) 採取 平均組成が得られる位置から,JIS Z 2611の4.2(試料切断切削及び研摩用機械)に規定された
機械(1)を用いて採取する。
(2) 調製 切断して集めた試料をよく混合し,その一部を更に切断して数mg〜数十mg程度の試験片とし,
分析試料とする。
2
H 1103-1995
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調製の際,使用した機器などから機械的に鉄分が汚染するか,又はそのおそれがある場合には,あ
らかじめ次の処理を行わなければならない。
分析試料の必要量をビーカーに取り,塩酸 (1+10) を試料片が沈む程度に加え,加熱して約5分間
煮沸するか,又は約80℃で約30分間加熱して,表面に付着又は混入した鉄分を溶解した後,水洗し,
更にエタノールなどで洗浄し乾燥する。
注(1) あらかじめエタノールなどによって清浄にする。
5.2
標準試料の調製 分析試料中の定量元素の含有率を内挿する濃度範囲において,定量元素の含有率
が適当な間隔をもつような数個の試料を選択し,5.1によって一系列の標準試料を調製する(2)。
これらの標準試料中の定量元素の含有率は,JIS H 1101に規定する方法によって求める。
注(2) 標準試料の形状は,分析試料の形状と同じでなければならない。
6. 装置及び器具 装置及び器具は,次による。
(1) 発光分光分析装置 JIS Z 2611の3.(装置)による。
(2) 補助電極 直径5〜8mmの黒鉛棒を用い,その先端に試料を詰めるための穴を図1のように成形して
用いる。
(3) 対電極 直径5〜8mmで長さ30〜150mmの黒鉛棒を用い,その先端を図1に示すように30〜160°の
円すい状に成形して用いる。
図1 補助電極及び対電極の例
7. 操作 操作は,次のいずれかの手順によって行う。
(1) 内標準を用いる場合
(a) 5.1で調製した分析試料の一定量(3)を補助電極 [6.(2)] の穴に詰め(4),対電極 [6.(3)] と共に電極支
持台に保持する。
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(b) あらかじめ定めた発光条件で直流アーク又は高圧整流スパークを発生される(5)。
(c) 定量元素及び銅(内標準)のスペクトル強度を測定し(6),定量元素と銅(内標準)のスペクトル強
度比を求める。
(2) 内標準を用いない場合
(a) (1)(a)の操作を行う。
(b) (1)(b)の操作を行う。
(c) 定量元素のスペクトル強度を測定する()。
注(3) 補助電極に詰める量は例えば30〜300mgの一定量とし,装置,測定条件などを考慮して最適量
をあらかじめ決めておく。
(4) 均一に詰める。
(5) 繰返し精度の良い発光条件をあらかじめ選定しておく。発光条件の例を表2に示す。
(6) 繰返し精度の良い分析線,内標準線を選定する。分析線,内標準線の例を表3に示す。
(7) 繰返し精度の良い分析線を選定する。分析線の例を表3に示す。
表2 発光条件の例
項目
例1
例2
例3
分光器
1.0mパッシエンルンゲ形
1.0mパッシエンルンゲ形
1.0mパッシエンルンゲ形
回折格子
回折格子
回折格子
入口スリット幅
30µm
30µm
30µm
出口スリット幅
30µm
50µm
50µm
測光法
光電測光
光電測光
光電測光
励起法
直流高圧アーク法
高圧整流スパーク法
直流低圧アーク法
二次電圧
10kV
12.5kV
200V
二次電流
5〜10A
0.8〜1.2A
5A
対電極
黒鉛
黒鉛
黒鉛
分析間げき(隙)
3mm
5mm
5mm
発光雰囲気
大気
大気
大気
予備放電時間
10s
3s
0s
積分時間
15s
15s
60s
表3 分析線及び内標準線の例
元素
分析線
内標準線
nm
nm
ひ素
As I 234.98
−
アンチモン
Sb I 231.14
−
ビスマス
Bi I 306.77
−
鉛
Pb I 405.78
−
鉄
Fe I 302.06
−
銅
−
Cu I 276.66
8. 検量線の作成 検量線の作成は,次のいずれかによる。
(1) 内標準を用いる場合 5.2で調製した標準試料のそれぞれの一定量(3)を補助電極 [6.(2)] の穴に詰め(4),
対電極 [6.(3)] と共に電極支持台に保持し,以下7.(1)の(b)及び(c)の手順に従って試料と同じ操作を試
料と並行して行い,得た定量元素と銅(内標準)のスペクトル強度比と標準試料中の定量元素含有率
との関係線を作成して検量線とする(8)。
(2) 内標準を用いない場合 5.2で調製した標準試料のそれぞれの一定量(3)を補助電極 [6.(2)] の穴に詰め
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H 1103-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(4),対電極 [6.(3)] と共に電極支持台に保持し,以下7.(2)の(b)及び(c)の手順に従って試料と同じ操作
を試料と並行して行い,得た定量元素のスペクトル強度と標準試料中の定量元素含有率との関係線を
作成して検量線とする(9)。
注(8) 既に作成した検量線がある場合には,1個又はそれ以上の標準試料を用いて8.(1)の手順に従って
スペクトル強度比を求め,この値を用いて装置の時間的変動による検量線のずれを補正した検
量線を使用してもよい。
(9) 既に作成した検量線がある場合は,1個又はそれ以上の標準試料を用いて8.(2)の手順に従って
スペクトル強度を求め,この値を用いて装置の時間的変動による検量線のずれを補正した検量
線を使用してもよい。
9. 計算 計算は,次のいずれかによる。
(1) 内標準を用いる場合 7.(1)(c)で得た定量元素と銅(内標準)のスペクトル強度比と8.(1)で作成した検
量線とから,試料中の定量元素含有率を求める(10)。
(2) 内標準を用いない場合 7.(2)(c)で得た定量元素のスペクトル強度と8.(2)で作成した検量線とから,試
料中の定量元素含有率を求める(10)。
注(10) 検量線による定量範囲は,使用した標準試料系列の定量元素含有率の範囲内でなければならな
い。
JIS H 1103 原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
奥 谷 忠 雄
日本大学
増 田 聰 博
通商産業省資源エネルギー庁
高 木 譲 一
通商産業省工業技術院
加 藤 金 夫
大蔵省造幣局
藤 貫 正
社団法人日本分析化学会
束 原 巌
古河電気工業株式会社
森 本 良 幸
社団法人日本蓄電池工業会
森 孝 夫
日本鉛亜鉛需要研究会
小 島 昌 夫
株式会社小島半田製造所
石 橋 達 也
古河電池株式会社
永 井 巌
住友金属鉱山株式会社
尾 上 喬
同和鉱業株式会社
丹 野 一 雄
東邦亜鉛株式会社
中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー
渡 部 武 雄
三井金属鉱業株式会社
佐 山 恭 正
三菱マテリアル株式会社
稲 垣 勝 彦
日本鉱業協会
(関係者)
細 矢 一 仁
同和鉱業株式会社
松 岡 俊 和
三井金属鉱業株式会社
村 井 幸 男
株式会社ジャパンエナジー