G 3140:2011
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 種類及び記号並びに適用厚さ ······························································································ 1
4 熱処理及び熱処理の記号 ···································································································· 2
4.1 熱処理 ························································································································· 2
4.2 熱処理の記号 ················································································································ 2
5 化学成分 ························································································································· 2
6 溶接割れ感受性組成 ·········································································································· 3
7 機械的性質 ······················································································································ 3
7.1 降伏点又は耐力,引張強さ及び伸び ··················································································· 3
7.2 シャルピー吸収エネルギー······························································································· 3
8 形状,寸法,質量及びその許容差 ························································································ 4
9 外観······························································································································· 4
10 試験 ····························································································································· 4
10.1 分析試験 ····················································································································· 4
10.2 機械試験 ····················································································································· 4
11 検査 ····························································································································· 5
12 再検査 ·························································································································· 5
13 表示 ····························································································································· 5
14 報告 ····························································································································· 6
附属書A(規定)特別品質規定−冷間曲げ加工を行う鋼板の衝撃試験 ············································· 7
附属書B(参考)耐候性合金指標v ·························································································· 8
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
鉄鋼連盟(JISF)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS G 3140:2008は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,平成24年11月20日までの間は,工業標準化法第19条第1項等の関係条項の規定に基づくJIS
マーク表示認証において,JIS G 3140:2008によることができる。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
G 3140:2011
橋梁用高降伏点鋼板
Higher yield strength steel plates for bridges
序文
この規格は,橋梁用鋼板に関する最新の製造技術及び市場ニーズに対応するように,2008年に制定した
日本工業規格である。その後,適用する範囲を拡大して新しい鋼材の種類の追加の必要性が高まったため,
今回の改正に至った。
なお,対応国際規格は,現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,主として橋梁に用いる高い降伏点又は耐力を有する熱間圧延鋼板及び耐候性1)熱間圧延鋼
板(以下,鋼板という。)であって,特に溶接性に優れたものについて規定する。
注1) 耐候性とは,自然環境の大気中での腐食に耐える性質をいう。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0320 鋼材の溶鋼分析方法
JIS G 0404 鋼材の一般受渡し条件
JIS G 0415 鋼及び鋼製品−検査文書
JIS G 0416 鋼及び鋼製品−機械試験用供試材及び試験片の採取位置並びに調製
JIS G 3193 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差
JIS Z 2241 金属材料引張試験方法
JIS Z 2242 金属材料のシャルピー衝撃試験方法
3
種類及び記号並びに適用厚さ
鋼板の種類は,6種類とし,その記号及び適用厚さは,表1による。
2
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表1−種類の記号及び適用厚さ
単位 mm
種類の記号
適用厚さ
SBHS400
6以上 100以下
SBHS400W
6以上 100以下
SBHS500
6以上 100以下
SBHS500W
6以上 100以下
SBHS700
6以上 75以下
SBHS700W
6以上 75以下
Wは,耐候性鋼板で,通常,裸のまま又
はさび安定化処理を行って使用する。
4
熱処理及び熱処理の記号
4.1
熱処理
鋼板の熱処理は,熱加工制御による。ただし,受渡当事者間の協定によって,焼入焼戻しなどの熱加工
制御以外の熱処理を行ってもよい。
4.2
熱処理の記号
熱加工制御によって製造した鋼板には,熱処理の記号は付記しない。熱加工制御以外の熱処理を行った
場合は,表1の種類の記号の末尾に次の記号を付記する。
a) 鋼板に焼入焼戻しを行う場合 Q
b) 鋼板にその他(熱加工制御及び焼入焼戻し以外)の熱処理を行う場合 受渡当事者間の協定による
例 SBHS500 :SBHS500の鋼板を熱加工制御によって製造した場合
SBHS700WQ:SBHS700Wの鋼板を焼入焼戻しによって製造した場合
5
化学成分
鋼板は,10.1の試験を行い,その溶鋼分析値は,表2による。
表2−化学成分a)
単位 %
種類の記号
C
Si
Mn
P
S
Cu
Ni
Cr
Mo
V
B
N
SBHS400
0.15
以下
0.55
以下
2.00
以下
0.020
以下
0.006
以下
−
−
−
−
−
−
0.006
以下
SBHS400W
0.15
以下
0.15〜
0.55
2.00
以下
0.020
以下
0.006
以下
0.30〜
0.50
0.05〜
0.30
0.45〜
0.75
−
−
−
0.006
以下
SBHS500
0.11
以下
0.55
以下
2.00
以下
0.020
以下
0.006
以下
−
−
−
−
−
−
0.006
以下
SBHS500W
0.11
以下
0.15〜
0.55
2.00
以下
0.020
以下
0.006
以下
0.30〜
0.50
0.05〜
0.30
0.45〜
0.75
−
−
−
0.006
以下
SBHS700
0.11
以下
0.55
以下
2.00
以下
0.015
以下
0.006
以下
−
−
−
0.60
以下
0.05
以下
0.005
以下
0.006
以下
SBHS700W
0.11
以下
0.15〜
0.55
2.00
以下
0.015
以下
0.006
以下
0.30〜
1.50
0.05〜
2.00
0.45〜
1.20
0.60
以下
0.05
以下
0.005
以下
0.006
以下
注記 鋼材の耐候性を示す指標である耐候性合金指標vを,参考として附属書Bに示す。
注a) 必要に応じて,この表以外の合金元素を添加してもよい。
3
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溶接割れ感受性組成
鋼板の溶接割れ感受性組成は,10.1による溶鋼分析値を用いて式(1)によって算出し,その値は表3によ
