2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
H 0602-1995
シリコン単結晶及びシリコン
ウェーハの4探針法による
抵抗率測定方法
Testing method of resistivity for silicon crystals
and silicon wafers with four-point probe
1. 適用範囲 この規格は,シリコン単結晶(以下,単結晶という。)及びシリコンウェーハ(以下,ウェ
ーハという。)の直流4探針法による抵抗率の測定方法について規定する。
測定可能な抵抗率範囲は,P形は0.001〜2 000Ω・cm,N形は0.001〜6 000Ω・cmとする。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS R 6001 研磨材の粒度
2. 測定環境 測定環境は,十分電磁遮へいされた所とする。
また,測定条件は,原則として,温度25±1℃,相対湿度60%以下の状態に保つこととする。試料を測
定環境に30分以上放置し定温に達してから測定する。25℃以外の温度での測定値は,5.(6)で示す方法で温
度補正を行う。
3. 試料 試料は,次による。
(1) 測定用の単結晶の試料は,不規則な形状の試料でもよい。測定面は,平たんに仕上げ,探針の接触点
から最も近いエッジまでの距離が4mm以上,厚さ4mm以上とする。
(2) 測定用のウェーハは,円形状とし,直径20mm以上,厚さ150μm以上のものとする。
4. 試料の前処理 測定する試料は,その表面をJIS R 6001に規定する粒度600〜1200番のアルミナの研
磨材で平らによく磨き,十分脱脂水洗いし,乾燥する。
5. 測定 測定方法は,直流4探針法によって行い,次のとおりとする。
(1) 直流4探針法による測定回路 直流4探針法による測定回路は,図1のとおりとする。
2
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図1 直流4探針法による測定回路
(2) 4探針装置 探針は,超硬合金のタングステンカーバイドを使用し,円すい状に加工し,先端半径を
20〜50μmにする。4探針は,直線上に等間隔に並べ,その先端間隔は,原則として0.1cm±1.0%とす
る。各探針アセンブリ間の絶縁抵抗は,10 000MΩ以上とする。測定のために4探針の各々に加える力
は1〜2Nとする。
(3) 定電流電源装置 測定中の電流は,試料の抵抗率や厚さによって決める。0.001〜6 000Ω・cmの抵抗率
の測定範囲を確保するために,0.1μA〜100mAの範囲の電流が必要である。測定中の電流の変動は,
±0.05%が望ましい。
(4) 電位差測定装置 ディジタル電位差計を使用する。試料の抵抗率と厚さの全範囲を測定するためには,
0.1〜50mVの範囲の電位差が測定可能であり,最大測定値の0.05%の変動が検出できるものとする。
装置の入力インピーダンスは,1011Ω以上が望ましい。
(5) 測定方法 試料表面に垂直に4探針を加圧接触させ,外側の探針を通して電流I (A) を流し,中2本
の探針間の電位差V (V) を測定する。
なお,測定値は極性を切り換えて行い,その平均値をとる。
単結晶試料の抵抗率 (ρB) は,次の式(1)で算出する。
(
)
I
V
S
cm
b
π
ρ
2
=
Ω
=
・
································································ (1)
ウェーハの抵抗率 (ρW) は,次の式(2)で算出する。
(
)
r
w
w
F
F
I
V
S
cm
・
・
・
π
ρ
2
=
Ω
························································· (2)
ここに,
S: 探針間隔は0.1cmとする。
FW: ウェーハの厚さによる補正項(付表1による。)
Fr: ウェーハの直径及び測定位置による補正項(付表2による。)
(6) 温度補正 測定温度が25℃以外の場合は,その測定値を次の式によって25℃の値に補正する。
ρ (25) =ρ (T)×FT ······································································ (3)
FT=1−CT (T−25) ······································································ (4)
ここに,
ρ (25) : 温度25℃での抵抗率
ρ (T) : 測定温度T℃での抵抗率
FT: 温度補正項
CT: シリコン抵抗率の温度係数(付表3から求める。)
(7) 測定電流 抵抗率や試料の厚さにかかわらず,測定中の中2本の探針の電位差が33mV以下になるよ
うに付表4に示す電流値を使用する。ただし,0.075Ω・cm以下の低抵抗率試料の場合は,発熱を避け
るため印加電流は100mAを上限とし,また2 000Ω・cm以上の高抵抗率の場合は中探針の電位差が
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10mV以下になるような電流値を使用することが望ましい。
(8) 測定位置 測定位置は,次による。
(a) 1点測定の場合 図2のように単結晶及びウェーハの中心位置 (C) とする。
(b) 3点測定の場合 図2のように任意の直径上で中心位置 (C) 及び周辺から5mmの2点,又は半径
(R) の2分の1の2点のいずれか計3点とする。
オリエンテーションフラット(以下,OFという。)のある場合は,OF線に平行な直径上の3点
とする。
(c) 5点測定の場合 図3のようにOF線に平行な直径上で,周辺から5mmの2点と2Rの2点と中心 (C)
か,又は3R,3
2Rの点と中心 (C) 点を含めた5点の場合と,図4のように一辺がOF線に平行か,
45°傾斜した直交直径上で周辺から5mm又は6mmの4点と,中心 (C) 点を含めたいずれかの計5
点とする。
図2 1点又は3点測定位置
図3 5点測定位置
