2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
G 5503-1995
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄品
Austempered spheroidal graphite iron castings
1. 適用範囲 この規格は,オーステンパ処理を行った球状黒鉛鋳鉄品(以下,鋳鉄品という。)について
規定する。
備考 この規格の引用規格を,付表1に示す。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
(1) 素材 熱処理前の鋳鉄品。
(2) オーステンパ処理 標準的処理としては,熱処理前の鋳鉄品を,オーステナイト化温度域内に加熱保
持し,その後ベイナイト変態温度域に保持された塩浴炉,油槽又は流動床炉などに移して急冷し,引
き続きベイナイト変態温度域内に所定時間保持してから室温まで適当な方法で冷却する処理。
(3) 別鋳込み供試材 鋳鉄品本体とは別個に,原則として鋳鉄品と同種の鋳型を用いて,1バッチごとに
鋳鉄品と同一条件で鋳造する供試材。
3. 種類の記号 鋳鉄品の種類の記号は,表1による。
表1 種類の記号
種類の記号
FCAD 900-4
FCAD 900-8
FCAD 1000-5
FCAD 1200-2
FCAD 1400-1
4. 化学成分 鋳鉄品は,特に必要がある場合,11.5の試験を行い,その化学成分は,受渡当事者間の協
定による。
5. 機械的性質 鋳鉄品は,11.6の試験を行い,その引張強さ,耐力,伸び及び硬さは,表2による。た
だし,耐力は,注文者の要求がある場合に適用する。
2
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表2 別鋳込み供試材の機械的性質
記号
引張強さ
N/mm2
耐力
N/mm2
伸び
%
硬さ
HB
FCAD 900-4
900以上
600以上
4
−
FCAD 900-8
900以上
600以上
8以上
−
FCAD 1000-5
1 000以上
700以上
5以上
−
FCAD 1200-2
1 200以上
900以上
2以上
341以上
FCAD 1400-1
1 400以上
1 100以上
1以上
401以上
6. 黒鉛球状化率 鋳鉄品は,11.7の試験を行い,その黒鉛球状化率は,特に注文者の指定がない場合,
80 %以上とする。
7. 内部の健全性 鋳鉄品の内部には,使用上有害な巣があってはならない。
8. 形状,寸法,寸法公差及び質量 鋳鉄品の形状,寸法は,図面又は模型で指定するものとし,長さ及
び肉厚寸法の公差は,注文者の指定がない場合,JIS B 0403の球状黒鉛鋳鉄品による。
質量については,受渡当事者間の協定による。
9. 外観 鋳鉄品の外観は,使用上有害なきず,鋳巣などがあってはならない。
10. 製造方法 製造方法は,次による。
(1) オーステンパ処理前の素材は,キュポラ,電気炉,その他適当な炉によって溶解し,黒鉛を球状化す
るための処理を行い,砂型又はこれと同等の熱拡散率をもつ鋳型に鋳造する。
(2) 鋳鉄品は,鋳放しの状態又は機械加工後の素材でオーステンパ処理を行う。
なお,鋳鉄品は,必要がある場合,オーステンパ処理前に機械加工を行ってもよい。
(3) 鋳鉄品は,受渡当事者間の協定によって,オーステンパ処理を行う前に,焼きなまし,その他の熱処
理を行うことができる。
11. 試験
11.1 試験場所 試験場所は,原則として,当該製造所とする。
11.2 バッチの構成
11.2.1 熱処理前の素材のバッチ 熱処理前の素材の1バッチの構成は,JIS G 5502の11.2.1(バッチの構
成)による。
11.2.2 鋳鉄品のバッチ 鋳鉄品のバッチの構成は,次による。
(1) 非連続熱処理の場合,同一熱処理条件で同時に熱処理を行った鋳鉄品を1バッチとする。
(2) 連続熱処理の場合,11.2.1のバッチの素材に連続熱処理を行う場合は,最大4時間の生産量を1バッ
チとしてもよい。
