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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

H 0604-1995 

シリコン単結晶の光導電減衰法 

によるライフタイム測定方法 

Measuring of minority-carrier lifetime in silicon single 

crystal by photoconductive decay method 

1. 適用範囲 この規格は,シリコン単結晶中の少数キャリアのバルク再結合ライフタイム(以下,バル

クライフタイム又はτBという。)を直流回路を用いた光導電減衰法によって測定する方法について規定する。 

なお,測定する単結晶は均一な組成をもち,抵抗率が1Ω・cm以上のものとする。 

2. 試料 

2.1 

試料結晶及び形状 試料は単結晶とし,形状は表1に示す4種類の角柱とする。 

表1 試料の大きさ 

単位 cm 

試料の種

類 

長さl 

断面a×b 

0.5×0.5 

1.0×1.0 

1.5×1.5 

2.0×2.0 

2.2 

測定可能なバルクライフタイム 測定可能なバルクライフタイムは,表3に示す表面再結合速度係

数RSに関して

2

1

S

B

R

τ

を満足しなければならない。 

各種試料での測定可能なバルクライフタイムτBの上限を表2に示す。 

表2 測定可能なバルクライフタイムの上限 

単位 μs 

試料の導電形 

試料の種類 

p形 

710 

2 800 

6 300 11 000 

n形 

2 000 

7 900 18 000 31 000 

2.3 

試料の加工 試料表面は,アズスライス面,サンドブラスト面又はラッピング面とする。 

2.4 

試料の電極付け 試料の両端面をサンドブラスト又はラッピング加工後,超音波洗浄し,乾燥させ

る。その後,約400℃のはんだごてを使用しインジウムを擦り込み,ぬれが良くなるまで両端面全面にイ

ンジウムをなじませる。 

3. 測定環境 測定装置は十分に電磁遮へいされ,測定は,24±1℃,相対湿度60%以下,気圧860〜1 060hPa

の状態で行う。 

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H 0604-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4. 測定装置 測定装置は,図1に示すように,光パルス発生装置,光学系,試料への電流供給回路,前

置増幅器及びディジタルオシロスコープによって構成する。これらの各装置は,次に示す性能のものを用

いる。 

図1 測定装置 

(1) 光パルス発生装置 光源としては(A)キセノン放電管又は火花放電,(B)電流パルス発生装置と0.9〜

1.1μmの間に最大光度をもつ発光ダイオードアレイの組合せのいずれかを使用する。 

いずれも繰返し周波数は5〜60Hzで光パルス消灯時の光強度の減衰時間(立ち下がり時間)が測定

ライフタイムτFの51以下のもの。 

(2) 光学系 レンズによる集光系,フィルタ及び電極部を遮光するためのマスクで構成する。 

フィルタは光源(A)の場合にだけ使用し,0.99μm以下の短波長光をカットオフする近赤外透過フィ

ルタ又は両面を鏡面仕上げした厚さ0.5〜2mmの単結晶シリコンウェーハを使用する。 

マスクはl

2

1(1)×l

2

1(1)cmの角形窓孔をもつもので試料の中央部直前に設置する。 

注(1) lは,表1に示した試料の長さ。 

(3) 電流供給回路 試料に電流を供給するための定電圧供給電源であり,試料の抵抗値と電極接触抵抗値

を含む全抵抗値の20倍以上の固定抵抗器を通して,試料に0.1〜5Vの電圧を印加できるもの。 

(4) 前置増幅器 DC〜1MHzの周波数範囲にわたって増幅度が一様で最大利得1万倍で入力換算雑音

30μV以下のもの。 

(5) ディジタルオシロスコープ トリガー掃引式ディジタルオシロスコープで10Hz〜1MHzの周波数範囲

にわたり増幅度が一様であり,サンプリングレイト2.5MS/s以上,メモリ容量10kワード以上,垂直

軸分解能8ビット以上のもの。 

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H 0604-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5. 測定方法 試料を測定器の試料台に載せ試料両端面を電流供給端子と圧着又ははんだ付けする。試料

両端面に電圧を印加し,光パルスによる試料両端面間の電圧変化をオシロスコープで観測し,図2のよう
に指数関数的減衰部分の信号電圧∆Vがe1(=0.367) に減衰する時間τ'Fを読み取って一次モードライフタイ

ムの近似値とする。次にこの曲線をコンピュータなどによって片対数スケール1n∆V=U (t) に変換すると

図3のような直線状のプロットが得られる。この直線の傾斜からτFを決定する。図2のe1の減衰時間τ'Fを

求めた時間領域が,図3の片対数プロットの直線部分の時間領域に含まれている場合は,τ'FはτFと一致す

る。 

この測定に当たり,次の事項に注意する。 

図2 指数関数的減衰曲線 

図3 片対数に変換した減衰曲線 

(1) 試料取付け後,電流方向を切り換えて測定し,電極接触部に整流性のないことを確認する。 

(2) オシロスコープ画面上の減衰曲線が指数関数的に減少することを確認する。 

(a) 減衰の初期に急な傾斜が見られる場合は減衰曲線の後部を用いて測定する[1n∆V=U (t) の直線部

分]。 

(b) 減衰曲線が長く尾を引いて基線に戻らない場合は10ワット以下の直流点灯の白熱灯によって試料

を照射しトラップ効果を消して測定する。 

(3) 試料端電圧をV0,光照射によるキャリア注入時の電圧変化分を∆Vとしたとき,

0

V

ΔV<0.01となるよう

に光強度を下げ注入キャリア密度を少なくする。 

(4) ライフタイム測定のとき,試料中の電界強度Eによるキャリアの掃き流しの効果が無視できるように

するため,次の条件を満足すること。 

()

F

F

D

E

E

τ

μ

μ

τ

1

4

10

320

2

6

又は

ここに, 

E: 電界強度 (V/cm) 

τF: 一次モードライフタイム (s) 

μ: 移動度でありp形試料にはμn=1 400cm2/V・s,n形試料には

μp=470cm2/V・sを使用する。 

D: 少数キャリアの拡散係数であり,p形結晶にはDn=

35.5cm2/s,n形結晶にはDp=12.5cm2/sを使用する。 

上の不等式に適合しているかどうかを確かめ,不適合の場合は印加電圧V0を下げる。 

(5) 1n∆V=U (t) 変換で直線性が得られない試料の場合は,ライフタイムの測定には不適当である。 

(6) バルクライフタイムの算出 バルクライフタイムτBの算出は,次による。 

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H 0604-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

s

F

F

B

R

l

b

a

D

=

+

+

=

τ

π

τ

τ

1

1

1

1

1

1

2

2

2

2

Dは抵抗率や欠陥密度などによって多少変動するので,より正確なライフタイムを求めるためには

各種試料でのDの実測が必要になる。 

Rsは,表面再結合速度係数であり,表3による。 

表3 表面再結合速度係数 Rs 

単位 l/s 

試料の導電形 

試料の種類 

p形 

2 810 

715 

317 

181 

n形 

991 

252 

112 

64 

(7) バルクライフタイム算出値が表2中の測定可能なバルクライフタイムの上限を超えるとき,又はτB算

出値が実測値τFの3倍を超えるときには,正確な測定は不可能で試料寸法 (a×b)(2)を更に大きくしな

ければならない。 

注(2) (a×b) は,表1に示した試料断面。