図4 5点測定位置
6. 記録
6.1
抵抗率 抵抗率は,次のいずれかを記録する。
(1) 中心位置の測定値
(2) 最大値と最小値
(3) 中央値(測定値を大きさの順に並べたとき,中央に当たる数値)
(4) 3点又は5点全部の測定値
6.2
径方向抵抗率変化率 径方向抵抗率変化率 (△ρ) は,次の2種類の式のいずれかを選び算出し,記
録する。
中心基準抵抗率・変化率
()(
)(
)
100
max×
−
=
中心位置の測定値
中心位置の測定値
周辺の測定値
%
⊿ρ
···················· (5)
最大抵抗率・変化率
()(
)(
)100
×
−
=
測定値の最小値
測定値の最小値
測定値の最大値
%
⊿ρ
························· (6)
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付表1 厚さによる補正項 (FW)
厚さμm
FW
厚さμm
FW
厚さμm
FW
厚さμm
FW
150
0.108
440
0.317
730
0.515
1 200
0.748
60
0.115
50
0.324
40
0.521
1 300
0.782
70
0.123
60
0.331
50
0.527
1 400
0.811
80
0.130
70
0.338
60
0.533
1 500
0.835
90
0.137
80
0.346
70
0.540
1 600
0.856
200
0.144
90
0.353
80
0.546
1 700
0.874
10
0.151
500
0.360
90
0.552
1 800
0.890
20
0.159
10
0.367
800
0.558
1 900
0.903
30
0.166
20
0.374
10
0.564
2 000
0.914
40
0.173
30
0.381
20
0.569
2 100
0.923
50
0.180
40
0.388
30
0.575
2 200
0.931
60
0.188
50
0.395
40
0.581
2 300
0.938
70
0.195
60
0.402
50
0.587
2 400
0.944
80
0.202
70
0.409
60
0.592
2 500
0.950
90
0.209
80
0.416
70
0.598
2 600
0.956
300
0.216
90
0.422
80
0.603
2 700
0.960
10
0.224
600
0.429
90
0.609
2 800
0.964
20
0.231
10
0.436
900
0.614
2 900
0.967
30
0.238
20
0.443
10
0.619
3 000
0.970
40
0.245
30
0.450
20
0.625
3 100
0.973
50
0.252
40
0.456
30
0.630
3 200
0.975
60
0.260
50
0.463
40
0.635
3 300
0.977
70
0.267
60
0.470
50
0.640
3 400
0.979
80
0.274
70
0.476
60
0.645
3 500
0.981
90
0.281
80
0.483
70
0.650
3 600
0.982
400
0.288
90
0.489
80
0.655
3 700
0.984
10
0.296
700
0.496
90
0.660
3 800
0.985
20
0.303
10
0.502
1 000
0.665
3 900
0.986
30
0.310
20
0.508
1 100
0.709
4 000
0.987
5
H 0602-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付表2 直径及び測定位置による補正項 (Fr)
測定位置
中心
2
R
3
R
3
2R
周辺から
周辺から
直径mm
6mm
5mm
20
0.979
0.963
0.973
0.937
0.970
0.963
24
0.985
0.974
0.981
0.955
0.974
0.967
26
0.987
0.978
0.984
0.961
0.975
0.968
30
0.990
0.983
0.988
0.970
0.977
0.970
32
0.992
0.985
0.989
0.974
0.978
0.971
38
0.994
0.989
0.992
0.981
0.979
0.973
40
0.995
0.990
0.993
0.983
0.980
0.973
42
0.995
0.991
0.994
0.984
0.980
0.973
50
0.996
0.994
0.996
0.989
0.981
0.974
60
0.998
0.996
0.997
0.992
0.982
0.975
62
0.998
0.996
0.997
0.993
0.982
0.975
75
0.998
0.997
0.998
0.995
0.983
0.976
76
0.998
0.997
0.998
0.995
0.983
0.976
80
0.999
0.998
0.998
0.996
0.983
0.976
90
0.999
0.998
0.999
0.997
0.983
0.977
100
0.999
0.998
0.999
0.997
0.983
0.977
110
0.999
0.999
0.999
0.998
0.984
0.977
125
0.999
0.999
0.999
0.998
0.984
0.978
150
1.000
0.999
0.999
0.999
0.984
0.978
175
1.000
0.999
1.000
0.999
0.984
0.978
200
1.000
1.000
1.000
0.999
0.984
0.978
225
1.000
1.000
1.000
0.999
0.985
0.978
250
1.000
1.000
1.000
0.999
0.985
0.978
275
1.000
1.000
1.000
1.000
0.985
0.978
300
1.000
1.000