(3) (1)又は(2)によらないで受渡当事者間の協定によって,数バッチをまとめて1グループとし,その中の
1バッチでそのグループを代表させることができる。
11.3 バッチごとの試験回数 バッチごとの試験回数は,次による。
(1) 鋳鉄品の引張試験,硬さ及び黒鉛球状化率判定試験は,1バッチごとに行う。
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(2) 受渡当事者間の協定によって,12バッチ以下をまとめて1グループとした場合には,その中の1バッ
チでそのグループを代表し,試験することができる。
11.4 供試材
11.4.1 供試材の製造法 供試材の製造法は,鋳鉄品と同種の鋳型を用いて,素材の1バッチごとに鋳鉄品
と別個に鋳込みの終わり近くに鋳造し,押湯を取り除いたあと,製品と同一熱処理を行う。鋳鉄品が鋳型
内で黒鉛球状化処理される場合は,供試材も同じ方法で鋳込む。
11.4.2 供試材の形状・寸法 供試材の形状・寸法は,図1及び表3のY形のA号,B号並びに図2のノ
ックオフ形(Ka形又はKb形)の4種類とし,原則としてY形のB号を用いる。
なお,供試材の種類は,試験成績に付記する。
図1 Y形供試材の形状・寸法
表3 Y形供試材の寸法
単位mm
種類
a
b
c
d
e
A号
12
40
25 135 150以上
B号
25
55
40 140 150以上
図2 ノックオフ形(Ka形,Kb形)の供試材及びその鋳型の形状・寸法
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11.5 分析試験
11.5.1 分析試料 分析試料は,供試材を採取するごとに同じ溶湯から1個採る。ただし,炭素分析試料は,
白銑試料から採取しなければならない。
11.5.2 分析方法 分析方法は,原則として,次のいずれかによる。
JIS G 1211, JIS G 1212, JIS G 1213, JIS G 1214,
JIS G 1215, JIS G 1253, JIS G 1256, JIS G 1257
11.6 機械試験
11.6.1 試験片 試験片は,次による。
(1) 引張試験片は,JIS Z 2201の4号試験片を図1又は図2の供試材の斜線を施した部分から採り,その
数は予備を除き1個とする。
(2) 硬さ試験片は,引張試験片の一部を用いる。
11.6.2 引張試験方法 引張試験方法は,JIS Z 2241による。
11.6.3 硬さ試験方法 硬さ試験方法は,JIS Z 2243による。
11.7 黒鉛球状化率判定試験
11.7.1 試験片 試験片は,図1又は図2の供試材の斜線を施した部分から1個採る。
11.7.2 試験方法 試験方法は,顕微鏡写真又は直接観察による黒鉛組織について行う。
11.7.3 黒鉛粒の形状分類 黒鉛粒の形状分類は,図3 (ISO 945 FIGURE 1.) のとおりとし,これに基づい
て黒鉛粒を分類する。
11.7.4 黒鉛球状化率の算出 顕微鏡組織における黒鉛球状化率の算出は,原則として,次による。
(1) 倍率は,原則として100倍とし,5視野について行い,平均値を求める。
(2) 2 mm(実際の寸法20 μm)以下の黒鉛及び非金属介在物は対象としない。ただし,受渡当事者間の協
定によって,2 mm以下の黒鉛についても対象にすることができる。
(3) 図3の形状V及びVIの黒鉛粒数の全黒鉛粒数に対する割合 (%) を求め,黒鉛球状化率とする。
(4) 画像解析装置によって算出する場合には(3)に準じて行う。
(5) 受渡当事者間の協定による標準組織がある場合にはこれを用い,5視野の組織を比較して球状化率を
判定してもよい。ただし,この場合の標準写真の黒鉛球状化率は,11.7.3によって黒鉛粒の形状を分
類し,11.7.4(1)〜(4)の方法で求めたものとする。
11.7.5 非破壊試験による黒鉛球状化率 受渡当事者間の協定によって,11.8の非破壊試験における音速測
定試験などによる黒鉛球状化率試験で顕微鏡観察による試験に代えることができる。このための試験片の
形状,採取条件は,受渡当事者間の協定による。