る。
5B
10
V
15
Mo
20
Cr
60
Ni
20
Cu
20
Mn
30
Si
C
CM
+
+
+
+
+
+
+
+
=
P
······································ (1)
ここに,
PCM: 溶接割れ感受性組成(%)
表3−溶接割れ感受性組成
種類の記号
厚さ
mm
溶接割れ感受性組成
%
SBHS400
SBHS400W
100以下
0.22以下
SBHS500
SBHS500W
100以下
0.20以下
SBHS700
SBHS700W
50以下
0.30以下
50を超え
75以下
0.32以下
7
機械的性質
7.1
降伏点又は耐力,引張強さ及び伸び
鋼板は,10.2の試験を行い,その降伏点又は耐力,引張強さ及び伸びは,表4による。
表4−降伏点又は耐力,引張強さ及び伸び
種類の記号
降伏点又は耐力
N/mm2
引張強さ
N/mm2
伸び
厚さ
mm
試験片
%
SBHS400
SBHS400W
400以上
490〜640
6以上 16以下
1A号
15以上
16を超え50以下
1A号
19以上
40を超えるもの
4号
21以上
SBHS500
SBHS500W
500以上
570〜720
6以上 16以下
5号
19以上
16を超えるもの
5号
26以上
20を超えるもの
4号
20以上
SBHS700
SBHS700W
700以上
780〜930
6以上 16以下
5号
16以上
16を超えるもの
5号
24以上
20を超えるもの
4号
16以上
注記 1 N/mm2=1 MPa
7.2
シャルピー吸収エネルギー
厚さ12 mmを超える鋼板は,10.2の試験を行い,そのシャルピー吸収エネルギーは,表5による。この
場合,シャルピー吸収エネルギーは,3個の試験片の平均値とし,JIS G 0404の9.6(組試験の結果の評価)
によって判定する。
なお,SBHS400,SBHS400W,SBHS500及びSBHS500Wの鋼板に対して,内側半径が板厚の7倍以上
又は5倍以上の冷間曲げ加工を行う場合のシャルピー吸収エネルギーは,受渡当事者間の協定によって,
附属書Aを適用してもよい。
4
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表5−シャルピー吸収エネルギー
種類の記号
試験温度a)
℃
シャルピー
吸収エネルギー
J
試験片及び
試験片採取方向
SBHS400
0
100以上
Vノッチ
圧延直角方向
SBHS400W
SBHS500
−5
SBHS500W
SBHS700
−40
SBHS700W
注a) 受渡当事者間の協定によって,これらの試験温度より低い温度で試験を行う場合
は,その試験温度に置き換えてもよい。
8
形状,寸法,質量及びその許容差
鋼板の形状,寸法,質量及びその許容差は,JIS G 3193による。この場合,鋼板の長さの許容差及びカ
ットエッジの場合の幅の許容差は,特に指定がない限りJIS G 3193の許容差Aによる。
9
外観
鋼板の外観は,JIS G 3193の箇条7(外観)による。ただし,鋼板に溶接補修を行う場合は,注文者の
承認を得なければならない。
10 試験
10.1 分析試験
分析試験は,次による。
a) 分析試験の一般事項及び溶鋼分析試料の採り方は,JIS G 0404の箇条8(化学成分)による。
b) 溶鋼分析方法は,JIS G 0320による。
10.2 機械試験
10.2.1 試験一般
機械試験の一般事項は,JIS G 0404の箇条7(一般要求)及び箇条9(機械的性質)による。ただし,供
試材の採り方は,JIS G 0404の7.6(試験片採取条件及び試験片)のA類とし,試験片の数及び採取位置
は,次による。
a) 引張試験片の数 同一溶鋼に属し,同一熱処理条件ごとに,最大厚さが最小厚さの2倍以内のものを
一括して一組とし,引張試験片を1個採取する。ただし,一組の質量が50 tを超えるときは,引張試
験片を2個採取する。この場合,鋼板1枚で50 tを超えるときは,引張試験片の数は,鋼板1枚から
1個とする。
b) 衝撃試験片の数及び採取方向 同一溶鋼に属し,同一熱処理条件ごとに,最大厚さの鋼板から供試材
1個を採り,これから試験片3個を採取する。採取方向は,表5による。
c) 引張試験片の採取位置 引張試験片の採取位置は,JIS G 0416による。ただし,板幅方向の試験片の
中心は板幅の1/4又はそれに近い位置とする。
d) 衝撃試験片の採取位置 衝撃試験片の採取位置は,JIS G 0416による。ただし,板幅方向の試験片の
中心は,板幅の1/4又はそれに近い位置とする。鋼板の板厚方向採取位置は,厚さ28 mm以下につい
てはJIS G 0416の図A.11 a)とし,厚さ28 mm超えについてはJIS G 0416の図A.11 b)とする。試験片
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が所定の位置から採れない場合には,それに近い位置とする。
10.2.2 試験片
引張試験片及び衝撃試験片は,次による。
a) 引張試験片は,JIS Z 2241の1A号,4号又は5号試験片による。
b) 衝撃試験片は,JIS Z 2242のVノッチ試験片による。この場合,試験片切欠き部の切欠きの長さ方向
は,圧延面に垂直とする。
10.2.3 試験方法
引張試験及び衝撃試験の方法は,次による。
a) 引張試験方法は,JIS Z 2241による。
b) 衝撃試験方法は,JIS Z 2242による。
注記 この規格に規定する以外の試験として,受渡当事者間の協定によって,JIS G 0801又はJIS G