1.000
1.000
0.985
0.979
310
1.000
1.000
1.000
1.000
0.985
0.979
6
H 0602-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付表3 18〜28℃の範囲内のシリコンの抵抗率の温度係数
抵抗率
温度係数
抵抗率
温度係数
Ω・cm/Ω・cm・℃
Ω・cm/Ω・cm・℃
Ω・cm
N形
P形
Ω・cm
N形
P形
0.000 6
0.002 00
0.001 60
1.0
0.007 36
0.007 07
0.000 8
0.002 00
0.001 60
1.2
0.007 47
0.007 22
1.4
0.007 55
0.007 34
0.001 0
0.002 00
0.001 58
1.6
0.007 61
0.007 44
0.001 2
0.001 84
0.001 51
2.0
0.007 68
0.007 59
0.001 4
0.001 69
0.001 49
2.5
0.007 74
0.007 73
0.001 6
0.001 61
0.001 48
0.002 0
0.001 58
0.001 48
3.0
0.007 78
0.007 83
0.002 5
0.001 59
0.001 45
3.5
0.007 82
0.007 91
4.0
0.007 85
0.007 97
0.003 0
0.001 56
0.001 37
5.0
0.007 91
0.008 05
0.003 5
0.001 46
0.001 27
6.0
0.007 97
0.008 11
0.004 0
0.001 31
0.001 16
8.0
0.008 06
0.008 19
0.005 0
0.000 96
0.000 94
0.006 0
0.000 60
0.000 74
10
0.008 13
0.008 25
0.008 0
0.000 06
0.000 46
12
0.008 18
0.008 29
14
0.008 22
0.008 32
0.010
−0.000 22
0.000 31
16
0.008 24
0.008 35
0.012
−0.000 31
0.000 25
20
0.008 26
0.008 40
0.014
−0.000 26
0.000 25
25
0.008 27
0.008 45
0.016
−0.000 13
0.000 29
0.020
0.000 25
0.000 45
30
0.008 28
0.008 49
0.025
0.000 83
0.000 73
35
0.008 29
0.008 53
40
0.008 30
0.008 57
0.030
0.001 39
0.001 02
50
0.008 30
0.008 62
0.035
0.001 90
0.001 31
60
0.008 30
0.008 67
0.040
0.002 35
0.001 58
80
0.008 30
0.008 72
0.050
0.003 09
0.002 08
0.060
0.003 64
0.002 51
100
0.008 30
0.008 76
0.080
0.004 39
0.003 20
120
0.008 30
0.008 78
140
0.008 30
0.008 79
0.10
0.004 86
0.003 72
160
0.008 30
0.008 80
0.12
0.005 17
0.004 12
200
0.008 30
0.008 82
0.14
0.005 40
0.004 44
250
0.008 30
0.008 84
0.16
0.005 58
0.004 71
0.20
0.005 85
0.005 12
300
0.008 30
0.008 86
0.25
0.006 09
0.005 48
350
0.008 30
0.008 88
400
0.008 30
0.008 91
0.30
0.006 27
0.005 75
500
0.008 30
0.008 97
0.35
0.006 43
0.005 96
600
0.008 30
0.009 00
0.40
0.006 56
0.006 13
800
0.008 30
0.009 00
0.50
0.006 78
0.006 39
0.60
0.006 96
0.006 59
1 000
0.008 30
0.009 00
0.80
0.007 20
0.006 87
>1 000
0.008 30
0.009 00
備考 P形シリコンについては,ほう素を添加したものだけに適用される。イタリック体で示した数字は,
測定点をスムーズな曲線で表したときの曲線上の点を示す。抵抗率1 000Ω・cm以上の温度係数は,外
挿によって求めた。
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付表4 単結晶及びウェーハの抵抗率と測定電流
抵抗率Ω・cm
電流
0.075 以下
100mA
0.075 を超え
0.75
以下
10mA
0.75
を超え
7.5
以下
1mA
7.5
を超え
75
以下
100μA
75
を超え
750
以下
10μA
750
を超え
2 000
以下
1μA
2 000を超えるとき
0.1μA
備考 電流値の選定は,厚さが500μmのウェーハで中
探針の電位差が33mV以下になるようにした。
JIS原案作成委員会 構成表(平成2年1月1日改正のとき)
氏名
所属
(委員長)
水 間 基一郎
日本シリコン株式会社
(幹事)
徳 丸 洋 三
中央大学
(幹事)
高 須 新一郎
東芝セラミックス株式会社
伊 藤 大 基
小松電子金属株式会社
津 屋 英 樹
日本電気株式会社
上 田 貴 士
九州電子金属株式会社
白 井 省 三
信越半導体株式会社
小 林 則 夫
株式会社東芝
安 楽 一 宏
沖電気工業株式会社
青 島 孝 明
株式会社日立製作所
本 田 耕一郎
株式会社富士通研究所
三 溝 宣 秀
日本モンサント株式会社
前 田 勲 男
工業技術院
(関係者)
池 田 順 一
財団法人日本規格協会
(事務局)
宮 下 敏 也
社団法人日本電子工業振興協会