11.8 非破壊試験 非破壊試験については,受渡当事者間の協定によって,浸透探傷試験,超音波試験又
は,黒鉛球状化率又は基地判定のため音速測定試験などを行うことができる。
11.9 再試験 再試験は,次による。
(1) 試験片のきず又は鋳巣が試験成績に影響を及ぼしたと判断したときは,受渡当事者間の協定によって
その試験を無効とし,予備の試験片を用いて再試験することができる。
(2) 機械試験成績が規定に適合しない原因が熱処理によるものと認められる場合は,11.4による予備の供
試材を用いて再熱処理を行い,再試験することができる。この場合,試験片の数は,2個とする。た
だし,2個の試験片が採取できない場合は,受渡当事者間の協定による。再試験は11.6及び11.7によ
って行い,5.に適合しなければならない。
なお,この場合,鋳鉄品も再熱処理を行わなければならない。
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図3 黒鉛粒の形状分類図
12. 検査 鋳鉄品の検査は,次による。
(1) 機械的性質は,5.に適合しなければならない。
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(2) 黒鉛球状化率は,6.に適合しなければならない。
(3) 内部の健全性は,7.に適合しなければならない。
なお,健全性の合否判定基準は,必要がある場合,受渡当事者間の協定による。
(4) 形状,寸法,寸法公差及び質量は,8.に適合しなければならない。
(5) 外観は,9.に適合しなければならない。
(6) 鋳鉄品は,検査前に10.の熱処理以外に,塗装その他,検査の妨げになる処理を行ってはならない。
13. 表示 表示は,製品又は1包装ごとに,次の事項を表示する。ただし,注文者の承認を得た場合は,
その一部を省略することができる。
(1) 種類の記号
(2) 製造業者名又はその略号
(3) 製造番号又はその略号
14. 報告 製造業者は,注文者の要求がある場合,製造番号を記載した試験成績書を提出する。
付表1 引用規格
JIS B 0403 鋳造品−寸法公差及び削り代方式
JIS G 1211 鉄及び鋼−炭素定量方法
JIS G 1212 鉄及び鋼中のけい素定量方法
JIS G 1213 鉄及び鋼中のマンガン定量方法
JIS G 1214 鉄及び鋼中のりん定量方法
JIS G 1215 鉄及び鋼−硫黄定量方法
JIS G 1253 鉄及び鋼−スパーク放電発光分光分析方法
JIS G 1256 鉄及び鋼の蛍光X線分析方法
JIS G 1257 鉄及び鋼−原子吸光分析方法
JIS G 5502 球状黒鉛鋳鉄品
JIS Z 2201 金属材料引張試験片
JIS Z 2241 金属材料引張試験方法
JIS Z 2243 ブリネル硬さ試験方法
ISO 945 Cast iron−Designation of microstructure of graphite
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G 5503-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS G 5503改正原案作成委員会
(委員長)
堤 信 久
早稲田大学(名誉教授)
吉 海 正 憲
通商産業省基礎産業局
高 木 譲 一
工業技術院標準部
中 江 秀 雄
早稲田大学
日比野 高 三
株式会社東芝
辻 村 太 郎
財団法人鉄道総合技術研究所
千 田 昭 夫
日下レアメタル研究所
佐々木 敏 美
パーカー熱処理工業株式会社
久 門 宏 志
マツダ株式会社
吉 田 敏 樹
日立金属株式会社
岡 田 千 里
日立金属株式会社
鞘 師 守
日産自動車株式会社
栗 熊 勉
アイシン高丘株式会社
宇賀田 健
株式会社クボタ
桜 井 市 蔵
株式会社栗本鉄工所
岡 田 敏 和
株式会社豊田自動繊機製作所
松 村 弘
日立建機株式会社
吉 原 剛 一
旭テック株式会社
生 井 亨
社団法人日本鋳物協会
小 山 満 晴
自動車鋳物株式会社
喜 多 新 男
日本ダクタイル鋳鉄協会
(事務局)
斉 藤 親 徳
日本ダクタイル鋳鉄協会