0901の超音波探傷試験などの非破壊試験が行われることがある。この場合,事前に試験片の採
り方,試験方法などについて,受渡当事者間で協定される。
11 検査
検査は,次による。
a) 化学成分は,箇条5に適合しなければならない。
b) 溶接割れ感受性組成は,箇条6に適合しなければならない。
c) 機械的性質は,箇条7に適合しなければならない。
d) 形状,寸法及び質量は,箇条8に適合しなければならない。
e) 外観は,箇条9に適合しなければならない。
12 再検査
再検査は,次による。
a) 引張試験で合格にならなかった鋼板は,JIS G 0404の9.8(再試験)によって再試験を行い,合否を決
定してもよい。
b) 衝撃試験が,JIS G 0404の9.6(組試験の結果の評価)で合格とならなかった鋼板は,JIS G 0404の
9.8(再試験)によって,再試験を行って合否を決定してもよい。
c) 機械試験で合格とならなかった鋼板は,次によって熱処理又は再熱処理を行った後,改めて機械試験
を行い,合否を判定してもよい。
− 熱加工制御によって製造された鋼板:注文者の承認を得て,焼入焼戻し又はその他(熱加工制御及
び焼入焼戻し以外)の熱処理を行う。
− 焼入焼戻し又はその他(熱加工制御及び焼入焼戻し以外)の熱処理によって製造された鋼板:再熱
処理を行う。
13 表示
検査に合格した鋼板は,鋼板ごとに,次の項目を適切な方法で表示する。ただし,受渡当事者間の協定
によって項目の一部を省略してもよい。
a) 種類の記号(熱加工制御以外の場合は,熱処理の記号を含む。)
b) 溶鋼番号又は検査番号
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c) 寸法。寸法の表示は,JIS G 3193の箇条3(寸法の表し方)による。
d) 製造業者名又はその略号
14 報告
製造業者は,検査文書を注文者に提出しなければならない。報告は,JIS G 0404の箇条13(報告)によ
る。ただし,注文時に特に指定がない場合,検査文書の種類は,JIS G 0415の表1(検査文書の総括表)
の記号2.3(受渡試験報告書)又は3.1.B(検査証明書3.1.B)とする。
なお,化学成分は,表2の注a)によった場合は,全ての添加元素について報告しなければならない。ま
た,溶接割れ感受性組成の計算式に含まれる全ての元素について報告しなければならない。
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附属書A
(規定)
特別品質規定−冷間曲げ加工を行う鋼板の衝撃試験
序文
この附属書は,受渡当事者間の協定によって適用する。
A.1 内側半径が板厚の7倍以上又は5倍以上の冷間曲げ加工を行う鋼板の衝撃試験
内側半径が板厚の7倍以上又は5倍以上の冷間曲げ加工を行う鋼板の衝撃試験は,次による。
a) 試験温度,試験片の採取方向及びシャルピー吸収エネルギーは,表A.1による。
b) 供試材の採り方,試験片の数,採取位置,試験片及び試験方法は,10.2による。
c) 特別品質規定を適用した場合の記号は,次による。
− 内側半径が板厚の7倍以上の場合 7
− 内側半径が板厚の5倍以上の場合 5
− 曲げ加工方向が,圧延方向の場合 L
− 曲げ加工方向が,圧延方向と直角の場合 C
例 SBHS500W5L:内側半径が板厚の5倍以上で,曲げ加工方向が,圧延方向の場合
表A.1−シャルピー吸収エネルギー
種類の記号
冷間曲げ加工の
内側半径
試験温度a)
℃
シャルピー
吸収エネルギー
J
試験片
試験片採取方向b)
SBHS400
SBHS400W
板厚の7倍以上
0
150以上
Vノッチ
圧延方向又は
圧延直角方向
板厚の5倍以上
0
200以上
SBHS500
SBHS500W
板厚の7倍以上
−5
150以上
板厚の5倍以上
−5
200以上
注a) 受渡当事者間の協定によって,これらの試験温度より低い温度で試験を行う場合は,その試験温度に置き
換えてもよい。
b) 圧延直角方向の場合には,7.2に規定する試験は,省略してもよい。
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附属書B
(参考)
耐候性合金指標v
序文
この附属書は,耐候性合金指標について記述するものであって,規定の一部ではない。
B.1
耐候性合金指標v
耐候性合金指標vは,式(B.1)によって,通常,溶鋼分析値を用いて算出する。この値は,鋼材の耐候性
を示す指標として用いられる。ただし,vは,0.9以上2.5以下の範囲で用いる。また,Cは1.5 %未満,Si
は0.1 %を超え5 %未満,Mnは0.1 %を超え10 %未満,Pは0.15 %未満,Sは0.03 %未満,Cuは1.1 %未
満,Niは5 %未満,Moは0.6 %未満,Tiは0.12 %未満の範囲に適用する。
−
×
−
×
−
×
−
×
+
×
−
×
−
×
−
×
−
=
)
Ti
7.1
0.1(
)
Mo
3.0
0.1(
)
Ni
12
.0
0.1(
)
Cu
10
.0
0.1(
)S9.1
0.1(
)P
5.0
0.1(
)
Mn
016
.0
04
.1(
)
Si
05
.0
05
.1(
)C
16
.0
0.1(
/1
v
····· (B.1)
ここに,
v: 耐候性合金指標
参考文献 JIS G 0801 圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法
JIS G 0901 建築用鋼板及び平鋼の超音波探傷試験による等級分類及び判定基準